(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両制御システム、及び車両制御システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20241114BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
B60R16/023 P
H04L12/28 100A
(21)【出願番号】P 2022155131
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓望
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達郎
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0237669(US,A1)
【文献】特開平09-083608(JP,A)
【文献】特開2017-050730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0140861(US,A1)
【文献】徳永 雄一ほか,大規模センサーネットワークシステムの時刻同期手法,マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO)シンポジウム論文集 1997年~2006年版 Ver.1.1 [DVD-ROM],社団法人情報処理学会,2006年07月05日,第2006巻,第793-796頁
【文献】倉地 亮ほか,時刻配送型CANネットワークの提案,情報処理学会 研究報告 組込みシステム(EMB) 2019-EMB-050 ,情報処理学会,2019年03月10日,第1-5頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電子機器と、前記第1電子機器に接続される第2電子機器と、を備え、
前記第1電子機器は、
第1計時部と、
前記第1計時部が計時した時刻を示す時刻情報を生成する生成部と、
前記生成部が生成した前記時刻情報を前記第2電子機器に送信し、また、前記生成部が前記時刻情報の生成を開始してから生成した前記時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報を前記第2電子機器に送信する第1送信部と、を備え、
前記第2電子機器は、
第2計時部と、
前記時刻情報と前記経過時間情報とを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記時刻情報と前記経過時間情報とに基づいて、前記第2計時部が計時する時刻を調整する調整部と、
前記第1電子機器と接続する通信バスと異なる通信バスに接続されていない場合、前記第2計時部が計時する時刻を調整した後に、時刻の調整が完了したことを示す調整完了情報を前記第1電子機器に送信し、前記第1電子機器と接続する通信バスと異なる通信バスに接続されている場合、前記調整完了情報を前記第1電子機器に送信しない第2送信部と、を備える、
車両制御システム。
【請求項2】
前記調整部は、
前記時刻情報が示す時刻と前記経過時間情報が示す前記経過時間とを足し合わせた時刻に基づいて、前記第2計時部が計時する時刻を調整する、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記第2電子機器は、前記受信部が受信した前記経過時間情報を記憶する記憶部を備え、
前記調整部は、前記記憶部による前記経過時間情報の記憶後に前記受信部が前記時刻情報を受信した場合、前記受信部が受信した前記時刻情報と、前記記憶部が記憶する前記経過時間情報とに基づいて、前記第2計時部が計時する時刻を調整する、
請求項1又は2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記第1電子機器と前記第2電子機器とは、CAN規格に従って通信する、
請求項1又は2に記載の車両制御システム。
【請求項5】
第1電子機器と、前記第1電子機器に接続される第2電子機器と、を備える車両制御システムの制御方法であって、
前記第1電子機器が、前記第1電子機器が計時した時刻を示す時刻情報を生成し、
前記第1電子機器が、生成した前記時刻情報を前記第2電子機器に送信し、
前記第1電子機器が、前記時刻情報の生成を開始してから生成した前記時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報を前記第2電子機器に送信し、
前記第2電子機器が、前記時刻情報と前記経過時間情報とを受信し、
前記第2電子機器が、受信した前記時刻情報と前記経過時間情報とに基づいて、計時する時刻を調整
し、
前記第2電子機器が、前記第1電子機器と接続する通信バスと異なる通信バスに接続されていない場合、計時する時刻を調整した後に、時刻の調整が完了したことを示す調整完了情報を前記第1電子機器に送信し、
前記第2電子機器が、前記第1電子機器と接続する通信バスと異なる通信バスに接続されている場合、前記調整完了情報を前記第1電子機器に送信しない、
車両制御システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム、及び車両制御システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器間で時刻同期を行う技術が知られている。例えば、特許文献1は、マスタ制御装置とスレーブ制御装置とが時刻同期を行う技術を開示している。特許文献1において、マスタ制御装置は、グローバルタイムを格納したタイミング同期メッセージをスレーブ制御装置に送信し、スレーブ制御装置は、タイミング同期メッセージから抽出したグローバルタイムに基づいて時刻設定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の手法は、タイミング同期メッセージの生成を開始してからタイミング同期メッセージを送信するまでの経過時間が、時刻同期に考慮されていないため、時刻同期の精度向上に改善の余地がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電子機器間で精度良く時刻同期を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1電子機器と、前記第1電子機器に接続される第2電子機器と、を備え、前記第1電子機器は、第1計時部と、前記第1計時部が計時した時刻を示す時刻情報を生成する生成部と、前記生成部が生成した前記時刻情報を前記第2電子機器に送信し、また、前記生成部が前記時刻情報の生成を開始してから生成した前記時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報を前記第2電子機器に送信する第1送信部と、を備え、前記第2電子機器は、第2計時部と、前記時刻情報と前記経過時間情報とを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記時刻情報と前記経過時間情報とに基づいて、前記第2計時部が計時する時刻を調整する調整部と、前記第1電子機器と接続する通信バスと異なる通信バスに接続されていない場合、前記第2計時部が計時する時刻を調整した後に、時刻の調整が完了したことを示す調整完了情報を前記第1電子機器に送信し、前記第1電子機器と接続する通信バスと異なる通信バスに接続されている場合、前記調整完了情報を前記第1電子機器に送信しない第2送信部と、を備える、車両制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、電子機器間で精度良く時刻同期を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】セントラルECU、及び接続ECUの構成を示すブロック図である。
【
図3】セントラルECU、及び接続ECUの動作を示すフローチャートである。
【
図4】時刻同期を具体的に説明するための図である。
【
図5】接続ECUの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、車両Vを制御する車両制御システム1の構成を示す図である。
車両制御システム1は、車両Vを制御するシステムである。車両制御システム1は、車両Vの全般的な制御及び情報処理を行うセントラルECU(Electronic Control Unit)2を備える。セントラルECU2は、OTA(Over The Air)管理を実行する。OTA管理は、車両Vが備える車載装置の更新プログラムを車外のサーバからダウンロードする処理、及び、ダウンロードした更新プログラムを車載装置に適用する処理に関する制御を含む。
セントラルECU2は、本開示の「第1電子機器」及び「電子機器」に相当する。
【0009】
セントラルECU2は、第1通信バス3を介してゾーンECU4が接続する。第1通信バス3は、CAN規格に準拠した通信バスである。ゾーンECU4は、第2通信バス5を介して接続する末端ECU6を制御する。第2通信バス5は、第1通信バス3と同様、CAN規格に準拠した通信バスである。なお、末端ECU6を基準とした場合、第2通信バス5は、ゾーンECU4及び第1通信バス3を介してセントラルECU2が接続する通信バスである。一方で、ゾーンECU4を基準とした場合、第2通信バス5は、セントラルECU2が接続しない通信バスである。
【0010】
末端ECU6としては、VSA(Vehicle Stability Asist)装置や、車両Vを駆動する駆動装置、空調装置、ESL(Electronic Steering Lock)などが例に挙げられる。なお、末端ECU6は、これら例示に限定されず、後述するように計時機能を有するECUであればよい。
【0011】
図1に示すように、セントラルECU2には、第1通信バス3を介してゾーンECU4が接続し、第1通信バス3、ゾーンECU4、及び第2通信バス5を介して末端ECU6が接続する。よって、以下の説明では、ゾーンECU4と末端ECU6とを区別せずに総称する場合、「接続ECU」といい「7」の符号を付す。
接続ECU7は、本開示の「第2電子機器」及び「他の電子機器」に相当する。
【0012】
図2は、セントラルECU2、及び接続ECU7の構成を示すブロック図である。
セントラルECU2は、CPU(Central Processing Unit)などの第1プロセッサ20、第1メモリ21、及び第1通信部22を備える。
第1プロセッサ20は、本開示の「プロセッサ」に相当する。
【0013】
第1メモリ21は、第1プロセッサ20が実行するプログラムやデータを記憶する記憶装置である。第1メモリ21は、例えばROM(Read Only Memory)などの不揮発性の記憶装置により構成される。第1メモリ21は、例えばRAM(Random Access Memory)などの、第1プロセッサ20のワークエリアを構成する揮発性の記憶装置を含んでもよい。第1メモリ21は、第1プロセッサ20により処理されるデータや、第1プロセッサ20が実行する第1制御プログラム211を記憶する。
第1制御プログラム211は、本開示の「プログラム」に相当する。
【0014】
第1通信部22は、CAN規格に従った通信回路やコネクタなどのハードウェアを備え、第1プロセッサ20の制御に従って接続ECU7と通信する。第1通信部22には、第1通信バス3が接続される。
【0015】
第1プロセッサ20は、第1メモリ21が記憶する第1制御プログラム211を読み出して実行することにより、第1送信部201、第1受信部202、第1計時部203、生成部204、及び計測部205として機能する。
第1計時部203は、本開示の「計時部」に相当する。第1送信部201は、本開示の「送信部」に相当する。
【0016】
第1送信部201は、第1通信部22を介して、接続ECU7へ情報を送信する。
【0017】
第1受信部202は、第1通信部22を介して、接続ECU7から情報を受信する。
【0018】
第1計時部203は、時刻を計時する。例えば、第1計時部203は、RTC(Real Time Clock)として動作して、現在時刻を計時する。
【0019】
生成部204は、第1計時部203が計時した時刻を示す時刻情報J1を生成する。生成部204は、生成した時刻情報J1を第1送信部201に出力する。第1送信部201は、生成部204から受信した時刻情報J1を接続ECU7に送信する。
【0020】
計測部205は、経過時間を計測する。経過時間とは、時刻情報J1の生成が開始されてから生成された時刻情報J1が送信されるまでに経過した時間である。計測部205は、例えばカウンタなどの計測手段によって経過時間を計測する。
【0021】
接続ECU7は、CPUなどの第2プロセッサ70、第2メモリ71、及び第2通信部72を備える。
第2メモリ71は、本開示の「記憶部」に相当する。
【0022】
第2メモリ71は、第2プロセッサ70が実行するプログラムやデータを記憶する記憶装置である。第2メモリ71は、例えばROMなどの不揮発性の記憶装置により構成される。第2メモリ71は、例えばRAMなどの、第2プロセッサ70のワークエリアを構成する揮発性の記憶装置を含んでもよい。第2メモリ71は、第2プロセッサ70により処理されるデータや、第2プロセッサ70が実行する第2制御プログラム711を記憶する。
【0023】
第2通信部72は、CAN規格に従った通信回路やコネクタなどのハードウェアを備え、第2プロセッサ70の制御に従ってセントラルECU2と通信する。接続ECU7がゾーンECU4である場合、第2通信部72には、第1通信バス3が接続し、第1通信バス3を介してセントラルECU2と通信する。接続ECU7が末端ECU6である場合、第2通信部72には、第2通信バス5が接続し、第1通信バス3、ゾーンECU4、及び第2通信バス5を介してセントラルECU2と通信する。
【0024】
接続ECU7がゾーンECU4である場合、第2通信部72には、第1通信バス3の他に第2通信バス5が接続する。接続ECU7が末端ECU6である場合、第2通信部72には、第2通信バス5が接続する。
【0025】
第2プロセッサ70は、第2メモリ71が記憶する第2制御プログラム711を読み出して実行することにより、第2送信部701、第2受信部702、第2計時部703、及び調整部704として機能する。
第2受信部702は、本開示の「受信部」に相当する。
【0026】
第2送信部701は、第2通信部72を介して、セントラルECU2へ情報を送信する。
【0027】
第2受信部702は、第2通信部72を介して、セントラルECU2から情報を受信する。
【0028】
第2計時部703は、時刻を計時する。例えば、第2計時部703は、RTCとして動作して現在時刻を計時する。第2計時部703が計時する時刻は、調整部704に調整される。
【0029】
調整部704は、第2計時部703が計時する時刻を調整する。調整部704による時刻調整については、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0030】
次に、本実施形態に係わる車両制御システム1の動作について説明する。
図3は、セントラルECU2と接続ECU7との動作を示すフローチャートである。
図3に示す動作は、時刻同期に係わる動作である。
図3において、フローチャートFAはセントラルECU2の動作を示し、フローチャートFBは接続ECU7の動作を示す。
【0031】
フローチャートFAで示すように、生成部204は、時刻情報J1を生成するトリガーが発生したか否かを判定する(ステップSA1)。当該トリガーとしては、所定の周期が到来したことなどが例に挙げられる。
【0032】
生成部204は、時刻情報J1を生成するトリガーが発生していないと判定した場合(ステップSA1:NO)、再度、ステップSA1の判定を行う。
【0033】
一方、生成部204は、時刻情報J1を生成するトリガーが発生したと判定した場合(ステップSA1:YES)、時刻情報J1の生成を開始する(ステップSA2)。
【0034】
次いで、計測部205は、経過時間の計測を開始する(ステップSA3)。
【0035】
次いで、第1送信部201は、生成部204が生成した時刻情報J1を接続ECU7に送信する(ステップSA4)。
【0036】
次いで、計測部205は、経過時間の計測を終了する(ステップSA5)。
【0037】
次いで、第1送信部201は、計測部205が計測した経過時間を示す経過時間情報J2を接続ECU7に送信する(ステップSA6)。
【0038】
フローチャートFBで示すように、第2受信部702は、時刻情報J1をセントラルECU2から受信する(ステップSB1)。
【0039】
次いで、調整部704は、第2計時部703が計時する時刻を、ステップSB1で受信された時刻情報J1が示す時刻に調整する(ステップSB2)。ステップSB2の調整後は、ステップSB1で受信された時刻情報J1が示す時刻を基準にして第2計時部703が時刻を計時することになる。
【0040】
次いで、第2受信部702は、経過時間情報J2をセントラルECU2から受信する(ステップSB3)。
【0041】
次いで、調整部704は、第2計時部703が計時する時刻を、経過時間加算時刻に調整する(ステップSB4)。経過時間加算時刻とは、ステップSB2で調整した時刻を基準にして第2計時部703が計時した時刻に対して、ステップSB3で受信された経過時間情報J2が示す経過時間を加えた時刻である。
【0042】
図4を参照して、セントラルECU2と接続ECU7との時刻同期を具体的に説明する。
図4は、時刻同期を具体的に説明するための図である。
【0043】
タイミングT1おいて、セントラルECU2の生成部204は、時刻情報J1の生成を開始する。タイミングT1は、第1計時部203が計時する時刻が「t1」である場合のタイミングである。
【0044】
タイミングT2において、第1送信部201は、タイミングT1で生成を開始した時刻情報J1を接続ECU7に送信する。タイミングT2は、第1計時部203が計時している時刻が「t2」である場合のタイミングである。時刻「t2」は、時刻「t1」からΔtだけ時が進んだ時刻である。タイミングT2で送信される時刻情報J1は、生成が開始された時刻である「t1」を示している。
【0045】
タイミングT2において第2受信部702が時刻情報J1を受信すると、接続ECU7の調整部704は、第2計時部703が計時する時刻を、第2受信部702が受信した時刻情報が示す時刻「t1」に調整する。この調整後、第2計時部703は、時刻「t1」を基準に計時を行う。
【0046】
タイミングT3において、セントラルECU2の生成部204は、経過時間情報J2を接続ECU7に送信する。タイミングT3は、第1計時部203が計時する時刻が、時刻「t3」である場合のタイミングである。時刻「t3」は、時刻「t2」からさらに時が進んだタイミングである。タイミングT3で送信される経過時間情報J2は、「Δt」の経過時間を示している。
図4において、「Δt」は、時刻「t2」から時刻「t1」を引いた経過時間である。
【0047】
タイミングT3において第2受信部702が経過時間情報J2を受信すると、接続ECU7の調整部704は、第2計時部703が計時する時刻を、時刻「t4+Δt」に調整する。時刻「t4+Δt」は、経過時間加算時刻である。時刻「t4」は、調整された時刻「t1」を基準としてタイミングT3まで第2計時部703が計時した時刻を示す。
【0048】
次に、第2計時部703が計時する時刻を経過時間加算時刻に調整した場合の接続ECU7の動作について説明する。
図5は、接続ECU7の動作を示すフローチャートである。
図5に示す動作は、調整部704が、第2計時部703が計時する時刻を経過時間加算時刻に調整したことを契機に開始される。
【0049】
第2送信部701は、セントラルECU2と接続する通信バスと異なる通信バスが接続されているか否かを判定する(ステップSC1)。上述した通り、末端ECU6を基準とした場合、第2通信バス5は、ゾーンECU4及び第1通信バス3を介して、セントラルECU2が接続する。一方で、ゾーンECU4を基準とした場合、第2通信バス5は、セントラルECU2が接続しない。よって、ステップSC1の判定は、換言すると、自身が末端ECU6であるか否かの判定である。ステップSC1の判定は、例えば、セントラルECU2と接続する通信バスと異なる通信バスが接続されているかどうかが記録されたデータを参照することで行われる。このデータは、第2メモリ71に記憶されている。
【0050】
第2送信部701は、セントラルECU2と接続する通信バスと異なる通信バスが接続されていると判定した場合(ステップSC1:YES)、本処理を終了する。すなわち、
図5の動作主体がゾーンECU4である場合、第2送信部701は、ステップSC1で肯定判定する。
【0051】
一方で、第2送信部701は、セントラルECU2と接続する通信バスと異なる通信バスが接続されていないと判定した場合(ステップSC1:NO)、調整完了情報をセントラルECU2に送信する(ステップSC2)。調整完了情報は、時刻の調整が完了したことを示す情報である。
図5の動作主体が末端ECU6である場合、第2送信部701は、ステップSC1で否定判定し、調整完了情報を送信する。
【0052】
図5の動作によって、セントラルECU2は、末端ECU6における時刻同期が完了したことを把握できるようになる。車両制御システム1においては、セントラルECU2、ゾーンECU4、末端ECU6の順にECUが接続している。そのため、末端ECU6で時刻同期が完了した場合は、システム全体として時刻同期が完了していると見做せる。よって、末端ECU6がセントラルECU2に調整完了情報を送信することで、セントラルECU2が、システム全体として時刻同期が完了したか否かを把握できるようになる。
【0053】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態の説明では、第1実施形態の車両制御システム1の各部の構成要素と同じ構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を適宜に省略する。
【0054】
第2実施形態では、接続ECU7が、受信した経過時間情報J2を記憶し、記憶した経過時間情報J3に基づいて時刻同期を行う。
【0055】
第2実施形態において、第2受信部702は、経過時間情報J2をセントラルECU2から受信すると、受信した経過時間情報J2を第2メモリ71に記憶させる。そして、第2送信部701は、第2メモリ71に経過時間情報J2が記憶されると、セントラルECU2に停止情報を送信する。停止情報は、経過時間情報J2の送信を停止させる情報である。セントラルECU2が停止情報を受信すると、計測部205は、経過時間の計測を停止する。また、セントラルECU2が停止情報を受信すると、第1送信部201は、時刻情報J1を生成するトリガーが発生しても、時刻情報J1を送信する一方で、経過時間情報J2を送信しない。
【0056】
停止情報を送信後、すなわち経過時間情報J2の記憶後、第2受信部702がセントラルECU2から時刻情報J1を再受信した場合、調整部404は、再受信された時刻情報J1と、第2メモリ71が記憶する経過時間情報J2とに基づいて、第1実施形態と同様に、第2計時部203が計時する時刻を調整する。
【0057】
[3.他の実施形態]
上述した各実施形態は、あくまでも一態様を示すものであり任意に変形及び応用が可能である。
【0058】
上述した実施形態では、本開示の「第2電子機器」として接続ECU7を例示した。しかしながら、本開示の「第2電子機器」は、セントラルECU2に直接接続するECUであって、且つ、セントラルECU2以外のECUが接続しないECUでもよい。このECUとしては、IVI(In-Vehicle Infotainment)ECUや、リアカメラ、タッチパネル、メータパネル、TCU(Telematics Control Unit)、V2X(Vehicle to Everything)通信装置などが例に挙げられる。
【0059】
上述した実施形態では、セントラルECU2に接続するゾーンECU4の数が1であるが、セントラルECU2に接続するゾーンECU4の数は、複数でもよい。このことは、末端ECU6についても同様である。
【0060】
上述した実施形態2では、一度、セントラルECU2が経過時間情報J2を送信すると、再度の経過時間情報J2の送信が行われない構成である。他の実施形態では、所定回数以上、時刻情報J1を生成するトリガーが発生したら、停止情報による停止をキャンセルして、経過時間の計測及び経過時間情報J2の送信を再実行する構成としてもよい。この構成の場合、接続ECU7は、経過時間情報J2を再受信した場合、最新に受信した経過時間情報J2に基づいて第2計時部703が計時する時刻を調整し、且つ、第2メモリ71が記憶する経過時間情報J2を最新に受信した経過時間情報J2に更新する。
【0061】
第1プロセッサ20、及び第2プロセッサ70は、複数のプロセッサにより構成されてもよいし、単一のプロセッサで構成されてもよい。これらプロセッサは、上述した機能部を実現するようプログラムされたハードウェアでもよい。この場合、これらプロセッサは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される。
【0062】
また、
図1に示した車両制御システム1の各部の構成は一例であって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0063】
また、
図3に示す動作のステップ単位は、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本開示が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本開示の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0064】
また、上述した車両制御システム1の制御方法を、プロセッサを用いて実現する場合、このプロセッサに実行させるプログラムを記録媒体、又はこのプログラムを伝送する伝送媒体の態様で構成することも可能である。すなわち、第1制御プログラム211は、可搬型の情報記録媒体に第1制御プログラム211を記録させた状態で実現することも可能である。情報記録媒体は、ハードディスク等の磁気的記録媒体、CD等の光学的記録媒体、USB(Universal Serial Bus)メモリやSSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイスが挙げられるが、その他の記録媒体を用いることも可能である。また、第2制御プログラム711は、第1制御プログラム211と同様、可搬型の情報記録媒体に第2制御プログラム711を記録させた状態で実現することも可能である。
【0065】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0066】
(構成1)第1電子機器と、前記第1電子機器に接続される第2電子機器と、を備え、前記第1電子機器は、第1計時部と、前記第1計時部が計時した時刻を示す時刻情報を生成する生成部と、前記生成部が生成した前記時刻情報を前記第2電子機器に送信し、また、前記生成部が前記時刻情報の生成を開始してから生成した前記時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報を前記第2電子機器に送信する第1送信部と、を備え、前記第2電子機器は、第2計時部と、前記時刻情報と前記経過時間情報とを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記時刻情報と前記経過時間情報とに基づいて、前記第2計時部が計時する時刻を調整する調整部と、を備える、車両制御システム。
【0067】
構成1の車両制御システムによれば、時刻情報の生成を開始してから時刻情報を送信するまでの経過時間を考慮して、第2電子機器が計時する時刻を調整できるため、電子機器間で精度良く時刻同期を行うことができる。また、構成1の車両制御システムによれば、第1電子機器からの情報送信で電子機器間の時刻同期が精度良く行われるため、電子機器間で往復の通信が必要なく、時刻同期に係わる通信頻度を低減できる。
【0068】
(構成2)前記調整部は、前記時刻情報が示す時刻と前記経過時間情報が示す前記経過時間とを足し合わせた時刻に基づいて、前記第2計時部が計時する時刻を調整する、構成1に記載の車両制御システム。
【0069】
構成2の車両制御システムによれば、時刻情報が示す時刻と経過時間情報が示す経過時間とを足し合わせた時刻に基づいて、第2計時部が計時する時刻を調整するため、第1電子機器が計時する時刻に対して、第2電子機器が計時する時刻を精度良く同期させることができる。よって、電子機器間においてより精度良く時刻同期を行うことができる。
【0070】
(構成3)前記第2電子機器は、前記受信部が受信した前記経過時間情報を記憶する記憶部を備え、前記調整部は、前記経過時間情報の受信後に前記時刻情報を前記受信部が受信した場合、前記受信部が受信した前記時刻情報と、前記記憶部が記憶する前記経過時間情報と、に基づいて、前記第2計時部が計時する時刻を調整する、構成1又は構成2に記載の車両制御システム。
【0071】
構成3の車両制御システムによれば、第1電子機器から受信した経過時間情報を記憶することで、次回以降の時刻同期においては時刻情報の受信のみで精度良く時刻同期を行うことができる。よって、電子機器間で精度良く時刻同期を行うことができ、且つ、電子機器間での通信頻度を低減できる。
【0072】
(構成4)前記第2電子機器は、前記第1電子機器と接続する通信バスと異なる通信バスに接続されていない場合、前記第2計時部が計時する時刻を調整した後に、時刻の調整が完了したことを示す調整完了情報を前記第1電子機器に送信する第2送信部を備える、構成1から構成3のいずれか一つに記載の車両制御システム。
【0073】
構成4の車両制御システムによれば、第2電子機器が調整完了情報を第1電子機器に送信するため、第1電子機器が、システム全体として時刻同期が完了したタイミングを把握できる。
【0074】
(構成5)前記第1電子機器と前記第2電子機器とは、CAN規格に従って通信する、構成1から構成4のいずれか一つに記載の車両制御システム。
【0075】
構成5の車両制御システムによれば、第1電子機器と第2電子機器とがCAN規格に従って通信する場合でも、電子機器間で精度良く時刻同期を行うことができる。そのため、車両制御システムのコスト低下を図りつつ、電子機器間で精度良く時刻同期を行うことができる。
【0076】
(構成6)第1電子機器と、前記第1電子機器に接続される第2電子機器と、を備える車両制御システムの制御方法であって、前記第1電子機器が、前記第1電子機器が計時した時刻を示す時刻情報を生成し、前記第1電子機器が、生成した前記時刻情報を前記第2電子機器に送信し、前記第1電子機器が、前記時刻情報の生成を開始してから生成した前記時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報を前記第2電子機器に送信し、前記第2電子機器が、前記時刻情報と前記経過時間情報とを受信し、前記第2電子機器が、受信した前記時刻情報と前記経過時間情報とに基づいて、計時する時刻を調整する、車両制御システムの制御方法。
【0077】
構成6の車両制御システムの制御方法によれば、構成1の車両制御システムの効果と同様の効果を奏する。
【0078】
(構成7)車両が備える電子機器であって、計時部と、前記計時部が計時した時刻を示す時刻情報を生成する生成部と、前記生成部が生成した前記時刻情報を他の電子機器に送信し、また、前記生成部が前記時刻情報の生成を開始してから生成した前記時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報を前記他の電子機器に送信する送信部と、を備える、電子機器。
【0079】
構成7の電子機器によれば、他の電子機器が、時刻情報の生成を開始してから時刻情報を送信するまでの経過時間を考慮して、計時する時刻を調整できるようになるため、電子機器間で精度良く時刻同期を行うことができる。
【0080】
(構成8)車両が備える電子機器のプロセッサを、計時部と、前記計時部が計時した時刻を示す時刻情報を生成する生成部と、前記生成部が生成した前記時刻情報を他の電子機器に送信し、また、前記生成部が前記時刻情報の生成を開始してから生成した前記時刻情報を送信するまでの経過時間を示す経過時間情報を前記他の電子機器に送信する送信部と、して機能させる、プログラム。
【0081】
構成8のプログラムによれば、構成7の電子機器と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0082】
1…車両制御システム、2…セントラルECU(第1電子機器、電子機器)、3…第1通信バス、4…ゾーンECU(第2電子機器、他の電子機器)、5…第2通信バス、6…末端ECU(第2電子機器、他の電子機器)、7…接続ECU(第2電子機器、他の電子機器)、20…第1プロセッサ(プロセッサ)、21…第1メモリ、22…第1通信部、70…第2プロセッサ、71…第2メモリ(記憶部)、72…第2通信部、201…第1送信部(送信部)、202…第1受信部、203…第1計時部(計時部)、204…生成部、205…計測部、211…第1制御プログラム(プログラム)、701…第2送信部、702…第2受信部(受信部)、703…第2計時部、704…調整部、711…第2制御プログラム、J1…時刻情報、J2…経過時間情報、V…車両。