(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ポリグリセリンと脂肪酸及びジカルボン酸をエステル化した化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 69/40 20060101AFI20241114BHJP
C07C 69/657 20060101ALI20241114BHJP
C07C 69/44 20060101ALI20241114BHJP
C07C 69/50 20060101ALI20241114BHJP
C07C 69/347 20060101ALI20241114BHJP
C07C 43/10 20060101ALI20241114BHJP
C07C 43/13 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241114BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07C69/40
C07C69/657
C07C69/44
C07C69/50
C07C69/347
C07C43/10
C07C43/13 D
A61K8/39
A61K8/86
A61Q1/00
C08G63/12
(21)【出願番号】P 2022581242
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2022000034
(87)【国際公開番号】W WO2022172645
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021020089
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】松本 善行
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智則
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519634(JP,A)
【文献】特開2006-273753(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013106(WO,A1)
【文献】特開2015-044780(JP,A)
【文献】特開2006-315975(JP,A)
【文献】国際公開第2004/082645(WO,A1)
【文献】特開2003-104843(JP,A)
【文献】樋口智則,ポリグリセリン脂肪酸エステルの可溶化・乳化特性,オレオサイエンス,2019年,Vol.19, No.10,pages 405 to 410,doi:10.5650/oleoscience.19.405
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリンと脂肪酸及びジカルボン酸のエステルであって、下記(A)~
(E)を満たす
化合物であって、全脂肪酸のうち、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸並びに炭素数10~14の飽和脂肪酸以外の脂肪酸の合計割合が0~10質量%である、化合物。
(A)全脂肪酸のうち、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸の合計割合が48質量%以上
(B)ポリグリセリンと脂肪酸の質量比(ポリグリセリン:脂肪酸)が1:0.15~1:0.35
(C)ジカルボン酸
が、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸からなる群より選択される1種以上であり、ポリグリセリンに対するモル比(ジカルボン酸/ポリグリセリン)が
0.2~0.7
(D)炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸の合計量と炭素数10~14の飽和脂肪酸の質量比(炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸:炭素数10~14の飽和脂肪酸)が1:0.03~1:1
(E)ポリグリセリンの平均重合度が3~20
【請求項2】
自然由来指数が0.5~1.0である、請求項
1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の化合物と、炭素数10~18の脂肪酸とポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、組成物。
【請求項4】
請求項1
又は2記載の化合物又は請求項
3記載の組成物を含有する、難水溶性物質用可溶化剤。
【請求項5】
請求項1
又は2記載の化合物又は請求項
3記載の組成物を含有する、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリセリンと脂肪酸及びジカルボン酸をエステル化した化合物、該化合物を含有する難水溶性物質用可溶化剤、並びにこれらを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品分野において、香料や精油等の難水溶性物質を水溶液中に可溶化するため、界面活性剤が利用されている。近年、難水溶性物質を可溶化するだけでなく、環境にやさしい自然由来の界面活性剤が求められている。具体的には、自然由来原料の利用、少ない界面活性剤量での可溶化、加熱エネルギーを必要としない可溶化(コールドプロセス)、高い生分解性などを満たす界面活性剤が環境にやさしい可溶化剤といえる。
【0003】
難水溶性物質の可溶化素材として、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。今までに石油由来のグリセリン誘導体の開環重合法で製造されたポリグリセリンや、低重合度部分を除去したポリグリセリン(特許文献1)を用いて脂肪酸とエステル化し、難溶性物質を可溶化する方法が報告されている。しかし、難溶性物質に対して必要な界面活性剤量が多く、さらなる界面活性剤の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、少ない量で香料や精油を可溶化できる新規の化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記[1]~[4]に関する。
[1]ポリグリセリンと脂肪酸及びジカルボン酸のエステルであって、下記(A)~(C)を満たす、化合物。
(A)全脂肪酸のうち、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸の合計割合が48質量%以上
(B)ポリグリセリンと脂肪酸の質量比(ポリグリセリン:脂肪酸)が1:0.15~1:0.35
(C)ジカルボン酸の炭素数が4~12であり、ポリグリセリンに対するモル比(ジカルボン酸/ポリグリセリン)が0.1~0.8
[2][1]記載の化合物と、炭素数10~18の脂肪酸とポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、組成物。
[3][1]記載の化合物又は[2]記載の組成物を含有する、難水溶性物質用可溶化剤。
[4][1]記載の化合物又は[2]記載の組成物を含有する、化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少ない量で香料や精油を可溶化できる新規の化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らが上記課題について鋭意検討したところ、ポリグリセリンと特定の脂肪酸及びジカルボン酸のエステルを用いることで、少ない量でも香料や精油を可溶化できることを新たに見出した。また、当該化合物は、自然由来の原料を多く使用した場合でも、高い可溶化力を有することを新たに見出した。かかるメカニズムは不明であるが、ポリグリセリンをジカルボン酸で架橋することでミセルの形成能が高まり、可溶化領域が増大するためと推定される。
【0009】
本発明の化合物は、ポリグリセリンと脂肪酸及びジカルボン酸のエステルであって、下記(A)~(C)を満たす。
(A)全脂肪酸のうち、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸の合計割合が48質量%以上
(B)ポリグリセリンと脂肪酸の質量比(ポリグリセリン:脂肪酸)が1:0.15~1:0.35
(C)ジカルボン酸の炭素数が4~12であり、ポリグリセリンに対するモル比(ジカルボン酸/ポリグリセリン)が0.1~0.8
【0010】
本発明の化合物に係るポリグリセリンは、自然由来原料を利用する観点から、グリセリンの脱水重合法で製造されたものなどが好ましい。本発明の化合物に係るポリグリセリンの平均重合度は、可溶化力の観点から、好ましくは3~20、より好ましくは4~10であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。本明細書におけるポリグリセリンの平均重合度とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度であり、(式1)及び(式2)から算出した平均重合度である。
(式1)平均重合度=(112.2×103-18×水酸基価)/(74×水酸基価-56.1×103)
(式2)水酸基価=(a-b)×28.05/試料の採取量(g)
a:空試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
上記(式1)中の水酸基価は社団法人日本油化学会編「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(I)1996年度版」に準じて(式2)で算出される。」
【0011】
本発明の化合物に係る脂肪酸は、自然由来原料を利用する観点から、天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、精製して得られたものなどが好ましい。本発明の化合物に係る脂肪酸として、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸(即ち、直鎖の不飽和脂肪酸、分岐鎖の飽和脂肪酸、分岐鎖の不飽和脂肪酸)が挙げられる。本発明の化合物に係る脂肪酸は、可溶化力の観点から、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸の合計割合が、全脂肪酸のうち、48質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは73質量%以上であり、また、可溶化力の観点から、100質量%以下、好ましくは89質量%以下、より好ましくは80質量%以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸としては、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸、エルカ酸などが挙げられ、1種又は2種以上を含有することができる。
【0012】
本発明の化合物に係る脂肪酸としては、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸の他、炭素数10~14の飽和脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸などが挙げられ、1種又は2種以上を含有することができる。
【0013】
本発明の化合物に係る脂肪酸において、炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸の合計量と炭素数10~14の飽和脂肪酸の質量比(炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸:炭素数10~14の飽和脂肪酸)は、可溶化力の観点から、好ましくは1:0~1:1、より好ましくは1:0.03~1:0.95、さらに好ましくは1:0.20~1:0.30である。
【0014】
炭素数18~22の不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸や、炭素数10~14の飽和脂肪酸以外の脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などが挙げられ、1種又は2種以上を含有することができる。これらの脂肪酸は、可溶化力の観点から、全脂肪酸のうち、好ましくは0~10質量以下である。
【0015】
本発明の化合物におけるポリグリセリンと脂肪酸の質量比(ポリグリセリン:脂肪酸)は、可溶化力の観点から、1:0.15~1:0.35であり、好ましくは1:0.15~1:0.30である。
【0016】
本発明の化合物に係るジカルボン酸は、自然由来原料を利用する観点から、植物原料から得られたものなどが好ましい。本発明の化合物に係る脂肪酸として、炭素数4~12で直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のジカルボン酸が挙げられる。具体的には、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、1種又は2種以上を含有することができる。
【0017】
本発明の化合物におけるポリグリセリンに対するモル比(ジカルボン酸/ポリグリセリン)は、可溶化力と、使用時の化合物のハンドリング性の観点から、0.1~0.8であり、好ましくは0.3~0.7、より好ましくは0.4~0.6である。
【0018】
本発明の化合物における自然由来指数は、自然由来原料を利用する観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上であり、最も好ましくは1.0である。本明細書における自然由来指数は、ISO 16128に基づき、下記式にて算出した。なお、0.5以下は0とする。
自然由来指数=植物由来炭素数/総炭素数
【0019】
本発明の化合物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの一般的な合成法により、上記のポリグリセリンと脂肪酸及びジカルボン酸とをエステル化反応させることで得ることができ、公知の方法に従ってさらに精製してもよい。例えば、原料となるポリグリセリンと脂肪酸及びジカルボン酸にアルカリ等の触媒を加え、常圧もしくは減圧下、200℃以上においてエステル化反応を行うことで製造することが可能である。
【0020】
本発明の化合物は、少ない量で香料や精油を可溶化することができるため、香料や精油の可溶化剤として好適に使用することができる。また、本発明の化合物は、香料や精油以外の種々の難水溶性物質についても可溶化することができ、難水溶性物質用可溶化剤として広く使用することができる。本発明の化合物や本発明の難水溶性物質用可溶化剤は、化粧料などに配合することができるが、自然由来指数の高い化合物等を用いるのが好ましい。化粧料としては、例えば、化粧水、美容液、香水、洗口液、ヘアミスト、クレンジング化粧水、クレンジングシート、デオドラントシート、クレンジングジェル、洗顔料、シャンプー、ボディソープ、芳香剤などが挙げられる。
【0021】
本明細書において、難水溶性物質とは、水にほとんど溶解しない、もしくは溶解してもわずかな量である物質を意味し、水への溶解度が好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下のものである。例えば、化粧品原料として用いられる難水溶性物質としては、香料、精油、エステル油、炭化水素油、動植物油、脂溶性ビタミン、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、これらの成分を含む組成物などが挙げられる。
【0022】
香料としては、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、メントール(L-メントール)等のアルコール系香料、シトラール等のアルデヒド系香料、β-イオノン等のケトン系香料、オイゲノール等のフェノール系香料などが挙げられる。
【0023】
精油としては、ラベンダー油、ユーカリ油、ローズ油、ジャスミン油、ペパーミント油、アニス油、ローズマリー油、ベルガモット油等の植物性の精油、ジャコウ、レイビョウコウ、カイリュウ、リュウゼンコウなどが挙げられる。
【0024】
エステル油としては、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソステアリル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルなどが挙げられる。
【0025】
炭化水素油としては、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、フィトスクワラン、イソドデカン、アルカンなどが挙げられる。
【0026】
動植物油としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ラノリンなどが挙げられる。
【0027】
脂溶性ビタミンとしては、トコフェロール(酢酸トコフェロール)、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トリコエノール、β-トリコエノール、γ-トリコエノール、δ-トリコエノール等のビタミンE、レチノール、β-カロテン等のビタミンA等の脂溶性ビタミンなどが挙げられる。
【0028】
紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸オクチル、オキシベンゾン-3、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどが挙げられる。
【0029】
防腐剤、抗菌剤としては、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルヘキシルグリセリン、カプリリルグリコールなどが挙げられる。
【0030】
本明細書において、可溶化とは、難水溶性物質が0.1質量%になるように常温(25℃)の水に添加し、10分間攪拌した後、分光光度計(島津製作所製:UV-2600)650nmの波長での透過率が98%以上となる場合を指す。
【0031】
また、本発明の化合物は、他の成分を含む組成物として用いることもできる。従って、本発明においては、本発明の化合物を含有する組成物についても提供するものである。
【0032】
本発明の組成物は、本発明の化合物の他、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン、などの多価アルコールなどを含有することができ、自然由来原料を利用する観点から、グリセリンを含有することが好ましい。本発明の組成物において、本発明の化合物100質量部に対するグリセリンの含有量としては、使用時のハンドリング性の観点から、好ましくは50~100質量部、より好ましくは70~100質量部である。
【0033】
また、可溶化力の観点から好ましい態様として、本発明の化合物と、炭素数10~18の脂肪酸とポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する態様が挙げられる。本態様における構成脂肪酸としては、炭素数10~18の飽和、不飽和もしくは分岐脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸などが挙げられ、1種又は2種以上を含有することができる。本態様の組成物において、本発明の化合物100質量部に対する当該ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、可溶化力の観点から、好ましくは10~400質量部、より好ましくは20~300質量部である。
【0034】
本発明の組成物についても、本発明の化合物と同様に、香料や精油の可溶化剤として好適に使用することができるだけでなく、難水溶性物質用可溶化剤として広く使用することができる。また、これらを化粧料に配合することができる。
【0035】
本発明の組成物が化粧料用組成物である場合において、上記各種成分の他、界面活性剤、油剤、水性ゲル化剤、油性ゲル化剤、粉体、抗酸化剤、着色剤、キレート剤、清涼剤、増粘剤、植物抽出液、ビタミン類、中和剤、保湿剤、抗炎症剤、pH調整剤、アミノ酸など、化粧料に用いることができる各種成分を更に含むことができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1~24及び比較例1~5
表1、2に示す組成にて、ポリグリセリン、脂肪酸、ジカルボン酸にアルカリ触媒を加え、常圧(760Torr)下、260℃においてエステル化反応を行った。冷却後、反応物が50質量%になるようグリセリンで希釈し、各実施例及び比較例の組成物を得た。なお、グリセリンでの希釈は、ハンドリング性をよくするためであり、化合物の性能に影響はない。グリセリン希釈前の化合物の自然由来指数は上記の方法により算出した。結果を表1、2に示す。
【0038】
なお、実施例1~15、17~24、比較例1~5の原料のポリグリセリンは、グリセリンの脱水重合法で製造しており、100%自然由来のものを使用した。実施例16の原料のポリグリセリンはグリセリン誘導体(石油由来)の開環重合法で製造したものを使用した。ポリグリセリンの平均重合度については、上記の方法により測定した。原料の脂肪酸は、いずれも天然の植物(ヤシ、パーム、菜種、ヒマワリ)より抽出した油脂を加水分解し、精製して得られたものであり、100%自然由来のものを使用した。原料のジカルボン酸の詳細は以下の通りである。石油由来であるコハク酸、マレイン酸、アジピン酸は、自然由来指数は0であり、セバシン酸、ドデカン二酸は100%自然由来である。
コハク酸:無水コハク酸(石油由来 新日本理化社製)
マレイン酸:無水マレイン酸(石油由来 富士フイルム和光純薬社製)
アジピン酸:(石油由来 富士フイルム和光純薬社製)
セバシン酸:(自然由来 伊藤精油社製)
ドデカン二酸:(自然由来 岡村精油社製)
【0039】
<可溶化力の測定1>
各実施例・比較例の組成物と、ラベンダー油を50℃で混合し、ラベンダー油(小川香料社製)が0.1質量%になるように常温(25℃)の水に添加し、10分間攪拌した後、分光光度計(島津製作所製:UV-2600)650nmの波長にて透過率を測定した。透過率が98%以上となる場合の量(水中の各実施例・比較例の組成物の量)を、可溶化に必要な量とした。結果を表1、2に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
表1、2に示すように、上記(A)~(C)を満たす各実施例の組成物は、上記(A)~(C)を満たさない比較例1~4に比べて、少ない量でラベンダー油を可溶化できたことが分かる。比較例5については、反応中にゲル化してしまい、可溶化力の評価ができなかった。また、通常は可溶化するため70℃程度まで加温にしてから混合、冷却する方法が一般的であるが、各実施例では加熱することなく常温においてもラベンダー油を可溶化することが可能であった。また、実施例15、16の比較から、自然由来指数に関わらず、高い可溶化力であったことが分かる。
【0043】
<可溶化力の測定2>
実施例1、15、比較例4の組成物、難水溶性物質として表3に示す成分を50℃で混合し、難水溶性物質が0.1質量%になるように常温(25℃)の水に添加し、10分間攪拌した後、分光光度計(島津製作所製:UV-2600)650nmの波長にて透過率を測定した。透過率が98%以上となる場合の量(水中の各実施例・比較例の組成物の量)を、可溶化に必要な量とした。結果を表3に示す。
【0044】
表3で使用した難水溶性物質の詳細を以下に示す。
ローズマリー油(小川香料社製)
カモミール(小川香料社製)
シトロン(香栄興業社製)
ハーブブレンド(小川香料社製)
ローズ油(小川香料社製)
L-メントール(小川香料社製)
モノカプリル酸グリセリル(サンソフトNo.700P-2、太陽化学社製)
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(ユビナールMC80、BASFジャパン社製)
トコフェロール(トコフェロール100、日清オイリオ社製)
【0045】
【0046】
表3に示すように、実施例1、15の組成物を用いて、比較例4の組成物より少ない量で種々の難水溶性物質を可溶化することができたことが分かる。
【0047】
参考例1
ポリグリセリン及びラウリン酸に水酸化ナトリウムを加え、常圧(760Torr)下、240℃においてエステル化反応を行った。冷却後、反応物が50質量%になるようグリセリンで希釈し、参考例1の組成物を得た。なお、原料のポリグリセリンは、グリセリンの脱水重合法で製造しており、100%自然由来のものを使用した。原料の脂肪酸は、いずれも天然の植物(パーム由来)より抽出した油脂を加水分解し、精製して得られたものであり、100%自然由来のものを使用した。
【0048】
参考例2
原料のポリグリセリンとして、グリセリン誘導体(石油由来)の開環重合法で製造したものを使用した以外は参考例1と同様にして調製した。
【0049】
参考例3
PEG-40水添ヒマシ油(エマノーンCH-40、花王社製)が50質量%になるようグリセリンで希釈し、参考例3の組成物を得た。
【0050】
<可溶化力の測定3>
実施例1、15の組成物と、従来から用いられている可溶化剤として参考例1~3とを比較した。可溶化力の測定方法及び自然由来指数の算出方法については実施例1と同様である。結果を表4に示す。
【0051】
【0052】
表4に示すように、実施例1、15の組成物は、従来品である参考例1~3に比べて少ない量でラベンダー油を可溶化できたことが分かる。
【0053】
<可溶化力の測定4>
実施例25~29、比較例6
表5、表6に示す組成物を調製し、実施例1と同様にして可溶化力を測定した。結果を表5、表6に示す。
【0054】
表5、表6で使用した成分の詳細を以下に示す。
カプリン酸ポリグリセリル-10:ポリグリセリン及び脂肪酸(ヤシ、パーム由来)に水酸化ナトリウムを加え、常圧(760Torr)下、240℃においてエステル化反応を行った。冷却後、反応物が50質量%になるようグリセリンで希釈して組成物を得た。なお、原料のポリグリセリンは、グリセリンの脱水重合法で製造しており、100%自然由来のものを使用した。原料の脂肪酸は、カプリン酸を使用した。
ミリスチン酸ポリグリセリル-10:原料の脂肪酸をミリスチン酸(ヤシ、パーム由来)とした以外はカプリン酸ポリグリセリル-10と同様にして調製した。
オレイン酸ポリグリセリル-10:原料の脂肪酸をオレイン酸(パーム由来)とした以外はカプリン酸ポリグリセリル-10と同様にして調製した。
【0055】
表6で使用した難水溶性物質の詳細を以下に示す。
フィトスクワラン(SOPHIM社製)
エチルヘキサン酸セチル(エキセパールHO 花王社製)
【0056】
【0057】
表5に示すように、実施例4、7の組成物と、炭素数10~14の飽和脂肪酸とポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することで、更に可溶化力を高めることができることが分かる。
【0058】
【0059】
表6に示すように、実施例15の組成物を用いることで、極性の低い炭化水素油、エステル油についても可溶化できることが分かる。また、実施例29に示すように、炭素数18の不飽和脂肪酸とポリグリセリンをエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することで、炭化水素油、エステル油の可溶化力を更に高めることができることが分かる。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
処方例1~8の化粧料は、いずれも透過率98%以上であり難水溶性物質が可溶化されているものであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の化合物により、少ない量で香料や精油を可溶化できることから、より環境に配慮した製品設計が期待できる。