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特許7588194気象予測表示システム及び気象予測表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】気象予測表示システム及び気象予測表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20241114BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20241114BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20241114BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q10/04
G01W1/00 Z
G01W1/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023167680
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000230973
【氏名又は名称】日本工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】松ヶ平 賢一
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184554(JP,A)
【文献】特表2009-514116(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213547(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/051318(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G01W 1/00
G01W 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象場所の所定期間に亘るアンサンブル予測を構成する複数のアンサンブルメンバーの予測結果を取得する取得部と、
複数の前記予測結果の程度をそれぞれ着色で示したヒートマップを作成する作成部と、
前記ヒートマップを含む気象予測情報を所定の出力装置に出力させる出力部と、
を具備する、
気象予測表示システム。
【請求項2】
前記ヒートマップにおいて、複数の前記予測結果の程度は、互いの時間軸が合わせられた状態で並ぶように示される、
請求項1に記載の気象予測表示システム。
【請求項3】
前記取得部は、所定のタイミングごとの複数の前記予測結果を取得し、
前記作成部は、前記取得部により取得された前記所定のタイミングごとの複数の前記予測結果に基づき、前記ヒートマップを作成し、
複数の前記ヒートマップは、互いの時間軸が合わせられた状態で、かつ、前記所定のタイミングの時系列に並ぶように示される、
請求項2に記載の気象予測表示システム。
【請求項4】
前記気象予測情報には、前記アンサンブル予測に関する実績値が含まれ、
前記実績値は、複数の前記ヒートマップと互いに時間軸が合わせられた状態で並ぶように示される、
請求項3に記載の気象予測表示システム。
【請求項5】
前記ヒートマップは、
前記予測結果の程度がそれぞれ着色の濃淡で示される、
請求項1に記載の気象予測表示システム。
【請求項6】
前記アンサンブル予測は、降雨量予測である、
請求項1に記載の気象予測表示システム。
【請求項7】
前記対象場所には、水力発電所を備えるダムが含まれる、
請求項1に記載の気象予測表示システム。
【請求項8】
対象場所の所定期間に亘るアンサンブル予測を構成する複数のアンサンブルメンバーの予測結果を取得する取得工程と、
複数の前記予測結果の程度をそれぞれ着色で示したヒートマップを作成する作成工程と、
前記ヒートマップを含む気象予測情報を所定の出力装置に出力させる出力工程と、
を具備する、
気象予測表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気象予測表示システム及び気象予測表示方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、気象予測は、予測期間が長ければ長いほど予測の不確実性が増加する。これに対して例えば予測の不確実性があることを前提とし、初期値等にばらつきを与えて、わずかに異なる条件下での複数の数値予測を行い、各条件下での予測結果を統計的に処理して予測結果の確率密度分布を算出し、これにより全体(長期間)の傾向を示したアンサンブル予測を用いる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、大気の光学的厚さに注目した気象のアンサンブル予測を行って、太陽光発電装置による発電量の予測値を、確率密度分布に基づく信頼度とともに求めるシステムが開示されている。このような技術によれば、予測の不確実性を考慮し、より好適な電力取引計画を作成することが可能となる。
【0004】
しかしながら、アンサンブル予測の結果は、気象の専門家以外の者が理解し難い場合が多く、活用し難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-167439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、気象予測の結果を活用し易くできる気象予測表示システム及び気象予測表示方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、対象場所の所定期間に亘るアンサンブル予測を構成する複数のアンサンブルメンバーの予測結果を取得する取得部と、複数の前記予測結果の程度をそれぞれ着色で示したヒートマップを作成する作成部と、前記ヒートマップを含む気象予測情報を所定の出力装置に出力させる出力部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記ヒートマップにおいて、複数の前記予測結果の程度は、互いの時間軸が合わせられた状態で並ぶように示されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記取得部は、所定のタイミングごとの複数の前記予測結果を取得し、前記作成部は、前記取得部により取得された前記所定のタイミングごとの複数の前記予測結果に基づき、前記ヒートマップを作成し、複数の前記ヒートマップは、互いの時間軸が合わせられた状態で、かつ、前記所定のタイミングの時系列に並ぶように示されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記気象予測情報には、前記アンサンブル予測に関する実績値が含まれ、前記実績値は、複数の前記ヒートマップと互いに時間軸が合わせられた状態で並ぶように示されるものである。
【0012】
請求項5においては、前記ヒートマップは、前記予測結果の程度がそれぞれ着色の濃淡で示されるものである。
【0013】
請求項6においては、前記アンサンブル予測は、降雨量予測である。
【0014】
請求項7においては、前記対象場所には、水力発電所を備えるダムが含まれるものである。
【0015】
請求項8においては、対象場所の所定期間に亘るアンサンブル予測を構成する複数のアンサンブルメンバーの予測結果を取得する取得工程と、複数の前記予測結果の程度をそれぞれ着色で示したヒートマップを作成する作成工程と、前記ヒートマップを含む気象予測情報を所定の出力装置に出力させる出力工程と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明においては、気象予測の結果を活用し易くできる気象予測表示システム及び気象予測表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る気象予測表示システムの構成を示したブロック図。
図2】サーバにより実行される降雨量予測表示処理(気象予測表示方法)を示したフローチャート。
図3】ある一日におけるヒートマップの一例を示した図。
図4】(a)ヒートマップの内容を説明するための第一の説明図。(b)同じく、第二の説明図。
図5】実績値マップの内容を説明するための説明図。
図6】担当者端末に表示される気象予測比較図の第一の例を示した図。
図7】担当者端末に表示される気象予測比較図の第二の例を示した図。
図8】担当者端末に表示される気象予測比較図の第三の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る気象予測表示システム1について説明する。
【0020】
気象予測表示システム1は、対象場所の所定期間に亘る気象予測の結果を表示するためのものである。気象予測とは、気温、湿度、風、雲量、視程、雨、雪、雷等の気象に関する要素を総合した大気の状態を予測したものである。本実施形態において、対象場所としては、後述するような水力発電所を備える土木構造物(ダム40)を想定している。また本実施形態において、気象予測としては、降雨が生起する時間帯及び降雨の強度等を予測する降雨量予測を想定している。
【0021】
ここで、一般的にダムが有する機能には、発電及び洪水調整の機能が含まれる。すなわち、水力発電所が設けられたダムにおいては、貯めた水を下流へ放流し、大きな落差を利用して発電を行うことができる。また、大雨による雨水等が流入した場合、放流量を調整して大量の水を貯め込むことにより、下流域の洪水被害を抑制できる。
【0022】
なお大雨により流入した雨水等をダムで貯留した場合、貯水量が通常時と比べて大きく増加するため、次の大雨に備えるよう、速やかに(すなわち発電を経由せずに)放流が行われることが多い。しかし、これ以降暫くの間大雨が見込まれない場合、ゆっくりと(すなわち発電を経由して)放流すれば、エネルギーを無駄にせず有効活用できる。そこで、ダムの放流管理を好適に行うために、比較的長期間(例えば2週間程度)に亘る降雨量予測(気象予測)が必要となる。
【0023】
しかし、気象予測は、予測期間が長ければ長いほど予測の不確実性が増加する。これに対して、予測の不確実性があることを前提とし、初期値等にばらつきを与えて、わずかに異なる条件下での複数の数値予測を行い、各条件下での予測結果を統計的に処理して予測結果の確率密度分布を算出し、これにより全体(長期間)の傾向を示したアンサンブル予測を用いることもできる。
【0024】
例えば気象庁が提供するアンサンブル予測においては、アンサンブル予測を構成するアンサンブルメンバーを51個とし、所定の提供時間ごとに長期間の降雨量予測の結果が示される。具体的には、長期間の降雨量予測の結果として、例えばアンサンブルメンバーに基づく51種類の予測計算結果を、累積雨量として重ねて表示する手法で、分析、整理が行われる。
【0025】
しかし、上述の如き手法(表示)では、気象の専門家以外の者は、降雨が生起する期間や降雨の強度、統計的な有意性等、降雨量予測の結果を理解し難い場合が多い。すなわち、ダムの放流管理を行う現場担当者(気象の専門家以外の者)は、降雨量予測の結果を活用できず、ダムの放流管理を行い難いという問題がある。
【0026】
これに対して、本実施形態に係る気象予測表示システム1は、降雨量予測の結果を従来とは異なる手法で表示する。具体的には、気象予測表示システム1は、降雨量予測の結果を、後述する降雨量予測比較図100図6等参照)で表示する。こうして降雨量予測比較図100によれば、現場担当者(気象の専門家以外の者)であっても、降雨量予測の結果を直感的に理解し易くできる。
【0027】
図1に示すように、本実施形態において、気象予測表示システム1は、ダム40の管理を行う管理会社に使用される。気象予測表示システム1は、主として気象情報提供装置10、サーバ20及び担当者端末30を具備する。
【0028】
気象情報提供装置10は、気象庁が公開する気象情報を、外部へ提供するものである。気象情報提供装置10において、最新の気象情報は、例えば毎日決まった時間(午前9時及び午後3時等)に公開される。なお気象情報には、降雨量予測の結果が含まれる。気象情報提供装置10は、クラウドサーバ(厳密にはクラウドサーバ内に仮想的に構築されたサーバ)により構成される。気象情報提供装置10は、気象庁や所定の気象情報提供事業者等により運営される。気象情報提供装置10は、インターネット回線を介して外部の機器と通信可能に構成される。なお気象情報提供装置10への通信は、アクセス権限を要し、アクセス権限を有する機器のみが通信可能とされる。
【0029】
サーバ20は、気象予測の表示に関する種々の処理を行うものである。サーバ20は、演算処理を実行可能な演算装置や、プログラム等が記憶された記憶装置を有する。サーバ20は、クラウドサーバにより構成される。サーバ20は、気象情報提供装置10へのアクセス権限を有し、インターネット回線を介して気象情報提供装置10と通信可能に構成される。こうしてサーバ20は、気象情報提供装置10から任意の気象情報を取得できる。本実施形態では、サーバ20は、1日1回午前9時に、対象場所(ダム40)における最新の降雨量予測の結果を取得する。
【0030】
またサーバ20は、取得した降雨量予測の結果に基づいて種々の処理を行う。サーバ20が行う処理には、ダム40の降雨量予測の結果を、従来とは異なる手法で表示するための処理(以下では「降雨量予測表示処理」と称する)が含まれる。降雨量予測表示処理では、ダム40の降雨量予測の結果を表示するための降雨量予測比較図100図6等参照)が作成される。なお、降雨量予測表示処理の詳細な内容については後述する。
【0031】
担当者端末30は、前記管理会社の現場担当者Hが使用する端末である。担当者端末30は、演算処理を実行可能な演算装置、プログラム等が記憶された記憶装置、現場担当者Hが操作可能な操作部、及び、所定の情報を表示(出力)可能な表示部を有する。担当者端末30は、例えばスマートフォンやパーソナルコンピュータ等によって構成される。担当者端末30は、インターネット回線を介してサーバ20と通信可能に構成される。担当者端末30には、サーバ20の降雨量予測表示処理により表示部に降雨量予測比較図100が表示(出力)される。
【0032】
以下では、図2に示すフローチャート、及び、図3から図8を用いて、サーバ20により実行される降雨量予測表示処理について説明する。
【0033】
ここで、図2は、サーバ20により実行される降雨量予測表示処理(降雨量予測表示方法)を示したフローチャートである。降雨量予測表示処理は、降雨量予測の結果として降雨量予測比較図100を作成し、担当者端末30に表示するための処理である。降雨量予測表示処理は、サーバ20により所定のタイミングで定期的に実行される。本実施形態では、降雨量予測表示処理は、気象情報提供装置10から最新の気象情報が公開されるタイミング(例えば午前9時)に、一日一回実行される。なお降雨量予測表示処理は、現場担当者Hの担当者端末30への操作を契機として実行されてもよい。
【0034】
なお以下では、便宜的に(視認可能な)説明図等を用いて説明しているが、サーバ20の処理においては、担当者端末30に表示(出力)させるもの(成果物)以外、必ずしも視認可能な状態に作成されなくともよい。
【0035】
ステップS11において、サーバ20は、気象情報提供装置10から最新の降雨量予測の結果(情報)を取得する。具体的には、サーバ20は、最新の降雨量予測の結果として、ダム40の当日を含む合計11日間に亘るアンサンブル予測を取得し、当該アンサンブル予測を構成している51種類のアンサンブルメンバーの予測結果を抽出する。なお51種類のアンサンブルメンバーには、それぞれ便宜上の番号が付されている。サーバ20は、ステップS11の処理の後、ステップS12の処理を実行する。
【0036】
ステップS12において、サーバ20は、ステップS11で取得した最新の降雨量予測の結果(情報)に基づくヒートマップM1を作成する。サーバ20は、毎日一回(一個)のヒートマップM1を作成する。以下では、図3及び図4を用いて、ヒートマップM1の内容について説明する。
【0037】
ヒートマップM1は、降雨量予測の結果(具体的には、予測された降雨量の程度)を着色の濃淡で示したものである。ヒートマップM1は、当日取得した51種類のアンサンブルメンバーの予測結果に基づいて作成される。図3に示すように、ヒートマップM1においては、概ね現時点(当日の午前9時)から10日後の24時までの期間に亘って、予測された降雨量の程度(すなわち、降雨の強度)が、上述の如く着色の濃淡で示される。なお本実施形態において、着色の濃淡としては、単色(青系統の色)の濃淡により表現される。
【0038】
なお図4は、ヒートマップM1の内容を説明するための説明図であり、ヒートマップM1の構成が簡略化されている。具体的には、図4では、ヒートマップM1の作成に用いられるアンサンブルメンバーが6種類であるとする。また図4(a)では、当日から10日後までの期間のうち、当日分のみ(ヒートマップM1の一部)を示している。
【0039】
また図4を用いた説明では、降雨の強度を示す着色の濃淡は、4種類であるとする。すなわち、予測された降雨量は、その値の大きさに基づいて4つの範囲(段階)に分けられる。具体的には、予測された降雨量が最も多い(非常に多い)範囲を最も濃い色(以下では「第1色C1」と称する)で示すものとし、2番目に多い(まあまあ多い)範囲を2番目に濃い色(以下では「第2色C2」と称する)で示すものとし、3番目に多い(あまり多くない)範囲を3番目に濃い色(以下では「第3色C3」と称する)で示すものとし、4番目に多い(少ない)範囲を4番目に濃い(最も薄い)色(以下では「第4色C4」と称する)で示すものとする。なお降雨量が無い範囲は、着色されていない(白色である)。こうして、図4(a)に示すように、予測された降雨量の大小関係は、第1色C1>第2色C2>第3色C3>第4色C4>白色という関係で示される。
【0040】
図4(a)に示すように、ヒートマップM1では、全て(6種類)のアンサンブルメンバーの予測結果が、縦軸に順番に並べられる。なお上述の如くアンサンブルメンバーには番号が付されているため、当該番号の順番にアンサンブルメンバーの予測結果が並べられる。なおアンサンブルメンバーの並び順は、特に規定されないが、一旦決定されると変更されない。すなわち、毎日作成されるヒートマップM1において、6種類のアンサンブルメンバーは同じ並び順となる。
【0041】
またヒートマップM1の横軸は、0時から24時までの時間を示している。こうして各アンサンブルメンバーの予測結果(予測された降雨量の程度)は、互いに時間軸(位相)が合わせられた状態(横軸方向の位置が互いに合わせられた状態)で並ぶように配置される。
【0042】
こうして、図4(a)に示すように、ヒートマップM1においては、各アンサンブルメンバーの予測結果が、当日の9時以降の時間ごとに着色の濃淡を用いて示される。例えば最も上段の第一のアンサンブルメンバーの予測結果においては、9時から15時頃まで第3色C3が示され、その後24時まで第2色C2が示される。すなわち、第一のアンサンブルメンバーの予測結果によれば、9時から15時頃まで降雨量があまり多くなく、15時頃から24時まで降雨量がまあまあ多くなることが示される。同様に例えば上から2段目の第二のアンサンブルメンバーの予測結果によれば、9時から12時前まで降雨量が少なく、その後21時頃まで降雨量がまあまあ多くなり、その後24時まで降雨量が非常に多くなることが示される。他のアンサンブルメンバーの予測結果も同様に示される。
【0043】
なお図4(a)においては、ヒートマップM1の一部(当日分のみ)について説明したが、翌日以降の分(1日後から10日後までの分)も同様に作成される。具体的には、図4(b)に示すように、ヒートマップM1の当日から10日後までの分は、左から右に日付の若いもの順に、互いに連続するように並べられる。こうして、図3に示すように、ヒートマップM1においては、当日、翌日、翌々日、・・・と連続するように、11日分の予測結果が横軸方向に並ぶように配置される。
【0044】
こうしてサーバ20は、図3に示すようなヒートマップM1を毎日一回作成する。なお図3に示す簡略化されていないヒートマップM1においては、降雨の強度を示す着色の濃淡は、図4に示すような4種類よりも多くの種類が使用される。なお着色の濃淡は、段階的でなく、無段階に連続的に変化するものでもよい。サーバ20は、作成したヒートマップM1を自身の記憶装置に記憶する。
【0045】
ヒートマップM1によれば、ある時間帯に対して各アンサンブルメンバーの予測結果が互いに異なっていても、着色の濃淡により予測結果の全体的な傾向を一覧して把握できる。すなわち、現場担当者Hは、着色の濃淡で降雨の強度が表現されたヒートマップM1の全体を俯瞰して見ることにより、今後の予測結果の統計的な量を一目で理解できる。
【0046】
具体的には、現場担当者Hは、ヒートマップM1によって例えば降雨量の予測の不確実性の変化や、予測される降雨量とその実績値との一致状況等を一覧できる。こうして、ヒートマップM1によれば、現場担当者Hは、当日から10日間に亘る降雨量予測の結果を直感的に把握できる。例えば図3に示す期間P1においては、全体的に着色の濃淡が濃い部分であって、当該濃い部分の位相が揃っているように把握できる。すなわち、期間P1において、現場担当者Hは、降雨量が多いことが予測され、かつ、予測の不確実性が小さいことを把握できる。
【0047】
また例えば図3に示す期間P2においては、全体的に着色の濃淡がまあまあ濃い部分であるが、当該濃い部分の位相が揃っておらずバラつきが把握できる。すなわち、期間P2において、現場担当者Hは、降雨量がまあまあ多いことが予測されるものの、予測の不確実性が大きいことを把握できる。サーバ20は、ステップS12の処理の後、ステップS13の処理を実行する。
【0048】
ステップS13において、サーバ20は、実績値マップM2を作成する。実績値マップM2は、ダム40における過去の所定期間に亘る降雨量の実績値を示すものである。すなわち本実施形態において、実績値とは、アンアンブル予測(降雨量予測)に関する値であって、実際に降った雨の量を意味する。まずサーバ20は、気象情報提供装置10と通信することにより、ダム40における直近24時間の降水量の実績値を取得する。サーバ20は、取得した実績値を自身の記憶装置に記憶する。すなわち、サーバ20は、過去の所定期間に亘るダム40の降雨量の実績値を記憶している。なお降雨量の実績値を取得する方法は、上述の如き方法に限定されない。例えばサーバ20は、所定の情報に基づいて降雨量の実績値を自ら算出してもよい。
【0049】
図5は、実績値マップM2の内容を説明するための説明図である。図5では、図4に示したヒートマップM1の内容を説明するための説明図と同様に、実績値マップM2の構成が簡略化されている。また図5では、実績値マップM2のうち、ある一日分(実績値マップM2の一部)を示している。
【0050】
図5及び図6等に示すように、実績値マップM2は、ヒートマップM1と略同一のフォーマットを有する。具体的には、実績値マップM2を構成する縦軸の大きさは、ヒートマップM1と略同一に形成される。また実績値マップM2を構成する横軸は、ヒートマップM1の横軸と、互いに時間軸(位相)が合うように形成される。また実績値マップM2では、降雨量の実績値が、ヒートマップM1と同様に、降雨の強度を示す着色の濃淡を用いて表示される。また実績値マップM2では、上述の如き着色の濃淡に重ねられた棒状のグラフにより、より詳細な降雨量の値が示される。また棒状のグラフは、着色の濃淡の視認を阻害しないように、例えば枠部分のみが目立ち、その内側部分は目立たないように形成される。サーバ20は、ステップS13の処理の後、ステップS14の処理を実行する。
【0051】
ステップS14において、サーバ20は、降雨量予測比較図100を作成する。以下では、図6及び図7を用いて、降雨量予測比較図100の内容について説明する。
【0052】
降雨量予測比較図100は、当日作成したヒートマップM1と、過去に作成したヒートマップM1と、実績値マップM2と、が互いに並ぶように配置されたものである。図6及び図7に示すように、本実施形態では、過去に作成したヒートマップM1として、過去10日分のヒートマップM1が使用される。すなわち、本実施形態において降雨量予測比較図100には、当日分と過去10日分とを合わせ、合計11日分のヒートマップM1が表示される。
【0053】
降雨量予測比較図100では、11日分のヒートマップM11が、作成日付の古いものから順番に、上から下に並べられる。すなわち、11日分のヒートマップM11は、予測が行われたタイミングに応じた時系列に並べられる。また11日分のヒートマップM1は、縦軸方向に互いに略密着して並べられる。また11日分のヒートマップM1は、互いに時間軸(位相)が合わせられた状態(横軸方向の位置が互いに合わせられた状態)で並ぶように配置される。こうして降雨量予測比較図100では、横軸方向において、最も古いもので過去10日前の予測結果から、最も先のもので将来10日後の予測結果までの、合計21日間分の予測結果が並べられる。
【0054】
また11日分のヒートマップM1の最下段(すなわち、当日分のヒートマップM1)の下方には、実績値マップM2が並べられる。実績値マップM2は、11日分のヒートマップM1と互いに時間軸(位相)が合わせられた状態で並ぶように配置される。
【0055】
こうしてサーバ20は、図6及び図7に示すような降雨量予測比較図100を毎日一回作成する。降雨量予測比較図100によれば、ある時間帯に対して各ヒートマップM1の予測結果が互いに異なっていても、着色の濃淡により予測結果の全体的な傾向を一覧して把握できる。すなわち、現場担当者Hは、着色の濃淡で降雨の強度が表現された降雨量予測比較図100の全体を俯瞰して見ることにより、今後の予測結果の統計的な量を一目で理解できる。
【0056】
具体的には、現場担当者Hは、降雨量予測比較図100によって例えば降雨量の予測の不確実性の変化や、予測される降雨量とその実績値との一致状況等を一覧できる。例えば図6に示す降雨量予測比較図100の第一の例では、現場担当者Hは、期間P11において強い雨の生起が約5日前に予測されることを容易に理解できる。また例えば図7に示す降雨量予測比較図100の第二の例では、現場担当者Hは、期間P12において強い雨の生起が約6日前に予測されることを容易に理解できる。
【0057】
また図6及び図7に示すような例において、現場担当者Hは、降雨量予測の結果を降雨量の実績値と比較することにより、予測結果の精度や傾向を容易に理解できる。このように、降雨量予測比較図100によれば、予測結果のばらつきがどれくらい生じているのかを可視化できる。サーバ20は、ステップS14の処理の後、ステップS15の処理を実行する。
【0058】
ステップS15において、サーバ20は、ステップS14において作成した降雨量予測比較図100を、担当者端末30へ送信する。こうして、現場担当者Hは、受信した降雨量予測比較図100を表示部に表示させることにより、当該降雨量予測比較図100を視認できる。すなわち、現場担当者Hは、降雨量予測比較図100により降雨量予測の結果を直感的に理解できる。こうして、現場担当者Hは、降雨量予測の結果を活用でき、ひいてはダム40の放流管理を好適に行うことができる。
【0059】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る気象予測表示システム1においては、
対象場所(ダム40)の所定期間に亘るアンサンブル予測を構成する複数のアンサンブルメンバーの予測結果を取得するサーバ20(取得部)と、
複数の前記予測結果の程度をそれぞれ着色で示したヒートマップM1を作成するサーバ20(作成部)と、
前記ヒートマップM1を含む降雨量予測比較図100(気象予測情報)を担当者端末30(所定の出力装置)に出力させるサーバ20(出力部)と、
を具備するものである。
【0060】
また本発明の一実施形態に係る気象予測表示方法においては、
対象場所(ダム40)の所定期間に亘るアンサンブル予測を構成する複数のアンサンブルメンバーの予測結果を取得する取得工程(図2に示すステップS11)と、
複数の前記予測結果の程度をそれぞれ着色で示したヒートマップM1を作成するサーバ20(図2に示すステップS12)と、
前記ヒートマップM1を含む降雨量予測比較図100(気象予測情報)を担当者端末30(所定の出力装置)に出力させるサーバ20(図2に示すステップS15)と、
を具備するものである。
【0061】
このような構成により、気象予測の結果を活用し易くできる。
すなわち、現場担当者Hが、アンサンブル予測から得られた複数のアンサンブルメンバーの予測結果について、高強度の降雨が生起する時間帯の見込みや統計的な位置づけ、また次の降雨が見込まれる時間帯を容易に理解できるように、可視化して表現することができる。また降雨が予想される時間帯が近づくにつれ、予報の不確実性が減少することが表現される。すなわち、予報の不確実性の変化について、可視化して表現することができる。
【0062】
また気象予測表示システム1においては、
前記ヒートマップM1において、複数の前記予測結果の程度は、互いの時間軸が合わせられた状態で並ぶように示されるものである。
【0063】
このような構成により、ヒートマップM1において複数の結果(アンサンブルメンバーの予測結果)の全体的な着色の濃淡の傾向によって、現場担当者Hが理解容易な態様で予測結果を可視化して表現することができる。
【0064】
また気象予測表示システム1においては、
前記サーバ20(取得部)は、所定のタイミングごとの複数の前記予測結果を取得し、
前記作成部は、前記サーバ20(取得部)により取得された前記所定のタイミングごとの複数の前記予測結果に基づき、前記ヒートマップM1を作成し、
複数の前記ヒートマップM1は、互いの時間軸が合わせられた状態で、かつ、前記所定のタイミングの時系列に並ぶように示されるものである。
【0065】
このような構成により、降雨量予測比較図100において複数のヒートマップM1の全体的な着色の濃淡の傾向によって、現場担当者Hが理解容易な態様で予測結果を可視化して表現することができる。
【0066】
また気象予測表示システム1においては、
前記気象予測情報には、前記アンサンブル予測に関する実績値が含まれ、
前記実績値は、複数の前記ヒートマップM1と互いに時間軸が合わせられた状態で並ぶように示されるものである。
【0067】
このような構成により、例えば降雨量の予測の不確実性の変化や、予測される降雨量とその実績値との一致状況を、一覧することができる。
【0068】
このような構成により、気象庁より提供される例えば51種類のアンサンブルメンバーを用いて、気象予測の結果を活用し易くできる。
【0069】
また気象予測表示システム1においては、
前記ヒートマップM1は、
前記予測結果の程度がそれぞれ着色の濃淡で示されるものである。
【0070】
このような構成により、着色の濃淡を用いて、より効率的に気象予測の結果を活用し易くできる。
【0071】
また気象予測表示システム1においては、
前記アンサンブル予測は、降雨量予測である。
【0072】
このような構成により、降雨量予測の結果を活用し易くできる。
【0073】
また気象予測表示システム1においては、
前記対象場所(ダム40)には、水力発電所を備えるダム40が含まれるものである。
【0074】
このような構成により、ダム40の放流管理を好適に行うことができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る降雨量予測比較図100は、本発明に係る気象予測情報の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る担当者端末30は、本発明に係る出力部の一形態である。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0077】
例えば本実施形態では、気象予測表示システム1が対象とする気象予測として降雨量予測を例にあげたが、これに限定するものではない。気象予測表示システム1が対象とする気象予測としては、降雪量予測や、日射量予測等、種々の予測に使用できる。
【0078】
また本実施形態では、対象場所としてダム40を例にあげたが、これに限定するものではない。都市部や山間部等の任意の場所を、対象場所とすることができる。
【0079】
また本実施形態では、降雨量予測表示処理(気象予測表示方法)をサーバ20が実行するものとしたが、別のサーバ(制御装置)が実行するものでもよい。例えば降雨量予測表示処理を担当者端末30が実行してもよく、また異なる複数の制御装置が実行してもよい。また降雨量予測表示処理の内容や手順は、任意に変更できる。また降雨量予測表示処理(気象予測表示方法)は、その一部又は全部を、サーバ20ではなく、人が行ってもよい。
【0080】
例えば本実施形態では、所定の出力装置として担当者端末30(より詳細には、担当者端末30の表示部)に表示される構成としたが、これに限定されない。すなわち、所定の出力装置としては、動画や音声ではなく、書面を出力(プリントアウト)する装置であってもよい。同様に、出力の態様としては表示に限定されず、現場担当者Hが認識可能であれば種々の態様を採用できる。
【0081】
また本実施形態において、降雨の強度が単色(同一系統の色)の濃淡により表現されたが、(他系統の色を含む)複数色のグラデーションにより表現されてもよい。
【0082】
また本発明に係る気象予測情報として、降雨量予測比較図100を例にあげたが、これに限定するものではない。気象予測情報としては、例えば当日分のヒートマップM1(図3参照)だけでもよく、必ずしも過去に作成したヒートマップM1を備えていなくともよい。また同様に、必ずしも降雨量の実績値(実績値マップM2)を備えていなくともよい。またヒートマップM1は、毎日一回作成するのではなく、任意のタイミングで任意の回数だけ作成できる。
【0083】
また本実施形態において降雨量予測比較図100は、過去10日分のヒートマップM1を使用するものとしたが、その過去の日数は任意に選択できる。例えば図8に示す降雨量予測比較図100の第三の例のように、過去18日分のヒートマップM1を使用してもよい。また当該降雨量予測比較図100の第三の例のように、ヒートマップM1は、当日を含む合計11日間ではなく、任意の期間(例えば当日を含む合計19日間)に亘るアンサンブルメンバーの予測結果を使用できる。
【0084】
こうして、例えば図8に示す降雨量予測比較図100の第三の例では、期間P21において、18日~12日前においては、予測のばらつきが非常に大きく、降雨の有無を把握し難いことが分かる。また期間P22において、11日~6日前においては、予測の不確実性は大きいが、降雨の有無を把握可能であることが分かる。また期間P23において、5日~1日前においては、予測の不確実性が小さく、豪雨を事前に把握可能であることが分かる。すなわち、降雨量予測比較図100の第三の例(期間を長くした例)では、現時点に近づくにつれて精度の高い予測情報を取得でき、現時点から遠ざかるほど精度が低いものの、大まかな予測情報を取得できる。このように、予測の不確実性の変化について可視化して表現できる。
【符号の説明】
【0085】
1 気象予測表示システム
20 サーバ
30 担当者端末
40 ダム
100 降雨量予測比較図
【要約】
【課題】気象予測の結果を活用し易くできる気象予測表示システム及び気象予測表示方法を提供する。
【解決手段】対象場所(ダム40)の所定期間に亘るアンサンブル予測を構成する、複数のアンサンブルメンバーの予測結果を取得するサーバ20(取得部)と、複数の前記予測結果の程度をそれぞれ着色で示したヒートマップM1を作成するサーバ20(作成部)と、前記ヒートマップM1を含む降雨量予測比較図100(気象予測情報)を担当者端末30(所定の出力装置)に出力させるサーバ20(出力部)と、を具備する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8