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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】香味吸引器
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/40 20200101AFI20241114BHJP
【FI】
A24F40/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022570880
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048444
(87)【国際公開番号】W WO2022137426
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】桝田 雄気
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0042227(US,A1)
【文献】国際公開第1998/056052(WO,A1)
【文献】特開2004-006213(JP,A)
【文献】特開2003-123720(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111109660(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0015522(US,A1)
【文献】特開2001-229903(JP,A)
【文献】特表2019-506894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気孔が設けられた筐体と、
前記筐体に収容される電源と、
を備え、
前記筐体及び前記電源の少なくとも一方には、前記電源の内部で発生したガスの噴出方向を規定する規定部が形成され、
前記筐体は、前記通気孔が設けられた第1面と、前記第1面に対向する面と、前記第1面と前記第1面に対向する面とを接続する第2面と、を有し、
前記規定部は、前記ガスが前記電源から前記第2面へ向けて噴出されるように前記ガスの前記噴出方向を規定し、
前記通気孔は、前記筐体において、前記ガスの前記噴出方向と交差する箇所には設けられていない、
香味吸引器。
【請求項2】
請求項に記載の香味吸引器であって、
前記第1面において、前記通気孔は、前記ガスの前記噴出方向と前記第2面との交点の近傍に設けられる、
香味吸引器。
【請求項3】
請求項またはに記載の香味吸引器であって、
前記第2面は、消費材が挿入される開口が設けられた第1部分と、前記第1部分と対向する第2部分と、を有し、
前記ガスの前記噴出方向は、前記第2面の前記第2部分へ向かって延出する方向である、
香味吸引器。
【請求項4】
請求項に記載の香味吸引器であって、
前記規定部は、前記電源に設けられたガス噴出部を含み、
前記ガス噴出部と前記第1部分との距離は、前記ガス噴出部と前記第2部分との距離よりも大きい、
香味吸引器。
【請求項5】
請求項に記載の香味吸引器であって、
前記ガス噴出部は、前記電源の一端に設けられた薄肉部または開孔部である、
香味吸引器。
【請求項6】
請求項のいずれか一項に記載の香味吸引器であって、
前記第1面を覆う外部カバーをさらに備える、
香味吸引器。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の香味吸引器であって、
前記通気孔は、互いに隣接する複数の孔を含む、
香味吸引器。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の香味吸引器であって、
前記通気孔を覆う蓋部をさらに含み、
前記蓋部は、前記ガスが前記通気孔から排出されるとき、外れて前記通気孔を開放するように構成されている、
香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子たばこの分野において、例えば装置の筐体に配置された電池に何等かの不具合が生じて、筐体内部のガスの圧力が上昇する場合が考えられる。この場合の備えとして、例えば引用文献1は、エアロゾル吸引装置の筐体において、エアロゾル発生基体を挿入する受け入れ孔が設けられる第1端部とは反対側の第2端部に筐体孔を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際出願PCT/JP2020/18153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電源で発生し筐体内部に噴出されるガスの勢いを弱め得る香味吸引器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、通気孔が設けられた筐体と、前記筐体に収容される電源と、を備え、前記筐体及び前記電源の少なくとも一方には、前記電源の内部で発生したガスの噴出方向を規定する規定部が形成され、前記通気孔は、前記筐体において、前記ガスの前記噴出方向と交差する箇所には設けられていない、香味吸引器である。
【0006】
例えば、電源に何らかの不具合が生じて、電源内部にガスの流れが発生し、外部へ噴出されたとする。上記第1の態様では、前記通気孔は、前記筐体においてガスの噴出方向と交差する箇所には設けられていない。すなわち、発生したガスの噴出先に通気孔が設けられていないので、ガスは通気孔から排出される前に筐体のいずれかの箇所に衝突してから筐体外に排出される。その結果、ガスの勢いが当該衝突によって弱められる。よって上記第1の態様によれば、ガスを通気孔から直接噴出させる構成に比べ、筐体内部のガスの圧力(勢い)を低下させた上で排出することができる。また別の観点から見れば、筐体から通気孔を通じてガスが排出されるとき、運動量保存則により、排出されたガスの流れの力積に対応し、ガスの流れと反対方向に向かう運動量が筐体に生じる。この運動量は、筐体を望ましくない方向に移動させ得るので、小さいことが好ましい。上記第1の態様によれば、通気孔から排出されるガスの勢いが低下しているので、筐体に生じる運動量の大きさも減少し、結果として筐体の望ましくない変位を抑制することができる。さらに上述の運動量保存に関して、発生したガスの噴出先に通気孔が設けられていないので、ガスの噴出方向と正反対の方向に向かう運動量が筐体に生じることはない。よって上記第1の態様によれば、ガスの排出に際して筐体がガスの噴出方向と反対の方向に変位することを抑制できる。
【0007】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、前記筐体は、前記通気孔が設けられた第1面と、前記第1面に接続する第2面と、を有し、前記規定部は、前記ガスが前記電源から前記第2面へ向けて噴出されるように前記ガスの前記噴出方向を規定する、香味吸引器である。
【0008】
上記第2の態様では、筐体に収容される電源の内部で発生したガスは、筐体の第2面へ衝突した後に、第2面と連続する第1面に設けられた通気孔から排出される。よって上記第2の態様によれば、通気孔が設けられた第1面と第1面とは異なる第2面を有する筐体において、ガスを第2面に衝突させることにより、ガスを通気孔から直接噴出させる構成に比べ、ガスの勢いを弱めることができる。
【0009】
本開示の第3の態様は、上記第2の態様において、前記第1面において、前記通気孔は、前記ガスの前記噴出方向と前記第2面との交点の近傍に設けられる、香味吸引器である。
【0010】
上記第3の態様では、筐体に収容される電源の内部で発生したガスは、筐体の第2面へ衝突した後に、ガスが衝突した第2面の箇所の近傍に位置する第1面の通気孔から排出される。よって上記第3の態様によれば、第2面に衝突したガスを衝突箇所の近傍に位置する通気孔から排出することにより、ガスの減衰及び排出を効果的に実行することができる。
【0011】
本開示の第4の態様は、上記第2及び第3の態様において、前記第2面は、消費材が挿入される開口が設けられた第1部分と、前記第1部分と対向する第2部分と、を有し、前記ガスの前記噴出方向は、前記第2面の前記第2部分へ向かって延出する方向である、香味吸引器である。
【0012】
上記第4の態様では、筐体に収容される電源の内部で発生したガスは、消費材が挿入される開口が設けられる筐体の第2面の第1部分に対して反対の位置に配置される第2面の第2部分に衝突し、その後に第1面の通気孔から排出される。よって上記第4の態様によれば、ユーザの顔が近付けられる開口とは反対の方向に向けてガスを噴出させることができる。
【0013】
本開示の第5の態様は、上記第4の態様において、前記規定部は、前記電源に設けられたガス噴出部を含み、前記ガス噴出部と前記第1部分との距離は、前記ガス噴出部と前記第2部分との距離よりも大きい、香味吸引器である。
【0014】
上記第5の態様では、消費材が挿入される開口が設けられる筐体の第2面の第1部分よりも、第1部分に対して反対の位置に配置される第2面の第2部分に近い位置の電源の、例えば、一端にガス噴出部が設けられる。その結果、ガス噴出部によりガスの噴出方向が規定され、ガスは側壁の第2部分に向かって噴出する。よって上記第5の態様によれば、ユーザの顔が近付けられる開口とは反対の方向に向けてガスを噴出させることができる。
【0015】
本開示の第6の態様は、上記第5の態様において、前記ガス噴出部は、前記電源の一端に設けられた薄肉部または開孔部である、香味吸引器である。
【0016】
上記第6の態様では、消費材が挿入される開口が設けられる筐体の側壁の第1部分よりも、第1部分に対して反対の位置に配置される第2面の第2部分に近い位置における電源の一端に薄肉部または開孔部が設けられている。当該薄肉部が破損等することにより、あるいはあらかじめ設けられた開孔部から、ガスが噴出し得る。すなわち、当該薄肉部または開孔部が、ガスの噴出方向を規定するガス噴出部として機能する。よって上記第6の態様によれば、ユーザの顔が近付けられる開口とは反対の方向に向けてガスを噴出させることができる。
【0017】
本開示の第7の態様は、上記第2~第6の態様において、前記第1面を覆う外部カバーをさらに備える、香味吸引器である。
【0018】
上記第7の態様では、筐体に収容される電源の内部で発生したガスを排出する排出孔が設けられる第1面が、さらなる外部カバーによって覆われる。よって上記第7の態様によれば、第1面と外部カバーとの間に形成される空間が排出されたガスを受け止めるバッファとして機能し、ガスを冷却させることができる。尚、外部カバーは着脱可能であっても良い。また上記第7の態様によれば、外部カバーが第1面を覆っていることにより、第1面に設けられた通気孔を介して埃や異物が筐体内に侵入することを抑制できる。
【0019】
本開示の第8の態様は、上記第1~第7の態様において、前記通気孔は、互いに隣接する複数の孔を含む、香味吸引器である。
【0020】
上記第8の態様では、筐体に収容される電源の内部で発生したガスを排出する排出孔が、互いに隣接する複数の孔を含むように構成される。よって上記第8の態様によれば、ガスを筐体内部から効果的に排出することができる。また、通気孔の径を小さくかつ複数配置させる場合には、埃等の侵入抑制に寄与する。
【0021】
本開示の第9の態様は、上記第1~第8の態様において、前記通気孔を覆う蓋部をさらに含み、前記蓋部は、前記ガスが前記通気孔から排出されるとき、外れて前記通気孔を開放するように構成されている、香味吸引器である。
【0022】
上記第9の態様では、ガスの噴出等により外れる以外、通常は通気孔が塞がれているため、埃等の侵入抑制により一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本開示に係る香味吸引器の概略正面図である。
図1B】本開示に係る香味吸引器の概略上面図である。
図1C】本開示に係る香味吸引器の概略底面図である。
図2】消費材の概略側断面図である。
図3A】アウタハウジングを取り外した香味吸引器の正面図である。
図3B図1Bに示した矢視3B-3Bにおける香味吸引器の断面図である。
図3C】電源の正面斜視図である。
図4A】チャンバの斜視図である。
図4B図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバの断面図である。
図5A図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバの断面図である。
図5B図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバの断面図である。
図6】チャンバ及び加熱ユニットの斜視図である
図7】チャンバ内の所望の位置に消費材が配置された状態の図5Bに示す断面図である。
図8図1Bに示した矢視8-8における香味吸引器の部分断面図である。
図9】ガスの流れを模式的に示すアウタハウジングを取り外した香味吸引器の側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0025】
図1Aは、本開示に係る香味吸引器100の概略正面図である。図1Bは、本開示に係る香味吸引器100の概略上面図である。図1Cは、本開示に係る香味吸引器100の概略底面図である。本明細書で説明する図面においては、説明の便宜のためにX-Y-Z直交座標系を付することがある。この座標系において、Z軸は鉛直上方を向いており、X-Y平面は香味吸引器100を水平方向に切断するように配置されており、Y軸は香味吸引器100の正面から裏面へ延出するように配置されている。Z軸は、後述する霧化部30のチャンバ50に収容される消費材の挿入方向ということもできる。また、Y軸は、消費材の挿入方向と直交し且つ後述する第1壁10aと第2壁10bとが対向する方向ということもできる。 また、X軸方向は、消費財の挿入方向に直交する面の中のデバイス長手方向ということもできる。Y軸方向は、消費財の挿入方向に直交する面の中のデバイス短手方向ということもできる。
【0026】
本開示に係る香味吸引器100は、例えば、エアロゾル源を含んだ香味源を有するスティック型の消費材を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0027】
図1Aから図1Cに示されるように、香味吸引器100は、アウタハウジング101と、スライドカバー102と、スイッチ部103と、を有する。アウタハウジング101は、香味吸引器100の最外のハウジングを構成し、ユーザの手に収まるようなサイズを有する。ユーザが香味吸引器100を使用する際は、香味吸引器100を手で保持して、エアロゾルを吸引することができる。アウタハウジング101は、複数の部材を組み立てることによって構成されてもよい。アウタハウジング101は、例えばポリカーボネート、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等の樹脂、またはアルミニウム等の金属で形成することができる。アウタハウジング101は、本開示の外部カバーの一例である。
【0028】
アウタハウジング101は、消費材を受け入れるための図示しない開口を有し、スライドカバー102は、この開口を閉じるようにアウタハウジング101にスライド可能に取り付けられる。具体的には、スライドカバー102は、アウタハウジング101の上記開口を閉鎖する閉位置(図1A及び図1Bに示す位置)と、上記開口を開放する開位置との間を、アウタハウジング101の外表面に沿って移動可能に構成される。例えば、ユーザがスライドカバー102を手動で操作することにより、スライドカバー102を閉位置と開位置とに移動させることができる。これにより、スライドカバー102、香味吸引器100の内部への消費材のアクセスを許可または規制することができる。
【0029】
スイッチ部103は、香味吸引器100の作動のオンとオフとを切り替えるために使用される。例えば、後述するように、ユーザは、消費材を香味吸引器100に挿入した状態でスイッチ部103を操作することで、加熱ユニット40に電源21から電力を供給し、消費材を燃焼させずに加熱することができる。なお、スイッチ部103は、アウタハウジング101の外部に設けられるスイッチであってもよいし、アウタハウジング101の内部に位置するスイッチであってもよい。スイッチがアウタハウジング101の内部に位置する場合、アウタハウジング101の表面のスイッチ部103を押下することで、間接的にスイッチが押下される。本開示では、スイッチ部103のスイッチがアウタハウジング101の内部に位置する例を説明する。
【0030】
香味吸引器100はさらに、図示しない端子を有してもよい。端子は、香味吸引器100を例えば外部電源と接続するインターフェースであり得る。香味吸引器100が備える電源が充電式バッテリである場合は、端子に外部電源を接続することで、外部電源が電源に電流を流し、電源を充電することができる。また、香味吸引器100は、端子にデータ送信ケーブルを接続することにより、香味吸引器100の作動に関連するデータを外部装置に送信できるように構成され得る。
【0031】
次に、本開示に係る香味吸引器100で使用される消費材について説明する。図2は、消費材110の概略側断面図である。本開示において、香味吸引器100と消費材110とにより喫煙システムが構成され得る。図2に示す例においては、消費材110は、喫煙可能物111と、筒状部材114と、中空フィルタ部116と、フィルタ部115と、を有する。喫煙可能物111は、第1の巻紙112によって巻装される。筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115は、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって巻装される。第2の巻紙113は、喫煙可能物111を巻装する第1の巻紙112の一部も巻装する。これにより、筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結される。ただし、第2の巻紙113が省略され、第1の巻紙112を用いて筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結されてもよい。第2の巻紙113のフィルタ部115側の端部近傍の外面には、ユーザの唇が第2の巻紙113からくっつきにくくするためのリップリリース剤117が塗布される。消費材110のリップリリース剤117が塗布される部分は、消費材110の吸口として機能する。
【0032】
喫煙可能物111は、例えばたばこ等の香味源と、エアロゾル源とを含み得る。また、喫煙可能物111を巻く第1の巻紙112は、通気性を有するシート部材であり得る。筒状部材114は、紙管又は中空フィルタであり得る。図2に示す例では、消費材110は、喫煙可能物111、筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115を備えているが、消費材110の構成はこれに限られない。例えば、中空フィルタ部116が省略され、筒状部材114とフィルタ部115とが互いに隣接配置されてもよい。
【0033】
次に、香味吸引器100の内部構造について説明する。図3Aは、アウタハウジング101を取り外した香味吸引器100の正面図である。図3Bは、図1Bに示した矢視3B-3Bにおける香味吸引器100の断面図である。図3Cは、インナハウジング10内に収納される電源21の正面斜視図である。
【0034】
図3Aに示すように、アウタハウジング101が取り外されると、インナハウジング10が露出される。図3Bに示すように、インナハウジング10は、霧化部30と、電源部20と、を収容し、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂、PEEKまたは複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等の樹脂、あるいはアルミニウム等の金属で形成され得る。耐熱性や強度の観点からは、インナハウジング10はPEEKで形成されることが好ましい。ただし、インナハウジング10の材質はこれに限定されない。インナハウジング10は、Y軸方向において対向する第1壁10aと第2壁10b(図8参照)と、第1壁10a及び第2壁10bとを接続する側壁10cとを有する。図3Aには、第1壁10a及び側壁10cが示される。インナハウジング10は、本開示の筐体の一例である。インナハウジング10の第1壁10aは、本開示の第1面の一例である。インナハウジング10の側壁10cは、本開示の第2面の一例である。
【0035】
特に図3Aに示すように、インナハウジング10の第1壁10aには、Z軸負方向側端部の近傍に互いに隣接する複数の孔から成るベント孔12が形成されている。一例として、ベント孔12を第1壁10aのX軸正方向側端部の近傍(すなわち、図3Bに示す電源21に対応する位置)に配置することができる。ベント孔12は、インナハウジング10の内部と外部との間で気体を通過させる開口部として機能する。インナハウジング10のベント孔12は、本開示の通気孔の一例である。
【0036】
なお、一例として、インナハウジング10を、第2壁10bと側壁10cとが一体成型された部材であり、この部材の開口部を第1壁10aが閉じるように構成することができる。このようにインナハウジング10を構成することで、全体としての強度が増し、後述するガスの勢いを弱める作用に寄与する。
【0037】
電源部20は、電源21を有する。電源21は、例えば、充電式バッテリ又は非充電式のバッテリであり得る。電源21は、霧化部30と電気的に接続される。これにより、電源21は、消費材110を適切に加熱するように、霧化部30に電力を供給することができる。電源21の具体的な種類は特に限定されるものではなく、公知の香味吸引器に用いられている公知の電源を用いることができる。電源21の一例として、リチウムイオン電池を用いることができる。
【0038】
霧化部30は、図3Bに示すように、消費材110の挿入方向(Z軸方向)に延びるチャンバ50と、チャンバ50の一部を囲う加熱ユニット40と、断熱部32と、略筒状の挿入ガイド部材34と、を有する。チャンバ50は、消費材110を収容するように構成される。加熱ユニット40は、チャンバ50の外周面に接触し、チャンバ50に収容された消費材110を加熱するように構成される。チャンバ50についての詳細は後述する。
【0039】
断熱部32は、全体として略筒状であり、チャンバ50を囲うように配置される。断熱部32は、例えばエアロゲルシートを含み得る。挿入ガイド部材34は、例えばポリカーボネート、PEEK、又はABS等の樹脂材料により形成され、閉位置にあるスライドカバー102とチャンバ50との間に設けられる。挿入ガイド部材34は、スライドカバー102が開位置にあるときに、香味吸引器100の外部と連通し、消費材110を挿入ガイド部材34に挿入することで、チャンバ50への消費材110の挿入を案内する。
【0040】
香味吸引器100は、さらに、チャンバ50及び断熱部32の両端を支持する、第1保持部37と、第2保持部38とを有する。第1保持部37は、チャンバ50及び断熱部32のスライドカバー102側(Z軸正方向側)の端部を支持するように配置される。また第2保持部38は、チャンバ50及び断熱部32のZ軸負方向側の端部を直接的又は間接的に支持するように配置される。また、図3Bに示すように、チャンバ50の底部には、底部材36が設けられていてもよい。底部材36は、チャンバ50に挿入された消費材110を位置決めするストッパとして機能し得る。底部材36は、消費材110が当接する面に凹凸を有し、消費材110が当接する面に空気を供給可能な空間を画定し得る。底部材36は、消費材110が当接する面に凹凸を有し、例えば、PEEK等の樹脂材料、金属、ガラス、又はセラミック等で形成され得るがこれに限定されない。また、第1支持部37及び第2支持部38は、例えば、シリコーンゴムなどのエラストマーで形成することができる。また、底部材36をチャンバ50の底部に接合する場合、エポキシ樹脂等の樹脂材料や無機材料で構成され得る接着剤を用いることができる。
【0041】
特に図3Cに示すように、電源21には、Z軸負方向側の端部に薄肉部24が形成されている。薄肉部24は、開孔部として構成することも可能である。なお、電源21はその全体がインナハウジング10の内部に収容されるので、電源21の端部に薄肉部24を設けることで、電源21内部からのガスの噴出方向を規定することができる。電源21の薄肉部24は、本開示の規定部及びガス噴出部の一例でありこれに限定されない。なお、本開示の薄肉部とは、電源21において他の箇所に比べて薄くかつ外力に対して弱く形成されている部分であり、電源21内部でガスの気圧が高まった場合に、薄肉部が破れてガスを噴出するように構成された箇所である。
【0042】
図3Bに示すように、インナハウジング10の側壁10cのZ軸正方向側の面(後述する図9に示される第1部分10c1)には、アウタハウジング101の図示しない開口と、チャンバ50の開口52とに連通する、消費材110が挿入される開口10fが設けられる。
【0043】
また図3Bに示すように、インナハウジング10の内部には、電源21と側壁10cに挟まれる領域に、ガスの流れる方向を規制する、後述するガイド部26を設けてもよい。
【0044】
次に、チャンバ50の構造について説明する。図4Aは、チャンバ50の斜視図である。図4Bは、図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバ50の断面図である。図5Aは、図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバ50の断面図である。図5Bは、図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバ50の断面図である。図6は、チャンバ50及び加熱ユニット40の斜視図である。図4A及び図4Bに示すように、チャンバ50は、消費材110が挿入される開口52と、消費材110を収容する筒状の側壁部60と、を含む筒状部材であり得る。チャンバ50は、耐熱性を有し、且つ熱膨張率が小さい材料で形成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等の金属、PEEK等の樹脂、ガラス、又はセラミック等で形成され得る。これにより、チャンバ50から消費材110へ効果的な加熱が可能になる。
【0045】
図4B及び図5Bに示すように、側壁部60は、平坦部62と、湾曲部66と、を含む。消費材110がチャンバ50内の所望の位置に配置されたとき、平坦部62は、消費材110の一部と接触又は押圧し、湾曲部66は、消費材110から離間する。なお、本明細書において、「チャンバ50内の所望の位置」とは、消費材110が適切に加熱される位置、又はユーザが喫煙するときの消費材110の位置をいう。平坦部62は、平坦な内面62aと、平坦な外面62bとを有する。湾曲部66は、内面66aと、外面66bとを有する。図6に示すように、加熱ユニット40は、平坦部62の外面62bに配置される。加熱ユニット40は、平坦部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。なお、加熱ユニット40は接着層を含んでもよい。その場合、接着層を含む加熱ユニット40が、平坦部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。
【0046】
平坦部62の外面62bが平坦であることにより、図6に示すように平坦部62の外面62bに配置される加熱ユニット40に帯状の電極48が接続されている場合に、帯状の電極48が撓むことを抑制することができる。また、図4B及び図5Bに示すように、平坦部62の厚みは均一である。
【0047】
図4A図4B、及び図5Bに示すように、チャンバ50は、平坦部62をチャンバ50の周方向に2つ有し、一対の平坦部62は、互いに平行である。一対の平坦部62の内面62a間の少なくとも一部の距離は、チャンバ50に挿入される消費材110の平坦部62間に配置される箇所の幅よりも小さいことが好ましい。
【0048】
図5Bに示すように、湾曲部66の内面66aは、チャンバ50の長手方向(Z軸方向)に直交する面において、全体的に円弧状の断面を有し得る。また、湾曲部66は、平坦部62と周方向において隣接するように配置される。言い換えれば、湾曲部66は、一対の平坦部62のそれぞれの端部同士を接続するように構成される。
【0049】
図4Bに示すように、チャンバ50は図3に示した底部材36が貫通してチャンバ50内部に配置されるように、その底部56に穴56aを有し得る。底部材36は、チャンバ50の底部56の内部に接着剤等により固定され得る。底部56に設けられる底部材36は、消費材110の端面の少なくとも一部を露出するように、チャンバ50に挿入された消費材110の一部を支持し得る。
【0050】
図4A及び図4Bに示すように、チャンバ50は、開口52と側壁部60との間に筒状部54を有することが好ましい。消費材110がチャンバ50の所望の位置に位置決めされた状態において、筒状部54と消費材110との間に隙間が形成され得る。また、図4A及び図4Bに示すように、チャンバ50は、筒状部54の内面と平坦部62の内面62aとを接続するテーパ面58aを備えたガイド部58を有することが好ましい。
【0051】
図6に示すように、加熱ユニット40は、加熱要素42を有する。加熱要素42は、例えばヒーティングトラックであってもよい。加熱要素42は、チャンバ50の外面に設けられてもよいし、内面に設けられてもよい。加熱要素42は、チャンバ50の湾曲部66に接触せず、平坦部62を加熱するように配置されることが好ましい。言い換えれば、加熱要素42は、平坦部62の外面にのみ配置されることが好ましい。加熱要素42は、チャンバ50の湾曲部66を加熱する部分と、平坦部62を加熱する部分とを有し、それぞれの加熱能力に差を有していてもよい。具体的には、加熱要素42は、湾曲部66よりも平坦部62を高い温度に加熱するように構成されていてもよい。例えば、平坦部62と湾曲部66とにおける加熱要素42のヒーティングトラックの配置密度が調整され得る。また、加熱要素42は、チャンバ50の全周において略同一の加熱能力を有して、チャンバ50の外周に巻回されてもよい。図6に示すように、加熱ユニット40は、加熱要素42に加えて、加熱要素42の少なくとも一面を覆う電気絶縁部材44を有することが好ましい。本開示においては、電気絶縁部材44は加熱要素42の両面を覆う様に配置される。
【0052】
図7は、チャンバ50内の所望の位置に消費材110が配置された状態の図5Bに示す断面図である。図7に示すように、消費材110がチャンバ50内の所望の位置に配置されると、消費材110はチャンバ50の平坦部62と接触して押圧され得る。他方、消費材110と湾曲部66との間には、空隙67が形成される。空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられた消費材110の端面と底部材36との間の空気流路と連通し得る。これにより、チャンバ50の開口52から流入した空気は、空隙67を通過して、消費材110の内部に流入することができる。言い換えれば、消費材110と湾曲部66との間に空気流路(空隙67)が形成される。
【0053】
次に、インナハウジング10内における霧化部30の配置位置及び配置態様について説明する。図8は、図1Bに示す矢視8-8における香味吸引器100の部分断面図である。
【0054】
上述したように、本開示の香味吸引器100においては、湾曲部66と消費材110との間に空気流路(空隙67)が形成されるので、空気流路を通過する空気が湾曲部66の熱を吸収し、湾曲部66を冷却することができる。
【0055】
上述したように、加熱ユニット40の加熱要素42は、チャンバ50の側壁部60の湾曲部66に接触せずに、平坦部62を加熱するように配置される。即ち、湾曲部66が加熱ユニット40によって直接的に加熱されないので、湾曲部66の加熱ユニット40による加熱を抑制することができる。
【0056】
図8に示すように、アウタハウジング101は、インナハウジング10をその内部に収容する。アウタハウジング101のフロントカバーの内面(Y軸正方向側の面)は、インナハウジング10の第1壁10aの外面(Y軸負方向側の面)と対向する。インナハウジング10の第1壁10aがアウタハウジング101のフロントカバーにより覆われているので、インナハウジング10の第1壁10aに伝達された霧化部30からの熱が香味吸引器100の外部に伝達されることを抑制することができる。その結果、香味吸引器100をユーザが把持するにあたり、ユーザが違和感を覚えることを抑制することができる。
【0057】
次に、インナハウジング10内部でのガスの噴出について説明する。図9は、ガスの流れを模式的に示す、アウタハウジング101を取り外した香味吸引器100の側面斜視図である。図9の矢印Ga1及びGa2は、ガスの流れを表す。また図9には、インナハウジング10の側壁10cのZ軸正方向側の面である第1部分10c1と、Z軸負方向側の面である第2部分10c2と、が示されている。
【0058】
例えば、電源21に何らかの不具合が生じて、電源21内部にガスの流れが発生する場合が考えられる。図3Cに示されるように、電源21は薄肉部24を備えているので、発生したガスは薄肉部24から噴出する。この場合、図9に示すように、電源21の薄肉部24からZ軸負方向に向かうガスの流れGa1が生じる。ガスの流れGa1は、インナハウジング10の側壁10cのZ軸負方向側の面である第2部分10c2に衝突する。ガスの流れGa1をZ軸負方向へ延長した半直線(すなわち、電源21の薄肉部24を始点としてインナハウジング10の側壁10cの第2部分10c2を通過する半直線)のベクトルは、本開示のガスの噴出方向の一例である。本開示においてガスの噴出方向とは、ガスの噴出位置を始点とし、ガスの噴出方向に向き付けられた半直線を意味する。
【0059】
上述のように、ガスの流れGa1は、ガスの噴出方向に沿って移動してインナハウジング10の側壁10cの第2部分10c2に衝突する。衝突の結果、ガスの流速は減少し、流れの方向も変化する。衝突後のガスの流速は、様々な方向に向き付けられた成分を含んでいる。図9に示すように、衝突後に形成されるガスの流れのうちで、インナハウジング10の第1壁10aに設けられたベント孔12へ向かうガスの流れGa2は、ベント孔12を通過してインナハウジング10の外部へ放出される。
【0060】
図3Bに示したように、本開示の香味吸引器100においては、衝突後のガスの流速の方向を規制するために、インナハウジング10の側壁10cの第2部分10c2の近傍にガイド部26を設けてもよい。ガイド部26は、ガスの流れGa1が側壁10cの第2部分10c2に衝突した後に、ガスがベント孔12へ向かって流れるようにガスの流れを規制するように構成することができる。ガイド部26は、本開示の規定部の一例である。
【0061】
図3A及び図9に示すように、ベント孔12の開孔方向は、Y軸と略平行にY軸負方向側を向いている。また、本開示の香味吸引器100においては、インナハウジング10の第1壁10aは、Y軸に直交するようにZ軸と略平行に延出する略平面として構成されている。具体的には、香味吸引器100を隅に角部の無いスムースな形状に構成するために、側壁10cに近接する部分においては、第1壁10aを、0でない曲率を有する曲面状に構成することができる。図8及び図9は、第1壁10aのZ軸正方向側端部及び負方向側端部の近傍の構成の一例を示している。
【0062】
また、図9は、インナハウジング10の第1壁10aのX軸正方向側端部の近傍の構成の一例を示している。第1壁10aのX軸正方向側端部は、側壁10cのZ軸正方向側の面である第1部分10c1に接続する。側壁10cの第1部分10c1には、アウタハウジング101の図示しない開口と、チャンバ50の開口52とに連通する、消費材110が挿入される開口10fが設けられている。側壁10cの第1部分10c1は、側壁10cのZ軸負方向側の面である第2部分10c2と対向する。
【0063】
図3Aに示すように、本開示の香味吸引器100においては、一例として、ベント孔12は、インナハウジング10の第1壁10aのZ軸負方向側端部の近傍かつX軸正方向側端部の近傍、すなわち、インナハウジング10のうち電源21の下方側であって第2部分10c2近傍に設けられている。図3A図3B及び図3Cに示されるように、ベント孔12は、電源21の薄肉部24に対し、Y軸方向に沿って対応する箇所に設けられている。他の見方をすれば、ベント孔12は、電源21の薄肉部24から側壁10cの第2部分10c2へ向かうガスの流れGa1の第1壁10a上への射影と交差するように設けられている。
【0064】
ガスの流れGa1は、明らかにガスの流れGa2と平行ではなく、ガスの流れGa1の方向は、ガスの流れGa2の方向と互いに交差する。具体的には、図9に示されるようにガスの流れGa1は、ガスの流れGa2と略直交する。これは、本開示において、ガスの噴出方向は通気口の開孔方向と交差することの一例である。
【0065】
(作用)
本開示の香味吸引器100の作用について説明する。本開示の香味吸引器100において、例えば電源21に何らかの不具合が生じて、インナハウジング10内部のガスの圧力が上昇したとする。本開示では、インナハウジング10に収容される電源21の内部で発生し薄肉部24により規定されるガスの流れGa1が、インナハウジング10に設けられたベント孔12の開孔方向と交差する。よって、電源21において発生したガスはベント孔12から排出される前にインナハウジング10のいずれかの箇所に衝突し、ガスの勢いが弱められる。よって本開示では、ガスを通気孔から直接噴出させる構成に比べ、筐体内部のガスの圧力を低下させた上で排出することができる。また別の観点から見れば、インナハウジング10からベント孔12を通じてガスが排出されるとき、運動量保存則により、排出されたガスの流れの力積に対応し、ガスの流れと反対方向に向かう運動量がインナハウジング10に生じる。この運動量は、インナハウジング10を望ましくない方向に移動させ得るので、小さいことが好ましい。本開示の香味吸引器100では、ベント孔12から排出されるガスの勢いが低下しているので、インナハウジング10に生じる運動量の大きさも減少し、結果として筐体の望ましくない変位を抑制することができる。さらに上述の運動量保存に関して、発生したガスの噴出先にベント孔12が設けられていないので、ガスの噴出方向と正反対の方向に向かう運動量がインナハウジング10に生じることはない。よって本開示の香味吸引器100では、ガスの排出に際して、ガスの噴出方向と反対の方向にインナハウジング10が変位することを抑制できる。
【0066】
また、本開示の香味吸引器100では、インナハウジング10に収容される電源21の内部で発生したガスは、薄肉部24により規定されるガスの流れGa1としてインナハウジング10の側壁10cの第2部分10c2へ衝突した後に、側壁10cと連続する第1壁10aに設けられたベント孔12から排出される。ガスをインナハウジング10の側壁10cに衝突させることにより、ガスを通気孔から直接噴出させる構成に比べ、ガスの勢いを弱めることができる。
【0067】
さらに、本開示の香味吸引器100では、インナハウジング10に収容される電源21の内部で発生したガスは、薄肉部24により規定されるガスの流れGa1としてインナハウジング10の側壁10cの第2部分10c2へ衝突した後に、第1壁10aにおいてガスの流れGa1の第1壁10a上への射影の近傍に設けられたベント孔12から排出される。インナハウジング10の側壁10cの第2部分10c2に衝突したガスを衝突箇所である第2部分10c2の近傍に位置するベント孔12から排出することにより、ガスの減衰及び排出を効果的に実行することができる。
【0068】
一方、図3B及び図9に示されるように、本開示の香味吸引器100においてチャンバ50の開口52に連通するとともに、消費材110が挿入されるインナハウジング10の開口10fは、インナハウジング10の側壁10cの第1部分10c1に形成される。香味吸引器100の吸引時においてユーザの顔は開口10fの近くに位置するが、この場合に電源21の薄肉部24から噴出したガスの流れGa1は、第1部分10c1とは反対側に位置する側壁10cの第2部分10c2へ向かう。この構成により、香味吸引器100の吸引時において、電源21に何らかの不具合が生じてガスが噴出した場合に、第1部分10c1の開口10fに近付けられるユーザの顔から離れた方向にガスを噴出させることができる。
【0069】
また、電源21においてガスが噴出する薄肉部24とインナハウジング10の側壁10cの第1部分10c1との距離は、薄肉部24と側壁10cの第2部分10c2との距離よりも大きい。そして薄肉部24から噴出されたガスは、開口10fが設けられた第1部分10c1から離れるように、第1部分10c1と対向する第2部分10c2へ向かうガスの流れGa1を形成する。この構成により、香味吸引器100の吸引時において第1部分10c1の開口10fに近付けられるユーザの顔から離れた方向にガスを噴出させることができる。
【0070】
また図3Cに示すように、電源21においてガスが噴出する薄肉部24は、電源21のZ軸負方向端部に設けられる開孔部または薄肉部として構成される。薄肉部24が、開口10fが設けられた第1部分10c1から離れて、第1部分10c1と対向する第2部分10c2へ向かうように、ガスの流れGa1の方向を規定する。この構成により、香味吸引器100の吸引時において第1部分10c1の開口10fに近付けられるユーザの顔から離れた方向にガスを噴出させることができる。
【0071】
図8に示すように、インナハウジング10の外部へガスを放出するベント孔12が設けられるインナハウジング10の第1壁10aは、アウタハウジング101によって覆われる。インナハウジング10の第1壁10aとアウタハウジング101との間に形成される空間は、排出されたガスを受け止めるバッファとして機能し、ガスを冷却させることができる。また、アウタハウジング101がインナハウジング10の第1壁10aを覆っていることにより、第1壁10aに設けられたベント孔12を介して埃や異物が筐体内に侵入することを抑制できる。
【0072】
さらに図3Aに示すように、インナハウジング10の外部へガスを放出するベント孔12は、インナハウジング10の第1壁10aに互いに隣接するように設けられる複数の孔を含む。この構成により、ガスの流れGa2は、ベント孔12を介してインナハウジング10の第1壁10aの外部へ効果的に放出される。
【0073】
さらに図示は省略するが、インナハウジング10の付属部品として、インナハウジングの第1壁10aにY軸正方向側から付着し、ベント孔12を覆う蓋を設けることができる。この蓋は、通常はベント孔12を覆っており、ベント孔12を介してインナハウジング10の内部に埃等が侵入することを防ぐ。一方、ガスの流れGa2によって押圧されると、この蓋は外れて、ベント孔12に到達したガスの流路を開放する。
【0074】
以上において、インナハウジング10は、略直方体の形状を備えるものとして説明した。しかしながら、インナハウジングの形状は略直方体に限られるものではない。例えば、インナハウジングを略円筒形に構成することができる。上面、底面及び側面を備えた略円筒型のインナハウジング10において、ガスの流れGa1は底面に向かい、側壁のうち底面近傍にベント孔12が配置されるように構成する。この場合、略円筒型のインナハウジング10の側面は、本開示の第1面の一例である。略円筒型のインナハウジング10の上面及び底面は、本開示の第2面の一例である。また、インナハウジング10の上面は、本開示の第1部分の一例であり、インナハウジング10の底面は、本開示の第2部分の一例である。
【0075】
以上に本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本開示の作用を奏する以上、本開示の技術的思想の範囲内である。例えば、本開示の香味吸引器100は、チャンバ50の開口52から流入した空気が消費材110の端面に供給される、いわゆるカウンターフロー式の空気流路を有するが、これに限らず、チャンバ50の底部56からチャンバ50内に空気が供給する、いわゆるボトムフロー式の空気流路を有してもよい。また、加熱要素42は、抵抗加熱型に限らず、誘導加熱型であってもよい。その場合、加熱要素42は、誘導加熱によってチャンバ50を加熱することができる。また、消費材110がサセプタを有する場合には、加熱要素42が誘導加熱によって消費材110のサセプタを加熱することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…インナハウジング
10a…第1壁
10b…第2壁
10c…側壁
10c1…第1部分
10c2…第2部分
10f…開口
12…ベント孔
20…電源部
21…電源
24…薄肉部
26…ガイド部
30…霧化部
32…断熱部
34…挿入ガイド部材
36…底部材
37…第1保持部
38…第2保持部
40…加熱ユニット
42…加熱要素
44…電気絶縁部材
48…電極
50…チャンバ
52…開口
54…筒状部
56…底部
56a…穴
58…ガイド部
58a…テーパ面
60…側壁部
62…平坦部
62a…内面
62b…外面
66…湾曲部
66a…内面
66b…外面
67…空隙
100…香味吸引器
101…アウタハウジング
102…スライドカバー
103…スイッチ部
110…消費材
111…喫煙可能物
112…第1の巻紙
113…第2の巻紙
114…筒状部材
115…フィルタ部
116…中空フィルタ部
117…リップリリース剤
Ga1…ガスの流れ
Ga2…ガスの流れ
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9