IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガーディアン・グラス・エルエルシーの特許一覧

特許7588183車両内部若しくは建物内部に隣接したLow-Eコーティングを有する異なるガラス基材を含む積層窓及び/又はその製造方法
<>
  • 特許-車両内部若しくは建物内部に隣接したLow-Eコーティングを有する異なるガラス基材を含む積層窓及び/又はその製造方法 図1
  • 特許-車両内部若しくは建物内部に隣接したLow-Eコーティングを有する異なるガラス基材を含む積層窓及び/又はその製造方法 図2
  • 特許-車両内部若しくは建物内部に隣接したLow-Eコーティングを有する異なるガラス基材を含む積層窓及び/又はその製造方法 図3
  • 特許-車両内部若しくは建物内部に隣接したLow-Eコーティングを有する異なるガラス基材を含む積層窓及び/又はその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両内部若しくは建物内部に隣接したLow-Eコーティングを有する異なるガラス基材を含む積層窓及び/又はその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/078 20060101AFI20241114BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241114BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20241114BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20241114BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20241114BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C03C3/078
B32B9/00 A
B32B17/10
B60J1/00 H
C03C3/087
C03C17/34 Z
C03C27/12 L
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2023109158
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2019556228の分割
【原出願日】2018-04-24
(65)【公開番号】P2023139011
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】15/497,235
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517413513
【氏名又は名称】ガーディアン・グラス・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GUARDIAN GLASS, LLC
【住所又は居所原語表記】2300 Harmon Road, Auburn Hills, MI 48326-1714 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】バンダル、ロバート エイ.
(72)【発明者】
【氏名】セント ジーン、ジム
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-527353(JP,A)
【文献】特表2015-504035(JP,A)
【文献】特開2002-173346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0370209(US,A1)
【文献】国際公開第2016/202799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/078
B32B 9/00
B32B 17/10
B60J 1/00
C03C 3/087
C03C 17/34
C03C 27/12
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用窓であって、
ポリマー包含中間層を介して互いに積層された第1及び第2のガラス基材であって、前記第1のガラス基材は、前記第2のガラス基材よりも車両内部に近接して配置されるように構成されている、第1及び第2のガラス基材と、
前記第1のガラス基材上にあり、車両内部に近接して配置され、かつ、これに露出するように構成された、多層コーティングであって、前記コーティングが前記第1のガラス基材と第2のガラス基材との間に配置されない、多層コーティングと、を含み、
前記コーティングは、32Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)を有しており、第1の透明誘電体層と第2の透明誘電体層との間に配置され、かつ、これらと直接接触している、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む透明導電層を含んでおり、前記第1の透明誘電体層が、少なくとも前記第1のガラス基材と前記ITOを含む透明導電層との間に配置されており、
前記第1及び第2のガラス基材のそれぞれの基礎ガラス組成物は次を含み、
【表1】

前記第2のガラス基材は、前記第1のガラス基材よりも少なくとも0.40%多い総鉄分量(Fe23として表される)を含有し、前記車両用窓のSHGC値を低下させるように、少ない総鉄分量を有する前記第1のガラス基材はインボードガラス基材であり、かつ、アウトボードガラス基材である前記第2のガラス基材よりも低吸収であり
記コーティングは、コーティングが設けられていない場合と比べて前記窓の全日射透過率(Tts)を少なくとも5%絶対だけ低下させながら、前記窓が少なくとも70%の可視透過率(光源A、2°観測者)を有することも保証するように形成される、車両用窓。
【請求項2】
前記第2のガラス基材が、前記第1のガラス基材よりも少なくとも0.50%多い総鉄分量を含有する、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項3】
前記第2のガラス基材が、前記第1のガラス基材よりも少なくとも0.60%多い総鉄分量を含有する、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項4】
前記第1のガラス基材が、6mmの基準厚さにおいて、前記第2のガラス基材の可視透過率よりも少なくとも10%高い可視透過率を有する(光源A、2°観測者)、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項5】
前記第1のガラス基材が、6mmの基準厚さにおいて、前記第2のガラス基材の可視透過率よりも少なくとも15%高い可視透過率を有する(光源A、2°観測者)、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項6】
前記第1のガラス基材が、6mmの基準厚さにおいて、前記第2のガラス基材の可視透過率よりも少なくとも20%高い可視透過率を有する(光源A、2°観測者)、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項7】
前記第1のガラス基材と第2のガラス基材との間にLow-Eコーティングが設けられていない、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項8】
前記第1及び第2の透明誘電体層がシリコン系であり、酸素及び窒素のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項9】
前記第1及び第2の透明誘電体層がそれぞれ、窒化シリコンを含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項10】
前記第1及び第2の透明誘電体層がそれぞれ、酸窒化シリコンを含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項11】
前記コーティングが、金属酸化物を含むオーバーコートを更に含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項12】
前記オーバーコートがジルコニウムの酸化物を含む、請求項11に記載の車両用窓。
【請求項13】
前記コーティングが、少なくとも前記第1のガラス基材と前記第1の透明誘電体層との間に配置された別の誘電体層を更に含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項14】
前記ITOを含む層が、1.80~1.93の屈折率(n)を有する、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項15】
前記コーティングが、前記第1のガラス基材から離れていく順に、
前記第1の透明誘電体層であって、前記第1の透明誘電体層が、酸窒化シリコンを含み、1.60~1.90の屈折率を有し、10~120nmの厚さを有する、第1の透明誘電体層と、
前記ITOを含む層であって、前記ITOを含む層が40~200nmの厚さを有する、ITOを含む層と、
前記第2の透明誘電体層であって、前記第2の透明誘電体層が、酸窒化シリコンを含み、1.60~1.90の屈折率を有し、10~120nmの厚さを有する、第2の透明誘電体層と、を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項16】
前記コーティングが、前記第1のガラス基材から離れていく順に、
前記第1の透明誘電体層であって、前記第1の透明誘電体層が、酸窒化シリコンを含み、1.65~1.80の屈折率を有し、40~85nmの厚さを有する、第1の透明誘電体層と、
前記ITOを含む層であって、前記ITOを含む層が75~175nmの厚さを有する、ITOを含む層と、
前記第2の透明誘電体層であって、前記第2の透明誘電体層が、酸窒化シリコンを含み、1.65~1.80の屈折率を有し、40~80nmの厚さを有する、第2の透明誘電体層と、を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項17】
前記第1のガラス基材の着色剤部分が0.001~0.20%の総鉄分量(Fe23として表される)を含み、前記第2のガラス基材の着色剤部分が少なくとも0.30%の総鉄分量(Fe23として表される)を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項18】
前記第1のガラス基材の着色剤部分が0.001~0.20%の総鉄分量(Fe23として表される)を含み、前記第2のガラス基材の着色剤部分が少なくとも0.50%の総鉄分量(Fe23として表される)を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項19】
前記第1のガラス基材の着色剤部分が0.001~0.15%の総鉄分量(Fe23として表される)を含み、前記第2のガラス基材の着色剤部分が少なくとも0.60%の総鉄分量(Fe23として表される)を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項20】
前記第1のガラス基材の着色剤部分が0.01~0.10%の総鉄分量(Fe23として表される)を含み、前記第2のガラス基材の着色剤部分が少なくとも0.70%の総鉄分量(Fe23として表される)を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項21】
前記第1のガラス基材の着色剤部分が次を含み、
【表2】

前記第2のガラス基材の着色剤部分が次を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【表3】
【請求項22】
前記第1のガラス基材の着色剤部分が次を含み、
【表4】

前記第2のガラス基材の着色剤部分が次を含む、請求項1に記載の車両用窓。
【表5】
【請求項23】
前記第1のガラス基材が透明ガラス基材であり、前記第2のガラス基材が着色ガラス基材である、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項24】
前記ポリマー包含中間層がPVBを含む、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項25】
前記コーティングが、25Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)、及び0.30以下の半球放射率を有する、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項26】
前記コーティングが、20Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)、及び/又は0.20以下の半球放射率を有する、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項27】
前記窓が0.48以下のSHGC値を有する、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項28】
少なくとも前記コーティング及び前記第1のガラス基材が熱処理される、請求項1に記載の車両用窓。
【請求項29】
窓であって、
ポリマー包含中間層を介して互いに積層された第1及び第2のガラス基材であって、前記第1のガラス基材は、前記第2のガラス基材よりも車両内部又は建物内部に近接して配置されるように構成されており、前記第1のガラス基材は、前記第2のガラス基材よりも少なくとも0.40%少ない総鉄分量を有し、前記第1のガラス基材はインボードガラス基材であり、かつ、前記第2のガラス基材よりも低吸収である、第1及び第2のガラス基材と、
前記第1のガラス基材上にあり、車両内部又は建物内部に近接して配置され、かつ、これに露出するように構成された、多層コーティングであって、前記コーティングが前記第1のガラス基材と第2のガラス基材との間に配置されない、多層コーティングと、を含み、
前記コーティングは、第1の透明誘電体層と第2の透明誘電体層との間に配置され、かつ、これらと直接接触している、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む透明導電層を含んでおり、前記第1の透明誘電体層が、少なくとも前記第1のガラス基材と前記ITOを含む透明導電層との間に配置されており、
前記第1及び第2のガラス基材のそれぞれの基礎ガラス組成物は次を含み、
【表6】

前記第1のガラス基材と第2のガラス基材との間にLow-Eコーティングが設けられず、
前記第1及び第2の透明誘電体層がシリコン系であり、酸素及び窒素のうちの少なくとも1つを含み、
前記コーティングが、前記第1のガラス基材から離れていく順に、前記第1の透明誘電体層であって、前記第1の透明誘電体層が1.60~1.90の屈折率及び10~120nmの厚さを有する、第1の透明誘電体層と、
前記ITOを含む層であって、前記ITOを含む層が75~175nmの厚さを有する、ITOを含む層と、
前記第2の透明誘電体層であって、前記第2の透明誘電体層が1.60~1.90の屈折率及び10~120nmの厚さを有する、第2の透明誘電体層と、を含み、
前記コーティングが25Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)及び0.30以下の半球放射率を有し、
前記窓が0.48以下のSHGC値を有する、窓。
【請求項30】
前記第1及び第2の透明誘電体層がそれぞれ、酸窒化シリコンを含む、請求項29に記載の窓。
【請求項31】
前記コーティングが、ジルコニウムの酸化物を含むオーバーコートを更に含む、請求項29に記載の窓。
【請求項32】
前記コーティングが、20Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)、及び/又は0.20以下の半球放射率を有する、請求項29に記載の窓。
【請求項33】
前記窓が、少なくとも70%の可視透過率(光源A、2°観測者)を有する、請求項29に記載の窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の特定の例示的実施形態は、異なるガラス基材を有し得る積層窓に関する。低放射(Low-E)コーティングが窓の内面に設けられ、その結果、Low-Eコーティングは、車両又は建物などの内部に隣接して配置され、これに露出する。特定の例示的実施形態では、窓の外側/アウトボード及び内側/インボードガラス基材は互いに積層される。インジウムスズ酸化物(ITO)などの材料の透明導電性酸化物(TCO)層を含む、Low-Eコーティングが、車両/建物内部に面し、露出するように、内側ガラス基材の表面に設けられている。特定の例示的実施形態では、外側ガラス基材は、内側ガラス基材よりも、多くの鉄分を含有し、したがって、IR放射をより多く吸収する。特定の例示的実施形態では、Low-Eコーティングは、酸窒化シリコン、窒化シリコン、及び/又は同様のものからなり得る又はこれらを含み得る第1の誘電体層と第2の誘電体層との間に配置されたITOなどのTCO層からなり得る又はこれを含み得る。コーティングは、露出環境内で残存するのに十分な耐久性があり、また、車両/建物内部からの熱を窓が保持することができるように、十分に低い半球放射率も有しており、それにより、日射熱取得特性が改善され、及び/又はコーティング上での結露の可能性が低減される。
【発明の概要】
【0002】
長年にわたって、車両、輸送、及び海上ガラス窓システムは、所望のレベルの可視透過率を維持しながら、ガラス窓を透過する日射熱負荷を低減しようとしてきた。このための主要な原動力は、乗員の快適性、空調負荷の低減、燃費の改善、及び排出の低減である。
【0003】
解決策は、多くの場合、可視光線透過率を低減し、車室内の日射熱取得を軽減するために、着色ガラスを用いる。このような解決策は、多くの場合、日射スペクトルの一部を吸収するので吸収ソリューションと呼ばれ、このエネルギーは、ガラス/窓組立体の直接加熱に変換される。吸収ガラスソリューションは積層用途及びモノリシック用途の両方で使用され、積層用途では全てのガラス基材が着色される。このようなソリューションは、快適性を改善しながら、直接透過日射エネルギーを低減するという利点を有する。しかしながら、吸収ソリューションの主要な欠点は、組立体によって得られた熱が、その後、全ての方向に再放出又は再放射されることであり、したがって、熱の一部が車両の内部空間に伝達され、それにより、望ましくない熱の二次供給源となることである。二次熱のこの効果は、NFRC日射熱取得率(SHGC)、又はISO 13837によるTts(全日射透過率)などのガラス窓を透過した日射負荷の計算の多くの標準によって認識及び定量化される。SF(G-因子、EN410-673 2011)及びSHGC(NFRC-2001)値は、全スペクトルから計算され、Perkin Elmer 1050などの分光光度計で測定され得る。各場合において、これらの値は、直接日射透過率成分と二次再放射熱成分の合計を表す。例えば、70%を超える可視透過率(Tvis)を有するほとんどの着色/吸収ガラスソリューションは、約80%のTts又はSHGCを有する透明ガラスと比較して、典型的には、53~65%の範囲のTts又はSHGCを呈する。より低いTvisの吸収ソリューションの場合、Ttsは更に低くなり得る。例えば、15~20%の範囲のTvisは、40%前後のTts又はSHGCをもたらし得る。
【0004】
また、日射熱除去率を改善するために、銀系Low-Eコーティングも車両用ウィンドシールドに使用されてきた。このような銀系Low-Eコーティングは、典型的には、積層ウィンドシールドのガラス基材間に設けられる。銀系Low-Eコーティングの利点は、日射エネルギーのかなりの部分が窓によって、吸収されるのではなく、反射され、したがって二次加熱の大部分が軽減されるという事実である。したがって、このような反射ソリューションは、典型的には、同等のTvis吸収ソリューションよりも約8~15%低いTtsを有する。これらの銀系Low-E反射ソリューションの欠点は、主に製造レベルにおける製造のコスト及び複雑さに関連する。銀系Low-Eコーティングは、典型的には、処理中に柔らかく、容易に損傷し、またガラスを強化又は成形するために使用される加熱プロセスから損傷を受けやすい。加えて、このような反射ソリューションはまた、窓の片面又は両面からの可視反射を著しく増加させ、追加の潜在的な内部グレア及び望ましくない外向きの色彩効果を生じさせる傾向がある。このようなソリューションの外観は、多くの場合、通常のガラス窓の外観とは極めて顕著に異なり、ほとんどの場合、否定的に知覚される。
【0005】
本発明の特定の例示的実施形態では、表面耐久性のあるITOなどのTCOを有するLow-Eコーティングを日射吸収組立体の内側表面に塗布することにより、組立体の日射熱取得が改善されることが見出されている。例えば、放射率が約0.17~0.22のITO系コーティングは、そのようなコーティングが設けられていない場合と比較して、少なくとも約0.05(5%)絶対の、より好ましくは少なくとも約0.10(10%)絶対の、SHGC又はTtsの低減をもたらすことができる。更に、積層窓の場合、驚くべきことに、アウトボードガラス基材用の吸収着色ガラス(例えば、比較的鉄分の高いガラス)とインボードガラス基材用の異なる低吸収透明ガラス(例えば、比較的鉄分の低いガラス)とを含むハイブリッドを使用することは、車両内部に面するインボードガラス基材の表面にITO系Low-Eコーティングを有すると、同一のガラスが両基材に対して同一のコーティングと共に使用される場合と比較して、日射熱取得性能が更に改善され得る点で有利であることが見出されている。
【0006】
したがって、本発明の特定の例示的実施形態は、異なるガラス基材とその内面にITO系低放射(Low-E)コーティングとを有し、その結果、ITO系Low-Eコーティングが車両内部又は建物内部に隣接して配置され、これに露出する、積層窓(例えば、車両用窓、海上乗物、又は建物用窓)に関する。特定の例示的実施形態では、窓の外側/アウトボード及び内側/インボードガラス基材は、ポリビニルブチラール(PVB)又はエチレン-酢酸ビニル(EVA)などの積層材料を介して互いに積層される。特定の例示的実施形態では、Low-Eコーティングは、ガラス基材間に設けられていない。代わりに、インジウムスズ酸化物(ITO)などの材料の透明導電性酸化物(TCO)層を含む、Low-Eコーティングが、車両内部又は建物内部に面し、露出するように、内側ガラス基材の表面に設けられている。本発明の特定の例示的実施形態では、外側ガラス基材は、内側ガラス基材よりも、多くの鉄分を含有し、したがって、IR放射をより多く吸収する。驚くべきことに、アウトボード側の比較的鉄分の高い吸収ガラス基材とインボード側の比較的鉄分の低い透明ガラス基材とを含むこのハイブリッドアプローチは、Low-Eコーティングが車両内部又は建物内部に面して透明インボードガラス基材上にあると、インボードガラス基材とアウトボードガラス基材の両方に同じガラスを使用する場合と比較して、改善された日射熱取得性能を有する積層窓をもたらすことが見出されている。特定の例示的実施形態では、Low-Eコーティングは、酸窒化シリコン、窒化シリコン、及び/又は同様のものからなり得る又はこれらを含み得る第1の誘電体層と第2の誘電体層との間に配置されたITOなどのTCO層からなり得る又はこれを含み得る。コーティングは、露出環境内で残存するのに十分な耐久性があり、また、車両/建物内部からの熱を窓が保持することができるように、十分に低い半球放射率も有しており、それにより、日射熱取得特性が改善され、及び/又はコーティング上での結露の可能性が低減される。
【0007】
特定の例示的実施形態では、少なくとも1つのガラス基材上のITO系コーティングは、(例えば、少なくとも約2分間、より好ましくは少なくとも約5分間、少なくとも580℃の温度で)熱処理され、この点で熱強化及び/又は熱曲げされてよい。熱処理は、例えば、ITO系コーティングを活性化し、そのシート抵抗及び放射率を低減するために使用されてもよく、並びに/又は窓のガラスの熱強化及び/若しくは熱曲げのために使用されてもよい。本発明の特定の例示的実施形態では、このような熱処理(HT)に続いて、ITO系コーティングは、0.40以下(より好ましくは0.30以下、最も好ましくは0.25以下)の半球放射率及び/又は30Ω/sq以下(より好ましくは25Ω/sq以下、最も好ましくは20Ω/sq以下)のシート抵抗(Rs)を有し得る。
【0008】
本発明の例示的実施形態では、車両(例えば、車、トラック、列車、バス、又はボート)用窓が提供され、この窓は、ポリマー包含中間層を介して互いに積層された第1及び第2のガラス基材であって、第1のガラス基材は、第2のガラス基材よりも車両内部に近接して配置されるように構成されている、第1及び第2のガラス基材と、第1のガラス基材上にあり、車両内部に近接して配置され、かつ、これに露出するように構成された、多層コーティングであって、コーティングが第1のガラス基材と第2のガラス基材との間に配置されない、多層コーティングと、を含み、コーティングは、32Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)を有しており、第1の透明誘電体層と第2の透明誘電体層との間に配置され、かつ、これらと直接接触している、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む透明導電層を含んでおり、第1の透明誘電体層が、少なくとも第1のガラス基材とITOを含む透明導電層との間に配置されており、第1及び第2のガラス基材のそれぞれの基礎ガラス組成物は、SiO2 67~75%、Na2O 10~20%、CaO 5~15%、MgO 0~5%、Al23 0~5%、K2O 0~5%を含み(重量%)、第2のガラス基材は、第1のガラス基材よりも少なくとも0.25%多い総鉄分量(Fe23として表される)を含有する。
【0009】
本発明の別の例示的実施形態では、窓が提供され、この窓は、ポリマー包含中間層を介して互いに積層された第1及び第2のガラス基材であって、第1のガラス基材は、第2のガラス基材よりも車両内部又は建物内部に近接して配置されるように構成されている、第1及び第2のガラス基材と、第1のガラス基材上にあり、車両内部又は建物内部に近接して配置され、かつ、これに露出するように構成された、多層コーティングであって、コーティングが第1のガラス基材と第2のガラス基材との間に配置されない、多層コーティングと、を含み、コーティングは、第1の透明誘電体層と第2の透明誘電体層との間に配置され、かつ、これらと直接接触している、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む透明導電層を含んでおり、第1の透明誘電体層が、少なくとも第1のガラス基材とITOを含む透明導電層との間に配置されており、第1及び第2のガラス基材のそれぞれの基礎ガラス組成物は次を含み、
【表1】
第1のガラス基材と第2のガラス基材との間にLow-Eコーティングが設けられず、第1及び第2の誘電体層がシリコン系であり、酸素及び窒素のうちの少なくとも1つを含み、コーティングが、第1のガラス基材から離れていく順に、第1の誘電体層であって、第1の誘電体層が1.60~1.90の屈折率及び10~120nmの厚さを有する、第1の誘電体層と、ITOを含む層であって、ITOを含む層が75~175nmの厚さを有する、ITOを含む層と、第2の誘電体層であって、第2の誘電体層が1.60~1.90の屈折率及び10~120nmの厚さを有する、第2の誘電体層と、を含み、コーティングが25Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)及び0.30以下の半球放射率を有し、窓が0.48以下のSHGC値を有する。
これら及び他の特徴及び利点は、図面と併せて、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より良好かつより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の例示的実施形態による、積層窓の断面図である。
図2】本発明の別の例示的実施形態による、積層窓の断面図である。
図3】本発明の別の例示的実施形態による、積層窓の断面図である。
図4】本発明の別の例示的実施形態による、積層窓の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで添付の図面をより詳細に参照すると、同様の参照番号は、いくつかの図において同様の部分を示す。
【0012】
本発明の特定の例示的実施形態は、異なるガラス基材1及び2と、その内面にITO系低放射(Low-E)コーティング20と、を有し、その結果、ITO系Low-Eコーティング20が車両内部又は建物内部に隣接して配置され、これに露出する(例示を目的として「車両内部」が図1図4に示されている)、積層窓(例えば、車両用ウィンドシールドなどの車両用窓、ボート上などでの海上乗物用窓、又は建物用窓)に関する。特定の例示的実施形態では、窓の外側/アウトボードガラス基材2及び内側/インボードガラス基材1は、ポリビニルブチラール(PVB)又はエチレン-酢酸ビニル(EVA)などのポリマー包含中間層積層材料3を介して互いに積層されている。特定の例示的実施形態では、Low-Eコーティングは、ガラス基材1とガラス基材2との間に設けられていない。代わりに、インジウムスズ酸化物(ITO)5などの材料の透明導電性酸化物(TCO)層を含む、Low-Eコーティング20が、車両内部又は建物内部に面し、露出するように、内側ガラス基材1の表面に設けられている。本発明の特定の例示的実施形態では、外側ガラス基材2は、内側ガラス基材1よりも、多くの鉄分を含有し、したがって、IR放射をより多く吸収する。
鉄分はガラス中の吸収材料であり、より多くの鉄分が存在するほど、ガラスはより高い吸収性を有する。驚くべきことに、アウトボード側の比較的鉄分の高い吸収ガラス基材2とインボード側の比較的鉄分の低い透明ガラス基材1とを含むこのハイブリッドアプローチは、Low-Eコーティング20が車両内部又は建物内部に面して透明インボードガラス基材1上にあると、インボードガラス基材とアウトボードガラス基材の両方に同じガラスを使用する場合と比較して、改善された日射熱取得性能を有する積層窓をもたらすことが見出されている。特定の例示的実施形態では、Low-Eコーティング20は、酸窒化シリコン、窒化シリコン、及び/又は同様のものからなり得る又はこれらを含み得る第1の誘電体層9aと第2の誘電体層9bとの間に配置されたITO 5などのTCO層からなり得る又はこれを含み得る。コーティング20は、露出環境内で残存するのに十分な耐久性があり、また、車両/建物内部からの熱を窓が保持することができるように、十分に低い半球放射率も有しており、それにより、日射熱取得特性が改善され、及び/又はコーティング20上での結露の可能性が低減される。
【0013】
本明細書では、ガラス基材1及び2中に存在する鉄分の総量は、標準的な慣行に従ってFe23に関して表す。しかしながら、典型的には、ガラス中の全ての鉄分が、Fe23の形態で存在するわけではない。代わりに、鉄分は通常、第一鉄状態(Fe2+、ガラス中の全ての第一鉄状態の鉄分がFeOの形態にあるとは限らないとしても、本明細書ではFeOとして表される)と第二鉄状態(Fe3+)の両方で存在する。第一鉄状態の鉄分(Fe2+、FeO)は青緑色着色剤であり、一方、第二鉄状態の鉄分(Fe3+)は黄緑色着色剤である。第一鉄鉄分の青緑色着色剤(Fe2+、FeO)は、強い着色剤であり、ガラスに有意な色を導入する。第二鉄状態の鉄分(Fe3+)も着色剤であるが、第二鉄状態の鉄分は、その第一鉄状態の対照物よりも着色剤として弱い傾向がある。
【0014】
図1図4中のガラス基材1及び2は、好ましくは、それらの基礎組成物/ガラスとして、フロート法によって製造されたソーダ石灰シリカガラスを利用する。基礎組成物/ガラスに加えて、着色剤部分が提供される。本発明の特定の実施形態によるガラス基材1及び2のそれぞれのための例示的なソーダ石灰シリカ基礎ガラスは、重量パーセントに基づいて、以下の基本成分を含む。
【表2】
【0015】
SO3及び炭素などの様々な従来の精製助剤を含む、他の微量成分もまた、基礎ガラスに含まれてよい。特定の実施形態では、例えば、本明細書に記載のガラスは、精製剤としての芒硝(SO3)及び/又はエプソム塩(例えば、両方の約1:1の組み合わせ)の使用と共に、バッチ原料のケイ砂、ソーダ灰、ドロマイト、石灰岩から作製されてよい。好ましくは、本明細書に記載のソーダ石灰シリカ系ガラスは、約10~15重量%のNa2O及び約6~12重量%のCaOを含む。
【0016】
基礎ガラスに加えて、ガラス基材1及び2のそれぞれのガラス組成物は、対応のガラス基材1及び2の着色及び吸収に関係する鉄分を含んでいる着色剤部分を含む。上述したように、外側ガラス基材2は、内側ガラス基材1よりも、多くの鉄分を含有し、したがって、放射をより多く吸収する。鉄分はガラス中の吸収材料であり、より多くの鉄分が存在するほど、ガラスはより高い吸収性を有する。本発明の特定の例示的実施形態では、内側/インボードガラス基材1は、低吸収ガラスとなるように、比較的鉄分の低いガラスで作製された実質的に透明なガラスであり、0.001~0.20%の総鉄分量、より好ましくは0.001~0.15%の総鉄分量、より好ましくは0.005~0.12%の総鉄分量、最も好ましくは0.01~0.10%の総鉄分量(Fe23として表される)を含有する。なお、本明細書におけるガラス組成物の%量は、ガラス組成物全体の重量パーセント(%)で表されることに留意されたい。対照的に、外側/アウトボードガラス基材2は、高吸収ガラスとなるように、比較的鉄分の高いガラスで作製された有色及び/又は着色ガラスであり、少なくとも0.30%の総鉄分量、より好ましくは少なくとも0.50%の総鉄分量、更により好ましくは少なくとも0.60%の総鉄分量、より好ましくは少なくとも0.70%の総鉄分量、最も好ましくは少なくとも0.75%の総鉄分量(Fe23として表される)を含有する。本発明の好ましい実施形態では、アウトボードガラス基材2は、インボードガラス基材1よりも少なくとも0.25%(より好ましくは少なくとも0.40%、更により好ましくは少なくとも0.50%、最も好ましくは少なくとも0.60%)多い総鉄分量を含有する。本発明の特定の例示的実施形態では、インボードガラス基材1は、基準厚さ4mm又は6mmにおいて、アウトボードガラス基材2の可視透過率よりも少なくとも約10%高い(より好ましくは少なくとも15%高い、最も好ましくは少なくとも20%高い、光源A、2°観測者標準)可視透過率(Tvis)を有する。
【0017】
例えば、本発明の例示的実施形態では、アウトボードガラス基材2は、基準厚さ6mmにおいて光源Aの2°観測者による約60~68%の可視透過率を有し、約0.70~0.95%の総鉄分量を含有する、Guardian Industries Corp.から入手可能なSMGII又はSMGIIIなどの緑色のガラス基材であってよく、インボードガラス基材1は、基準厚さ6mmにおいて光源Aの2°観測者による約80~91%の可視透過率を有し、約0.01~0.10%の総鉄分量を含有する、Guardian Industries Corp.から入手可能な透明な低鉄分ガラス基材であってよい。本発明の別の例示的実施形態では、アウトボードガラス基材2は、基準厚さ6mmにおいて光源Aの2°観測者による約5~12%の可視透過率を有し、約1.4~1.7%の総鉄分量を含有する、Guardian Industries Corp.から入手可能なPrivaGuardなどの暗着色ガラス基材であってよく、インボードガラス基材1は、基準厚さ6mmにおいて光源Aの2°観測者による約80~91%の可視透過率を有し、約0.01~0.10%の総鉄分量を含有する、Guardian Industries Corp.から入手可能な透明ガラス基材であってよい。これらの実施例は、図1図4に示される実施形態のいずれかに適用される。
【0018】
例えば、透明な低鉄分インボードガラス基材1は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,169,722号、同第7,144,837号、同第6,218,323号、同第5,030,594号、同第5,656,559号、又は同第7,037,869号のいずれかに記載の低鉄分ガラス組成物のいずれかで作製されてよく、比較的鉄分の高いアウトボードガラス基材2は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,214,008号、同第4,792,536号、同第5,393,593号、又は同第5,932,502号のいずれかに記載の比較的鉄分の高いガラス組成物のいずれかで作製されてよい。
【0019】
本発明の特定の例示的実施形態では、低鉄分インボードガラス基材1は、(ガラス組成物全体の重量パーセントに関して)以下の表に記載されるように着色剤部分を有してよい。なお、以下の表2に記載の材料は、上述した基礎ガラスに加えられるものである。
【表3】
【0020】
本発明の特定の例示的実施形態では、より高い鉄分のアウトボードガラス基材2は、(ガラス組成物全体の重量パーセントに関して)以下の表に記載されるように着色剤部分を有してよい。なお、以下の表3に記載の材料は、上述した基礎ガラスに加えられるものである。
【表4】
【0021】
ガラス基材1及び2には、他の着色剤が提供されてもよく、又は提供されなくてもよい。
【0022】
本発明の特定の例示的実施形態によるガラスは、多くの場合、スズ浴が利用される既知のフロート法によって作製されることに留意されたい。したがって、特定の例示的実施形態において溶融スズ上にガラスを形成することの結果として、少量のスズ又は酸化スズが、製造中にスズ浴と接触していた側のガラスの表面領域中に移行し得る(即ち、典型的には、フロートガラスは、スズ浴と接触していた表面の下の最初の数マイクロメートルにおいて0.05重量%以上の酸化スズ濃度を有し得る)ことは当業者によって理解されるであろう。
【0023】
特定の例示的実施形態では、少なくとも基材1上のITO系コーティング20は、(例えば、少なくとも約2分間、より好ましくは少なくとも約5分間、少なくとも580℃の温度で)熱処理され、この点で熱強化及び/又は熱曲げされてよい。熱処理は、例えば、ITO系コーティングを活性化し、そのシート抵抗及び放射率を低減するために使用されてもよく、並びに/又は、オートクレーブ内などで、窓のガラスの熱強化及び/若しくは熱曲げのために使用されてもよい。本発明の特定の例示的実施形態では、このような熱処理(HT)に続いて、ITO系コーティング20は、0.40以下(より好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下、最も好ましくは0.20以下)の半球放射率及び/又は32Ω/sq以下(より好ましくは30Ω/sq以下、更により好ましくは25Ω/sq以下、最も好ましくは20Ω/sq以下)のシート抵抗(Rs)を有し得る。積層窓は、低いシート抵抗及び/又は低い放射率を望ましい可視透過率と組み合わせる。本発明の特定の例示的実施形態では、窓の可視透過率(Tvis)は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、更により好ましくは少なくとも約70%である。更に、本発明の特定の例示的実施形態では、窓は、10%以下(より好ましくは9%以下)の外側可視反射率、及び10%以下(より好ましくは9%以下)の内側可視反射率を有する。本発明の特定の例示的実施形態では、窓は、0.75(75%)以下、より好ましくは0.50(50%)以下、更により好ましくは0.48(48%)以下、時には0.30(30%)又は0.27(27%)以下のSHGC値を有する。
【0024】
Low-Eコーティング20を非吸収又は低吸収ガラス1の内側に設けることは、システムの日射熱取得に影響を及ぼすが、これは、コーティング20を吸収ガラス基材1及び2の選択的配置と組み合わせることによって著しく改善することができる。図1図4に示される位置にコーティング20を設けることは、最終組立体において少なくとも以下の利点を有する:システムの色に及ぼす影響が最小になる又は低減することにより、肉眼には未コーティング部分と同じに見えること、窓の両側からの可視反射率に有意な増加がなく、場合によっては、微減が認められ、特定の例示的実施形態において内部ベーリンググレアに関する利点がもたらされること。耐久性のあるハードコート20は、本質的に、ベアガラスと同様の取り扱い耐久性及び加工耐久性を有する。コーティング20を典型的な透明積層体に付加することは、両ガラス基材が透明かつ非吸収又は低吸収である場合、SHGCを約6~7%絶対で低減する。透明なガラスの代わりに吸収着色ガラスを使用した場合、コーティングなしの同じ着色基材と比較しての改善は、7~10%の範囲内でより多くなる。しかしながら、着色された吸収外側ガラス基材2と低吸収内側ガラス基材1とを有するハイブリッド積層体上でコーティング20が用いられる場合、SHGCは、システムの全体的なTvisに応じて約1~2%絶対で有利に影響/低減される。ガラス基材間の日射吸収比が大きい(外側ガラス基材2の方が放射線をより多く吸収する)ほど、驚くべきことに、SHGC効果が大きくなることが見出されている。車両又は建物の内部空間に向かって戻るIRエネルギーの反射によってU値を高めるように設計されているが、同様に、この放射率は、コーティング20なしで見られる典型的なエネルギーバランスを変更する内側表面への二次熱伝達を選択的に低減する。
【0025】
図1は、本発明の例示的実施形態による、積層窓の断面図である。図1の例示的実施形態は、多層薄膜Low-Eコーティング20を支持している透明な低吸収かつ低鉄分のガラス基材1と、より高い鉄分を含有しているより高い吸収性のガラス基材2と、を含む。ガラス基材1及び2は、ポリビニルブチラール(PVB)又はエチレン-酢酸ビニル(EVA)などからなる又はこれを含む積層中間層3を介して共に積層されている。コーティング20は低い半球放射率を有する。特定の例示的実施形態では、コーティング20の半球放射率は、0.40以下(より好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下、最も好ましくは0.20以下)である。特定の例示的実施形態では、熱処理の前及び/又は後に、コーティング20は、30Ω/sq以下(より好ましくは25Ω/sq以下、最も好ましくは20Ω/sq以下)のシート抵抗(Rs)を有する。これは、ITOなどからなる又はこれを含む、所望の厚さの薄い透明導電性酸化物層(TCO)5を有するコーティング20を提供することによって達成される。図1の実施例では、TCO5は、インジウムスズ酸化物(ITO)である。
【0026】
更に図1を参照すると、コーティング20はまた、任意の好適な化学量論の窒化シリコン(例えば、Si34)及び/又は酸窒化シリコンからなる又はこれを含む透明誘電体層9a及び9bを含む。誘電体層9a及び9bは、好ましくは窒化シリコン及び/又は酸窒化シリコンからなる又はこれを含むが、これらの層の一方又は両方が、酸化シリコン(例えば、SiO2)又は酸化チタン(例えば、TiO2)などの他の誘電材料からなってもよい。層9bは、シリコン包含バリア層及びITO 5に接触している下側接触層の両方であってよい。層9a及び9bの両方は、本発明の特定の例示的実施形態において、ガラス基材1上にあり、ITO包含層5に直接接触している。窒化シリコン及び/又は酸窒化シリコン層9a及び9bは、本発明の特定の例示的実施形態において、約1~10%のAl、より好ましくは約1~8%のAlでドープされてよい。透明誘電体層9a及び9bは、例えば、酸窒化シリコンからなる場合、1.60~1.90、より好ましくは1.65~1.80、最も好ましくは1.65~1.75の屈折率(n、550nmにおいて)を有するように設計されている。図1の実施形態では、透明なLow-Eコーティング20は、層9a、5、及び9bからなってもよく、又はこれらから本質的になってもよく、層5は透明導電性酸化物であり、層9a、9bは透明誘電体である。しかしながら、本発明の特定の例示的実施形態では、コーティング20は、透明ガラス基材1と層9bとの間に配置された、窒化シリコン、酸化シリコン、又は酸窒化シリコンなどからなる又はこれを含む、図示されていない、別の透明誘電体層を含んでもよい。
【0027】
図2及び図3は、本発明の他の例示的実施形態による、積層窓の断面図である。図2及び図3の実施形態は、図2図3の実施形態では、追加の保護用オーバーコート層7がコーティング20内に設けられていることを除いて、上述の図1の実施形態と同じである。オーバーコート層7は、本発明の例示的実施形態において、酸化ジルコニウム(例えば、ZrO2又は任意の他の好適な化学量論)、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化チタン、窒化アルミニウム、及び/又は酸窒化アルミニウムからなってもよく、又はこれを含んでもよい。保護用オーバーコート層7は、図2図3に示されるように、車両又は建物の内部に近接して配置され、かつ、これに露出するように構成されている。
【0028】
図4は、本発明の別の例示的実施形態による、積層窓の断面図である。図4の実施形態は、図4の実施形態では、追加の透明誘電体層11及び追加の層13がコーティング20内に設けられていることを除いて、上述の図1図2、及び/又は図3の実施形態のいずれとも同じである。層11は、窒化シリコン又は酸窒化シリコンなど、層9a及び/又は9bについて上述した材料のいずれかからなってもよく、又はこれを含んでもよい。層13は、特定の例示的実施形態例においてITOなどの透明導電性酸化物であってよく、又は代替的に、少なくとも2.15、より好ましくは少なくとも2.20の屈折率を有するように、酸化チタン(例えば、TiO2又は任意の他の好適な化学量論)などの材料の高屈折率透明誘電体層であってもよい。
【0029】
以下の表は、上述の図1図4の実施形態における様々な層9a、9b、5、及び7について、例示的な物理的厚さ、及び例示的な材料を提供する。他の材料は、同様の厚さを有し得る。
【表5】
【0030】
図1の実施形態の例では、層9bは、Alでドープされた酸窒化シリコンからなり、約55nmの厚さであり、ITO層5は約105nmの厚さであり、層9aは、Alでドープされた酸窒化シリコンからなり、約60nmの厚さである。上記のように、ITOの代わりに、又はITOに加えて、他のTCOが使用されてもよい。例えば、特定の例示的実施形態は、ITO層5の代わりにITO/Ag/ITOサンドイッチを組み込んでもよい。
【0031】
加えて又は代替的に、特定の例示的実施形態では、薄い親水性及び/又は光触媒性のコーティングがコーティング20の最上層の上に設けられてもよい。このような層は、アナターゼTiO2、BiO、BiZr、BiSn、SnO、及び/又は任意の他の好適な材料を含んでよい。このような層はまた、湿潤性を促進してもよく、及び/又は物品に自己洗浄特性を提供してもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「~上」及び「~によって支持されている」などは、明示的に記載されない限り、2つの要素が互いに直接隣接していることを意味するものと解釈されるべきではない。換言すれば、第1の層は、第2の層との間に1つ以上の層が存在する場合であっても、第2の層「上」又は「によって支持されている」とされ得る。
【0033】
本発明の様々な実施形態による以下の実施例をモデル化し、結果は以下のとおりであった。
実施例1
【0034】
実施例1は、厚さ0.76mmのSaflex(商標)R透明PVB積層層3と共に積層された、厚さ2.5mmの透明な低鉄分ガラス基材1と厚さ4mmの緑色に着色されたより高い鉄分のガラス基材2とを有する、図1の実施形態による積層された車両用窓であった。コーティング20は、図1に示すように、車両内部に面し、かつ、これに露出するように、インボードガラス基材1の表面上に設けられた。実施例1のコーティング20は、厚さ55nmの酸窒化シリコン層9b、厚さ105nmのITO層5、及び厚さ60nmの酸窒化シリコン層9aから構成された。実施例1では、透明な低鉄分インボードガラス基材1は、重量パーセントによって、約71.69%のSiO2、13.70%のNa2O、9.35%のCaO、4.07%のMgO、0.41%のAl23、0.23%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、0.09%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.0002%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.0013%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.0007%のエルビウム(Er23又は他の好適な化学量論)からなる着色剤部分と、を有した。また実施例1では、より高い鉄分かつより高い吸収性の緑色に着色されたアウトボードガラス基材2は、重量パーセントによって、約72.01%のSiO2、13.69%のNa2O、8.29%のCaO、3.91%のMgO、0.72%のAl23、0.22%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、0.87%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.0002%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、及び0.0014%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)からなる着色剤部分と、を有した。実施例1の窓は、熱処理後、70%の可視透過率、8%の外側可視反射率、8%の内側可視反射率、及び0.47(47%)のSHGC値を有した。
実施例2
【0035】
実施例2は、実施例2ではガラス基材1及び2の両方が低鉄分透明ガラス基材であり、コーティング20は設けられていないという点において、実施例1と異なっていた。したがって、実施例2は、厚さ0.76mmのSaflex(商標)R透明PVB積層層3と互いに積層された一対の厚さ3mmの透明な低鉄分ガラス基材1及び2を有する、図1の実施形態による積層された車両用窓であった。実施例2では、ガラス基材1及び2の両方は、重量パーセントによって、約71.69%のSiO2、13.70%のNa2O、9.35%のCaO、4.07%のMgO、0.41%のAl23、0.23%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、0.09%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.0002%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.0013%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.0007%のエルビウム(Er23又は他の好適な化学量論)からなる着色剤部分と、を有した。実施例2の窓は、熱処理後、89%の可視透過率、8%の外側可視反射率、8%の内側可視反射率、及び0.80(80%)のSHGC値を有した。
実施例3
【0036】
実施例3は、実施例3ではガラス基材1及び2の両方が、比較的鉄分の高い緑色に着色されたガラス基材であるという点において、実施例1と異なっていた。したがって、実施例3は、厚さ0.76mmのSaflex(商標)R透明PVB積層層3と共に積層された一対の厚さ3mmの緑色に着色された比較的鉄分の高いガラス基材1及び2を有する、図1の実施形態による積層された車両用窓であった。コーティング20は、図1に示すように、車両内部に面し、かつ、これに露出するように、インボードガラス基材1の表面上に設けられた。実施例3でのコーティング20は、実施例1でのものと同じであった。実施例3では、ガラス基材1及び2の両方は緑色に着色されており、それぞれは、重量パーセントによって、約71.4%のSiO2、13.95%のNa2O、8.57%のCaO、4.05%のMgO、0.72%のAl23、0.21%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、0.78%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.0002%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.0012%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.0001%のエルビウム(Er23又は他の好適な化学量論)からなる着色剤部分と、を有した。実施例3の窓は、熱処理後、67%の可視透過率、7%の外側可視反射率、8%の内側可視反射率、及び0.44(44%)のSHGC値を有した。
実施例4
【0037】
実施例4は、実施例4ではガラス基材1及び2の両方が低鉄分透明ガラス基材であるという点において、実施例1と異なっていた。したがって、実施例4は、厚さ0.76mmのSaflex(商標)R透明PVB積層層3と互いに積層された一対の厚さ3mmの透明な低鉄分ガラス基材1及び2を有する、図1の実施形態による積層された車両用窓であった。実施例4でのコーティング20は、実施例1でのものと同じであり、図1に示されるのと同じ位置にあった。実施例4では、ガラス基材1及び2の両方は、重量パーセントによって、約71.69%のSiO2、13.70%のNa2O、9.35%のCaO、4.07%のMgO、0.41%のAl23、0.23%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、0.09%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.0002%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.0013%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.0007%のエルビウム(Er23又は他の好適な化学量論)からなる着色剤部分と、を有した。実施例4の窓は、熱処理後、86%の可視透過率、9%の外側可視反射率、9%の内側可視反射率、及び0.73(73%)のSHGC値を有した。
実施例5
【0038】
実施例5は、ガラス基材1及び2が実施例1と比較して位置が反転したことを除いて、実施例1と同じであった。換言すれば、実施例1の透明ガラス基材及び緑色ガラス基材の位置は、実施例5において、透明ガラスの方が車両外部に近くなり、緑色ガラスの方が車両内部に近くなるように、実施例5において入れ替えられた。コーティング20は、車両内部に露出した図1に示す位置で、実施例5におけるインボードガラス基材上に、したがって緑色ガラス基材上に、残留した。実施例5の窓は、熱処理後、70%の可視透過率、8%の外側可視反射率、8%の内側可視反射率、及び0.48(48%)のSHGC値を有した。したがって、驚くべきことかつ意外なことに、実施例1及び5で透明ガラス基材及び着色ガラス基材の位置を入れ替えることは、実施例1で透明ガラス基材の方が車両内部に近かったときに(実施例5と比較して)約1%低いSHGC値をもたらした。
【0039】
実施例1を上述の実施例2~5と比較すると、車両内部に露出した表面上でITO系Low-Eコーティング20と結合された、インボード基材1用の低鉄分ガラス及びアウトボード基材2用のより高い鉄分のガラスの使用は(実施例1)、驚くべきことに、許容可能に高い可視透過率と低いSHGC値との組み合わせをもたらしたことが分かる。特に、実施例1のSHGC値は、実施例2及び4~5よりも低かった。意外なことに、実施例1及び5で透明ガラス基材及び着色ガラス基材の位置を入れ替えることは、実施例1で透明ガラス基材の方が車両内部に近かったときに(実施例5と比較して)約1%低いSHGC値をもたらした。実施例1と実施例5との間の唯一の違いは、2つのガラス基材の位置を入れ替えたことであった。更に、実施例3のSHGC値は許容可能に低かったが、実施例3の可視透過率は悪くなり、70%未満であった。したがって、実施例1のみが、高い可視透過率と低いSHGCの組み合わせを達成することができた。
実施例6
【0040】
実施例6は、厚さ0.76mmのSaflex(商標)R透明PVB積層層3と共に積層された、厚さ2mmの透明な低鉄分ガラス基材1と厚さ5mmの暗色に着色されたより高い鉄分のガラス基材2とを有する、図1の実施形態による積層された車両用窓であった。コーティング20は、図1に示すように、車両内部に面し、かつ、これに露出するように、インボードガラス基材1の表面上に設けられた。実施例6のコーティング20は、実施例1でのものと同じであり、厚さ55nmの酸窒化シリコン層9b、厚さ105nmのITO層5、及び厚さ60nmの酸窒化シリコン層9aから構成された。実施例6では、透明な低鉄分インボードガラス基材1は、重量パーセントによって、約71.69%のSiO2、13.70%のNa2O、9.35%のCaO、4.07%のMgO、0.41%のAl23、0.23%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、0.09%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.0002%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.0013%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.0007%のエルビウム(Er23又は他の好適な化学量論)からなる着色剤部分と、を有した。また実施例6では、より高い鉄分かつより高い吸収性の暗色に着色されたアウトボードガラス基材2は、重量パーセントによって、約71.78%のSiO2、13.72%のNa2O、7.86%のCaO、3.95%のMgO、0.58%のAl23、0.19%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、1.60%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.02%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.01%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.003%のSeからなる着色剤部分と、を有した。実施例6の窓は、熱処理後、13%の可視透過率、5%の外側可視反射率、5%の内側可視反射率、及び0.26(26%)のSHGC値を有した。
実施例7
【0041】
実施例6と比較する目的で、実施例7は、基材が逆にされているという点において、実施例6と異なっていた。換言すれば、実施例7では、透明な低鉄分ガラス基材はアウトボード側にあり、より高い鉄分の暗色に着色されたガラス基材はインボード側にあった。したがって、実施例7は、厚さ0.76mmのSaflex(商標)R透明PVB積層層3と共に積層された、厚さ2mmの透明な低鉄分ガラス基材2と厚さ5mmの暗色に着色されたより高い鉄分のガラス基材1とを有する、積層された車両用窓であった。コーティング20は、図1に示すように、車両内部に面し、かつ、これに露出するように、インボードガラス基材の表面上に設けられた。実施例7でのコーティング20は、実施例1及び6でのものと同じであった。実施例7では、透明な低鉄分インボードガラス基材2は、重量パーセントによって、約71.69%のSiO2、13.70%のNa2O、9.35%のCaO、4.07%のMgO、0.41%のAl23、0.23%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、0.09%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.0002%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.0013%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.0007%のエルビウム(Er23又は他の好適な化学量論)からなる着色剤部分と、を有した。また実施例7では、より高い鉄分かつより高い吸収性の暗色に着色されたインボードガラス基材1は、重量パーセントによって、約71.78%のSiO2、13.72%のNa2O、7.86%のCaO、3.95%のMgO、0.58%のAl23、0.19%のK2O、及び少量の芒硝からなる基礎ガラス組成物と、1.60%の総鉄分量(Fe23として表される)、0.02%のコバルト(Co34又は他の好適な化学量論)、0.01%のクロム(Cr23又は他の好適な化学量論)、及び0.003%のSeからなる着色剤部分と、を有した。実施例7の窓は、熱処理後、13%の可視透過率、5%の外側可視反射率、5%の内側可視反射率、及び0.28(28%)のSHGC値を有した。
【0042】
実施例6及び7を比較すると、驚くべきことかつ意外なことに、実施例6でのSHGC値は実施例7と比較して低かったことが分かり、これらの実施例では、対応の基材の位置のみが異なっていた。実施例6では、透明ガラス基材はインボード側にあり、より高い鉄分の暗い吸収ガラス基材はアウトボード側にあった。これに対して、実施例7では、透明ガラス基材はアウトボード側にあり、より高い鉄分の暗い吸収ガラス基材はインボード側にあった。したがって、車両内部に露出した表面上でITO系Low-Eコーティング20と結合された、インボード基材1用の低鉄分ガラス及びアウトボード基材2用のより高い鉄分のガラスの使用は(実施例6)、驚くべきことに、望ましい可視透過率と驚くほど低いSHGC値(実施例7での0.28と比較して、実施例6では0.26)との組み合わせをもたらしたことが分かる。
【0043】
本発明は、現在実用的で好ましい実施形態と考えられるものと関連して説明されたが、本発明は、開示される実施形態に限定されるものではなく、寧ろ、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものであることを理解されたい。例えば、2つのガラス基材は、好ましくは、本発明の好ましい実施形態において異なっているが(例えば、上記の実施例1及び5を参照)、本発明の代替実施形態では、ガラス基材1及び2は同じであってもよく、若しくは本質的に同じであってもよく、及び/又は両方のガラス基材は、本発明の特定の代替実施形態において透明若しくは着色のいずれかであってもよい(例えば、上記の他の実施例を参照)。
【0044】
本発明の例示的実施形態では、車両(例えば、車、トラック、列車、バス、又はボート)用窓が提供され、この窓は、ポリマー包含中間層を介して互いに積層された第1及び第2のガラス基材であって、第1のガラス基材は、第2のガラス基材よりも車両内部に近接して配置されるように構成されている、第1及び第2のガラス基材と、第1のガラス基材上にあり、車両内部に近接して配置され、かつ、これに露出するように構成された、多層コーティングであって、コーティングが第1のガラス基材と第2のガラス基材との間に配置されない、多層コーティングと、を含み、コーティングは、32Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)を有しており、第1の透明誘電体層と第2の透明誘電体層との間に配置され、かつ、これらと直接接触している、インジウムスズ酸化物(ITO)を含む透明導電層を含んでおり、第1の透明誘電体層が、少なくとも第1のガラス基材とITOを含む透明導電層との間に配置されており、第1及び第2のガラス基材のそれぞれの基礎ガラス組成物は、SiO2 67~75%、Na2O 10~20%、CaO 5~15%、MgO 0~5%、Al23 0~5%、K2O 0~5%を含み(重量%)、第2のガラス基材は、第1のガラス基材よりも少なくとも0.25%多い総鉄分量(Fe23として表される)を含有する。
【0045】
直前の段落に記載の車両用窓では、第2のガラス基材は、第1のガラス基材よりも少なくとも0.40%多い総鉄分量を含有してもよい。
【0046】
上記の2つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、第2のガラス基材は、第1のガラス基材よりも少なくとも0.50%(より好ましくは少なくとも0.60%)多い総鉄分量を含有してもよい。
【0047】
上記の3つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1のガラス基材は、6mmの基準厚さにおいて、第2のガラス基材の可視透過率よりも少なくとも10%(より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%)高い可視透過率を有してもよい(光源A、2°観測者)。
【0048】
上記の4つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、特定の実施例において、第1のガラス基材と第2のガラス基材との間にLow-Eコーティングは設けられていない。
【0049】
上記の5つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1及び第2の誘電体層は、シリコン系であってもよく、酸素及び窒素のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0050】
上記の6つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1及び第2の誘電体層はそれぞれ、窒化シリコン及び/又は酸窒化シリコンを含んでもよい。
【0051】
上記の7つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、コーティングは、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、又は酸窒化アルミニウムなどの金属酸化物を含むオーバーコートを更に含んでもよい。オーバーコートは、好ましい実施形態では、ジルコニウムの酸化物からなる又はこれを含む。
【0052】
上記の8つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、コーティングは、少なくとも第1のガラス基材と第1の誘電体層との間に配置された別の誘電体層(例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、及び/又は酸窒化シリコン)を更に含んでもよい。
【0053】
上記の9つの段落のいずれかに記載の車両用窓では、ITOを含む層は、1.80~1.93の屈折率(n)を有してもよい。
【0054】
上記の10個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、コーティングは、第1のガラス基材から離れていく順に、第1の誘電体層であって、第1の誘電体層が、酸窒化シリコンを含んでもよく、1.60~1.90の屈折率及び10~120nmの厚さを有してもよい、第1の誘電体層と、ITOを含む層であって、ITOを含む層が40~200nmの厚さを有してもよい、ITOを含む層と、第2の誘電体層であって、第2の誘電体層が、酸窒化シリコンを含んでもよく、1.60~1.90の屈折率及び/又は10~120nmの厚さを有してもよい、第2の誘電体層と、を含んでもよい。
【0055】
上記の11個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、コーティングは、第1のガラス基材から離れていく順に、第1の誘電体層であって、第1の誘電体層が、酸窒化シリコンを含んでもよく、1.65~1.80の屈折率及び40~85nmの厚さを有してもよい、第1の誘電体層と、75~175nmの厚さを有してもよい、ITOを含む層と、酸窒化シリコンを含んでもよく、1.65~1.80の屈折率及び/又は40~80nmの厚さを有してもよい、第2の誘電体層と、を含んでもよい。
【0056】
上記の12個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1のガラス基材の着色剤部分は0.001~0.20%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよく、第2のガラス基材の着色剤部分は少なくとも0.30%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよい。
【0057】
上記の13個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1のガラス基材の着色剤部分は0.001~0.20%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよく、第2のガラス基材の着色剤部分は少なくとも0.50%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよい。
【0058】
上記の14個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1のガラス基材の着色剤部分は0.001~0.15%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよく、第2のガラス基材の着色剤部分は少なくとも0.60%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよい。
【0059】
上記の15個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1のガラス基材の着色剤部分は0.01~0.10%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよく、第2のガラス基材の着色剤部分は少なくとも0.70%の総鉄分量(Fe23として表される)を含んでもよい。
【0060】
上記の16個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、第1のガラス基材は透明ガラス基材であってもよく、第2のガラス基材は着色(例えば、緑色に着色された、及び/又は暗色/黒色/灰色に着色された)ガラス基材であってもよい。
【0061】
上記の17個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、ポリマー包含中間層はPVBを含んでもよい。
【0062】
上記の18個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、コーティングは、25Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)、及び/又は0.30以下の半球放射率を有してもよい。
【0063】
上記の19個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、コーティングは、20Ω/sq以下のシート抵抗(Rs)、及び/又は0.20以下の半球放射率を有してもよい。
【0064】
上記の20個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、窓は、0.48以下のSHGC値を有してもよい。
【0065】
上記の21個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、窓は、少なくとも70%の可視透過率(光源A、2°観測者)、及び/又は0.48以下のSHGC値を有してもよい。
【0066】
上記の22個の段落のいずれかに記載の車両用窓では、少なくともコーティング及び第1のガラス基材は熱処理されてもよい。第2のガラス基材もまた、熱強化中に及び/又は2つのガラス基材の熱曲げ/積層中に、熱処理されてよい。
図1
図2
図3
図4