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特許7588140(15α,16α,17β)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,15,16,17-テトロール(エステトロール)および当該製法の中間体を調製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】(15α,16α,17β)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,15,16,17-テトロール(エステトロール)および当該製法の中間体を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07J 1/00 20060101AFI20241114BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C07J1/00
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022515787
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2020076843
(87)【国際公開番号】W WO2021058716
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】102019000017414
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102019000021879
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507182830
【氏名又は名称】インダストリアレ チミカ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】レンナ ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ファサーナ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ルチェンティーニ リッカルド
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/044302(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/034780(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/041839(WO,A1)
【文献】国際公開第02/100877(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/012328(WO,A1)
【文献】Steroids,2002年,67,1079-1089
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステトロール(15α,16α,17β)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,15,16,17-テトロールの合成プロセスであって、
A) 化合物(17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10),15-テトラエン-17-オール(中間体1)を酸化して化合物(17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール(中間体2)を得る工程と、
【化1】
式中、Bn=ベンジルであり、ステロイド骨格の炭素原子15および16の立体配置が固定されておらず、
B) 中間体2をアセチル化して、ステロイド骨格の炭素原子15および16の立体配置が固定されていない中間体3´を経て、化合物(15α,16α,17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール三酢酸(中間体3)を得る工程と、
【化2】
C) 合物(15α,16α,17β)-3-ヒドロキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール三酢酸(中間体4)を経て、中間体3をエステトロールに変換する工程と、
【化3】
D) 工程C)で得られたエステトロールを精製する工程と、
を含み、
工程C)の、中間体3から中間体4への脱ベンジル化反応が、以下の、
-触媒としてのパラジウム炭素(Pd/C)の5重量%または10重量%での使用
-水素圧1~6バール
-反応溶媒としての直鎖または分岐のC1~C6脂肪族アルコール
-少なくとも16時間の反応時間
-30~60℃の水素化温度
の条件で、触媒の存在下で、気体水素による水素化によって実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
工程A)が、酸化剤として四酸化オスミウム(OSO)をそのまま、もしくはポリマーに担持させ、共酸化剤として有機アミンN-オキシドを用い、オスミウムの誘導体に不活性な溶媒中で、35~60℃の温度で、少なくとも12時間実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程A)が、酸化剤としてそのままの四酸化オスミウム(Os0)、共酸化剤としてトリメチルアミンN-オキシド二水和物を用いて、テトラヒドロフラン(THF)溶媒中で、45~55℃の温度で、少なくとも16時間実行される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程B)において、中間体2から中間体3´への網羅的なアセチル化反応が、反応物として無水酢酸を用いて、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ピリジンおよびトルエンから選択される溶媒中、無機または有機塩基の存在下、触媒および場合によっては触媒量の無水トリフルオロ酢酸の存在下で、5~40℃の温度で少なくとも3時間操作され、実行される請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程B)の中間体2から中間体3´への網羅的なアセチル化反応が、溶媒としてのピリジン、触媒としての4-ジメチルアミノピリジン中で、20~30℃の温度で少なくとも4時間操作して実行される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
工程B)において、中間体3を得るための中間体3´の精製が、以下の
B.1)精製される中間体3´を、直鎖または分岐のC1~C6脂肪族アルコール中で、少なくとも10分間還流させ、
B.2)精製される中間体3´のスラリーを、直鎖または分岐のC1~C6脂肪族アルコール中で、15~35℃の温度で、2~24時間撹拌し、
B.3)濾過により精製された中間体3を回収する、一連の操作で行われる請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
工程C)の、中間体4からエステトロールへの加水分解反応が、以下の条件下、
-塩基として炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸リチウムの使用
-少なくとも2時間の反応時間
-10~40℃の反応温度
で実行される、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
工程C)において、化合物(15α,16α,17β)-3-ヒドロキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール三酢酸(中間体4)は単離されていない、
請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程D)が、テトラヒドロフラン、メタノールおよびアセトニトリルから選択される溶媒中で、熱冷結晶化によって実行される、
請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
以下の一連の操作
E.1)無水形態の純エステトロールを水混和性有機溶媒中に完全に溶解させ、
E.2)操作E.1)の溶液を水と混合し、
E.3)留により有機溶剤を除去し、
E.4)懸濁液を、少なくとも15分間、5~20℃の範囲の温度で攪拌し続け、
E.5)固体を濾過および洗浄し、
E.6)固体を、減圧下で少なくとも40℃で少なくとも5時間乾燥させる、
に従って、工程D)で生成されたエステトロールがエステトロール一水和物に変換される、追加の工程E)をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記操作E.1)で用いられる水混和性有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドから選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記操作E.3)の蒸留は減圧下で行われる、請求項10又は11に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬用有効成分の合成プロセス の分野に関し、特に、エステトロールとしても知られる(15α,16α,17β)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,15,16,17-テトロールを、無水および一水和物の両形態で工業規模で調製するプロセスに関する。本発明は 、本プロセスの中間体にも関する。
【背景技術】
【0002】
エステトロール化合物は、薬理活性を有する有効成分であり、ホルモン補充療法(HRT)、女性用避妊薬、またはホルモンバランスの乱れに関連する自己免疫機能障害の治療に役立つ。
【発明の概要】
【0003】
エステトロール(Estetrol)の構造式を以下に報告する。
【0004】
【化1】
【0005】
ステロイド骨格の15、16および17位(上記構造式で強調されている)はそれぞれ1つの水酸基を有し、構造式で示されるように、定められた立体配置を有している。
【0006】
エステトロールは、ヒトの尿から単離された天然産物であり、古くから知られ、論文「Synthesis of epimeric 15-hydroxyestriols、new and potential metabolites of estradiol」、J.Fishman et al、JOC Vol.33, No.8、August 1968、p.3133-3135(3133ページの図の化合物Ia)に記載されている。
【0007】
エステトロールの入手に関する限り、この論文から入手可能なプロセスは、収率が低いため、産業上の利用性がない。
【0008】
最近、いくつかの特許出願が、新しいエステトロール合成プロセスに関して公開されているが、それらのいずれも、以下に示す構造式を有する異性体15β,16β,17βの形成を回避できず、医薬製剤として使用するには、エステトロールを精製する必要があった。
【0009】
【化2】
【0010】
例えば、国際公開WO2004/041839号パンフレット(6頁、5~10行目)には、純度99%に達し、単一不純物の合計が1%を超えないエステトロールを得るためのプロセスが記載されている。28頁の実施例11には、HPLC純度99.1%(HPLC-Ms)を有するエステトロール-を記載しているが、これは、単一の不純物の含有量についての情報を提供せず、医薬物質についての国際的なガイドラインで認められている限度値は、未知のもので0.1%であり、同定されたもので0.15%である。
【0011】
有効成分(API)中の不純物含有量は、医薬製剤中への使用を許可するための必須要件であり、また工業的に適用可能なプロセスを規定するための基本特性であり、無視することはできない。収率にかかわらず、国際ガイドラインの限度値を尊重しない不純物含有量のAPIを提供するいずれのプロセスも、プロセスの結果であるAPIが使用できないため、工業的に有用なプロセスとは言えない。
【0012】
エステトロールの製造に関するその後の出願は、例えば、WO2012/164096A1、WO2013/050553A1およびWO2015/040051A1である。
【0013】
国際公開第2015/040051号パンフレットでは、エステトロール/異性体15β,16β,17βの比は、実施例10および15では99:1に等しく、実施例11および17では98:2に等しい。しかしながら、これらの実施例では、異性体15β,16β,17βの含有量を少なくとも0.15%に下げるための示唆は与えられていない。クロマトグラフィー精製(実施例15)でさえ、この結果を得ることができない。この文献で議論されている従来技術(この文献の場合はWO 2012/164096 AlおよびWO 2013/050553 Alに代表される)に記載されているプロセスは、より高い、許容できない量の異性体15β,16β,17βを提供することに留意されたい(9頁5~15行目)。
【0014】
したがって、記載されたプロセスのいずれも、異性体15β,16β,17βの形成の制約に対する解決策、または前記異性体からのエステトロールの精製方法を提供しないことは明らかである。
【0015】
本発明の目的は、工業的に適用できない精製技術に頼ることなく、異性体15β,16β,17βの含有量を0.15%以下に抑えたエステトロール合成プロセスを提供することである。
【0016】
第1の態様において、本発明は、エステトロール(Estetrol)の合成プロセスに関し、以下の工程、
A) 化合物(17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10),15-テトラエン-17-オール(中間体1)を酸化して、化合物(17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール(中間体2)を得る工程と、
【0017】
【化3】
【0018】
式中、Bn =ベンジルであり、中間体2のステロイド骨格の炭素原子15及び16の立体配置は固定されていない、
B) 中間体2をアセチル化して、ステロイド骨格の炭素原子15および16の立体配置が固定されていない中間体3´を経て、化合物(15α,16α,17β)-3-(フェニルメトキシ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール三酢酸(中間体3)を得る工程と、
【0019】
【化4】
【0020】
C) 好ましくは単離されない化合物(15α,16α,17β)-3-ヒドロキシ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール三酢酸(中間体4)を経て、エステトロールへと中間体3を変換する工程と、
【0021】
【化5】
【0022】
D) 工程C)で得られたエステトロールの精製工程を含む。
【0023】
代替の実施形態において、本発明のプロセスは、工程D)で製造されたエステトロールをエステトロール一水和物に変換する追加の工程E)をさらに含む。
【0024】
第2の態様において、本発明は、中間体3である(15α,16α,17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16、17-トリオール三酢酸に関する。
【0025】
【化6】
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明のプロセスで得られるエステトロールのHPLCクロマトグラムを示す。
図2図2は、本発明のプロセスで得られるエステトロール一水和物のHPLCクロマトグラムを示す。
図3図3は、本発明のプロセスで得られる無水および一水和物エステトロールのDRXディフラクトグラムを示す。
図4図4は、本発明のプロセスで得られる無水エステトロールのDSCクロマトグラムを示す。
図5図5は、本発明のプロセスで得られるエステトロール一水和物のDSCクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の態様において、本発明は、上記で定義した工程を含むエステトロールの合成プロセスに関する。
【0028】
工程A)は、化合物(17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)、15-テトラエン-17-オール(中間体1)を酸化して化合物(17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール(中間体2)を得ることからなり、
【0029】
【化7】
【0030】
式中、Bn=ベンジルであり、中間体2のステロイド骨格の炭素原子15及び16の配置は固定されていない。
【0031】
この工程の出発基質である中間体1は、国際公開WO2004/041839号パンフレットに記載されている方法で得ることができる。
【0032】
工程A)の反応における酸化剤としては、ポリマー上に担持されるか、または好ましくはそのままの四酸化オスミウム(OsO)を使用することができる、共酸化剤として、有機アミンN-オキシド、例えばトリメチルアミンN-オキシド二水和物が使用される。
【0033】
OsOによる酸化は立体選択的ではないため、中間体2は構成15α,16α,17βおよび15β,16β,17βを有する異性体の混合物として得られる。 異性体15α,16α,17βは少量の異性体15β,16β,17βと共に優勢な量で生成される。
【0034】
反応は、テトラヒドロフラン(THF)などのオスミウム誘導体に対して不活性な溶媒中で、35~60℃、好ましくは45~55℃の温度で、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも16時間実行する。
【0035】
後処理後の反応生成物(中間体2)は、溶液中の金属不純物を封鎖する製品で処理して、残留オスミウム含量を除去する。これらの製品は、化学的によく知られており、一般に官能化シリカゲルをベースとし、この分野ではスカベンジャー(捕捉剤)という用語で一般に呼ばれ、本明細書の残りの部分および特許請求の範囲で使用される。スカベンジャーは、好ましくはQuadraSil(商標登録)MPである。
【0036】
スカベンジャーによる処理は、プロセスの各工程で、好ましくは工程A)で実施することができ、繰り返すことができる。
【0037】
工程B)は、中間体2をアセチル化して、ステロイド骨格の炭素原子15および16の立体配置が固定されていない中間体3´を経て、化合物(15α,16α,17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール三酢酸(中間体3)を得ることにある。
【0038】
【化8】
【0039】
アセチル化反応の出発基質である中間体2は、固体のまま反応に装填することができ、または好ましくは、工程A)で得られた溶液をそのまま使用してもよい。
【0040】
中間体2のアセチル化反応の直接的な結果は、異性体15α,16α,17βおよび15β,16β,17βの混合物からなる中間体3´であり、次いで、この混合物を、工程B)の第2の部分を構成する精製手順で分離する。
【0041】
工程B)の網羅的なアセチル化は、反応自体の条件に適合する溶媒 、例えば、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ピリジンまたはトルエン中で行われる。好ましい溶媒はピリジンである。
【0042】
反応には、無機または有機塩基の存在下、触媒および場合によっては触媒量の無水トリフルオロ酢酸の存在下で、無水酢酸を反応剤として使用する。有機塩基としてはピリジンが好ましく、触媒としては4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0043】
反応温度は5~40℃、好ましくは20~30℃であり、反応時間は少なくとも3時間、好ましくは少なくとも4時間である。
【0044】
異性体15β,16β,17βを除去した中間体3´の精製は、以下に記載する一連の操作で得られる。
B.1)精製される中間体3´を直鎖または分岐C1-C6脂肪族アルコール中で少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間還流させることからなる熱処理を行う。
B.2)精製される中間体3´のスラリーを、直鎖または分岐C1-C6脂肪族アルコール中で、15~35℃、好ましくは20~30℃、さらに好ましくは23~27℃の温度で、2~24時間、好ましくは3~18時間、さらに好ましくは4~16時間撹拌する。
B.3)濾過により精製された中間体3を回収する。
【0045】
熱処理(操作B.1)およびスラリー(操作B.2)のアルコールは、同じでも異なっていてもよく、好ましくは同じアルコールが使用され、好ましくはメタノールである。
【0046】
精製される中間体3は、操作B.1)の後に濾過によって回収し、溶媒に再懸濁して操作B.2)のスラリーを得ることができ、または同じ溶媒を常に同じ容器内で操作し続けることができる。
【0047】
中間体3の精製処理は、異性体15β,16β,17βの初期含有量に応じて、所望の純度レベルを得るのに必要な回数繰り返すことができる。好ましくは、精製プロセスは、少なくとも2回繰り返される。
【0048】
本発明者らは、5%の異性体15β,16β,17βを含有する中間体3´の試料について、操作B.1、B.2およびB.3の一連の操作を3回繰り返すことによって一連の実験試験を行った。これらの試験の最初のものにおいて、スラリーを撹拌する操作B.2を16時間を3回、
第2の試験において8時間を3回、および3回目の試験においては4時間を3回実施した。これらの試験は、操作B.1+B.2+B.3を含む本発明の手順により、すべての場合において、異性体15β,16β,17βの含有量が0.10%未満、いくつかの場合においては0.05%未満である最終製品を得られることを確認した。
【0049】
本発明のプロセスの工程C)は、以下のスキームに従って、まず、中間体3の接触水素化により脱ベンジル化して中間体4を形成し、次いで中間体4中に存在する酢酸を加水分解するという、2つの連続した反応からなる。
【0050】
【化9】
【0051】
それらが実施される順序は、上記の通りである。触媒による脱ベンジル化を最初に行い、次に酢酸塩の加水分解を行う。この反応順序の逆転が脱ベンジル化を完了することを困難にしている。
【0052】
最初の反応から得られた中間体4を単離した後、再度反応させてもよい。ただし、 この中間体は、最初の反応の溶媒に溶解した状態に保つことが好ましい。
【0053】
脱ベンジル化および加水分解の条件は、有機化学に精通した当業者に公知である。
【0054】
最初の反応である脱ベンジル化では、適切な触媒の存在下で気体水素による水素添加を行う。この反応の好ましい条件は以下の通りである。
-触媒として5重量%、好ましくは10重量%のパラジウム炭素(palladium on charcoal、Pd/C)を使用する。
-水素圧は1~6バール、好ましくは2~4バール、さらに好ましくは2.5~3.5バールである。
-反応溶媒として、直鎖または分枝状のC1~C6脂肪族アルコール、好ましくはメタノールを使用する。
-反応時間は、少なくとも16時間、好ましくは少なくとも20時間である。
-水素化温度は30~60℃、好ましくは35~55℃、さらに好ましくは40~50℃である。
【0055】
第2の反応は、塩基を用いた中間体4の酢酸塩の加水分解からなる。この反応の好ましい条件は、以下である。
-塩基として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸リチウムが使用され 、好ましくは炭酸カリウムが使用される。
-反応時間は、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間である。
-反応温度は、10~40℃、好ましくは15~35℃、さらに好ましくは20~30℃である。
【0056】
反応生成物(エステトロール)を含む溶液は、官能化シリカゲルベースのスカベンジャーで処理して、残留するパラジウムの含有量を除去することができる。スカベンジャーは、好ましくはQuadraSil(登録商標)MPである。
【0057】
最後に、本発明のプロセスの最後の工程D)は、工程C)で得られたエステトロールの精製にある。
【0058】
この工程は、有機化学の専門家に知られている方法に従って、熱冷結晶化(hot-cold crystallization)によって実施される。
【0059】
使用される溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、メタノールおよびアセトニトリルである。
【0060】
また、この操作において、エステトロールは、パラジウムの残留含量を除去するために、官能化シリカゲルベースのスカベンジャー、好ましくはQuadraSil(登録商標)MPで処理することができる。スカベンジャーを使用する溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、メタノールおよびアセトニトリルから選択され、好ましくはテトラヒドロフランが使用される。
【0061】
この操作の結果、純粋なエステトロールが「無水」形態で得られ、残留水分が最小限に抑えられ、化学量論的水/ API比は1をはるかに下回る。
【0062】
代替の実施形態において、本発明は、一水和物形態のエステトロールの調製に関する。
この実施形態では、プロセスは、工程D)の後に実施され、以下の一連の操作からなる工程E)をさらに含む。
E.1)無水形態の純粋なエステトロールを、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの水混和性有機溶媒中に、完全な溶液になるまで溶解する。好ましい溶媒はメタノールである。
E.2)ポイントE.1)の溶液を水、好ましくは純水と混合し、好ましくは、この操作は、エステトロールの有機溶液上に水を滴下することによって行われる。
E.3)好ましくは減圧下で、蒸留により有機溶剤を除去する。
E.4)懸濁液を、好ましくは5~20℃の範囲の温度で少なくとも15分間攪拌し続ける。
E.5)固体を濾過し、洗浄する。好ましくは、濾過した固体をフィルター上で水で洗浄する。
E.6)固体を、少なくとも40℃で少なくとも5時間減圧下で、好ましくは少なくとも45℃で少なくとも6時間減圧下で乾燥させる。
【0063】
その第2の態様において、本発明は、上記のプロセスの間に得られる精製中間体3(15α,16α,17β)-3-(フェニルメトキシ)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-15,16,17-トリオール三酢酸に関する。
【0064】
【化10】
【0065】
本発明を以下の実施例 によってさらに説明する。
実験装置、方法および条件
NMR:
核磁気共鳴装置(NMR spectrometer)JEOL 400YH (400MHz)、JEOL Delta software v5.1.1、スペクトルはDMSO-d中で記録された。
【0066】
MS:
機器:DSQ-trace サーモフィッシャー社
サンプル導入-直接露光プローブ(dep)
メタンによる化学イオン化(Cl)
メタン圧力:2.2psi
ソース温度:200℃
【0067】
HPLC:
Agilent Model 1260 Infinity クロマトグラフィーシステム、UV 検出器 MODEL G1315C DAD VL+。
【0068】
方法HPLC1:
クロマトグラフィー条件:
-カラム:Supelco ascentis expressは、C18 250x4.6mm、5μm
-流量:1ml/min
-検出器:UV280nm
-注入量:5μl
-温度:25℃
-移動相A:水
-移動相B:アセトニトリル
【0069】
【表1】
【0070】
方法HPLC2:
クロマトグラフィー条件:
-カラム:Supelco discovery C18 150x4.6mm、5μm
-流量:1ml/min
-検出器:UV280nm
-注入量:25μl
-温度:22℃
-移動相A:水/メタノール/アセトニトリル90/6/4中のCHCOONH溶液4.29g/L-移動相B:水/メタノール/アセトニトリル10/54/36中のCHCOONH溶液38.6g/L
【0071】
【表2】
【0072】
TLC:
MERCK:TLCシリカゲル60F254アルミニウムシート20×20cm、コード1.0554.0001
【0073】
TLC検出器:
ホスホモリブデン酸セリウム:25gのホスホモリブデン酸および10gの硫酸セリウム(IV)を600mLのHOに溶解し、60mLの98%HSOを添加し、HOで1Lにする。プレートに溶液を含浸させ、次いで生成物が検出されるまで加熱する。
【0074】
XPRD:
XRPD解析は、回転マルチサンプラーおよびリニアSSD型検出器(Lynxeye)を備えた、Bragg-Brentano型Bruker D2 Phaser(第2版)粉末回折計を用いて行った。X線源は30KV、10mAで動作する銅陽極を備えたX線管である。分析には、銅の平均Kα(λ=1.54184Å)に相当する波長を持つX線が使用される。Kβ放射線は、特殊ニッケルフィルターでフィルタをかけた。
【0075】
平坦な表面を有する「ゼロバックグラウンド」シリコン製サンプルホルダーを使用し、その上に試料を広げて薄膜層を形成した。分析中、サンプルホルダーを60rpmの速度で回転させる。
【0076】
走査は、4~40°の2θ範囲で、0.016°の2θ刻みで行われ、各刻みに対して1.0秒の取得時間で実行される。
【0077】
回折図は、Bruker DIFFRAC.EVAソフトウェアを用いて加工した。
【0078】
DSC:
DSC分析は、Perkin Elmer Diamond DSC示差走査熱量計を用いて不活性雰囲気(窒素)中で行った。
サンプルは、40μLのアルミニウム製るつぼに粉末を秤量して調製し、次いで、分析前に密封した。分析は、10℃/分の加熱速度で25~250℃の温度範囲で行った。
【0079】
注意事項
実験の説明で使用される水は、特に断らない限り、純水として理解されるべきである。
【0080】
実験の説明で使用される有機溶媒は、特に断らない限り、「工業」銘柄(“technical” grade)のものとして理解されるべきである。
【0081】
実験の説明において使用される試薬および触媒は、特に断らない限り、業務用品質(commercial quality)のものとして理解されるべきである。
製品QuadraSil(登録商標)MPは、ジョンソン・マッセイ社から入手可能である。
【0082】
例1
この例は、中間体1から中間体2までの、本発明の処理の工程A)に言及する。
【0083】
【化11】
【0084】
窒素下のフラスコに、32.4gの中間体1(89.87mmol、1当量(eq))および356mLのテトラヒドロフランを装填した。0.324gの四酸化オスミウム(1.28mmol、重量%)と17.9gのトリメチルアミンN-オキシド二水和物(161.26mmol、1.8当量)を追加した。系を50℃に加熱し、16時間撹拌し続けた。
【0085】
反応は、以下の条件でTLC分析により制御した。TLCプレート:アルミナ上のシリカゲル、ジクロロメタンに溶解した出発基質(中間体1)、ジクロロメタンで希釈した反応混合物、溶離液:酢酸エチル(EtOAc)、検出器:ホスホモリブデン酸セリウム。
【0086】
反応終了後、溶液を25℃に冷却し、メタ重亜硫酸ナトリウム(18.3g)水溶液(162mL)を滴下した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣に193mLの酢酸イソプロピルおよび290mLの1M塩酸を残渣に添加した。
【0087】
1.6gの木炭および1.6gのダイカライト(dicalite)を二相系に添加し、25℃で15分間撹拌し続けた。懸濁液を最初にダイカライト層上で濾過し、次にミリポアフィルター(0.22μm)で濾過した。相を分離し、水相を160mLの酢酸イソプロピルで抽出した。1.12gのQuadraSil(登録商標)MPを有機相に添加し、系を25℃で16時間攪拌し続けた。懸濁液をミリポアフィルター(0.22μm)で濾過し、32mLの酢酸イソプロピルで洗浄した。
このようにして得られた溶液をそのまま次の反応に使用した。
【0088】
例2
この例は、本発明のプロセスの工程B)を指す。
【0089】
【化12】
【0090】
先の例に記載したようにして得られた中間体2の溶液を、減圧下で50mLの残留容量まで濃縮した。
【0091】
228mlのピリジンを加え、残りの酢酸イソプロピルを減圧下で留去した。0.877gの4-ジメチルアミノピリジン(7.19mmol、0.08当量)を溶液に添加し、次いで温度を30℃未満に保ちながら29.45mLの無水酢酸(312mmol、3.47当量)を滴下した。溶液を25℃で4時間攪拌し続けた。
【0092】
反応は、以下の条件で、TLC分析により制御した。TLCプレート:アルミナ上のシリカゲル、ジクロロメタンに溶解した出発基質(中間体2)、反応混合物を1M HClでクエンチし、EtOAcで抽出、有機相を析出させた。溶離液:EtOAc、検出器:ホスホモリブデン酸セリウム。
【0093】
反応混合物を減圧下で残量85mLまで濃縮し、250mLの酢酸イソプロピルおよび125mLの水を添加した。温度を30℃未満に保ちながら、55mLの37%塩酸を二相系に添加した(水相の最終pH=1)。
【0094】
相を分離し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で2回洗浄し(2×90mL)、続いて飽和塩化ナトリウム溶液(90mL)で洗浄した。
【0095】
有機相を減圧下で濃縮して油状の残渣を得た。100mLのメタノールを添加し、混合物を再び減圧下で濃縮し、ペースト状にした。210mLのメタノールを添加し、系を15分間還流した。懸濁液を25℃に冷却し、16時間撹拌し続けた。固体をブフナー上で35mLのメタノールで洗浄して濾過した。固体を減圧下45℃で3時間乾燥させた。
【0096】
中間体3´を構成する28.4gの固体が得られた。HPLC分析(方法1)により、異性体15β,16β,17β=1.6%の含有量が検出された。
【0097】
固体(28g)を168mLのメタノールに溶解し、系を15分間還流した。懸濁液を25℃に冷却し、16時間撹拌し続けた。固体をブフナー上で28mLのメタノールで洗浄して濾過し、次いで45℃で3時間減圧乾燥した。24gの生成物を得た(HPLC、方法1):異性体15β,16β,17β=0.18%。
【0098】
固体(23.5g)を140mLのメタノールに溶解し、系を15分間還流した。懸濁液を25℃に冷却し、16時間撹拌し続けた。固体を、ブフナー上で23mLのメタノールで洗浄して濾過し、45℃真空下で3時間乾燥させた。
【0099】
22.1gの中間体3(ほぼ白色固体)が得られた。
【0100】
HPLC純度(方法1):97.5%、異性体15β,16β,17β=0.07%。
【0101】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ7,39-7.26(m、5H);7.12(d、1H、J=9.2 Hz);6.72-6.67(m、2H);5.22-5.18(t、1H、J=7.4Hz);5.04-4.99(m、3H);4.84(d、1H、J=6.4Hz);2.74-2.70(m、2H);2.25-2.20(m、2H);1.99-1.97(2s、9H);1.7-1.2(m、7H);0.85(s、3H).
質量(Cl):m/z=521[M+1]
【0102】
例3
この例は、本発明のプロセスの工程C)の実施を指す。
【0103】
【化13】
【0104】
先の例に記載した方法で得られた21.6gの中間体3および154mLのテトラヒドロフランをフラスコに装填した。
【0105】
2.2gのQuadraSil(登録商標)MPを溶液に添加し、系を25℃で16時間攪拌し続けた。懸濁液をミリポアフィルター(0.22μm)上で濾過し、22mlのテトラヒドロフランで洗浄した。溶媒を減圧下で濃縮してペーストを得た。
【0106】
残渣を650mlのメタノールで溶解し、水素化反応器に装填した。2.05gの10%パラジウム炭素を懸濁液に添加し、水素化を45℃、3バールで22時間行った。
【0107】
反応は、以下の条件でTLC分析により制御した。
TLCプレート:アルミナ上のシリカゲル、ジクロロメタンに溶解した出発基質(中間体3)、メタノールで希釈した反応混合物;溶離液:ヘプタン/EtOAc 1/1、検出器:ホスホモリブデン酸セリウム。反応の終わりに、ダイカライト(30g)の層上で、系をメタノール(120mL)で洗浄して濾過した。
【0108】
溶媒を減圧下で残量430mLまで濃縮し、5.16gの炭酸カリウムを添加した。混合物を25℃で4時間撹拌し続けた。反応は以下の条件下でTLC分析により制御した。TLCプレート:アルミナ上のシリカゲル、ジクロロメタンに溶解した中間生成物4、1M HCl中でクエンチし、EtOAcで抽出した反応混合物、有機相を析出させた。溶離液:ヘプタン/EtOAc 1/1、検出器:ホスホモリブデン酸セリウム。懸濁液をミリポアフィルター(0.22μm)上で濾過し、メタノール(20mL)で洗浄した。
【0109】
溶液を減圧下で残量54mLまで濃縮し、水162mLを加え、残留メタノールを減圧下で除去した。
【0110】
得られた懸濁液を40mLの1M塩酸で中和し、30分間撹拌しながら10℃に冷却した。固体を水で洗浄したブフナー上で濾過し、減圧下、50℃で6時間乾燥させた。13gの原料エステトロール(白色固体)を得た。
【0111】
例4
この例は、本発明のプロセスの工程D)の実施を指す。
【0112】
先の例に記載したようにして得られた原料エステトロールを、91mLのテトラヒドロフランに溶解した。0.4gのQuadraSil(登録商標)MPを溶液に添加し、系を25℃で16時間攪拌し続けた。懸濁液をミリポア(0.22μm)で濾過し、25mlのテトラヒドロフランで洗浄した。溶媒を減圧下で留去し、130mLのアセトニトリルおよび104mLのメタノールを添加した。系を25℃で完全に溶解するまで撹拌下に保った。
【0113】
溶液を減圧下で残量130mLまで濃縮し、104mLのアセトニトリルを添加した。系を再び減圧下で残量130mLまで濃縮し、104mLのアセトニトリルを添加した。
【0114】
系を減圧下で残量130mLまで濃縮し、25℃で3時間撹拌し続けた。懸濁液を5℃に冷却し、1時間撹拌し続けた。固体をブフナー上で冷アセトニトリルで洗浄して濾過し、減圧下45℃で3時間乾燥させた。
【0115】
10.5gの生成物が得られ、これをHPLC(方法HPLC2)によって分析した。試験の結果を図1に示す:生成物は、HPLC純度=99.91%のエステトロールであることが判明し、異性体15β,16β,17βは検出されなかった(保持時間(図中min=分)約18´のピークは、生成物に起因せず、クロマトグラフィー溶出自体に起因する)。
【0116】
生成物のサンプルをXPRD分析したところ、試験結果は図3の上段に示すような回折像が得られた。下表に位置(角度値2θ±0.2°)とディフラクトグラムの主ピークの相対強度を示す。
【0117】
【表3】
【0118】
得られた生成物のさらなる8mgのサンプルをDSC試験に供した。試験の結果を図4に示し、これは生成物が約244.5℃の融解Tを有することを示す。
【0119】
例5
この例は、本発明のプロセスの工程E)の実施を指す。
【0120】
例4で得られたエステトロール8gをメタノール96mLに溶解し、このようにして調製した溶液に240mlの水を滴下した。メタノールが完全に除去されるまで、系を減圧下で濃縮した。懸濁液を15℃で30分間撹拌し続け、固体をブフナー上で濾過し、56mLの水で洗浄した。
【0121】
固体を減圧下45℃で6時間乾燥させた。8.3gのエステトロール一水和物(白色固体)を得て、HPLC(方法2)によって分析した。試験結果を図2に示す。生成物は、HPLC純度=100%のエステトロール一水和物であることが判明した(保持時間(図中min=分)約18´のピークは、生成物に起因せず、クロマトグラフィー溶出自体に起因する)。
【0122】
生成物のサンプルをXPRD分析したところ、試験結果は図3の下段に示すような回折像が得られ、下表に位置(角度値2θ±0.2°)とディフラクトグラムの主ピークの相対強度を示す。
【0123】
【表4】
【0124】
得られた生成物のさらなる3.4mgのサンプルをDSC試験に供した。試験結果を図5に示し、
これは、エステトロール一水和物の脱水に起因する約107.4℃に最大値を有する第1の広がったピークの他、図4の試験で判明したエステトロールの融点に本質的に対応する温度における約244℃の第2のピークを示す。
【0125】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ9.0(s、1H);7.05(d、1H、J=8.4Hz);6.51-6.48(m、1H);6.27(d、1H、J=2.4 Hz);4.86-4.85(d、1H、J=4.8Hz);4.61-4.59(d、1H、J=5.6Hz);4.27-4.26(d、1H、J=6Hz);3.72-3.66(m、2H);3.26-3.24(t、1H、J=5.6Hz);2.72-2.68(m、2H);2.22-2.18(m、2H);2.1-2.05(m、1H);1.76-1.73(d、1H、12Hz);1.4-1.03(m、5H);0.66(s、3H)。
質量(Cl):m/z=305[M+1]
図1
図2
図3
図4
図5