(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、水処理システム、水処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20241114BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20241114BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20241114BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N15/0227 110
C02F1/00 T
C02F1/00 V
C02F1/52 Z
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2023195420
(22)【出願日】2023-11-16
(62)【分割の表示】P 2019168333の分割
【原出願日】2019-09-17
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】木田 卓
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-083504(JP,A)
【文献】特開昭61-111110(JP,A)
【文献】特開2003-029322(JP,A)
【文献】特開昭60-205235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/0227
C02F 1/52
C02F 1/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する水質測定部と、
前記被処理水を処理した処理水の画像を前記時間間隔以下で撮像する
近赤外カメラと、
前記
近赤外カメラが撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得し、該特徴量と前記水質測定部が測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部における判定結果を通知する通知部とを有し、
前記判定部は
、前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記判定部は、前記特徴量と前記水質測定部が測定した水質の値とから特定される関係があらかじめ設定された範囲に含まれているか否かを判定し、前記関係が前記範囲に含まれていない場合、前記被処理水への処理が適切ではないと判定する情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
前記判定部は、前記関係が前記範囲に含まれていない場合、前記範囲に含まれるために必要な凝集剤の添加量を算出し、該算出した凝集剤の添加量を示す制御信号を、前記凝集剤を添加する装置へ送信する情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記通知部は、前記判定部における判定結果が、前記被処理水への処理が適切ではない旨を示すものである場合、所定の通知を行う情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置において、
前記判定部は、前記特徴量として、前記処理水に含まれる浮遊物質の個数または粒子径または変位量を取得する情報処理装置。
【請求項6】
被処理水が貯留された第1の貯留槽と、
前記第1の貯留槽から前記被処理水が流入する第2の貯留槽と、
前記第2の貯留槽に貯留された前記被処理水に凝集剤を添加する添加装置と、
情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
前記第1の貯留槽の被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する水質測定部と、
前記第2の貯留槽にて前記凝集剤が添加されて処理された処理水の画像を前記時間間隔以下で撮像する
近赤外カメラと、
前記
近赤外カメラが撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得し、該特徴量と前記水質測定部が測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部における判定結果を通知する通知部とを有し、
前記判定部は
、前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する水処理システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の水処理システムにおいて、
前記第2の貯留槽は、前記
近赤外カメラが撮像する領域に貯留された処理水を整流する整流壁を有する水処理システム。
【請求項8】
請求項
6に記載の水処理システムにおいて、
前記第2の貯留槽よりも小さく、前記第2の貯留槽に貯留された前記処理水の一部が流入する第3の貯留槽を有し、
前記
近赤外カメラは、前記第3の貯留槽の処理水の画像を前記時間間隔以下で撮像する水処理システム。
【請求項9】
被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する処理と、
前記被処理水を処理した処理水の画像を前記時間間隔以下で
近赤外カメラを用いて撮像する処理と、
前記撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得する処理と、
前記取得した特徴量と前記測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する処理と、
前記判定した結果を通知する処理と、
前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する処理とを行う水処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する手順と、
前記被処理水を処理した処理水の画像を前記時間間隔以下で
近赤外カメラを用いて撮像する手順と、
前記撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得する手順と、
前記取得した特徴量と前記測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する手順と、
前記判定した結果を通知する手順と、
前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する手順とを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、水処理システム、水処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場や下水処理場、その他の排水処理設備においては、被処理水に凝集剤を添加し、被処理水中の懸濁物質(SS)を凝集させてフロックを形成させ、フロックを沈殿分離や浮上分離等で分離する処理が行われている。凝集剤の添加量が不足した場合は、フロックが成長しないため十分に沈殿せず、後段のろ過処理工程の負担が増大してしまう。さらに、捕捉されない微小な濁質が浄水に混入するため、水質が悪化してしまう。凝集剤の添加量が過剰となった場合は、膨潤なフロックが形成され凝集阻害により、沈降しにくくなるため、凝集剤の添加量が不足した場合と同様の問題が生じてしまう。フロックの形成にあたっては、ジャーテスト等により凝集剤の添加量や槽内の撹拌強度等を設計するが、実際に処理が行われている間も、フロックの形成状態を監視することが重要である。対象となる液中の懸濁物質の凝集状態を撮像し、撮像した画像に基づいて、凝集効果を判定する装置が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような装置においては、対象となる液中に撮像手段を設置するため、撮像手段に付着した汚れを落とす等、撮像手段のメンテナンスに大きな負担がかかってしまうという問題点がある。また、特許文献1に記載されたような装置においては、撮像する画像が静止画であるため、凝集状態をリアルタイムに判定することができないという問題点がある。このように、従来の技術においては、水処理の適正さを容易に判定することが困難であるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、水処理の適正さを容易に判定することができる情報処理装置、水処理システム、水処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する水質測定部と、
前記被処理水を処理した処理水の画像を前記時間間隔以下で撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得し、該特徴量と前記水質測定部が測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部における判定結果を通知する通知部とを有し、
前記判定部は、前記カメラが近赤外カメラである場合、前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する情報処理装置である。
【0007】
前記判定部は、前記特徴量と前記水質測定部が測定した水質の値とから特定される関係があらかじめ設定された範囲に含まれているか否かを判定し、前記関係が前記範囲に含まれていない場合、前記被処理水への処理が適切ではないと判定することが好ましい。
【0008】
前記判定部は、前記関係が前記範囲に含まれていない場合、前記範囲に含まれるために必要な凝集剤の添加量を算出し、該算出した凝集剤の添加量を示す制御信号を、前記凝集剤を添加する装置へ送信することが好ましい。
【0009】
前記通知部は、前記判定部における判定結果が、前記被処理水への処理が適切ではない旨を示すものである場合、所定の通知を行うことが好ましい。
【0010】
前記判定部は、前記特徴量として、前記処理水に含まれる浮遊物質の個数または粒子径または変位量を取得することが好ましい。
【0011】
前記カメラは、可視光カメラまたは近赤外カメラまたは赤外カメラであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、被処理水が貯留された第1の貯留槽と、
前記第1の貯留槽から前記被処理水が流入する第2の貯留槽と、
前記第2の貯留槽に貯留された前記被処理水に凝集剤を添加する添加装置と、
情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
前記第1の貯留槽の被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する水質測定部と、
前記第2の貯留槽にて前記凝集剤が添加されて処理された処理水の画像を前記時間間隔以下で撮像するカメラと、
前記カメラが撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得し、該特徴量と前記水質測定部が測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部における判定結果を通知する通知部とを有し、
前記判定部は、前記カメラが近赤外カメラである場合、前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する水処理システムである。
【0013】
前記第2の貯留槽は、前記カメラが撮像する領域に貯留された処理水を整流する整流壁を有することが好ましい。
【0014】
前記第2の貯留槽よりも小さく、前記第2の貯留槽に貯留された前記処理水の一部が流入する第3の貯留槽を有し、
前記カメラは、前記第3の貯留槽の処理水の画像を前記時間間隔以下で撮像することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する処理と、
前記被処理水を処理した処理水の画像を前記時間間隔以下でカメラを用いて撮像する処理と、
前記撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得する処理と、
前記取得した特徴量と前記測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する処理と、
前記判定した結果を通知する処理と、
前記カメラが近赤外カメラである場合、前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する処理とを行う水処理方法である。
【0016】
また、本発明は、コンピュータに、
被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下で測定する手順と、
前記被処理水を処理した処理水の画像を前記時間間隔以下でカメラを用いて撮像する手順と、
前記撮像した画像に対して特徴量を取得するための所定の画像処理を施した処理画像から前記特徴量を取得する手順と、
前記取得した特徴量と前記測定した水質の値とに基づいて、前記被処理水への処理が適切であるか否かを判定する手順と、
前記判定した結果を通知する手順と、
前記カメラが近赤外カメラである場合、前記画像処理として、前記近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を前記第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、水処理の適正さを容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した判定部が判定処理に用いる学習データの一例を示す図である。
【
図3】
図1に示した通知部における表示態様の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示した水処理システムにおける水処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】制御を行わなかった場合と行った場合との、原水のSSの値と処理水のSSの値とPACの添加量との変化の様子の一例を示すグラフである。
【
図6】本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。
【
図7】本発明の水処理システムの第3の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0020】
図1は、本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図1に示すように、情報処理装置10と、原水槽20と、凝集槽30と、凝集剤40と、ポンプ50とを有する。
【0021】
原水槽20は、被処理水を貯留する第1の貯留槽である。凝集槽30は、原水槽20から流入した被処理水と、ポンプ50から供給される凝集剤40とを反応させるための第2の貯留槽である。凝集剤40は、被処理水に添加されることで被処理水が所望の水質に処理されるための物質である。ポンプ50は、凝集槽30に貯留された被処理水に凝集剤40を添加する添加装置である。ポンプ50は、情報処理装置10からの指示に基づいて、凝集剤40を添加する。ポンプ50は、凝集剤40の添加を自動化するためのPLC(Programmable Logic Controller)が具備されているものであっても良い。なお、ポンプ50に凝集剤40の添加を制御する機能が具備されていない場合、その制御を行う装置が設けられ、その装置からの制御に基づいて、ポンプ50は凝集剤を添加する。凝集剤40は、例えば、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄等の無機凝集剤や高分子凝集剤(ポリマー)が挙げられる。
【0022】
情報処理装置10は、
図1に示すように、水質測定部110と、カメラ120と、判定部130と、通知部140とを有する。
【0023】
水質測定部110は、原水槽20に貯留された被処理水の水質をあらかじめ設定された時間間隔以下の時間間隔で測定する。このあらかじめ設定された時間間隔以下の時間間隔については、以下のカメラ120の説明で具体的に述べる。水質測定部110は、例えば、被処理水内の浮遊物質量(SS)の値を測定する。水質測定部110は、懸濁物質濃度計であっても良い。あらかじめ設定されるこの時間間隔は、原水槽20に貯留された被処理水の水質がリアルタイムで取得できる間隔である。
【0024】
カメラ120は、凝集槽30に貯留された処理水の画像をあらかじめ設定された時間間隔以下の時間間隔で撮像する。ここで、このあらかじめ設定された時間間隔以下の時間間隔とは、例えば、動画のように被写体を撮像した各フレームを取得する(画像メモリに取り込む)ごく短い周期のことであっても良いし、動画における各フレームの取得周期に限らず、凝集槽30に貯留された処理水の様子をリアルタイムに取得することができる時間間隔である。また、ここでいう処理水とは、所定の処理がなされた後の水に限らず、凝集剤を添加する等、何らかの処理が施されて反応中の水も含まれる。例えば、
図1に示すように、ポンプ50が凝集槽30に凝集剤40を添加している場合は、凝集槽30から排出される水だけではなく、凝集槽30の内部で凝集剤40と反応している最中の水も処理水である。カメラ120は、凝集槽30に貯留された処理水の画像を安定して撮像できる位置に設置される。例えば、カメラ120は、振動の発生の少ない場所や、安定している水面の画像を撮像できる場所に設置されることが好ましい。なお、カメラ120は、可視光カメラまたは近赤外カメラまたは赤外カメラである。あらかじめ設定されるこの時間間隔は、カメラ120が凝集槽30に貯留された処理水の画像をリアルタイムで取得できる間隔である。また、この時間間隔は、ある一定の周期的な間隔であっても良い。そのため、カメラ120は、動画を撮像するものが好ましい。また、カメラ120で撮像した画像が暗くなってしまう環境の場合、光源を用いて明るさを調整しても良い。光源は、白色LED(Light Emitting Diode)であっても良いし、赤外光源であっても良い。光源として赤外光源を用いる場合は、カメラ120は赤外対応の撮像手段が好ましい。カメラ120が近赤外カメラまたは赤外カメラである場合、可視光カメラでは捉えられないフロックを撮像することができ、判定部130が多くの特徴量を取得することができる。
【0025】
判定部130は、カメラ120が撮像した画像に対して特徴量を取得するために所定の画像処理を施す。例えば、カメラ120が近赤外カメラである場合、この画像処理は、近赤外カメラが撮像した画像のうち、所定の波長を吸収する第1の箇所以外の第2の箇所を第1の箇所が表示される第1の色とは異なる第2の色に着色する処理である。判定部130は、画像処理を施した処理画像から特徴量を取得する。判定部130は、特徴量として、処理水に含まれる浮遊物質の個数または粒子径または変位量を取得する。判定部130は、取得した特徴量と水質測定部110が測定した水質の値とに基づいて、被処理水への処理が適切であるか否かを判定する。判定部130は、判定結果を通知部140へ出力する。この判定処理を具体的に説明する。
【0026】
判定部130は、取得した特徴量と水質測定部110が測定した水質の値とから特定される関係があらかじめ設定された範囲に含まれているか否かを判定する。例えば、判定部130は、取得した特徴量と水質測定部110が測定した水質の値とから特定されるグラフ上の点があらかじめ設定された範囲に含まれているか否かを判定する。判定部130は、特定される点がグラフ上の範囲に含まれていない場合、被処理水への処理が適切ではないと判定する。判定部130は、特定される点がグラフ上の範囲に含まれていない場合、その範囲に含まれる凝集剤40の添加量を算出する。この範囲について、以下に具体的に説明する。
【0027】
図2は、
図1に示した判定部130が判定処理に用いる学習データの一例を示す図である。この学習データは、あらかじめ測定された複数の値から、凝集剤の添加量の適正さを判定したものである。
図2に示した学習データは、縦軸が撮像された画像から取得された処理水内の白点の数であり、横軸が測定された原水(被処理水)内のSSの値である。凝集剤であるPACの添加量を変化させて、それぞれの値をプロットしている。
図2に示したようにプロットされた各点が、取得した特徴量と水質測定部110が測定した水質の値とから特定されるグラフ上の点である。なお、
図2に示した白点の数は、上述した「特徴量」の一例である。例えば、判定部130は、カメラ120が撮像した画像(動画)に対して、Motion History Image等の画像処理技術を用いて、フレーム間にて差異のある部分を白色に着色し、特徴量はその着色した白点のカウント数(変位量)である。それぞれの値を取得または測定した後、それぞれの場合について、処理水の水質を測定し、測定値であるSSが8ppm未満の領域と、8ppm以上の領域とに分けている。
図2においては、処理水のSSの値が8ppm未満である領域を実線で囲み、処理水のSSの値が8ppm以上である領域を破線で囲んでいる。上述した「範囲」とは、
図2に示した実線で囲んだ領域である。
図2に示すように、測定されるデータが多いほどその傾向が顕著に表れ、その領域(範囲)を設定しやすくなる。判定部130は、取得した特徴量と水質測定部110が測定した水質の値とから、プロットがこの範囲に含まれるように、凝集剤40の添加量を算出する。
【0028】
また、判定部130は、Optical flow等の画像処理技術を用いて、処理水内のフロックのフローを可視化し、フローの幅を測定して特徴量として粒子径を算出するという画像処理を行うものであっても良い。また、判定部130が行う、カメラ120が撮像した画像の解析については、上述したものに限らず、他のプログラムを用いて行っても良い。判定部130は、例えば、PC(Personal Computer)等のコンピュータであっても良い。また、判定部130は、特徴量と原水の水質と処理水の凝集状態とに基づいて、それらの関係を示す関係式を求め、求めた関係式を学習データとするものであっても良い。判定部130は、判定部130が算出した凝集剤40の添加量を示す制御信号をポンプ50へ送信する。また、ポンプ50が凝集剤40の添加の制御を行う機能を具備している場合(例えば、PLC等を具備している場合)、判定部130は、判定部130が算出した凝集剤40の添加量を示す制御信号をPLC等へ送信し、ポンプ50を制御する。判定部130における判定結果が、被処理水への処理が適切である旨を示すものである場合、判定部130は、現在の添加量を維持する旨を示す制御信号をポンプ50へ送信するものであっても良い。
【0029】
通知部140は、判定部130における判定結果を外部へ通知する。通知部140は、判定部130における判定結果が、被処理水への処理が適切ではない旨を示すものである場合、所定の通知を行う。ここで、「被処理水への処理が適切ではない」とは、
図2を用いて説明した、「あらかじめ設定された範囲に含まれない」ということである。また、この通知は、アラーム発生や、警告音声出力、警告表示等の警報であっても良い。なお、判定部130における判定結果が、被処理水への処理が適切である旨を示すものである場合であっても、通知部140は、その旨を通知するものであっても良い。
【0030】
図3は、
図1に示した通知部140における表示態様の一例を示す図である。通知部140は、判定部130における判定結果が、被処理水への処理が適切ではない旨を示すものである場合、
図3に示すように、処理方法が適切ではない旨を表示する。通知部140は、
図3に示すように判定結果を表示する場合、
図3に示した表示に限らず、処理方法の適不適が認識できるような通知を行う。
【0031】
以下に、
図1に示した水処理システムにおける水処理方法について説明する。
図4は、
図1に示した水処理システムにおける水処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。以下では、カメラ120が動画を撮像するカメラである場合を例に挙げて説明する。
【0032】
まず、水質測定部110は、原水槽20に貯留された原水の水質を測定する(ステップS1)。また、カメラ120は、凝集槽30に貯留された処理水の動画を撮像する(ステップS2)。続いて、判定部130は、カメラ120が撮像した画像に対して特徴量を取得するために所定の画像処理を施す(ステップS3)。そして、判定部130は、画像処理を施した処理画像から特徴量を取得する(ステップS4)。続いて、判定部130は、取得した特徴量と水質測定部110が測定した水質の値とに基づいて、被処理水への処理が適切であるか否かを判定する(ステップS5)。判定部130における判定結果が、被処理水への処理が適切ではない旨を示すものである場合、通知部140は、情報処理装置10の外部に対して警報等の通知を行う(ステップS6)。また、判定部130は、制御信号をポンプ50へ送信する(ステップS7)。この制御信号には、判定部130が算出した凝集剤40の適した添加量を示す情報が含まれる。すると、ポンプ50は、判定部130から送信されてきた制御信号に基づいて、凝集槽30に貯留された処理水への凝集剤40の添加量を変更して添加する(ステップS8)。ポンプ50が凝集剤40の添加量の変更を行った後、またはステップS5にて、判定部130における判定結果が、被処理水への処理が適切である旨を示すものである場合、ステップS1の処理を行い、以降これらの処理を繰り返す。この繰り返しのタイミング(周期)は、上述したように所定の時間間隔よりも短い間隔であって、判定結果がリアルタイムで取得できるようなタイミングである。なお、ポンプ50は、判定部130から送信されてきた制御信号が示す添加量の凝集剤40を添加しても良いし、判定部130における判定結果が被処理水への処理が適切であるようになるまで、凝集剤40の添加量を増加させて添加するものであっても良い。
【0033】
図5は、
図4に示したフローチャートを用いて説明した処理(制御)を行わなかった場合と、行った場合との、原水槽20に貯留された原水のSSの値と、凝集槽30に貯留された処理水のSSの値と、凝集剤40であるPACの添加量との変化の様子の一例を示すグラフである。
【0034】
この実験を行った環境は、以下の通りである。カメラ120としてSony社製SNC-EB642Rを用いて、凝集剤40が添加される凝集槽30内の処理水を撮像した。撮像領域として、凝集槽30で、処理水の流れが安定している箇所を選定した。水質測定部110にはオプテックス社製SS系TS-1000の原水水質測定装置を用いて、原水槽20に貯留された原水の水質データを得た。また、学習データとして、あらかじめ試験的に凝集剤40の添加量を変化させ、原水水質と動画解析によって得られる特徴量との関係式を得た(
図2参照)。
【0035】
図5に示すように、本発明の凝集剤の添加量制御を行わない場合、原水のSSの値が大きくなっていくに伴い、処理水のSSの値が大きくなってしまう。これは、原水のSSの値が大きくなっても、PACの添加量が一定であるため、原水のSSの値に対して必要なPACの添加量が不足し、処理水のSSの値が大きくなってしまう。一方、本発明の凝集剤の添加量制御が行われた場合は、原水のSSの値に対して、処理水のSSの値が徐々に小さくなっている。これは、原水のSSの値と処理水のSSの値に応じて、PACの添加量を変化させていったことで、PACの添加量が適正な量になっていき、処理水のSSの値が小さくなっているからである。このとき、学習データとして得られた最適範囲から下振れした場合には、凝集槽30に貯留された処理水の水質が悪化することが分かった。これは、凝集状態が悪化することでフロックの形成が困難な状態となり、カメラ120が撮像した動画のフレーム間の差異としてフロックが検知されないことで、白点の数が減ったためである。下振れした場合には、凝集剤40の添加量を増やすことで、凝集槽30に貯留された処理水の水質が再び向上した。
【0036】
このように、本形態においては、動画撮像のような短い周期で原水の水質の測定および被処理水の画像の撮像を行い、測定した水質と撮像画像から取得された被処理水の特徴量と基づいて、添加している凝集剤の添加量が適正かどうかをリアルタイムで判定し、添加量を調整していく。そのため、水処理の適正さを容易に判定することができ、また適正な添加量の凝集剤をリアルタイムで添加することができる。
(第2の実施の形態)
【0037】
図6は、本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図6に示すように、情報処理装置10と、原水槽20と、凝集槽31と、凝集剤40と、ポンプ50とを有する。情報処理装置10、原水槽20、凝集剤40およびポンプ50は、
図1に示したものと同じものである。
【0038】
凝集槽31は、
図1に示した凝集槽30に加えて、カメラ120が撮像する領域に貯留された処理水を整流する整流壁310を有する。整流壁310は、凝集槽31内の処理水の凝集状態をカメラ120が安定して撮像できるように、流れを堰き止める。整流壁310は、凝集槽31内の処理水全体の流れを止める必要はなく、カメラ120が撮像する領域に貯留される処理水の流れを止めれば良い。なお、整流壁310の水中での高さ(深さ)は特定しない。
【0039】
このように、カメラ120が撮像する処理水が貯留された凝集槽31に整流壁310を設ける。これにより、第1の実施の形態における効果に加えて、処理水の安定した凝集状態の特徴量を取得することができる。
(第3の実施の形態)
【0040】
図7は、本発明の水処理システムの第3の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図7に示すように、情報処理装置10と、原水槽20と、凝集槽30と、凝集剤40と、ポンプ50と、分取槽60と、攪拌翼70と、光源80と、ケース90とを有する。情報処理装置10、原水槽20、凝集槽30、凝集剤40およびポンプ50は、
図1に示したものと同じものである。
【0041】
ケース90の内部には、カメラ120、分取槽60、攪拌翼70および光源80が設置される。ケース90は、外部からの光を遮るように、遮光性の高い部材から構成される。分取槽60は、その大きさが凝集槽30よりも小さく、凝集槽30に貯留された処理水の一部が流入する第3の貯留槽である。分取槽60には、凝集槽30から分取された処理水の一部が一時的に貯留される。攪拌翼70は、分取槽60に分取された処理水を攪拌する。攪拌翼70は、処理水中のフロックが分取槽60の底部に沈殿しないように攪拌するために用いられる。光源80は、カメラ120が分取槽60に分取された処理水の状態を鮮明に撮像することができるように、分取槽60の内部を照らすものであり、その取り付け位置については、分取槽60の上部であっても良いし、下部であっても良いし、ここでは特に限定しない。光源80は、白色LEDであっても良いし、赤外光源であっても良い。光源80として赤外光源を用いる場合は、カメラ120は赤外対応の撮像手段が好ましい。カメラ120は、分取槽60の処理水の画像をあらかじめ設定された時間間隔以下で撮像する。カメラ120は、分取槽60に分取されている処理水の液面を撮像できれば良く、取り付け位置については特に限定しない。カメラ120が近赤外カメラまたは赤外カメラである場合、可視光カメラでは捉えられないフロックを撮像することができ、判定部130が多くの特徴量を取得することができる。なお、光源80が無い構成であっても良い。
【0042】
このように、凝集槽30よりも小さな分取槽60を設け、凝集槽30から分取槽60に分取された処理水をカメラ120が撮像する。これにより、第1の実施の形態における効果に加えて、光源80の向きを設定しやすくでき、光源80の数も少なくすることができる。
【0043】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、各実施の形態を組み合わせたものであっても良い。例えば、第1の実施の形態や第2の実施の形態に、第3の実施の形態で説明した攪拌翼70や光源80が設けられていても良い。
【0044】
上述した情報処理装置10が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を情報処理装置10にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置10に読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置10にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置10に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置10に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0045】
10 情報処理装置
20 原水槽
30,31 凝集槽
40 凝集剤
50 ポンプ
60 分取槽
70 攪拌翼
80 光源
90 ケース
110 水質測定部
120 カメラ
130 判定部
140 通知部
310 整流壁