(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両用シートパッド及びその下層用の発泡体
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20241114BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20241114BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20241114BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20241114BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241114BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20241114BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A47C27/15 A
B60N2/90
B29C39/24
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/36
(21)【出願番号】P 2023120589
(22)【出願日】2023-07-25
(62)【分割の表示】P 2019168375の分割
【原出願日】2019-09-17
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110089(JP,A)
【文献】実開平4-15468(JP,U)
【文献】特開2018-175107(JP,A)
【文献】国際公開第2004/034853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
B60N 2/90
B29C 39/24
B29C 39/10
B29C 44/00
B29C 44/12
B29C 44/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面、裏面及び側壁面を備える第一発泡体と、
前記第一発泡体上に積層した第二発泡体とを備える車両用シートパッドにおいて、
前記第一発泡体の前記側壁面が、前記裏面との接合端へ向けて、外側へ反る曲面を形成し
ており、
前記第二発泡体には、前記側壁面を覆う側周層が形成されていることを特徴とする車両
用シートパッド。
【請求項2】
車両用シートパッドの下層を構成し、天面、裏面及び側壁面を備える発泡体であって、
前記側壁面が、前記裏面との接合端へ向けて、外側へ反る曲面を形成し
ていることを特徴とする、車両
用シートパッドの下層用の発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートを構成する車両用シートパッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用座席シートを構成するシートパッドは、軟質ポリウレタン発泡成形体で造られてきたが、軽量化対策で、下層側をビーズ発泡成形体の別部材に置き換える動きが進んでいる。例えばシートパッドのうち座部側のクッションパッドは、車両設置の状態と上下を逆にした発泡成形型を用いて、その上型に予め成形されたビーズ発泡成形体の芯パッドをセットした後、軟質ポリウレタン発泡成形体を発泡成形している。 ここで、上型へのビーズ発泡成形体のセットをおろそかにすると、軟質ポリウレタン発泡成形体の発泡成形過程で、上型とビーズ発泡成形体との間隙に発泡原料が侵入する。ビーズ発泡成形体の裏面外周縁沿いには、表皮端末に取付けた係止具を挿入固定させるための係止用溝が設けられており、該係止用溝に発泡原料が入り込むと、表皮の係止具が止められない。係止用溝に入り込んだ発泡原料の硬化物を取除くのが大変な作業になる。 こうしたことから、軟質ポリウレタン発泡成形体の発泡成形過程で、前記間隙への発泡原料の侵入を防ぐ発明がいくつか提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、請求項1に記載のごとく「…ビーズ発泡成形体の芯パッドと、該芯パッドを埋設一体化している軟質ポリウレタン発泡成形体にして、その意匠面側に前記受け面部分を形成する一方、前記意匠面側と反対の内面側が前記芯パッドの表面に接する表層パッドと、該表層パッドに係る意匠面側の下縁部分と接し、前記芯パッドに係る側壁から外方へ張り出した鍔部、とを具備し、該鍔部は、前記表層パッドに係る意匠面側の下縁部分と接した下縁部分接合部からここを起点に外方へ向けて更に張り出して鍔状に形成された外鍔部を有する」車両用シートパッドである(
図12)。外鍔部59を設けることによって、表層パッド6の発泡成形で、上型と下型間に該外鍔部59を介在させて型閉じできるので、発泡原料が芯パッド5の裏面側に回り込まない。係止用溝52への発泡原料の浸入を確実に阻止できる優れものの発明になっている。 しかし、特許文献1の発明は、表層パッド6(本発明の「第二発泡体」)よりも芯パッド5(本発明の「第一発泡体」)の外鍔部59が突出しており、表皮4がシートパッドを覆ったときに、外鍔部59と表層パッド6との境界部Eにて、表皮4との間に空所Sができてしまう問題がある。特に、芯パッド5は表層パッド6に比べて硬いため、表皮4の巻き込み形状に合せて変形させることができない。表皮4が、芯パッド5を含めて表層パッド6の下部を巻き込んで、係止具42を係止用溝52へ挿入固定する際、空所Sをなくすことができず、境界部Eの表皮本体41が浮いてしまう。表皮4がシートパッドに密着しない問題を抱えていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、第二発泡体の発泡成形で、上型と第一発泡体との間隙に発泡原料が浸入することを有効阻止でき、且つ成形されたシートパッドに表皮でカバーをかけた時に空所をつくらず、第一発泡体と第二発泡体との境界部でも表皮を密着させ、フィットさせることができる車両用シートパッド及びその下層用の発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、第1の発明の要旨は、裏面が露出して下層になる第一発泡体上に、着座乗員が当接する側の受け部層を積層した第二発泡体が発泡成形されている車両用シートパッドにおいて、前記第一発泡体が、前記第二発泡体よりも硬くして単位重量小で発泡成形されていると共に、その裏面外周縁沿いに設けられた表皮の係止用溝が在る部位で、該係止用溝の外方側壁部に係る側壁面が、該第一発泡体の天面側から裏面との接合端まで、該接合端へ向けて外方へ傾くなだらかな曲面を形成し、且つ前記第二発泡体には、前記受け部層の外周部から延在して、前記側壁面を覆う側周層が発泡成形されていることを特徴とする車両用シートパッドにある。第2の発明たる車両用シートパッドは、第1の発明で、第二発泡体を軟質ポリウレタン発泡成形体とし、前記第一発泡体をビーズ発泡成形体としたことを特徴とする。第3の発明たる車両用シートパッドは、第1又は2の発明で、第一発泡体の天面側から裏面との接合端へ向かう前記側壁面の延長線状にパーティングラインの合せスジが形成されていることを特徴とする。第4の発明たる車両用シートパッドは、第3の発明で、合せスジから外方にガス抜き用ベント膜が延在形成されたことを特徴とする。 第5の発明の要旨は、裏面が露出して下層になる第一発泡体上に、着座乗員が当接する側の受け部層が積層される第二発泡体を発泡成形する車両用シートパッドの製造方法において、前記第一発泡体を、前記第二発泡体よりも硬くして単位重量小で発泡成形し、且つその裏面外周縁沿いに設けられた表皮の係止用溝が在る部位で、該係止用溝の外方側壁部に係る側壁面を、該第一発泡体の天面側から裏面との接合端まで、該接合端へ向けて外方へ傾くなだらかな曲面に形成して、該第一発泡体の裏面側を上向きにして上型に該第一発泡体をセットした後、下型のキャビティ面上に第二発泡体用発泡原料を注入すると共に型閉じし、その後、前記側壁面が前記受け部層から延在した前記側周層で覆われる前記第二発泡体を発泡成形したことを特徴とする車両用シートパッドの製造方法にある。第6の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、第5の発明で、第二発泡体を軟質ポリウレタン発泡成形体とし、前記第一発泡体をビーズ発泡成形体としたことを特徴とする。第7の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、第5又は6の発明で、第一発泡体の外方へ傾くなだらかな曲面を形成して裏面との接合端へ向かう前記側壁面の延長線上に、前記型閉じによって二つの型が閉じた型合せ面のパーティングラインとなる合せ目を形成したことを特徴とする。第8の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、第7の発明において、型閉じで、前記型合せ目のある前記型合せ面に型外へ通じる隙間を形成して、該隙間からガス抜きしつつ前記第二発泡体を発泡成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用シートパッド及びその下層用の発泡体は、第一発泡体をインサート品にし、上型と第一発泡体との間隙に発泡原料が浸入することを抑えて第二発泡体の発泡成形を良好に実施でき、且つ第一発泡体と第二発泡体との境界部でも表皮を密着させることもでき、生産性向上,品質向上等に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の車両用シートパッド及びその製造方法の一形態で、シートパッドの裏面側斜視図である。
【
図5】
図1のII-II線断面図における第一発泡体の左側部分の拡大図である。
【
図6】第一発泡体を上型にセットし、発泡原料を注入する断面図である。
【
図8】
図7の左側側周部用キャビティで発泡原料が発泡成長する様子を示す説明断面である。
【
図10】
図7の右側側周部用キャビティで発泡原料が発泡成長する様子を示す説明断面図である。
【
図11】第二発泡体を発泡成形した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)及びその製造方法について詳述する。
図1~
図11は本発明のシートパッド及びその製造方法の一形態で、
図1はシートパッドの斜視図、
図2は
図1のII-II線断面図、
図3は
図2の右側拡大図、
図4は
図1の第一発泡体の斜視図、
図5は
図1のII-II線断面図における第一発泡体の左側拡大図、
図6は第一発泡体を上型にセットし、発泡原料を注入する断面図、
図7は型閉じの断面図、
図8は
図7の左側側周部用キャビティで発泡成長する様子を示す説明図、
図9は
図8の部分拡大図、
図10は
図7の右側側周部用キャビティで発泡成長する様子を示す説明図、
図11は第二発泡体を発泡成形した断面図である。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。
【0010】
(1)車両用シートパッド 車両用シートパッド1は、着座乗員の下半身を受け支えるクッションパッドや乗員背中を受け止めるバックパッドである。ここでのシートパッド1は、車両後部座席のクッションパッドに適用する(
図1,
図2)。該シートパッド1に表皮を被せてシートクッションの形にすれば、公知のバックパッドに表皮を被せたシートバックとで、車幅方向に補助席部3Cが在る後部座席になる。
図1~
図5は車両設置時とは上下逆置きにしたシートパッド1になっている。
図1の紙面左右方向が車幅方向、紙面下方が車両上方を示し、本発明でいう「車幅方向」,「上方」も同様とする。 シートパッド1は、第一発泡体2と第二発泡体3とを具備する。
【0011】
第一発泡体2は、シートパッド1の下層を占める嵩上げ用発泡成形体である(
図2,
図4)。第一発泡体2は嵩上げ用芯体で、その裏面2bが露出する(
図1)。第二発泡体3よりも硬くして(硬度は大)、単位重量小(見掛け密度が小さい)で発泡成形されている。例えば、いわゆるビーズ発泡法によって得られた発泡成形体で構成される。原料ビーズを予備発泡成形させた後、型内発泡成形によって成形されているブロック状ビーズ発泡成形体である。ビーズ発泡成形体は、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、又はこれらのうち一つを少なくとも含む成形体であるのが好ましい。気泡が内部に密閉されたビーズ発泡成形体は、体積の大部分が気体で軽量にして第二発泡体3よりも硬く、シートパッド用嵩上げ部材としての硬度と保形性がある。
【0012】
第一発泡体2の裏面2bには、その外周縁21に沿って表皮の係止用溝22が所定間隔で複数設けられている(
図4)。各係止用溝22が在る部位で、それらの外方側壁部23に係る側壁面23dが、該第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eに至るまで、該接合端23eに向けて外方へ反った形になっている(
図5)。係止用溝22の外方側壁部23に係る側壁面23dが、第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eまで、側面視で外方に反り返ったカーブを描いて、外方へ傾くなだらかな曲面を形成する。係止用溝22よりも外方域に在る外方側壁部23の側壁面23dは、その上下方向高さの例えば中間高さ付近を天面2a側の箇所にして、ここから第一発泡体裏面2bとの接合端23eまでを、該接合端23eへ向け外方に反る曲面に形成する。
【0013】
本実施形態は、係止用溝22の外方側壁部23に係る側壁面23dが、
図4,
図5のごとく側壁高さの略中間地点を天面2a側の起点として、ここから裏面2bとの接合端23eまで、該接合端23eに向かって一様に外方へかどだたないようなめらかに傾く曲面を形成する。第一発泡体裏面2bに係止用溝22が複数設けられるが、それら全ての外方側壁部23に係る側壁面23dが、側面視で外方に反った
図5のような曲面にするのが好ましい。第二発泡体3の発泡成形で、全ての係止用溝22への発泡原料gの浸入を抑えることができる(詳細後述)。さらにいえば、係止用溝22の外方側壁部23に係る側壁面23dだけに限らず、第一発泡体2の側壁面23dを含む側面2d全てを、側面視で外方に反った
図5のような曲面とし、側面2d全体がヘルメット状の曲面形状にするのがより好ましい。第一発泡体裏面2bへの発泡原料gの浸入によるバリ付着を、第一発泡体裏面2bの全域で防止できるからである。符号2b1は前記接合端23eから斜面を形成して係止用溝22に至る外周域裏面、符号2b2は該外周域裏面の延長域で、係止用溝22を越えた
裏面中央寄り斜面を示す。 第一発泡体2は、裏面2bを除いて、天面2aと側壁面23dを含む全側面2dが第二発泡体3に覆われる。
【0014】
第二発泡体3は、着座乗員が当接する側の受け面部分311の在る受け部層31を有して、軟質ポリウレタン発泡成形体で形成したクッション体である(
図2)。裏面2bを露出させて嵩上げ用下層になる前記第一発泡体2上に、受け部層31を積層させて第二発泡体3が発泡成形されている。着座乗員はシートパッド1に被せる図示しない表皮4(
図12参照)を介して受け面部分311に当接する。
【0015】
第二発泡体3は、受け部層31が芯パッド天面2aを覆うと共に、
図2,
図3のごとく該受け部層31の外周部312から延在して、前記第一発泡体2の外方側壁部23に係る側壁面23dを覆う側周層32が発泡成形されている。第二発泡体3の発泡成形では、第一発泡体2の天面2aから外方側壁部23に係る側壁面23dへ進み、ここから接合端23eまでの側壁面23dを側周層32によって覆う。本実施形態は、該側壁面23dを含む第一発泡体側面2dの全てを側周層32で覆う。第二発泡体3に係る受け部層31の上面は着座乗員が当接する受け面部分311側の意匠面3aとなり、側周層32の外面が第二発泡体3の側面側意匠面3dになる(
図2)。第二発泡体3が、シートパッド裏面1bにもなる第一発泡体2の裏面2bを除いて、第一発泡体2に覆い被さって一体化し、シートパッド1に仕上がっている。シートパッド裏面1bには、第一発泡体2を外側から包み込む第二発泡体3の側周層32に係る外周露出裏面3fが現れる(
図1)。
【0016】
そして、第二発泡体3には、第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eへ向かう前記側壁面23dの延長線状に、第二発泡体3の発泡成形でできるパーティングラインの合せスジ35が形成される(
図3)。合せスジ35は、発泡成形で発泡原料gが型の合せ目71に流れ込んだためにそこに発生したスジである。本合せスジ35は外周露出裏面3fと側面側意匠面3dとの境界に発生する(
図3,
図11)。第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eへ向かう側壁面23dの延長線状に、パーティングラインが設けられると、第二発泡体3の発泡成形で、パーティングラインをつくる型合せ面89,99から余剰発泡ガスを型外へ放出させ、側壁面23dに沿う発泡原料gの発泡を成長させることができる。
【0017】
より好ましくは、
図1の左側係止用溝22の外方域に図示するように、第二発泡体3の発泡成形におけるガス抜き用ベント膜36が、第二発泡体3の外周露出裏面3fに沿って延在形成されるシートパッド1とする。第二発泡体3の発泡成形では、型内にあるエアや余剰の発泡ガスを型外へ円滑放出させるべくベントが設けられる。このベントを、合せスジ35から外方に向かう隙間ε、詳しくは(2)車両用シートパッドの製造方法で述べる型閉じによる型合せ面89,99がつくる隙間εのベントとし、第二発泡体3の発泡成形時に、
図9の黒矢印のようにガス抜きを行って、ガス抜き用ベント膜36を形成する。
【0018】
係止用溝22が在る外方側壁部23の側壁面23dを既述のごとく曲面形成し、第二発泡体3の発泡成形で、該曲面に沿って発泡原料gを
図8の黒矢印方向に発泡進行させることによって、接合端23eから方向を変えて外周域裏面側2b1へは発泡原料gを進出させ難くしている。
図8の拡大図で示す
図9のごとく、前記側壁面23dの接合端23e付近の型合せ面89,99では、合せスジ35をつくる合せ目71からの該型合せ面に、型閉じで、ガス抜き用ベント膜36ができる隙間εを設けている。 合せスジ35やガス抜き用ベント膜36を設けることによって、第二発泡体3の発泡成形で、詳細後述する係止用溝22への発泡原料gの浸入をより効果的に抑えた所望のシートパッド1に出来上がっている。
【0019】
尚、ガス抜き用ベント膜36は、バリと一緒に後加工で除去される。ベント膜36の除去は、パーティングラインにできる該バリと共に簡単除去できるので、作業負担増にならない。本実施形態は、側壁面23dの曲面形成で、側壁面高さの中間域を天面2a側のスタート地点としたが、これに限定されない。また、一つの第一発泡体2に第二発泡体3が発泡成形されているシートパッド1としたが、第一発泡体2は複数に分割したものでもよい。符号3Aは乗員座席のメイン部、符号3Bはサイド部、符号3Eはバックレストとの合わせ部を示す。
【0020】
(2)車両用シートパッドの製造方法 前記シートパッド1は、例えば
図4の第一発泡体2を採用して、次のように造られる(
図6~
図11)。発泡成形型7を用い、乗員が当接する側の受け部層31を軟質ポリウレタン発泡成形体で形成した第二発泡体3を発泡成形し、その発泡成形で、インサート品の第一発泡体2と一体化する車両用シートパッド1を製造する。
【0021】
シートパッド1の製造に先立ち、第一発泡体2,発泡成形型7を準備する。第一発泡体2は、(1)シートパッドで述べたものと同じで、詳細説明を省く。ここでは、第一発泡体2の裏面外周縁21沿いに設けられた表皮4の係止用溝22が在る部位で、該係止用溝22の外方側壁部23に係る側壁面23dが、第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eまで、接合端23eに向けて外方へ傾くなだらかな曲面が形成された第一発泡体2を用いる。
図5のごとく、外方側壁部23の側壁面23dは、その上下方向のほぼ中間地点になる天面2a側から裏面2bとの接合端23eまで、側面視で接合端23eに向けて外方へ弧状に反ったカーブを描く。
【0022】
発泡成形型7は
図6,
図7のような分割型で、下型8と上型9が開閉可能に接続されている。型閉じすると、全体が椀状に凹んで受け部層31の意匠面を形成する下型キャビティ面81と、第一発泡体2の裏面2bに合わせた全体が略平坦な上型キャビティ面91とで、シートパッド1用キャビティCができる(
図7)。型7への第一発泡体2のセット後、型閉じで、二つの型8,9が閉じた型合せ面89,99のパーティングラインとなる合せ目71が、前記第一発泡体2の外方へ傾く曲面を形成して裏面2bとの接合端23eへ向かう側壁面23dの延長線上に形成される。そして、本実施形態はシートパッド裏面1bで、
図1の左側係止用溝22の外方側壁部23にガス抜き用ベント膜36ができるよう、型閉じ状態下で、両型合せ面89,99間にキャビティCから合せ目71を通って型外へ抜ける隙間εが形成される(
図9)。該隙間εのスリット長は、
図9でいえば係止用溝22が存在する紙面垂直方向に、該係止用溝22の溝長を越える長さで設けられる。係止用溝22と横並びで設けられる隙間εのスリット長(
図9の紙面垂直方向長さ)は、係止用溝22に係る両方の溝端を越える長さがある。第二発泡体3の発泡成形で、係止用溝22への発泡原料gの浸入が効果的に抑えられる。 尚、発泡成形型7は車両設置時のシートパッド1とは上下が逆になった形で成形する。
【0023】
シートパッドの製法は、まず、前記発泡成形型7と前記第一発泡体2を用い、第一発泡体2の裏面2b側を上にして、第一発泡体2を上型9にセットする(
図6)。
図6の第一発泡体2は、係止用溝22周りから接合端23eまでの外周域裏面2b1が外方にやや下降斜面を形成しており、これに合わせて上型キャビティ面91が張り出している。 第一発泡体2の裏面2bよりも上型キャビティ面91の方が少し大きくなっており、上型9へ第一発泡体2をセットすると、第二発泡体3の前記外周露出裏面3fを形成する露出キャビティ面部分911が、第一発泡体2の外側周囲にはみ出す(
図8)。この露出キャビティ面部分911は、第一発泡体2の上型9へのセットによって、第一発泡体2の外方へ傾く曲面を形成して裏面2bとの接合端23eへ向かう側壁面23dの該接合端23eからなめらかに延びるように、上型キャビティ面91に設けられる。上型9への第一発泡体2のセットで、側壁面23dの曲面と露出キャビティ面部分911とが、かどをたてずに一続きのようにつながる姿態になる(
図8,
図10)。
【0024】
次に、下型キャビティ面81上に、注入ノズルNL等を使用して第二発泡体3用発泡原料gを注入する(
図6)。 続いて、上型9を作動させ型閉じする(
図7)。上型9と下型8との型閉じで、第一発泡体2がインサートセットされたシートパッド用キャビティCができる。上型9の露出キャビティ面部分911はキャビティC内で文字通り露出状態となる。本実施形態は発泡原料gの注入後に型閉じしたが、型閉じ後に発泡原料gを注入することもできる。
【0025】
型閉じ後、第二発泡体3の発泡成形に移る。裏面2bが露出して下層になる第一発泡体2上に、着座乗員が当接する側の受け部層31が積層される第二発泡体3を発泡成形する。
図7の型閉じ状態を所定時間維持し、軟質ポリウレタン発泡成形体の第二発泡体3を発泡成形する。
【0026】
第二発泡体3の発泡成形では、発泡原料gの注入後に発泡が始まる。発泡原料gは発泡してキャビティCの受け部層31にあたる部分を埋めた後、
図8の白抜き矢印のごとく、側周層用キャビティ部分C32に向かうが、この発泡は、キャビティ面81,91やインサート品(第一発泡体2)の側壁面23dに沿って発泡進行する性質がある。本発明は、第一発泡体2の側壁面23dが天面2a側から裏面2bとの接合端23eまで、
図8,
図10のような曲面に形成されている。よって、側周層用キャビティ部分C32では、発泡原料gが、同図黒矢印に示すごとく側壁面23dの曲面に沿って発泡上昇して接合端23eを通り過ぎ、そのまま未だ発泡原料gで埋まってないキャビティCの上部空域へと上昇する。そのため、接合端23eで発泡原料gが方向転換して、上型キャビティ面91に当接セットした第一発泡体2の裏面2b側へ入り込むのは軽減される。第二発泡体3の発泡成形で、係止用溝22への発泡原料gの浸入防止につながる。
【0027】
第二発泡体3の発泡成形時の発泡上昇が、該第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eまで、側面視で外方に反ったカーブの側壁面23dに沿って進み、また側壁面23dの曲面と露出キャビティ面部分911とがなめらかにつながっているので、
図8や
図10の黒矢印方向がそのまま露出キャビティ面部分911まで進行する。 既述のごとく、上型キャビティ面91に第一発泡体2が当接するように係止,セットされている。上型キャビティ面91と外周域裏面2b1とが密着シールするほどにはないが、
図8や
図10の黒矢印方向の発泡の流れができあがっている。よって、発泡原料gが途中の接合端23eから屈折して、第一発泡体2と上型キャビティ面91間の狭い間隙へ浸入し難くなっている。
【0028】
加えて、型閉じで、
図9のごとく合せ目71のある型合せ面89,99に型外へ通じる隙間εを形成して、該隙間εからガス抜きしつつ第二発泡体3を発泡成形すると、
図9の黒矢印に示すガス抜きの流れに発泡原料gの発泡上昇がつられる。側壁面23dの延長上に合せスジ35用の型の合せ目71、さらに型閉じ下の型合せ面89,99でつくる隙間εが設けられることによって、第二発泡体3の発泡成形時、合せ目71から前記隙間εを通じて、型内エアや余剰発泡ガスが
図9のごとく型外へ放出されていく。該余剰発泡ガスの流れが、発泡原料gの発泡成長を
図8の黒矢印方向へ向かわせるよう推進する。発泡原料gの成長が余剰発泡ガスの流れに追随する形になり、接合端23eから折れて第一発泡体裏面2b側への進路変更が抑制され、係止用溝22への発泡原料gの浸入がしづらくなる。発泡成形時における発泡原料gの係止用溝22への浸入を防いで、第一発泡体2と一体化した第二発泡体3が発泡成形される。下型キャビティ面81で受け部層31を形成すると共に、受け部層31と反対側の内面3bを第一発泡体2の天面2aに当接させ、側周層32で第一発泡体側面2dを覆う第二発泡体3が発泡成形される。 かくして、第二発泡体3の発泡成形を完了させ脱型すれば、第一発泡体2の組み込みによる軽量化を実現し、且つ係止用溝22に発泡原料gの浸
入のない品質良好の所望のシートパッド1が得られる。 他の構成は、(1)車両用シートパッドで述べた内容と同様で、その説明を省く。(1)と同一符号は同一又は相当部分を示す。符号2Aはメイン部下層、符号2Bはサイド部下層、符号2Cは補助席部下層、符号88は吊溝用突部を示す。
【0029】
(3)効果 このように構成した車両用シートパッド及びその製造方法によれば、第一発泡体2が第二発泡体3よりも硬くして単位重量小で発泡成形されるので、軽量化できる。ビーズ発泡成形体の第一発泡体2上に、着座乗員が当接する側の受け部層31を積層した軟質ポリウレタン発泡成形体の第二発泡体3が発泡成形されると、軽量化を確保しながら、受け部層31が軟質ポリウレタン発泡成形体で形成されるので、従来と変わらぬクッション性,快適性が維持される。 そして、第二発泡体3には、受け部層31の外周部312から延在して、第一発泡体2の側壁面23dを含む側面2dの全てを覆う側周層32が発泡成形される。表皮4がシートパッド1を覆ったときに、クッション性に富む側周層32が、覆う表皮4に合わせて自在に変形する。特許文献1の硬くて出っ張る外鍔部59のときのような空所Sをつくらず、第一発泡体2と第二発泡体3との境界部でも表皮4を密着させ、フィットさせることができる。
【0030】
第一発泡体2の裏面外周縁21沿いに設けられた表皮4の係止用溝22が在る部位で、該係止用溝22の外方側壁部23に係る側壁面23dが、該第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eまで、該接合端23eに向けて外方へ傾くなだらかな曲面を形成すると、第二発泡体3の発泡成形で、係止用溝22への発泡原料gの浸入を効果的に抑えることができる。第一発泡体2が裏面2b側を上向きにして上型9にセットされ、側壁面23dが接合端23eに向けて外方へ傾く曲面を形成すると、発泡成形時における発泡原料gの発泡成長が第一発泡体2の側壁面23dに沿って発泡上昇していく性質から、側壁面23dに沿って接合端23eを通過してキャビティCの上部空域へ前記曲面カーブに乗って発泡上昇する。発泡上昇の発泡原料gが、接合端23eで突然折れ曲がって、第一発泡体裏面2bと上型キャビティ面91との間隙へ入り込み難くなっている。係止用溝22へ発泡原料gが浸入するのが抑制される。
【0031】
また、上型9の第一発泡体2のセットで、
図8,
図10のように側壁面23dの接合端23eで露出キャビティ面部分911になめらかにつながると、第二発泡体3の発泡成形時の発泡原料gの発泡進行が側壁面23dに沿って接合端23eの箇所を、抵抗なく素通りしてキャビティCの上部空域へと向かう。発泡原料gが接合端23eで屈折して第一発泡体裏面2bと上型キャビティ面91との間隙へ入り込むのをより効果的にくい止める。よって、係止用溝22に発泡原料gが入り込み難い。品質良好なシートパッド1を造ることができる。
【0032】
さらに、接合端23eへ向かう前記側壁面23dの延長線上に、型閉じによって二つの型が閉じた型合せ面89,99のパーティングラインとなる合せ目71を形成すると、合せ目71から余剰発泡ガスを型外へ放出させながら、第二発泡体3の発泡成形における発泡原料gを接合端23e、さらにその上部空域に向けて発泡上昇させるのを誘導できる。第二発泡体3の成形が良好になると同時に、係止用溝22に発泡原料gが浸入しなくなる。合せ目71がパーティングラインの合せスジ35になるので、第一発泡体2の天面2a側から裏面2bとの接合端23eへ向かう側壁面23dの延長線状にパーティングラインの合せスジ35が形成される場合も、同様の効果が得られる。
【0033】
加えて、型閉じで、型合せ目71のある型合せ面89,99に型外へ通じる隙間εを形成して、該隙間εからガス抜きしつつ第二発泡体3を発泡成形すると、キャビティCから隙間εを潜り抜ける
図9の黒矢印に示すガス抜きの流れに発泡原料gの発泡上昇が追従する。
図9の黒矢印流れができると、第二発泡体3の発泡成形時の発泡成長もこの矢印方向へ向かう作用が働く。第二発泡体3の発泡成形で、発泡原料gの成長が余剰発泡ガスの流れに乗ることとなり、接合端23eで第一発泡体裏面2b側に急に曲がって係止用溝22へ発泡原料gが浸入し難くなっている。係止用溝22へ発泡原料gの入り込みがないシートパッド1を造ることができる。 かくのごとく、シートパッド1に空所Sをつくらずに表皮4を密着させることができ、また第二発泡体3の発泡成形で、第一発泡体裏面2b側への発泡原料gの侵入を阻止し、後加工で係止用溝22に入り込んだ発泡原料gの硬化物を取除く必要のないシートパッド1を簡便に造ることができるなど極めて有益である。
【0034】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。シートパッド1,第一発泡体2,側壁部23,側壁面23d,第二発泡体3,受け部層31,側周層32,発泡成形型7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0035】
1 シートパッド 2 第一発泡体 2a 天面 2b 裏面 22 係止用溝(表皮の係止用溝) 23 側壁部(外方側壁部) 23d 側壁面 23e 接合端 3 第二発泡体 31 受け部層 32 側周層 33 合せスジ 36 ベント膜(ガス抜き用ベント膜) 71 合せ目 8 下型 81 下型キャビティ面 9… 上型 ε 隙間 g 発泡原料