(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】皮膚表面温度の測定を介してプレコンディショニングと光熱標的治療の自動トリガリングとをインテグレートした光熱標的治療システム及び関連方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61N5/067
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023027134
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2020568331の分割
【原出願日】2019-06-10
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518153047
【氏名又は名称】クアンタ システム ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスキナ チェザーレ プリニオ
(72)【発明者】
【氏名】タリアフェッリ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】タンゲッティ エミール エー.
(72)【発明者】
【氏名】カンノーネ ファービオ
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0222853(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010603(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0137995(US,A1)
【文献】特表2001-514057(JP,A)
【文献】国際公開第2018/076011(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮に埋め込まれた標的を損傷するための光熱標的治療システムの制御装置であって、前記光熱標的治療システムがレーザーを含み、
前記制御装置が、1)前記レーザーが発する一連のレーザーパルスに対するパラメーターセットを定義することであって、前記パラメーターセットが、あらかじめ設定されたパワーレベルと、あらかじめ設定されたパルス長と、あらかじめ設定されたパルスインターバルと、レーザーパルスの数と、を含む、定義をすることと、2)定義された前記パラメーターセットに応じて前記一連のレーザーパルスを発生することと、3)治療ブロックの2×1以上のマトリックスを含むあらかじめ設定された領域にわたるレーザーパルスの適用と、前記治療ブロックのそれぞれに複数のレーザーパルスを適用する適用手順とを含む治療プロトコルに従って前記表皮に前記一連のレーザーパルスを施すことと、4)前記レーザーをオン/オフすることとを制御し、
前記レーザーが、前記あらかじめ設定されたパルスインターバルで一連のレーザーパルスを放出するように設定され、
前記制御装置が、
前記あらかじめ設定された領域の全体において、前記表皮を冷却する冷却手段を施すことと、
前記表皮の表面温度をモニターすることと、
前記表皮の表面温度があらかじめ設定された閾値に達するときに前記治療プロトコルを自動開始することと、
を制御し、
前記制御装置が、
治療領域に前記治療プロトコルを施す間、前記表皮の温度をモニターすることと、
前記パルスインターバルの間に前記表皮の温度があらかじめ設定された前記表皮の損傷閾値未満であるか否かを判断し、前記損傷閾値未満であると判断された場合に、前記
レーザーをオンとすることと、
前記表皮の表面温度が前記損傷閾値に達したと判断されたときに前記治療プロトコルを自動終了することと、
を制御する、制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記パルスインターバルの間に前記マトリックスのうちの異なる治療ブロックにレーザーの照準を移動する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記
表皮に前記一連の
レーザーパルスを施す前及び施しつつ、前記
表皮を冷却することをさらに含む、請求項1に記載の
制御装置。
【請求項4】
前記一連の
レーザーパルスを施すことが、前記
表皮の温度が前記
表皮の損傷閾値未満になるように且つ前記標的が前記標的の損傷閾値超の温度に加熱されるように前記一連の
レーザーパルスを適用することを含む、請求項
3に記載の
制御装置。
【請求項5】
前記一連の
レーザーパルスを施すことが、前記標的を55℃超の温度に加熱しつつ前記
表皮の温度を55℃未満に上昇させることを含む、請求項
3に記載の
制御装置。
【請求項6】
前記一連の
レーザーパルスが前記
表皮に施されるときの前記
表皮の温度をモニターすることをさらに含む、請求項
3に記載の
制御装置。
【請求項7】
前記あらかじめ設定された閾値に達する前記
表皮の表面温度に応答して光熱治療プロトコルを自動開始することが、ユーザーによる手動入力なしで実施される、請求項1に記載の
制御装置。
【請求項8】
前記治療プロトコルを自動終了することが、ユーザーによる手動入力なしで実施される、請求項1に記載の
制御装置。
【請求項9】
前記あらかじめ設定されたパルス長が25ミリ秒間~200ミリ秒/パルスの範囲内である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記あらかじめ設定されたパルスインターバルが0.5秒間~2.5秒間の範囲内である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光熱標的治療に関し、より具体的には、媒体に埋め込まれた特定のクロモフォア又は特定のクロモフォアを含有する対象を標的とする光誘起熱治療のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に埋め込まれたクロモフォアやクロモフォアを含有する対象などの標的は、レーザーなどの光源で標的を加熱することにより熱損傷を起こしうる。たとえば、真皮に埋め込まれた皮脂を含有する脂腺は、皮脂自体又は皮脂を含有する脂腺が損傷するまでレーザーで皮脂を加熱することにより熱損傷を起こしうる。しかしながら、標的を損傷するのに十分な熱エネルギーを適用すると周囲の真皮及び上を覆う表皮もまた損傷し、表皮及び真皮の損傷のほか患者の疼痛をもたらしうる。
【0003】
表皮及び真皮の損傷のほか患者の疼痛を予防する以前のアプローチは、以下のことを含む。
【0004】
1.表皮を予冷し、次いで光熱治療を適用すること。
【0005】
2.表皮を予冷し、さらに予熱プロトコルで表皮及び真皮をプレコンディショニング(すなわち予熱)し、次いで個別の治療プロトコルで光熱治療を適用すること。ある特定の場合には、予熱プロトコル及び治療プロトコルは、同一レーザーにより実施されるが、2つのプロトコルは、異なるレーザー設定及び適用プロトコルを含むため、治療プロトコル及び装置がさらに複雑になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の実施形態によれば、媒体に埋め込まれた標的を損傷するための光熱標的治療システムは、コントローラーと、光源を含む光熱治療ユニットと、を含む。コントローラーは、治療プロトコルを施すように構成され、且つ治療プロトコルは、あらかじめ設定されたパワー設定及びあらかじめ設定されたパルスタイミング設定で光源を用いて施される。
【0007】
他の一実施形態では、治療プロトコルは、媒体及び標的を予熱するためのプレコンディショニング手順と、光熱治療手順と、を含む。プレコンディショニング手順及び光熱治療手順は両方とも、プレコンディショニング手順と光熱治療手順との間の、あらかじめ設定されたパワー設定及びあらかじめ設定されたパルスタイミング設定を変化させることなく、光源を用いて施される。さらなる実施形態では、プレコンディショニング手順は、光熱手順よりも長い持続時間を要する。
【0008】
さらに他の一実施形態では、システムは冷却ユニットを含み、且つ治療プロトコルは、治療プロトコルの前及びその間に冷却手順をさらに含む。そのうえさらに他の一実施形態では、プレコンディショニング手順及び光熱治療手順の両方で、光源は、あらかじめ設定されたパワーレベル、あらかじめ設定されたパルス長、及びあらかじめ設定されたパルスインターバルで一連の光パルスを放出するように設定される。
【0009】
そのうえさらに他の一実施形態では、プレコンディショニング手順及び光熱治療手順は、あらかじめ設定された領域にわたるスキャン方式による光パルスの適用を含む。典型的実施形態では、あらかじめ設定された領域は、5ミリメートル×5ミリメートルの治療ブロックの2×2マトリックスである。
【0010】
さらなる実施形態では、プレコンディショニング手順及び光熱治療手順の間、媒体中の温度は、媒体の変性及び損傷の閾値未満であり、且つ標的は、標的の損傷閾値よりも高い温度に加熱される。典型的実施形態では、媒体(たとえば表皮)の温度は、55℃未満であり、且つ標的は、55℃超の温度に加熱される。他の一実施形態では、媒体の温度は、患者の治療領域の位置に応じて調整される。
【0011】
他の一実施形態では、媒体に埋め込まれた標的を損傷するための光熱標的治療システムの使用方法が開示される。システムは光源を含む。本方法は、光源が発する一連の光パルスに対するパラメーターセットを定義することを含み、パラメーターセットは、あらかじめ設定されたパワーレベルと、あらかじめ設定されたパルス長と、あらかじめ設定されたパルスインターバルと、光パルスの数と、を含む。本方法はまた、定義されたパラメーターセットに応じて一連の光パルスを発生することと、一連の光パルスを媒体に施すことと、を含む。
【0012】
そのうえさらに他の一実施形態では、本方法は、治療プロトコルを施しつつ媒体を冷却することをさらに含む。さらに、他の一実施形態では、一連の光パルスを適用することは、治療ブロックの2×1以上のマトリックスとしてあらかじめ設定された領域を定義することを含む。典型的実施形態では、一連の光パルスを適用することは、5ミリメートル×5ミリメートルの治療ブロックの2×2マトリックスとしてあらかじめ設定された領域を定義することを含む。
【0013】
さらなる実施形態では、一連の光パルスを施すことは、媒体の温度が媒体の変性及び損傷の閾値未満になるように一連の光パルスを適用することを含み、且つ標的は、標的の損傷閾値超の温度に加熱される。典型的実施形態では、一連の光パルスを施すことは、標的を55℃超の温度に加熱しつつ媒体(たとえば表皮)の温度を55℃未満に上昇させることを含む。
【0014】
本明細書に記載の実施形態によれば、光熱標的治療システムを用いた治療プロトコルの自動開始方法が記載される。本方法は、治療位置に冷却機構を施すことと、治療位置の皮膚表面温度をモニターすることと、皮膚表面温度があらかじめ設定された閾値に達するときに治療プロトコルを自動開始することと、を含む。
【0015】
さらなる実施形態では、治療プロトコルは、ユーザーによるいかなる手動入力も用いることなく開始される。
【0016】
他の一実施形態によれば、光熱標的治療システムを用いた治療プロトコルの自動終了方法が記載される。本方法は、治療領域に治療プロトコルを施す間、治療位置の皮膚表面温度をモニターすることと、皮膚表面温度があらかじめ設定された閾値に達するときに治療プロトコルを自動終了することと、を含む。
【0017】
さらなる実施形態によれば、治療プロトコルは、ユーザーによるいかなる手動入力も用いることなく終了される。
【0018】
提案する実施形態の追加及び各種の修正形態は、これ以降に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ある実施形態に係る典型的光熱標的治療システムを例示する。
【
図2】ある実施形態に係る光熱標的治療システムに使用される典型的スキャナー配置を例示する。
【
図3】ある実施形態に係る典型的治療マトリックス配置を例示する。
【
図4】ある実施形態に係る治療プロトコル又はインテグレートされたプレコンディショニング/光治療プロトコルに使用するのに好適な典型的光パルスセットの模式図を示す。
【
図5】ある実施形態に係る治療光パルスを適用したときの標的脂腺の推定温度を時間の関数として示す。
【
図6】ある実施形態に係る治療プロトコルの間の皮膚表面の測定温度を時間の関数として示す。
【
図7】治療プロトコルの冷却部分の間の測定皮膚表面温度を解析し、次いでそれに応じて治療プロトコルを開始するための典型的プロセスを例示するフローチャートを示す。
【
図8】治療プロトコルの間の測定皮膚表面温度の解析を継続し、次いでそれに応じて治療プロトコルを終了するための典型的プロセスを例示するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態は、本発明の実施形態が示される添付の図面を参照してより十分にこれ以降に記載される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化しうるので、本明細書に示される実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底して完全なものとなるように且つ本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。図面では、層及び領域のサイズ及び相対サイズは、明確さを期して誇張されることもある。全体を通して、同じ数字は同じエレメントを意味する。
【0021】
各種エレメント、コンポーネント、領域、層、及び/又はセクションを記述するために、第1、第2、第3などという用語が本明細書で用いられることもあるが、これらのエレメント、コンポーネント、領域、層、及び/又はセクションは、これらの用語により限定されるべきものではないことが理解されたい。これらの用語は、1つのエレメント、コンポーネント、領域、層、又はセクションを他の1つの領域、層、又はセクションから識別するためにのみを用いられる。そのため、以下で考察される第1のエレメント、コンポーネント、領域、層、又はセクションは、本発明の教示から逸脱することなく、第2のエレメント、コンポーネント、領域、層、又はセクションと称しうる。
【0022】
図に例示される1つのエレメント又はフィーチャーと他の1つのエレメント又はフィーチャーとの関係を記述する説明を容易にするために、「真下」、「下方」、「下側」、「下」、「上方」、「上側」などの空間的相対語が本明細書で用いられることもある。空間的相対語は、図に示されるオリエンテーションに加えて使用時又は操作時のデバイスのさまざまなオリエンテーションを包含するように意図されることが理解されたい。たとえば、図のデバイスが反転される場合、他のエレメント又はフィーチャーの「下方」又は「真下」又は「下」として記述されるエレメントは、他のエレメント又はフィーチャーの「上方」にオリエントされるであろう。そのため、「下方」及び「下」という典型的用語は、上方及び下方の両方のオリエンテーションを包含しうる。デバイスは、他の形でオリエント(90度又は他のオリエンテーションで回転)されうるとともに、本明細書で用いられる空間的相対記述子は、それに応じて解釈される。そのほか、層が2層「間」にあるという場合、それは2層間の唯一の層でありうるか又は1つ以上の介在層も存在しうることもまた、理解されたい。
【0023】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈上明確に示されてない限り、複数形も同様に含むことが意図される。「comprises(~を含む)」及び/又は「comprising(~を含む)」という用語は、本明細書で用いられる場合、明記されたフィーチャー、整数、工程、操作、エレメント、及び/又はコンポーネントの存在を特定するが、1つ以上の他のフィーチャー、整数、工程、操作、エレメント、コンポーネント、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を妨げるものではないことが、さらに理解されたい。本明細書で用いられる場合、「and/or(及び/又は)」という用語は、関連する列挙されたアイテムの1つ以上をあらゆる組合せで含み、「/」と略記されることもある。
【0024】
エレメント又は層が他のエレメント又は層「の上にある」、「に接続される」、「に結合される」、又は「に近接する」という場合、それは他のエレメント又は層の直接上にありうるか、それに直接接続、結合、又は近接しうるか、或いは介在するエレメント又は層が存在しうることが理解されたい。これとは対照的に、エレメントが他のエレメント又は層「の直接上にある」、「に直接接続される」、「に直接結合される」、又は「に直接近接する」という場合、介在するエレメント又は層は存在しない。同様に、光が1つのエレメント「から」受け取られるか又は提供される場合、それはそのエレメントから直接又は介在するエレメントから受け取られうるか又は提供されうる。一方、光が1つのエレメント「から直接」受け取られるか又は提供される場合、介在するエレメントは存在しない。
【0025】
本発明の実施形態は、本発明の理想的実施形態(及び中間構造)の模式的例示である断面の例示を参照して本明細書に記載される。したがって、たとえば製造技術及び/又は許容度の結果として、例示の形状からの変動が予想される。そのため、本発明の実施形態は、本明細書に例示される領域の特定形状に限定されるものと解釈すべきではなく、たとえば製造から生じる形状の偏りを含む。それゆえ、図に例示される領域は、本質的に模式的なものであり、その形状は、デバイスの領域の実際の形状を例示することが意図されるものではなく、且つ本発明の範囲を限定することが意図されるものではない。
【0026】
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる用語(科学技術用語を含む)はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義されるような用語は、関連技術及び/又は本明細書との関連でのその意味に一致する意味を有するものと解釈すべきであり、とくに本明細書に明示的に定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味に解釈されないことが、さらに理解されたい。
【0027】
図1は、媒体に埋め込まれた特定のクロモフォアやクロモフォアを含有する対象などの標的を損傷するための及び周囲の媒体に損傷を与えることなく標的を損傷するように十分に高い温度に標的を加熱するための典型的光熱標的治療システムを示す。システムは、たとえば、標的脂腺の周囲の表皮及び真皮を損なうことなく、クロモフォアとして皮脂を含有する脂腺の光熱アブレーションを標的化方式で行うために使用可能である。
【0028】
図1をさらに参照すると、光熱標的治療システム100は、冷却ユニット110と光治療ユニット120とを含む。冷却ユニット110は、治療領域すなわち標的脂腺を覆う外側皮膚層領域に接触や直接空気冷却などにより冷却効果用の冷却手段を提供する。冷却ユニット110は、光治療ユニット120内のコントローラー122に接続される。コントローラー122は、
図1では光治療ユニット120内に含有されて示されるが、コントローラーは、冷却ユニット110及び光治療ユニット120の両方の外側さらには冷却ユニット110内に設けてもよいことに留意されたい。
【0029】
コントローラー122は、光治療ユニット120内の他のコンポーネント、たとえば、レーザー124、ディスプレイ126、温度モニタリングユニット128、フットスイッチ130、ドアインターロック132、及び非常オン/オフスイッチをさらに制御する。レーザー124は、光治療プロトコル用のレーザーパワーを提供し、コントローラー122は、レーザー用の特定の設定、たとえば、出力パワー及びパルス時間の設定を調節する。レーザー124は、単一レーザー又は2つ以上のレーザーの組合せでありうる。2つ以上のレーザーを使用する場合、レーザー出力は、1つのより強力なレーザーとして機能するように光学的に組み合わされる。ディスプレイ126は、冷却ユニット110、レーザー124の動作状態、他のシステム状態などの情報を含みうる。温度モニタリングユニット128は、たとえば、治療領域の皮膚表面の温度をモニターするために使用され、治療領域の測定皮膚表面温度は、光治療プロトコルを調整するためにコントローラー122により使用される。コントローラー122はまた、レーザー124及び/又は冷却ユニット110をリモートでオン又はオフにするためのフットスイッチ130にインターフェイスする。そのほか、治療室へのドアが半開の場合、ドアインターロック132が状態を検出して、光治療ユニット120又は少なくともレーザー124を動作させないようにコントローラー122に指示するために、追加の安全対策としてドアインターロック132を使用可能である。さらに、非常の場合に光熱標的治療システム100を迅速に停止するために、非常オン/オフスイッチ134を提供可能である。他の一修正形態では、レーザー124から発せられるエネルギーのパワーレベルをモニターするために、さらなるフォトダイオード又は他のセンサーを追加可能である。
【0030】
図1への参照を継続して、光熱標的治療システム100は、患者に治療プロトコルを適用する際にユーザーの手で保持されるデバイスの一部分であるハンドヘルドスキャナー160をさらに含む。スキャナー160は、たとえば、ユーザーが保持しやすいようにガン様又はスティック様の形状で形成可能である。スキャナー160は、スキャナー160を用いて冷却プロトコルを適用できるように、冷却接続162を介して冷却ユニット110に接続される。そのほか、レーザー124からの出力は、スキャナー160を用いて光治療プロトコルを適用できるように、光ファイバー送達164を介してスキャナー160に接続される。任意選択的に、スキャナー160は、たとえば、コントローラー122に治療領域の皮膚温度をフィードバックするために、温度接続166を介して温度モニタリングユニット128に接続される。
【0031】
図1に例示される典型的実施形態では、光熱標的治療システム100の光治療ユニット120は、治療領域のプレコンディショニングさらには標的脂腺の光治療の両方に使用される単一設定で光エネルギーを提供する。すなわち、プレコンディショニングに最適化された光エネルギーの適用と、続いて光治療に最適化された異なる光適用と、を逐次提供するのではなく、光治療ユニット120は、光エネルギー設定を変化させることなく単一連続適用プロトコルでプレコンディショニングと光治療との両方に使用される光エネルギーを提供する。このインテグレートされたプロトコルは、光治療を適用する際に時間及び複雑性を削減する。
【0032】
図2は、ある実施形態に係るスキャナー160のさらなる詳細を示す。冷却接続162は、治療領域に冷却手段(たとえば冷空気ストリーム)を送達するように構成された冷却送達ユニット202に接続される。レーザー124からの光ファイバー送達164は、光熱治療プロトコル用の光エネルギーを治療領域に送達するために光学コンポーネントを含むレーザーエネルギー送達ユニット204に接続される。最後に、温度接続166は、コントローラー122へのフィードバックのために治療領域の温度を測定する温度センサー206に接続される。そのほか、スキャナー160は、オン/オフスイッチ210(たとえば、レーザー124をオン/オフするトリガースイッチ)と、任意選択的にレーザーが動作している場合などにスキャナー160の動作状態を表す状態インジケーター212と、を含む。スキャナー160は、
図2にボックスとして模式的に示されるが、実際の形状は、使用しやすいように構成される。たとえば、スキャナー160は、ユーザーによる照準合せ及び制御がしやすいように、ハンドル、ハンドガン形状、又は他の好適な形状を有するノズルとして造形可能である。
【0033】
ある実施形態に係る典型的方法では、冷却プロトコルは全治療領域に適用される。冷却プロトコルは、たとえば、10秒間などの規定の時間にわたる治療領域を横切る冷空気ストリームの適用を含みうる。冷却後、冷却手段(たとえば冷空気ストリーム)はアクティブ状態を維持し、光治療プロトコルは治療領域に適用される。一実施形態では、治療領域内のセグメントにレーザーパルスを逐次適用するために、正方形「フラットトップ」ビームのパルスがスキャナー装置との組合せで使用される。ある実施形態によれば、光治療プロトコルは、治療領域のセグメントの各々への設定数の光パルスの適用を含み、異なるセグメントにレーザーパルスを逐次適用する。他の一実施形態では、レーザーパルスは、ランダムな順序でセグメントに適用される。
【0034】
典型的使用シナリオでは、治療される脂腺を覆う全治療領域が冷却される。仮想グリッド構成は、
図3に示されるように治療領域にわたり設けられる。典型的グリッド構成300は、3×4マトリックスで配置された12ブロックを含む。多くの他のグリッド構成、たとえば、1×1、2×1、2×2などが可能である。示される例では、治療領域は、ブロック310、312、324、及び326(それぞれ5、6、8、及び9と番号付けされる)を含む2×2ブロックとして定義される。
【0035】
ある実施形態に係る典型的方法では、冷却プロトコルは、グリッド構成300で全治療領域(すなわち、ブロック310、312、324、及び326)に適用される。冷却プロトコルは、たとえば、10秒間などの規定の時間にわたる治療領域を横切る冷空気ストリームの適用を含みうる。冷却後、冷却手段(たとえば冷空気ストリーム)はアクティブ状態を維持し、プレコンディショニング及び光治療プロトコルは治療領域に適用される。一実施形態では、ブロック310、312、324、及び326にレーザーパルスを逐次適用するために、正方形「フラットトップ」ビームのパルスがスキャナー装置との組合せで使用される。ある実施形態によれば、インテグレートされたプレコンディショニング/光治療プロトコルは、治療領域のブロックの各々への設定数の光パルスの適用を含み、ブロックに逐次パルスする。他の一実施形態では、ブロックは、ランダムな順序でパルスされる。
【0036】
治療プロトコル又はインテグレートされたプレコンディショニング/光治療プロトコルに好適なパルスセットの例は、ある実施形態に従って
図4に例示される。シーケンス400は、治療領域内のブロックの1つに適用される光パルス422、424、426、428、430、432、及び434を含む。一実施形態では、7つの光パルスはすべて、等しいパワーであり、均一パルス分離(両矢印442により表される)により分離され、且つ同一パルス持続時間(ギャップ444により表される)を有する。一例では、パルス持続時間444は150ミリ秒間であり、且つパルス分離は2秒間である。2秒間のパルス分離は、損傷を予防するためにブロックの表皮及び真皮を冷却させることが意図される。パルス分離時間の間、レーザー使用効率を増加させるために治療領域内の異なるブロックにわたりレーザーをスキャン可能である。
図4は原寸通り描かれていないことに留意されたい。レーザーパルスの他の構成も可能であり、たとえば、複数のパルスにわたりパワーを徐々に増加させたり、又は複数のパルスにわたりレーザーパルスパラメーター(たとえば、パルス持続時間、パルス分離、及び/又はピークパワー)を変動させたりできる。短いパルス持続時間を維持したまま、皮膚組織に堆積される同一平均エネルギーを達成するさまざまな他のパルストレインが存在するものと認識される。
【0037】
図5は、
図4に示されるような光パルスをある実施形態に従って適用したときの治療領域の皮膚表面の推定温度を示す。
図5に示される例では、治療領域は、直接空気冷却により7秒間冷却され、次いで冷却を維持したまま、22ワットのパワー及び150ミリ秒間の持続時間で1726nm波長レーザーから光パルスが2秒間適用された。この特定例では、冷却用に及び治療プロトコルの間に使用される直接空気冷却は、-22℃に冷却されたハイスピード空気柱を送達し、皮膚と空気との間に約350W/m
2・Kの熱伝達係数をもたらす。
【0038】
ビームサイズは、ある実施形態では4.9mm
2である。厳密なビームサイズは、治療領域のサイズ、レーザーのパワープロファイル、身体の治療領域の位置、及び他の因子に依存して、たとえばコリメーション光学素子を用いて調整可能である。さらに、1領域当たりの平均レーザーパワーは、冷却システムにより達成される熱除去とのバランスをとるべきである。得られる測定皮膚表面温度変化は、グラフ500に示され、この場合、ピーク522は、
図4に示される適用光パルス422に対応し、ピーク424、426、428、及び430に対しても同様である。
【0039】
長いパルス持続時間は、温度ピークを拡散により軟化させる可能性があるので、パルス持続時間は、脂腺などの標的の温度の急上昇を可能にするように十分に短くすべきである。短いパルス持続時間を維持したまま、皮膚組織に堆積される同一平均エネルギーを達成するさまざまな他のパルストレインが存在するものと認識される。
図5に示される例では、1スポット当たりの平均パワーは、22W×0.15s/2s=1.65Wである。1スポット当たりの同一平均パワーは、たとえば、2sのパルス分離で33ワットを100msパルスすることにより、又は1.9sのパルス分離で25.1Wを125msパルスすることにより、達成可能である。さらに、1領域当たりの平均レーザーパワーは、冷却システムにより達成される熱除去とのバランスをとるべきである。
【0040】
図4及び5を引き続き参照して、標的の温度がピーク522の約40℃からピーク528の約57℃まで上昇するので、光パルス422、424、426、及び428は、本質的にプレコンディショニング効果をもたらすことが分かる。そのため、パルス434は、クロモフォアを含有する標的(すなわち、皮脂を含有する脂腺)の損傷閾値超の約61℃の温度をピーク534でもたらす。こうして、同一特性を有する光パルスを単に繰返し適用するだけで、プレコンディショニング及び光治療プロトコルは、効果的にインテグレートされるので、光治療システム及びプロトコルと異なる個別のプレコンディショニングシステム及びプロトコルの必要性を排除する。
【0041】
また、プレコンディショニング目的で適用される光パルスの数は、光治療を行う光パルスの数よりもわずかに大きいことに留意されたい。この特性は、既存の光熱標的治療システムとは逆である。というのは、既存のシステムでは、治療の間の疼痛管理上、冷却効果とプレコンディショニング効果とのバランスをとることが難しいため、プレコンディショニングに要する時間を最小限に抑えるように試みられているからである。本明細書に記載のシステム及び方法は、プレコンディショニングに対して光治療に対するのと同一の光パルス設定を使用するので、プレコンディショニング時間を最小限に抑えるという問題を排除する。
【0042】
患者の不快感の減少を伴う特定の標的の光熱治療の成功は、1)表皮を損なわないこと、すなわち、表皮のピーク温度値が約55℃未満であることと、2)真皮を損なわないこと、すなわち、治療パルスの平均パワーと冷却システムの熱除去とのバランスをとることにより真皮の過熱を回避することと、3)標的の選択的加熱、たとえば、脂腺治療では55℃超のピーク温度と、を含みうる。そのほか、冷却フェーズの間、治療領域を過冷却することは、表皮への冷損傷(たとえば凍傷)を予防するために回避すべきである。
【0043】
光熱治療プロトコルの間に適用されるパルスの数は、冷却の有効性、レーザーパワー、パルス幅、パルス周波数などの変数に依存して、2パルス~約100パルスの範囲内でありうることに留意されたい。
【0044】
代替的に、ラスタースキャニングプロセスは、特定ブロックにレーザーパルスを適用してから他のレーザーパルスを適用するために他のブロックにレーザーを移動させるのではなく、治療領域を横切って連続波レーザービームをスキャンするために使用可能である。ラスタースキャニングを用いるこの場合には、脂腺などの標的の温度上昇は、脂腺のサイズとビームのスピードとの畳込みとして計算可能である。
【0045】
表皮や真皮の厚さなどの組織パラメーターは、年齢、性別、民族性、pH、含油率、水和などの因子により個体間でさらには異なる皮膚位置間で変動することは、文献で公知である。たとえば、前頭部は、同一個体でさえも後頭部とは異なる組織の性質を有するので、異なる治療位置では異なる治療パラメーターの設定が必要となる。既存の治療プロトコルは、「1つの治療がすべてに当てはまる」タイプのアプローチに基づいているが、特定の治療プロトコルを決定する際の組織の性質のかかる変動は、レーザーベースの座瘡治療の有効性にかなりの影響を及ぼす可能性がある。そのほか、製造変動性及び動作状態に起因して特定のレーザーシステム間で厳密なレーザーパワー、スポットサイズ、冷却能力などが変動するおそれがある。特定の機械のレーザーパワー出力の変動さらには周囲の湿度や温度などの治療条件の変動に起因しうる治療変動を軽減することは、より均一な治療結果を達成するのに役立つ。言い換えると、光熱治療の間の変動性を低減すれば、安全性が向上し且つ効能が増加する。
【0046】
一態様では、光熱治療プロトコルの開始時の皮膚表面温度のいかなる変動も、標的へのレーザーパルスエネルギーの熱転写に影響を及ぼす。たとえば、
図6では、示される治療プロトコルは、第1のレーザーパルスを適用したときに皮膚表面を約-7℃に冷却したが、皮膚がより冷たいか又はより温かい場合、初期ピーク(すなわちピーク624)は、異なる温度に達して、後続のレーザーパルス適用の間の全温度上昇に影響を及したであろう。
【0047】
既存の光熱治療システムでは、冷却手順があらかじめ設定された時間にわたる冷却手段(たとえば、冷空気又は冷却表面)の適用を含むので、光熱治療プロトコルの開始時の皮膚表面温度のこの変動は不可避である。例として、ある特定の秒数にわたり光熱治療システムにより治療領域に冷空気のストリームを適用するようにユーザーに指示し、次いでレーザーパルスの適用を含む光熱治療プロトコルを開始するようにユーザーに促す。しかしながら、このプロセスは、光熱治療システムの性能さらには治療領域の皮膚表面の熱係数の変動の可能性を考慮していないので、治療効能の変動性は不可避となる。
【0048】
ある実施形態では、治療の実施方法は、冷却の間に皮膚表面温度をモニターすることと、閾値皮膚表面温度に達するときにユーザー介入なしにプレコンディショニング及び光熱治療プロトコルを自動トリガーすることと、を含む。
【0049】
この冷却モニタリング及び自動治療プロトコルトリガリングは、たとえば、患者に治療を適用するために医療専門家により保持されるスキャナーに組込み可能な市販の既製の低コストセンサー(たとえば、
図2の温度センサー206を参照されたい)を用いて又は個別の市販の既製のシングル若しくはマルチピクセル熱測定デバイスを用いて温度測定を組み込むことにより、実施可能である。モニタリングプロセスは、きわめて局所的なレベルで実施して、オンザフライで治療プロトコルの初期化のタイミングを調整可能である。こうして、治療プロトコルは、冷却フェーズで表皮及び真皮の損傷閾値温度超を維持しつつ患者の快適性に適した冷却効果を提供するように特定可能である。
【0050】
図7に目を向けると、ある実施形態に係る冷却モニタリング及び光治療プロトコル自動開始の典型的プロセスを例示するフローチャートがある。
図7に示されるように、初期化工程710でシステムのパワーをオンにすることにより自動治療開始プロセス700を開始し、次いで工程712で治療領域に冷却手段を適用する。冷却手段は、たとえば冷空気ストリームでありうる。次いで、工程714で治療領域の皮膚表面温度を測定する。温度測定は、たとえばロースピード赤外線カメラ又は類似の装置を用いて実施可能である。次いで、判定716で測定皮膚表面温度が治療プロトコルの適用を開始するのに十分な程度に低いかの決定を行う(たとえば、-5℃又は他のあらかじめ設定された温度設定)。判定716の回答が否定である場合、プロセスは工程712に戻り、治療領域への冷却手段の適用を継続する。
【0051】
判定716の回答が肯定である場合、自動治療開始プロセス700を進めて、工程718でユーザーの介入なしで治療プロトコルを自動開始する。自動治療開始プロセスは工程720で終了する。
【0052】
任意選択的に、安全上の理由及び制御目的で、現在の皮膚表面温度は、さまざまな制御パラメーターに適合化された記憶閾値と比較可能である。治療領域の皮膚表面温度のモニタリングは、治療プロトコル全体を通してさらにはレーザーパルス適用の終了後に継続可能であるので、治療領域への冷却手段の適用を継続する場合、測定表皮温度がたとえば室温又は他のあらかじめ設定された治療後の温度設定に達したら、冷却手段の適用を停止可能である。
【0053】
ヒトの介入なしに治療プロトコルを自動終了する任意選択的な追加のプロセスが
図8に例示される。
図8に示されるように、自動治療終了プロセス800は、工程810から始めて光治療プロトコルを開始する。工程810は、たとえば
図7の光治療開始工程718でありうる。代替的に、自動治療終了プロセス800は、治療プロトコル開始方式にかかわらず、いずれの光治療プロトコルの使用にも適用可能である。
【0054】
図8を引き続き参照して、自動治療終了プロセス800は、工程812に進んで治療領域にレーザーパルスセットを施す。レーザーパルスセットの適用の間又はその直後、工程814で治療領域の皮膚表面温度が測定される。次いで、測定皮膚表面温度があらかじめ設定された閾値温度超であるか(すなわち熱すぎるか)否かを決定する判定816を下す。判定816の回答が肯定である場合、自動治療終了プロセスは、工程818に進んでユーザーのさらなる関与なしに光治療プロトコルを自動終了する。レーザーは工程822で無効化され、プロセスは工程830で終了する。判定816の回答が否定である場合、治療プロトコルは、続いて判定840に移り治療プロトコルが終了したかを決定する。判定840の回答が否定である場合、プロセスは、工程812に戻り、続いて治療領域に追加のレーザーパルスを施す。たとえば、治療プロトコルが特定の治療領域で8レーザーパルスの適用として定義され、且つ7レーザーパルス以下のみがそのポイントに適用された場合、皮膚表面温度が損傷閾値未満である限り、追加のレーザーパルスがトリガーされる。判定840の回答が肯定である場合、プロセスは、工程818、822、及び830に進んでさらなるユーザー介入なしに治療プロトコルを終りにする。
【0055】
図8をさらに参照すると、治療領域の過熱の可能性を軽減するために、任意選択的に工程812、814、816、818、及び/又は840を介して治療領域への冷却手段の適用を継続可能である。一例では、より大きな治療領域(たとえば、5ミリメートル×5ミリメートルの治療ブロックの2×2マトリックス)に対して、設定数のレーザーパルス(たとえば1~8の範囲内)が各治療ブロックに順に適用される。たとえば、レーザーパルスを施す工程812は、ある実施形態では第1の治療ブロックへの1レーザーパルスの適用を含む。工程814で皮膚表面温度が測定され、測定皮膚表面温度があらかじめ設定された閾値未満であり且つ光治療プロトコルが追加のパルスの適用を含む場合、プロセスは、治療領域に追加のレーザーパルスを適用する工程812に戻る。次いで、一例では、第2のレーザーパルスが第1の治療ブロックに適用されるか、又はレーザーの照準が第2の治療ブロックに移動されてそれにレーザーパルスが適用される。レーザーの照準は、各レーザーパルス後に移動可能であるか、又は連続レーザーパルスは、単一治療ブロックに適用した後、第2の治療ブロックにレーザーの照準を合わせることが可能である。たとえば、レーザーパルス適用間に2秒間までの時間遅延が存在する場合、時間遅延の間に治療領域の温度読取りを行って、追加のレーザーパルスを適用するか否かに関する判定を行うことが可能である。ある実施形態では、レーザーパワー、レーザービームサイズ、治療領域寸法、1治療ブロック当たりに適用されるレーザーパルスの数などの治療パラメーターは、ユーザーによりあらかじめ定義されるが、自動治療終了プロセスは、治療プロトコルをリアルタイム且つアドホックに調整して、ユーザー介入なしでさえも治療領域に損傷を与える潜在的可能性の低減を可能にする。
【0056】
以上は本発明の例示であり、それを限定するものと解釈されるものではない。本発明の典型的実施形態をいくつか説明してきたが、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく典型的実施形態の多くの修正が可能であることは、当業者であれば容易に分かるであろう。たとえば、約1210nmなどの他の波長を有するレーザーを使用可能である。本明細書に記載の実施形態の重要な態様は、オペレーターエラーに起因する組織損傷の可能性を低減するように治療プロトコルの開始及び/又は終了を自動化することにより、患者の安全性を増加させることである。
【0057】
それゆえ、以上の説明及び図面から多くの異なる実施形態が派生する。これらの実施形態のすべての組合せ及び部分的組合せを文字通り記載及び例示すると過度に反復的且つ曖昧になるおそれがあることは理解されたい。したがって、図面を含めて本明細書は、本明細書に記載の実施形態並びにその製造及び使用の方式及びプロセスのすべての組合せ及び部分的組合せを記載していると解釈されるものとし、いずれのかかる組合せ又は部分的組合せに対する特許請求も支持するものとする。
【0058】
本開示は、本開示の一部である以下の項目を含む。
【0059】
項目1.媒体に埋め込まれた標的を損傷するための光熱標的治療システムであって、システムがコントローラーと光源を含む光熱治療ユニットとを含み、コントローラーが治療プロトコルを施すように構成され、且つ治療プロトコルがあらかじめ設定されたパワー設定及びあらかじめ設定されたパルスタイミング設定で光源を用いて施される、システム。
【0060】
項目2.治療プロトコルが、媒体を予熱するためのプレコンディショニング手順と、光熱治療手順と、を含み、プレコンディショニング手順及び光熱治療手順が両方とも、プレコンディショニング手順と光熱治療手順との間の、あらかじめ設定されたパワー設定と、あらかじめ設定されたパルスタイミング設定と、を変化させることなく、光源を用いて施され、且つプレコンディショニング手順が、光熱手順よりも長い持続時間を要する、項目1に記載のシステム。
【0061】
項目3.冷却ユニットをさらに含み、治療プロトコルが、治療プロトコルを施しつつ媒体を冷却するための冷却手順をさらに含む、項目2に記載のシステム。
【0062】
項目4.プレコンディショニング手順及び光熱治療手順の両方で、光源が、あらかじめ設定されたパワーレベル、あらかじめ設定されたパルス長、及びあらかじめ設定されたパルスインターバルで一連の光パルスを放出するように設定される、項目3に記載のシステム。
【0063】
項目5.あらかじめ設定されたパワーレベルが10ワット~50ワット/パルスの範囲内である、項目4に記載のシステム。
【0064】
項目6.あらかじめ設定されたパルス長が25ミリ秒間~200ミリ秒間/パルスの範囲内である、項目4に記載のシステム。
【0065】
項目7.あらかじめ設定されたパルスインターバルが0.5秒間~2.5秒間の範囲内である、項目4に記載のシステム。
【0066】
項目8.プレコンディショニング手順及び光熱治療手順が、あらかじめ設定された領域にわたるスキャン方式による光パルスの適用を含む、項目4に記載のシステム。
【0067】
項目9.あらかじめ設定された領域が、治療ブロックの2×1以上のマトリックスである、項目8に記載のシステム。
【0068】
項目10.あらかじめ設定された領域が、5ミリメートル×5ミリメートルの治療ブロックの2×2マトリックスである、項目8に記載のシステム。
【0069】
項目11.プレコンディショニング手順及び光熱治療手順の間、媒体の温度が媒体の損傷閾値未満であり、且つ標的が標的の損傷閾値超の温度に加熱される、項目4に記載のシステム。
【0070】
項目12.プレコンディショニング手順及び光熱治療手順の間、媒体の温度が55℃未満であり、且つ標的が55℃超の温度に加熱される、項目11に記載のシステム。
【0071】
項目13.一連の光パルスが媒体に適用されているときの媒体の温度を測定するための温度モニターをさらに含む、項目11に記載のシステム。
【0072】
項目14.媒体に埋め込まれた標的を損傷するための光熱標的治療システムの使用方法であって、システムが光源を含み、方法が、1)光源が発する一連の光パルスに対するパラメーターセットを定義することであって、パラメーターセットが、あらかじめ設定されたパワーレベルと、あらかじめ設定されたパルス長と、あらかじめ設定されたパルスインターバルと、光パルスの数と、を含む、定義することと、2)定義されたパラメーターセットに応じて一連の光パルスを発生することと、3)媒体に一連の光パルスを施すことと、を含む、使用方法。
【0073】
項目15.媒体に一連の光パルスを施す前、一連の光パルスを施す前及び施しつつ媒体を冷却するために媒体を冷却することをさらに含む、項目14に記載の方法。
【0074】
項目16.一連の光パルスを適用することが、治療ブロックの2×1以上のマトリックスとしてあらかじめ設定された領域を定義することを含む、項目15に記載の方法。
【0075】
項目17.一連の光パルスを適用することが、5ミリメートル×5ミリメートルの治療ブロックの2×2マトリックスとしてあらかじめ設定された領域を定義することを含む、項目16に記載の方法。
【0076】
項目18.一連の光パルスを施すことが、媒体の温度が媒体の損傷閾値未満になるように且つ標的が標的の損傷閾値超の温度に加熱されるように一連の光パルスを適用することを含む、項目14に記載の方法。
【0077】
項目19.一連の光パルスを施すことが、標的を55℃超の温度に加熱しつつ媒体の温度を55℃未満に上昇させることを含む、項目14に記載の方法。
【0078】
項目20.一連の光パルスが媒体に施されるときの媒体の温度をモニターすることをさらに含む、項目14に記載の方法。
【0079】
項目21.光熱標的治療システムを用いて治療プロトコルを自動開始する方法であって、治療位置に冷却手段を施すことと、治療位置の皮膚表面温度をモニターすることと、皮膚表面温度があらかじめ設定された閾値に達するときに治療プロトコルを自動開始することと、を含む、方法。
【0080】
項目22.治療プロトコルを自動開始することが、ユーザーによるいかなる手動入力も用いることなく実施される、項目21に記載の方法。
【0081】
項目23.光熱標的治療システムを用いて治療プロトコルを自動終了する方法であって、治療領域に治療プロトコルを施す間、治療位置の皮膚表面温度をモニターすることと、皮膚表面温度があらかじめ設定された閾値に達するときに治療プロトコルを自動終了することと、を含む、方法。
【0082】
項目24.治療プロトコルを自動終了することが、ユーザーによるいかなる手動入力も用いることなく実施される、項目23に記載の方法。
【0083】
本明細書では、本発明の実施形態が開示されており、特定の用語が利用されるが、それらは限定を目的とするものではなく一般的且つ記述的な意味でのみ用いられる。本発明の典型的実施形態をいくつか説明してきたが、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく典型的実施形態の多くの修正が可能であることは、当業者であれば容易に分かるであろう。それゆえ、かかる修正はすべて、特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内に含まれることが意図される。したがって、以上は本発明の実施形態の例示であり、開示された特定の実施形態に限定されると解釈すべきではなく、本開示の実施形態の修正さらには他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解すべきである。本発明は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の全範囲によってのみ規定される。