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特許7588098トーチと吸引装置を備えた、少なくとも1つの加工物を熱接合するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】トーチと吸引装置を備えた、少なくとも1つの加工物を熱接合するための装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20241114BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20241114BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241114BHJP
   B23K 3/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B23K9/32 J
B23K26/142
B23K1/00 A
B23K26/00 M
B23K3/02 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021573274
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020069120
(87)【国際公開番号】W WO2021008944
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】102019119341.9
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516126791
【氏名又は名称】アレクサンダー ビンツェル シュヴァイステヒニーク ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】ALEXANDER BINZEL SCHWEISSTECHNIK GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ、ザッシャ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-136248(JP,A)
【文献】特開平09-076061(JP,A)
【文献】特開平04-105785(JP,A)
【文献】実開昭52-009617(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02292367(EP,A1)
【文献】特表2008-515646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32、
10/00 - 10/02
B23K 26/00 - 26/70
B23K 1/00 - 3/08、31/02、
33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーチ(1)と、溶接時、切断時、又はろう付け時に発生する煙ガスを吸引するための吸引装置(2)とを備えた、加工物を熱接合するための装置であって、
前記トーチ(1)の位置及び/又は位置変更を決定するため、及び/又は、前記トーチ(1)の基準位置及び/又は加工すべき加工物の基準位置に対する空間内の基準点の位置及び/又は位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサ手段(3)が、前記トーチ(1)に作用する前記吸引装置(2)の体積流量に対し、検出された前記トーチ(1)の位置及び/又は位置変更に依存して作用可能であるように設けられていること、及び、
前記センサ手段(3)は、前記トーチ(1)内に配設され、又は前記トーチ側の吸引ホース(8)への接続部内に配設されていること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記センサ手段(3)により検出された前記トーチ(1)の位置及び/又は位置変更に依存して前記トーチ(1)における前記吸引装置(2)の体積流量を制御又は調整するために少なくとも1つの前記センサ手段(3)と接続された制御又は調整装置(4、5)が設けられていること、
を特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記センサ手段(3)は、前記トーチ(1)の回転位置を決定するため、及び/又は前記トーチ(1)の回転的な位置変更を決定するため、及び/又は前記トーチ(1)の並進的な位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサ(17)を有すること、
を特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記センサ手段(3)は、前記トーチ(1)の並進的及び/又は回転的な運動の速度及び/又は加速度を決定すること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記トーチ(1)は、加工過程中には、手案内で、又は操作装置により、又は溶接ロボットにより案内可能であること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記トーチ(1)の基準位置、及び/又は空間内の基準点は、オペレータにより、及び/又は、制御及び/又は調整装置(4、5)により選択可能であること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
制御及び/又は調整装置(4、5)は、選択された前記トーチ(1)の基準位置、及び/又は前記センサ手段(3)により決定された前記トーチ(1)の位置及び/又は位置変更に依存し、吸引力を所定の特性マップに依存して決定し、前記特性マップは、エミッションに関し且つプロセスパラメータとして溶接電源(23)内にある方法特性値を有すること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記吸引装置(2)の体積流量は、傾き角(6)ないしトーチ傾斜角の増加とともに増加すること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
吸引ノズル(13)における体積流量は、前記トーチ(1)におけるガス流、又は前記トーチ側の吸引ホース(8)におけるガス流、又は吸引機側の吸引ホース(12)におけるガス流、又は接続ハウジング(15)におけるガス流、又は前記吸引装置(2)におけるガス流のための少なくとも1つのバイパス開口部(7)の変化により、或いは、前記トーチ(1)における1つ又は複数の絞り、又は前記トーチ側の吸引ホース(8)における1つ又は複数の絞り、又は吸引機側の吸引ホース(12)における1つ又は複数の絞り、又は接続ハウジング(15)における1つ又は複数の絞り、又は前記吸引装置(2)における1つ又は複数の絞り(11)の変化により調整されること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記センサ手段(3)は、電子的、誘導的、容量的、光学的、及び/又は機械的に作用する少なくとも1つのセンサとして、或いは傾斜センサ又はジャイロセンサとして構成されていること、
を特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記センサ手段(3)は、機械的なトーチガイド(19)、スイッチオフ装置(20)、又はロボット(21)のアーム(22)に固定されていること、
を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記トーチ(1)の傾斜に関する制御信号は、トーチヘッドのロボット配向情報から導き出されること、
を特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記センサ手段(3)と吸引力の制御装置(4)との間の信号伝達は、ケーブルを介し、或いは無線又は光信号を用いてケーブルを用いないで行われること、
を特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記トーチ(1)と前記トーチ側の吸引ホース(8)とは、継手(9)を用い、作用連結されていること、
を特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載した、トーチと、溶接時、切断時、又はろう付け時に発生する煙ガス(ヒュームガス)を吸引するための吸引装置とを備えた、少なくとも1つの加工物を熱接合するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱接合法は、加工物を溶かしてこれらを結合させるためにエネルギーを利用する。金属板製造では、標準的に「MIG」溶接、「MAG」溶接、並びに「WIG」溶接、プラズマトーチ、Eハンドトーチが、それらのハイブリッド法、並びにレーザ法とともに使用される。またプラズマとレーザに基づく切断トーチも、本発明の目的である。
【0003】
溶融電極を用いる保護ガス支援式のアーク溶接法(MSG:Metall-Schutzgasschweissen)において「MIG(Metall-Inertgas)」は「金属不活性ガス」を表し、「MAG」は「金属活性ガス(Metall-Aktivgas)」を表す。非溶融電極を用いる保護ガス支援式のアーク溶接法(WSG:Wolfram-Schutzgasschweissen)において「WIG(Wolfram-Inertgas)」は「タングステン不活性ガス」を表す。本発明による装置は、ロボットアームに配設されている機械誘導式の溶接トーチとして構成されていることが可能である。しかしまた手動式のトーチ又は自動化されたトーチも考えられる。
【0004】
一般的にアーク溶接装置は、溶接金属を溶かすために、加工物と溶融溶接電極又は非溶融溶接電極の間にアークを発生させる。溶接金属並びに溶接個所は、保護ガス流(シールドガス流)により、大気ガスに対して保護される。
【0005】
この際、溶接電極は、アーク溶接機と接続されている溶接トーチのトーチ本体(トーチボディ)に設けられている。トーチ本体は、通常、内部にあり溶接電流を案内する構成部材のグループを含み、これらの構成部材は、溶接電流をアーク溶接機内の溶接電流源からトーチヘッドの先端部に向けて溶接電極へと導き、次いで溶接電極からアークが加工物に対して発生される。
【0006】
保護ガス流は、溶接電極の周り、アークの周り、溶融池の周り、及び加工物の熱影響ゾーンの周りを流れ、この際、保護ガス流は、溶接トーチのトーチ本体を介してそれらの領域に供給される。ガスノズルは、保護ガス流をトーチヘッドの前端部に導き、トーチヘッドの前端部において、保護ガス流は、溶接電極の周りにほぼ環状でトーチヘッドから流出する。
【0007】
溶接のために発生されたアークは、溶接過程中には、溶接すべき加工物、並びに場合により供給された溶接金属を加熱し、それによりそれらは溶かされる。
【0008】
溶接と並び、金属板構成部材を結合させるためには、ろう付け(ないしはんだ付け)も考慮される。ろう付けでは、溶接の場合と異なり、加工物が溶かされるのではなく、添加材料だけが溶かされる。その理由は、ろう付けでは、2つの縁部が、添加材料としてのろうにより互いに結合されるということにある。ろう材料の溶融温度と、構成部材の材料の溶融温度とは、大きく離れており、それ故、加工時には、ろうだけが溶ける。ろう付けには、WIGトーチ、プラズマトーチ、MIGトーチに加え、レーザも適している。
【0009】
アークろう付けプロセスは、金属保護ガス(MSG-L)ろう付けプロセスと、タングステン保護ガス(WSG-L)ろう付けプロセスに分けることができる。この際、添加材料としては、溶融範囲が基本材料の溶融範囲よりも低いワイヤ状の銅ベース材料が主に使用される。MSGアークろう付けの原理は、装置技術的には、ワイヤ状の添加材料を用いるMSG溶接とほぼ同じである。
【0010】
例えば金属の電気アーク溶接におけるようなろう付け又は溶接では、溶接すべき又はろう付けすべき材料の組成と汚れの状態に依存し、多かれ少なかれ大量の部分的に健康に害のある排ガス又は煙(ヒューム)が発生し、これらの排ガス又は煙は、溶接個所又はろう付け箇所への視界を妨げるだけでなく、溶接装置又はろう付け装置のユーザに対しても、目と呼吸器が刺激されるので健康上の被害をもたらすことになる。それに対応し、実際には、排ガスの吸引をできるだけトーチにおいてその発生個所の近くで可能とする様々な装置と方法が既に開発されている。
【0011】
溶接煙吸引トーチ(RAB:Schweissrauchabsaugbrenner)において最も頻繁に使用される吸引装置は、調整可能ではなく、或いは吸引機自体でのみ調整可能である。下記特許文献1(EP 2 556 914 B1)は、溶接工による吸引モータ出力の選択的な調整装置を記載している。この際、モータの回転数は、ハンド溶接トーチにおいて遠隔制御装置を能動的に操作することにより遠隔制御装置を介して手動で変更されるべきである。
【0012】
しかし今日では、主にRABハンドトーチは、機械式の調整スライダを備えており、この機械式の調整スライダにより、溶接工は、トーチハンドルの領域で体積流量の一部分を分岐させることができる。それによりプロセス近傍の体積流量が減少される。このことは、通常、下記特許文献2(EP 2 556 913 B1)で説明されているように、溶接トーチハンドルの上面部にあり親指でスライドさせることのできる押し開け可能な開口部を介して行われるか、又はトーチハンドルとトーチネックの間の半径方向の開口可能性においても行われる。
【0013】
ロボットRABトーチでは、今まで、特有の体積流量調整装置は知られていない。
【0014】
溶接パラメータの位置依存の調整機能は、下記特許文献3(WO 2006/042572 A1)及び下記特許文献4(WO 2016/060721 A1)から公知である。
【0015】
下記特許文献3は、トーチの位置及び/又は位置変更を感知するためのセンサ手段を記載し、それにより、接合法、分離法、又は表面加工法、特に溶接法における少なくとも1つの特性値(特性パラメータ)が、感知された位置及び/又は位置変更に依存して作用可能である。
【0016】
また下記特許文献3は、吸引機能をもたない従来のアーク溶接プロセス及びアーク溶接トーチに関するものである。
【0017】
下記特許文献5(DE 20 2009 018 481 U1)から、吸引のプロセス依存の設定機能が公知であり、一方では、同期されたスイッチオンとスイッチオフであり、また他方では、プロセス依存及びパラメータ依存の設定機能である。 下記特許文献5によると、溶接装置と吸引装置をプロセスに基づいて連結させることが考慮されている。プロセスとパラメータのもとでは、特に電流強さとして理解することができ、しかしまた、溶接プロセスとして、特にショートアーク、パルスアーク、移行アーク、スプレーアークとして理解することもできる。
【0018】
下記特許文献6(DE 40 07 147 A1)は、同様に、同期されたスイッチオンとスイッチオフを記載している。フィルタ負荷ないし圧力降下が変化する場合にも、一定の体積流量が達成されるべきである。そのためには、二次空気が供給されるか、追加的な絞り弁が駆動制御されるか、又は吸引装置の駆動部が制御されるべきである。
【0019】
特許文献4は、溶接プロセスの運動依存の構成を記載しているが、具体的には、溶接電源を調整することだけを目標にしている。吸引トーチについては、言及も説明もされていない。
【0020】
下記特許文献7(WO 2013/166247 A1)から、溶接煙ピストルにより吸引された煙流を自動的に調整するためのシステムと方法が公知である。当該装置は、真空システムを有し、該真空システムは、溶接煙ピストルの内部通路を通って真空煙流を吸引するように構成されている。更に真空蒸気流を測定するためのセンサが設けられている。更に圧力差測定に基づくバイパス解決策も知られている。
【0021】
下記特許文献8(DE 42 25 014 A1)から、トーチと、煙ガスを吸引するための真空発生器とを有する、溶接装置又は切断装置のための吸引装置が公知である。トーチ又はトーチホルダには、吸引ノズルが固定されており、この際、吸引ノズルと接続された真空発生器は、特に変更可能及び/又は予設定可能な高真空を生成する。更に空間空気を供給するための複数の電磁弁が記載されており、これらの電磁弁は、コンピュータを介して制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】欧州特許第2556914号
【文献】欧州特許第2556913号
【文献】国際公開第2006/042572号
【文献】国際公開第2016/060721号
【文献】独国実用新案第202009018481号
【文献】独国特許出願公開第4007147号
【文献】国際公開第2013/166247号
【文献】独国特許出願公開第4225014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
使用形態により、溶接装置を操作する溶接工は、溶接過程中にトーチの位置を溶接すべき加工物に対して相対的に変更することが必要とされる場合がある。この際、事情によっては、溶接法の所定の値をトーチのその都度の位置に適合させることが望まれるか、又は必要である。
【0024】
トーチにおける吸引体積流量の設定条件、特に煙吸引トーチの吸引体積流量の設定条件は、溶接煙の最大捕捉と、保護ガス被覆に対する最小影響との間の妥協点である。
【0025】
ほとんどの場合、溶接プロセスは、重力方向で実行される。高温の煙ガスの浮力により、たとえ吸引機能がアクティブでないとしても、それらの煙ガスは上昇する。従って必要な吸引力は、屈曲形状のトーチに比べて低く、又は上向き溶接の場合よりも低い。
【0026】
従来技術から知られているトーチでの調整スライダの使用において、全体積流量が常に一定であること、従ってエネルギー需要が常に一定であることは不利である。この欠点は、特に完全自動化されてロボットを用いた溶接装置にも該当し、それらの溶接装置では、スイッチオン時間が長いことによりエネルギー需要の問題が特に重要である。
【0027】
通常は、中断を伴うことなくポジションを変えながら溶接が行われるので、吸引機における吸引体積流量の手動設定は、実際の溶接時には実行可能ではない。調整スライダの適合は、ロボットトーチでは実用的に実行可能ではない。
【0028】
上述の欠点から出発し、本発明の基礎をなす課題は、溶接プロセス時、切断プロセス時、又はろう付けプロセス時に有害な煙ガスが吸引され、プロセスが使用形態に関してもエネルギー的にも更に最適化されるように、トーチと吸引装置を備えた装置を更に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記課題は、請求項1に記載した、トーチと吸引装置を備えた、加工物を熱接合するための装置により解決される。
即ち本発明の一視点により、
トーチと、溶接時、切断時、又はろう付け時に発生する煙ガスを吸引するための吸引装置とを備えた、加工物を熱接合するための装置であって、
前記トーチの位置及び/又は位置変更を決定するため、及び/又は、前記トーチの基準位置及び/又は加工すべき加工物の基準位置に対する空間内の基準点の位置及び/又は位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサ手段が、前記トーチに作用する前記吸引装置の体積流量に対し、検出された前記トーチの位置及び/又は位置変更に依存して作用可能であるように設けられていること、
を特徴とする装置が提供される。
より詳しくは、前記一視点において、
トーチと、溶接時、切断時、又はろう付け時に発生する煙ガスを吸引するための吸引装置とを備えた、加工物を熱接合するための装置であって、
前記トーチの位置及び/又は位置変更を決定するため、及び/又は、前記トーチの基準位置及び/又は加工すべき加工物の基準位置に対する空間内の基準点の位置及び/又は位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサ手段が、前記トーチに作用する前記吸引装置の体積流量に対し、検出された前記トーチの位置及び/又は位置変更に依存して作用可能であるように設けられていること、及び、
前記センサ手段は、前記トーチ内に配設され、又は前記トーチ側の吸引ホースへの接続部内に配設されていること、
を特徴とする。
尚、本願の特許請求の範囲に付記された図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)
トーチと、溶接時、切断時、又はろう付け時に発生する煙ガスを吸引するための吸引装置とを備えた、加工物を熱接合するための装置であって、
前記トーチの位置及び/又は位置変更を決定するため、及び/又は、前記トーチの基準位置及び/又は加工すべき加工物の基準位置に対する空間内の基準点の位置及び/又は位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサ手段が、前記トーチに作用する前記吸引装置の体積流量に対し、検出された前記トーチの位置及び/又は位置変更に依存して作用可能であるように設けられていること。
(形態2)
少なくとも1つの前記センサ手段により検出された前記トーチの位置及び/又は位置変更に依存して前記トーチにおける前記吸引装置の体積流量を制御又は調整するために少なくとも1つの前記センサ手段と接続された制御又は調整装置が設けられていること、が好ましい。
(形態3)
前記センサ手段は、前記トーチの回転位置を決定するため、及び/又は前記トーチの回転的な位置変更を決定するため、及び/又は前記トーチの並進的な位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサを有すること、が好ましい。
(形態4)
前記センサ手段は、前記トーチの並進的及び/又は回転的な運動の速度及び/又は加速度を決定すること、が好ましい。
(形態5)
前記トーチは、加工過程中には、手案内で、又は操作装置により、特に溶接ロボットにより案内可能であること、が好ましい。
(形態6)
前記トーチの基準位置、及び/又は空間内の基準点は、オペレータにより、及び/又は、制御及び/又は調整装置により選択可能であること、が好ましい。
(形態7)
制御及び/又は調整装置は、選択された前記トーチの基準位置、及び/又は前記センサ手段により決定された前記トーチの位置及び/又は位置変更に依存し、吸引力を所定の特性マップに依存して決定し、前記特性マップは、エミッションに関し且つプロセスパラメータとして溶接電源内にある方法特性値を有し、これらの方法特性値は、特に電流強さ、好ましくは有効電流強さ及び/又はピーク電流強さ、溶接出力、及び/又は溶接速度、並びにワイヤ直径ないし電極直径、添加材料の種類、及び保護ガスの種類であること、が好ましい。
(形態8)
前記吸引装置の体積流量は、傾き角ないしトーチ傾斜角の増加とともに、好ましくは連続的に増加すること、が好ましい。
(形態9)
吸引ノズルにおける体積流量は、前記トーチにおけるガス流、又は前記トーチ側の吸引ホースにおけるガス流、又は吸引機側の吸引ホースにおけるガス流、又は接続ハウジングにおけるガス流、又は前記吸引装置におけるガス流のための少なくとも1つのバイパス開口部の変化により、或いは、前記トーチにおける1つ又は複数の絞り、又は前記トーチ側の吸引ホースにおける1つ又は複数の絞り、又は吸引機側の吸引ホースにおける1つ又は複数の絞り、又は接続ハウジングにおける1つ又は複数の絞り、又は前記吸引装置における1つ又は複数の絞りの変化により調整されること、が好ましい。
(形態10)
前記センサ手段は、前記トーチ内に配設され、又は前記トーチ側の吸引ホースへの接続部内に配設され、好ましくは組み込まれていること、が好ましい。
(形態11)
前記センサ手段は、電子的、誘導的、容量的、光学的、及び/又は機械的に作用する少なくとも1つのセンサとして、特に傾斜センサ又はジャイロセンサとして構成されていること、が好ましい。
(形態12)
前記センサ手段は、溶接工の手部分、機械的なトーチガイド、スイッチオフ装置、又はロボットのアームに固定されていること、が好ましい。
(形態13)
前記トーチの傾斜に関する制御信号は、トーチヘッドのロボット配向情報から導き出されること、が好ましい。
(形態14)
前記センサ手段と吸引力の制御装置との間の信号伝達は、ケーブルを介し、或いは無線又は光信号を用いてケーブルを用いないで行われること、が好ましい。
(形態15)
前記トーチと前記トーチ側の吸引ホースとは、継手を用い、特に球継手を用い、作用連結されており、前記センサ手段は、球継手の領域内に配設されていること、が好ましい。
【0031】
本発明は、トーチと、溶接時、切断時、又はろう付け時に発生する煙ガスを吸引するための吸引装置とを備えた、加工物を熱接合するための装置に関する。
【0032】
本発明により、トーチの位置及び/又は位置変更を決定するため、及び/又は、トーチの基準位置及び/又は加工すべき加工物の基準位置に対する(相対的な)空間内の基準点の位置及び/又は位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサ手段が、トーチに作用する吸引装置の体積流量に対し、検出されたトーチの位置及び/又は位置変更に依存して作用可能であるように設けられている。
【0033】
本発明による教示内容の基本思想は、トーチの基準位置、及び/又は空間内の基準点、及び/又は溶接すべき加工物に対する(相対的な)トーチの位置及び/又はトーチの位置変更をセンサ手段により決定することにある。このようにして吸引装置の体積流量は、決定された位置及び/又は位置変更に依存して作用を受けることができる。
【0034】
この理由から、例えば、溶接装置として構成された装置の操作は、遥かに簡素化され、本発明による装置を用いて生成された溶接結合部の品質、即ち例えば溶接点又は溶接シームの品質は、遥かに向上する。それに加え、煙ガスは、確実に且つ効果的に排出される。
【0035】
特に、本発明により吸引装置の体積流量に対する作用は、体積流量の値に関し、自動的に行われることもできる。例えば制御手段を設けることができ、これらの制御手段は、センサ手段の出力信号に基づき、トーチの位置ないしトーチの位置変更を、好ましくは三次元空間内でも検知し、検知された位置ないし位置変更に依存して吸引装置の体積流量に対し、体積流量の値に関して作用する。このようにして本発明による装置の操作は、エネルギー的に最適化され、溶接結合部の品質は、遥かに向上する。
【0036】
本発明により設けられたセンサ手段は、その都度の要求に応じ、空間内の基準位置及び/又は基準点に対する(相対的な)トーチの位置及び/又は位置変更を検知することができ、この際、その位置変更は、並進的な位置変更でも、回転的な位置変更でも、回転的な位置変更と並進的な位置変更の組み合わせでもよい。
【0037】
この際、トーチの位置変更は、同じ加工物に対する作用中に検知されることが可能である。また位置変更後に別の加工物に対して行われる(eingewirkt wird)ことも可能である。例えば1つの溶接装置を用いて第1加工物に関する溶接課題が実行される場合には、例えば別の加工物への交換を本発明によるセンサ手段により検知することができ、体積流量の値をこの加工物に関して実行すべき溶接課題に適合させることができる。
【0038】
しかしまた、センサ手段の出力信号に基づき、新しい加工物に対して位置変更後の体積流量の自動的な適合を考慮することもできる。この適合は、例えば、予め定められた順番で、空間的に互いに離された異なる加工物を加工すべき場合に考えられる。
【0039】
本発明による装置は、様々な溶接法を実行するために特に良好に適しており、例えば、ビーム溶接法、ガス溶融溶接法、又はアーク溶接法であり、特に保護ガスアーク溶接法であり得る。また本装置は、例えばプラズマ切断法又はレーザ切断法を実行するための切断装置として構成されていることも可能である。
【0040】
このようにして常に最適の体積流量が吸引され、この最適の体積流量は、溶接プロセスに対し、特に保護ガス雰囲気に対し、悪影響を及ぼすことはなく、また最善の捕捉を可能にする。
【0041】
更なる利点は、吸引機の能動的に調整される吸引力に基づく本装置の最適化された効率にある。
【0042】
溶接法における手動の範囲については、それに加え、溶接工が調整スライダを用いた手動式の再調整から解放されること、また変更されない全吸引力に基づく不必要なエネルギー消費に関する欠点が回避される、という利点がある。このことは、勿論、完全自動化された使用形態にも該当する。
【0043】
溶接時の吸引体積流量の自動的な調整に基づき、溶接工の負担は軽減され、煙ガスの最適の捕捉が行われ、用途に依存する吸引力に基づいてエネルギーが節約される。
【0044】
自動化の範囲についての利点は、なかでも、保護ガスの吸引の危険性が減少したことにより、煙ガス吸引を行うにもかかわらず、強い(ロバストな)保護ガス被覆を保証することができ、並びにエネルギーが節約されるということにある。
【0045】
本発明の第1の有利な更なる構成により、少なくとも1つのセンサ手段により検出されたトーチの位置及び/又は位置変更に依存してトーチにおける吸引装置の体積流量を自動的に制御(開ループ制御)又は調整(閉ループ制御)するために少なくとも1つのセンサ手段と接続された制御又は調整装置が設けられている。体積流量の自動レギュレーションに基づき、本発明による装置の操作は、特に簡単に構成されており、溶接結合部の品質は、更に向上される。
【0046】
本発明の更なる一構成により、センサ手段は、トーチの回転位置を決定するため、及び/又はトーチの回転的な位置変更を決定するため、及び/又はトーチの並進的な位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサを有することが考慮されている。この実施形態では、例えば溶接シームの形成時にトーチが並進的に動いているか否かがセンサにより決定可能である。トーチの並進的な位置変更を決定するために、任意の適切なセンサないしセンサ装置を使用することができる。
【0047】
例えば、トーチに超音波送信機を配設することができ、該超音波送信機は、超音波を放射し、これらの超音波は、定置の超音波受信機により受信される。そして超音波送信機から超音波受信機まで、即ちトーチから超音波受信機までの超音波の走行時間から、超音波受信機とトーチの間隔を検出することができる。それに対応し、超音波を、空間的に互いに離間して配設された2つの超音波受信機により受信することもでき、それにより両方の超音波受信機の各々に対するトーチの間隔変更に基づき、トーチの並進的な位置変更を検出することができる。またそれに対応し、三次元空間内のトーチの位置変更を一義的に検知するために、空間的に互いに離間した3つの超音波受信機を設けることができ、それにより超音波受信機の各々とトーチのそれぞれの間隔から、三次元空間内のトーチの位置ないし位置変更を一義的に検知することができる。
【0048】
特に並進的な位置変更は、例えば、光学センサ手段を用いて検知することもできる。所定の基準点からトーチの距離(間隔)は、例えばレーザ干渉計を用いて検出可能である。それに対応し、トーチの並進的な位置変更は、互いに依存しない2つのレーザ干渉計を介して検知可能であり、また三次元空間内のトーチの位置変更は、互いに依存しない3つのレーザ干渉計を用いて検知可能である。
【0049】
本発明の更なる有利な一実施形態では、センサが、トーチの並進的及び/又は回転的な運動の速度及び/又は加速度を決定することが考慮されている。このようにして吸引装置の体積流量に対して更に十分な作用を及ぼすことができる。例えば溶接装置において、溶接電流の振幅は、トーチを溶接結合部の形成時に互いに溶接すべき加工物に沿って動かす速度に依存して作用を受けることが可能である。トーチの加速度を決定するためには、例えば、フリースケールセミコンダクタ株式会社、Alma School Road、Chandler、Arizona、USA(www.freescale.com)による、MMA 6260 Q、MMA 6261 Q、MMA 6262 Q、及びMMA 6263 Qの名称で販売されているようなセンサ、又はELV社による1つのチップ上にそれぞれ3軸の回転速度及び加速度センサを備えた6軸の運動センサモジュール6D-BSとして販売されているようなセンサを使用することができる。
【0050】
本発明の更なる有利な一実施形態により、トーチは、加工過程中には(利用者の)手案内で、又は操作装置により、特に溶接ロボットにより案内可能であることが考慮されている。
【0051】
本発明の更なる一実施形態は、トーチの基準位置、及び/又は空間内の基準点が、オペレータにより、例えば溶接工により、及び/又は、制御及び/又は調整装置により選択可能であることを考慮している。この実施形態では、特に、基準位置を、その都度の溶接課題の実状、ないし溶接装置を利用する溶接工に適合させることが可能である。
【0052】
本発明の更なる一構成において、制御及び/又は調整装置は、選択されたトーチの基準位置、及び/又はセンサ手段により決定されたトーチの位置及び/又は位置変更に依存し、吸引力を所定の特性(曲線)マップ(Kennfeld)に依存して決定することが考慮されており、該特性マップは、エミッションに関し且つプロセスパラメータとして溶接電源内にある方法特性値(方法特性パラメータ)を有し、これらの方法特性値は、特に電流強さ、好ましくは有効電流強さ及び/又はピーク電流強さ、溶接出力、及び/又は溶接速度、並びにワイヤ直径ないし電極直径、添加材料の種類、及び保護ガスの種類である。つまりこの実施形態では、体積流量を、位置情報に対応し、又は所定の特性曲線或いは多次元特性マップからのエミッションに関する更なる方法特性値を伴う位置情報に対応し、吸引装置に対して割り当てることができる。
【0053】
また一般的には、発生する溶接煙量は、平均電流強さ或いは溶融量の増加とともに増加する。同じことがエミッションを同様に増加させる活性ガス成分における混合剤にも当てはまる。それに対し、パルス溶接プロセスでは、パルス周波数とパルス電流強さの双方において、局所的なエミッション最小値が形成される。
【0054】
例えば、所定の厚さの金属薄板を溶接する場合には、立上りポジション、頂部(Ueberkopf)ポジション、下降ポジションのような所定のポジションにおける溶接に対し、それぞれ、特性値(特性パラメータ)の一セットの値が割り当てられていることが可能である。しかしまた所定の特性曲線マップに依存して値を溶接法の特性値に割り当てることも可能である。つまり特性値には、例えば、互いに溶接すべき加工物の材料及び/又は厚さに依存して値を割り当てることができる。
【0055】
本発明により、センサ手段が、1つの軸線に沿って、即ち一次元で、又は1つの平面内で、即ち二次元で、トーチの位置ないし位置変更を決定するのであれば、十分である。しかしまたセンサ手段が、三次元空間内のトーチの空間的な位置及び/又は空間的な位置変更を検知することを考慮することもできる。この実施形態では、トーチの位置ないし位置変更を特に正確に検知することができ、それにより吸引装置の体積流量に対する作用に関し、特に多岐にわたる可能性が得られる。
【0056】
本発明による教示内容の他の更なる一構成は、吸引装置の体積流量が、傾き角ないしトーチ傾斜角の増加とともに、好ましくは連続的に増加することを考慮する。この際、この調整機能は、手動でも、部分自動化された又は完全自動化されたトーチガイドでも使用されることが可能である。この際、傾き角は、送り方向又はその逆方向における(大きく鋭角的に)突き刺すような又は(小さく鋭角的に)引きずるようなトーチ傾斜角と、送り方向に対して直角の側方の傾斜角とから得られる。
【0057】
しかしまた本発明により、吸引ノズルにおける体積流量は、トーチにおけるガス流、又はトーチ側の吸引ホースにおけるガス流、又は吸引機側の吸引ホースにおけるガス流、又は接続ハウジングにおけるガス流、又は吸引装置におけるガス流のための少なくとも1つのバイパス開口部の変化により、或いは、トーチにおける1つ又は複数の絞り、又はトーチ側の吸引ホースにおける1つ又は複数の絞り、又は吸引機側の吸引ホースにおける1つ又は複数の絞り、又は接続ハウジングにおける1つ又は複数の絞り、又は吸引装置における1つ又は複数の絞りの変化により調整されることも可能である。
【0058】
設計の基礎は、溶接煙吸引トーチの吸引ノズルにおける効果的な吸引力ないし吸引性能(Absaugleistung)に依存し、以下の措置の1つに基づく:吸引機の吸引力の適合、及び/又は、吸引ホースにおけるガス流又は機械側の接続部材におけるガス流のための1つ又は複数のバイパス開口部の変化、及び/又は、流路内の圧力降下に作用を及ぼすため、好ましくは移行部材における圧力降下に作用を及ぼすための、流路内の1つ又は複数の絞り、或いは吸引ノズルにおける1つ又は複数の絞りの変化。
【0059】
本発明の更なる一実施形態により、センサ手段は、トーチ内に配設され、又はトーチ側の吸引ホースへの接続部内に配設され、好ましくは組み込まれている。
【0060】
センサ手段は、電子的、誘導的、容量的、光学的、及び/又は機械的に作用する少なくとも1つのセンサとして、特に、傾斜センサ、及び/又は加速度センサ、及び/又はジャイロセンサとして構成されていることも可能である。
【0061】
センサは、トーチ内、ホースパッケージへの接続部内、又はトーチの近傍のホースパッケージ内に組み込まれていることが可能である。特にジャイロセンサのようなデジタル電気センサは、トーチのハンドルの領域内で既存の電気接続部を介して給電されることが可能である。傾斜センサに基づく有効吸引力の自動適合により、SPSから又はロボットからの溶接プログラムの手間のかかる同期を必要とすることなく、手動式の使用形態と自動化された使用形態の双方で簡単な制御が可能である。
【0062】
前述のように、少なくとも1つのセンサ手段は、トーチのハンドルに配設され、トーチの電流供給ための電気接続部を介して給電されることが可能である。またセンサ手段は、電池や蓄電池を介し、又は太陽電池を用いて給電されることも考えられる。
【0063】
本発明による教示内容の別の更なる一構成は、センサ手段が、溶接工の手部分、機械的なトーチガイド、スイッチオフ装置、又はロボットのアームに固定されていることを考慮している。スイッチオフ装置は、トーチとロボットの間に設けられることが可能である。
【0064】
本発明の更なる一実施形態により、トーチの傾斜に関する制御信号は、ロボット配向情報、又は溶接装置配向情報、特にトーチヘッドの円周溶接装置(オービタル溶接装置)配向情報から導き出されることが可能であり、それにより自動的に吸引装置の体積流量ないし吸引力を吸引ノズルに適合させることができる。
【0065】
本発明の更なる一構成により、センサと吸引力の制御装置との間の信号伝達は、ケーブルを介し、或いは無線又は光信号を用いてケーブルを用いないで行うことができる。
【0066】
本発明の更なる有利な一実施形態により、トーチとトーチ側の吸引ホースとは、継手(ジョイント)を用い、例えば球継手(ボールジョイント)を用い、作用連結され、即ち連動されており、この際、センサ手段は、球継手の領域内に配設されている。このようにしてセンサ手段は、傾き角ないしトーチ傾斜角のポジションを、極めて簡単に、例えば球継手の位置から機械的又は電子的に決定することができる。
【0067】
本発明の更なる目的、利点、特徴、並びに適用可能性は、図面に基づく実施例の以下の説明から読みとれる。この際、本明細書に記載された全ての特徴及び/又は本図面に図示された全ての特徴は、それら自体で又はそれらの有意義な任意の組み合わせとして、請求項又は請求項の従属関係におけるそれらの関連付けに依存せずとも、本発明の対象を構成するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】バイパス開口部を有するトーチと、吸引装置とを備えた、加工物を熱接合するための一装置を示す図である。
図2図1のトーチを、傾き角ないしトーチ傾斜角を有するトーチポジションにおいて、a)側面図として、b)斜視図として示す図である。
図3】外部の煙吸引装置を備えた一トーチを示す図である。
図4】a)吸引ホースのための接続ハウジング、及びb)バイパス開口部を有する接続ハウジングを示す図である。
図5】トーチのハンドルに配設された一センサ手段を示す図である。
図6】球継手内に配設されたセンサ手段を、a)透視側面図として、b)断面図として示す図である。
図7】絞りを備えた接続ハウジングを示す図である。
図8】吸引装置において、a)バイパス開口部、及びb)絞りを示す図である。
図9】トーチを備えた一溶接ロボットを示す図である。
【実施例
【0069】
読みやすさを良くするために、同じ構成部材、又は同様に作用する構成部材には、実施形態に基づき以下で説明される図面の各図において、同じ符号が付けられている。
【0070】
図1から、加工物(ワークピース)を熱接合するための装置10が見てとれ、当該装置10は、トーチ1と、溶接時、切断時、又はろう付け時に発生する煙ガス(ヒュームガス)を吸引するための吸引装置2とを有する。
【0071】
トーチ1は、加工過程中には(利用者の)手案内で、又は操作装置、特に溶接ロボット21により案内されることが可能である。この種の溶接ロボット21は、図9により具体的に示されている。図1図2図3図5は、ハンドトーチを示している。
【0072】
当該装置10は、様々な溶接法を実行するために適しており、例えば、ビーム溶接法、ガス溶融溶接法、又はアーク溶接法であり、特に保護ガスアーク溶接法を実行するのに適している。また当該装置10は、例えばプラズマ切断法又はレーザ切断法を実行するための切断装置として構成されていることも可能である。
【0073】
同様に図1から、トーチ1と接続された吸引装置2を見ることができ、吸引装置2は、トーチ側の吸引ホース8と、接続部14を備えた接続ハウジング15と、吸引機16内に案内されている吸引装置側に吸引ホース12とを有する。
【0074】
吸引装置2は、更に吸引パイプ18と吸引ノズル13を有する。
【0075】
図3により、トーチ1内に組み込まれていない吸引装置2を備えたトーチ1を見ることができる。吸引パイプ18と吸引ノズル13を備えた吸引ホース8は、トーチ1とは別個に延在している。
【0076】
図1図2図5図9による実施形態において、吸引装置2は、トーチ1内に組み込まれている。
【0077】
図5図6に図示されたセンサ手段3は、トーチ1の位置及び/又は位置変更を決定するため、及び/又は、トーチ1の基準位置及び/又は加工すべき加工物の基準位置に対する(相対的な)空間内の基準点の位置及び/又は位置変更を決定するために、特に吸引ノズル13においてトーチ1に作用する吸引装置2の体積流量が、検出されたトーチ1の位置及び/又は位置変更に依存して作用(影響)されるように設けられている。
【0078】
本実施例において、センサ手段3は、トーチ1の回転位置を決定するため、及び/又はトーチ1の回転的な位置変更を決定するため、及び/又はトーチ1の並進的な位置変更を決定するための少なくとも1つのセンサ17を有する。センサ手段3は、トーチ1の並進的及び/又は回転的な運動の速度及び/又は加速度を決定する。
【0079】
例えば、ある溶接装置において、溶接電流の振幅は、トーチを溶接結合部の形成時に互いに溶接すべき加工物に沿って動かす速度に依存して作用されることが可能である。
【0080】
この場合、センサ手段3ないしセンサ17は、トーチ1内に配設され、又はトーチ側の吸引ホース8への接続部内に配設され、好ましくは組み込まれていることが可能である。
【0081】
センサ手段3は、電子的、誘導的、容量的、光学的、及び/又は機械的に作用する少なくとも1つのセンサとして、特に、傾斜センサ、及び/又は加速度センサ、及び/又はジャイロセンサとして構成されていることが可能である。
【0082】
図5により、センサ手段3は、トーチ1のハンドルに配設されている。それらのセンサ手段3は、トーチ1の電流供給のための電気接続部を介して給電されることが可能である。またセンサ手段3は、電池や蓄電池を介し、又は太陽電池を用いて給電されることも考えられる。
【0083】
しかしまたセンサ手段3ないしセンサ17は、ロボット21(図9)において、機械的なトーチガイド19、スイッチオフ装置20、又はアーム22に固定されることも可能である。スイッチオフ装置20は、図9が具体的に示しているように、トーチ1とロボット21の間に設けられている。
【0084】
トーチ1の傾斜に関する制御信号は、ロボット配向情報、又は溶接装置配向情報、特にトーチヘッドの円周溶接装置(オービタル溶接装置)配向情報から導き出されることが可能であり、それにより自動的に吸引装置2の体積流量ないし吸引力を吸引ノズル13に適合させることができる。
【0085】
図6a)と図6b)による本発明の実施例において、少なくとも1つのセンサ17を備えたセンサ手段3は、継手(ジョイント)の領域、ここでは球継手(ボールジョイント)9の領域に設けられていることも可能である。この際、球継手9は、トーチ1とトーチ側の吸引ホース8との間に配設されている。
【0086】
この際、吸引装置2の体積流量に対する作用は、体積流量の値に関し、有利には自動的に行われる。そのために制御及び/又は調整装置(開ループ制御及び/又は閉ループ制御装置)4、5が設けられており、該装置は、センサ3、17の出力信号に基づき、トーチ1の位置ないしトーチ1の位置変更を、好ましくは三次元空間内でも検知し、検知された位置ないし位置変更に依存して吸引装置2の体積流量に対し、体積流量の値に関して作用する。
【0087】
図1から、少なくとも1つのセンサ手段3により検出されたトーチ1の位置及び/又は位置変更に依存してトーチ1における吸引装置2の体積流量を制御(開ループ制御)又は調整(閉ループ制御)するために少なくとも1つのセンサ手段3と接続されたそのような制御又は調整装置4、5を見ることができる。トーチ1の基準位置、及び/又は空間内の基準点は、オペレータにより、及び/又は、制御又は調整装置4、5により選択可能である。
【0088】
制御装置4は、選択されたトーチ1の基準位置、及び/又はセンサ手段3により決定されたトーチ1の位置及び/又は位置変更に依存し、吸引力を所定の特性マップに依存して決定し、該特性マップは、エミッションに関する方法特性値(方法特性パラメータ)を考慮し、特に電流強さ、好ましくは有効電流強さ及び/又はピーク電流強さ、溶接出力、及び/又は溶接速度、並びにワイヤ直径ないし電極直径、添加材料の種類、及び保護ガスの種類について、方法特性値を考慮する。これらの方法特性値は、プロセスパラメータとして溶接電源23内に存在する(保存される)。
【0089】
通常は、発生する溶接煙量は、平均電流強さ或いは溶融量の増加とともに増加する。同じことがエミッションを同様に増加させる活性ガス成分における混合剤にも当てはまる。それに対し、パルス溶接プロセスでは、パルス周波数とパルス電流強さの双方において、局所的なエミッション最小値が形成される。
【0090】
本実施例において、吸引力は、傾き角ないしトーチ傾斜角6の増加とともに増加されるべきであり、この際、特性曲線の立ち上がりを、手動で、プログラムを介して、又は溶接法に依存して、及び/又はトーチ形式に依存してスライドさせることができる。この際、傾き角ないしトーチ傾斜角6は、図2a)と図2b)から見てとれるように、送り方向又はその逆方向における(大きく鋭角的に)突き刺すような又は(小さく鋭角的に)引きずるようなトーチ傾斜角と、送り方向に対して直角の側方の傾斜角とから得られる。
【0091】
この際、吸引装置2の体積流量は、傾き角ないしトーチ傾斜角6の増加とともに、好ましくは連続的に増加する。
【0092】
図1図2から、吸引ノズル13における体積流量は、トーチにおけるガス流のための少なくとも1つのバイパス開口部7の変化により調整されることが見てとれる。
【0093】
図4a)による実施形態では、トーチ側の吸引ホース8及び吸引機側の吸引ホース12のための接続ハウジング15を見ることができ、接続ハウジング15は、図4b)により、バイパス開口部7を有する。
【0094】
図8a)により、バイパス開口部7は、吸引装置2に配設されている。非図示の一実施形態では、バイパス開口部7は、吸引機側の吸引ホース12に設けられていることも可能である。
【0095】
図7は、吸引機側の吸引ホース12と、吸引ノズル13における体積流量を変化させるための1つ又は複数の絞り11とを備えた、トーチ側の吸引ホース8のための接続ハウジング15を示している(図1も参照)。図8b)により、絞り11が吸引装置2に設けられている。非図示の一実施形態では、絞り11は、トーチ1に、トーチ側の吸引ホース8に、又は吸引機側の吸引ホース12に設けられていることも可能である。
【0096】
トーチ1の傾斜に関する制御信号は、トーチヘッドのロボット配向情報から導き出されることが可能である。
【0097】
本発明による装置を用いることにより、トーチ1の位置変更は、同じ加工物に対する作用中に検知されることが可能である。また位置変更後に別の加工物に対して行われる位置変更を検知することも可能である。例えば1つの溶接装置を用いて第1加工物に関する溶接課題が実行される場合には、例えば別の加工物への交換を本発明によるセンサ手段3により検知することができ、体積流量の値をこの加工物に関して実行すべき溶接課題に適合させることができる。
【0098】
しかしまた、センサ手段3の出力信号に基づき、新しい加工物に対して位置変更後の体積流量の自動的な適合を考慮することもできる。この適合は、例えば、予め定められた順番で、空間的に互いに離された異なる加工物を加工すべき場合に考えられる。
【0099】
図1図2図4b)、図7は、吸引装置2における体積流量が、吸引装置2の吸引ホース8におけるガス流、又は吸引側の接続部14におけるガス流のための少なくとも1つのバイパス開口部7の変化により、或いは、吸引流路内の1つ又は複数の絞り11、又は吸引装置2の吸引ノズル13における1つ又は複数の絞り11、好ましくは吸引パイプの接続ハウジング15の移行部材における1つ又は複数の絞り11の変化により調整されることを示している。それらの絞り11は、絞り弁(スロットルバルブ)の形式で構成されていることが可能である。
【0100】
センサ手段3と吸引力の制御装置4との間の信号伝達は、ケーブルを介し、或いは無線又は光信号を用いてケーブルを用いないで行うことができる。
【符号の説明】
【0101】
1 トーチ
2 吸引装置
3 センサ手段
4 制御装置
5 調整装置
6 傾き角ないしトーチ傾斜角
7 バイパス開口部
8 トーチ側の吸引ホース
9 継手(ジョイント)
10 当該装置
11 絞り
12 吸引機側の吸引ホース
13 吸引ノズル
14 吸引機側の接続部
15 接続ハウジング
16 吸引機
17 センサ
18 吸引パイプ
19 機械的なトーチガイド
20 スイッチオフ装置
21 溶接ロボット
22 ロボットのアーム
23 溶接電源
図1
図2a)】
図2b)】
図3
図4a)】
図4b)】
図5
図6a)】
図6b)】
図7
図8a)】
図8b)】
図9