(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】麺帯圧延装置
(51)【国際特許分類】
A21C 3/02 20060101AFI20241114BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
A21C3/02 B
A21C3/02 C
A23L7/109 B
(21)【出願番号】P 2022092008
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2018063003の分割
【原出願日】2018-03-28
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤村 要
(72)【発明者】
【氏名】中島 寿一
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩介
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-096650(JP,A)
【文献】特開2010-011820(JP,A)
【文献】特開2009-268419(JP,A)
【文献】特開2004-097145(JP,A)
【文献】特開2017-148036(JP,A)
【文献】実開昭54-045291(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
A23L 7/109-7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ロール機を、5~10台、連続的に配置し、複合後の麺帯を順次各圧延ロール間を上流側から下流側に移送しながら通過させることによって徐々に麺帯の厚みを減少させる麺帯圧延方法において、当該下流側の最終の圧延ロール機より搬出された麺帯の麺帯厚を自動測定し、自動測定した麺帯厚の測定値に応じて、上流側から第一及び/又は第二圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構を有することを特徴とする麺帯圧延方法であって
、
当該麺帯圧延方法は、圧延ロール間の麺帯の弛みを制御する機構を備え、かつ、当該麺帯圧延方法における最終の圧延ロール機より押出される麺帯の搬送速度が24m/分~100m/分である麺帯圧延方法。
【請求項2】
前記麺帯圧延方法において、第一段目ロールの通過後であって第二段目ロールに挿入される前において麺厚を測定し、当該測定値に応じて、上流側から第一圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構を有する請求項1に記載の麺帯圧延方法。
【請求項3】
前記麺帯圧延方法において、第二段目ロールの通過後であって第三段目ロールに挿入される前において麺厚を測定し、当該測定値に応じて、上流側から第二圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構を有する請求項1又は2に記載の麺帯圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製麺において複合後の麺帯を圧延する麺帯圧延装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
麺帯圧延装置は、製麺工業の分野で種々利用されている。特に大量生産を目的とする即席麺メーカーにおいても汎用されるものである。製麺工程は小麦粉、でん粉等に練水を加えて混練することによってドウを形成し、当該ドウを複合した後、得られる麺帯を複数の圧延ロール間を通過させることにより厚みを薄くする。そして、得られた薄くされた麺帯を切刃ロールによって切り出すことによって麺線群に調製する。得られた麺線群は必要に応じて加工され各種麺製品となる。例えば、即席麺であると麺線群をα化した後、カット・乾燥することによって即席麺を得ることができる。
【0003】
ここで、圧延工程とは、複合後の麺帯を複数の圧延ロール機を通過させて麺帯の厚みを薄くする工程をいう。 麺帯圧延工程における問題点は、柔軟性をある麺帯を連続的に徐々に麺厚を減らせていくために複数の圧延ロールを通過させる必要があり、最終的な麺厚を所定厚みに調整する必要があった。また、各圧延ロール間及び麺帯の幅方向における麺厚のバランス、圧延ロールと次の圧延ロール間における麺帯の弛み状態等を調整する必要もあった。
従来までの麺帯圧延工程においては、切刃ロールに供する直前の最終の圧延時(最終の圧延ロール機を通過した時)の麺帯厚を測定して、当該麺帯厚を基準として、最終の圧延ロール又はその手前の圧延ロールのロール間の隙間を調製することによって麺帯厚を調整する場合が多かった。
【0004】
一方、このように最終の圧延ロールでの調整を行うことも可能であったが、近年の即席麺の製造ラインのように高速での麺塊を製造する必要が高まってくると、前記圧延工程も高速で行う必要がある。この場合、最終圧延ロールのロール間の間隔を調整することによって麺帯の厚みを調整する手法では、十分に対応ができなくなってくるという状況が生じてきた。
すなわち、直前の最終圧延ロールにおける対応では、圧延ロールの隙間を調整すると、麺帯は長さ方向のみならず、幅方向にも延びるためその対応が困難な場合があった。また、急激なロール間の隙間の調整は圧延ロールに過度の負担をかける場合もあった。
【0005】
さらに、圧延工程においては、各圧延ロールのロール径について上流側から下流側に向って、圧延ロールのロール径を徐々に小さくすることが常識であり、最終の圧延ロールにおいては、ロール径を小さい場合。一方、ロール径を小さくする場合、圧延時に圧延ロールが変形する場合もあり。変形した圧延ロールで圧延された麺帯は、中央部が厚く端部が薄くなる場合があった。このため、圧延ロールにおいて予めその中央部付近を微妙に膨らませた樽状の形状とすることは必要となる場合もあった(クラウニング)。一方、麺帯の種類(原料の相違や厚みの違い)においては、このようなクラウニングが却って問題となる場合もあり、特に最終圧延ロールにおける急激なロール間の隙間の調整はより当該問題を大きくするものとなっていた。
このように、最終の圧延ロールによって麺厚を調整すると、種々の問題が存在していた。
一方、このような圧延ロールの調整上の問題点を解決した先行技術は存在しない。一般的な技術として以下のような先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明使者らは、圧延工程において、最終的な所定の麺厚を得るためのより効果的な方法を検討した。さらに、高速ラインにおいても対応できる麺帯圧延装置を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの鋭意研究の結果、意外にも、最終圧延ロールやその一つ手前における圧延ロールにおける制御よりも、複合した麺帯の圧延工程の初期段階である第一圧延ロール機及び第二圧延ロール機における制御を優先する方が所定麺厚を有する麺帯を安定して得ることができることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0009】
すなわち、圧延ロール機を少なくとも3基以上の複数台、連続的に配置し、複合後の麺帯を順次各圧延ロール間を上流側から下流側に移送しながら通過させることによって徐々に麺帯の厚みを減少させる麺帯圧延装置において、当該下流側の最終の圧延ロール機より搬出された麺帯厚を測定し、当該測定結果に応じて、上流側から第一及び/又は第二ロールのロール間を自動調整することによって、すなわち最終ロールの数段階前の圧延のステップにおける圧延ロールの隙間を自動調整することによって麺厚を調整する方法が効果的であることを見出した。
すなわち、本願第一の発明は、
「圧延ロール機を、複数台、連続的に配置し、複合後の麺帯を順次各圧延ロール間を上流側から下流側に移送しながら通過させることによって徐々に麺帯の厚みを減少させる麺帯圧延装置において、当該下流側の最終の圧延ロール機より搬出された麺帯の麺帯厚を自動測定し、当該測定値に応じて、上流側から第一及び/又は第二圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構を有することを特徴とする麺帯圧延装置。」、である。
【0010】
次に、本発明においては、高速の麺帯圧延においても好適に利用できる。
すなわち、本願第二の発明は、
「前記麺帯圧延装置における最終の圧延ロール機より押出される麺帯の搬送速度が24m/分~100m/分である請求項1に記載の麺帯圧延装置。」、である。
【0011】
次に、本発明においては、第一段目ロールの通過後であって第二段目ロールに挿入される前において麺厚を測定し、当該測定結果に応じて、上流側から第一圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構も有することが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
「前記麺帯圧延装置において、第一段目ロールの通過後であって第二段目ロールに挿入される前において麺厚を測定し、当該測定値に応じて、上流側から第一圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構を有する請求項1又は2に記載の麺帯圧延装置。」、である。
【0012】
次に、本発明においては、第二段目ロールの通過後であって第三段目ロールに挿入される前において麺厚を測定し、当該測定結果に応じて、上流側から第二圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構を有することが好ましい。
すなわち、本願第四の発明は、
「前記麺帯圧延装置において、第二段目ロールの通過後であって第三段目ロールに挿入される前において麺厚を測定し、当該測定値に応じて、上流側から第二圧延ロールのロール隙間を自動制御する機構を有する請求項1~3のいずれかに記載の麺帯圧延装置。」、である。
【0013】
さらに、本発明は、圧延ロール機の間を垂れ下がる麺帯の弛みの制御機構を有することが好ましい。すなわち、本願第五の発明は、
「前記圧延ロール機がたるみ制御機構を備えた請求項1~4のいずれかに記載の麺帯圧延装置。」である。
【発明の効果】
【0014】
本発明を利用することで所定の麺帯厚を維持しつつ安定して麺帯を調製することができる。また高速の麺帯圧延においても対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置の全体の側面模式図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置の平面模式図である。
【
図3】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置を構成する圧延ロール機の側面図である。
【
図4】本発明の第一の実施態様の最終圧延ロール機(仕上げ圧延ロール機)の側面模式図である。
【
図5】本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置における麺帯制御のスキームを示した図である。
【
図6】本発明の第一の実施態様の補助コンベアの動作を説明した側面模式図である。
【
図7】本発明の第一の実施態様の弛み調整機構を説明した側面模式図である。
【符号の説明】
【0016】
1 第一圧延ロール機
3 第二圧延ロール機
5 第三圧延ロール機
7 第四圧延ロール機
9 第五圧延ロール機
11 第六圧延ロール機
13 第七圧延ロール機(最終圧延ロール機:仕上げ圧延ロール機)
15 サーボモータ
17 下部ロール
19 上部ロール
21 筐体(圧延ロール機の筐体)
25 動力部(モータ部)
27 チェーン
29 補助コンベア
29-1 補助コンベア(下方位置)
29-2 補助コンベア(上方位置)
31 切刃ロール機
37 最終麺厚用センサー(最終圧延ロール後の麺厚測定用)
38 第一麺厚用センサー(第一圧延ロール後の麺厚測定用)
39 第二麺厚用センサー(第二圧延ロール後の麺厚測定用)
41 弛み用センサー(弛み測定用)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の
図1及び
図2に本願の第一の実施態様について示す。但し、本願発明は第一の実施態様に限定されるものではない。
【0018】
図1に示す本発明の第一の実施態様の麺線圧延装置は、左側から複合を経た麺帯MTが導入される上流側を示している。次いで上流側から下流側に向って、第一圧延ロール機1、第二圧延ロール機3、第三圧延ロール機5、第四圧延ロール機7、第五圧延ロール機9、第六圧延ロール機11、第七圧延ロール機(仕上げ圧延ロール機)13の順に配置されている。
第一圧延ロール機1の圧延ロール及び第二圧延ロール機の圧延ロールには、当該圧延ロール間の隙間を調整できるように上部側のロール19を上下に移動できるように麺厚調整のためのサーボモータ15が装着されている。これによって圧延ロール間の隙間を自動調整することによって麺厚を調整できるようになっている。また、第三から第七圧延ロールには、手動でロール間を調整できるように構成されている。尚、第一圧延ロールに及び第二圧延ロールについては上述の自動調整以外に手動でロール間を調整できるようにもなっている。自動調整と手動調整は切り替え可能に構成されている。
【0019】
尚、
図1における圧延ロール機の間の麺帯は2状態を示している。すなわち、MT-1又はMT-2の状態に示すように圧延ロール間の中空で保持された状態となる。また、MT-1は比較的弛みの小さい場合、MT-2は比較的弛みの大きい場合の例を示している。
さらに、補助コンベア29についても、当該補助コンベアの位置を示すための状態のうち上方に移動した状態(29-2)と、下方に位置する状態(29-1)の2状態を示している。
【0020】
○圧延ロール圧延機
本発明における圧延ロール機による麺帯の圧延とは、
図3に示すように駆動側のロール(下部ロール)17と従動側のロール(上部ロール)19の間に麺帯MTが挟まれながら、ロール間の隙間を通過する際に押圧され、厚みが薄くなっていく工程をいう。
【0021】
当該麺帯MTの圧延プロセスを実現できる圧延ロール機の態様であればいかなる構成でもよいが、本発明の第一の実施態様であると、各ロール圧延機(1、3、5、7、9、11及び13)は所定の筐体21に、下部ロール17と上部ロール19が回転可能に装着されている。当該下部ロール17及び上部ロール19の一端にはスプロケットが装着されており、下部ロールのスプロケットが下方部に備えられた動力部(モータ部)25とチェーン27で連結されており、当該モータ部25による駆動力を下部ロール17に伝達可能に構成されている。
【0022】
さらに、下部ロール17のスプロケットは上部ロールのスプロケットと噛み合っており、下部スプロケット17の回転(下部ロールの回転)と同時に上部スプロケットも回転(上部ロールの回転)するように構成されている。このように、下部ロール17と上部ロール19が同時に回転することで導入される麺帯MTを上下から押圧しながらロール間の排出方向に押出すことで麺帯厚を薄くしながら麺帯を搬送する。上部ロール19と下部ロール17の間の間隔が大きいと麺厚は厚めになり、間隔が小さいと麺帯は薄めになる。
【0023】
各ロール圧延機(1、3、5、7、9、11及び13)は、所定の間隔を経て載置されており、各ロール圧延機から排出される麺帯MTが次の圧延ロール(17、19)にスムーズに搬送されるように搬送の方向に麺帯を送るように補助搬送コンベア29が備えられている。 本補助搬送コンベア29はロール間を搬送する麺帯MTが次ロールに到達するまでの橋渡し的な役割を有し、ライン稼働時の最初の麺帯先端を送る場合においては、
図3に示すように斜め上方に位置しており、次ロールへ麺帯先端部が到達し、麺帯MTの搬送が安定すると、下方部に斜めスライド移動し、麺帯をロール間において中空状態で保持するように構成されている。
【0024】
当該ロール圧延機は、第1ロール圧延機1から第六ロール圧延機11及び仕上げロール機13のまでの7機が設けられており、各ロール圧延機に対して駆動モータ部25が設けられている。さらに、当該各圧延ロール間に補助搬送コンベア29が設けられている。
上記のロール圧延機のうち、第一ロール圧延機1は、複合工程を経た麺帯MTが導入されるものであり、
図1に示すように複合された麺帯MTを搬送するコンベアから第一ロール圧延機1に複合された麺帯MTが導入される。当該第一ロール圧延機1に導入された麺帯は順次、第二、第三、第四、第五、第六ロール、第七(仕上げロール)(3、5、7、9、11及び13)の各圧延ロール機に送られながら受渡しされ、最終の仕上げロール圧延機13より搬出される麺帯MTは、続いて、切刃ロール機31に導入され麺線MSにカットされた状態で次工程(カットやα化)に搬送されることになる。
【0025】
○圧延ロール機の段数(配置数)
本発明の圧延ロール機の段数(配置数)は仕上げロールを含めて、概ね3段~10段程度が可能である。さらに、好ましくは5段~9段程度である。
尚、本発明の実施例1においては、6段+仕上げロールの計7段の場合を示しているが、本発明はこのような7段に限定されるものではない。
【0026】
○麺厚調整機構
本発明においては、当該下流側の最終の圧延ロール機より搬出された麺帯MTの麺帯厚(基準麺厚)を測定し、当該測定結果に応じて、上流側から第一及び/又は第二圧延ロール機のロール間(17、19)を自動調整することを特徴とする。以下に具体的に説明する。
【0027】
本第一の実施例の麺帯圧延装置においては、第一圧延ロール機1、第二圧延ロール機2に麺厚調整機構が装着されている。すなわち、最終圧延ロール機を経て移送される麺帯の厚みを測定し、当該センサーでの測定値をもとに、フィードバックして自動の麺厚調整を実施する。麺厚の測定は種々の方法が可能であるが、本発明の第一の実施態様においては、麺帯MTの表面及び裏面に対してセンサー37が設けられており、当該センサー37によってそれぞれの距離を求める方法より麺厚を算出する方法を採用している(
図4)。
尚、センサー37は、麺帯の左右を測定できるように一対(2基)設けられている(
図2)。また、本第一の実施態様においては、第一圧延ロール機1、第二圧延ロール機3の両方に麺厚の自動制御機構が設けられているが(
図1及び
図2)、いずれか一方であってもよいことは勿論である。
【0028】
2)麺帯厚みによる制御
最終圧延ロール7を通過して排出された麺帯の麺帯厚を測定した結果、所定の麺厚厚みよりも薄い場合には、当該測定値から制御部を通じて、第一圧延ロール機1及び/又は第二圧延ロール機3の上部に取り付けられた麺厚調整サーボモータ15に信号が送られ、それぞれの圧延ロール機の上部圧延ロール19を移動させて、圧延ロール間の隙間を調整できるように構成されている。
具体的には、最終麺厚が設定値(基準麺帯厚値)よりも薄い場合には、第一及び/又は第二圧延ロール機に対してそのサーボモータ15に対して隙間を大きくするように、上部圧延ロール19を上方に移動するように制御される。
【0029】
尚、当該ロール間の隙間調整がされた後の麺帯厚を確認的に測定することができるように、第一圧延ロールを通過した麺帯の厚みを測定のため第二圧延ロールの麺帯の圧延ロール間の手前に麺帯厚み(第一麺帯厚値)の検出のための検出装置(センサー)38が設けられている。
さらに、同様に第二圧延ロール機3を通過した麺帯の厚みを確認的に測定できるように第三圧延ロール機の麺帯の圧延ロール間の手前に麺帯厚み(第二麺帯厚値)の検出のための検出装置39も設けられている。また、検出装置(センサー)は、麺帯の左右を測定できるように一対(2基)設けられている(
図1)また、38及び39の麺帯厚の測定のためのセンサーについては装着しない場合でも可能であることは勿論である。
【0030】
尚、麺帯の厚みは、粉体等の原料や湿度や温度等によって微妙に変化し、最終麺厚が基準として制御される。
また、第3~第7圧延ロール機(5、7、9、11及び13)に対するロール間隔の調整は手動で実施可能となっており、必要に応じてこれらのロール間隔も調整することが必要になることは勿論である。さらに、本発明においては、第3~第7圧延ロールに対するロール間隔の自動調整機構を備えることを積極的に排除するものではない。第一及び第二ロールと同様に自動制御機構を設けてもよい。
【0031】
また、上記の最終圧延後の麺帯厚による、第一圧延ロール及び第二圧延ロールの制御方法は、一例に過ぎないため他の方法であってもよいことは勿論である。尚、上記の制御のスキームを
図5に示す。
尚、本発明の第一態様においては、第一圧延ロール及び第二圧延ロールを制御する場合のみ示したが、これに加えて本発明の第一の実施態様であると、第三圧延ロール、第四圧延ロール、第五圧延ロール、第六圧延ロール、及び仕上げロールのそれぞれを制御する構成を含んでいても良い。
【0032】
○圧延ロールの直径
本発明においては、最終側の仕上げ圧延ロール機13のロール直径については特に限定されず、種々のサイズを適用することが可能である。但し、可能ならば本発明においては、最終(仕上げ)ロールから上流側に向って三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径の直径について200mm以上の径を有することが好適である。
【0033】
すなわち、麺帯圧延装置の場合、通常は圧延ロールは下流に向うに従って、直径の小さなタイプにすることが多いところであるところ、本発明においては下流側の最終の圧延ロール機から上流側に向って三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径が直径200mm以上の大きな直径を有することが好ましい。特に最終の圧延ロール機のロール径が直径200mm以上の大きな直径を有することが好ましい。また、これらの最終圧延ロールを含んだ三基の圧延ロール機のいずれの圧延ロール機のロール径も200mm以上であることが好ましい。
本発明の第一の実施態様においては、第一圧延ロール機の直径は、360mm、第二圧延ロール機の240mm、第三圧延ロールは240mm、第四圧延ロールは240mm、第五圧延ロールは240mm、第六圧延ロールは240mmをいう。さらに、第七圧延ロール(最終(仕上げ)ロール)は240mmを想定している。
【0034】
通常、麺帯圧延機の仕上げロールにおいては、下流に向うほど圧延の際の負荷も少ないと考えられていた。このため、コストの面等からも圧力等の圧延ロールのロール径は上流から下流側に行くに従って小さくし、最終の仕上げロール径は100~150mm程度、次に上流側の圧延ロールのロール径は100~200mm程度、さらに次に上流側の圧延ロールのロール径は150~200mm程度の小さいサイズとするのが通常であった。
仕上げロールにおいて麺体厚みを制御する方法は、麺帯速度が遅い場合でなら十分可能であったところ、本発明においては、最終ロールにおいて24m/分~100m/分の速度での搬送も想定しているため、従来までの方法では対応が困難であった。
【0035】
このため、前述のように麺帯厚(基準麺厚)を測定し、当該測定結果に応じて、上流側から第一及び/又は第二ロールのロール間を自動制御するという点と共に、下流側の最終の圧延ロール機から上流側に向って三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径を従来までのサイズ(通常120mm)よりも大きな直径を有する圧延ロールのサイズ(200mm以上)とすることが好ましい。特に最終圧延ロールのロール径を200mm以上とすることが好ましい。
高速に圧延ロールを回転させることによって麺帯を押し出すと、押し出される麺帯の幅方向において両端側がうすく、真ん中の厚みが厚いという問題(軸心たわみによるクラウンの発生によるエッジドロップ)が大きくなるという問題が大きくなる。
【0036】
このため、予め圧延ロールの中央側のロール径を両端側のロール径に比べて微妙に大きくする等の処理をしておく場合があったが、麺帯の種類に応じて対応することができず、調整が困難な場合も多かった。ここで、下流側の圧延ロールのサイズ(200mm以上)とすることで、前述の圧延ロールの中央側のロール径を両端側のロール径に比べて微妙に大きくする等の処理を不必要とすることができるという効果を有する。
尚、本発明においては、下流側の最終の圧延ロール機から上流側に向って三基の圧延ロール機のうちいずれかの圧延ロール機のロール径を200mm以上とすることが好ましく、さらに最終ロールのロール径を200mm以上とするのがより好ましい。
【0037】
また、当該最終の圧延ロール機のロール径が、上流側の圧延ロールのいずれか最小のロール径よりも小ではないことが好ましい。すなわち、最終ロール(仕上げロール)ロール径をそれよりも上流のロール径のうちで最小のものよりも大きくするか又は少なくとも同じとし、最終ロールのロール径を本発明の圧延装置を構成する複数の圧延ロール機のロール径のうち、最も小さいものとしないことが好ましい。
【0038】
○ロール圧延機のロール幅
本発明の圧延機のロール幅は、特に限定されない。但し、最終の圧延ロールの直径が200mm以上である場合、前記圧延ロール機のロール幅が600mm以上であることが好ましい。さらに、700mm以上の範囲内にあることが好ましい。
【0039】
○圧延ロールの速度
本発明における前記麺帯圧延装置における最終の圧延ロール機より押出される麺帯の搬送速度は特に限定されないが概ね10m/分~100m/分である。また、好ましくは、24m/分~100m/分である。当該最終の圧延ロールより押出された麺帯が切刃ロールに入り短冊状にカットされて麺線群となる。
このように、本発明においては即席麺の製造のように比較的高速な麺線圧延工程を意図している。
【0040】
○補助コンベア
本発明の第一の実施態様においては、補助コンベア29を設けている。これは、麺帯MTの圧延開始時の当該麺帯MTの先端部を次のロールに誘導する際の補助にするために設けられているものである。すなわち、
図6に示すように圧延開始時においては麺帯の先端部MTが搬送されてきた状態で、補助コンベア29は29-2に示すように上方にスライド移動し、次のロール圧延機のロール間に麺帯MTを誘導する。当該誘導が完了し、当該次の圧延ロールにおいて麺体MTの圧延が開始されると、補助コンベア29は斜め下方向にスライドして29-1に示すように下方にスライド移動し、麺帯はMT-1やMT-2の状態に示すように圧延ロール間の中空で保持された状態となる。尚、麺帯はMT-1は比較的弛みの少ない場合、MT-2は比較的弛みの多い場合の例を示している。これらのいずれの状態でも可能である。
【0041】
本補助コンベアは、
図1に示すように、各圧延ロールの間に設けることが可能である。
図1に示すように、本発明の第一の実施例においては、第1段及び第2段の間、第2段及び第3段の間、第3段及び第4段の間、第4段及び第5段の間、第5段及び第6段の間、第6段及び第7段(仕上げロール)の間の各間隔の麺帯の搬送を補助するように補助コンベア29が設けられている。
【0042】
○弛み調整機構
本発明においては、麺帯MTの弛み調整機構を設けることが好ましい。すなわち、本発明の弛み調整機構は、圧延ロール機の間の麺帯MTの中空における保持状態(弛み状態)を測定する。すなわち、弛みが少なく圧延ロール間で麺帯MTが張りの状態であると、麺帯MTが伸びたり切れるおそれもある。
一方、弛み(垂れ)が大きすぎると、麺帯が接地してしまい麺帯の圧延がスムーズに行われなくなる。このため、適度な弛み状態を維持する必要がある。
当該弛み状態は、圧延ロール間の空間の所定位置から麺帯の距離を測定することによって求めることができる(
図7)。
【0043】
そして、弛みが大きすぎる場合には、次の圧延ロールの圧延速度を大きくするか、前の圧延ロールの速度を小さくする。尚、一部の圧延ロールの速度を調整する場合には、必要に応じて他の圧延ロールの速度を調整する必要がある場合には、適宜これを行うことは勿論である。
本発明の第一の実施例においては、
図1、
図7に示すように第1圧延ロール機及び第2圧延ロール機の間、第2圧延ロール機及び第3圧延ロール機の間、第3圧延ロール機及び第4圧延ロール機の間、第4圧延ロール機及び第5圧延ロール機の間、第5圧延ロール機及び第6圧延ロール機の間、第6圧延ロール機及び第7圧延ロール機(仕上げロール機)のの間の各間隔の麺帯の弛みを検出できるように検出のためのセンサー41が設けられている。
【0044】
そして、弛みが大きすぎる場合には、次の圧延ロールの圧延速度を大きくするか、前の圧延ロールの速度を小さくする。尚、一部の圧延ロールの速度を調整する場合には、必要に応じて他の圧延ロールの速度を調整する必要がある場合には、適宜これを行うことは勿論である。
【0045】
○本発明の麺厚圧延機を用いた動作について
本発明の第一の実施態様で示した装置の動作を説明する。尚、麺帯の圧延を開始する時(立ち上げ時)においては、人手によって補助しながら複合後の麺帯を各圧延ロールに順次移送されるように麺帯を補助しながら移送していくことが必要になる。尚、この際、手動で各圧延ロールのロール間の調整が必要になることは勿論である。当該立ち上げが終了して、麺帯の圧延プロセスが安定した後において最終圧延後の麺帯厚による、第一圧延ロール及び第二圧延ロールの自動制御が実施されることになる。具体的には以下のようになる。
【0046】
小麦粉、でん粉等の粉体に必要に応じてかんすい、食塩等を混練したドウを調製する。当該ドウを2枚の麺帯にし、さらに当該麺帯を重ねて圧延することで一枚の麺帯に複合した。当該複合した麺帯を本発明の第一の実施態様の麺帯圧延装置に供する。
当該複合プロセスを経た麺帯MTをコンベアで搬送して、本発明の第一実施態様の麺帯圧延装置に導入する。麺帯MTの先端部を第一圧延ロール機1のロール間に挿入し、圧延及び麺帯MTの移送が開始される。麺帯MTは第一圧延ロール機1の上下ロール(17、19)に挟まれ押圧されながら移送される。
【0047】
第一圧延ロール機1を通過した麺帯MTの先端は、第一及び第二圧延ロール機(1、3)の間を橋渡しする補助コンベア29上に載置・搬送されながら、第二圧延ロール機3のロール間に挿入される。この際、麺厚測定装置38により麺厚が測定されて所定麺厚であるかが確認される。このようにして、第二圧延ロール機による押圧・移送が進行する。
麺帯MTが第二圧延ロール機3のロール間に挿入され、しばらく押圧・移送された後、第一、第二圧延ロール機1、3の間を橋渡しする補助コンベア29は斜め下の方向にスライドして、麺帯MTは第一及び第二ロール機のロール間を中空保持(下方に垂れ下がった)状態となる。
【0048】
以下、同様に第二圧延ロール機3より排出した麺帯MTは、第二及び第三圧延ロール機(3、5)の間を橋渡しする補助コンベア29上に載置・搬送されながら、第三圧延ロール機5のロール間に挿入される。この際、麺厚測定装置39により麺厚が測定されて所定麺厚であるかが確認される。設このようにして第三圧延ロール機5による押圧・移送が進行する。
麺帯MTが第三圧延ロール機5のロール間に挿入され、しばらく圧延・移送された後、第二圧延ロール機3及び第三圧延ロール機5の間を橋渡しする補助コンベア29は斜め下の方向にスライドして、麺帯MTは第二圧延ロール機3及び第三ロール機5のロール間を中空保持(下方に垂れ下がった)状態となる。
【0049】
同様にして、第三、第四、第五、第六の各圧延ロール機(5、7、9及び11)を通過した麺帯MTは、第七圧延ロール機(仕上げロール機)13のロール間に挿入され、当該第七圧延ロール機13において圧延・移送され、切刃ロール機31に近づく、切刃ロール機31に挿入される前に麺帯MTの麺厚(最終麺厚)が測定され、設定値と異なる場合には、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3のロール間の隙間を変化させるように制御される。すなわち、最終麺厚が設定値よりも大きいときは、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3のロール間を狭くするように制御される。また、最終麺厚が設定値よりも小さいときは、第一圧延ロール機1及び第二圧延ロール機3にロール間を広くするように制御される。
【0050】
尚、麺帯の厚みは、粉体等の原料や湿度や温度等によって微妙に変化する為、最終麺厚が基準として制御される。従って、最終麺厚の設定値が、第一設定麺厚や第二設定麺厚に優先される制御が行われる。
また、上記の制御と平行して、第1段及び第2段の間、第2段及び第3段の間、第3段及び第4段の間、第4段及び第5段の間、第5段及び第6段の間、第6段及び第7段(仕上げロール)の間の各間隔の麺帯MTの弛みを検出できるように弛みセンサー41が設けられており、当該制御が実施される。
【0051】
すなわち、弛みが大きすぎる場合には、次の圧延ロール機の圧延速度を大きくするか、前の圧延ロール機の圧延速度を小さくする。尚、一部の圧延ロール機の速度を調整する場合には、必要に応じて他の圧延ロール機の速度を調整する必要がある場合には、適宜これが実施される。