(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】押さえ部材、耐火区画構造、耐火区画構造の構築方法、及び防火措置具
(51)【国際特許分類】
F16L 5/04 20060101AFI20241114BHJP
F16L 5/10 20060101ALI20241114BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F16L5/04
F16L5/10
F16L5/02 F
(21)【出願番号】P 2022005835
(22)【出願日】2022-01-18
(62)【分割の表示】P 2020186596の分割
【原出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020035853
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕生
(72)【発明者】
【氏名】勝部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】清水 明
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-059871(JP,A)
【文献】特開2018-105376(JP,A)
【文献】特開2018-183909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/04
F16L 5/10
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を複数に区画する区画体に形成された貫通孔に長尺体を挿通した区画貫通構造に設置される耐火区画構造であって、熱により膨張するように構成される熱膨張材と前記熱膨張材を前記長尺体のまわりで保持すると共に前記区画体に沿った平板状のフランジを有する保持部材とを含む防火措置具を備える耐火区画構造に適用される押さえ部材であって、
前記長尺体が貫通する補助孔を有し、前記防火措置具に対して前記長尺体の貫通方向の一方及び/又は他方側に配置されて前記補助孔に貫通した前記長尺体の外周面に直接又は間接に接触されると共に、外周縁が前記フランジの外周縁に沿った位置で前記区画体に接するように構成される押さえ部材。
【請求項2】
空間を複数に区画する区画体に形成された貫通孔に長尺体を挿通した区画貫通構造に設置される耐火区画構造であって、
前記貫通孔に配置され、熱により膨張するように構成される熱膨張材を前記長尺体のまわりで保持すると共に前記区画体に沿った平板状のフランジを有する保持部材と、
前記長尺体が貫通する補助孔を有し、前記保持部材に対して前記長尺体の貫通方向の一方及び/又は他方側に配置されて前記補助孔に貫通した前記長尺体の外周面に直接又は間接に接触されるように構成される押さえ部材と、を備える耐火区画構造。
【請求項3】
空間を複数に区画する区画体に形成された貫通孔に長尺体を挿通した区画貫通構造に対し、熱により膨張するように構成される熱膨張材を前記長尺体のまわりで保持すると共に平板状のフランジを有する保持部材を配置する配置工程と、
押さえ部材を、前記
保持部材に対して前記長尺体の貫通方向の一方及び/又は他方側に配置する押さえ取付工程と、を備え、
前記配置工程では、前記フランジが前記区画体に沿うように前記保持部材を配置し、
前記押さえ部材は、前記長尺体が貫通する補助孔を有し、前記配置された状態で前記補助孔に貫通した前記長尺体の外周面に直接又は間接に接触されるように構成される、耐火区画構造の構築方法。
【請求項4】
空間を複数に区画する区画体に形成された貫通孔に長尺体を挿通した区画貫通構造に設置され、熱により膨張するように構成される熱膨張材を前記熱膨張材を前記長尺体のまわりで保持すると共に前記区画体に沿った平板状のフランジを有する保持部材と、
前記長尺体が貫通する補助孔を有し、前記
保持部材に対して前記長尺体の貫通方向の一方及び/又は他方側に配置されて前記補助孔に貫通した前記長尺体の外周面に直接又は間接に接触されるように構成される押さえ部材と、を備える防火措置具。
【請求項5】
空間を複数に区画する区画体に形成された貫通孔に長尺体を挿通した区画貫通構造に設置される耐火区画構造であって、熱により膨張するように構成される熱膨張材と前記熱膨張材を前記長尺体のまわりで保持する保持部材とを含む防火措置具を備える耐火区画構造に適用される押さえ部材であって、
前記長尺体が貫通する補助孔と、
前記補助孔から前記押さえ部材の外縁側に延びる複数の切込線部と、を備え、
前記防火措置具に対して前記長尺体の貫通方向の一方及び/又は他方側に配置されて前記補助孔に貫通した前記長尺体の外周面に直接又は間接に接触されるように構成され、
前記複数の切込線部により拡開部が規定され、
前記拡開部は前記補助孔の大きさを変更すべく屈曲可能に構成され、
前記補助孔の径方向における前記拡
開部の中間部に周方向切込線が形成されている、押さえ部材。
【請求項6】
空間を複数に区画する区画体に形成された貫通孔に長尺体を挿通した区画貫通構造に設置される耐火区画構造であって、熱により膨張するように構成される熱膨張材と前記熱膨張材を前記長尺体のまわりで保持する保持部材とを含む防火措置具を備える耐火区画構造に適用される押さえ部材であって、
前記長尺体が貫通する補助孔を有し、前記防火措置具に対して前記長尺体の貫通方向の一方及び/又は他方側に配置されて前記補助孔に貫通した前記長尺体の外周面に直接又は間接に接触されるように構成され、
当該押さえ部材は、シート状で且つ前記補助孔の貫通方向から見てC字状の状態で形成されており、周方向の両端が重ねられることによって前記貫通方向の一方側から他方側に向けて拡がるように形成される、押さえ部材。
【請求項7】
前記補助孔から前記押さえ部材の外縁側に延びる複数の切込線部を備え、
前記複数の切込線部により拡開部が規定され、
前記拡開部は前記補助孔の大きさを変更すべく屈曲可能に構成される、請求項1又は6に記載の押さえ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁や床などの区画体により区画した空間への延焼を防止できる遮塞体、防火措置具及び耐火区画構造に関する。
【背景技術】
【0002】
壁などの区画部で区画された複数の空間にわたって配管やケーブルなどの円筒状の長尺体を区画部の貫通孔に挿入して敷設する場合、一方の空間で発生した火災が区画部をはさんだ他方の空間へ延焼することを防止するため、貫通孔と長尺体の隙間に耐火材を埋める防火措置を行う必要がある。
【0003】
従来の防火処理方法として、特許文献1に記載された方法が存在する。この方法は、防火区画体の孔に複数の長尺体を挿通した後、前記防火区画体により区画された複数の空間において、前記長尺体の周囲に、前記防火区画体の孔の長さより短く構成され、二つ割り状に形成された一対の筒体と、前記筒体の内面に取り付けられた熱膨張性耐火材シートと、前記筒体の一端に形成されるフランジ部から構成される防火処理部材を配置する。続いて、前記複数の空間で前記複数の長尺体を囲むようにして前記一対の筒体を結合した後、前記フランジ部が防火区画体の壁面に当接するまで防火処理具を孔に挿入する。この防火処理方法によれば、火災が発生した際に、火災にさらされて、熱膨張性耐火材シートが膨張し、複数の長尺体と孔との隙間を塞ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、火災の熱により前記熱膨張性耐火材シートを膨張させただけでは、孔内に隙間が残ってしまう。そのため、火災による圧力差や温度差によって、熱が前記隙間を通り、一方の空間から他方の空間へ伝わりやすくなる。よって、他方の空間の温度が上昇して、延焼が早まる。
【0006】
そこで、本発明は、他方の空間への熱の流出を防止し、延焼を防止できる遮塞体、防火措置具及び耐火区画構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空間を複数に区画する区画体に形成された貫通孔に長尺体を挿通した区画貫通構造に設置される耐火区画構造に適用される遮塞体であって、前記耐火区画構造は、熱により膨張するように構成され、前記長尺体のまわりに覆うように設けられる熱膨張材と、前記熱膨張材を前記長尺体のまわりで保持する保持部材と、を備え、前記長尺体の貫通方向において、前記耐火区画構造における熱膨張材よりも一方及び/又は他方側に配置され、前記長尺体が貫通可能に構成されるとともに、前記長尺体の外周面に接触し、前記貫通孔と長尺体との間に隙間を閉塞するように構成されることを特徴とする遮塞体である。
【0008】
前記遮塞体によれば、長尺体の外周面に接触させて、貫通孔と長尺体との間の隙間を閉塞することで、長尺体の外周に隙間が形成されるのを防止することができるから、例えば、一方から他方の空間への熱の流出を防止できる。
【0009】
また、前記熱膨張材が貫通孔内に配置されるとともに、前記保持部材が貫通孔に貫通可能な筒状に形成される耐火区画構造に適用され、前記保持部材における筒形状の一方及び/又は他方側の開口を閉塞するように構成されることを特徴とする。
【0010】
前記遮塞体によれば、筒形状の一方及び/又は他方側の開口を閉塞するように構成されるため、開口から他方の空間への熱の流出を防止できる。
【0011】
また、前記貫通孔に複数の長尺体を挿通した区画貫通構造に設置される耐火区画構造に適用され、前記複数の長尺体のうち、隣り合う長尺体の外周同士で形成される凹部を埋める隙間閉塞部を備えることを特徴とする。
【0012】
前記遮塞体によれば、前記隙間閉塞部で凹部を埋めることで、より確実に熱が通る隙間を塞ぐことができる。
【0013】
また、上記した熱膨張材と、保持部材と、遮塞体と、を備え、前記熱膨張材と、遮塞体とが、前記保持部材に保持されている防火措置具である。
【0014】
また、上記した耐火区画構造は、上記した遮塞体と、前記複数の長尺体が貫通する補助孔を有し、前記複数の長尺体の外周面に接触される押さえ部材を備え、前記押さえ部材は、前記遮塞体の一方及び/又は他方側に配置され、前記補助孔から外縁側に延びる切込線により周方向に分断されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、切込線による分断で形成された周方向の端部同士が厚み方向で重なることにより、例えば、前記長尺体の貫通方向において、前記押さえ部材が一方の空間側から他方の空間側に向かって拡がるように形成されるため、前記熱膨張材の膨張、配管の伸縮に伴って、前記隙間閉塞部が出てきても押さえ部材で隠すことができるとともに、前記隙間閉塞部が外れることを押さえ部材で防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明の遮塞体、防火措置具及び耐火区画構造によれば、貫通孔と長尺体との間の隙間を閉塞することで、他方の空間への熱の流出を防止し、延焼を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の遮塞体が用いられた耐火区画構造の斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る防火措置具の斜視図である。
【
図4】(a)は同防火措置具の遮塞体の正面図であり、(b)は熱膨張材の平面図である。
【
図5】同実施形態に係る防火措置具配置工程の挿入工程を示す図である。
【
図6】同実施形態に係る防火措置具配置工程の熱膨張材押込工程を示す図である。
【
図7】同実施形態に係る防火措置具配置工程の隙間閉塞部押込工程を示す図である。
【
図8】同実施形態に係る長尺体巻回工程を示す図である。
【
図9】同実施形態に係る長尺体巻回部を束縛巻回した複数の長尺体の断面図である。
【
図10】他の実施形態に係る押さえ部材の正面図である。
【
図11】他の実施形態に係る耐火区画構造の斜視図である。
【
図12】別実施形態に係る押さえ部材の正面図である。
【
図13a】別実施形態に係る押さえ部材の正面図で、周方向の端部同士が重なった状態を示す。
【
図13b】別実施形態に係る押さえ部材の右側面図で、周方向の端部同士が重なった状態を示す。
【
図14】別実施形態に係る押さえ部材を適用した防火措置構造の斜視図である。
【
図15】別実施形態に係る押さえ部材を適用した防火措置構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明する。
図1は、本実施形態の耐火区画構造1を示す。本実施形態の耐火区画構造1は、建築物内の空間を複数の空間に区画する区画体20に形成した貫通孔200に、被覆材212によって配管213の外周が被覆された被覆配管211を少なくとも一本含む複数の長尺体21を挿通した区画貫通構造2に設置される。なお、以下において、便宜的に、区画体20により区画された空間のうち、
図1の左側に示す空間を「一方の空間」と称し、
図1の右側に示す空間を「他方の空間」と称して説明する。
【0019】
本実施形態において、区画貫通構造2は、区画体20の厚み方向に貫通するように形成された貫通孔200に、複数の長尺体21を挿通して構成される。本実施形態の区画体20は、建物内の空間を一方の空間と他方の空間に区画する壁である。前記区画体20は、建物内において鉛直方向に沿うように立設され、空間を水平方向で複数(本実施形態では2つ)に区画する。壁としての区画体20は、鉄筋コンクリートなどで形成された中実壁や中空壁が該当する。本実施形態では、区画体20が中実壁であることを前提として説明を行う。
【0020】
本実施形態では、区画体20には、一方から他方へ向けて丸く貫通した貫通孔200が形成されている。本実施形態の貫通孔200は、区画体20の厚み方向に真っすぐに伸び、区画体20によって区画された一方の空間と他方の空間を貫通するように形成されている。そして、貫通孔200には、前記被覆配管211を二本含んだ複数(本実施形態では四本)の長尺体21が挿通され、前記複数の長尺体21は、区画体20により区画された一方の空間と他方の空間にまたがって延びる。
【0021】
被覆配管211は、長尺体21としての配管213と、該配管213の外周を被覆する被覆材212から構成される。前記配管213は、例えば冷媒などの流体(気体や液体)を流す銅管である。また、被覆材212は、配管213を保護したり、保温、遮音したりする性質を有し、さらに、熱により膨張する性質を有する樹脂発泡体である。前記被覆材212としては、例えば、内部に冷媒を通す配管の外周を覆い、配管を保温する保温材が該当する。本実施形態の被覆材212は、熱により膨張して体積が増加するポリエチレンフォームからなる樹脂発泡体である。
【0022】
本実施形態では、前記被覆配管211以外の長尺体21として、電気配線21と電気配線より大きい塩化ビニル管21が貫通孔200を挿通している。さらに、本実施形態では、各長尺体21は円筒状に形成され、各長尺体21同士の外周面が接触した状態で、複数の長尺体21が貫通孔200に挿入されている。そのため、隣接する長尺体21の外周同士の間には、隙間空間210が形成されている。この隙間空間210は、複数の長尺体21の略中央に形成された中心凹部210aと、複数の長尺体21の外周に形成される凹部210bと、から構成される。
【0023】
耐火区画構造1は、
図1に示すように、前記区画貫通構造2に設置される。前記耐火区画構造1は、区画貫通構造2に取り付けられる防火措置具10と、複数の長尺体21を帯状に巻回するように構成される長尺体巻回部11を備える。また、本実施形態の防火措置具10は、
図1に示すように、複数の長尺体21に巻き付けられた状態で、貫通孔200内に挿入されている。そして、前記防火措置具10は、貫通孔200の全域にわたって配置されている。さらに、本実施形態の防火措置具10は、保持部材100と、遮塞体101と、熱膨張材103と、を備える。
【0024】
図2は、区画貫通構造2に取り付ける前の防火措置具10を示す。この防火措置具10は、貫通孔200の全周に亘り、かつ、貫通方向の全域に亘るように円筒状に形成され、内部に複数の長尺体が挿通されるように構成される。この防火措置具10では、熱膨張材103が保持部材100の内周面に沿うように内巻きに配置されている。また、熱膨張材103は、保持部材100のフランジ部1001より軸方向に突出している。そして、フランジ部1001の底面に沿って、保持部材100の周方向に配置された遮塞体101では、
図2に示すように、径方向に延びる隙間閉塞部101eが熱膨張材103の外周面に沿って折り曲げられ、フランジ部1001より軸方向に突出している。すなわち、本実施形態の防火措置具10は、区画貫通構造2に取り付ける前の状態において、保持部材100のフランジ部1001より軸方向に熱膨張材103と遮塞体101が突出しており、径外側から径内側に向かってフランジ部1001(保持部材100)、遮塞体101、熱膨張材103の順に配置されている。
【0025】
図3は、本実施形態の保持部材100を示す。前記保持部材100は、熱膨張材103を長尺体21のまわりで保持する。本実施形態の保持部材100は、
図1に示すように、貫通孔200に挿入可能な円筒状に構成されている。また、本実施形態の保持部材100は、丸孔状の貫通孔200に対応するために、周方向の一部が軸方向に切り開かれたC字型の筒状に形成されている。そして、保持部材100の軸方向の長さは、貫通孔200の貫通方向の長さと略同一であり、周方向の長さは、貫通孔200の内周面の長さより小さく形成されている。この保持部材100は、周方向の端部1000e(切り開かれた一対の端部)同士を近づけることにより、縮径させることができる。これにより、貫通孔200の大きさに合わせて、防火措置具10の外周を変形させることができる。本実施形態では、縮径前の状態にある保持部材100の外径が貫通孔200の内周と略同一であるため、保持部材100を縮径させない場合についての説明を行う。さらに、この保持部材100には、後述する熱膨張材103や遮塞体101が取り付けられる。本実施形態の保持部材100は、筒状のスリーブ本体部1000と、該スリーブ本体部1000から径外方向に突出するフランジ部1001と、を備える。
【0026】
スリーブ本体部1000は、保持部材100を貫通孔200に挿入した際に貫通孔200の内面に沿う保持部材100の本体となる部分である。本実施形態のスリーブ本体部1000は周方向の一部が軸方向に沿って切り開かれたC字型の筒状に形成されている。そのため、切り開かれた部分において周方向の端部1000eが一対規定される。また、スリーブ本体部1000は、軸方向で熱膨張材103を支持する内側突出部1000dと、熱膨張材103を保持部材100の内周面に沿わせるようにして取り付ける熱膨張材取付部1000cと、遮塞体101を取り付けるためのスリット部1000aと、を備える。
【0027】
内側突出部1000dは、スリーブ本体部1000の軸方向における一方の端部に形成されている。この内側突出部1000dは、C字型の筒状のスリーブ本体部1000の径内方向に突出する。この内側突出部1000dにより、
図2に示すように、熱膨張材103を保持部材100の内周面に重ねて配置した状態において、熱膨張材103を軸方向の端部で受け止め支持できる。また、この内側突出部1000dは、所定の周方向の幅を有し、径内方向に突出するにつれて、前記周方向の幅が狭くなる台形状に形成されている。そして、前記内側突出部1000dの径内方向の端部が軸方向に曲がっている。本実施形態では、周方向に四つの内側突出部1000dが間隔をあけて配置されている。また、周方向における内側突出部1000d同士の間は、後述する貫通部1000bの周方向における大きさと略同じである。
【0028】
熱膨張材取付部1000cは、熱膨張材103を保持部材100の内周面に沿って配置して係止するためのものである。本実施形態の熱膨張材取付部1000cは、熱膨張材103の挿通孔103aに挿入される二股状の係止爪1000cbと、前記係止爪1000cbと係合することで熱膨張材103を取り付ける係止部1000caと、を備える。そして、スリーブ本体部1000から径内方向に突出する係止部1000caを係止爪1000cb側に屈曲させ、係止部1000caの孔に係止爪1000cbを挿入して、熱膨張材取付部1000cを形成する。また、本実施形態では、周方向に三つの熱膨張材取付部1000cが配置され、熱膨張材取付部1000c同士の周方向の間には、前記内側突出部1000dが配置されている。さらに、本実施形態のスリーブ本体部1000では、熱膨張材取付部1000cが形成される箇所の厚みが薄くなっている。
【0029】
スリット部1000aは、
図3に示すように、スリーブ本体部1000の周方向に沿って延びるとともに、スリーブ本体部1000の厚み方向に貫通して形成されている。このスリット部1000aは、後述する遮塞体101を保持部材100に取り付ける際に利用される。また、本実施形態のスリット部1000aは、スリーブ本体部1000において、周方向が軸方向より長い略長方形状であって、スリーブ本体部1000の周方向に三つ配置されている。さらに、スリット部1000aの端縁は、スリーブ本体部1000と後述するフランジ部1001によって規定されている。よって、本実施形態のスリット部1000aは、
図3に示すように、スリーブ本体部1000の軸方向における他方の端部側に配置されている。
【0030】
本実施形態のスリーブ本体部1000には、厚み方向に貫通した貫通部1000bが形成されている。この貫通部1000bは、
図3に示すように、スリーブ本体部1000の周方向に三つ形成されている。また、前記貫通部1000bは、後述するフランジ部1001が形成される側の軸方向の端部から反対側の端部に向かうにつれて、幅が大きくなる台形状に形成されている。
【0031】
スリーブ本体部1000の軸方向における他方の端部には、径外方向に突出するフランジ部1001が形成されている。このフランジ部1001は、防火措置具10を貫通孔200に挿入した際、区画体20の外面に当接される。即ち、スリーブ本体部1000が貫通孔200内に挿入され、フランジ部1001が区画体20の外面における貫通孔200の開口縁部に当接された状態で、保持部材100は貫通孔200に設置される。本実施形態のフランジ部1001は、スリーブ本体部1000から径外方向に向かって延びる状態で、全周に設けられる板状に形成されている。また、本実施形態では、スリーブ本体部1000が丸孔状の貫通孔200の内面に沿うようにC字型の円筒状に形成されているため、フランジ部1001はスリーブ本体部1000の切開位置と同じ位置において切開されたC字型の環状に形成される。このフランジ部1001には、防火措置具10を区画体20に固定させる際に使用するビス止め孔1001aと、フランジ部1001の外周から径内方向に切り欠いた切り欠き部1001bと、固定金具(図示しない)を取り付けるための固定金具取付部1001cが形成されている。本実施形態のビス止め孔1001aは、フランジ部1001の外周が径外方向に突出した箇所に形成されている。また、切り欠き部1001bは、フランジ部1001の周方向に複数(本実施形態では5つ)配置され、その一部が固定金具取付部1001cが設けられる位置と同じ位置に配置されている。
【0032】
また、本実施形態のフランジ部1001の内周には、径外方向に凹んだ窪み部1001dが形成されている。この窪み部1001dは、フランジ部1001のうち、前記スリット部1000aを規定する箇所に形成されている。そして、前記窪み部1001dは、
図2に示すように、区画貫通構造2に取り付ける前の防火措置具10において、遮塞体101の隙間閉塞部101eが防火措置具10から径外方向に拡開するために機能する。
【0033】
図4(a)は、本実施形態の遮塞体101の平面図を示す。本実施形態の遮塞体101は、外縁にビス止め部101fが形成された略円形のシート状に形成され、中央には長尺体21を挿通するための円形の補助孔101aが形成されている。また、前記補助孔101aから遮塞体101の外縁に向かって延びる切込線部101bと、円形の遮塞体101を径方向で分断する分断線部101cと、を備える。前記切込線部101bは、遮塞体101を径方向及び厚み方向で切断するように形成されている。また、本実施形態の切込線部101bは、補助孔101a側から外縁側に向かうにつれて、切込線部101b同士の間隔が大きくなる放射状に複数配置されている。そして、本実施形態では、補助孔101aから外縁までの切込み長さが長い第一切込線部101baと、前記第一切込線部101baよりも切込み長さが短い第二切込線部101bbが周方向に交互に配置されている。さらに、前記分断線部101cは、
図4(a)に示すように、第二切込線部101bbの間の位置に配置されている。
【0034】
本実施形態では、遮塞体101の周方向における切込線部101b同士の間、或いは分断線部101cと切込線部101bの間は、隙間閉塞部101eとして規定される。本実施形態の遮塞体101では、隙間閉塞部101eは、径内方向に延設されており、周方向全周にわたるように複数並べて設けられており、第一切込線部101baと第二切込線部101bbが交互に配置されている。そのため、第一切込線部101ba又は分断線部101cと第二切込線部101bbとの間は、小隙間閉塞部101ebとして規定され、第一切込線部101ba同士又は分断線部101cと第一切込線部101baの間は、大隙間閉塞部101eaが規定される。そして、本実施形態の隙間閉塞部101eは、遮塞体101の中央位置に近づくにつれて幅狭となるテーパ状になっている。
【0035】
本実施形態の遮塞体101は、保持部材100に取り付けるための取付孔101dを備える。この取付孔101dは、遮塞体101の外縁から中央に向かって形成されている。また、本実施形態では、周方向に四つの取付孔101dが配置されている。具体的には、スリーブ本体部1000の周方向の端部1000eに取り付ける第一取付孔101daと、二つのスリット部1000aの間のスリーブ本体部1000を取り付ける第二取付孔101dbと、を備える。そして、
図4(a)の上側には、周方向において、分断線部101cをはさむように、二つの第一取付孔101daが配置され、下側には、二つの第二取付孔101dbが配置されている。前記第一取付孔101daは、遮塞体101の外縁から中央に向かって延びる切込線と、該切込線の中心側の端部から周方向への切り欠きによって形成されている。一方で、第二取付孔101dbは、遮塞体101の外縁から内側にT字状に切り欠かれている。そして、本実施形態では、第一取付孔101daと第二取付孔101dbの間と、二つの第二取付孔101dbの間に、スリーブ本体部1000のスリット部1000aに挿入されるスリット挿入部101gが規定されている。本実施形態では、スリット挿入部101gをスリット部1000aに挿入するとともに、第二取付孔101dbにスリット部1000a同士の隙間を挿入し、第一取付孔101daに、スリーブ本体部1000の周方向の端部1000eを挿入することで、
図2に示すように、分断線部101cをスリーブ本体部1000の周方向の端部1000e同士の間に配置して、遮塞体101を保持部材100に取り付ける。また、本実施形態では、保持部材100に取り付けられた遮塞体101は、
図2に示すように、フランジ部1001の底面側(区画体20の外面に対向する側の面側)に配置される。ここで、本実施形態の遮塞体101の厚みは、スリット部1000aの軸方向における長さより短く形成されている。そのため、前記スリット挿入部101gをスリット部1000aに挿入しやすい。また、保持部材100に取り付けた後において、遮塞体101が保持部材100の軸方向に動くことが許容される。さらに、遮塞体101をフランジ部1001の底面側に配置した際、前記ビス止め部101fは、フランジ部1001のビス止め孔1001aに重なるように配置される。そのため、ビスで保持部材100と遮塞体101を区画体20に固定できる。なお、本実施形態の遮塞体101は、熱膨張性(熱によって体積が増加する性質)と、耐火性(火に耐えて燃えにくい性質)と、断熱性(熱を伝えにくい性質)のうち、少なくとも一つの性質を備える。
【0036】
本実施形態の熱膨張材103は、火災の熱により膨張し、貫通孔200の内面と複数の長尺体21の外周面との隙間を埋める。具体的に、本実施形態の熱膨張材103は、熱によって膨張する性質を有する耐火材1031と、前記耐火材1031を密封し、柔軟性を有する袋1030からなる。また、前記耐火材1031は、耐火性(火で耐えて燃えにくい性質)と、熱膨張性(熱によって体積が増加する性質)と、熱硬化性(熱によって固まる性質)を備える。さらに、本実施形態の耐火材1031は、ペースト状である。そのため、
図2に示すように、耐火材1031を密封した袋1030をC型の円筒状に湾曲した保持部材100の内周面に沿って配置できる。
【0037】
袋1030は、耐火材1031を収納した状態で、周縁部を封止している。本実施形態の袋1030は長方形状に形成されており、長辺が保持部材100の内周よりも長く形成されている。また、袋1030の短辺は、保持部材100の軸方向の長さより長い。さらに、封止した周縁部の長辺には、所定間隔ごとに挿通孔103aが形成されている。具体的には、本実施形態の袋1030では、三つの挿通孔103aが形成され、これらの挿通孔103aは、長方形状の袋1030の一方の短辺近傍で間隔をあけて配置される。本実施形態において、前記間隔は、スリーブ本体部1000の熱膨張材取付部1000c同士の間隔と同一である。そのため、熱膨張材103を保持部材100に固定させる際には、前記挿通孔103aと熱膨張材取付部1000cを利用して取り付ける。具体的には、前記挿通孔103aが形成された長辺を袋1030内面に向かって折り曲げた後、前記一方の短辺をスリーブ本体部1000の周方向の端部1000eに合わせ、挿通孔103aに係止爪1000cbを挿通させながら、熱膨張材103をスリーブ本体部1000の内周面に沿わせて配置し、係止部1000caを係止爪1000cb側に屈曲させ、係止部1000caの孔に係止爪1000cbを係合させることで取り付けを行う。
【0038】
本実施形態の長尺体巻回部11は、
図1に示すように、貫通孔200の貫通方向における防火措置具10より一方の空間側に配置され、複数の長尺体21の外周を巻回している。前記長尺体巻回部11は帯状に形成され、複数の長尺体21の外周に巻回するべく、複数の長尺体21の外周より長く形成されている。また、本実施形態の長尺体巻回部11には、複数の長尺体21の外周面に接触する側の面の短辺に粘着性部材が塗布されている。そのため、長尺体巻回部11を複数の長尺体21に巻回した際に、粘着性部材で長尺体巻回部11を複数の長尺体21の外周に固定させることができる。なお、粘着性部材は、複数の長尺体21の外周面に接触する側の面の全域に設けることもできるし、一部に設けることもできる。
【0039】
以上が、本実施形態の耐火区画構造1についての説明である。続いて、本実施形態の耐火区画構造1の構築方法について説明する。本実施形態の耐火区画構造1を構築する場合、防火措置具配置工程と、長尺体巻回工程と、を行う必要がある。
【0040】
図5は、防火措置具配置工程の挿入工程を示す。この挿入工程では、一方の空間において、貫通孔200を通って複数の空間に延びる複数の長尺体21の外周に、防火措置具10を取り付けた後、該防火措置具10を貫通孔200に挿入する。この際、スリーブ本体部1000の周方向の端部1000e同士を拡開させるとともに、熱膨張材103の周方向の両端部が重なった状態を解消させる。これにより、周方向の端部1000eの間に配置されている遮塞体101の分断線部101cが周方向に拡開し、
図5において二点鎖線で示すように、複数の長尺体21の外周に防火措置具10を取り付けることができる。ここで、本実施形態においては、
図5に示すように、遮塞体101はフランジ部1001の底面と離れて配置されている。なお、本実施形態では、一方の空間において、スリーブ本体部1000のフランジ部1001が形成されている端部とは逆の端部が貫通孔200側に位置するように、防火措置具10を配置する。
【0041】
防火措置具10を複数の長尺体21の外周に沿って取り付けた後は、防火措置具10を他方の空間側に向かって、長尺体21に沿うようにスライドさせ、フランジ部1001の底面と重なる遮塞体101が区画体20の外面に当接するまで、防火措置具10を貫通孔200に押し込む。遮塞体101が区画体20の外面に当接した後、フランジ部1001を貫通孔200の方向に動かすことで、フランジ部1001と遮塞体101との間隔が埋まるとともに、区画体20の外面とフランジ部1001の底面とにより遮塞体101が挟まれる。その後、ビス止め部101f及びビス止め孔1001a(
図5において図示しない)にビスを挿入し、防火措置具10を区画体20に固定させる。
【0042】
図6は、防火措置具配置工程の熱膨張材押込工程を示す。この熱膨張材押込工程では、保持部材100の軸方向の長さよりに長く、フランジ部1001から軸方向に突出している熱膨張材103を貫通孔200の方向に折り曲げて、貫通孔200に押し込む。この際、
図6において二点鎖線で示す熱膨張材103を、
図6の矢印で示すように長尺体21側に折り曲げる。そして、熱膨張材103と複数の長尺体21との間の隙間を埋めるようにして、熱膨張材103を貫通孔200内に押し込む。また、
図6に示すように、熱膨張材103を貫通孔200に押し込む際は、熱膨張材103が遮塞体101よりも貫通孔200側に配置されるように押し込む。これにより、熱膨張材103を貫通孔200内に収納することができる。また、前記熱膨張材103を貫通孔200に収納することで、熱膨張材103の外周面に沿って折り曲げられていた隙間閉塞部101eが、長尺体21の外周に沿うこととなる。
【0043】
図7は、防火措置具配置工程の隙間閉塞部押込工程を示す。この隙間閉塞部押込工程では、複数の長尺体21の外周に沿うように突出している隙間閉塞部101eを貫通孔200に押し込む。ここで、本実施形態の複数の長尺体21は、長尺体21同士の外周面が接触した状態で、貫通孔200に挿入されている。そのため、
図9に示すように、長尺体21同士の間には隙間空間210として凹部210bが形成されている。そこで、隙間閉塞部押込工程では、凹部210bを埋めるように、隙間閉塞部101eを貫通孔200に押し込む。具体的には、隙間閉塞部101eを貫通孔200内の方に折り曲げた後、フランジ部1001側に折り返し、再度、隙間閉塞部101eを貫通孔200内の方に折り曲げ、熱膨張材103と長尺体21との間に押し込んで、貫通孔200に挿入する。ここで、本実施形態では、隙間閉塞部101eが大隙間閉塞部101eaと小隙間閉塞部101ebを備えるところ、大隙間閉塞部101eaで凹部210bが大きく閉塞され、小隙間閉塞部101ebで大隙間閉塞部101eaによって閉塞しきれない凹部210bを閉塞する。そして、
図7に示すように、熱膨張材103よりも複数の長尺体21側に隙間閉塞部101eが配置される。以上が、防火措置具配置工程の説明である。続いて、長尺体巻回工程について説明する。
【0044】
長尺体巻回工程では、長尺体巻回部11を用いて、貫通孔200の貫通方向における防火措置具10よりも一方の空間から他方の空間までの領域で複数の長尺体21を束状に束縛する。本実施形態では、防火措置具配置工程の後、防火措置具10より一方の空間側で、複数の長尺体21に長尺体巻回部11を配置し、
図8に示すように、貫通孔200に挿入された防火措置具10のフランジ部1001の近傍で、複数の長尺体21に長尺体巻回部11を巻回する。また、本実施形態の長尺体巻回部11は、複数の長尺体21の外周面に接触する側の面の短辺に粘着性部材が設けられているため、長尺体巻回部11を巻回する場合は、長尺体巻回部11の粘着性部材を用いて、長尺体21の外周面に、長尺体巻回部11の一方の短辺を貼付け、長尺体巻回部11を複数の長尺体21の外周に沿って巻き付けた後、他方の短辺の粘着性部材を長尺体巻回部11の外面に貼付け、
図9に示すように、長尺体巻回部11を複数の長尺体21に固定させた状態にする。なお、長尺体巻回部11による長尺体21の束縛は、火災の熱により、被覆配管211の被覆材212が束縛部分で膨張しないような適度な締め付けとなる。このようにして、
図1に示す耐火区画構造1を形成する。
【0045】
以上、本実施形態の耐火区画構造1及びその構築方法によれば、貫通方向において、長尺体巻回部11が防火措置具10よりも一方の空間側の所定領域から他方の空間側の所定領域までの領域で複数の長尺体21を束状に束縛することで、被覆材212の径外方向への膨張を規制するから、火災の熱で被覆材212が長尺体21同士の隙間を塞ぐように膨張する。このため、束状になっている長尺体21同士の間の熱の通り道を塞ぐことができる。具体的に、本実施形態では、長尺体巻回部11が一方の空間で、かつ、貫通孔200に挿入される防火措置具10の近くで複数の長尺体21に巻回されている。そのため、他方の空間で火災が発生した場合には、他方の空間から貫通孔200を通って一方の空間に流れてくる熱により膨張する被覆材212を、
図9に示す隙間空間210(凹部210b、中心凹部210a)が塞がるように膨張させる。これにより、熱の通り道を塞ぐことができる。また、本実施形態では、複数の長尺体21が長尺体巻回部11により巻回されることで、被覆材212が複数の長尺体21を径外方向に膨張させることが規制されているため、被覆材212は複数の長尺体21の径内方向に膨張され、結果として、隙間空間210が埋まり、隣の空間へ熱が流れることを防止できる。
【0046】
また、上記耐火区画構造1によれば、前記長尺体巻回部11が熱膨張材103より一方の空間側に配置されるため、熱膨張材103の膨張が長尺体巻回部11により阻害されることを防止できる。具体的には、貫通孔200の貫通孔方向における一方の空間に長尺体巻回部11が配置されているため、火災の熱で貫通孔200内の熱膨張材103が膨張するときは長尺体巻回部11を長尺体21に巻回しているか否かにかかわらず、熱膨張材103が貫通孔200を埋めることができる。
【0047】
また、本実施形態の遮塞体101は、防火措置具10の一方の空間側に配置されているため、防火措置具10の開口から一方又は他方の空間への熱の流出を防止できる。具体的には、遮塞体101はフランジ部1001の底面と重なるように配置されているため、防火措置具10の開口から一方又は他方の空間への熱の流出を防止できる。
【0048】
また、本実施形態の耐火区画構造1では、凹部210bを埋めるように、隙間閉塞部101eが貫通孔200に挿入されている。そのため、貫通孔200内における長尺体21同士の隙間(凹部210b)を塞ぐことができる。したがって、一方の空間への延焼を防止できる。
【0049】
また、本実施形態では、フランジ部1001の底面と重なる遮塞体101が区画体20の外面に当たるまで、防火措置具10が貫通孔200に押し込まれているとともに、フランジ部1001の底面と区画体20の外面で遮塞体101が挟まれている。そのため、遮塞体101(隙間閉塞部101e)が一方の空間側に動くことが防止され、確実に長尺体21同士の隙間空間210を塞いだ状態を維持できる。
【0050】
また、隙間閉塞部101eは、保持部材100のスリット部1000aにスリット挿入部101gを挿入することで、筒状の保持部材100の周方向に沿って配置される。そのため、遮塞体101が保持部材100に対して周方向に回転することを防止できる。よって、隙間閉塞部101eを長尺体21同士の隙間空間(凹部210b)に挿入した後に、遮塞体101が周方向に回転することで、隙間閉塞部101eが長尺体21の外周面にぶつかって、凹部210bから抜けることを防止できる。
【0051】
また、本実施形態では、遮塞体101の中央から外縁に延びる複数の切込線部101bは、外縁側に近づくにつれて、周方向での距離を大きくする放射状に形成されているため、複数の切込線により規定された隙間閉塞部101eは、遮塞体101の中央位置に近づくにつれて幅狭となるテーパ状になっている。よって、隙間閉塞部101eを凹部210bに挿入させやすい。
【0052】
続いて、他の実施形態に係る耐火区画構造1について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。他の実施形態に係る耐火区画構造1において、上述した一の実施形態の構成と同様の構成については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0053】
他の実施形態の耐火区画構造1は、一の実施形態にて説明した防火措置具10と、長尺体巻回部11に加えて、押さえ部材102を備える。他の実施形態の耐火区画構造1では、
図11に示すように、貫通孔200に挿入された防火措置具10の前方に押さえ部材102が取り付けられている。この押さえ部材102は、
図10に示すように、円形のシート状に形成され、中心部に形成された略八角形状の補助孔102bを利用して、長尺体21を貫通させている。また、他の実施形態においては、縮径前の保持部材100の外径が貫通孔200の内周より大きく構成されている。そのため、他の実施形態では、防火措置具10を複数の長尺体21の外周に沿って取り付けた後、周方向の端部1000e同士を近づけて、保持部材100の外径を貫通孔200の内周より小さくなるように縮径させてから貫通孔200に挿入し、その後、保持部材100を貫通孔200の内周に沿って拡径させている。よって、他の実施形態の耐火区画構造1では、貫通孔200に挿入された防火措置具10は縮径されている。さらに、他の実施形態の耐火区画構造1では、長尺体巻回部11は、後述する拡開部102fと重なるように配置される。
【0054】
図10は、押さえ部材102の正面図である。本実施形態の押さえ部材102は、八角形の補助孔102bの各角には、外縁側に延びる切込線部102cを備える。また、前記切込線部102cは、後述する分断線部102aより短く形成されているとともに、周方向に延びる二本の周方向切込線部102caも備える。そして、切込線部102c同士、又は切込線部102cと分断線部102aにより拡開部102fが規定される。本実施形態の押さえ部材102では、周方向に切込線部102cと分断線部102aが形成されているため、補助孔102bを中心として全周に拡開部102fが8つ配置されている。そのため、前記拡開部102fを屈曲させることにより、補助孔102bを拡開できる。また、
図10に示すように、拡開部102fに周方向切込線部102caが形成されているため、拡開部102fによって屈曲具合を調整できる。そのため、長尺体21の外周に合わせて、補助孔102bの大きさを変化させることができる。さらに、押さえ部材102には、補助孔102bから外縁に延び、押さえ部材102を分断する分断線部102aを備える。この分断線部102aを利用して、円形の押さえ部材102を長尺体21に取り付ける。加えて、本実施形態の押さえ部材102には、ビス止め孔102eが設けられている。このビス止め孔102eを利用して、押さえ部材102を区画体20に固定する。
【0055】
本実施形態の押さえ部材102を耐火区画構造1に取り付ける場合は、防火措置具配置工程と長尺体巻回工程の後、取付けを行う(押さえ取付工程)。なお、他の実施形態では、ビスで防火措置具10を区画体20に対して固定することは、押さえ取付工程にて行う。具体的には、押さえ取付工程では、防火措置具10を貫通孔200に挿入した後、押さえ部材102を周方向に拡開し、分断線部102aから補助孔102bに複数の長尺体21を挿通させる。このとき、複数の長尺体21の径に対応させるべく、拡開部102fを一方の空間側に屈曲させ、補助孔102bを拡開させる。ここで、屈曲させた拡開部102fは、長尺体巻回部11に重なるように配置される。そして、防火措置具10より一方の空間側に押さえ部材102を配置する。さらに、他の実施形態では、ビス止め孔102eが保持部材100のビス止め孔1001a及びビス止め部101f(図示しない)に重なるように配置される。そのため、ビス止め部101f及びビス止め孔1001aを挿通するように、ビス止め孔102eにビス(図示しない)を挿通して、防火措置具10及び押さえ部材102を区画体20に固定させる。
【0056】
以上、他の実施形態に係る耐火区画構造1では、防火措置具10より一方の空間側に押さえ部材102が配置されているため、袋1030から出た耐火材1031が貫通孔200から漏れ出ることを防止できる。また、防火措置具10を一方の空間から隠すことができるため、遮塞体101が凹部210bから一方の空間側に出てしまうことを防止できる。さらに、拡開部102fが長尺体巻回部11に重なるように配置されるため、長尺体巻回部11が複数の長尺体21から外れずに巻回された状態を維持できる。
【0057】
また、一又は他の実施形態の耐火区画構造1の構築方法では、一方の空間で防火措置具10を長尺体21の外周に配置して貫通孔200に挿入する(防火措置具配置工程を行う)とともに、複数の長尺体21に長尺体巻回部11を巻回した(長尺体巻回工程)ため、他方の空間に移動することなく、耐火区画構造1を構築することができる。
【0058】
以上、本実施形態の遮塞体101によれば、熱の通り道を塞ぐことができるため、火災が発生した空間から区画体20をはさんだ隣の空間への熱の流出を防止し、延焼を防止できる。
【0059】
次いで、上記他の実施形態にて説明した押さえ部材102の別実施形態について、
図12~15を参照して説明する。なお、一の実施形態及び他の実施形態で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
別実施形態の押さえ部材102は、分断線部102aによって上記他の実施形態よりも周方向に広く分断されている。そのため、
図12に示すように、別実施形態の押さえ部材102は、略C字状に形成されている。また、別実施形態の押さえ部材102は、周方向の端部102Aを周方向に動かし、厚み方向で重ねる(具体的には、後述する重畳部102g同士を重ねる)ことにより、
図13a、13bに示す形状にして使用される。
【0061】
別実施形態の押さえ部材102は、
図12、13aに示すように、上記他の実施形態と同様に、8つの拡開部102fを備える。これらの拡開部102fは、長尺体21を貫通させる補助孔102bから押さえ部材102の外縁102h側に延びる二本の切込線(具体的には、分断線部102aと切込線部102c、切込線部102c同士)により規定される。そのうち、切込線部102cは、押さえ部材102の外縁102h側に延びる方向において、上記他の実施形態よりも短く形成されている。具体的に、別実施形態では、補助孔102bが上記他の実施形態よりも大きく形成されている。そのため、別実施形態における切込線部102cの長さは、上記他の実施形態よりも短い。よって、本形態の拡開部102fは、上記他の実施形態より短く形成されている。
【0062】
別実施形態では、拡開部102fのうち、補助孔102bを規定する縁部102faが、外縁102h側に凹むように形成されている。そのため、
図13aに示すように、別実施形態の補助孔102bは、略円形状に形成される。さらに、別実施形態では、前記縁部102faのうち、周方向の角102fbが丸みを帯びて形成されている。また、別実施形態の拡開部102fでは、切込線部102cの外縁102h側の終端に、周方向切込線部102caが形成されている。
【0063】
本形態の押さえ部材102の周方向の端部102Aそれぞれは、重畳部102gを備える。具体的に、重畳部102gは、押さえ部材102が分断線部102aで分断されることにより形成された二つの周方向の端部102Aから周方向に突出するように形成されている。また、別実施形態の重畳部102gは、前記拡開部102fよりも外縁102h側に配置されている。
【0064】
これら二つの重畳部102gは、押さえ部材102を
図12に示すC字状にした場合、周方向に隙間を開けた状態で配置される。一方で、押さえ部材102を
図13a、13bに示す状態にした場合、二つの重畳部102gは、押さえ部材102の厚み方向で重なる。
【0065】
本形態の二つの重畳部102gそれぞれには、ビス止め孔102eが形成されている。これらのビス止め孔102eは、
図13aに示すように、重畳部102同士を重ねた際に連通することで、一つのビス止め孔102eになる。さらに、ビス止め孔102eは、
図12、13aに示すように、補助孔102bをはさんだ押さえ部材102の反対側にも設けられている。
【0066】
別実施形態の押さえ部材102は、
図12のC字状の状態で形成されている。一方で、前記押さえ部材102は、厚み方向において、重畳部102g同士を重ね、
図12に示す状態から
図13aに示す状態にしたときに、周方向の長さが短くなる。よって、
図13aに示す状態の押さえ部材102は、
図13b、13cに示すように、一方側(縁部102fa)から他方側(外縁102h)に向けて拡がるように形成される。
【0067】
次に、別実施形態の押さえ部材102を適用した耐火区画構造1の構築方法について説明する。なお、本形態の耐火区画構造1では、
図14に示すように、長尺体21に長尺体巻回部11が巻き付けられていない場合について説明する。そのため、押さえ取付工程は、防火措置具配置工程の次に行われる。
【0068】
押さえ取付工程では、防火措置具10を貫通孔200に挿入した後、周方向の端部102A同士の間から長尺体21を補助孔102bに挿通させる。その後、少なくとも周方向の端部102A同士を厚み方向に重畳する(具体的には、重畳部102g同士を重畳させる)。そして、重ねた重畳部102gのビス止め孔102eと反対側のビス止め孔102eにビスを挿通させることで、
図14に示すように、押さえ部材102を防火措置具10に取り付ける。
【0069】
以上、別実施形態の押さえ部材102によれば、上記他の実施形態と同様、防火措置具10よりも一方の空間側に配置されるため、防火措置具10(具体的には、遮塞体101)を一方の空間から隠すことができる。
【0070】
また、別実施形態の押さえ部材102によれば、拡開部102fを屈曲させることにより、補助孔102bを拡開できるため、長尺体21の外径が大きくなっても、拡開部102fを屈曲させることで、補助孔102bを大きくできるので、補助孔102bに長尺体21を貫通させた状態を維持できる。
【0071】
また、別実施形態の押さえ部材102では、
図12、13aに示すように、拡開部102fの縁部102faが外縁102h側に凹むように形成されることで、補助孔102bが円形状の孔として形成されているため、
図14、15に示すように、拡開部102fの縁部102faを円筒状の長尺体21の外周面に沿わせることができる。加えて、拡開部102fのうち、周方向の角102fbが丸みを帯びるように形成されているため、拡開部102fが長尺体21に食い込むことを防止できる。特に、長尺体21が被覆配管211の場合で、被覆材212が膨張したときには、拡開部102fが前記被覆材212に食い込むことを防止できる。
【0072】
また、別実施形態の押さえ部材102は、少なくとも周方向の端部102A同士を厚み方向に重ねた状態(具体的には、重畳部102g同士を重ねた状態)で耐火区画構造1に適用した際に、
図13b、14、15に示すように、一方の空間側から他方の空間側に向けて拡がる錐状に形成される。そのため、
図13cに示すように、押さえ部材102の内側に空間102iを形成できる。したがって、例えば、隙間閉塞部101eが貫通孔200からはみ出たとしても、押さえ部材102の空間102iに配置されることとなるため、隙間閉塞部101eを外部から隠すことができる。
【0073】
また、別実施形態の押さえ部材102は、重畳部102g同士を重ね合わせた状態で、連通したビス止め孔102eにビスを挿通させることで防火措置具10に取付けられている。そのため、例えば、周方向の端部102Aが自由状態ではないので、一方の空間側に反ることを防止できる。また、補助孔102bを円形にした状態を維持できる。
【0074】
また、別実施形態の押さえ部材102を適用した耐火区画構造1では、
図15に示すように、押さえ部材102が一方側(拡開部102f)から他方側(外縁102h)に向けて拡がるように形成されているため、外縁102hが区画体20の面に接触することで、区画体20と押さえ部材102との隙間がなくなり、美観性が向上する。
【0075】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は一又は他の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0076】
本実施形態では、区画体20が中実壁である場合について説明したが、これに限らず、例えば、区画体は石膏ボードなどの板状部材を離間させて対向配置下中空壁であってもよい。なお、中空壁の場合は、貫通孔200に防火措置具10を挿入するに先立ち、円筒状の鋼製スリーブを貫通孔200内に挿入しておく。また、上記実施形態では、区画体20が建物内の空間を区画する壁である場合について説明したが、これに限らず、建物内外を区画する壁であってもよい。また、前記区画体20は、壁に限らず、建物内を鉛直方向で複数に区画する床や天井であってもよい。さらに、建物外の床であってもよい。
【0077】
本実施形態では、貫通孔200が円筒(丸孔)状である場合について説明したが、これに限らず、貫通孔200の形状は上記の円筒状以外、例えば、多角形状や楕円形状、その他の形状の孔であってもよい。
【0078】
また、本実施形態では、貫通孔200が区画体20の厚み方向に真っすぐ延びる場合について説明したが、これに限らず、例えば、貫通孔200はL字状に形成されていてもよい。この場合、複数の長尺体21は、L字の貫通孔200に沿って、途中で湾曲して貫通孔200内を挿通する。
【0079】
また、本実施形態では、四本の長尺体21が貫通孔200に挿通されていたが、これに限らず、少なくとも一本の長尺体21が挿通されていればよい。
【0080】
また、本実施形態では、配管213と、該配管213の外周を被覆する被覆材212から構成された被覆配管211を貫通孔200に挿通する場合について説明したが、これに限らず、配管以外の長尺体、例えば、電気配線が被覆材212により被覆されていた場合であってもよい。すなわち、被覆材212により外周が被覆された複層長尺体であれば、何でもよい。
【0081】
また、本実施形態の複数の長尺体21には、二本の被覆配管211(複層長尺体)が含まれていたが、これに限らず、複層長尺体は三本以上挿通されていてもよいし、一本だけでもよい。
【0082】
また、本実施形態では、防火措置具10が貫通孔200に挿入される場合について説明したが、これに限らず、例えば、防火措置具10は貫通孔200を塞ぐように、貫通孔200に対応する区画体20の外面(つまり、区画体20における貫通孔200の開口縁部)に配置されているように構成されていてもよい。また、上記一又は他の実施形態では、防火措置具10は貫通孔200の全域に配置されている場合について説明したが、これに限らず、防火措置具10は、貫通孔200の途中までの長さに設定されていてもよい。すなわち、この場合、スリーブ本体部の軸方向における長さは、貫通孔の長さより短く形成されている。さらに、この場合、一方の空間と他方の空間の両方から防火措置具10が貫通孔200に挿入されていてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、長尺体巻回部11は、防火措置具10より一方の空間側に配置されている場合について説明したが、これに限らず、長尺体巻回部11は、防火措置具10より他方の空間側に配置されていてもよいし、或いは、防火措置具10を中央として一方及び他方の両方の空間側に配置されていてもよい。さらに、前記長尺体巻回部11は、防火措置具10を途中に含むように、防火措置具10よりも一方の空間から他方の空間までの領域に連続するように複数の長尺体21を巻回する場合であってもよい。
【0084】
また、本実施形態では、長尺体巻回部11は帯状に形成され、複数の長尺体21の外周に巻回するべく、複数の長尺体21の外周より長く形成されている場合について説明したが、これに限らず、長尺体巻回部11は複数の長尺体を束状に束縛することさえできれば、帯状でなくてもよく、例えば、長尺体巻回部11が半環状のリング部材を組み合わせることで形成されていてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、保持部材100が貫通孔200の内面形状に対応するように筒状に形成されている場合について説明したが、これに限らず、保持部材100は少なくとも貫通孔200に挿入する際に筒状になるように構成されていればよく、例えば、挿入する前の状態では平板状に形成されていてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、一つの長尺体巻回部11が複数の長尺体21を巻回する場合について説明したが、これに限らず、複数の長尺体巻回部11を複数の長尺体21に巻回してもよい。
【0087】
また、本実施形態では、遮塞体101が隙間閉塞部101eを備えていることを説明したが、これに限らず、遮塞体101が該遮塞体101を貫通した長尺体21の外周面に接触して、貫通孔200と長尺体21との間の隙間を閉塞するように構成されていてもよい。これにより、一方の空間又は他方の空間への熱の流出を防止できる。
【0088】
なお、本実施形態では、長尺体巻回部11が隙間閉塞部101eと同一の空間で複数の長尺体21に巻回されていた場合について説明したが、これに限らず、長尺体巻回部11が隙間閉塞部101eと異なる空間で複数の長尺体21に巻回する場合や、長尺体巻回部11を同一の空間及び異なる空間の両方で複数の長尺体21に巻回する場合であってもよい。
【0089】
本実施形態では、遮塞体101が一方の空間にのみ配置される場合について説明したが、これに限らず、遮塞体101が一方の空間及び他方の空間のそれぞれに配置される場合であってもよい。
【0090】
また、本実施形態では、遮塞体101がフランジ部1001の底面に重なるように配置されて保持部材100で保持されることで、防火措置具10を構成する場合について説明したが、これに限らず、遮塞体101が防火措置具10より一方の空間側に配置されて防火措置具10とは別の部材とすることもできる。
【0091】
本実施形態では、防火措置具10を配置してから長尺体巻回部11を複数の長尺体21に巻回する場合について説明したが、これに限らず、複数の長尺体21に長尺体巻回部11を巻回してから防火措置具10を配置してもよい。すなわち、「長尺体巻回工程」の後に「防火措置具配置工程」を行うようにしてもよい。また、押さえ部材102は防火措置具配置工程の後で、長尺体巻回工程の前に、防火措置具10より一方の空間側に配置されてよい。
【0092】
なお、本実施形態の隙間閉塞部101eは、放射状に配置された切込み線によりテーパ状に形成されたが、これに限らず、隙間閉塞部101eは、外縁側に向かって平行に延びる複数の切込み線により矩形状に形成されていてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、隙間閉塞部押込工程において、隙間閉塞部101eを貫通孔200内の方に折り曲げて、貫通孔200に挿入した後、フランジ部1001側に折り返していたが、これに限らず、隙間閉塞部101eを熱膨張材103と長尺体21との間に押し込むだけにしてもよい。ここで、隙間閉塞部101eは、大隙間閉塞部101eaと小隙間閉塞部101ebを備えるところ、凹部210bは大隙間閉塞部101eaで大きく塞がれ、小隙間閉塞部101ebで凹部210bの奥まで閉塞される。よって、隙間閉塞部101eを凹部210bの奥まで挿入できる。
【符号の説明】
【0094】
1…耐火区画構造、10…防火措置具、100…保持部材、101…遮塞体、102…押さえ部材、103…熱膨張材、2…区画貫通構造、20…区画体、21…長尺体