(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】観察装置および観察方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20241114BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20241114BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/36
G01N21/17 620
(21)【出願番号】P 2022547382
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2021002099
(87)【国際公開番号】W WO2022054305
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2020153252
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】安彦 修
(72)【発明者】
【氏名】竹内 康造
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀直
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044336(WO,A1)
【文献】特開2019-124679(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて前記観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、前記複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得部と、
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記基準位置の前記干渉強度画像に基づいて前記基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成部と、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成部と、
を備え、
前記2次元位相画像生成部は、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、
前記複素振幅総和画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
観察装置。
【請求項2】
複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて前記観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、前記複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得部と、
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記基準位置の前記干渉強度画像に基づいて前記基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成部と、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成部と、
を備え、
前記2次元位相画像生成部は、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて前記複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
観察装置。
【請求項3】
前記2次元位相画像生成部は、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて前記複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数のシアー方向および前記複数の光照射方向それぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
請求項2に記載の観察装置。
【請求項4】
複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて前記観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、前記複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得部と、
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記基準位置の前記干渉強度画像に基づいて前記基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成部と、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成部と、
を備え、
前記2次元位相画像生成部は、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像を複数のバッチに区分し、前記複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる前記複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、
前記複数のバッチそれぞれの前記複素振幅総和画像に基づいて前記複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数のバッチそれぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
観察装置。
【請求項5】
前記2次元位相画像生成部は、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像を複数のバッチに区分し、前記複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる前記複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、
前記複数のバッチそれぞれの前記複素振幅総和画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて前記複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数のシアー方向および前記複数のバッチそれぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
請求項4に記載の観察装置。
【請求項6】
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記第1複素振幅画像生成部により生成された前記基準位置の前記複素振幅画像に基づいて複数の位置それぞれの複素振幅画像を生成する第2複素振幅画像生成部と、
前記2次元位相画像生成部により生成された前記複数の位置それぞれの前記2次元位相画像に基づいて3次元位相画像を生成する3次元位相画像生成部と、
前記3次元位相画像に基づいて前記観察対象物の3次元屈折率分布を求める屈折率分布算出部と、
を更に備える請求項1~5の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項7】
複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて前記観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、前記複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得ステップと、
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記基準位置の前記干渉強度画像に基づいて前記基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成ステップと、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成ステップと、
を備え、
前記2次元位相画像生成ステップでは、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、
前記複素振幅総和画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
観察方法。
【請求項8】
複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて前記観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、前記複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得ステップと、
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記基準位置の前記干渉強度画像に基づいて前記基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成ステップと、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成ステップと、
を備え、
前記2次元位相画像生成ステップでは、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて前記複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
観察方法。
【請求項9】
前記2次元位相画像生成ステップでは、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて前記複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数のシアー方向および前記複数の光照射方向それぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
請求項8に記載の観察方法。
【請求項10】
複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて前記観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、前記複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得ステップと、
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記基準位置の前記干渉強度画像に基づいて前記基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成ステップと、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成ステップと、
を備え、
前記2次元位相画像生成ステップでは、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像を複数のバッチに区分し、前記複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる前記複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、
前記複数のバッチそれぞれの前記複素振幅総和画像に基づいて前記複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数のバッチそれぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
観察方法。
【請求項11】
前記2次元位相画像生成ステップでは、
前記複数の光照射方向それぞれの前記複素振幅画像を複数のバッチに区分し、前記複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる前記複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、
前記複数のバッチそれぞれの前記複素振幅総和画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて前記複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、
前記複数のシアー方向および前記複数のバッチそれぞれの前記複素微分干渉画像に基づいて前記2次元位相画像を生成する、
請求項10に記載の観察方法。
【請求項12】
前記複数の光照射方向それぞれについて、前記第1複素振幅画像生成ステップにおいて生成された前記基準位置の前記複素振幅画像に基づいて複数の位置それぞれの複素振幅画像を生成する第2複素振幅画像生成ステップと、
前記2次元位相画像生成ステップにおいて生成された前記複数の位置それぞれの前記2次元位相画像に基づいて3次元位相画像を生成する3次元位相画像生成ステップと、
前記3次元位相画像に基づいて前記観察対象物の3次元屈折率分布を求める屈折率分布算出ステップと、
を更に備える請求項7~11の何れか1項に記載の観察方法。
【請求項13】
請求項7~12の何れか1項に記載の観察方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、観察装置および観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スフェロイドやオルガノイドと呼ばれる3次元の細胞組織を作製する技術が進歩している。また、これらの3次元細胞組織を創薬や再生医療などに応用する研究が進んでいる。これらの3次元細胞組織は光学的に透明な多重散乱体である。このような光学的に透明な散乱体をイメージングする技術として、これまでに多種多様な手法が提案されている。そのうち蛍光プローブを用いるイメージング技術としては、共焦点顕微鏡、多光子顕微鏡、ライトシート顕微鏡が挙げられる。一方、蛍光プローブを用いない非染色・非侵襲のイメージング技術としては、光コヒーレンス・トモグラフィ(Optical Coherence Tomography、OCT)などが知られている。
【0003】
スフェロイドやオルガノイドなどのような観察対象物については非染色・非侵襲のイメージングが望まれる場合が多いものの、これらの観察対象物のイメージングにOCTが適用されたという報告例は多くない。その理由としては、OCTによるイメージングの分解能が低いこと、および、OCTによるイメージングにより得られた信号の解釈が難しいこと、が考えられる。したがって、現時点では、ゴールドスタンダードとなりうる非染色の3次元細胞組織のイメージング技術は確立されていないと言ってよい。
【0004】
観察対象物の光路長を非染色・非侵襲でイメージングすることができる技術として、定量位相イメージング(Quantitative Phase Imaging、QPI)も知られている。QPIは、観察対象物(例えば細胞)の光路長という物理的な情報を取得することができることから、生物分野で応用が進んでいる。QPIにより取得した画像を用いて、微分干渉画像や位相差顕微鏡画像などの他の種類の画像を生成することができる。QPIは、情報量が比較的多い画像を取得することができる技術であり、従来の明視野画像を用いた解析よりハイコンテントな解析にも適用することができると期待されている。また、近年の機械学習による画像認識精度の向上により非染色のイメージング技術を使ったハイコンテントな解析が盛んに研究されており、今後、多重散乱体の非染色イメージングは重要な役割を担うことが期待される。しかし、QPIは、取得される画像があくまで光路長の2次元への投影であるので、真の3次元の構造を把握できない。
【0005】
また、観察対象物の光路長を非染色・非侵襲でイメージングすることができる技術として、特許文献1に記載されている光回折トモグラフィ(Optical Diffraction Tomography、ODT)も知られている。ODTは、QPIを3次元イメージング可能な技術に発展させたものであり、観察対象物の3次元屈折率トモグラフィを実現することができる。ODTを用いて細胞観察を行うことにより、細胞核やミトコンドリアなどの細胞小器官の同定が可能になり、また、3次元的な形態変化の追跡が可能になって、QPIより更にハイコンテントな解析ができることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Sungsam Kang, et al, "Imaging deep within a scattering medium using collective accumulation of single-scattered waves," NATURE PHOTONICS, Vol.9, pp.253-258 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のODTは、数個からなる細胞の観察に適用され得るものの、上記のような3次元細胞組織などの多重散乱体の観察には適用が困難である。何故なら、従来のODTでは、観察対象物で生じる多重散乱光が多い場合に、取得される画像に多重散乱光の影響が大きく現れるからである。
【0009】
光の散乱とは、光が対象物と相互作用することによって光の進行方向が変えられる現象をいう。特に対象物の屈折率の空間的な不均一さが増大すると、光は対象物を通過する間に対象物と多数回相互作用するようになる。このように対象物と多数回相互作用した光は多重散乱光と呼ばれる。これに対して、対象物と一回のみ相互作用した光は単一散乱光と呼ばれる。多重散乱光は、スペックルの増大および単一散乱-多重散乱比(Single-scattering to Multi-scattering Ratio、SMR)の悪化の原因となり、測定の障壁となることが知られている。
【0010】
スペックルは、光が時間的かつ空間的にコヒーレントである場合に、多重散乱光の干渉によって空間的に強度または位相の大きな変化が引き起こされることにより生じる。スペックル発生を抑制するには、時間的または空間的にインコヒーレントである光を出力する光源を用いればよい。例えば、位相差顕微鏡などの通常の明視野顕微鏡は、ハロゲンランプや発光ダイオードなどの空間的かつ時間的にインコヒーレントな光源を用いることで、スペックルのない画像を取得している。
【0011】
SMRの悪化は、単一散乱光よりも多重散乱光が支配的になって、単一散乱光が多重散乱光の中に埋もれてしまうことにより生じる。観察対象物が大きくなって観察深度が深いほど、単一散乱光の成分は指数関数的に減少する一方で、これと対照的に多重散乱光の成分が増大する。単一散乱光は、その散乱方向が対象物の構造と直接的な対応関係を持っていることから、対象物の構造の測定に用いやすい。一方で、多重散乱光は、対象物の構造との関係が複雑であり、対象物の構造の情報を抽出することが難しい。それ故、単一散乱光を利用したイメージング技術では、多重散乱光の中に単一散乱光が埋もれると(すなわち、SMRが悪化すると)測定が失敗することが知られている。
【0012】
SMR悪化の抑制は、単一散乱光および多重散乱光のうち単一散乱光を選択的に検出するゲーティングと呼ばれる技術により可能である。ゲーティングにより多重散乱光が抑制されるので、SMR悪化の抑制と同時にスペックルの抑制も可能である。ゲーティングは、空間、時間および偏光などの自由度を用いて実現される。共焦点顕微鏡は、空間的ゲーティングの一例である。OCTは、時間的および空間的なゲーティングの一例である。
【0013】
従来のODTは、多重散乱光の影響を除去していないことから、観察対象物で生じる多重散乱光が多い場合に、取得される画像においてスペックルが増大し、また、SMRが悪化する。それ故、従来のODTは、多重散乱光の発生が少ない数個からなる細胞の観察に適用され得るものの、多重散乱光の発生が多い3次元細胞組織などの多重散乱体の観察には適用が困難である。
【0014】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、観察対象物が多重散乱体である場合であっても、多重散乱光の影響が低減された3次元屈折率トモグラフィを実現することができる観察装置および観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1態様は観察装置である。観察装置は、(1) 複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得部と、(2) 複数の光照射方向それぞれについて、基準位置の干渉強度画像に基づいて基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成部と、(3) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成部と、を備える。
【0016】
本発明の第2態様は観察方法である。観察方法は、(1) 複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得ステップと、(2) 複数の光照射方向それぞれについて、基準位置の干渉強度画像に基づいて基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成ステップと、(3) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成ステップと、を備える。
【0017】
本発明の第3態様はプログラムであり、このプログラムは、上記の観察方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのものである。本発明の第4態様は記録媒体であり、この記録媒体は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の各態様によれば、観察対象物が多重散乱体である場合であっても、多重散乱光の影響が低減された3次元屈折率トモグラフィを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、観察装置1Aの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、観察装置1Bの構成を示す図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。
【
図5】
図5は、カーネル関数gを説明する図である。
【
図6】
図6は、2次元位相画像生成ステップS4の第1態様のフローチャートである。
【
図7】
図7は、干渉強度画像取得ステップS1で取得された干渉強度画像(垂直照射時)である。
【
図8】
図8は、第1複素振幅画像生成ステップS2で干渉強度画像(
図7)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=0)である。
【
図9】
図9は、第2複素振幅画像生成ステップS3で複素振幅画像(
図8)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=10μm)である。
【
図10】
図10は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS11で複素振幅画像(
図9)に基づいて生成された複素振幅総和画像(実部)である。
【
図11】
図11は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS12で複素振幅総和画像(
図10)に基づいて生成された2次元位相画像である。
【
図12】
図12は、屈折率分布算出ステップS6で得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像である。
【
図13】
図13は、2次元位相画像生成ステップS4の第2態様のフローチャートである。
【
図14】
図14は、干渉強度画像取得ステップS1で取得された干渉強度画像(垂直照射時)である。
【
図15】
図15は、第1複素振幅画像生成ステップS2で干渉強度画像(
図14)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=0)である。
【
図16】
図16は、第2複素振幅画像生成ステップS3で複素振幅画像(
図15)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=20μm)である。
【
図17】
図17は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS21で複素振幅画像(
図16)に基づいて生成された複素微分干渉画像(上下方向シアー及び左右方向シアーそれぞれについて実部および虚部)である。
【
図18】
図18は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS21で生成された複素微分干渉画像(
図17)の総和を表す画像(上下方向シアー及び左右方向シアーそれぞれについて実部および虚部)である。
【
図19】
図19は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS22で複素微分干渉画像の総和を表す画像(
図18)に基づいて生成された位相微分画像(上下方向シアー及び左右方向シアー)である。
【
図20】
図20は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS23で位相微分画像(
図19)に基づいて生成された2次元位相画像である。
【
図21】
図21は、屈折率分布算出ステップS6で得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像である。
【
図22】
図22は、2次元位相画像生成ステップS4の第3態様のフローチャートである。
【
図23】
図23は、干渉強度画像取得ステップS1で取得された干渉強度画像(垂直照射時)である。
【
図24】
図24は、第1複素振幅画像生成ステップS2で干渉強度画像(
図23)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=0)である。
【
図25】
図25は、第2複素振幅画像生成ステップS3で複素振幅画像(
図24)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=20μm)である。
【
図26】
図26は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS31で複素振幅画像(
図25)に基づいて生成された複素振幅総和画像である。
【
図27】
図27は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS34で生成された2次元位相画像である。
【
図28】
図28は、屈折率分布算出ステップS6で得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像である。
【
図31】
図31(a),(b)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。
【
図32】
図32(a)~(c)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
図1は、観察装置1Aの構成を示す図である。この観察装置1Aは、光源11、レンズ12、レンズ21、ミラー22、レンズ23、コンデンサレンズ24、対物レンズ25、ビームスプリッタ41、レンズ42、撮像部43および解析部50などを備える。
【0022】
光源11は、空間的・時間的にコヒーレントな光を出力するものであり、好適にはレーザ光源である。レンズ12は、光源11と光学的に接続されており、光源11から出力された光を光ファイバ14の光入射端13に集光して、その光を光入射端13に入射させる。光ファイバ14は、レンズ12により光入射端13に入射された光をファイバカプラ15へ導光する。ファイバカプラ15は、光ファイバ14と光ファイバ16,17との間で光を結合するものであり、光ファイバ14により導光されて到達した光を2分岐して、一方の分岐光を光ファイバ16により導光させ、他方の分岐光を光ファイバ17によりさせる。光ファイバ16により導光された光は光出射端18から発散光として出射される。光ファイバ17により導光された光は光出射端19から発散光として出射される。
【0023】
レンズ21は、光出射端18と光学的に接続されており、光出射端18から発散光として出力された光をコリメートする。ミラー22は、レンズ21と光学的に接続されており、レンズ21から到達した光をレンズ23へ反射させる。ミラー22の反射面の方位は可変である。レンズ23は、ミラー22と光学的に接続されている。コンデンサレンズ24は、レンズ23と光学的に接続されている。レンズ23およびコンデンサレンズ24は、好適には4f光学系を構成している。レンズ23およびコンデンサレンズ24は、ミラー22の反射面の方位に応じた光照射方向から観察対象物Sに対して光を照射する。対物レンズ25は、コンデンサレンズ24と光学的に接続されている。対物レンズ25とコンデンサレンズ24との間に観察対象物Sが配置される。対物レンズ25は、コンデンサレンズ24から出力されて観察対象物Sを経た光(物体光)を入力し、その光をビームスプリッタ41へ出力する。
【0024】
ビームスプリッタ41は、対物レンズ25と光学的に接続され、また、光出射端19とも光学的に接続されている。ビームスプリッタ41は、対物レンズ25から出力されて到達した光(物体光)と、光出射端19から出力されて到達した光(参照光)とを合波して、両光をレンズ42へ出力する。レンズ42は、ビームスプリッタ41と光学的に接続されており、ビームスプリッタ41から到達した物体光および参照光それぞれをコリメートして撮像部43へ出力する。撮像部43は、レンズ42と光学的に接続されており、レンズ42から到達した物体光と参照光との干渉による干渉縞像(干渉強度画像)を撮像する。撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は傾斜している。ビームスプリッタ41により物体光と参照光とが合波される位置は、結像レンズより後段であってもよいが、収差の影響を考慮すると、図に示されるように対物レンズ25とレンズ42との間であるのが望ましい。
【0025】
解析部50は、撮像部43と電気的に接続されており、撮像部43により撮像された干渉強度画像を入力する。解析部50は、その入力した干渉強度画像を処理することにより、観察対象物Sの3次元屈折率分布を算出する。解析部50は、コンピュータであってよい。解析部50は、干渉強度画像取得部51、第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55、屈折率分布算出部56、表示部57および記憶部58を備える。
【0026】
干渉強度画像取得部51は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。また、干渉強度画像取得部51は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。干渉強度画像取得部51は、CPUを含み、ミラー22の反射面の方位を変化させる為の制御信号を出力する出力ポートを有し、また、撮像部43から干渉強度画像を入力する入力ポートを有する。対物レンズ25を光軸方向に移動させる必要はない。基準位置は、撮像部43の撮像面に対して共役関係にある像面位置である。
【0027】
第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55および屈折率分布算出部56は、干渉強度画像に基づいて処理を行うものであり、CPU、DSPまたはFPGA等の処理装置を含む。表示部57は、処理すべき画像、処理途中の画像および処理後の画像などを表示するものであり、例えば液晶ディスプレイを含む。記憶部58は、各種の画像のデータを記憶するものであり、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、RAMおよびROM等を含む。第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55、屈折率分布算出部56および記憶部58は、クラウドコンピューティングによって構成されてもよい。
【0028】
記憶部58は、干渉強度画像取得部51、第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55および屈折率分布算出部56に各処理を実行させるためのプログラムをも記憶する。このプログラムは、観察装置1Aの製造時または出荷時に記憶部58に記憶されていてもよいし、出荷後に通信回線を経由して取得されたものが記憶部58に記憶されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体2に記録されていたものが記憶部58に記憶されてもよい。記録媒体2は、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、BD-ROM、USBメモリなど任意である。
【0029】
干渉強度画像取得部51、第1複素振幅画像生成部52、第2複素振幅画像生成部53、2次元位相画像生成部54、3次元位相画像生成部55および屈折率分布算出部56それぞれの処理の詳細については後述する。
【0030】
図2は、観察装置1Bの構成を示す図である。この
図2に示される観察装置1Bは、
図1に示された観察装置1Aの構成に加えて、レンズ31、ミラー32およびレンズ34などを備える。
【0031】
レンズ31は、光出射端19と光学的に接続されており、光出射端19から発散光として出力された光(参照光)をコリメートする。ミラー32は、レンズ31と光学的に接続されており、レンズ31から到達した光をレンズ34へ反射させる。レンズ34は、ミラー32と光学的に接続されており、ミラー32から到達した光をビームスプリッタ41へ出力する。レンズ34から出力された光は、ビームスプリッタ41の手前で一旦集光された後、発散光としてビームスプリッタ41に入力される。ビームスプリッタ41は、対物レンズ25から出力されて到達した光(物体光)と、レンズ34から出力されて到達した光(参照光)とを合波して、両光を同軸にしてレンズ42へ出力する。撮像部43は、レンズ42から到達した物体光と参照光との干渉による干渉縞像(干渉強度画像)を撮像する。撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は平行である。
【0032】
駆動部33は、ミラー32の反射面に垂直な方向にミラー32を移動させる。駆動部33は例えばピエゾアクチュエータである。このミラー32の移動により、ファイバカプラ15における光分岐からビームスプリッタ41における合波に至るまでの物体光および参照光それぞれの光路長の差(位相差)を変化させる。この光路長差が異なると、撮像部43により撮像される干渉強度画像も異なる。
【0033】
図3は、観察方法のフローチャートである。この観察方法は、観察装置1A(
図1)および観察装置1B(
図2)の何れを用いた場合においても可能なものである。この観察方法は、干渉強度画像取得ステップS1、第1複素振幅画像生成ステップS2、第2複素振幅画像生成ステップS3、2次元位相画像生成ステップS4、3次元位相画像生成ステップS5および屈折率分布算出ステップS6を備える。
【0034】
干渉強度画像取得ステップS1の処理は干渉強度画像取得部51により行われる。第1複素振幅画像生成ステップS2の処理は第1複素振幅画像生成部52により行われる。第2複素振幅画像生成ステップS3の処理は第2複素振幅画像生成部53により行われる。2次元位相画像生成ステップS4の処理は2次元位相画像生成部54により行われる。3次元位相画像生成ステップS5の処理は3次元位相画像生成部55により行われる。屈折率分布算出ステップS6の処理は屈折率分布算出部56により行われる。
【0035】
干渉強度画像取得ステップS1において、干渉強度画像取得部51は、ミラー22の反射面の方位を変化させることにより、観察対象物Sに対して複数の光照射方向それぞれに沿って光を照射させる。そして、干渉強度画像取得部51は、複数の光照射方向それぞれについて基準位置における干渉強度画像を撮像部43から取得する。
【0036】
図1中および
図2中に説明の便宜のためにxyz直交座標系が示されている。z軸は対物レンズ25の光軸に対し平行である。基準位置は、撮像部43の撮像面に対して共役関係にある像面位置である。この位置をz=0とする。観察対象物Sへの光照射方向は、その照射光の波数ベクトル(k
x,k
y,k
z)のうちのk
x及びk
yにより表すことができる。
【0037】
図4(a)~(c)は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。この図では、横軸をk
xとし縦軸をk
yとしたk
xk
y平面において各々の丸印の位置が光照射方向を表している。光照射方向の走査は、
図4(a)に示されるようにk
xk
y平面において矩形格子状に配置されるようなものであってもよいし、
図4(b)に示されるようにk
xk
y平面において同心の複数の円それぞれの周上に配置されるようなものであってもよいし、また、
図4(c)に示されるようにk
xk
y平面において螺旋状に配置されるようなものであってもよい。何れの場合にも、コンデンサレンズ24のNAの許す限りで光照射方向の走査が可能である。ラスタスキャンおよびランダムスキャンの何れであってもよい。ラスタスキャンの場合には、戻りスキャンが有ってもよいし無くてもよい。
【0038】
第1複素振幅画像生成ステップS2において、第1複素振幅画像生成部52は、複数の光照射方向それぞれについて、干渉強度画像取得部51により取得された基準位置の干渉強度画像に基づいて、基準位置の複素振幅画像を生成する。観察装置1A(
図1)の場合には、第1複素振幅画像生成部52は、フーリエ縞解析法により、1枚の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。観察装置1B(
図2)の場合には、第1複素振幅画像生成部52は、位相シフト法により、物体光と参照光との間の光路長差(位相差)が互いに異なる3枚以上の干渉強度画像に基づいて複素振幅画像を生成することができる。
【0039】
第2複素振幅画像生成ステップS3において、第2複素振幅画像生成部53は、複数の光照射方向それぞれについて、第1複素振幅画像生成部52により生成された基準位置(z=0)の複素振幅画像に基づいて、複数のz方向位置それぞれの複素振幅画像を生成する。基準位置の複素振幅画像u(x,y,0)の2次元フーリエ変換をU(kx,ky,0)とすると、z=dの位置の複素振幅画像u(x,y,d)、および、この複素振幅画像u(x,y,d)の2次元フーリエ変換U(kx,ky,d)は、下記式で表される。iは虚数単位であり、k0は観察対象物中における光の波数である。
【0040】
【0041】
【0042】
2次元位相画像生成ステップS4において、2次元位相画像生成部54は、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成部53により生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する。ここで生成される2次元位相画像は、フォーカスを合わせたz方向位置を中心とする位相画像に相当する。2次元位相画像生成ステップS4の詳細については後述する。
【0043】
なお、第2複素振幅画像生成ステップS3において複数の光照射方向それぞれについて複数の位置それぞれの複素振幅画像を全て生成した後に、2次元位相画像生成ステップS4以降の処理を行ってもよい。また、第2複素振幅画像生成ステップS3において複数の光照射方向それぞれについて或る1つのz方向位置の複素振幅画像を生成し、該位置の2次元位相画像を2次元位相画像生成ステップS4において生成する処理を単位として、z方向位置を走査しながら当該単位処理を繰り返し行ってもよい。後者の場合には、記憶部58が記憶しておくべき画像データの容量を小さくすることができる点で好ましい。
【0044】
3次元位相画像生成ステップS5において、3次元位相画像生成部55は、2次元位相画像生成部54により生成された複数の位置それぞれの2次元位相画像に基づいて3次元位相画像を生成する。ここで生成される3次元位相画像は、2次元位相画像中での位置x,yおよび該2次元位相画像の位置zを変数とする画像である。
【0045】
屈折率分布算出ステップS6において、屈折率分布算出部56は、3次元位相画像生成部55により生成された3次元位相画像に基づいて、デコンボリューションにより観察対象物の3次元屈折率分布を求める。観察対象物の屈折率分布をn(x,y,z)とし、電気感受率分布をf(x,y,z)とし、背景の媒質の屈折率をnmとすると、両者の間には下記(3)式の関係がある。3次元位相画像生成部55により生成された3次元位相画像Φ(x,y,z)は、下記(4)式のとおり、カーネル関数g(x,y,z)と電気感受率分布f(x,y,z)とのコンボリューションで表される。したがって、観察対象物の3次元屈折率分布n(x,y,z)は、3次元位相画像Φ(x,y,z)に基づいてデコンボリューションにより求めることができる。
【0046】
【0047】
【0048】
なお、カーネル関数gは、波動方程式の解に対応するグリーン関数に基づくものである。
図5は、カーネル関数gを説明する図である。この図において、カーネル関数gの値が最も大きい中心位置が原点であり、縦方向がz軸であり、横方向がz軸に垂直な方向である。
【0049】
次に、2次元位相画像生成ステップS4の詳細について説明する。2次元位相画像生成ステップS4において、2次元位相画像生成部54は、複数の位置それぞれについて、第2複素振幅画像生成部53により生成された複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する。2次元位相画像生成ステップS4は、以下に説明する3つの態様が可能である。
【0050】
図6は、2次元位相画像生成ステップS4の第1態様のフローチャートである。この第1態様では、2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS11において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、ステップS12において、この複素振幅総和画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0051】
ステップS11の処理は、非特許文献1に記載されているCASS(Collective Accumulation of Single Scattering)技術によるものである。或る光照射方向に沿って対象物に照射されて該対象物を経た光のうち、対象物と一回のみ相互作用した単一散乱光の空間周波数分布は光照射方向に応じてシフトしているのに対して、対象物と複数回相互作用した多重散乱光の空間周波数分布は光照射方向によってランダムに変化する。CASS技術は、このような単一散乱光および多重散乱光それぞれの空間周波数分布の光照射方向依存性の相違を利用する。
【0052】
すなわち、ステップS11では、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正する(つまり、空間周波数領域において複素振幅画像の空間周波数分布を光照射方向に応じて平行移動する)ことにより、複素振幅画像のうちの単一散乱光成分の空間周波数分布を光照射方向に依存しない形状および配置とし、その一方で、複素振幅画像のうちの多重散乱光成分の空間周波数分布をランダムな形状および配置とする。そして、ステップS11では、これら補正後の複数の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成する(つまり、合成開口処理をする)ことにより、複素振幅画像のうちの単一散乱光成分をコヒーレントに足し合わせ、その一方で、複素振幅画像のうちの多重散乱光成分を互いに相殺させる。
【0053】
したがって、ステップS11で生成される複素振幅総和画像は、多重散乱光の影響が低減されたものとなる。そして、最終的に屈折率分布算出ステップS6で得られる3次元屈折率分布も、多重散乱光の影響が低減されて、スペックルが抑制されSMRが改善されたものとなる。
【0054】
図7~
図12は、2次元位相画像生成ステップS4の第1態様の場合に各ステップで得られた画像の例を示す図である。これらの画像は、観察装置1A(
図1)を用いたフーリエ縞解析法に基づくものである。
図7は、干渉強度画像取得ステップS1で取得された干渉強度画像(垂直照射時)である。
図8は、第1複素振幅画像生成ステップS2で干渉強度画像(
図7)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=0)である。
図9は、第2複素振幅画像生成ステップS3で複素振幅画像(
図8)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=10μm)である。
【0055】
図10は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS11で複素振幅画像(
図9)に基づいて生成された複素振幅総和画像(実部)である。
図11は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS12で複素振幅総和画像(
図10)に基づいて生成された2次元位相画像である。
図12は、屈折率分布算出ステップS6で得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像である。このように、得られた3次元屈折率分布は、多重散乱光の影響が低減されて、スペックルが抑制されSMRが改善されている。
【0056】
図13は、2次元位相画像生成ステップS4の第2態様のフローチャートである。この第2態様では、2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS21において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS22において、複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS23において、位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0057】
z=dの位置の複素振幅画像をu(x,y,d)とすると、ステップS21で生成される複素微分干渉画像q(x,y,d)は下記(5)式で表される。δxおよびδyのうち少なくとも一方は非0である。δx≠0,δy=0であれば、x方向をシアー方向とする複素微分干渉画像qが得られる。δx=0,δy≠0であれば、y方向をシアー方向とする複素微分干渉画像qが得られる。δx≠0,δy≠0であれば、x方向およびy方向の何れとも異なる方向をシアー方向とする複素微分干渉画像qが得られる。
【0058】
【0059】
複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像qの総和をqsum(x,y,d)とすると、ステップS22で生成される位相微分画像φ(x,y,z)は、qsum(x,y,d)の位相として下記(6)式で表される。ステップS23では、この位相微分画像φ(x,y,z)を積分またはデコンボリューションすることにより、2次元位相画像を生成することができる。
【0060】
【0061】
なお、ステップS21において、複素振幅画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複素微分干渉画像を生成してもよい。この場合、2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS21において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS22において、複数のシアー方向それぞれについて、複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS23において、複数のシアー方向それぞれの位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0062】
ステップS22で複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて生成される位相微分画像は、多重散乱光の影響が低減されたものとなる。そして、最終的に屈折率分布算出ステップS6で得られる3次元屈折率分布も、多重散乱光の影響が低減されて、スペックルが抑制されたものとなる。また、ステップS21において複素振幅画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複素微分干渉画像を生成する場合には、ステップS23で得られる2次元位相画像にライン状のノイズが現れるのを抑制することができる。
【0063】
図14~
図21は、2次元位相画像生成ステップS4の第2態様の場合に各ステップで得られた画像の例を示す図である。これらの画像は、観察装置1A(
図1)を用いたフーリエ縞解析法に基づくものである。また、ステップS21において、複素振幅画像上の互いに異なる2つのシアー方向(上下方向シアー及び左右方向シアー)それぞれについて複素微分干渉画像を生成した。
図14は、干渉強度画像取得ステップS1で取得された干渉強度画像(垂直照射時)である。
図15は、第1複素振幅画像生成ステップS2で干渉強度画像(
図14)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=0)である。
図16は、第2複素振幅画像生成ステップS3で複素振幅画像(
図15)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=20μm)である。
【0064】
図17は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS21で複素振幅画像(
図16)に基づいて生成された複素微分干渉画像(上下方向シアー及び左右方向シアーそれぞれについて実部および虚部)である。
図18は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS21で生成された複素微分干渉画像(
図17)の総和を表す画像(上下方向シアー及び左右方向シアーそれぞれについて実部および虚部)である。
図19は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS22で複素微分干渉画像の総和を表す画像(
図18)に基づいて生成された位相微分画像(上下方向シアー及び左右方向シアー)である。
図20は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS23で位相微分画像(
図19)に基づいて生成された2次元位相画像である。
図21は、屈折率分布算出ステップS6で得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像である。このように、得られた3次元屈折率分布は、多重散乱光の影響が低減されて、スペックルが抑制されている。
【0065】
なお、ここでは、ステップS23において位相微分画像を積分またはデコンボリューションすることにより2次元位相画像を生成する場合を説明した。しかし、位相微分画像を2次元位相画像として扱うこともできる。この場合、ステップS23を行うことなく、屈折率分布算出ステップS6のデコンボリューションにおいて、ステップS23のデコンボリューションで用いたカーネルを含むカーネル(
図29)を用いることにより、ステップS22で生成された位相微分画像(2次元位相画像)から観察対象物の3次元屈折率分布を求めることができる。
図29に示されるカーネルは、
図5に示したカーネルとステップS23のデコンボリューションで用いるカーネルとを畳み込み積分することにより得られる。
【0066】
図22は、2次元位相画像生成ステップS4の第3態様のフローチャートである。この第3態様では、2次元位相画像生成ステップS4は、複数の位置それぞれについて、ステップS31において、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分し、複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、ステップS32において、複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS33において、複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS34において、位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0067】
第3態様のステップS31の処理は、複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分した上で、複数のバッチそれぞれについて第1態様のステップS11の処理を行うことに相当する。第3態様のステップS32,S33の処理は、複数のバッチそれぞれについて第2態様のステップS21,S22の処理を行うことに相当する。第3態様のステップS34の処理は、第2態様のステップS23の処理を行うことに相当する。
【0068】
なお、ステップS32において、複素振幅画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複素微分干渉画像を生成してもよい。この場合、2次元位相画像生成ステップS4は、ステップS32において、複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、ステップS33において、複数のシアー方向それぞれについて、複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像の総和に基づいて位相微分画像を生成し、ステップS34において、複数のシアー方向それぞれの位相微分画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0069】
第3態様におけるスペックルの抑制は、第1態様および第2態様と同程度である。第3態様におけるSMRの改善は、第1態様と第2態様との中間の程度である。
【0070】
図23~
図28は、2次元位相画像生成ステップS4の第3態様の場合に各ステップで得られた画像の例を示す図である。これらの画像は、観察装置1A(
図1)を用いたフーリエ縞解析法に基づくものである。また、ステップS32において、複素振幅画像上の互いに異なる2つのシアー方向(上下方向シアー及び左右方向シアー)それぞれについて複素微分干渉画像を生成した。
図23は、干渉強度画像取得ステップS1で取得された干渉強度画像(垂直照射時)である。
図24は、第1複素振幅画像生成ステップS2で干渉強度画像(
図23)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=0)である。
【0071】
図25は、第2複素振幅画像生成ステップS3で複素振幅画像(
図24)に基づいて生成された複素振幅画像(実部、z=20μm)である。
図26は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS31で複素振幅画像(
図25)に基づいて生成された複素振幅総和画像である。
図27は、2次元位相画像生成ステップS4中のステップS34で生成された2次元位相画像である。
図28は、屈折率分布算出ステップS6で得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像である。このように、得られた3次元屈折率分布は、多重散乱光の影響が低減されて、スペックルが抑制されSMRが改善されている。
【0072】
なお、ここでは、ステップS34において位相微分画像を積分またはデコンボリューションすることにより2次元位相画像を生成する場合を説明した。しかし、位相微分画像を2次元位相画像として扱うこともできる。この場合、ステップS34を行うことなく、屈折率分布算出ステップS6のデコンボリューションにおいて、ステップS34のデコンボリューションで用いたカーネルを含むカーネルを用いることにより、ステップS33で生成された位相微分画像(2次元位相画像)から観察対象物の3次元屈折率分布を求めることができる。
【0073】
第1態様の場合に得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像(
図12)と、第2態様の場合に得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像(
図21)と、第3態様の場合に得られた3次元屈折率分布の或るz位置での画像(
図28)とを比較すると、スペックル抑制の効果は同程度であるものの、第2態様より第3態様の方がSMR改善の効果が大きく、第3態様より第1態様の方がSMR改善の効果が大きい。
【0074】
なお、本実施形態において位相を計算するに際しては、必要に応じて位相アンラップを行うのが好ましい。
【0075】
観察装置は、上記実施形態および構成例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。観察装置1A(
図1)および観察装置1B(
図2)の構成では観察対象物Sを透過した光を物体光としたが、以下に説明する観察装置1C(
図30)の構成のように観察対象物Sで反射された光を物体光としてもよい。
【0076】
図30は、観察装置1Cの構成を示す図である。観察装置1Cは、光源11、レンズ12、レンズ21、ミラー22、レンズ23、対物レンズ25、ビームスプリッタ41、レンズ42、撮像部43および解析部50などを備える。以下では、観察装置1A(
図1)と相違する点について主に説明する。
【0077】
レンズ21は、光ファイバ16の光出射端18と光学的に接続されており、光出射端18から発散光として出力された光をコリメートする。ミラー22は、レンズ21と光学的に接続されており、レンズ21から到達した光をレンズ23へ反射させる。ミラー22の反射面の方位は可変である。レンズ23は、ミラー22と光学的に接続されている。対物レンズ25は、レンズ23と光学的に接続されている。レンズ23と対物レンズ25との間にビームスプリッタ41が配置されている。レンズ23および対物レンズ25は、好適には4f光学系を構成している。レンズ23および対物レンズ25は、ミラー22の反射面の方位に応じた光照射方向から観察対象物Sに対して光を照射する。対物レンズ25は、観察対象物Sで反射された光(物体光)を入力し、その光をビームスプリッタ41へ出力する。
【0078】
ビームスプリッタ41は、対物レンズ25と光学的に接続され、また、光ファイバ17の光出射端19とも光学的に接続されている。ビームスプリッタ41は、対物レンズ25から出力されて到達した光(物体光)と、光出射端19から出力されて到達した光(参照光)とを合波して、両光をレンズ42へ出力する。レンズ42は、ビームスプリッタ41と光学的に接続されており、ビームスプリッタ41から到達した物体光および参照光それぞれをコリメートして撮像部43へ出力する。撮像部43は、レンズ42と光学的に接続されており、レンズ42から到達した物体光と参照光との干渉による干渉縞像(干渉強度画像)を撮像する。撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は傾斜している。ビームスプリッタ41により物体光と参照光とが合波される位置は、結像レンズより後段であってもよいが、収差の影響を考慮すると、図に示されるように対物レンズ25とレンズ42との間であるのが望ましい。
【0079】
観察装置1C(
図30)の構成において、観察装置1B(
図2)と同様に参照光の光路長を変化させる機構(
図2中のレンズ31、ミラー32、駆動部33およびレンズ34)を設けて、ファイバカプラ15における光分岐からビームスプリッタ41における合波に至るまでの物体光および参照光それぞれの光路長の差(位相差)を変化させてもよい。この場合、撮像部43の撮像面への物体光の入射方向に対して参照光の入射方向は平行であってよい。
【0080】
また、第1複素振幅画像生成ステップS2、第2複素振幅画像生成ステップS3、2次元位相画像生成ステップS4、3次元位相画像生成ステップS5および屈折率分布算出ステップS6の各処理は、所定の数の光照射方向それぞれの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得される度に行われてもよいし(
図31)、1つの光照射方向の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得される度に行われてもよい(
図32)。
【0081】
図31および
図32は、干渉強度画像取得ステップS1における観察対象物Sへの光照射方向の走査の例を示す図である。これらの図では、横軸をk
xとし縦軸をk
yとしたk
xk
y平面において各々の丸印の位置が光照射方向を表している。これらの図に示される光照射方向の走査の例では、光照射方向を順次変更していき、第(N+n)の干渉強度画像取得時の光照射方向を第nの干渉強度画像取得時の光照射方向と一致させている。nは正の整数であり、Nは2以上の整数である。
【0082】
図31に示される例では、第1~第Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第1~第Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(
図31(a))。次に、第(N+1)~第2Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第(N+1)~第2Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(
図31(b))。次に、第(2N+1)~第3Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第(2N+1)~第3Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる。以降も同様である。
【0083】
図32に示される例では、第1~第Nの干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、これら第1~第Nの干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(
図32(a))。次に、第(N+1)の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、この第(N+1)の干渉強度画像を含む直近のN枚の干渉強度画像(第2~第(N+1)の干渉強度画像)に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(
図32(b))。次に、第(N+2)の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、この第(N+2)の干渉強度画像を含む直近のN枚の干渉強度画像(第3~第(N+2)の干渉強度画像)に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる(
図32(c))。以降も同様にして、第(N+n)の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得されると、この第(N+n)の干渉強度画像を含む直近のN枚の干渉強度画像(第(1+n)~第(N+n)の干渉強度画像)に基づいてステップS2~S6の各処理が行われる。
【0084】
図31に示された例と比較すると、
図32に示された例では、1つの光照射方向の干渉強度画像が干渉強度画像取得ステップS1において取得される度に、その干渉強度画像を含む直近の複数の干渉強度画像に基づいてステップS2~S6の各処理が行われるので、ステップS2~S6の各処理により単位時間当たりに得られる各画像の数が多い。
【0085】
上記実施形態の観察装置は、(1) 複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得部と、(2) 複数の光照射方向それぞれについて、基準位置の干渉強度画像に基づいて基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成部と、(3) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成部と、を備える。
【0086】
一側面において、2次元位相画像生成部は、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、(b) 複素振幅総和画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0087】
他の一側面において、2次元位相画像生成部は、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、(b) 複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成する。また、2次元位相画像生成部は、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、(b) 複数のシアー方向および複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成するのが好適である。
【0088】
更に他の一側面において、2次元位相画像生成部は、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分し、複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、(b) 複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、(c) 複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成する。また、2次元位相画像生成部は、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分し、複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、(b) 複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、(c) 複数のシアー方向および複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成するのが好適である。
【0089】
また、一側面において、観察装置は、(4) 複数の光照射方向それぞれについて、第1複素振幅画像生成部により生成された基準位置の複素振幅画像に基づいて複数の位置それぞれの複素振幅画像を生成する第2複素振幅画像生成部と、(5) 2次元位相画像生成部により生成された複数の位置それぞれの2次元位相画像に基づいて3次元位相画像を生成する3次元位相画像生成部と、(6) 3次元位相画像に基づいて観察対象物の3次元屈折率分布を求める屈折率分布算出部と、を更に備えるのが好適である。
【0090】
上記実施形態の観察方法は、(1) 複数の光照射方向それぞれに沿って観察対象物に照射されて観察対象物を経た光と参照光との干渉による基準位置の干渉強度画像を、複数の光照射方向それぞれについて取得する干渉強度画像取得ステップと、(2) 複数の光照射方向それぞれについて、基準位置の干渉強度画像に基づいて基準位置の複素振幅画像を生成する第1複素振幅画像生成ステップと、(3) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて2次元位相画像を生成する2次元位相画像生成ステップと、を備える。
【0091】
一側面において、2次元位相画像生成ステップでは、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、(b) 複素振幅総和画像に基づいて2次元位相画像を生成する。
【0092】
他の一側面において、2次元位相画像生成ステップでは、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、(b) 複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成する。また、2次元位相画像生成ステップでは、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像を生成し、(b) 複数のシアー方向および複数の光照射方向それぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成するのが好適である。
【0093】
更に他の一側面において、2次元位相画像生成ステップでは、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分し、複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、(b) 複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、(c) 複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成する。また、2次元位相画像生成ステップでは、(a) 複数の光照射方向それぞれの複素振幅画像を複数のバッチに区分し、複数のバッチそれぞれについて、該バッチに含まれる複素振幅画像の位相を光照射方向に基づいて補正した後、これら補正後の複素振幅画像の総和を表す複素振幅総和画像を生成し、(b) 複数のバッチそれぞれの複素振幅総和画像に基づいて該画像上の互いに異なる複数のシアー方向それぞれについて複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像を生成し、(c) 複数のシアー方向および複数のバッチそれぞれの複素微分干渉画像に基づいて2次元位相画像を生成するのが好適である。
【0094】
また、一側面において、観察方法は、(4) 複数の光照射方向それぞれについて、第1複素振幅画像生成ステップにおいて生成された基準位置の複素振幅画像に基づいて複数の位置それぞれの複素振幅画像を生成する第2複素振幅画像生成ステップと、(5) 2次元位相画像生成ステップにおいて生成された複数の位置それぞれの2次元位相画像に基づいて3次元位相画像を生成する3次元位相画像生成ステップと、(6) 3次元位相画像に基づいて観察対象物の3次元屈折率分布を求める屈折率分布算出ステップ、を更に備えるのが好適である。
【0095】
上記実施形態のプログラムは、上記の観察方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのものである。上記実施形態の記録媒体は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、観察対象物が多重散乱体である場合であっても、多重散乱光の影響が低減された3次元屈折率トモグラフィを実現することができる装置および方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1A,1B…観察装置、2…記録媒体、11…光源、12…レンズ、13…光入射端、14…光ファイバ、15…ファイバカプラ、16,17…光ファイバ、18,19…光出射端、21…レンズ、22…ミラー、23…レンズ、24…コンデンサレンズ、25…対物レンズ、31…レンズ、32…ミラー、33…駆動部、34…レンズ、41…ビームスプリッタ、42…レンズ、43…撮像部、50…解析部、51…干渉強度画像取得部、52…第1複素振幅画像生成部、53…第2複素振幅画像生成部、54…2次元位相画像生成部、55…3次元位相画像生成部、56…屈折率分布算出部、57…表示部、58…記憶部。