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特許7588168対象物に関する寸法データを決定する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】対象物に関する寸法データを決定する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01B15/02 C
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023021949
(22)【出願日】2023-02-15
(65)【公開番号】P2023133155
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】10 2022 105 479.9
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511082609
【氏名又は名称】シコラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】シュー トビアス コリャ
(72)【発明者】
【氏名】ボルテ ヒルマー
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-156664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00-15/08
G01B 11/00-11/30
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の対象物(34)又はストランド状の対象物(18)、特にパイプ(18)に関する寸法データ、特に厚さデータを決定する方法であって、
第1送信機(10)によって、テラヘルツ放射が前記対象物(18、34)の表面上の少なくとも1箇所に、少なくとも1つの時点で放射されるステップと、
前記第1送信機(10)により放射されたテラヘルツ放射は、前記対象物(18、34)を少なくとも1回通過した後に、第1受信機(10)により受信されるステップと、を含み、
テラヘルツ放射のキャリア周波数の5%未満の帯域幅を有するテラヘルツ放射を、第2送信機(12)により、複数の時点で前記対象物の表面に、及び/又は前記対象物(18、34)の表面の複数の位置に放射されるステップと、
前記第2送信機(12)によって放射されたテラヘルツ放射は、放射が前記対象物(18、34)を少なくとも1回通過した後に、第2受信機(12)によって受信されるステップと、
前記対象物(18,34)の寸法は、前記第2送信機(12)により受信されたテラヘルツ放射から、及び/又は、前記第1受信機(10)により受信されたテラヘルツ放射を考慮した前記第2受信機(12)により受信されたテラヘルツ放射の時間変化及び/又は空間変化から決定するステップと、をさらに含み、
前記第1送信機(10)によって放射されるテラヘルツ放射の帯域幅は、該テラヘルツ放射のキャリア周波数の10%を超えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2送信機(12)によって放射されるテラヘルツ放射の帯域幅は、該テラヘルツ放射のキャリア周波数の3%未であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1送信機(10)及び前記第1受信機(10)が第1送受信機(10)によって形成されていること、及び/又は前記第2送信機(12)及び前記第2受信機(12)が第2送受信機(12)によって形成されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1送信機(10)によって放射されるテラヘルツ放射のための第1反射機(22)が、前記第1送信機(10)と反対側にある前記対象物(18、34)の側に配置されていること、及び/又は、前記第2送信機(12)によって放射されるテラヘルツ放射のための第2反射機(24)が、前記第2送信機(12)と反対側にある前記対象物(18、34)の側に配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2送信機(12)及び前記第2受信機(12)が前記対象物(18、34)を中心に回転し、及び/又は前記対象物(18、34)に沿って転置され、かつ/あるいは前記対象物(18、34)の周囲又は前記対象物(18、34)に沿って配置された複数の前記第2送信機(12)及び前記第2受信機(12)が設けられることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2送信機(12)は、前記対象物(18、34)の表面に斜め入射角でテラヘルツ放射を放射することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記対象物(18、34)の寸法が、前記対象物(18、34)の屈折率を考慮して決定されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記対象物(18、34)の屈折率は、前記第1受信機(10)によって受信されたテラヘルツ放射から決定されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象物の寸法は、前記第1送信機(10)及び/又は前記第2送信機(12)によって放射されたテラヘルツ放射の、前記対象物(18、34)を通る放射の通過中に生じる位相変化から決定されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記対象物(18、34)の欠陥が、特に、前記第2受信機(12)によって受信されたテラヘルツ放射信号の急速な信号変化に基づいて推測されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項11】
板状の対象物又はストランド状の対象物(18、34)に関する寸法データを決定するための装置であって、
前記対象物(18、34)の表面上の少なくとも1箇所に、少なくとも1つの時点でテラヘルツ放射を放射するように設計されている第1送信機(10)と、
前記第1送信機(10)により放射されたテラヘルツ放射が前記対象物(18,34)を少なくとも1回通過した後に受信するように設計された第1受信機(10)と、
テラヘルツ放射のキャリア周波数の5%未満の帯域幅を有するテラヘルツ放射を、複数の時点で前記対象物(18、34)の表面に、及び/又は対象物(18、34)の表面の複数の場所に放射するように設計されている第2送信機(12)と、
前記第2送信機(12)から放射されたテラヘルツ放射が前記対象物(18,34)を少なくとも1回通過した後に受信するように設計された第2受信機(12)と、
前記第2送信機(12)によって受信されたテラヘルツ放射から、及び/又は、前記第1受信機(10)によって受信されたテラヘルツ放射を考慮した前記第2受信機(12)によって受信されたテラヘルツ放射の時間的及び/又は空間的変化から前記対象物(18、34)の寸法を決定するように設計された評価装置(26)と、を備え、
前記第1送信機(10)によって放射されるテラヘルツ放射の帯域幅は、該テラヘルツ放射のキャリア周波数の10%を超えることを特徴とする、装置。
【請求項12】
前記第2送信機(12)によって放射されるテラヘルツ放射の帯域幅は、該テラヘルツ放射のキャリア周波数の3%未であることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1送信機(10)及び前記第1受信機(10)は、第1送受信機(10)によって形成されていること、及び/又は前記第2送信機(12)及び前記第2受信機(12)は、第2送受信機(12)によって形成されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1送信機(10)によって放射されるテラヘルツ放射のための第1反射機(22)が、前記第1送信機(10)と反対側にある前記対象物(18,34)の側に配置され、及び/又は前記第2送信機(12)によって放射されるテラヘルツ放射のための第2反射機(24)が、前記第2送信機(12)と反対側にある前記対象物(18,34)の側に配置されていることを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項15】
測定中に前記対象物(18、34)を中心に前記第2送信機(12)及び前記第2受信機(12)を回転させるため、及び/又は測定中に前記対象物(18、34)に沿って前記第2送信機(12)及び前記第2受信機(12)を転置するための回転装置及び/又は転置装置が設けられ、かつ/あるいは前記対象物(18、34)の周囲又は前記対象物(18、34)に沿って配置された複数の前記第2送信機(12)及び前記第2受信機(12)が設けられることを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記第2送信機(12)は、前記対象物(18、34)の表面に斜め入射角でテラヘルツ放射を放出するように配置されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記評価装置(26)は、前記対象物(18、34)の屈折率を考慮して前記対象物(18、34)の寸法を決定するようにさらに設計されていることを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記評価装置(26)は、前記第1受信機(10)によって受信されたテラヘルツ放射から前記対象物(18,34)の屈折率を決定するようにさらに設計されていることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記評価装置(26)は、前記第1送信機(10)及び/又は前記第2送信機(12)によって放射されたテラヘルツ放射の、前記対象物(18、34)を通過する放射の通過中に生じる位相変化から、前記対象物(18、34)の寸法を決定するように設計されていることを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【請求項20】
前記評価装置(26)は、特に、前記第2受信機(12)によって受信されたテラヘルツ放射信号の急速な信号変化に基づいて、前記対象物(18,34)の欠陥を推測するように設計されていることを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状又はストランド状の対象物に関する寸法データ、特に厚みデータを求める方法であって、テラヘルツ放射が、第1送信機によって、少なくとも1つの時点で対象物の表面の少なくとも1箇所に放射され、第1送信機によって放射されたテラヘルツ放射は、放射が対象物を少なくとも1度通過した後に第1受信機によって受信される。
【0002】
本発明はまた、板状又はストランド状の対象物に関する寸法データを決定するための装置であって、少なくとも1つの時点で対象物の表面の少なくとも1箇所にテラヘルツ放射を放射するように設計された第1送信機と、第1送信機によって放射されたテラヘルツ放射が対象物を少なくとも1度通過した後にそれを受信するように設計された第1受信機と、を備える装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
テラヘルツ放射、いわゆるミリ波を使って、例えばパイプのような板状又は線状の対象物に関する寸法データを測定することができる。このような寸法データには、例えば、直径又は厚さ、特に壁の厚さが含まれる。テラヘルツ放射の信号は、送信機から測定対象物に放射される。放射された信号は、対象物を通過し、対象物の境界面で反射される。その後、テラヘルツ放射が受信機で受信される。測定対象物によって、反射、散乱、吸収、屈折など、放射信号が操作される。その結果、テラヘルツ波の信号が変化することで、対象物について判定することができ、特に、対象物の境界層での反射を評価し、寸法データを決定することができる。さらに、対象物は空気中の伝搬に比べて密度が高いため、テラヘルツ放射信号が遅延する。したがって、放射信号の遅延を測定して材料の配向と屈折率が分かれば、対象物の寸法の絶対値を決定することができる。特に、パイプのような線状の対象物や板状の対象物には、この方法が適用される。
【0004】
しかし、対象物の境界層での反射を評価するためには、個々の境界層を分解できるようなテラヘルツ放射の帯域幅が必要である。測定対象物の寸法が小さい場合(例えば、肉厚が薄い場合)、使用するテラヘルツ放射の帯域幅には厳しい要求がある。必要な帯域幅は、光速を屈折率と分解したい構造(例えば、分解したい境界面の距離)の積の2倍で割った値にほぼ等しい。構造の大きさにもよるが、100GHz程度の帯域幅が必要となることもある。このため、小さな構造を確実に測定するために必要なテラヘルツ帯の送信機と受信機は、複雑でコスト高になる。多くの場合、特別な認可手続きが必要となる。また、この種の送受信機を複数台用意し、例えば測定するパイプの周囲に配置すると、さらに費用がかさむ。これは、測定対象物を放射し、可能な限り完全に測定するために、しばしば望ましいことである。
【0005】
また、対象物の形状の乱れ、特に、吹き溜まり、へこみ、膨らみなどの欠陥が別の問題として生じる。欠陥を検出するために、独国特許出願公開第102016105599号明細書(特許文献1)は、テスト対象物からやってきて送受信ユニットに向けられる反射がオブジェクトの欠陥においてのみ起こるように、非垂直角度で測定すべき対象物の境界面にテラヘルツ放射することを提案している。あるいは、測定対象物の境界面による反射を排除するために、主反射光をアパーチャーで抑制してもよい。
【0006】
独国実用新案第202021100416号明細書(特許文献2)は、搬送方向に搬送されるストランド状製品の欠陥を検出するための評価装置を有する装置を提案し、この評価装置は、少なくとも1つの受信機によって受信されるテラヘルツ放射信号の一時的変化からストランド状製品の欠陥を推測するように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102016105599号明細書
【文献】独国実用新案第202021100416号明細書
【文献】国際公開第2016/139155号
【発明の概要】
【発明を解決しようとする課題】
【0008】
説明した先行技術から基づき、本発明の目的は、冒頭に述べたタイプの方法及び装置を提供することであり、この方法によって、板状の対象物又はストランド状の対象物に関する寸法データを、少ない経費で確実かつ正確に決定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、独立請求項1及び12を有する目的を達成する。有利な実施形態は、従属請求項、説明、及び図に開示されている。
【0010】
本発明は、冒頭で述べたタイプの方法に関して、以下の手段によって目的を達成する。
‐テラヘルツ放射の搬送周波数の5%未満の帯域幅を有するテラヘルツ放射を、第2送信機によって、複数の時点及び/又は対象物の表面上の複数の位置で対象物の表面上に放射し、
‐前記第2送信機によって放射されたテラヘルツ放射は、放射が対象物を少なくとも1回通過した後に、前記第2受信機によって受信され、
‐前記第2送信機が受信したテラヘルツ放射から、及び/又は、前記第1受信機が受信したテラヘルツ放射を考慮して前記第2受信機が受信したテラヘルツ放射の時間及び/又は空間変化から、対象物の寸法が決定されること。
【0011】
本発明は、冒頭で述べたタイプの装置に関して、以下の手段によって目的を達成する。
-テラヘルツ放射の搬送周波数の5%未満の帯域幅を有するテラヘルツ放射を、複数の時点で、及び/又は、対象物の表面の複数の場所に放射するように設計されている第2送信機と、
-前記第2送信機から送信されたテラヘルツ放射が前記対象物を少なくとも1回透過した後に受信する第2受信機と、
-前記第2送信機によって受信されたテラヘルツ放射から、及び/又は、前記第1受信機によって受信されたテラヘルツ放射を考慮して前記第2受信機によって受信されたテラヘルツ放射の時間的及び/又は空間的変化から対象物の寸法を決定するように設計されている評価装置。
【0012】
本発明の測定される対象物は、例えば、プラスチックやガラスの対象物であってもよい。板状又はストランド状、例えばパイプ状である。測定中に第1及び第2送受信機を有する装置を通して、特にその長手方向軸に沿ってストランド状の対象物が搬送されてもよい。この目的のために、装置は、搬送装置を構成してもよい。対象物は、生産装置、例えば押出装置から出るかもしれない。測定中、対象物はまだ高温である可能性がある。また、測定中に対象物の固化がまだ完了していない可能性もある。したがって、対象物は、特に、溶融成分から構成されている可能性がある。
【0013】
本発明によれば、テラヘルツ放射、いわゆるミリ波を用いて、対象物を測定することができる。テラヘルツ放射は、例えば、10GHzから3THzの周波数範囲であってもよい。テラヘルツ放射は、例えば水蒸気などによる干渉の影響をほとんど受けないため、測定が困難な環境、例えば生産設備などにおける対象物、例えばプラスチックの対象物の測定によく適している。そのため、例えば押出装置から出たストランド状の対象物は、例えば水などの冷却流体を当てて冷却される。これにより、水蒸気が発生する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、一方では第1送信機と第1受信機を有する第1測定システム、他方では第2送信機と第2受信機を有する第2測定システムを用いて、対象物の複合測定を実施するというアイデアに基づいている。第2送信機は、テラヘルツ放射の搬送波周波数の5%未満の帯域幅を有するテラヘルツ放射を、対象物の表面の複数の時点及び/又は複数の位置に放射する。テラヘルツ放射の帯域幅は、送信機によって放射されるテラヘルツ放射の下限周波数と上限周波数との差として定義される。周波数限界は、キャリア周波数の上方及び下方、特にキャリア周波数から同じ距離のところにある。第1送信機は、第2送信機よりも大きな帯域幅を有するテラヘルツ放射を放射することができる。好ましくはより大きな帯域幅のために、対象物の屈折率が既知であるか、又は計量的に決定されている場合、対象物に関する寸法データの絶対値が、第1送信機及び第1受信機を用いて決定され得る。この目的のために、対象物の境界層上でのテラヘルツ放射の反射は、それ自体既知の方法で、例えば伝搬時間測定に基づいて評価することができる。本発明によれば、この測定は、より低い帯域幅を有するテラヘルツ放射を対象物の表面の複数の時間及び/又は複数の位置に放射する第2送信機を用いた測定と組み合わされる。放射が対象物を通過する間のテラヘルツ放射の遅延は、狭帯域の第2送信機と第2受信機を用いて測定することができる。特に、異なる時点で放射された放射信号の比較に基づいて、対象物の寸法、特に対象物の寸法変化、例えば対象物の厚さの変化を、第2送信機又は代替的に受信機の測定位置で特定することができる。これは、例えば、放射が対象物を通過する間に対象物によって生じる第2送信機の放射されたテラヘルツ放射の位相変化に基づいて行われ得る。このようにして、厚み変動を検出することができる。板状の対象物であれば、すぐに明確な測定結果が得られる。パイプ状の対象物の場合は、放射が通過したパイプの両壁の厚み変動の和が測定される。例えば第2送信機と第2受信機からなる測定システムよりも稀に測定を実施し、例えば対象物の絶対厚さを測定する第1送信機と第1受信機からなる測定システムと組み合わせて、第2送信機又はその代わりに受信機の測定位置、すなわち第2送信機によって放射される対象物上の位置において、決定された寸法、特に決定された寸法変化、例えば厚さの変化の絶対値を決定することが可能である。また、例えばパイプの絶対厚みの測定値に基づいて、個々のパイプ壁の厚み変動を推測することも可能である。
【0015】
したがって、絶対的な寸法値、特に寸法変化、例えば厚さの変化は、両方の測定システムの組み合わせにおいて、いつでも確実に決定することができる。本発明による測定システムの組み合わせは、例えばより広い帯域幅である第1測定システムは、時々、かつ対象物の表面のいくつかの位置においてのみ絶対的な厚さの測定を実施しなければならないのに対し、第2測定システムを用いた測定は、より頻繁に、かつ対象物の表面のより多くの位置において行われ得るという利点を提供する。それにもかかわらず、寸法データの完全な絶対的決定、例えば寸法変化は、例えば、第1測定システムとの相関関係によって、第2測定システムを用いて対象物を実質的に完全に検出することによって行われうる。第2送受信機からなる第2測定システムは、特に、対象物の境界面における直接的な放射の反射を評価するためではなく、放射の通過中に対象物によって生じるテラヘルツ放射の遅延を評価するために使用される。これに対して、第1測定システムは、特に、対象物の境界面におけるテラヘルツ放射の反射を評価するために使用される。
【0016】
低い帯域幅を有する測定システムは、費用対効果が高いだけでなく、実装が容易であり、評価が容易であり、一般に、承認要件がそれほど厳しくない。本発明による測定システムの組み合わせにより、対象物の包括的な測定、すなわち対象物へのテラヘルツ放射の広範囲な放射は、第2測定システムを用いてのみ行われる必要があるので、全体としてより低い支出を可能にすることができる。例えば、測定対象物の周囲に複数の送受信機を配置する場合、安価な狭帯域の第2送受信機を対象物の周囲に多く配置することができ、より広帯域の送受信機を多く配置することに伴うコストを発生させることはない。逆に、より薄い対象物も同じ帯域幅で測定することができる。
【0017】
原理的には、テラヘルツ放射が、第1送信機によって、ある時点において、対象物の表面の1箇所にのみ放射されることが可能である。しかし、第1送信機が、第2送信機と同様に、複数の時点及び/又は対象物の表面の複数の場所にテラヘルツ放射を放射することもまた可能である。例えば、説明したように、測定中に対象物が装置内を搬送されることも可能である。この場合、移動する対象物に放射されたテラヘルツ放射は、例えば静止した第1送信機又は第2送信機によって、複数の時点で対象物の表面の複数の場所に放射され得る。好ましくは、テラヘルツ放射は、第1送信機からのテラヘルツ放射の場合よりも、第2送信機によって、より多くの時点で、及び/又は、対象物の表面上のより多くの場所に放射される。特に、テラヘルツ放射が、例えば板状の対象物の場合には対象物の搬送方向に対して横方向に、あるいは代替的に、例えばその長手方向に沿って搬送される対象物の全周にわたって、対象物の実質的に全表面に、第2送信機によって放射されることが可能である。第2送信機が搬送方向に対して横方向に、又は代替的に対象物の周囲を十分に速く移動する場合、又は十分な数の第2送信機及びそれに応じて第2受信機が設けられる場合、このようにして、対象物の表面を実質的に完全にカバーし、したがって第2測定システムによる対象物の測定が可能である。第1測定システムによって比較的まれに行われる測定は、第2測定システムによって識別された寸法変化を対応する絶対値に変換するために依然として十分である。
【0018】
説明したように、第1送信機は、好ましくは、第2送信機よりも大きな帯域幅を有する。一実施形態によれば、第1送信機によって放射されるテラヘルツ放射の帯域幅は、テラヘルツ放射のキャリア周波数の10%を超える、好ましくは20%を超えていてもよい。また、第1送信機によって放射されるテラヘルツ放射の帯域幅は、10GHz以上、好ましくは20GHz以上であってもよい。第1送信機が放射するテラヘルツ放射の帯域幅は、光速を、屈折率と測定される寸法(例えば壁の厚さ)との積の2倍で割ったものより大きくてもよい。この種の広帯域センサーは、より高い費用を伴う。その代わり、この種の広帯域送信機は、対象物の境界面の短い距離も確実に解像できるため、絶対寸法、例えば対象物の絶対厚みと屈折率を確実に決定することができる。しかしながら、第1送信機が、第2送信機とは独立して動作し、例えば、予め定められた屈折率に基づいて対象物の総厚を決定する狭帯域の送信機でもあることも考えられるだろう。
【0019】
別の実施形態によれば、第2送信機によって放射されるテラヘルツ放射の帯域幅は、テラヘルツ放射のキャリア周波数の3%未満、好ましくは2%未満であってよい。特に、第2送信機のテラヘルツ放射として、ISM帯内のテラヘルツ放射を用いることができれば好ましい。ISM(Industrial, Scientific, and Medical)バンドは、一般に無認可で使用できる周波数帯である。その結果、出費をさらに抑えることができる。ISMバンドの例としては、122GHzから123GHzの範囲の周波数帯、すなわち1GHzの帯域幅を有するものが好適である。特に、第2送信機の帯域幅は、光速を、屈折率と測定される構造(例えば壁の厚さ)との積の2倍で割ったものよりも低くてもよく、好ましくは2倍低い。
【0020】
特に実現可能な実施形態によれば、第1送信機及び第1受信機は、第1送受信機によって形成されてもよく、及び/又は第2送信機及び第2受信機は、第2送受信機によって形成されてもよい。このように、対応する送信機及び受信機は、同じ場所に配置されるか、又はむしろ送受信機として統合される。
【0021】
別の実施形態によれば、第1送信機によって放射されたテラヘルツ放射のための第1反射器が、第1送信機と反対側の対象物の側に配置されること、及び/又は、第2送信機によって放射されたテラヘルツ放射のための第2反射器が、第2送信機と反対側の対象物の側に配置されることが提供可能である。反射器のために、テラヘルツ放射は、放射が対象物を通過した後、再び対象物を通過した後にそれぞれの受信機、特にそれぞれの送信機と共に送受信機の形態で設計された受信機によって受信されるような方法で反射される。
【0022】
第2送信機及び第2受信機は、測定中に対象物を中心に回転し、及び/又は対象物の長さを横切ることができる。代替的又は追加的に、対象物の周囲に又は対象物に沿って配置された複数の第2送信機及び第2受信機が設けられることも可能である。既に説明したように、狭帯域第2測定システムは、費用対効果が高く、出費が少ない。従って、前記測定システムは、対象物を中心に迅速に回転させるか、又は、代替的に、転置させることもでき、あるいは、比較的多数の第2送信機及び第2受信機を設けることもできる。その結果、測定中に装置内を移動する対象物に対して、特に包括的なカバー、したがって測定も行われ得る。例えば、複数の第2送信機及び第2受信機が設けられる場合、これらは、静止するように配置されてもよく、十分な数があれば、測定のために対象物の表面を実質的に完全にカバーすることが可能である。また、既に説明したように、同時に回転又は横行する複数の第2送信機及び第2受信機を設けることも考えられる。直線運動、特に横断は、板状の対象物の場合、特に対象物に沿って、即ち長手方向又はむしろ搬送方向に及び/又は長手方向又はむしろ搬送方向に対して横方向に行われることがある。横断と回転を組み合わせた運動も可能であり、例えばストランド状の対象物についての螺旋運動が行われるような場合である。
【0023】
原理的には、第1送信機と第1受信機からなる第1測定システムも、上記で説明した方法で対象物に対して相対的に移動させることができる。また、複数の第1送信機と第1受信機を設けることも考えられる。対応する実施形態は、上記で説明した第2送信機及び第2受信機の場合と同様であってよい。冒頭で説明したように、この点では、それにもかかわらず、対象物の表面の被覆率が低ければ十分である。
【0024】
別の実施形態によれば、第2送信機は、斜めの入射角、すなわち特に放射の通常の入射からずれた入射角で対象物の表面にテラヘルツ放射を放出することができる。原理的には、第2送信機と第2受信機からなる第2測定システムを用いたテラヘルツ放射による対象物の測定中に、例えば対象物による反射によって、追加の信号が発生し得るという問題が生ずる。この種の追加信号は、望ましくない方法で測定結果に影響を与え、特に、対象物を通過する放射の通過による測定された遅延に影響を与える可能性がある。この種の追加信号は、原理的には、求める遅延信号のみが残るように、計算手段によってフィルタリングすることができる。この場合、対象物の寸法、特に境界面間の短い距離ではなく、追加信号の原因となる障害物(例えば境界面)と測定システム(例えば反射器)との間の距離によって定義されるテラヘルツ放射のある帯域幅が必要となる。例えば反射器と対象物との間の対応する距離を選択することにより、追加信号にもかかわらず、比較的小さな帯域幅で信頼性の高い測定が行われることも可能である。しかしながら、上述の実施形態によれば、対象物の放射面に対するビーム経路の傾斜により、対象物の境界面における反射に起因する追加信号が防止されるため、望ましくない信号が防止される。測定系に直接起因する信号を校正することができる。測定信号から不要な成分を取り除くことができるため、計算による信号のフィルタリングが不要になる。そのため、単周波の連続波(CW)動作まで、最小限の帯域幅で測定することができる。 同時に、反射器などの測定系と対象物との距離を短くすることができ、装置の設置スペースを小さくすることができる。
【0025】
既に説明したように、対象物の(絶対)寸法は、対象物の屈折率を考慮して決定することができる。原理的には、寸法変化の絶対値を決定するために、対象物の材料に対する屈折率は既知であると仮定することができる。しかし、実際には、使用目的によっては、認識できない屈折率の変化が発生する場合がある。例えば、押出成形装置で製造される物品の場合、押出成形機に供給されるプラスチック混合物の未認識の変化により発生することがある。押出成形されたプラスチックは一般に添加物を含んでおり、その添加物の数や組成が異なることがある。そのため、屈折率が一定であると仮定した場合、誤差が生じる可能性がある。
【0026】
したがって、別の実施形態によれば、第1受信機によって受信されたテラヘルツ放射から、対象物の屈折率を決定することが可能である。原則的に、屈折率は、例えば国際公開第2016/139155号(特許文献3)に記載されているように決定することができる。したがって、ビーム経路に対象物がない状態での第1送信機と第1受信機との間のテラヘルツ放射の伝播時間と、既知の壁厚でビーム経路に対象物がある状態での第1送信機と第1受信機との間の伝播時間との比較から、ストランド材料の屈折率を推測することが可能である。第1送信機と第1受信機の位置と、存在する反射器の位置だけが分かっていなければならない。
【0027】
別の実施形態によれば、第1及び/又は第2送信機によって放射されたテラヘルツ放射の、放射の通過中に対象物によって生じる位相変化から、寸法、特に対象物の寸法変化及び/又は決定された寸法又は寸法変化の絶対値を決定することが可能である。対象物によって生じる放射されたテラヘルツ放射の位相変化を評価することによって、本発明に従って寸法を特に信頼性の高い正確な方法で決定することが可能である。位相又はむしろ位相変化を明確に決定するために、特に非常に狭帯域のテラヘルツ放射を使用する場合、CW動作まで、Iチャネル及びQチャネルを評価する必要がある。このI・Q法(同相・直交法)により、高周波の搬送波信号の位相情報を確実に求めることができる。位相変化を評価することで、より正確な測定が可能になるが、原理的には、周波数測定や振幅評価も考えられる。
【0028】
別の実施形態によれば、対象物の欠陥は、特に、第2受信機によって受信されたテラヘルツ放射信号の急速な信号変化に基づいて推測され得る。特に、比較的小さい、特にテラヘルツ放射の波長以下又はほぼ等しい対象物の物質的変化は、欠陥として理解されることになる。この種の欠陥はミー散乱体として作用し、大まかな近似では、すべての方向でほぼ同じ程度に散乱する。つまり、これらの欠陥によって散乱された信号は、散乱された信号全体から見れば小さい。一般的に、わずか100mmの距離では、1%未満である。1/r2(r=距離)に比例して減少する。
【0029】
例えばテラヘルツ放射の低い帯域幅によって達成され得る、短い距離及び少ないノイズの場合、散乱信号は、直接検出され、欠陥として解釈され得る。対照的に、例えば、欠陥の直接反射の信号振幅によって欠陥を検出するための上述の文書、独国特許出願公開第102016105599号明細書(特許文献1)に示されたアプローチは、特に、反射器によって本ケースで提供され得るような反射面の存在下で、低い感度を有する。これに対して、上記でも説明した独国実用新案第202021100416号明細書(特許文献2)に記載のアプローチは、テラヘルツ放射の位相変化を追加的かつ実質的に使用し、その結果、測定の感度が著しく改善されている。
【0030】
上述の実施形態は、テラヘルツ放射信号の比較的遅い変化は対象物の寸法変化によって引き起こされ、一方、寸法変化と比較して、小さな欠陥は、回折パターンの文脈で分離されるテラヘルツ放射信号の速い変化を引き起こすという考えに基づいている。これにより、受信したテラヘルツ放射信号に基づいて、寸法変化と欠陥の区別が可能になる。規則的にコヒーレントなテラヘルツ放射信号は、欠陥において回折効果を引き起こし、ビーム光学の観点から期待される放射経路の近くに欠陥がある場合、測定された放射信号も影響を受けるようになる。従って、この種の回折パターンは、欠陥を特定するために、特に振幅と位相の両方に関して評価することができる。
【0031】
欠陥によって直接散乱されるテラヘルツ放射信号は、一般に、場所によって(あるいは、測定対象物又は送信機もしくは代替的に受信機の移動によって、時間と共に)迅速に変化する。正確な実施形態にもよるが、該テラヘルツ放射信号は、典型的には、数ミリメートルの発振長を有する。例えば、テラヘルツ周波数が120GHzで、斜め入射角が20°の送受信機を使用する場合、約3.7mmの発振長が期待できる。したがって、テラヘルツ放射信号は、例えば局所周波数解析やマッチングフィルタを用いて、より大きな寸法変化による他の信号変化から確実に区別することができる。これは特に、欠陥信号の発振長が欠陥に依存せず、したがって既知であり、したがって、測定対象物又は送信機若しくはこれに代わる受信機の移動速度が既知である場合には、欠陥に起因する信号変化の周波数が既知であるためである。これは、例えば、テラヘルツ放射信号の振幅を考慮する場合には不可能であり、したがって、欠陥に起因する信号パターンの周波数又はそれに代わる位相の評価が好ましい。
【0032】
本発明による方法は、本発明による装置を用いて実施することができる。従って、本発明による装置、特にその評価装置は、本発明による方法を実施するように設計することができる。
【0033】
以下、本発明を例示的な実施形態に基づき、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1アプリケーションシナリオにおいて本発明による方法を実施するための本発明によるデバイスを示す。
図2】第2アプリケーションシナリオにおける図1のデバイスを示す。
図3】本発明による欠陥検出を説明するためのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図中、特に断りのない限り、同じ参照符号は同じものを指している。
【0036】
図1に示す装置は、テラヘルツ放射のための第1送信機10と、第1送信機10によって放射されたテラヘルツ放射のための第1受信機10とを備える第1送受信機10を備える。また、テラヘルツ放射用の第2送信機12と、第2送信機12が放射するテラヘルツ放射を受信するための第2受信機12とからなる第2送受信機12を備えて構成されている。第2送信機12は、テラヘルツ放射の搬送周波数の5%未満の帯域幅を有するテラヘルツ放射を放射し、それに応じて第2受信機12によって受信される。対照的に、第1送信機10は、より大きな帯域幅を有するテラヘルツ放射、特に、テラヘルツ放射のキャリア周波数の10%を超える、好ましくは20%を超える帯域幅を有するテラヘルツ放射を放射し、それは、第1受信機10によってそれに応じて受信される。
【0037】
図1では、測定すべきパイプ18の2つの対向する壁部14、16が高度に概略的に示されており、当該パイプは、例えばプラスチックパイプであり、特に押出装置から出るプラスチックパイプ18である。パイプ18は、図1の矢印20によって示されるように、装置内をその長手軸に沿って搬送されることがある。図1では、パイプ18の小さな部分のみが示されていることを理解されたい。さらに、第1送受信機10には、第1送受信機10に対向するパイプ18の側に配置される第1反射器22が割り当てられている。従って、第2送受信機12には、第2送受信機12に対向するパイプ18の側面に配置される第2反射器24が割り当てられている。さらに、この装置は、評価装置26を備えており、この評価装置26は、送受信機10,12、特に送受信機10,12の送信機10,12及び受信機10,12に接続されており、評価装置26によってこれらを制御することができ、特に受信機10,12の測定データを評価装置に転送して評価することができるようになっている。この目的のために、送受信機10、12は、適切な信号線及び制御線を介して評価装置26に接続される。
【0038】
テラヘルツ放射は、パイプ18を測定するために、第1送信機10によってパイプ18に放射され、ここで、テラヘルツ放射は、パイプ18を通過した後に反射器22によって反射され、パイプ18をもう一度通過した後に第1送信機10に戻ってきて、第1受信機10によって測定信号として受信されるようにする。これを図1では、ビーム経路28で示す。その際、テラヘルツ放射は、パイプ18の境界面で反射される。第1受信機10の測定信号は評価装置26に転送され、評価装置26は、例えば伝搬時間測定を使用して、パイプ18の材料の屈折率を考慮して境界面で反射された放射信号からパイプ18の絶対寸法データ、例えば壁部14、16の壁厚を決定する。屈折率は、パイプ18について既知であると仮定することができ、又は、上記で説明した方法で評価装置26によって決定することができる。第1送受信機10は、静止するように配置され、一定の時間間隔で測定のためのテラヘルツ放射を放射してもよい。
【0039】
この測定プロセスの間、より低い帯域幅のテラヘルツ放射も第2送信機12からパイプ18に放射され、このテラヘルツ放射はパイプ18を通過した後に第2反射器24で反射され、もう一度パイプ18を通過して第2送信機12に戻ってきて第2受信機12で測定信号として受信される。これを図1では、ビーム経路30で説明している。図1から分かるように、テラヘルツ放射は、パイプ18の表面に斜めに入射するように放射される。テラヘルツ放射は、例えば図1に32で示すように、パイプの境界面で屈折及び反射される。しかし、テラヘルツ放射の入射角度が斜めであるため、これらの反射信号は、第2送受信機12には戻ってこず、したがって第2受信機12にも戻ってこない。したがって、実質的にパイプ18を通過する放射成分のみが、第2受信機12によって検出及び測定される。測定信号は、今度は、評価装置26に送信され、評価装置26は、パイプ18によって生じるテラヘルツ放射の遅延に基づいて、パイプ18の時間的及び/又は空間的な寸法変化を決定する。寸法変化を決定するために、特に、パイプ18によって生じるテラヘルツ放射の位相変化が決定される。寸法変化を時間的及び/又は空間的に検出するために、テラヘルツ放射は、複数の時点で第2送信機12によって放射され、パイプ18が長手方向に搬送されることにより、パイプ18の表面上の複数の場所に放射される。第2送受信機12は、パイプ18の周縁の測定を実行するために、測定中にパイプ18について回転することができる。しかし、パイプ18の円周上に分散するように複数の第2送受信機12を配置することも考えられるだろう。
【0040】
評価装置26は、第1及び2受信機10,12の測定信号を相関させ、そこからパイプ18の決定された寸法変化の絶対値を決定する。本実施例では、測定された寸法データ又はむしろ寸法変化は、厚さデータ又はむしろ厚さの変化である。
【0041】
図2は、板状の対象物34の測定に基づく図1からの装置を示す。板状の対象物34は、今度は、例えば、方向20に装置を通して搬送することができる。測定及び評価は、図1に関して説明したのと実質的に同じ方法で行われる。しかしながら、図1とは異なり、図2の測定信号は、板状の対象物34に関する明確な寸法データ、特に厚さデータを提供するが、図1では、決定された寸法データ、特に厚さデータは、両方の管壁14、16に関する全体的なデータである。図2において、例えば、複数の第2送受信器12が搬送方向20に対して横方向に、すなわち図2における描画面内に1つずつ隣り合って配置され、又は第2送受信器12が測定中にこの方向にトラバースすることが考えられる。このようにして、例えば、測定は、板状の対象物18、34の実質的に全幅にわたって行われ得る。
【0042】
図1及び図2に示す両方のアプリケーションシナリオにおいて、特に、第2受信機12によって受信されたテラヘルツ放射信号の急速な信号変化に基づいて対象物18、34の欠陥を推測することによって、測定される対象物18、34の欠陥の検出は依然として可能である。
【0043】
これについては、図3に基づいてより詳細に説明する。ここでは、3つの異なる欠陥サイズ(誤差サイズ)について、第2受信機12の対応する測定信号が示されており、X軸には、それぞれのケースでミリメートル単位の欠陥の位置が指定されている。図3では、Iチャネル、Qチャネル、及び振幅の測定信号が、任意の単位で他の上に1つずつプロットされている。第2送信機12は、CW動作時に、2.5mmの波長を有するテラヘルツ放射を放出した。グラフの比較から、欠陥での散乱によって生じる測定信号は、特にI及びQ法による位相評価の際に、方位及び距離に加えて、欠陥のサイズ及び形状に関する情報を提供する特徴的な信号形状を生じることが明らかである。図3の下段に示すように、純粋に振幅だけを考慮すると、よりシンプルな信号形状になるが、特にさらなる外乱がある場合には、検出が難しくなる。
【符号の説明】
【0044】
0 送受信機、第1送信機、第1受信機
12 送受信機、第2送信機、第2受信機
14 パイプの壁
16 パイプの壁
18 パイプ、対象物
20 搬送方向
22 第1反射器
24 第2反射器
26 評価装置
28 ビーム経路
30 ビーム経路
32 ビーム経路
34 対象物
図1
図2
図3