(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の処置のためのIL20-RBに特異的な抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241114BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241114BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241114BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241114BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241114BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241114BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P11/00
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2022514649
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2020074660
(87)【国際公開番号】W WO2021043933
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-07-11
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513246469
【氏名又は名称】インサーム(インスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
(73)【特許権者】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(73)【特許権者】
【識別番号】516032920
【氏名又は名称】アンスティテュ・レジオナル・デュ・カンセール・ドゥ・モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT REGIONAL DU CANCER DE MONTPELLIER
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】513027318
【氏名又は名称】アンスティテュ パストゥール ドゥ リール
(73)【特許権者】
【識別番号】518057608
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ドゥ・リール
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ゴッセ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ピシャヴァン,ミュリエル
(72)【発明者】
【氏名】マルチーノー,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】シェントゥフ,ミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ロベール,ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ル・ルー,メリーナ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536365(JP,A)
【文献】国際公開第2017/202813(WO,A1)
【文献】EBioMedicine,2018年,Vol.37,pp.417-427
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号10又は配列番号11に示す重鎖及び配列番号12に示す軽鎖を含む、IL-20Rbに特異性を有するモノクローナル抗体。
【請求項2】
抗体依存性細胞媒介細胞傷害を媒介するFc領域を含まず、ゆえに抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発するFc部分を含まない、請求項
1に記載
の抗体。
【請求項3】
請求項
1に記載の抗体の重鎖及
び軽鎖をコードする核酸分子。
【請求項4】
請求項
3に記載の核酸によって遺伝子導入した、感染させた、又は形質転換した宿主細胞。
【請求項5】
薬剤としての使用のための請求項
1に記載の抗体。
【請求項6】
請求項
1に記載のモノクローナル抗体を含む医薬組成物。
【請求項7】
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪を処置するための請求項6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、特に免疫学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界的に病的状態及び死亡の主な原因となっている。これは、WHOによると、2030年に世界的に第3番目の死因となると考えられる。COPDは、進行性で不可逆性の気流制限によって特徴づけられる肺の障害である。喫煙は、COPD発症の主要な危険因子である。タバコの煙(CS)に長期曝露することで炎症プロセスを誘発し、これが、最終的に肺のバリア機能を変えて、免疫防御機構を低下させ、呼吸器感染への感受性を高めることになる。そうした感染は、COPD患者の臨床状態をさらに変えて、さらなる病的状態及び死亡を非直接的に引き起こす。患者におけるCOPDの急性増悪(AE-COPD)は、肺機能の避けられない低下、浮腫の増加、並びに気道及び全身の炎症を伴う。肺炎球菌及びインフルエンザ菌による細菌感染は、AE-COPDの主な原因である(1)。感染の予後は、宿主の抗細菌応答の効果に密に関連する。抗細菌応答を調整する要因のなかでも、インターロイキン(IL)-17及びIL-22を含むTh17サイトカインは、抗微生物ペプチドの分泌及びエフェクター細胞の動員を調節することによって肺炎球菌のクリアランスに主要な役割を果たしている(4、5)。また、これらのサイトカインは、組織損傷を限定的にすることで肺の恒常性を維持しており、このプロセスは、二次的な細菌侵入を防ぐため、不可欠のものとなっている(6、7)。IL-22は、IL-19、IL-20、IL-24、及びIL-26と共に、IL-20サイトカインファミリーに属する。IL-19、IL-20、及びIL-24はすべて、IL-20Ra及びIL-20Rbから構成されるヘテロ二量体の受容体である、I型IL-20受容体(IL-20R)を結合する(8、9)。さらに、IL-20及びIL-24は、IL-22受容体-a1サブユニット及びIL-20Rbから構成されるヘテロ二量体の受容体である、II型IL-20Rを結合する。したがって、IL-20Rbサブユニットに対する抗体を遮断することで、この経路を効果的に中和することができる。これらのIL-20受容体は、主に上皮細胞及び単核食細胞に発現するが、活性好中球及び一部のリンパ球にも発現する(8、10)。IL-20関連サイトカインの役割は議論されるところであり、示される「抗炎症」効果は皮膚組織の恒常性及び創傷治癒に関与していた。しかしながら、Mylesらは、IL-20関連サイトカインがIL-17及びIL-22産生をダウンレギュレートすることによってマウスにおける皮膚の黄色ブドウ球菌感染を促進することを示した(11)。これまでのデータにより、IL-20サイトカインが肺炎球菌によって誘発されることが示された(12)。COPDマウスにおいて、CSへの曝露により、肺においてIL-19及びIL-20mRNAがより多く発現され、肺炎球菌による感染がIL-19、IL-20、及びIL-24の発現を著しく高めた。タバコの煙(CS)への長期曝露によって発症させた、マウスにおけるCOPD疾患を再現する実験モデルにおいて(13)、呼吸器病原体への感受性の高まりが、IL-22産生欠損に関連することを示した(14、15)。一方で、これらの動物では、肺炎球菌又はインフルエンザ菌に対応してIL-19、IL-20、及びIL-24の発現が高まった。抗IL-20Rb遮断抗体による処置は、肺炎球菌に感染させたコントロールマウスにおいて細菌クリアランスを高め(12)、細菌負荷及び炎症浸潤を減少させることによって、CS曝露マウスを細菌感染から防護した(特許文献1)。したがって、AE-COPDの処置におけるその使用において中和活性を有するIL-20Rbに特異的なモノクローナル抗体の作製に対する関心がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
特許請求の範囲によって規定するように、本発明は、IL-20Rbに特異的なモノクローナル抗体、及び治療目的、特にAE-COPDの処置のためのその使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、組換えヒトIL-20Rbを結合するようにマウスIgG2aとして作製した組換え抗IL-20Rb抗体(ネイティブB7及び突然変異B7)の結合を示す。結合を、ラットの抗IL-20Rbモノクローナル抗体(クローン20RNTC)と比較した。組換えIL-20Rbタンパク質を、PBS中において1μg/ml濃度でmaxisorb Nuncプレートに4℃で一晩結合させた。10%ウシ胎仔血清を加えたPBS中にて1時間飽和させた後、抗体を1μg/mlの濃度で2時間添加した。洗浄後、抗体結合を、ビオチン標識した抗マウスIgGの添加、及びその後のストレプトアビジン-HRP(Thermoscientific)によって検出した。TMB基質の添加によって反応を示し、光学密度を495nmにおいて読み取った。結果を光学密度の平均±標準誤差として表した。
【
図2A-B】
図2A-Bは、本願のヒト抗IL-20RB抗体(B7)及びラットの抗IL-20Rbモノクローナル抗体(クローン20RNTC)の両方の抗IL-20Rb抗体の間の競合を示す。両方の抗体を、蛍光色素で標識し(APC、B7*及び20RNTC*)、アイソタイプコントロール(クローン13R4*)も標識した。B7*(A)及び20RNTC*(B)(5μg/ml)の結合を、様々な濃度(5、10、及び20μg/ml)の非標識抗体(B7、20RNTC、及びコントロール13R4のいずれか)の存在下で骨髄由来樹状細胞(BMDC)において評価した。結果を、アイソタイプコントロール(13R4)に基づく陽性細胞のパーセンテージとして表し、これは、2つの独立実験の平均±標準誤差である。
【
図3】
図3は、本願のヒト抗IL-20RB抗体(B7)、この抗体の突然変異形態(突然変異B7)、及びラットの抗IL-20Rbモノクローナル抗体(クローン20RNTC)の抗IL-20Rb抗体の間の競合を示す。ELISAプレートを、組換えIL-20RBでコーティングした(1μg/ml)。各抗体の結合を、様々な濃度の競合物(50、500、及び5000ng/mlの20RNTC、B7、及び突然変異B7)の存在下又は非存在下で評価した。B7及び20RNTC抗体の結合を、それぞれビオチン標識した抗マウス又は抗ラットのIgG抗体で検出した。この結合を、HRPコンジュゲートストレプトアビジンの添加、その後のTMB基質の添加によって示した。結果を光学密度(OD)として表した。
【
図4】
図4は、ヒト気道上皮細胞(BEAS-2B細胞株)におけるIL-20サイトカインに対する応答を阻害する、20RNTC、A7、及びB7クローンを含む抗IL-20Rb抗体の能力を示す。BEAS-2B細胞を、24ウェルプレート(Thermo-Scientific)において完全気道上皮細胞培地(Promo-Cell)にてコンフルエントになるまで培養した。コンフルエントの細胞を、同じ培地において成長因子なしで一晩飢餓状態にした後、BEAS-2B細胞を、様々な抗体(5μg/ml)と共にプレインキュベートしてから、IL-19又はIL-20で刺激した(BioTechne、20ng/ml)。CXCL1の産生を、24時間のインキュベーション後に採取した細胞上清においてELISAによって評価し(BioTechne、英国)、結果を阻害パーセンテージとして表し、0%はアイソタイプコントロールとサイトカインを伴う細胞に対応し、100%阻害は非刺激細胞において得られるレベルと対応する。結果を平均±標準誤差として表した(n=3)。
【
図5】
図5は、マウス気管上皮細胞(初代培養)におけるIL-20サイトカインに対する応答を阻害する、20RNTC、A7、及びB7クローンを含む抗IL-20Rb抗体の能力を示す。気管の酵素消化をプロナーゼ(1.6mg/ml)で1時間行った後、気管上皮細胞を、24ウェルプレート(Thermo-Scientific)において抗生剤を加えた2%のUltroser G(Pall Lab.)を添加したDMEM-F12培地(InVitrogen)にてコンフルエントになるまで培養した。コンフルエントの細胞を、同じ培地においてUltroser Gなしで一晩飢餓状態にした後、気管細胞を、様々な抗体(アイソタイプコントロール(IgG)及び抗IL-20Rb抗体の本願のB7及びD6.2クローン及び20RNTCモノクローナル抗体(5μg/ml))と共にプレインキュベートしてから、IL-19又はIL-20で刺激した(BioTechne、20ng/ml)。IL-6及びCXCL1の産生を、24時間のインキュベーション後に採取した細胞上清においてELISAによって評価した(BioTechne、英国)。結果を平均±標準誤差として表した(n=3)。
【
図6】
図6は、タバコの煙に長期曝露したマウスにおける肺炎球菌による感染において、アイソタイプコントロール(IgG)と比較した抗IL-20Rb抗体(ネイティブB7クローン)での処置の効果を示す。マウスを、タバコの煙に12週間曝露し(5タバコ/日、5日/週)、この後、肺炎球菌による感染(血清型1、4×10
5cfuを鼻腔内注入)の1日前及び1日後に、100μg/miceの各抗体を腹腔内投与することで処置した。細菌負荷を、気管支肺胞洗浄(BAL)、肺組織、及び血液において感染のピーク(3日目)で評価した。結果を、mlに対するcfuの平均±標準誤差として表した(n=グループにつき8~10匹のマウス)。
【
図7A-B】
図7A-Bは、タバコの煙に長期曝露したマウスにおける肺炎球菌による感染に対する応答において、アイソタイプコントロール(IgG)と比較した抗IL-20Rb抗体(ネイティブB7クローン)での処置の効果を示す。マウスを、タバコの煙に12週間曝露し(5タバコ/日、5日/週)、この後、肺炎球菌による感染(血清型1、4×10
5cfuを鼻腔内注入)の1日前及び1日後に、100μg/miceの各抗体を腹腔内投与することで処置した。全細胞(A)及び好中球(B)(CD45
+、CD11b
high、及びLy6G
highとして同定)の数を、気管支肺胞洗浄(BAL)及び肺組織(コラゲナーゼによる酵素消化後に得た)において感染のピーク(3日目)で評価した。結果を、平均±標準誤差として表した(n=グループにつき8~10匹のマウス)。
【
図8】
図8は、組換えヒト及びマウスIL-20Rbに対する組換え抗IL-20Rb抗体(ネイティブB7クローン(5μg/ml))の結合を示す。組換えIL-20Rbタンパク質を、PBS中において1μg/ml濃度でmaxisorb Nuncプレートに4℃で一晩結合させた。10%ウシ胎仔血清を加えたPBS中にて1時間飽和させた後、抗体を1μg/mlの濃度で2時間添加した。洗浄後、抗体結合を、ビオチン標識した抗マウスIgGの添加、及びその後のストレプトアビジン-HRP(Thermoscientific)によって検出した。TMB基質の添加によって反応を示し、光学密度を495nmにおいて読み取った。結果を光学密度として表した。
【
図9A-C】
図9A-Cは、抗IL-20Rb抗体の20RNTC及びB7(ネイティブ又は突然変異形態)クローンのいずれかによって認識される抗原のウエスタンブロット分析を示す。(A)組換えヒトIL-20Rbタンパク質(1μg/ml)を各レーンに積層した。泳動及び転写後、各バンドを対応する抗体で示した。(B)ヒトHELA細胞株の細胞ライセートを各レーンに積層した(バンドにつき10μg)。泳動及び転写後、各バンドを対応する抗体で示した。(C)コントロールマウスの肺及び脾臓組織のタンパク質抽出物を各レーンに積層した(バンドにつき10μg)。泳動及び転写後、各バンドを対応する抗体で示した。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、IL-20Rbに特異的であり、IL-20Rbの細胞外ドメインに結合する抗体に関する。
【0007】
本明細書において使用するように、「IL-20サイトカイン」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、IL-19(例のNCBIのヒト参照配列:NP_715639.1)、IL-20(例のNCBIのヒト参照配列:NP_061194.2)、及びIL-24(例のNCBIのヒト参照配列:NP_006841.1)を含むIL-10サイトカインファミリーのサブグループを指す。IL-20サイトカインはIL-22に極めて近く、同じIL-10サイトカインファミリーのサブグループに属する。IL-19、IL-20、及びIL-24(喘息とBPCO)は、上皮細胞、抗原提示細胞、一部のリンパ球、及び顆粒球に存在するIL-20Ra鎖とIL-20Rb鎖からなる受容体複合体を介して作用する。IL-20及びIL-24はさらに、第2受容体複合体(IL-22Ra/IL-20Rb)を介してシグナル伝達することができる。
【0008】
本明細書において使用するように、「IL-20Rb」という用語は当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、インターロイキン-20受容体サブユニットβを指す。例のIL-20Rbのヒトアミノ酸配列を配列番号1に示す。IL-20-RBの細胞外ドメインは、配列番号1における30番目のアミノ酸残基から233番目のアミノ酸残基の範囲であるアミノ酸配列からなる。
配列番号1 >sp|Q6UXL0|I20RB_HUMAN Interleukin-20 receptor subunit beta OS=Homo sapiens OX=9606 GN=IL20RB PE=1 SV=1
MQTFTMVLEEIWTSLFMWFFYALIPCLLTDEVAILPAPQNLSVLSTNMKHLLMWSPVIAPGETVYYSVEYQGEYESLYTSHIWIPSSWCSLTEGPECDVTDDITATVPYNLRVRATLGSQTSAWSILKHPFNRNSTILTRPGMEITKDGFHLVIELEDLGPQFEFLVAYWRREPGAEEHVKMVRSGGIPVHLETMEPGAAYCVKAQTFVKAIGRYSAFSQTECVEVQGEAIPLVLALFAFVGFMLILVVVPLFVWKMGRLLQYSCCPVVVLPDTLKITNSPQKLISCRREEVDACATAVMSPEELLRAWIS
【0009】
本明細書において使用するように、「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、本発明において等しく使用し得る。「抗体」という用語は、本明細書において使用するように、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分、すなわち、抗原を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。ゆえに、抗体という用語は、抗体分子全体だけでなく、抗体フラグメント並びに抗体及び抗体フラグメントの変異体(誘導体を含む)も含む。自然抗体において、2つの重鎖はジスルフィド結合により互いに結合し、それぞれの重鎖はジスルフィド結合により1つの軽鎖と結合している。ラムダ(1)とカッパ(k)の2つの種類の軽鎖がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主な重鎖のクラス(又はアイソタイプ)IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEがある。それぞれの鎖は、特定の配列ドメインを含む。軽鎖は、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)との2つのドメインを含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)及び3つから4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、及びCH4、これらをまとめてCHという)の4つ(α、δ、γ)から5つ(μ、ε)のドメインを含む。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の両方の可変領域が、抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動、補体結合、及びFc受容体(FcR)との結合などの重要な生物学的特性を与える。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部であり、1つの軽鎖及び1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主に高頻度可変領域又は相補性決定領域(CDR)の残基で構成されている。ときとして、非高頻度可変領域又はフレームワーク領域(FR)の残基が、抗体結合部位に関与し得る、又は全ドメイン構造、つまり結合部位に影響し得る。CDRは、共にネイティブ免疫グロブリン結合部位の自然Fv領域の結合親和性及び特異性を規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖はそれぞれ、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と呼ばれる3つのCDRを有する。ゆえに、抗原結合部位は、典型的に、重鎖及び軽鎖のV領域のそれぞれのCDRのセットを含む6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDRの間に配置されたアミノ酸配列を指す。抗体可変ドメインの残基は、従来より、Kabat等によって考案されたシステムに従って番号付けされている。このシステムは、Kabat等、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国保健福祉省、NIH、米国(以下「Kabat等」)に述べられている。この番号付けシステムを本明細書に使用している。Kabatの残基名称は、配列番号の配列におけるアミノ酸残基の線形の番号付けに常に直接対応しているわけではない。実際の線形のアミノ酸配列は、基本の可変ドメイン構造のフレームワーク領域であっても相補性決定領域(CDR)であっても、構造成分の短縮、又は構造成分への挿入に対応して、厳密なKabat番号付けよりも少ない又は多いアミノ酸を含み得る。残基の正しいKabat番号付けは、所定の抗体おいて、抗体の配列における相同性の残基を「標準的な」Kabat番号付けした配列とアライメントすることによって定めることができる。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従うと、残基31~35B(VH-CDR1)、残基50~65(VH-CDR2)、及び残基95~102(VH-CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従うと、残基24~34(VL-CDR1)、残基50~56(VL-CDR2)、及び残基89~97(VL-CDR3)に位置する。
【0010】
本明細書において使用するように、「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などという用語は、本明細書において使用するとき、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。
【0011】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、抗体全体、Fv、scFv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、又は二重特異性抗体からなる群より選択される抗体分子である。
【0012】
本明細書において使用するように、「抗体全体」又は「インタクトな抗体」は、抗原結合部位並びにCL及び少なくとも重鎖の定常ドメインCH1、CH2、及びCH3を含むものである。定常ドメインは、ネイティブ配列の定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体とすることができる。
【0013】
本明細書において使用するように、「抗体フラグメント」という用語は、抗原のエピトープと(例えば、結合、立体障害、安定化/非安定化、空間分布によって)特異的に相互作用する能力を保持する、インタクトな抗体の少なくとも一部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を指す。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、単鎖抗体分子、特にscFv抗体フラグメント、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VH及びCHIドメインからなるFdフラグメント、直鎖状抗体、単一ドメイン抗体、例えばsdAb(VL又はVHのいずれか)、ラクダVHHドメイン、例えばジスルフィド架橋によってヒンジ領域で連結した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントなどの抗体フラグメントから形成される多特異性抗体、並びに単離CDR、又は抗体の他のエピトープ結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。また、抗原結合フラグメントは、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びビス-scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136,2005参照)。また、抗原結合フラグメントは、フィブロネクチンIII型などのポリペプチドに基づく足場にグラフティングすることができる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディを記載する米国特許第6,703,199号明細書参照)。抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、容易に結晶化する能力を反映する名称である残りの「Fc」フラグメントとを作製する。
【0014】
本明細書において使用するように、「抗体の機能性フラグメント又は類似体」は、全長抗体と共通する定性的生物学的活性を有する化合物である。例えば、抗IgE抗体の機能性フラグメント又は類似体は、そうした分子の能力が、抗親和性受容体のFc[ε]RIに結合する能力を有しないように、又は実質的に低下させるように、IgE免疫グロブリンに結合可能であるものである。
【0015】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小抗体フラグメントである。このフラグメントは、非共有結合性の強い会合をした1つの重鎖の可変領域ドメイン及び1つの軽鎖の可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を与える6つの高頻度可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)を得る。しかしながら、単一可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つCDRのみを含むFvの半分)でも、結合部位全体よりも低い親和性だが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0016】
この発明の抗体のフラグメント及び誘導体(特に記載のない限り、又は文脈において明らかに矛盾しない限り、本願に使用する「抗体」という用語に含まれる)は、当該技術分野で既知の技術によって作製可能である。「フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、一般に抗原結合部位又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;近接アミノ酸残基の1つの中断のない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント(本明細書において「単鎖抗体フラグメント」又は「単鎖ポリペプチド」と呼ぶ)であって、(1)単鎖Fv分子、(2)付随する重鎖部分を含まない、1つの軽鎖可変ドメインのみを含む単鎖ポリペプチド、又は軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むそのフラグメント、及び(3)付随する軽鎖部分を含まない、1つの重鎖可変領域のみを含む単鎖ポリペプチド、又は重鎖可変領域の3つのCDRを含むそのフラグメントを限定することなく含むもの;並びに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含む。本抗体のフラグメントは、標準的な方法を使用して取得可能である。例えば、Fab又はF(ab’)2フラグメントは、従来の技術に従って、単離した抗体のプロテアーゼ消化によって作製することができる。免疫反応性フラグメントを、in vivoにおいてクリアランスを遅延させて、より望ましい薬物動態プロファイルを得るように、既知の方法を使用して修飾可能であるということが理解される。フラグメントは、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾することができる。PEGをFab’フラグメントにカップリングして部位特異的にコンジュゲートするための方法は、例えば、Leong等、Cytokines 16 (3):106-119 (2001)、及びDelgado等、Br.J.Cancer 5 73 (2):175-182(1996)に記載され、これらの開示は参照することによって本明細書に援用される。
【0017】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0018】
本明細書において使用するように、「キメラ抗体」という用語は、非ヒト抗体のVHドメイン及びVLドメイン、並びにヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインを含む抗体を指す。一部の実施形態において、「キメラ抗体」は、(a)定常領域(すなわち重鎖及び/若しくは軽鎖)若しくはそれらの一部を変化、置換、又は交換して、抗原結合部位(可変領域)が異なる若しくは変化させたクラス、エフェクター機能、及び/若しくは種の定常領域に結合する抗体分子、若しくは、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などキメラ抗体に新たな特性を与える全面的に異なる分子、又は(b)可変領域、若しくはその一部を、異なる又は変化させた抗原特異性を有する可変領域に変化、置換、又は交換した抗体分子である。また、キメラ抗体は、霊長類化抗体及び特にヒト化抗体を含む。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に見受けられない残基を含むことができる。これらの改変は、抗体機能をさらに改良するためになされる。さらなる詳細について、Jones等、Nature 321:522-525(1986);Riechmann等、Nature 332:323-329(1988);及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)が参照される(米国特許第4,816,567号明細書;及びMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851-6855(1984)参照)。
【0019】
本明細書において使用するように、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体からの可変領域フレームワーク領域及び定常領域を有するが、それまでの非ヒト抗体のCDRを保持する抗体を指す。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、最小の非ヒト免疫グロブリン由来の配列を含む。多くの場合、ヒト化抗体及びその抗体フラグメントは、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体又は抗体フラグメント)であり得る。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体/抗体フラグメントは、レシピエント抗体にも移入したCDR又はフレームワーク配列にも見受けられない残基を含むことができる。そうした抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を保持するように、しかしながら非ヒト抗体に対する免疫反応を防ぐように設計されている。これらの改変は、抗体又は抗体フラグメントの機能をさらに改良し最適化することができる。一般に、ヒト化抗体又はその抗体フラグメントは、すべて又は実質的にすべてのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、すべて又は大部分のFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ及び典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み得る。また、ヒト化抗体又は抗体フラグメントは、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含むことができる。さらなる詳細について、Jones等、Nature、321:522-525、1986;Reichmann等、Nature、332:323-329、1988;Presta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593-596、1992が参照される。
【0020】
本明細書において使用するように、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発により、又はin vivoでの体細胞突然変異により導入された突然変異)を含んでいてもよい。しかしながら、一部の実施形態において、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用するように、マウスなどの他の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフティングされている抗体を含むことを意図しない。
【0021】
一部の実施形態において、本発明の抗体は単離される。本明細書において使用するように、「単離した抗体」は、その自然環境の成分から分離及び/又は回収したものである。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断的又は治療的使用を妨害し得る物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性成分を含み得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ローリー法によって測定するとき95重量%を超える、最も好ましくは99重量%を超える抗体に精製されるか、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)を使用して、N末端若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に精製されるか、又は(3)還元若しくは非還元条件下で、クーマシーブルー、若しくは好ましくは銀染色を使用して、SDS-PAGEによって示されるような均質度に精製される。単離した抗体は、抗体の自然環境における少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内の原位置の抗体を含む。しかし、通常は、単離した抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製され得る。
【0022】
本明細書において使用するように、「結合」という用語は、例えば、共有結合性、静電性、疎水性、並びに、塩橋及び水橋(water bridge)などの相互作用を含むイオン及び/又は水素結合相互作用による、2つの分子間の直接の関連を指す。特に、本明細書において使用するとき、抗体が所定の抗原又はエピトープに結合するという文脈における「結合」という用語は、典型的に、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、又はさらに約10-11M以下のKDに対応する親和性での結合である。抗体のKDを測定する方法は当該技術分野で周知であり、リガンドとして抗原の可溶形態及びアナライトとして抗体を使用したBIAcore3000機器における表面プラズモン共鳴法(SPR)技術を限定することなく含む。BIACORE(登録商標)(GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)は、モノクローナル抗体のエピトープビン群に慣例的に使用されている多様な表面プラズモン共鳴法アッセイフォーマットの1つである。抗体の親和性は、例えば、Scatchard等(Ann.N.Y.Acad Sci.USA,51:660(1949))によって記載されるものなどの他の従来技術を使用して容易に測定することができる。抗原、細胞、又は組織に対する抗体の結合特性は、一般に、例えば、免疫組織化学法(IHC)及び/又は蛍光標識細胞分取法(FACS)などの免疫蛍光法に基づくアッセイを含む、免疫検出方法を使用して測定及び評価することができる。典型的に、抗体は、所定の抗原と同一でない又は密接に関連しない非特異性抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合におけるKDよりも、少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で、所定の抗原に結合する。抗体のKDが極めて低い(すなわち、抗体が高親和性を有する)と、抗体が抗原を結合するKDが、典型的に非特異性抗原に対するKDよりも少なくとも10,000倍低い。抗体は、そうした結合が検出できない(例えばプラズモン共鳴法(SPR)技術を使用してBIAcore3000機器においてリガンドとして抗原及びアナライトとして抗体の可溶形態を使用して)、又は、その抗体及び異なる化学構造若しくはアミノ酸配列を有する抗原若しくはエピトープによって検出される結合よりも100倍、500倍、1000倍、若しくは1000倍を超えて少ない場合、実質的に抗原又はエピトープを結合しないといえる。
【0023】
本明細書において使用するように、「特異性」という用語は、非IL-20Rbタンパク質に比較的小さい検出反応性を有しながら、IL-20Rbなどの抗原に存在するエピトープを検出するように結合するという抗体の能力を指す。特に、本発明の抗体は、IL-20Ra及びIL-22Ra1に特異性を有しない。特異性は、本明細書の他の箇所に記載するように、例えばBiacore機器を使用して結合又は競合性結合アッセイによって、相対的に測定可能である。特異性は、例えば、他の無関係の分子への非特異的結合に対する特異的抗原への結合における親和性/結合力の約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1以上の比によって示すことができる(この場合、特異的抗原はIL-20Rbポリペプチドである)。「親和性」という用語は、本明細書において使用するように、エピトープに対する抗体の結合の強さを意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数Kdによって与えられ、[Ab-Ag]は、抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和性定数Kaは1/Kdによって定義される。mAbの親和性を測定するための好ましい方法は、Harlow等、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1988)、Coligan等、eds.、Current Protocols in Immunology、Greene Publishing Assoc.及びWiley Interscience,N.Y.(1992,1993)、及びMuller、Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に見受けられ、これらの参考文献は、参照することによって本明細書に全体的に援用される。mAbの親和性を測定するため、当該技術分野で周知である、1つの好ましい標準的な方法は、Biacore機器の使用である。
【0024】
一部の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、(i)配列番号2に示すVH-CDR1(NY-X3-MN、X3はS又はA)、(ii)配列番号3に示すVH-CDR2(YISGSSRYISYADFVKG)、及び(iii)配列番号4に示すVH-CDR3(SYYGMDV)のCDRを含む重鎖、並びに(i)配列番号5に示すVL-CDR1(AGTSSDVGGNYYVS)、(ii)配列番号6に示すVL-CDR2(GDSYRPS)、及び(iii)配列番号7に示すVL-CDR3(SSYTYYSTRV)のCDRを含む軽鎖、を含むモノクローナル抗体と、IL-20Rbに対する結合において交差競合する。
【0025】
一部の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、(i)配列番号8に示すVH-CDR1(NYSMN)、(ii)配列番号3に示すVH-CDR2(YISGSSRYISYADFVKG)、及び(iii)配列番号4に示すVH-CDR3(SYYGMDV)のCDRを含む重鎖、並びに(i)配列番号5に示すVL-CDR1(AGTSSDVGGNYYVS)、(ii)配列番号6に示すVL-CDR2(GDSYRPS)、及び(iii)配列番号7に示すVL-CDR3(SSYTYYSTRV)のCDRを含む軽鎖、を含むモノクローナル抗体と、IL-20Rbに対する結合において交差競合する。
【0026】
一部の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、(i)配列番号9に示すVH-CDR1(NYAMN)、(ii)配列番号3に示すVH-CDR2(YISGSSRYISYADFVKG)、及び(iii)配列番号4に示すVH-CDR3(SYYGMDV)のCDRを含む重鎖、並びに(i)配列番号5に示すVL-CDR1(AGTSSDVGGNYYVS)、(ii)配列番号6に示すVL-CDR2(GDSYRPS)、及び(iii)配列番号7に示すVL-CDR3(SSYTYYSTRV)のCDRを含む軽鎖、を含むモノクローナル抗体と、IL-20Rbに対する結合において交差競合する。
【0027】
本明細書において使用するように、「交差競合する」という用語は、抗原の特定領域に結合する能力を共有するモノクローナル抗体を指す。本開示において、「交差競合する」モノクローナル抗体は、標準的な競合性結合アッセイにおいて抗原への他のモノクローナル抗体の結合を妨害する能力を有する。そうしたモノクローナル抗体は、非限定的である理論において、競合する抗体と同じ、又は関連する、又は近傍の(例えば、構造的に類似する又は空間的に近い)エピトープに結合することができる。交差競合は、抗体Aが抗体Bの結合を、該抗体のうちの1つを有しないポジティブコントロールと比較して、少なくとも60%、具体的に少なくとも70%、及びより具体的には少なくとも80%低下させる場合に、及びその逆の場合も同様に、存在する。当業者が理解するように、競合を様々なアッセイ設定において評価することができる。1つの適切なアッセイは、表面プラズモン共鳴法技術を使用して相互作用の程度を測定可能な、Biacore技術の使用(例えば、BIAcore3000機器(Biacore、ウプサラ、スウェーデン))を使用することによって)に関与する。交差競合を測定する他のアッセイは、ELISAに基づく手法を使用する。さらに、その交差競合に基づき抗体を「ビニング」するための高スループットプロセスは、国際公開第2003/48731号に記載されている。
【0028】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、(i)配列番号2に示すVH-CDR1(NY-X3-MN、X3はS又はA)、(ii)配列番号3に示すVH-CDR2(YISGSSRYISYADFVKG)、及び(iii)配列番号4に示すVH-CDR3(SYYGMDV)のCDRを含む重鎖、並びに(i)配列番号5に示すVL-CDR1(AGTSSDVGGNYYVS)、(ii)配列番号6に示すVL-CDR2(GDSYRPS)、及び(iii)配列番号7に示すVL-CDR3(SSYTYYSTRV)のCDRを含む軽鎖、を含む。
【0029】
一部の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、(i)配列番号8に示すVH-CDR1(NYSMN)、(ii)配列番号3に示すVH-CDR2(YISGSSRYISYADFVKG)、及び(iii)配列番号4に示すVH-CDR3(SYYGMDV)のCDRを含む重鎖、並びに(i)配列番号5に示すVL-CDR1(AGTSSDVGGNYYVS)、(ii)配列番号6に示すVL-CDR2(GDSYRPS)、及び(iii)配列番号7に示すVL-CDR3(SSYTYYSTRV)のCDRを含む軽鎖、を含む。
【0030】
一部の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、(i)配列番号9に示すVH-CDR1(NYAMN)、(ii)配列番号3に示すVH-CDR2(YISGSSRYISYADFVKG)、及び(iii)配列番号4に示すVH-CDR3(SYYGMDV)のCDRを含む重鎖、並びに(i)配列番号5に示すVL-CDR1(AGTSSDVGGNYYVS)、(ii)配列番号6に示すVL-CDR2(GDSYRPS)、及び(iii)配列番号7に示すVL-CDR3(SSYTYYSTRV)のCDRを含む軽鎖、を含む。
【0031】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号10若しくは配列番号11に70%の同一性を有する重鎖、及び/又は配列番号12に70%の同一性を有する軽鎖を含む。
配列番号10:heavy chain of the B7 antibody FR1-(CDR1)-FR2-(CDR2)-FR3-(CDR3)-FR4
EVQLVESGGSLVKPGGSLRLSCAASGFTFS (NYSMN) WVRQAPGKGLEWIS (YISGSSRYISYADFVKG) RFTISRDNATNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCVR (SYYGMDV) WGRGTLVTVSS
配列番号11:heavy chain of the B7mut antibody FR1-(CDR1)-FR2-(CDR2)-FR3-(CDR3)-FR4
EVQLVESGGSLVKPGGSLRLSCAASGFTFS (NYAMN) WVRQAPGKGLEWIS (YISGSSRYISYADFVKG) RFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCVR (SYYGMDV) WGRGTLVTVSS
配列番号12:light chain of the B7 or B7mut antibody FR1-(CDR1)-FR2-(CDR2)-FR3-(CDR3)-FR4
QSVLTQPASVSGSPGQSITISC (AGTSSDVGGNYYVS) WYQQHPGKAPKLMIY (GDSYRPS) GVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYC (SSYTYYSTRV) FGGGTKLAVLG
【0032】
本発明において、第2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する第1のアミノ酸配列は、第1の配列が、第2のアミノ酸配列と70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;99、又は100%の同一性を有するということを意味する。配列同一性は多くの場合、同一性(又は類似性若しくは相同性)の比率として判定され、その比率が高いほど2つの配列の類似性が高い。比較のための配列アライメントの方法は当該技術分野において周知である種々のプログラム及びアライメントアルゴリズムが、Smith及びWaterman、Adv.Appl.Math.、2:482、1981;Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.、48:443、1970;Pearson及びLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、85:2444、1988;Higgins及びSharp、Gene、73:237-244、1988;Higgins及びSharp、CABIOS、5:151-153、1989;Corpet等、Nuc.Acids Res.、16:10881-10890、1988;Huang等、Comp.Appls Biosci.、8:155-165、1992;並びにPearson等、Meth.Mol.Biol.、24:307-31、1994)に記載されている。Altschul等、Nat.Genet.、6:119-129、1994には、配列アライメント法及び相同性の算出に関する詳細な考察が記載されている。一例として、アライメントツールであるALIGN(Myers and Miller,CABIOS 4:11-17,1989)又はLFASTA(Pearson and Lipman,1988)を用いて配列比較を行うことができる(Internet Program,1996,W.R.Pearson and the University of Virginia,fasta20u63 version 2.0u63,1996年12月に公開)。ALIGNでは配列全体を互いに比較し、LFASTAでは局所類似性の領域を比較する。これらのアライメントツール及びそれぞれのチュートリアルは、例えばインターネット上のNCSAウェブサイトで入手可能である。あるいは、約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較には、デフォルトのパラメータ(ギャップ存在コスト11、残基あたりのギャップコスト1)に設定したデフォルトのBLOSUM62マトリックスを用いて、Blast2 sequences機能を使用することができる。短いペプチド(約30アミノ酸より少ないもの)のアライメントを行う際には、デフォルトのパラメータ(開始ギャップペナルティ9、伸長ギャップペナルティ1)に設定したPAM30マトリックスを用いて、Blast2 sequences機能を使用してアライメントを行う必要がある。BLAST配列比較システムは、例えばNCBIウェブサイトから利用可能であり、Altschul等、J.Mol.Biol.、215:403-410、1990;Gish及びStates、Nature Genet.、3:266-272、1993;Madden等、Meth.Enzymol.、266:131-141,1996;Altschul等、Nucleic Acids Res.、25:3389-3402、1997;並びにZhang及びMadden、Genome Res.、7:649-656,1997も参照される。
【0033】
一部の実施形態において、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖は、保存的配列修飾を含む。「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質の生物学的機能に著しく影響を与えないか又はそれを改変しないアミノ酸修飾を指す。そうした保存的修飾は、アミノ酸置換、付加、及び欠失を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発などの当該技術分野で既知の標準的な技術によってタンパク質に導入することができる。「保存的置換」は、ポリペプチドの2次構造及び疎水親水特性が実質的に変化しないことをペプチド化学の当業者が予想し得るように、アミノ酸が同様の特性を有する他のアミノ酸に置換されるというものである。したがって、アミノ酸置換は、一般に、例えばその疎水性、親水性、電荷、サイズ等、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性に基づく。種々の上述の特徴を考慮した例示の置換は、当業者に周知であり、アルギニンとリジン、グルタメートとアスパルテート、セリンとスレオニン、グルタミンとアスパラギン、及びバリンとロイシンとイソロイシンを含む。アミノ酸置換は、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性特性の類似性に基づいてさらに行うことができる。例えば、負荷電アミノ酸はアスパラギン酸及びグルタミン酸を含み、正荷電アミノ酸はリジン及びアルギニンを含み、同様の親水性値を有する無電荷極性頭部基を含むアミノ酸は、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、アスパラギンとグルタミン、及びセリンとスレオニンとフェニルアラニンとチロシンを含む。保存的変化に相当し得る他のアミノ酸のグループは、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、及び(5)phe、tyr、trp、hisを含む。同様の側鎖を有する他のアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、極性無電荷側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。このように、本発明の抗体内の1つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換することができ、改変した抗体をIL-20Rbへの結合について試験することができる。
【0034】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号10又は配列番号11に示す重鎖及び配列番号12に示す軽鎖を含む。
【0035】
一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害を媒介するFc領域を含まず、ゆえに抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発するFc部分を含まない。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性食作用を誘発するFc領域を含まない。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、IL-20Rbポリペプチドを発現する細胞の枯渇を、直接的又は非直接的にもたらさない(例えば、IL-20Rb+細胞の数の10%、20%、50%、60%以上の消失又は減少をさせない)。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、FcγRIIIA(CD16)ポリペプチドに実質的に結合することができるFcドメインを含まない。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、Fcドメインを有しない(例えばCH2及び/若しくはCH3ドメインを有しない)又はIgG2若しくはIgG4アイソタイプのFcドメインを含む。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、改変したグリコシル化プロファイルを有する(例えばIgG1の)Fcドメインを含み、抗体のADCC活性を失くすことになる。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、単鎖抗体フラグメント、又は複数の異なる抗体フラグメントを含む多特異性抗体からなる又は含む。一部の実施形態において、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、毒性部分に連結されていない。一部の実施形態において、アミノ酸残基から選択される1つ以上のアミノ酸を、抗体が改変したC2q結合性を有する及び/又はCDCを低下させる若しくは消失させるように、異なるアミノ酸残基で置換することができる。このアプローチは、ldusogie等による米国特許第6,194,551号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0036】
本明細書において使用するように、「Fc領域」は、第1の定常領域の免疫グロブリンドメイン以外の抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。したがって、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域の免疫グロブリンドメイン、並びにIgE及びIgMの最後の3つの定常領域の免疫グロブリンドメイン、並びにこれらのドメインのN末端側の可動ヒンジ指す。IgA及びIgMでは、FcはJ鎖を含むことができる。IgGでは、Fcは、免疫グロブリンドメインのCガンマ2及びCガンマ3(Cγ2及びCγ3)、並びにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変わり得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、残基C226又はP230からそのカルボキシ末端を含むように通常規定され、番号付けは、Kabat等のEUインデックスに従ったものである(1991,NIH Publication 91-3242,National Technical Information Service,Springfield,Va.)。「Kabatが述べたEUインデックス」は、上述のKabat等により記載されるように、ヒトIgG1のEU抗体の残基番号付けを指す。Fcは、単離したこの領域、又は抗体、抗体フラグメント、若しくはFc融合タンパク質の場合におけるこの領域を指し得る。Fc変異体タンパク質は、Fc領域を含む抗体、Fc融合体、又は任意のタンパク質若しくはタンパク質ドメインとすることができる。特に好ましいものは、Fc領域の非自然起源変異体である変異体Fc領域を含むタンパク質である。非自然起源のFc領域(本明細書において「変異体Fc領域」とも呼ぶ)のアミノ酸配列は、野生型のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入、及び/又は欠失を含む。挿入又は置換の結果として変異体Fc領域の配列に現れる任意の新しいアミノ酸残基は、非自然起源のアミノ酸残基と呼ぶことができる。注:Kabat270、272、312、315、356、及び358を含むがこれらに限定されない、多数のFc位置において、多型性が観察されており、ゆえに、本配列と先行技術の配列との間にわずかな違いが存在することがある。
【0037】
「Fc受容体」又は「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を表すように使用する。ADCCを媒介する初代細胞は、FcγRIIIを発現し、単球は、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、及び/又はFcγRIVを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch及びKinetのAnnu.Rev.Immunol.,9:457-92(1991)に述べられている。分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号明細書又は米国特許第5,821,337号明細書に記載されるものなどのin vitroのADCCアッセイを行うことができる。そうしたアッセイの有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは又はさらに、対象の分子のADCC活性を、例えばClynes等のProc.Natl.Acad.Sci.(米国)、95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。本明細書において使用するように、「エフェクター細胞」という用語は、1つ以上のFcRを発現してエフェクター機能を示す白血球である。上述の細胞は、少なくともFcγRI、FcγRII、FcγRIII、及び/又はFcγRIVを発現し、ADCCエフェクター機能を示す。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球を含む。
【0038】
本発明の抗体は、以下のものに限らないが、単独又は組み合わせの、任意の化学的、生物学的、遺伝学的、又は酵素学的技術など、当該技術分野において既知の任意の技術により作製される。典型的に、所望の配列のアミノ酸配列を知ることで、当業者は、ポリペプチドの作製のための標準的方法により該抗体を容易に作製できる。例えば、これは、周知の固相法を使用して、好ましくは市販のペプチド合成装置(Applied Biosystems(フォスターシティ、カリフォルニア州)により製造されているものなど)を使用して、製造者の説明書に従って合成することができる。あるいは、本発明の抗体は、当該技術分野において周知の組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、抗体は、発現ベクターに抗体をコードするDNA配列を組み込むこと、及び所望の抗体を発現し得、後に周知の方法を使用して抗体を単離することができる適切な真核又は原核の宿主にそうしたベクターを導入することの後に、DNA発現生成物として得ることができる。
【0039】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明における抗体をコードする核酸分子に関する。より具体的には、核酸分子は、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする。
【0040】
本明細書において使用するように、「コードする」という用語は、規定したヌクレオチド配列(例えばrRNA、tRNA、及びmRNA)又は規定したアミノ酸配列のいずれか、及びそれから得られる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子を合成するためのテンプレートとして機能するための、例えば、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列における特有の特性に関する。したがって、遺伝子、cDNA、又はRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を作製する場合、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に示されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のためのテンプレートとして使用される非コード鎖との両方を、タンパク質又は遺伝子若しくはcDNAの他の生成物をコードするとして指すことができる。特に記載のない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重タイプであるとともに、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。また、「タンパク質をコードするヌクレオチド配列又はRNA」という表現は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのタイプでイントロンを含み得る程度にイントロンを含むことができる。
【0041】
典型的に、上記核酸はDNA又はRNA分子であり、これは、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ、又はウイルスベクターなどの任意の適切なベクターに含ませることができる。本明細書において使用するように、「ベクター」、「クローニングベクター」、及び「発現ベクター」という用語は、DNA又はRNA配列(例えば外来遺伝子)を宿主細胞に導入して、宿主を形質転換し、導入した配列の発現(例えば転写及び翻訳)を高めることができる媒体を意味する。したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。このようなベクターは、対象への投与の際、該抗体を発現させる又は発現を誘導するため、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター等の調節因子を含むことができる。動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーター及びエンハンサーの例は、SV40の初期プロモーター及びエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーター及びエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーター及びエンハンサー等を含む。動物細胞用の任意の発現ベクターは、ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入して発現させることができる限り、使用することができる。適切なベクターの例は、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1 βd2-4等を含む。プラスミドの他の例は、複製起点を含む複製プラスミド、又は例えば、pUC、pcDNA、pBRなどの組込みプラスミド等を含む。ウイルスベクターの他の例は、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、及びAAVベクターを含む。そうした組換えウイルスは、当該技術分野において既知の方法により、例えば、パッケージ細胞に遺伝子導入することにより、又は、ヘルパープラスミド若しくはウイルスを一過性遺伝子導入することにより作製することができる。ウイルスパッケージ細胞の典型的な例は、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞等を含む。そうした複製欠損組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコールは、例えば、国際公開第95/14785号、国際公開第96/22378号、米国特許第5,882,877号明細書、米国特許第6,013,516号明細書、米国特許第4,861,719号明細書、米国特許第5,278,056号明細書、及び国際公開第94/19478号に見出すことができる。
【0042】
本明細書において使用するように、「プロモーター/調節配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するために必要とされ、それによってプロモーター/調節配列に作動可能に連結される遺伝子産物の発現を可能にする、細胞の合成機構によって認識される又は合成機構によって導入される核酸配列(例えばDNA配列)を指す。場合によっては、この配列はコアプロモーター配列とすることができ、他の場合には、この配列はまた、エンハンサー配列及び遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節因子を含むことができる。プロモーター/調節因子は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものとすることができる。
【0043】
本明細書において使用するように、「作動可能に連結される」又は「転写コントロール」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす調節因子と異種核酸配列との機能性の連結を指す。例えば、第1の核酸配列は、該第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係で配置されるとき、第2の核酸配列に作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を与えるとき、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は互いに近接させることができ、例えば2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、同じリーディングフレームに存在する。
【0044】
本発明のさらなる目的は、本発明における核酸及び/又はベクターによって遺伝子導入した、感染させた、又は形質転換した宿主細胞に関する。本明細書において使用するように、「形質転換」という用語は、「外来性」(すなわち、外因性又は細胞外)遺伝子、DNA、又はRNA配列を宿主細胞に導入することにより、宿主細胞が、導入した遺伝子又は配列を発現して、所望の物質、典型的には、導入した遺伝子又は配列によりコードされるタンパク質又は酵素を生成することを意味する。導入したDNA又はRNAを受容して発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
【0045】
本発明の核酸は、適切な発現系において本発明の抗体を作製するために使用することができる。「発現系」という用語は、例えば、ベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入された外来性DNAによりコードされるタンパク質の発現のための、適切な条件下における宿主細胞及び対応するベクターを意味する。一般的な発現系は、E.coli宿主細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞とバキュロウイルスベクター、及び哺乳動物宿主細胞とベクターを含む。宿主細胞の他の例は、原核生物細胞(細菌など)及び真核生物細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等)を限定することなく含む。具体的な例は、E.coli、Kluyveromyces、又はSaccharomycesの酵母、哺乳動物細胞株(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞等)、及び、初代又は株化された哺乳動物細胞培養物(例えば、リンパ芽球細胞、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞等から作製される)を含む。また、例としては、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(以下、「DHFR遺伝子」と呼ばれる)を欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al;1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下、「YB2/0細胞」と呼ばれる)等も含む。また、本発明は、本発明における抗体を発現する組換え宿主細胞を作製する方法に関し、該方法は、(i)in vitro又はex vivoにおいて、上述のような組換え核酸又はベクターをコンピテント宿主細胞に導入するステップ、(ii)in vitro又はex vivoにおいて、得られた組換え宿主細胞を培養するステップ、及び、(iii)任意で、該抗体を発現し、及び/又は、分泌する細胞を選択するステップを含む。そうした組換え宿主細胞は、本発明の抗体を作製するために使用することができる。ベクターの例は、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えばネイキッド又はリポソームに含有)、及びウイルス(例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を限定することなく含む、当該技術分野で既知のすべてのものを含む。
【0046】
本発明の抗体は、例えば、タンパク質A-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、ダイアリシス、又はアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製方法によって培地から適切に分離される。
【0047】
したがって、本発明のさらなる目的は、薬剤としての使用のための本発明の抗体に関する。より具体的には、本発明は、治療を必要とする患者における治療の方法を提供し、該方法は、治療有効量の本発明の抗体を患者に投与することを含む。
【0048】
一部の実施形態において、本発明の抗体は、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪(AE-COPD)の処置に特に適する。
【0049】
本明細書において使用するように、「慢性閉塞性肺疾患の急性増悪」又は「AE-COPD」という表現は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、正常な日々の変動を超えるとともに、発症が急性である、その通常の状態からの対象のCOPD症状の悪化を指す。典型的に、COPDの急性増悪は、呼吸困難悪化、喀痰発生増加、膿性喀痰増加、喀痰の色の変化、咳の増加、感冒及び咽喉痛を含む上気道の症状、喘鳴増加、胸部絞扼感、運動耐容能低下、倦怠感、体液貯留、並びに急性の混乱から選択される1つ以上の症状によってあらわれ、上述の方法は、1つ以上の上述の症状の頻度、重症度、又は存続期間を低下させることを含む。急性増悪は種々の原因を有し得るが、典型的にウイルス感染、細菌感染、又は大気汚染に起因し得る。例えば、約50%の急性増悪が、主に細菌の肺炎球菌、インフルエンザ菌、及びカタル球菌(これらのすべてが肺炎の原因となる)によるものである。COPDを有する対象における急性増悪に関連するウイルス病原体は、ライノウイルス、インフルエンザ、パラインフルエンザ、コロナウイルス、アデノウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルスを含む。
【0050】
一部の実施形態において、COPDの急性増悪は細菌感染に起因する。一部の実施形態において、COPDの急性増悪はウイルス感染に起因する。一部の実施形態において、COPDの急性増悪は大気汚染に起因する。
【0051】
一部の実施形態において、対象は、COPDの急性増悪を経験した、又はCOPDの急性増悪を経験するリスクを有する。一部の実施形態において、対象は、過去24か月に少なくとも1回のCOPDの急性増悪を経験した。特定の一実施形態において、対象は、過去12か月に少なくとも1回のCOPDの急性増悪を経験した。一部の実施形態において、対象は、頻回の増悪を引き起こす対象である。本明細書において使用するように、「頻回の増悪を引き起こす対象」という用語は、COPDに罹患している又はCOPDの処置を受けており、12か月の期間に少なくとも2回、及びより典型的には3回以上の急性憎悪を経験している対象を指す。
【0052】
一部の実施形態において、「処置」は、ヒトにおいて、COPDの急性増悪を処置すること、COPDの急性増悪の頻度、存続期間、若しくは重症度を低下させること、COPDの急性増悪の1つ以上の症状を処置すること、COPDの急性増悪の1つ以上の症状の頻度、存続期間、若しくは重症度を低下させること、COPDの急性増悪の発症を予防すること、又はCOPDの急性増悪の1つ以上の症状の発症を予防することを指す。頻度、存続期間、又は重症度の低下は、本発明の方法による処置を受けていない同じヒトにおける急性増悪又は症状の頻度、存続期間、又は重症度と比較するものである。急性増悪又は急性増悪の1つ以上の症状の頻度、存続期間、又は重症度の低下は、COPD対象の処置の経験を有する当業者の臨床医による臨床における観察によって、又は処置を受けている対象による主観的な自己評価によって測定することができる。当業者の臨床医による臨床における観察は、肺機能の客観的な測定、並びに対象をその最も安定的な状態に維持するために介在を必要とする頻度、並びに対象をその最も安定的な状態に維持するために必要とされる入院の頻度及び病院滞在の長さを含むことができる。典型的に、対象による主観的な自己評価は、業界認証及び/又はFDA認証の対象報告アウトカム(PRO)ツールを使用して収集される。そうしたツールにより、対象は特定の症状又は他のクオリティ・オブ・ライフの主観的尺度を評価することができる。対象報告アウトカムツールの一例は、FDAと協議して医薬品業界スポンサーの共同事業体とともにUnited BioSource社によって急性細菌増悪における臨床上の応答を評価するため現在開発されている、肺疾患増悪のツール(Exacerbations from Pulmonary Disease Tool(EXACT-PRO))である。
【0053】
一部の実施形態において、処置は予防処置である。本明細書において使用するように、「予防処置」という用語は、その目的が疾患を予防することである任意の医療上又は公衆衛生上の方法を指す。本明細書において使用するように、「予防する」、「予防」、及び「予防すること」という用語は、所定の状態を得る若しくは発症するリスクの低下、又は病気でないが、疾患を有する対象の近くにいた若しくは疾患を有する対象の近くにいる可能性がある対象における再発若しくは該状態の低下若しくは抑止を指す。
【0054】
本発明のさらなる目的は、本発明の抗体を含む、それからなる、又はそれから実質的になる組成物に関する。
【0055】
本明細書において使用するように、「から実質的になる」は、組成物に関して、上述する本発明の少なくとも1つの抗体が、該組成物内において唯一の治療剤又は生物活性を有する薬剤であることを意味する。
【0056】
一部の実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0057】
「薬学的に許容される担体」という用語は、動物、好ましくはヒトに投与するとき、有害な、アレルギー性の、又は他の有害な反応を発生させない賦形剤を指す。これは、任意及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含む。ヒトへの投与において、調製は、例えばFDA機関又はEMAなどの規制機関によって要求される、滅菌性、発熱性、一般の安全性及び純度の標準を満たす必要がある。この組成物に使用することができる薬学的に許容される担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂を含むが、これらに限定されない。患者への投与における使用では、組成物は、患者への投与のために製剤化し得る。本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、経局所、経直腸、経鼻、経口腔、経膣で、又は留置リザーバーを介して投与することができる。本明細書で使用されるものは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内、及び頭蓋内の注射又は注入技術を含む。本発明の組成物の滅菌注射剤形は、水性又は油性懸濁液とすることができる。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、当該技術分野において既知の技術に従って製剤化することができる。また、滅菌注射調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌の注射可能な溶液又は懸濁液とすることができる。使用できる許容可能なビヒクル及び溶媒のなかには、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌の固定油は、従来より、溶媒又は懸濁媒体として使用されている。この目的で、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の刺激の少ない固定油を使用することができる。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、オリーブ油又はヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油、特にそれらのポリオキシエチル化タイプと同様に、注射剤の調製に有用である。また、これらの油溶液又は懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えばエマルション及び懸濁液を含む薬学的に許容される投与剤形の製剤に一般的に使用されるカルボキシメチルセルロース若しくは同様の分散剤を含有することができる。また、Tween、Spanなどの他の一般的に使用される界面活性剤、及び薬学的に許容される固体、液体、又は他の投与剤形の製造に一般的に使用される他の乳化剤又は生物学的利用能増強剤も、製剤の目的で使用することができる。本発明の組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液又は溶液を含むが、これらに限定されない、任意の経口に許容される投与剤形で経口投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びコーンスターチを含む。また、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムが、典型的に添加される。カプセル剤形での経口投与では、有用な希釈剤としては、例えばラクトースを含む。経口使用に水性懸濁液を必要とするとき、活性成分は乳化剤及び懸濁剤と組み合わされる。望ましい場合、特定の甘味料、香味料、又は着色剤を添加することもできる。あるいは、本発明の組成物は、直腸投与のための坐剤の剤形で投与することができる。これらは、薬剤を、室温では固体であるが直腸温では液体であり、したがって直腸で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって、調製することができる。そうした材料としては、カカオバター、ミツロウ、及びポリエチレングリコールを含む。また、本発明の組成物は、特に、眼、皮膚、又は下部腸管の疾患を含む、局所の適用によって容易に到達可能である領域又は器官を処置の標的に含むとき、経局所で投与することができる。適切な局所用製剤は、これらの領域又は器官のそれぞれに対して容易に調製される。局所の適用では、組成物は、1つ以上の担体に懸濁又は溶解した活性成分を含有する適切な軟膏剤に製剤化することができる。本発明の化合物の局所投与のための担体は、鉱物油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を含むが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解した活性成分を含有する適切なローション剤又はクリーム剤に製剤化することができる。適切な担体は、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルズワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水を含むが、これらに限定されない。下部腸管のための局所の適用は、直腸坐剤(上述を参照)又は適切な浣腸剤で行うことができる。また、貼付剤も使用することができる。また、本発明の組成物は、鼻エアロゾル又は吸入によって投与することができる。そうした組成物は、医薬製剤の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール若しくは他の適切な保存剤、生物学的利用能を増強させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製することができる。例えば、この発明の医薬組成物に存在する抗体は、100mg(10mL)又は500mg(50mL)の単回使用バイアルのいずれかにおいて10mg/mLの濃度で提供することができる。製品は、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウムニ水和物、0.7mg/mLのポリソルベート80、及び滅菌注射用水中において静脈内投与用に製剤化する。pHは6.5に調整する。この発明の医薬組成物における抗体の例示の適切な投与量範囲は、約1mg/m2~500mg/m2とすることができる。しかしながら、これらの計画は例示であり、臨床試験において決定する必要のある医薬組成物における特定の抗体の親和性及び許容性を考慮して、最適な計画及びレジメンを適応させることができるということが理解される。注射(例えば筋肉内、静脈内)のための本発明の医薬組成物は、滅菌バッファー水(例えば筋肉内では1ml)、約1ng~約100mg、例えば約50ng~約30mg以上、好ましくは約5mg~約25mgの本発明の抗体を含有するように調製することができる。
【0058】
本発明を以下の図面及び実施例によってさらに記載する。しかしながら、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するとしていかようにも解釈されるべきでない。
【実施例】
【0059】
本願の研究のため、タバコの煙(CS)への長期曝露によって、マウスにおけるCOPD疾患を再現する実験モデルを開発した(13)。これらのマウスは、IL-22産生欠陥に関連する呼吸器病原体への感受性増加を示した(14、15)。一方で、これらの動物では、肺炎球菌又はインフルエンザ菌に対応してIL-19、IL-20、及びIL-24の発現が高まった。抗IL-20Rb遮断抗体による処置は、肺炎球菌に感染させたコントロールマウスにおいて細菌クリアランスを高め(12)、細菌負荷及び炎症浸潤を減少させることによって、CS曝露したマウスを細菌感染から防護した(国際公開第2016/083304号)。これらの結果から、IL-20サイトカインが、そのTh17サイトカイン産生の阻害作用によって、COPDマウスにおける細菌感染に対する感受性増加の要因となり得ることを仮定した。
【0060】
COPDの増悪時のその役割を評価するため、CS曝露したマウスを、肺炎球菌又はインフルエンザ菌に感染させる1日前に、遮断抗IL20RB抗体で処置した(クローン20RNTC、50μg/mice、腹腔内投与)。細菌負荷の測定により、抗IL-20Rb抗体での処置が、アイソタイプコントロールで処置したマウスと比較して、COPDマウスにおいて感染後1日目及び3日目の両方で気管支肺胞洗浄の肺炎球菌の細菌負荷、及びCOPDマウスにおいて感染後3日目で肺の肺炎球菌の細菌負荷を大きく減少させることを示した。さらに、この処置はまた、細菌の全身性播種を減少させた。
【0061】
全カウント及び好中球カウントが、空気曝露マウスと比較して肺炎球菌に感染させたCOPDマウスにおいて増加した。抗IL-20Rb抗体での処置により、気管支肺胞洗浄における好中球の数が減少した。同様に、肺炎球菌によって誘発される樹状細胞の動員増加が、特に感染後1日目において、IL-20Rbを遮断することによって阻害された。ヘマトキシリン/エオジンによって染色した肺の切片において、IL-20R受容体の遮断により、好中球、及び全炎症細胞浸潤、及び組織損傷が有意に阻害された。さらに、この処置がまた予防的又は治癒的投与後に有効である(感染前又は感染後の24時間のいずれか)ことを観察した。本願のデータは、IL-20Rbが細菌誘発COPD増悪の状況で有望な治療標的に相当することを示唆する。
【0062】
AE-COPDの治療ツールを開発するため、ファージディスプレイ手法を使用することによって、ヒト中和抗IL-20Rb抗体の本願特有のクローンを選択した。このクローンを、ELISAによってIL-20Rbの強力かつ特異的な認識に従って選択した。これらは、IL-20Ra及びIL-22Ra1サブユニットを認識しなかった。
【0063】
組換え抗IL-20Rb抗体(ネイティブB7及び突然変異B7)及びラットの抗IL-20Rbモノクローナル抗体の結合を比較する(
図1)。
【0064】
この後、気道上皮細胞(
図4及び
図5)及び樹状細胞(両方ともIL-20Rを発現する)における生物学的機能をin vitroにおいて阻害する能力について、5つのクローンを試験した。本願のデータは、B7クローンがヒトAEC(
図4及び
図5)及び樹状細胞においてIL-19及びIL-20の炎症活性を阻害する一方、20RNTC抗体と比較して優れた効果を有するということを示した。また、B7クローンは、マウス気管上皮細胞においてIL-19誘発のIL-6産生を阻害する(
図5)。興味深い点として、B7抗体は、ヒトとマウスとのIL-20Rbの間で交差反応性を示す(
図8)。さらに、B7抗体は、20RNTC抗体とは異なるエピトープに結合すると見られる(
図9A~
図9C)。
【0065】
さらに、B7抗体を置き換えるため多量の20RNTC抗体を要する一方、20RNTC抗体を置き換えるため少量のB7抗体を必要とする。したがって、両方の抗体の間で親和性が異なり、B7抗体の親和性がより良好である(
図2A、
図2B、及び
図3)。これは、樹状細胞によって発現されるヘテロ二量体受容体(
図2A及び
図2B)及びヒト組換えIL-20RB(
図3)の両方に該当する。
【0066】
マウスIgG2aアイソタイプに本願のヒトクローンB7のVH/VL領域を組み込んだ後、この抗体を、本願のCOPD増悪モデルにおいて試験し、20RNTCクローンと比較した。本願のデータは、B7クローンでの処置が、20RNTC抗体と同様のレベルで、細菌負荷(
図6)及び炎症浸潤(
図7A及び
図7B)を減少させることを示した。
【0067】
まとめると、本発明のB7抗体は、ヒト及びマウスIL-20RBの両方に対する交差反応体であり、20RNTC抗体とは異なるエピトープに結合し、B7抗体は、20RNTC抗体と比較してIL-19及びIL-20の炎症活性の阻害において優れた効果を有し、B7抗体は、20RNTC抗体よりもIL-20bとの良好な親和性を有する。
【0068】
参考文献
本願において、種々の参考文献によって、本発明が属する技術の現状が記載されている。これらの参考文献の開示は、本明細書において言及によって本開示に援用される。
【配列表】