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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】仮想空間演出装置
(51)【国際特許分類】
   A63G 31/04 20060101AFI20241114BHJP
   A63F 13/28 20140101ALI20241114BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A63G31/04
A63F13/28
G06F3/01 560
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023021090
(22)【出願日】2023-02-14
(65)【公開番号】P2024115410
(43)【公開日】2024-08-26
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小灘 一矢
(72)【発明者】
【氏名】柳 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亮輔
【審査官】三村 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218055(JP,A)
【文献】特開2016-168875(JP,A)
【文献】特開2006-047478(JP,A)
【文献】特開2021-113046(JP,A)
【文献】特開2017-102401(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190612(WO,A1)
【文献】特開2022-110926(JP,A)
【文献】韓国登録特許第2558067(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0022456(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 1/00-33/00
A63F 9/24、13/00-13/98
G06F 3/01、3/048-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の乗員にオーディオビジュアル(AV)情報を提供するAV機器と、前記移動体の振動に係る荷重を発生するアクチュエータと、前記AV機器及び前記アクチュエータの制御を行う制御部と、を備え、停止状態にある当該移動体を利用してバーチャルリアリティサービス(VRサービス)を提供するに際し、前記AV機器及び前記アクチュエータの駆動によって仮想空間での前記乗員の疑似体験を演出する仮想空間演出装置であって、
前記移動体は四輪の車両であり、
前記アクチュエータは四輪の各車輪毎に設けられたサスペンション装置の伸縮動作を補助する機能を有するものであり、
前記車両の傾斜状態に係る傾斜情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得した前記傾斜情報に基づいて、当該車両が所定の傾斜角閾値を超える傾斜状態にあるか否かを判定する判定部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記判定部により当該車両が所定の傾斜角閾値を超える傾斜状態にある旨の判定が下された場合、前記AV機器及び前記アクチュエータのうち少なくとも当該アクチュエータの前記VRサービスの提供に関する伸縮駆動量を、当該車両が傾斜状態ではない平常時と比べて低減させる
ことを特徴とする仮想空間演出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の仮想空間演出装置であって、
前記制御部は、当該車両が所定の傾斜角閾値を超える傾斜状態にある場合に、前記サスペンション装置のうち傾斜方向下位側のアクチュエータの伸縮駆動量を、該傾斜方向上位側のアクチュエータの伸縮駆動量と比べて低減させる
ことを特徴とする仮想空間演出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体の室内に仮想空間を構築することで乗員の疑似体験を演出する仮想空間演出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両をモーション・プラットフォームとして利用することにより、車室内に仮想空間を構築して乗員の疑似体験を演出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に係るバーチャルリアリティシステムは、バーチャル空間を表す映像情報に基づいてユーザに映像を提示する映像提示手段と、前記バーチャル空間を表す映像情報に応じた感覚又は運動を提示するように、前記車両を移動させた後に停止させ、前記車両を元の位置に戻す駆動パターンで前記車両の加減速を制御する制御手段と、を備えて構成される。
【0004】
特許文献1に係るバーチャルリアリティシステムによれば、車両をモーション・プラットフォームとして利用することにより、ユーザに対し映像情報に応じた感覚又は運動を提示することができる。
【文献】特開2017-102401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るバーチャルリアリティシステムでは、例えば、停車中の車両をモーション・プラットフォームとして利用することで車室内に構築された仮想空間において、ユーザに対し映像情報に応じた感覚又は運動を提示するバーチャルリアリティ(VRと省略する場合がある)サービスを提供すると、VRサービスの提供に起因して車両が大きく揺れ動く場合がある。かかる場合において、仮に当該車両のそばを人が通ると、VRサービスを提供中の当該車両が通行人に接触してしまう事態の発生が懸念される。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、VRサービスを提供中の車両等の移動体が傾斜路で停止状態にある場合であっても、移動体及び物体間の接触を未然に抑制可能な仮想空間演出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る仮想空間演出装置は、移動体の乗員にオーディオビジュアル(AV)情報を提供するAV機器と、前記移動体の振動に係る荷重を発生するアクチュエータと、前記AV機器及び前記アクチュエータの制御を行う制御部と、を備え、停止状態にある当該移動体を利用してバーチャルリアリティサービス(VRサービス)を提供するに際し、前記AV機器及び前記アクチュエータの駆動によって仮想空間での前記乗員の疑似体験を演出する仮想空間演出装置であって、前記移動体は四輪の車両であり、前記アクチュエータは四輪の各車輪毎に設けられたサスペンション装置の伸縮動作を補助する機能を有するものであり、前記車両の傾斜状態に係る傾斜情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により取得した前記傾斜情報に基づいて、当該車両が所定の傾斜角閾値を超える傾斜状態にあるか否かを判定する判定部と、をさらに備え、前記制御部は、前記判定部により当該車両が所定の傾斜角閾値を超える傾斜状態にある旨の判定が下された場合、前記AV機器及び前記アクチュエータのうち少なくとも当該アクチュエータの前記VRサービスの提供に関する伸縮駆動量を、当該車両が傾斜状態ではない平常時と比べて低減させることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、VRサービスを提供中の車両等の移動体が傾斜路で停止状態にある場合であっても、移動体及び物体間の接触を未然に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置の概略構成図である。
図2】仮想空間演出装置が適用される車両の概略構成図である。
図3A】車両が傾斜路に駐車しているケースでの仮想空間演出装置の実施例に係る動作説明に供する図である。
図3B】車両が傾斜路に駐車しているケースでの仮想空間演出装置の実施例に係る動作説明に供する図である。
図4A】VRモードの移行後に、車両の監視領域に通行人が存するケースでの仮想空間演出装置の実施例に係る動作説明に供する図である。
図4B】VRモードの移行後に、車両の監視領域に通行人が存するケースでの仮想空間演出装置の実施例に係る動作説明に供する図である。
図4C】VRモードの移行後に、車両の監視領域における通行人の存否判定結果が反転したケースでの仮想空間演出装置の実施例に係る動作説明に供する図である。
図5A】仮想空間演出装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図5B】仮想空間演出装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図6A】VRモードの移行後に、車両の監視領域に通行人が存するケースでの仮想空間演出装置の第1変形例に係る動作説明に供する図である。
図6B】VRモードの移行後に、車両の監視領域に通行人が存するケースでの仮想空間演出装置の第1変形例に係る動作説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図面において、共通の機能を有する部材には共通の参照符号を付するものとする。この場合、原則として、重複した説明を省くこととする。また、部材のサイズ及び形状は、説明の便宜のため、変形又は誇張して模式的に表す場合がある。
【0011】
〔本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11の要旨〕
はじめに、本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11の要旨について説明する。
本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11は、車両10等の移動体の乗員にオーディオビジュアル(AV)情報を提供するAV機器57(図1参照)と、前記移動体の振動に係る荷重を発生するアクチュエータ(図1に示す「SUSアクチュエータ59」参照)と、AV機器57及びSUSアクチュエータ59の制御を行う制御部(図1に示す「VR制御部67」参照)と、を備え、バーチャルリアリティ(VR)サービスを提供するに際し、AV機器57及びSUSアクチュエータ59の駆動によって仮想空間での乗員の疑似体験を演出する仮想空間演出装置であって、移動体(車両10)の傾斜状態に係る傾斜情報を取得する情報取得部情報取得部61(図1参照)と、情報取得部61により取得した前記傾斜情報に基づいて、移動体(車両10)が所定の第1傾斜角閾値TAth1を超える傾斜状態にあるか否かを判定する判定部63(図1参照)と、をさらに備え、VR制御部67は、判定部63により当該移動体が第1傾斜角閾値TAth1を超える傾斜状態にある旨の判定が下された場合、AV機器57及びSUSアクチュエータ59のうち少なくともSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、当該移動体が傾斜状態ではない平常時と比べて低減させる。
これにより、VRサービスを提供中の車両10等の移動体が傾斜路20で停止状態にある場合であっても、車両10(移動体)及び通行人(物体)60間の接触を未然に抑制することができる。
以下、本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11の詳細について、順次説明する。
【0012】
〔本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11の概略構成〕
次に、本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11の概略構成について、図1図2図3A図3B図4A図4B図4Cを適宜参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る仮想空間演出装置11の概略構成図である。図2は、仮想空間演出装置11が適用される車両10の概略構成図である。図3A図3Bは、車両10が傾斜路20に駐車しているケースでの仮想空間演出装置11の実施例に係る動作説明に供する図である。図4A図4Bは、車両10の監視領域62に通行人(物体)60が存するケースでの仮想空間演出装置11の実施例に係る動作説明に供する図である。図4Cは、車両10の監視領域62における通行人(物体)60の存否判定結果が反転したケースでの仮想空間演出装置11の実施例に係る動作説明に供する図である。
【0013】
仮想空間演出装置11は、図1及び図2に示すように、入力系要素13及び出力系要素15の間を、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信媒体17を介して相互にデータ通信可能に接続して構成されている。
【0014】
入力系要素13は、図1に示すように、周辺監視装置21、車速センサ23、パーキングブレーキ(PB)センサ25、シートベルト(SB)センサ27、傾斜角センサ29、サスペンション(SUS)センサ31、及び、HMI(Human-Machine Interface)33を含んで構成されている。
【0015】
一方、出力系要素15は、図1に示すように、VR-ECU51、BRK-ECU53、ENG-ECU55、AV機器57、サスペンション(SUS)アクチュエータ59、PBアクチュエータ81、ドアロック(DR)アクチュエータ83、及び、通信装置85を含んで構成されている。
【0016】
〔入力系要素13の概略構成〕
入力系要素13に属する周辺監視装置21は、車両10周囲に設定された監視領域(図4Aに示す符号62参照)における通行人(物体)60の存否を監視すると共に、監視領域62における通行人(物体)60の存否に関する存否情報を出力する。周辺監視装置21による監視領域62における通行人(物体)60の存否情報は、通信媒体17を介してVR-ECU51等へ送られる。
【0017】
具体的には、周辺監視装置21は、図1及び図2に示すように、カメラ41、レーダ43、及びライダ45を備えて構成されている。
【0018】
カメラ41は、図2に示すように、車両10前方を監視する前方カメラ41a、車両10の左右側方をそれぞれ監視する一対の側方カメラ41b・カメラ41c、及び車両10後方を監視する後方カメラ41dからなる。カメラ41は、車両10の周辺画像を通して車両10の周囲に存する通行人(物体)60の存否情報を検出・出力する。
【0019】
レーダ43は、図2に示すように、車両10の四隅にそれぞれ設けられ、各コーナ-部に対する通行人(物体)60の存否情報を検出・出力する。
【0020】
ライダ45は、図2に示すように、車両10の前部かつ車幅方向中央部に設けられ、車両10前部に対する通行人(物体)60の存否情報を検出・出力する。
【0021】
車速センサ23は、車両10の走行速度(車速)を検出する機能を有する。車速センサ23で検出された車速に係る情報は、通信媒体17を介してBRK-ECU53等へ送られる。
【0022】
パーキングブレーキ(PB)センサ25は、パーキングブレーキ(PB)の作動時にオン信号を検出・出力する。PBセンサ25によるオンオフ信号は、通信媒体17を介してVR-ECU51等へ送られる。
【0023】
シートベルト(SB)センサ27は、乗員の着座しているシートに係るシートベルト(SB)の装着時にオン信号を検出・出力する。SBセンサ27によるオンオフ信号は、通信媒体17を介してVR-ECU51等へ送られる。
【0024】
傾斜角センサ29は、車両10の傾斜角に係る情報を取得する機能を有する。傾斜角センサ29による車両10の傾斜角に係る情報は、通信媒体17を介してVR-ECU51等へ送られる。
【0025】
SUSセンサ31は、サスペンション装置19の伸縮動作に伴って生じる物理量である、ばね上加速度、ばね下加速度、ストローク位置等のサスペンション装置19の伸縮状態に係るSUS情報を検出・出力する。SUSセンサ31によるサスペンション装置19の伸縮状態に係るSUS情報は、通信媒体17を介してVR-ECU51等へ送られる。SUS情報は、VR-ECU51において、サスペンション装置19の伸縮状態を制御する際に参照される。
【0026】
HMI(Human-Machine Interface)33は、VRモードスイッチ37を含む。VRモードスイッチ37は、車室内に仮想空間を構築してVRサービスの提供を享受する際に乗員により操作される。VRモードスイッチ37の操作情報は、通信媒体17を介してVR-ECU51等へ送られる。
【0027】
〔出力系要素15の概略構成〕
出力系要素15に属するVR-ECU51は、VRコンテンツを用いたVRサービスの提供に関する制御を司る。
VR-ECU51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、VR-ECU51が有する、各種情報の取得機能、次述する判定機能、算出機能、VR制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0028】
VR-ECU51は、VRコンテンツを用いたVRサービスとして、例えば、AV機器57及びSUSアクチュエータ59を駆動することにより、サーキットを走行するカートの挙動及びエンジン音を再現したり、映画の映像及び音声を提示したりする。VRコンテンツは、例えば、通信装置85を介して予めダウンロードすると共に、VR-ECU51が有するRAM等のメモリに蓄積しておけばよい。
【0029】
VRコンテンツを用いたVRサービスを提供するために、VR-ECU51は、図1に示すように、情報取得部61、判定部63、算出部65、及びVR制御部67を備えて構成されている。
【0030】
情報取得部61は、周辺監視装置21による監視領域62における通行人(物体)60の存否情報、車速センサ23で検出された車速に係る情報、PBセンサ25によるパーキングブレーキ(PB)の作動情報、SBセンサ27によるシートベルト(SB)の装着情報、傾斜角センサ29による車両10の傾斜角に係る傾斜情報、SUSセンサ31による複数の各サスペンション装置19a、19b、19c、19d(以下、サスペンション装置19と総称する場合がある。)の伸縮状態に係るSUS情報、VRモードスイッチ37の操作情報等の時系列情報をそれぞれ取得する。
【0031】
情報取得部61により取得した監視領域62における物体の存否情報、車速に係る情報、パーキングブレーキ(PB)の作動情報、シートベルト(SB)の装着情報、車両10の傾斜角に係る傾斜情報、SUS情報、VRモードスイッチ37の操作情報を含む各々の情報は、判定部63等へそれぞれ送られる。
【0032】
判定部63は、情報取得部61により取得した車両10の傾斜角TAに係る傾斜情報に基づいて、車両10が所定の第1傾斜角閾値TAth1を超えた傾斜状態にあるか否かを判定する。所定の第1傾斜角閾値TAth1について、詳しくは後記する。
さらに、判定部63は、情報取得部61により取得した車両10の傾斜角TAに係る傾斜情報に基づいて、車両10が所定の第2傾斜角閾値TAth2を超えた傾斜状態にあるか否かを判定する。所定の第2傾斜角閾値TAth2について、詳しくは後記する。
また、判定部63は、情報取得部61により取得した監視情報に基づいて、監視領域62に通行人(物体)60が存するか否かを判定する。
そして、判定部63は、情報取得部61により監視領域62に通行人(物体)60が存する旨の存在情報を取得した後、当該存在情報を取得しない空白時間TMが所定の第1時間長TMth1を超えたか否かを判定する。
判定部63による判定結果は、算出部65及びVR制御部67へとそれぞれ送られる。
【0033】
算出部65は、図3A図3Bに示すように、VRモードへの移行後における判定部63による判定の結果、車両10が所定の第1傾斜角閾値TAth1を超えた傾斜状態にある旨の判定が下された場合、図3Bに示す傾斜角-出力レシオテーブル66を参照して、車両10の現在の傾斜角の値TAnwに応じた出力レシオの値LOnwを算出する。
【0034】
なお、VRモードへの移行後において、車両10の傾斜状態を含む駐車姿勢は、VRサービスの提供中に時々刻々と変位する。そのため、VRモードへの移行後において、傾斜角-出力レシオテーブル66を参照して、車両10の現在の傾斜角の値TAnwに応じた出力レシオの値LOnwを算出し、算出した出力レシオの値LOnwを用いてSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を調整することの実益がある。
【0035】
ここで、傾斜角-出力レシオテーブル66の関係特性について説明する。
図3Bに示す傾斜角-出力レシオテーブル66では、傾斜角TAが0から第1傾斜角閾値TAth1に至る値域(0=<TA=<TAth1)に対する出力レシオの値LOとして100%の固定値が対応付けられている。なお、本実施形態では、VRモードへの移行後に、傾斜角TAが0から第1傾斜角閾値TAth1に至る値域に収束している場合、VR-ECU51は、車両10のずり下がり移動のリスクはないとみなして、VRモードの継続を無条件で許可する構成を採用している。
【0036】
また、傾斜角TAが第1傾斜角閾値TAth1から第2傾斜角閾値TAth2に至る値域(TAth1<TA=<TAth2)に対する出力レシオの値LOとして100%から0%へと線形に漸減する特性値が対応付けられている。なお、本実施形態では、VRモードへの移行後に、傾斜角TAが第1傾斜角閾値TAth1から第2傾斜角閾値TAth2に至る値域に属することとなった場合、VR-ECU51は、車両10のずり下がり移動のリスクはさほど高くないとみなして、VRモードの継続を条件付き(SUSアクチュエータ59の駆動量を低減)で許可する構成を採用している。
【0037】
そして、傾斜角TAが第2傾斜角閾値TAth2を超える値域(TA>TAth2)に対する出力レシオの値LOとして0%の固定値が対応付けられている。なお、本実施形態では、VRモードへの移行後に、傾斜角TAが第2傾斜角閾値TAth2を超える場合、VR-ECU51は、車両10のずり下がり移動のリスクが高いとみなして、VRモードの継続を中断する構成を採用している。
【0038】
次いで、算出部65は、車両10が傾斜状態にない平常時でのSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus_stに対し、前記出力レシオの算出値LOnwを乗算する。算出部65では、車両10の現在の傾斜角の値TAnwに応じて低減後のSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus_rdが算出される〔DAsus_st *LOnw=DAsus_rd〕。
これにより、車両10が所定の傾斜角閾値TAth1を超えた傾斜状態にある場合に、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、車両10が傾斜状態にない平常時と比べて低減させる。
【0039】
また、算出部65は、VRモードへの移行後における判定部63による判定の結果、監視領域62に通行人(物体)60が存する旨の判定が下された場合、図4Bに示す離間距離-出力レシオテーブル68を参照して、車両10/通行人60間の現在の離間距離の値DTnwに応じた出力レシオの値LOnwを算出する。
【0040】
ここで、離間距離-出力レシオテーブル68の関係特性について説明する。
図4Bに示す離間距離-出力レシオテーブル68では、離間距離DTが0から第1離間距離閾値DTth1に至る値域(0=<DT=<DTth1)に対する出力レシオの値LOとして0%の固定値が対応付けられている。なお、本実施形態では、VRモードへの移行後に、離間距離DTが0から第1離間距離閾値DTth1に至る値域に属することとなった場合、VR-ECU51は、監視領域62に通行人(物体)60が存しており接触のリスクが高いとみなして、VRモードの継続を中断する構成を採用している。
【0041】
また、離間距離DTが第1離間距離閾値DTAth1から第2離間距離閾値DTth2に至る値域(DTth1<DT=<DTth2)に対する出力レシオの値LOとして0%から100%へと線形に漸増する特性値が対応付けられている。こうした特性を用いてSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を調整すると、離間距離DTが小さいほどSUSアクチュエータ59の駆動量に係る低減度をあげるように作用する。
なお、本実施形態では、VRモードへの移行後に、離間距離DTが第1離間距離閾値DTAth1から第2離間距離閾値DTth2に至る値域に属することとなった場合、VR-ECU51は、監視領域62に通行人(物体)60が存しているが接触のリスクはさほど高くないとみなして、VRモードの継続を条件付き(SUSアクチュエータ59の駆動量を低減)で許可する構成を採用している。
【0042】
そして、離間距離DTが第2離間距離閾値DTth2を超える値域(DT>DTth2)に対する出力レシオの値LOとして100%の固定値が対応付けられている。なお、本実施形態では、離間距離DTが第2離間距離閾値DTth2を超える場合、VR-ECU51は、監視領域62に通行人(物体)60が存しないとみなして、VRモードへの移行及びVRモードの継続を無条件で許可する構成を採用している。
【0043】
次いで、算出部65は、監視領域62に通行人(物体)60が存しない平常時でのSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus_stに対し、前記出力レシオの算出値LOnwを乗算する。算出部65では、車両10/通行人60間の現在の離間距離の値DTnwに応じて低減後のSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus_rdが算出される〔DAsus_st *LOnw=DAsus_rd〕。
これにより、監視領域62に通行人(物体)60が存する場合に、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、監視領域62に通行人(物体)60が存しない平常時と比べて低減させる。その結果、通行人(物体)60に対する車両10の接触リスクを減らすことができる。
【0044】
そして、算出部65は、VRモードへの移行後における判定部63による判定の結果、監視領域62に物体60が存する旨の判定が下された後、当該存在情報を取得しない旨の反転した判定が下され、かつ、当該存在情報を取得しない空白時間TMが所定の時間長TMthを超えた旨の判定が下された場合、図4Cに示す空白時間-出力レシオテーブル70を参照して、現在の空白時間の値TMnwに応じた出力レシオの値LOnwを算出する。
【0045】
ここで、空白時間-出力レシオテーブル70の関係特性について説明する。
図4Cに示す空白時間-出力レシオテーブル70では、空白時間の積算値TMが0から第1空白時間閾値TMth1に至る値域(0=<TM=<TMth1)に対する出力レシオの値LOとして0%の固定値が対応付けられている。なお、本実施形態では、VRモードでの存否状態が(存在する)から(存在しない)に反転後に、空白時間の積算値TMが0から第1空白時間閾値TMth1に至る値域に属する場合、VR-ECU51は、VRモードの復帰は時期尚早とみなして、VRモードの復帰を待機する構成を採用している。
【0046】
また、空白時間の積算値TMが第1空白時間閾値TMAth1から第2空白時間閾値TMth2に至る値域(TMth1<TM=<TMth2)に対する出力レシオの値LOとして0%から100%へと線形に漸増する特性値が対応付けられている。なお、本実施形態では、VRモードでの存否状態が(存在する)から(存在しない)に反転後に、空白時間の積算値TMが第1空白時間閾値TMAth1から第2空白時間閾値TMth2に至る値域に属することとなった場合、VR-ECU51は、VRモードの復帰に係る準備期間が到来したとみなして、VRモードの復帰を徐々に行わせる構成を採用している。
これにより、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、空白時間の積算値TMが長くなるほど増大させるようにしている。空白時間の積算値TMが長くなるほど、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を低減しなくとも、通行人(物体)60に対する車両10の接触リスクを減らすことができるからである。
【0047】
そして、空白時間の積算値TMが第2空白時間閾値TMth2を超える値域(TM>TMth2)に対する出力レシオの値LOとして100%の固定値が対応付けられている。なお、本実施形態では、VRモードでの存否状態が(存在する)から(存在しない)に反転後に、空白時間の積算値TMが第2空白時間閾値TMth2を超える値域することとなった場合、VR-ECU51は、VRモードの復帰時期が到来したとみなして、VRモードの完全復帰を行わせる構成を採用している。
【0048】
次いで、算出部65は、監視領域62に物体60が存しない平常時でのSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus_stに対し、前記出力レシオの算出値LOnwを乗算する。算出部65では、現在の空白時間の積算値TMnwに応じて低減(初期値に対して増大)後のSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus_rdが算出される〔DAsus_bn*LOnw=DAsus_rd〕。
これにより、監視領域62に物体60が存する旨の判定が下された後、当該存在情報を取得しない旨の反転した判定が下され、かつ、当該存在情報を取得しない空白時間の積算値TMが所定の第1空白時間閾値TMth1を超えた旨の判定が下された場合に、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、監視領域62に通行人(物体)60が存しない平常時と比べて低減(初期値に対して増大)させる。
【0049】
VR制御部67は、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus (低減後のSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus_rdを含む)を用いて、複数のSUSアクチュエータ59のそれぞれで独立してSUSアクチュエータ59の駆動制御を行う。
【0050】
BRK-ECU53は、VR-ECU51と同様に、出力系要素15に属する。BRK-ECU53は、図1に示すように、情報取得部71及び制動制御部73を備える。
【0051】
BRK-ECU53は、運転者の制動操作によってマスタシリンダ(不図示)で発生した制動液圧(一次液圧)の高低に応じて、制動モータの駆動によってモータシリンダ装置(例えば、特開2015-110378号公報参照:不図示)を作動させることにより、車両10に制動力を付与するための制動液圧(二次液圧)を発生させる。
【0052】
BRK-ECU53は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、BRK-ECU53が有する、各種情報の取得機能、制動操作等に基づく制動制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0053】
情報取得部61は、車速センサ23で検出された現在車速に係る情報、ブレーキペダルセンサで検出されたブレーキペダル(いずれも不図示)の操作量及び踏込みトルクに係る制動操作情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0054】
制動制御部63は、ブレーキペダルセンサを介して取得した運転者の制動操作に係る情報等に基づいて、制動モータの駆動によってモータシリンダ装置を作動させることにより、車両10の制動制御を行う。
【0055】
ENG-ECU55は、VR-ECU51、BRK-ECU53と同様に、出力系要素15に属する。ENG-ECU55は、図1に示すように、情報取得部75、及び駆動制御部77を備える。
【0056】
ENG-ECU55は、アクセルペダルセンサ(不図示)を介して取得した運転者の加速操作(アクセルペダルの踏込量)に係る情報等に基づいて、内燃機関エンジン(不図示)の駆動制御を行う機能を有する。
【0057】
詳しく述べると、ENG-ECU55は、内燃機関エンジンの吸気量を調整するスロットルバルブ(不図示)、燃料ガスを噴射するインジェクタ(不図示)、燃料の着火を行う点火プラグ(不図示)等を制御することにより、内燃機関エンジンの駆動制御を行う。
【0058】
ENG-ECU55は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ENG-ECU55が有する、各種情報の取得機能、内燃機関エンジンの駆動制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0059】
情報取得部75は、アクセルペダルセンサで検出されたアクセルペダルの操作量に係る加減速操作情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0060】
駆動制御部77は、アクセルペダルセンサを介して取得した運転者の加速操作(アクセルペダルの踏込量)に係る情報等に基づいて、内燃機関エンジンの駆動制御を行う。
【0061】
AV機器57は、表示装置、音響装置、AV再生装置等を含んで構成される。AV機器57は、VR-ECU51によるVR制御機能によって駆動される。
【0062】
SUSアクチュエータ59は、車両10の各輪のそれぞれに備わるサスペンション装置19a、19b、19c、19dの各々に設けられる。複数のSUSアクチュエータ59の各々は、車両10のばね上部材(車体)及びばね下部材(タイヤが装着された車輪等)の間に備わるばね部材(いずれも不図示)に並設されている。
【0063】
SUSアクチュエータ59は、車両10の走行時には、ばね部材の伸縮力を緩衝する仮想ダンパとしての役割を果たす一方、車両10をモーション・プラットフォームとして利用することでVRサービスを提供するシーンでは、仮想空間における臨場感を乗員に付与する役割を果たす。
【0064】
パーキングブレーキ(PB)アクチュエータ81は、車両10に備わるPBを駆動する機能を有する。PBアクチュエータ81は、VRモードスイッチ37が乗員によってオン操作されると、VR-ECU51によるVR制御機能によってオン駆動される。
【0065】
ドアロック(DR)アクチュエータ83は、車両10に備わるDRを駆動する機能を有する。DRアクチュエータ83は、VRモードスイッチ37が乗員によってオン操作されると、VR-ECU51によるVR制御機能によってオン駆動(ドア施錠)される。
【0066】
通信装置85は、例えば、車両10の外部から所要のデータ・情報を取得する際に用いられる。
【0067】
〔本明細書において用いる用語の定義〕
ここで、本明細書において用いる用語を定義する。
車両10の傾斜状態とは、車両10の車長方向に傾斜している状態、車両10の車幅方向に傾斜している状態、及びこれらの組み合わせによる傾斜状態を包括的に含む駐車姿勢を意味する。
「所定の第1傾斜角閾値TAth1」とは、車両10をモーション・プラットフォームとして用いてVRサービスを提供中に車両10のずり下がり移動のリスクが生じないとみなせる臨界傾斜角をいう。第1傾斜角閾値TAth1は、一般に、車両10の車種、重量・重心位置を含む属性等に応じて異なる値をとる。そこで、第1傾斜角閾値TAth1としては、車両10の車種、重量・重心位置を含む属性等に応じて適宜の値を設定すればよい。
「所定の第2傾斜角閾値TAth2」とは、車両10をモーション・プラットフォームとして用いてVRサービスを提供中に車両10のずり下がり移動のリスクが高いとみなせる臨界傾斜角をいう。第2傾斜角閾値TAth2は、第1傾斜角閾値TAth1と同様に、一般に、車両10の車種、重量・重心位置を含む属性等に応じて異なる値をとる。そこで、第2傾斜角閾値TAth2としては、車両10の車種、重量・重心位置を含む属性等に応じて適宜の値を設定すればよい。
【0068】
〔実施形態に係る仮想空間演出装置11の動作〕
次に、実施形態に係る仮想空間演出装置11の動作について、図5A図5Bを参照して説明する。図5A図5Bは、実施形態に係る仮想空間演出装置11の動作説明に供するフローチャート図である。
前提として、車両10は停車中であり、VRモードスイッチ37が乗員によってオン操作されたものとする。
【0069】
図5Aに示すステップS11-S12において、VR-ECU51は、PBアクチュエータ81及びDRアクチュエータ83をそれぞれオン駆動させる。これにより、車両10の駐車状態が保持されると共にドアが施錠される。
【0070】
ステップS13において、VR-ECU51は、シートベルト(SB)スイッチがオンしているか否か、すなわち、シートベルト装着によって乗員が拘束された状態か否かを調べる。
【0071】
ステップS13の調査の結果、シートベルト装着によって乗員が拘束された状態ではない旨の判定が下された場合(ステップS13のNo)、VR-ECU51は、処理の流れを次のステップS14へと進ませる。
一方、ステップS13の調査の結果、シートベルト装着によって乗員が拘束された状態である旨の判定が下された場合(ステップS13のYes)、VR-ECU51は、処理の流れをステップS15へとジャンプさせる。
【0072】
ステップS14において、VR-ECU51は、AV機器57を用いてシートベルト装着を乗員に促す警告を行わせる。その後、処理の流れをステップS13に戻し、以降の処理を行わせる。
【0073】
ステップS15において、VR-ECU51の情報取得部61は、傾斜角センサ29により検出された車両10の傾斜角に係る傾斜情報に基づいて、車両10の駐車姿勢を把握する。
【0074】
ステップS16において、VR-ECU51の判定部63は、情報取得部61により取得した車両10の傾斜角TAに係る傾斜情報に基づいて、車両10が第1傾斜角閾値TAth1を超えた傾斜状態にあるか否かを判定する。
【0075】
ステップS16の判定の結果、車両10が第1傾斜角閾値TAth1を超えた傾斜状態にある旨の判定が下された場合(ステップS16のYes)、VR-ECU51は、処理の流れを次のステップS17へと進ませる。
一方、ステップS16の判定の結果、車両10が第1傾斜角閾値TAth1を超えた傾斜状態にない旨の判定が下された場合(ステップS16のNo)、VR-ECU51は、車両10の駐車姿勢に関し、VRモードへの移行を許可しても車両10のずり下がり移動のリスクはないとみなして、処理の流れをステップS18へとジャンプさせる。
【0076】
ステップS17において、VR-ECU51は、AV機器57を用いて車両10を平坦路に移動させた後、VRモードの再起動(VRモードスイッチ37のリセットによる)を乗員に促す警告を行わせる。その後、一連の処理の流れを終了させる。
【0077】
ステップS18において、VR-ECU51の情報取得部61は、周辺監視装置21による監視領域62における通行人(物体)60の存否を含む監視情報を取得する。
【0078】
ステップS19において、VR-ECU51の判定部63は、情報取得部61により取得した監視情報に基づいて、監視領域62に通行人(物体)60が存するか否かを判定する。
【0079】
ステップS19の判定の結果、監視領域62に通行人(物体)60が存する旨の判定が下された場合(ステップS19のYes)、VR-ECU51は、処理の流れを次のステップS20へと進ませる。
一方、ステップS19の判定の結果、監視領域62に通行人(物体)60が存しない旨の判定が下された場合(ステップS19のNo)、VR-ECU51は、処理の流れをステップS21へとジャンプさせる。
【0080】
ステップS20において、VR-ECU51は、AV機器57を用いて監視領域62に通行人(物体)60が存するためVRモードへの移行を拒絶する警告を行わせる。その後、処理の流れをステップS18に戻し、以降の処理を行わせる。
【0081】
ステップS21において、VR-ECU51は、VRモードへの移行を許可しても車両10及び通行人(物体)60間の接触のリスクはないとみなして、VRモードへの移行を許可する。これにより、車両10は、該車両10をモーション・プラットフォームとして利用した娯楽施設へと変貌する。
【0082】
ステップS22において、VR-ECU51は、VRモードが中断/終了するまでSUSアクチュエータ59の駆動量を逐次調整しつつVRサービスの提供を継続する。
【0083】
一方、サブルーチンSUB(VRモード)において、VR-ECU51は、ステップS22の処理と並行して、監視情報を取得すると共に物体存否判定を行い、物体存否判定結果に基づきSUSアクチュエータ59の駆動量を逐次算出する処理を行う。
【0084】
すなわち、図5Bに示すサブルーチンSUB(VRモード)のステップS31において、VR-ECU51の情報取得部61は、周辺監視装置21による監視領域62における通行人(物体)60の存否を含む監視情報を取得する。
【0085】
ステップS32において、VR-ECU51の判定部63は、情報取得部61により取得した監視情報に基づいて、監視領域62に通行人(物体)60が存するか否かを判定する。
【0086】
ステップS32の判定の結果、監視領域62に通行人(物体)60が存する(離間距離DTが第2離間距離閾値DTth2以下である)旨の判定が下された場合(ステップS32のYes)、VR-ECU51は、処理の流れを次のステップS33へと進ませる。
一方、ステップS32の判定の結果、監視領域62に通行人(物体)60が存しない(離間距離DTが第2離間距離閾値DTth2を超える)旨の判定が下された場合(ステップS32のNo)、VR-ECU51は、処理の流れをステップS34へとジャンプさせる。
【0087】
ステップS33において、VR-ECU51は、物体存否判定結果に基づきSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を算出する。
こうして算出されたSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を用いて、VR-ECU51は、図5Aに示すステップS22において、VRサービスの提供を継続する。
【0088】
ステップS33において、VR-ECU51は、物体存否判定結果に基づき(図4Bに示す離間距離-出力レシオテーブル68を参照しつつ)SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を算出する。その後、VR-ECU51は、処理の流れをステップS31に戻し、例えばVRモードスイッチ37のオフ操作によってVRモードが終了するまで以降の処理を行わせる。
【0089】
ステップS34において、VR-ECU51は、VRモードでの存否状態が(存在する)から(存在しない)に反転したか否かを判定する。ステップS34では、ステップS32で監視領域62に通行人60が存する旨の判定が下された(ステップS32のYes)あと、通行人60が存しないと判定されたケースを、VRモードでの存否状態が反転した旨の判定を下す事例を想定している。なお、図5A図5Bに示すフローチャートは、本発明の処理の流れを概説するためのものであることを付言しておく。
【0090】
ステップS34の判定の結果、VRモードでの存否状態が(存在する)から(存在しない)に反転していない旨の判定が下された場合(ステップS34のNo)、VR-ECU51は、処理の流れをステップS31に戻し、例えばVRモードスイッチ37のオフ操作によってVRモードが終了するまで以降の処理を行わせる。
一方、ステップS34の判定の結果、VRモードでの存否状態が(存在する)から(存在しない)に反転した旨の判定が下された場合(ステップS34のYes)、VR-ECU51は、処理の流れを次のステップS35へと進ませる。
【0091】
ステップS35において、VR-ECU51は、出力レシオの値LOを初期値である(0%)に設定する。
【0092】
ステップS36において、VR-ECU51は、空白時間を積算することで空白時間の積算値TMを求める。
【0093】
ステップS37において、VR-ECU51は、空白時間の積算値TMが第1空白時間閾値TMth1(図4C参照)を超えたか否かを判定する。
【0094】
ステップS37の判定の結果、空白時間の積算値TMが第1空白時間閾値TMth1を超えない旨の判定が下された場合(ステップS37のNo)、VR-ECU51は、処理の流れをステップS36に戻し、VRモードでの存否状態の反転が継続(存在しない状態が継続)している限り、〔ステップS36⇒ステップS37〕の処理をループさせる。VR-ECU51は、例えばVRモードスイッチ37のオフ操作によってVRモードが終了するまで以降の処理を行わせる。
一方、ステップS37の判定の結果、空白時間の積算値TMが第1空白時間閾値TMth1を超えた旨の判定が下された場合(ステップS37のYes)、VR-ECU51は、処理の流れを次のステップS38へと進ませる。
【0095】
ステップS38において、VR-ECU51は、空白時間の積算値TMに基づき(図4Cに示す空白時間-出力レシオテーブル70を参照しつつ)SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を算出する。このとき、VR-ECU51は、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、監視領域62に通行人(物体)60が存しない平常時と比べて低減(初期値に対して増大)させる。
要するに、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus は、空白時間の積算値TMが増大するにつれて増大(漸増)する。空白時間の積算値TMが増大するにつれて、車両10及び通行人(物体)60間の接触リスクは減少してゆくため、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を抑制する要請は減るからである。
なお、空白時間の積算値TMに基づくSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus に係る増大量は、空白時間が継続している区間において、例えば、所定時間が経過する毎に更新する構成を採用しても構わない。
【0096】
その後、VR-ECU51は、処理の流れをステップS31に戻し、例えばVRモードスイッチ37のオフ操作によってVRモードが終了するまで以降の処理を行わせる。
【0097】
〔仮想空間演出装置11の第1変形例〕
次に、仮想空間演出装置11の第1変形例について、図6A図6Bを参照して説明する。図6A図6Bは、VRモードへの移行後に、車両10の監視領域62に通行人(物体)60が存するケースでの仮想空間演出装置11の第1変形例に係る動作説明に供する図である。
【0098】
仮想空間演出装置11の第1変形例では、VRモードへの移行後に、図6Aに示すように、車両10の監視領域62に通行人(物体)60が存するケースにおいて、車両10に備わる複数の各サスペンション装置19a、19b、19c、19dの各々と通行人(物体)60との各間の離間距離DTの大小関係に基づいて、複数の各サスペンション装置19a、19b、19c、19d毎の出力レシオの値LOを算出する。
図6A図6Bに示す例では、車両10の左後サスペンション装置19c及び通行人(物体)60間の離間距離DT1は、車両10の右前サスペンション装置19b及び通行人(物体)60間の離間距離DT2と比べて小さい(DT1<DT2)。
図6Bに示す離間距離-出力レシオテーブル68を参照すると、離間距離DT1に対応する出力レシオの値LO1は、離間距離DT2に対応する出力レシオの値LO2と比べて小さくなる(LO1<LO2)。
その結果、車両10の左後サスペンション装置19cに備わるSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus は、車両10の右前サスペンション装置19bに備わるSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus と比べて小さくなる。
要するに、仮想空間演出装置11の第1変形例によれば、通行人(物体)60との間の離間距離DTが小さい方のサスペンション装置19cに備わるSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、通行人(物体)60との間の離間距離DTが前記と比べて大きい方のサスペンション装置19bに備わるSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus と比べて低減するため、通行人(物体)60に対する車両10の接触リスクを抑制することができる。
【0099】
〔仮想空間演出装置11の第2変形例〕
次に、仮想空間演出装置11の第2変形例について、図5Aを参照して説明する。
【0100】
仮想空間演出装置11の第2変形例では、図5Aに示すステップS16において、第1傾斜角閾値TAth1に代えて、第2傾斜角閾値TAth2を判定閾値として適用する。要するに、VR-ECU51の判定部63は、情報取得部61により取得した車両10の傾斜角TAに係る傾斜情報に基づいて、車両10が第2傾斜角閾値TAth2を超えた傾斜状態にあるか否かを判定する。
【0101】
ステップS16の判定の結果、車両10が第2傾斜角閾値TAth2を超えた傾斜状態にある旨の判定が下された場合(ステップS16のYes)、VR-ECU51は、車両10をモーション・プラットフォームとして用いてVRサービスを提供中に車両10のずり下がり移動のリスクが高いとみなして、処理の流れを次のステップS17へと進ませる。
一方、ステップS16の判定の結果、車両10が第2傾斜角閾値TAth2を超えた傾斜状態にない旨の判定が下された場合(ステップS16のNo)、VR-ECU51は、車両10の駐車姿勢に関し、VRモードへの移行を許可しても車両10のずり下がり移動のリスクは比較的高くないとみなして、処理の流れをステップS18へとジャンプさせる。
【0102】
ステップS17において、VR-ECU51は、AV機器57を用いて車両10を平坦路に移動させた後、VRモードの再起動(VRモードスイッチ37のリセットによる)を乗員に促す警告を行わせる。その後、一連の処理の流れを終了させる。
【0103】
ステップS18~S21では、VR-ECU51は、前記した実施例と同様の処理を行わせる。
【0104】
ステップS22において、VR-ECU51は、VRモードが中断/終了するまでSUSアクチュエータ59の駆動量を逐次調整しつつVRサービスの提供を継続する。
ここで、第2変形例に係るステップS16の判定結果によって、車両10が第2傾斜角閾値TAth2を超えた傾斜状態にない(TA=<TAth2)ことがわかっている。
【0105】
このうち、傾斜角TAが0から第1傾斜角閾値TAth1に至る値域(0=<TA=<TAth1)に至る値域に収束している場合、図3Bに示す傾斜角-出力レシオテーブル66を参照すると、同値域(0=<TA=<TAth1)に対する出力レシオの値LOとして100%の固定値が対応付けられている。
そこで、傾斜角TAが同値域(0=<TA=<TAth1)に収束している場合、VR-ECU51は、車両10のずり下がり移動のリスクはないとみなして、VRモードの継続を、SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を低減することなく無条件で許可する。
【0106】
一方、傾斜角TAが第1傾斜角閾値TAth1から第2傾斜角閾値TAth2に至る値域(TAth1<TA=<TAth2)に属する場合、同値域(TAth1<TA=<TAth2)に対する出力レシオの値LOとして100%から0%へと線形に漸減する特性値が対応付けられている。
そこで、傾斜角TAが同値域(TAth1<TA=<TAth2)に属する場合、VR-ECU51は、車両10のずり下がり移動のリスクはさほど高くないとみなして、VRモードの継続を、(SUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を適宜低減する)条件付きで許可する。
【0107】
なお、ステップS22において、VR-ECU51は、VRモードが中断/終了するまでの間、物体の存否及び車両10の傾斜姿勢に基づいて、SUSアクチュエータ59の駆動量を逐次調整しつつVRサービスの提供を継続する。
【0108】
仮想空間演出装置11の第2変形例によれば、サスペンション装置19cに備わるSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を、車両10の駐車姿勢に応じて調整するため、車両10のずり下がり移動リスクを低減すると共に、車両10のずり下がり移動に伴う通行人(物体)60に対する車両10の接触リスク抑制効果を一層高めることができる。
【0109】
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0110】
例えば、本発明の実施形態において、通行人(物体)60に対する車両10の接触リスクを抑制するために、サスペンション装置19bに備わるSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を低減する構成を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。
例えば、サスペンション装置19bに備わるSUSアクチュエータ59の駆動量DAsus を低減する構成に代えて、又は加えて、SUSアクチュエータ59の駆動パターンに関する周波数特性のうち高周波帯域を抑制することにより、通行人(物体)60に対する車両10の接触リスクを抑制してもよい。
【0111】
また、本発明の実施形態において、他のECUとは独立して機能するVR-ECU51を用いて本発明に係る動作制御を行う形態を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。複数の機能を統合した統合ECUを用いて、本発明に係る動作制御を行う形態を採用しても構わない。
【0112】
さらに、統合ECUを用いて本発明に係る動作制御を行う際に、通信装置75を介して、外部サーバ(不図示)に蓄積された本発明に係る動作制御を実行可能なソフトウェアを統合ECUに備わるメモリにダウンロードして実行することにより、統合ECUを用いて本発明に係る動作制御を実行する構成を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0113】
10 車両(移動体)
11 仮想空間演出装置
21 周辺監視装置
29 傾斜角センサ
51 VR-ECU(制御部)
57 AV機器
59 SUSアクチュエータ(アクチュエータ)
61 情報取得部
63 判定部
65 算出部
67 VR制御部(制御部)
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B