(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】多環芳香族誘導体化合物及びこれを用いた有機発光素子
(51)【国際特許分類】
H10K 85/30 20230101AFI20241114BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20241114BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241114BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20241114BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20241114BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20241114BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20241114BHJP
H10K 50/18 20230101ALI20241114BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241114BHJP
H10K 59/90 20230101ALI20241114BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20241114BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20241114BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20241114BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
H10K85/30
C07F5/02 A CSP
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K50/18
H10K59/10
H10K59/90
H10K71/12
H10K71/16
H10K77/10
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2023504052
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2020095093
(87)【国際公開番号】W WO2022019414
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0092566
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】ジュ, ソン-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ビョン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ, ヒョン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ソン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】シン, ボン-キ
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0101900(KR,A)
【文献】特開2020-083896(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110790782(CN,A)
【文献】特表2021-504373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 85/30
C07F 5/02
C09K 11/06
H10K 50/12
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 50/17
H10K 50/18
H10K 59/10
H10K 59/90
H10K 71/12
H10K 71/16
H10K 77/10
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化学式A-1
]で表示される有機発光化合物。
[化学式A-1]
(上記[化学式A-1
]において、
Xは、Bであり、
Yは、N-R
1であり、
Y
3
は、Sであり、
Y
1~Y
2
はそれぞれ独立に、CR
2R
3
であり(複数のY及びY
1~Y
2
は、互いに同一である又は異なる。)、
前記点線は、Y
1~Y
3
の定義によって単一結合又は二重結合を表し
、
Zは、CRであり、
前記Rは、水素、重水素、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキル基、置換又は非置換された炭素数6~50のアリール基、置換又は非置換された炭素数3~30のシクロアルキル基、置換又は非置換された炭素数2~50のヘテロアリール基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルコキシ基、置換又は非置換された炭素数6~30のアリールオキシ基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルアミン基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールアミン基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルシリル基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選ばれるいずれか一つであり(複数のZ及びRは、互いに同一である又は異なる。)、
複数の前記Rは、互いに結合するか、或いは隣接した置換基と連結されて、脂環族又は芳香族の単環又は多環を形成可能であり、前記形成された脂環族又は芳香族環の単環又は多環の炭素原子は、N、S及びOから選ばれるいずれか一つ以上のヘテロ原子で置換可能であり、
前記R
1、前記R
2及び前記R
3のうち前記R
1のみが、隣接した置換基と連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成可能であり、複数の前記Rと結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成可能である。)
【請求項2】
上記[化学式A-1
]は、下記化合物から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光化合物。
【請求項3】
第1電極、前記第1電極に対向している第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に介在された有機層を含み、
前記有機層が、請求項1に記載の上記[化学式A-1
]で表示される化合物を1種以上含む、有機発光素子。
【請求項4】
前記有機層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層及び発光層のいずれか1層以上を含み、
前記いずれか1層以上が、上記[化学式A-1
]で表示される有機発光化合物を含むことを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記第1電極と前記第2電極との間に介在された前記有機層が発光層を含み、前記発光層はホスト及びドーパントからなり、上記[化学式A-1
]で表示される前記化合物がドーパントとして用いられることを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記発光層は、下記化学式Cで表されるアントラセン誘導体をホスト化合物として含むことを特徴とする、請求項5に記載の有機発光素子。
【化C】
(前記化学式Cにおいて、
R
21~R
28は、それぞれ、同一又は異なっており、前記請求項1に記載の上記[化学式A-1
]のR
1~R
3で定義されたものと同一であり、
Ar
9及びAr
10は、それぞれ、互いに同一又は異なっており、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、及び置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールシリル基から選択されるいずれか1つであり、
L
13は、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基から選択されるいずれか1つであり、
kは、1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL
13は互いに同一又は異なっている。)
【請求項7】
前記有機発光素子は、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置から選択されるいずれか1つに使用されることを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環芳香族誘導体化合物及びこれを用いて発光効率を顕著に向上させた高効率、長寿命の有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、電子注入電極(カソード電極)から注入された電子(electron)と正孔注入電極(アノード電極)から注入された正孔(hole)とが発光層で結合してエキシトン(exciton)を形成し、該エキシトンがエネルギーを放出しながら発光する自発光型素子であり、このような有機発光素子は、低い駆動電圧、高い輝度、広い視野角及び速い応答速度を有し、フルカラー平板発光ディスプレイに適用可能であるという利点から、次世代光源として脚光を浴びている。
【0003】
このような有機発光素子が上記のような特徴を発揮するためには、素子内の有機層の構造を最適化し、各有機層を構成する物質である正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質、電子阻止物質などが、安定且つ効率的な材料をベースにすることが先行される必要があるが、依然として、安定且つ効率的な有機発光素子用有機層の構造及び各材料の開発が望まれている現状である。
【0004】
また、最近では、各有機物層材料の性能を変化させて有機発光素子の特性を向上させる研究の他にも、アノード(anode)とカソード(cathode)との間で最適化された光学厚さによる色純度向上及び発光効率増大の技術が素子性能の向上に重要な要素の一つとして着眼されており、このような方法の一例として電極にキャッピング層(capping layer)を用いて所望の光効率及び優れた色純度を得ている。
【0005】
このように有機発光素子の発光特性を改善できる素子の構造とこれをサポートする新しい材料に対する開発が依然として要求されている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、素子の有機層に採用されて高効率及び長寿命の有機発光素子を具現可能にする有機発光化合物及びこれを含む有機発光素子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、下記[化学式A]又は[化学式B]で表示される有機発光化合物を提供する。
【0008】
【0009】
上記[化学式A]及び[化学式B]のより具体的な構造、Q1及びQ2、Y1~Y6、X、及びYに対する定義、並びに[化学式A]及び[化学式B]によって具現される本発明に係る具体的な多環芳香族化合物については後述する。
【0010】
また、本発明は、第1電極、前記第1電極に対向している第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在された有機層を含み、前記有機層が前記[化学式A]及び[化学式B]によって具現される具体的な多環芳香族化合物を1種以上含む有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る多環芳香族誘導体化合物は、素子内の有機層に採用されて高効率、長寿命の有機発光素子を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る芳香族誘導体化合物の構造を示す代表図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
本発明は、有機発光素子に含まれ、下記[化学式A]又は[化学式B]で表示される多環芳香族誘導体化合物に関するものであり、高効率及び長寿命の有機発光素子を具現できることを特徴とする。
【0015】
【0016】
上記[化学式A]及び[化学式B]において、
Q1及びQ2は互いに同一である又は異なり、それぞれ独立に、置換又は非置換された炭素数6~50の芳香族炭化水素環であるか、或いは置換又は非置換された炭素数2~50の芳香族ヘテロ環である。
【0017】
Y、Y1~Y6はそれぞれ独立に、N-R1、CR2R3、O、S、Se及びSiR4R5から選ばれるいずれか一つであり、前記複数のY及びY1~Y6は互いに同一である又は異なり、前記点線は、Y1~Y6の定義によって単一結合又は二重結合を表す。
【0018】
Xは、B、P及びP=Oから選ばれるいずれか一つであり、本発明の好ましい実施例によればBであってよく、構造的にボロン(B)を含む多環芳香族誘導体化合物によって高効率及び長寿命の有機発光素子を具現できることを特徴とする。
【0019】
前記R1~R5は互いに同一である又は異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキル基、置換又は非置換された炭素数6~50のアリール基、置換又は非置換された炭素数3~30のシクロアルキル基、置換又は非置換された炭素数2~50のヘテロアリール基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルコキシ基、置換又は非置換された炭素数6~30のアリールオキシ基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルアミン基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールアミン基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルシリル基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選ばれるいずれか一つである。
【0020】
また、前記R1~R5はそれぞれ互いに又は隣接した置換基と連結されて脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成でき、前記Q1及びQ2の環と結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成できる。
【0021】
また、前記Q1及びQ2の置換基はそれぞれ、隣接した前記Yと結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成することができる。
【0022】
その具体的な構造に対する例示は、後述する本発明に係る具体的な化合物から確認できる。
【0023】
本発明の一実施例によれば、下記[化学式A-1]及び[化学式B-1]などのような骨格構造を形成でき、様々な多環芳香族骨格構造を形成でき、これを用いて、有機発光素子の様々な有機物層に要求される条件を満たすことにより、高効率及び長寿命の有機発光素子を具現することができる。
【0024】
【0025】
上記[化学式A-1]及び[化学式B-1]において、
Zは、CR又はNであり、前記Rは、水素、重水素、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキル基、置換又は非置換された炭素数6~50のアリール基、置換又は非置換された炭素数3~30のシクロアルキル基、置換又は非置換された炭素数2~50のヘテロアリール基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルコキシ基、置換又は非置換された炭素数6~30のアリールオキシ基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルアミン基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールアミン基、置換又は非置換された炭素数2~30のアリールヘテロアリールアミン基、置換又は非置換された炭素数1~30のアルキルシリル基、置換又は非置換された炭素数5~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選ばれるいずれか一つである(複数のZ及びRは、互いに同一である又は異なる。)。
【0026】
本発明の一実施例によれば、複数のZはいずれもCRであってよく、有機発光素子の様々な有機物層に要求される条件を満たすために、複数のZのいずれか一つ以上がNであってよい。
【0027】
前記複数のRは、互いに結合するか、或いは隣接した置換基と連結されて、脂環族又は芳香族の単環又は多環を形成でき、前記形成された脂環族又は芳香族環の単環又は多環の炭素原子は、N、S及びOから選ばれるいずれか一つ以上のヘテロ原子で置換されてよい。
【0028】
前記複数のRはYと結合して脂環族又は芳香族の単環又は多環をさらに形成できる。
【0029】
X、Y及びY1~Y6はそれぞれ、上記[化学式A]及び[化学式B]における定義と同一である。
【0030】
一方、本発明において「置換もしくは非置換の」という用語は、Q1~Q2、R及びR1~R9などが、それぞれ、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~24のアルキル基、炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数1~24のハロゲン化されたアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、炭素数1~24のアルキニル基、炭素数1~24のヘテロアルキル基、炭素数1~24のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数6~24のアリールアルキル基、炭素数2~24のヘテロアリール基、炭素数2~24のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数1~24のアルキルアミノ基、炭素数1~24のアリールアミノ基、炭素数1~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~24のアルキルシリル基、炭素数1~24のアリールシリル基、及び炭素数1~24のアリールオキシ基からなる群から選択された1又は2以上の置換基で置換されるか、前記置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、またはいかなる置換基も有しないことを意味する。
【0031】
また、前記「置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基」、「置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基」などでの前記アルキル基またはアリール基の炭素数の範囲は、前記置換基が置換された部分を考慮せずに非置換のものと見なしたときのアルキル部分またはアリール部分を構成する全炭素数を意味する。例えば、パラ位にブチル基が置換されたフェニル基は、炭素数4のブチル基で置換された炭素数6のアリール基に該当することを意味する。
【0032】
また、本発明において、隣接する基と互いに結合して環を形成するという意味は、隣接する基と互いに結合して置換もしくは非置換の脂環族または芳香族環を形成できることを意味し、「隣接する置換基」は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味することができる。例えば、ベンゼン環においてオルト(ortho)位に置換された2個の置換基、及び脂肪族環において同一炭素に置換された2個の置換基は、互いに「隣接する置換基」として解釈され得る。
【0033】
本発明において、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されないが、1~20であることが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明において、アルケニル基は、直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、アリル基、1-フェニルビニル-1-イル基、2-フェニルビニル-1-イル基、2,2-ジフェニルビニル-1-イル基、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル基、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル基、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明において、アルキニル基もまた、直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、エチニル(ethynyl)、2-プロピニル(2-propynyl)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明において、シクロアルキル基は、単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、シクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、シクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などがあるが、これに限定されない。
【0037】
本発明において、ヘテロシクロアルキル基は、O、S、Se、NまたはSiなどの異種原子を含むものであって、これもまた単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、ヘテロシクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、ヘテロシクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。
【0038】
本発明において、アリール基は、単環式または多環式であってもよく、単環式アリール基の例としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベン基などがあり、多環式アリール基の例としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、フルオレニル基、アセナフタセニル基、トリフェニレン基、フルオランテン基などがあるが、本発明の範囲がこれらの例のみに限定されるものではない。
【0039】
本発明において、ヘテロアリール基は、異種原子を含むヘテロ環基であって、その例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェナントロリン基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0040】
本発明において、脂肪族芳香族混合環は、2以上の環が互いに連結、縮合されており、脂肪族環と芳香族環が縮合されて全体的に非芳香族性(non-aromacity)を有する環を意味し、また、多環の脂肪族芳香族混合環において、C以外に、N、O、P及びSから選択されたヘテロ原子を含むことができる。
【0041】
本発明において、アルコキシ基は、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、iso-アミルオキシ、ヘキシルオキシなどであってもよいが、これらのみに限定されるものではない。
【0042】
本発明において、シリル基は、アルキルで置換されたシリル基、またはアリールで置換されたシリル基を意味するものであって、シリル基の具体的な例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、トリメトキシシリル、ジメトキシフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジフェニルビニルシリル、メチルシクロブチルシリル、ジメチルフリルシリルなどが挙げられる。
【0043】
本発明において、アミン基は、-NH2、アルキルアミン基、アリールアミン基などであってもよく、アリールアミン基は、アリールで置換されたアミンを意味し、アルキルアミン基は、アルキルで置換されたアミンを意味するものであり、アリールアミン基の例としては、置換もしくは非置換のモノアリールアミン基、置換もしくは非置換のジアリールアミン基、または置換もしくは非置換のトリアリールアミン基があり、前記アリールアミン基中のアリール基は、単環式アリール基であってもよく、または多環式アリール基であってもよく、前記アリール基を2以上含むアリールアミン基は、単環式アリール基、多環式アリール基、または単環式アリール基と多環式アリール基を同時に含むことができる。また、前記アリールアミン基中のアリール基は、前述したアリール基の例示から選択されてもよい。
【0044】
本発明において、アリールオキシ基及びアリールチオキシ基におけるアリール基は、前述したアリール基の例示と同一であり、具体的には、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、p-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、3,5-ジメチル-フェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、p-tert-ブチルフェノキシ基、3-ビフェニルオキシ基、4-ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-メチル-1-ナフチルオキシ基、5-メチル-2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、2-アントリルオキシ基、9-アントリルオキシ基、1-フェナントリルオキシ基、3-フェナントリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基などがあり、アリールチオキシ基としては、フェニルチオキシ基、2-メチルフェニルチオキシ基、4-tert-ブチルフェニルチオキシ基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0046】
より具体的には、本発明に係る[化学式A]又は[化学式B]で表示される多環芳香族誘導体化合物は、下記[化合物1]~[化合物117]から選ばれるいずれか一つであってよく、それから、具体的な置換基を明確に確認することができ、ただし、これによって本発明に係る[化学式A]又は[化学式B]の範囲が限定されるものではない。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
前記具体的な化合物から確認できるように、B、P、P=Oを含みながら多環芳香族構造を形成し、ここに置換基を導入して、その置換基の固有特性を有する有機発光材料を合成することができ、例えば、有機発光素子の製造時に用いられる正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層、正孔阻止層の物質などに用いられる置換基を前記構造に導入することにより、各有機層に要求される条件を満たす物質を製造でき、これによって高効率の有機発光素子を具現することができる。また、本発明に係る化合物は単独で又は他の化合物と共に様々な有機物層の材料として有用に活用可能であり、又はキャッピング層(CPL: capping layer)にも使用可能である。
【0057】
また、本発明の他の側面は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在される1層以上の有機層からなる有機発光素子に関し、前記有機層に、上記[化学式A]又は[化学式B]で表示される本発明に係る有機発光化合物を少なくとも一つ含むことができる。
【0058】
すなわち、本発明の一実施例に係る有機発光素子は、第1電極、第2電極及びそれらの間に配置された有機物層を含む構造を有してよく、本発明に係る[化学式A]又は[化学式B]の有機発光化合物を素子の有機物層に使用する以外は、通常の素子の製造方法及び材料を用いて製造することができる。
【0059】
本発明に係る有機発光素子の有機層は、単層構造であってもよいが、2層以上の有機層が積層された多層構造であってもよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、発光層、電子阻止層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有してよい。ただし、これに限定されず、より少ない数又はより多い数の有機層を含んでもよく、本発明に係る好ましい有機発光素子の有機物層構造などについては、後述する実施例でより詳細に説明する。
【0060】
また、本発明の一実施例に係る有機発光素子は、基板、第1電極(正極)、有機物層、第2電極(負極)及びキャッピング層を含み、前記キャッピング層は、第2電極の上部に形成されてよい(Top emission)。
【0061】
第2電極の上部に形成される方式(Top emission)は、発光層で形成された光がカソード側に放出されるが、カソード側に放出される光が、相対的に屈折率の高い本発明に係る化合物で形成されたキャッピング層(CPL)を通過しながら光の波長が増幅し、よって光効率が上昇する。
【0062】
以下では、本発明に係る有機発光素子の一実施例についてより詳細に説明する。
【0063】
本発明に係る有機発光素子は、アノード、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードを含み、必要によっては、アノードと正孔輸送層との間に正孔注入層をさらに含んでよく、また、電子輸送層とカソードとの間に電子注入層をさらに含んでよく、その他にも、1層又は2層の中間層をさらに形成することも可能であり、正孔阻止層又は電子阻止層がさらに形成されてもよく、上述したように、キャッピング層などのように、素子の特性によって様々な機能を有する有機層をさらに含んでよい。
【0064】
本発明のより好ましい一実施例として、前記第1電極と第2電極との間に介在された有機層が発光層を含み、前記発光層はホスト及びドーパントからなり、本発明に係る上記[化学式A]又は[化学式B]で表示される化合物を発光層中のドーパントとして含んでよい。
【0065】
まず、本発明に係る有機発光素子は、発光層内に、下記化学式Cで表されるアントラセン誘導体をホスト化合物として含むことを特徴とする。
【0066】
【0067】
前記化学式Cにおいて、
R21~R28は、それぞれ、同一又は異なっており、前記化学式A-1または化学式A-2のR1~R13で定義されたものと同一である。
【0068】
Ar9及びAr10は、それぞれ、互いに同一又は異なっており、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、及び置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールシリル基から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0069】
L13は、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基から選択されるいずれか1つであり、好ましくは、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であってもよく、kは、1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL13は互いに同一又は異なっている。
【0070】
また、前記化学式CのAr9は、下記化学式C-1で表される置換基であることを特徴とする。
【0071】
【0072】
前記化学式C-1において、
R31~R35は、それぞれ、同一又は異なっており、前記化学式A-1または化学式A-2のR1~R13で定義されたものと同一であり、互いに隣接する置換基と結合して飽和あるいは不飽和環を形成することができる。
【0073】
本発明に係る有機発光素子に採用される前記化学式Cは、具体的に下記化学式C1~化学式C48から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0074】
【0075】
【0076】
また、本発明に係る有機発光素子は、正孔輸送層、電子阻止層などをそれぞれさらに含むことができ、下記化学式Dで表される化合物を正孔輸送層、電子阻止層などにそれぞれ含むことを特徴とする。
【0077】
【0078】
前記化学式Dにおいて、
R41~R43は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~50のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールシリル基、及びハロゲン基から選択されるいずれか1つである。
【0079】
L31~L34は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリーレン基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリーレン基から選択されるいずれか1つである。
【0080】
Ar31~Ar34は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基から選択されるいずれか1つである。
【0081】
nは、0~4の整数であり、nが2以上である場合に、R43を含むそれぞれの芳香族環は、互いに同一又は異なっており、m1~m3は、0~4の整数であり、これらがそれぞれ2以上である場合に、それぞれのR41、R42、及びR43は、互いに同一又は異なっている。
【0082】
R41~R43が結合されていない芳香族環の炭素原子は、水素または重水素と結合する。
【0083】
また、前記Ar31~Ar34のうちの少なくとも1つは、下記化学式Eで表される置換基であることを特徴とする。
【0084】
【0085】
前記化学式Eにおいて、
R51~R54は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つであり、これらは、それぞれ互いに連結されて環を形成することができる。
【0086】
Yは、炭素原子または窒素原子であり、Zは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子である。
【0087】
Ar35~Ar37は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数5~50のアリール基、及び置換もしくは非置換の炭素数3~50のヘテロアリール基から選択されるいずれか1つである。
【0088】
Zが酸素原子または硫黄原子である場合、Ar37は存在せず、Y及びZが窒素原子である場合、Ar35、Ar36及びAr37のいずれか1つのみが存在し、Yが窒素原子及びZが炭素原子である場合、Ar36は存在しない。
【0089】
但し、R51~R54及びAr35~Ar37のうち1つは、前記化学式Dでの連結基L31~L34のうちの1つと連結される単結合である。
【0090】
本発明に係る有機発光素子に採用される前記化学式Dは、具体的に下記化学式D1~化学式D79から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
また、本発明に係る有機発光素子に採用される前記化学式Dは、具体的に下記化学式D101~化学式D145から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0096】
【0097】
【0098】
また、本発明に係る有機発光素子は、正孔輸送層、電子阻止層などをそれぞれさらに含むことができ、下記化学式Fで表される化合物を正孔輸送層、電子阻止層などにそれぞれ含むことを特徴とする。
【0099】
【0100】
前記化学式Fにおいて、
R61~R63は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールアミン基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルシリル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールシリル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルゲルマニウム基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリールゲルマニウム基、シアノ基、ニトロ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つである。
【0101】
Ar51~Ar54は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~40のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロアリール基である。
【0102】
本発明に係る有機発光素子に採用される前記化学式Fは、具体的に下記化学式F1~化学式F33から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0103】
【0104】
【0105】
一方、本発明の一実施例に係る有機発光素子の具体的な構造、その製造方法及び各有機層の材料について説明すると、次の通りである。
【0106】
まず、基板の上部にアノード電極用物質をコーティングしてアノードを形成する。ここで、基板としては、通常の有機発光素子で使用される基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取り扱いの容易性及び防水性に優れた有機基板又は透明プラスチック基板が好ましい。そして、アノード電極用物質としては、透明でかつ伝導性に優れた酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などを使用する。
【0107】
前記アノード電極の上部に正孔注入層物質を真空熱蒸着又はスピンコートして正孔注入層を形成し、その次に、前記正孔注入層の上部に正孔輸送層物質を真空熱蒸着又はスピンコートして正孔輸送層を形成する。
【0108】
前記正孔注入層の材料は、当技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限されずに使用することができ、具体的な例示として、2-TNATA[4,4’,4’’-tris(2-naphthylphenyl-phenylamino)-triphenylamine](4,4’,4’’-トリス(2-ナフチルフェニル-フェニルアミノ)-トリフェニルアミン)、NPD[N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine)](N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン)、TPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis(3-methylphenyl)-1,1’-biphenyl-4,4’-diamine](N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、DNTPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4’-diamine](N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン)などを使用することができる。
【0109】
また、前記正孔輸送層の材料も、当技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限されず、例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)などを使用することができる。
【0110】
次いで、前記正孔輸送層の上部に正孔補助層及び発光層を続いて積層し、前記発光層の上部に選択的に、正孔阻止層を真空蒸着方法又はスピンコーティング方法で薄膜として形成することができる。前記正孔阻止層は、正孔が有機発光層を通過してカソードに流入する場合には、素子の寿命及び効率が減少するため、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)レベルが非常に低い物質を使用することによって、このような問題を防止する役割を果たす。このとき、使用される正孔阻止物質は、特に制限されないが、電子輸送能力を有し、かつ発光化合物よりも高いイオン化ポテンシャルを有しなければならず、代表的にBAlq、BCP、TPBIなどが使用され得る。
【0111】
前記正孔阻止層に使用される物質として、BAlq、BCP、Bphen、TPBI、NTAZ、BeBq2、OXD-7、Liqなどがあり、これに限定されるものではない。
【0112】
このような正孔阻止層上に電子輸送層を真空蒸着方法又はスピンコーティング方法を通じて蒸着した後に電子注入層を形成し、前記電子注入層の上部にカソード形成用金属を真空熱蒸着してカソード電極を形成することによって、本発明の一実施例に係る有機発光素子が完成する。
【0113】
ここで、カソード形成用金属としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などを使用することができ、前面発光素子を得るためには、ITO、IZOを用いた透過型カソードを使用することができる。
【0114】
前記電子輸送層の材料としては、カソードから注入された電子を安定に輸送する機能を行う公知の電子輸送物質を用いることができる。公知の電子輸送物質の例としては、キノリン誘導体、特に、トリス(8-キノリノレート)アルミニウム(Alq3)、TAZ、Balq、ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラート)(beryllium bis(benzoquinolin-10-olate:Bebq2)、ADN、オキサジアゾール誘導体であるPBD、BMD、BNDなどのような材料を使用してもよい。
【0115】
また、前記有機層のそれぞれは、単分子蒸着方式又は溶液工程によって形成されてもよい。ここで、前記蒸着方式は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を真空又は低圧状態で加熱などを通じて蒸発させて薄膜を形成する方法を意味し、前記溶液工程は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を溶媒と混合し、これをインクジェット印刷、ロールツーロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティングなどのような方法を通じて薄膜を形成する方法を意味する。
【0116】
また、本発明に係る有機発光素子は、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置から選択される装置に使用することができる。
【実施例】
【0117】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲を制限するためのものでないことが、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0118】
合成例1.化合物1の合成
合成例1-1.<中間体1-a>の合成
<1-a>
【0119】
500mL反応器に2,3-ジブロモチオフェン25g(103mmol)、フェニルボロン酸30.2g(248mmol)、炭酸カリウム42.8g(310mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.8g(4mmol)、水60mL、トルエン130mL及び1,4-ジオキサン130mLを入れて12時間還流撹拌する。反応終結後に反応物を層分離して有機層を減圧濃縮する。クロマトグラフィーで分離して<中間体1-a>22.4gを得た。(収率85.1%)
【0120】
【0121】
500mL反応器に<中間体1-a>24g(102mmol)、クロロホルム240mLを入れて撹拌する。0℃に冷却した後、ブロミン15.5g(102mmol)をクロロホルム50mLに希釈して滴加した後、常温で4時間撹拌する。反応終了後にチオ硫酸ナトリウム水溶液を入れて撹拌後に酢酸エチル及びH2Oで抽出する。有機層を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで分離して<中間体1-b>30gを得た。(収率88%)
【0122】
【0123】
100mL反応器に1-ブロモ-2,3-ジクロロベンゼン4.5g(16mmol)、アニリン5.8g(16mmol)、酢酸パラジウム0.1g(1mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド3g(32mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル0.2g(1mmol)、トルエン45mLを入れて24時間還流撹拌する。反応終了後に濾過して濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して<中間体1-c>5.2gを得た。(収率82%)
【0124】
【0125】
500mL反応器に<中間体1-b>20g(98mmol)、<中間体1-c>18.4g(98mmol)、酢酸パラジウム0.5g(2mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド18.9g(196mmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン0.8g(4mmol)、トルエン200mLを入れて5時間還流撹拌する。反応終了後に濾過し、濾液を濃縮してカラムクロマトグラフィーで分離して<中間体1-d>22gを得た。(収率75%)
【0126】
【0127】
合成例1-4において<中間体1-b>と<中間体1-c>の代わりに<中間体1-d>とジフェニルアミンを使用した以外は同一の方法で合成して<中間体1-e>18.5gを得た。(収率74.1%)
【0128】
【0129】
300mL反応器に<中間体1-e>18.5g(23mmol)、tert-ブチルベンゼン190mLを入れる。-78℃でtert-ブチルリチウム42.5mL(115mmol)を滴加する。滴加後に60℃で3時間撹拌する。その後、60℃で窒素を吹き付けてペンタンを除去する。-78℃で三臭化ボロン11.3g(46mmol)を滴加する。滴加後に常温で2時間撹拌し、0℃でN,N-ジイソプロピルエチルアミン5.9g(46mmol)を滴加する。滴加後に120℃で2時間撹拌する。反応終了後に常温で酢酸ナトリウム水溶液を入れて撹拌する。酢酸エチルで抽出して有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して<化合物1>3.4gを得た。(収率15.7%)
MS (MALDI-TOF) : m/z 578.20 [M+]
【0130】
合成例2.化合物19の合成
合成例2-1.<中間体2-a>の合成
<2-a>
【0131】
1L反応器に1-ブロモ-3-ヨードベンゼン50g(177mmol)、アニリン36.2g(389mmol)、酢酸パラジウム1.6g(7mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド51g(530mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル4.4g(7mmol)、トルエン500mLを入れて24時間還流撹拌する。反応終了後に濾過して濾液を濃縮する。カラムクロマトグラフィーで分離して<中間体2-a>42.5gを得た。(収率50%)
【0132】
【0133】
250mL反応器に<中間体2-a>11g(42mmol)、<中間体1-b>20g(101mmol)、酢酸パラジウム1g(2mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド12.2g(127mmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン0.7g(3mmol)、トルエン150mLを入れて5時間還流撹拌する。反応終了後に濾過して濾液を濃縮する。カラムクロマトグラフィーで分離して<中間体2-b>11gを得た。(収率65%)
【0134】
【0135】
合成例1-6において<中間体1-e>の代わりに<中間体2-b>を使用した以外は同一の方法で合成して<化合物19>2.7gを得た。(収率14.7%)
MS (MALDI-TOF) : m/z 736.22 [M+]
【0136】
合成例3.化学式97の合成
合成例3-1.<中間体3-a>の合成
<3-a>
【0137】
合成例1-3において1-ブロモ-4-ヨードベンゼンとアニリンの代わりに1-ブロモ-2,3-ジクロロ-5-メチルベンゼンと4-tertブチルアニリンを使用した以外は同一の方法で合成して<中間体3-a>35.6gを得た。(収率71.2%)
【0138】
【0139】
2L反応器にジフェニルアミン60.0g(355mmol)、1-ブロモ-3-ヨードベンゼン100.3g(355mmol)、酢酸パラジウム0.8g(4mmol)、ザントフォス2g(4mmol)、ナトリウム-tert-ブトキシド68.2g(709mmol)、トルエン700mLを入れて2時間還流撹拌する。反応終了後に常温で濾過後に減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離して<中間体3-b>97gを得た。(収率91.2%)
【0140】
【0141】
合成例1-4において<中間体1-c>と<中間体1-b>の代わりに<中間体3-a>と<中間体3-b>を使用した以外は同一の方法で合成して<中間体3-c>31gを得た。(収率77.7%)
【0142】
【0143】
合成例1-3において1-ブロモ-4-ヨードベンゼンとアニリンの代わりに<中間体1-b>と4-tertブチルアニリンを使用した以外は同一の方法で合成して<中間体3-d>31.6gを得た。(収率68.2%)
【0144】
【0145】
合成例1-4において<中間体1-c>と<中間体1-b>の代わりに<中間体3-c>と<中間体3-d>を使用した以外は同一の方法で合成して<中間体3-e>21gを得た。(収率67.7%)
【0146】
【0147】
合成例1-6において<中間体1-e>の代わりに<中間体3-e>を使用した以外は同一の方法で合成して<化合物97>2.4gを得た。(収率15.4%)
MS (MALDI-TOF) : m/z 871.41 [M+]
【0148】
実施例1~10:有機発光素子の製造
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmサイズとなるようにパターニングした後に洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバーに装着した後、ベース圧力が1×10-7torrとなるようにした後、前記ITO上にDNTPD(700Å)、[化学式H](250Å)の順に成膜した。発光層は、下記に記載のホスト[BH1]と本発明の化合物(3wt%)を混合して成膜(250Å)し、その後、電子輸送層として[化学式E-1]及び[化学式E-2]を1:1の比に300Å、電子注入層として[化学式E-1]を5Å、Al(1000Å)の順に成膜して有機発光素子を製造した。前記有機発光素子の発光特性は0.4mAで測定した。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
比較例1~3
上記の実施例1で使用された化合物の代わりに[BD1]~[BD3]を使用した以外は同一にして有機発光素子を作製した。前記有機発光素子の発光特性は0.4mAで測定した。前記[BD1]~[BD3]の構造は次の通りである。
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
上記の実施例1~10及び比較例1~3によって製造された有機発光素子に対して、電圧、輝度、色座標及び寿命を測定し、その結果を下記[表1]に示した。
【0159】
【0160】
上記の実施例1~10から確認できるように、本発明に係るボロン化合物を採用した有機発光素子は、比較例1~3を採用した素子に比べて高い量子効率を示し、特に、顕著に向上した長寿命を有する。
【0161】
実施例11~18:有機発光素子の製造
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmサイズとなるようにパターニングした後に洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバーに装着した後、ベース圧力が1×10-7torrとなるようにした後、前記ITO上に2-TNATA(4,4’,4’’-Tris[2-naphthyl(phenyl)amino]triphenyl amine)(700Å)、正孔輸送層(600Å)の順に成膜した。発光層は、下記[表2]に記載のホストと本発明の化合物(3wt%)とを混合して成膜(200Å)し、その後、電子輸送層として[化学式E-2](300Å)、電子注入層として[化学式E-1](10Å)、MgAg(120Å)の順に成膜し、最後にキャッピング層を600Åの厚さに成膜して有機発光素子を製造した。前記有機発光素子の発光特性は0.4mAで測定した。
【0162】
比較例4及び5
上記の実施例11~18で使用されたキャッピング層としてAlq3を使用した以外は同一にして有機発光素子を作製した。前記有機発光素子の発光特性は10mA/cm2で測定した。前記[Alq3]の構造は次の通りである。
【0163】
【0164】
【0165】
上記の実施例11~18から確認できるように、本発明に係る化合物を採用した有機発光素子、特に、本発明に係る有機発光素子は、キャッピング層として[Alq3]化合物を使用した素子に比べてより改善された量子効率を示しており、有機発光素子としての利用可能性が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明に係る多環芳香族誘導体化合物は、素子内の有機層に採用されて高効率及び長寿命の有機発光素子を実現できるので、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置など、様々なディスプレイ及び照明素子に産業的に有用に活用することができる。