(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】リード曲がり検出方法および実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H05K13/08 K
(21)【出願番号】P 2023522169
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019396
(87)【国際公開番号】W WO2022244249
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】大月 孝浩
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-069687(JP,A)
【文献】特開平03-278600(JP,A)
【文献】国際公開第2015/071929(WO,A1)
【文献】特開昭63-276300(JP,A)
【文献】国際公開第2022/091378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の下方にリードが延在するリード部品のリード曲がり検出方法であって、
(a)前記リード部品を下方から撮像するステップと、
(b)前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得するステップと、
(c)前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に
、前記リード領域に対して同じ方向で距離が異なる複数の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定するステップと、
(d)前記複数の判定領域のうち、前記リード領域から最も離れた判定領域で前記リードの曲がりが有ると判定すると前記リード部品を基板に実装不可と判定し、前記リード領域から最も離れた前記判定領域よりも内側の判定領域で前記リードの曲がりが有ると判定すると前記リード領域から該判定領域までの距離に相当する曲がり量に応じた補正量で実装位置を補正して前記リード部品を基板に実装するステップと、
を含むリード曲がり検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリード曲がり検出方法であって、
前記ステップ(c)では、前記判定領域内の輝度が前記画像内で前記リード領域の周辺の背景を示す輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが無いと判定し、前記判定領域内の輝度が前記背景を示す輝度とは異なる輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが有ると判定する
リード曲がり検出方法。
【請求項3】
本体の下方にリードが延在するリード部品のリード曲がり検出方法であって、
(a)前記リード部品を下方から撮像するステップと、
(b)前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得するステップと、
(c)前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定するステップと、
を含み、
前記ステップ(c)では、前記判定領域内の輝度が前記画像内で前記リード領域の周辺の背景を示す輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが無いと判定し、前記判定領域内の輝度が前記背景を示す輝度とは異なる輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが有ると判定する
リード曲がり検出方法。
【請求項4】
請求項1
ないし3のいずれか1項に記載のリード曲がり検出方法であって、
前記ステップ(b)では、前記リード部品が実装される基板に形成され、前記リードが挿入されるリード孔のサイズの情報を取得し、
前記ステップ(c)では、前記リード孔のサイズの情報に基づいて前記判定領域のサイズおよび位置の少なくとも一方を設定する
リード曲がり検出方法。
【請求項5】
本体の下方にリードが延在するリード部品のリード曲がり検出方法であって、
(a)前記リード部品を下方から撮像するステップと、
(b)前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得するステップと、
(c)前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定するステップと、
を含み、
前記ステップ(b)では、前記リード部品が実装される基板に形成され、前記リードが挿入されるリード孔のサイズの情報を取得し、
前記ステップ(c)では、前記リード孔のサイズの情報に基づいて前記判定領域のサイズおよび位置の少なくとも一方を設定する
リード曲がり検出方法。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1項に記載のリード曲がり検出方法であって、
前記ステップ(b)では、前記リードの情報として、下面視で1以上の所定方向を除いて先端側よりも基端側が大きく形成された特定リードであるか否かの情報を取得し、
前記ステップ(c)では、対象のリードが前記特定リードの場合、前記リード領域に対して前記所定方向に位置する領域を前記判定領域に設定する
リード曲がり検出方法。
【請求項7】
本体の下方にリードが延在するリード部品のリード曲がり検出方法であって、
(a)前記リード部品を下方から撮像するステップと、
(b)前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得するステップと、
(c)前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定するステップと、
を含み、
前記ステップ(b)では、前記リードの情報として、下面視で1以上の所定方向を除いて先端側よりも基端側が大きく形成された特定リードであるか否かの情報を取得し、
前記ステップ(c)では、対象のリードが前記特定リードの場合、前記リード領域に対して前記所定方向に位置する領域を前記判定領域に設定する
リード曲がり検出方法。
【請求項8】
請求項
6または7に記載のリード曲がり検出方法であって、
(
e)対象のリードが、前記特定リードではなく先端側まで略一定の径で延在する他のリードの場合、前記ステップ(c)に代えて、前記画像を処理して前記リードを検出し、該検出したリードの位置と前記リード位置の情報とに基づいて該リードの曲がりを検出するステップを含む
リード曲がり検出方法。
【請求項9】
本体の下方にリードが延在するリード部品を基板に実装する実装装置であって、
前記リード部品を下方から撮像する撮像部と、
前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得する取得部と、
前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定する判定部と、
を備え
、
前記判定部は、前記判定領域内の輝度が前記画像内で前記リード領域の周辺の背景を示す輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが無いと判定し、前記判定領域内の輝度が前記背景を示す輝度とは異なる輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが有ると判定する
実装装置。
【請求項10】
本体の下方にリードが延在するリード部品を基板に実装する実装装置であって、
前記リード部品を下方から撮像する撮像部と、
前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得する取得部と、
前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定する判定部と、
を備え、
前記取得部は、前記リード部品が実装される基板に形成され、前記リードが挿入されるリード孔のサイズの情報を取得し、
前記判定部は、前記リード孔のサイズの情報に基づいて前記判定領域のサイズおよび位置の少なくとも一方を設定する
実装装置。
【請求項11】
本体の下方にリードが延在するリード部品を基板に実装する実装装置であって、
前記リード部品を下方から撮像する撮像部と、
前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得する取得部と、
前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定する判定部と、
を備え、
前記取得部は、前記リードの情報として、下面視で1以上の所定方向を除いて先端側よりも基端側が大きく形成された特定リードであるか否かの情報を取得し、
前記判定部は、対象のリードが前記特定リードの場合、前記リード領域に対して前記所定方向に位置する領域を前記判定領域に設定する
実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、リード曲がり検出方法および実装装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、リードが本体から下方に延在するリード部品を実装する際に、リード部品の画像を処理して、リードの検査を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には、画像からリードのエッジを検出し、エッジが検出されたリードの数が指定数と一致するか否かを判定し、指定数と一致しない場合には、エッジ検出用のしきい値を調整して再度エッジ検出を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなリード(エッジ)の検出を適切に行うためには、画像内のリードと、その周辺の背景との間に輝度差があることが必要となる。しかしながら、本体と同じ材質のリードや、先端側よりも基端側が大きく形成されたリードなどの場合、周辺との間に輝度差のない方向が生じることがあるため、画像内でリード(エッジ)の位置を適切に検出することが困難となる。そのような場合でも、リード部品の実装可否を判断できるように、リードの曲がりを検出することが好ましい。
【0005】
本開示は、リードの位置検出が困難な場合でもリードの曲がりを適切に検出することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のリード曲がり検出方法は、
本体の下方にリードが延在するリード部品のリード曲がり検出方法であって、
(a)前記リード部品を下方から撮像するステップと、
(b)前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得するステップと、
(c)前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定するステップと、
を含むことを要旨とする。
【0008】
本開示のリード曲がり検出方法では、リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、判定領域内の輝度に基づいてリードの曲がりの有無を判定する。これにより、リード領域に隣接してリードと同等の輝度の領域があるためにリードの位置を検出することが困難な場合でも、判定領域内にリードを示すような輝度の変化があればリードの曲がりを検出することができる。したがって、リードの位置検出が困難な場合でもリードの曲がりを適切に検出して、リード部品の実装可否を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実装装置10と管理装置20の制御に関する構成を示すブロック図。
【
図3】リード部品実装処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】リード曲がり検出処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】通常リードLnを撮像した画像Gnの一例を示す説明図。
【
図8】特定リードLsを撮像した画像Gsの一例を示す説明図。
【
図9】判定領域A(AL,AR)の一例を示す説明図。
【
図10】判定領域A(AL,AR)の一例を示す説明図。
【
図11】特定リードLsの曲がり判定の様子の一例を示す説明図。
【
図12】特定リードLsの曲がり判定の様子の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、実装装置10の構成の概略を示す構成図である。
図2は、実装装置10と管理装置20の制御に関する構成を示すブロック図である。なお、
図1の左右方向がX方向であり、前後方向がY方向であり、上下方向がZ方向である。
【0011】
実装装置10は、
図1に示すように、部品を供給する部品供給装置11と、基板Sを搬送する基板搬送装置12と、1または複数のノズル14で部品を吸着して基板S上に実装するヘッド13と、ヘッド13をXY方向に移動させる移動装置15とを備える。部品供給装置11は、例えば部品が所定ピッチで収容されたテープを送り出すことで部品を供給するテープフィーダであり、複数種類の部品を供給可能となるように実装装置10に複数セットされている。なお、部品供給装置11として、部品が収容されたトレイにより、部品を供給するトレイフィーダがセットされていてもよい。部品供給装置11から供給される部品には、部品本体の下方にリードが延在するリード部品LPがある。基板搬送装置12は、
図1の前後に間隔を開けて設けられ左右方向に架け渡されたコンベアベルトを有しており、コンベアベルトにより基板Sを図中左から右へと搬送する。ヘッド13は、図示しないZ軸モータにより、ノズル14を上下方向に昇降させる。
【0012】
また、実装装置10は、この他にマークカメラ17やパーツカメラ18、実装装置10の全体を制御する実装制御装置19(
図2参照)などを備える。マークカメラ17は、ヘッド13に取り付けられ、基板Sに付された基準マークや基板IDなどを上方から撮像する。パーツカメラ18は、部品供給装置11と基板搬送装置12との間に設置され、ノズル14に吸着されている部品を下方から撮像する。
【0013】
実装制御装置19は、周知のCPUやROM、RAMなどで構成されている。実装制御装置19は、部品供給装置11や基板搬送装置12、ヘッド13、移動装置15などに駆動信号を出力する。実装制御装置19には、マークカメラ17やパーツカメラ18からの画像が入力される。実装制御装置19は、例えば、マークカメラ17で撮像された基板Sの画像を処理して基板IDを取得したり、基板Sに付された基板マークの位置を認識することにより基板Sの位置を認識したりする。また、実装制御装置19は、パーツカメラ18で撮像された画像に基づいてノズル14に吸着されている部品の吸着姿勢を判定する。また、実装制御装置19は、リード部品LPがパーツカメラ18で撮像されると、その画像に基づいてリードの曲がりなどを検出する。
【0014】
管理装置20は、汎用のコンピュータであり、
図2に示すように、管理制御装置22と、キーボードやマウスなどの入力デバイス24と、ディスプレイ26と、HDDやSSDなどの記憶装置28と、を備える。管理制御装置22は、周知のCPUやROM,RAMなどで構成され、入力デバイス24から入力信号を入力し、ディスプレイ26への画像信号を出力する。記憶装置28は、基板Sの生産計画を記憶している。基板Sの生産計画は、実装装置10において基板S上のどの位置にどの部品をどの順番で実装するか、部品を実装した基板Sを何枚生産するかなどを定めた計画である。また、生産計画には、実装対象の各部品の情報も含まれる。実装対象の部品にリード部品LPがある場合、リード部品LPの情報として、各リードの位置やサイズ、形状(種類)、基板Sに形成されリードが挿入されるリード孔のサイズなどの情報が含まれる。管理制御装置22は、生産計画に従って部品が実装されるように実装制御装置19に指令信号を出力して、実装装置10に実装処理を行わせる。
【0015】
以下は、こうして構成された実装装置10の動作の説明である。ここでは、リード部品LPの実装処理を説明する。
図3は、リード部品実装処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、実装制御装置19により実行される。
【0016】
リード部品実装処理では、実装制御装置19は、まず、部品供給装置11により部品供給位置に供給されたリード部品LPをノズル14で吸着させることで採取する(S100)。次に、実装制御装置19は、ヘッド13をパーツカメラ18上に移動させて(S110)、ノズル14に吸着されているリード部品LPをパーツカメラ18で下方から撮像させる(S120)。続いて、撮像された画像を処理することによりリードの曲りを検出するリード曲り検出処理を行う(S130)。S130のリード曲がり検出処理は、
図4のフローチャートに基づいて行われる。
【0017】
リード曲がり検出処理では、実装制御装置19は、まず、リード部品LPの各リードの情報として、リードの位置やサイズ、形状(種類)、挿入されるリード孔のサイズなどの情報を取得する(S200)。リード孔のサイズの情報は、リード孔の内径や公差、リードの外径との径差などの情報が取得される。次に、実装制御装置19は、各リードを順に検出対象に設定し(S210)、リードの情報に基づいて、検出対象のリードの全周囲に輝度差があるか否かを判定する(S220)。S220では、リードの周囲に一方向でも輝度差がなければ、全周囲に輝度差がないと判定する。
【0018】
ここで、
図5は、リード部品LPの一例を示す説明図であり、
図6は、特定リードLsの一例を示す説明図である。
図5は、リード部品LPを下方から見た説明図である。リード部品LPは、下面視で矩形状に形成された樹脂製の本体Bと、本体Bの側面を囲うように下面視で矩形枠状に形成された金属製のカバーCとを備える。このリード部品LPは、複数のリードとして、本体Bの貫通孔を通って下方に延在する複数の通常リードLnと、カバーCと一体的に形成されて下方に延在する複数の特定リードLsとを備える。通常リードLnは、先端が面取り状に形成される点を除いて基端側(上端側)から先端側(下端側)まで略一定の外径で延在するリードである。特定リードLsは、先端側の先端部Ls1が略一定の外径で延在し、基端側の基端部Ls2が先端部Ls1よりも大きく形成されたリードである。
【0019】
図5中に点線で囲んだ特定リードLsを例とすると、
図6Aは、その特定リードLsを
図5の右側から見た側面図であり、
図6Bは、その特定リードLsを
図5の前側から見た正面図である。
図6Aに示すように、特定リードLsの基端部Ls2は、先端部Ls1側に向かうほど小さくなるように側面視で略台形状に形成されている。また、
図6Bに示すように、先端部Ls1と基端部Ls2は、正面視で同じ外径に形成されている。即ち、この特定リードLsの基端部Ls2は、左右方向(所定方向)を除いて、先端部Ls1を中心に前後方向に拡がるように形成されている。このため、先端部Ls1は、基端部Ls2が拡がっている前後方向に曲がり難く、基端部Ls2が拡がっておらず基端部Ls2による支持が弱い左右方向(
図6Bの矢印の方向)に曲がり易くなる。なお、
図5中に点線で囲んだ特定リードLsの以外に、カバーCの左部や右部に形成された特定リードLsは、同様に前後方向に基端部Ls2が拡がるため、左右方向に先端部Ls1が曲がり易くなる。また、
図5のカバーCの前部に形成された特定リードLsは、左右方向に基端部Ls2が拡がるため、前後方向に先端部Ls1が曲がり易くなる。このように、特定リードLsは、曲り可能方向が限定されている。このため、特定リードLsをそれぞれのリード孔に適切に挿入するためには、先端部Ls1の曲がり方向と曲がりの有無を適切に把握する必要がある。
【0020】
また、
図7は、通常リードLnを撮像した画像Gnの一例を示す説明図であり、
図8は、特定リードLsを撮像した画像Gsの一例を示す説明図である。なお、
図8は、
図5中に点線で囲んだ特定リードLsを撮像した画像Gsを示す。
図7に示すように、通常リードLnは、画像Gn内のリード領域と、その全周囲の背景とに輝度差がある。一方、
図8に示すように、特定リードLsは、カバーCと同じ材質で形成されて輝度が同等であるため、基端部Ls2とカバーCとの輝度差が殆どなく、先端部Ls1と基端部Ls2との輝度差も殆どない。即ち、
図8の特定リードLsの先端部Ls1は、画像Gsの上下方向(
図5の前後方向)で周囲との輝度差がないものとなる。なお、
図5のカバーCの前部に形成された特定リードLsの先端部Ls1は、画像Gsの左右方向において周囲との輝度差がないものとなる。これらのことから、実装制御装置19は、リード曲がり検出処理のS220では、リードの形状(種類)に基づいて、通常リードLnであれば全周囲に輝度差があると判定する。また、実装制御装置19は、特定リードLsであれば画像Gsの上下方向または左右方向に輝度差がないため、全周囲に輝度差がないと判定する。勿論、実装制御装置19が、S200でリードと周囲との輝度差の有無の情報を取得してもよい。
【0021】
実装制御装置19は、S220でリードの全周囲に輝度差があると判定すると、画像を処理してリードの位置を検出する(S230)。ここでは、画像Gnを処理して通常リードLnの位置を検出する。次に、実装制御装置19は、S200で取得した通常リードLnの位置情報と、画像から検出した通常リードLnの位置とに基づいて、通常リードLnの曲がり量(先端の位置ずれ量)を検出する(S240)。続いて、実装制御装置19は、全リードの処理を完了したか否かを判定し(S250)、処理を完了してないと判定すると、S210に戻り、次のリードを検出対象に設定して処理を行う。
【0022】
一方、実装制御装置19は、S220でリードの全周囲に輝度差がないと判定すると、次のように特定リードLsの曲がりの有無を検出する。まず、実装制御装置19は、特定リードLsの曲がり可能方向を判別する(S260)。曲がり可能方向は、上述したように、特定リードLsの形成位置によって左右方向または前後方向のいずれかとなる。次に、実装制御装置19は、対象の特定リードLsが挿入されるリード孔のサイズに応じて、判定領域Aのサイズを設定する(S270)。続いて、実装制御装置19は、リード位置に基づくリード領域に対し、S260で判別した曲がり可能方向に、S270で設定したサイズの判定領域Aを設定する(S280)。なお、リード領域は、S200で取得したリードの位置情報に基づく位置を中心に、リードのサイズで規定される領域である。
【0023】
図9,
図10は、判定領域A(AL,AR)の一例を示す説明図である。
図9,
図10の画像Gsでは、特定リードLsの曲がり可能方向が図中の左右方向となる。このため、曲がりの有無を判定するための判定領域Aとして、特定リードLsのリード領域を中心に左側の判定領域ALと右側の判定領域ARとが左右対称に設定される。また、
図9,
図10の判定領域A(AL,AR)はサイズが異なり、
図10の判定領域Aの方が、
図9の判定領域Aよりも小さく且つ特定リードLsのリード領域から離れた位置に設定されている。ここで、例えばリードに対してリード孔のサイズが比較的大きく余裕がある場合には、若干の曲がりがあってもリードをリード孔に挿入可能となるなど、リードの曲がりに対する許容量が大きくなる。このため、実装制御装置19は、S200で取得したリード孔のサイズの情報に基づいて、曲がりに対する許容量が小さいほど曲がりを検出し易くするように、判定領域Aのサイズを大きく且つリード領域の近くに設定するものとした。即ち、
図9の判定領域Aでは、
図10の判定領域Aよりも曲がり有りと判定され易くなる。
【0024】
実装制御装置19は、こうして判定領域Aを設定すると、処理対象の判定領域A(例えば判定領域AL)内の画素の輝度を抽出し(S290)、リード領域以外の背景の輝度から変化があるか否かを判定する(S300)。実装制御装置19は、背景の輝度から変化があると判定すると、対象の判定領域A側に曲がり有りと判定する(S310)。一方、実装制御装置19は、背景の輝度から変化がないと判定すると、対象の判定領域A側に曲がり無しと判定する(S320)。そして、実装制御装置19は、全ての判定領域Aの処理が完了したか否かを判定し(S330)、処理が完了していないと判定すると、S290に戻り、次の処理対象の判定領域A(例えば判定領域AR)の処理を行う。
【0025】
例えば、
図9,
図10に示すように、特定リードLsに曲がりが無い場合、判定領域A内の画素の輝度は、いずれも背景の輝度を示すものとなる。このため、実装制御装置19は、背景の輝度から変化がなく、曲がり無しと判定する。
図11,
図12は、特定リードLsの曲がり判定の様子の一例を示す説明図である。
図11の例では、判定領域AL側に特定リードLs(先端部Ls1)が曲がっており、判定領域AL内に背景ではなくリードの輝度を示す画素が存在する。このため、実装制御装置19は、例えば判定領域Aの全画素に対し背景とは異なる輝度を示す画素の割合が所定割合を超えるために、S300,S310で背景の輝度から変化があるとして判定領域ALに曲がり有りと判定する。一方、判定領域AR内の画素は、背景の輝度を示す。このため、実装制御装置19は、S300,S320で背景の輝度から変化がなく判定領域ARに曲がり無しと判定する。
【0026】
また、
図12には、
図10の判定領域Aが設定され、
図11よりも小さな曲がりが生じた場合を示す。上述したように、
図10の判定領域Aは
図9の判定領域Aよりも小さく、リード領域から離れている。このため、
図12に示す程度の曲がりでは、判定領域AL内にリードの輝度を示す画素が殆ど存在せず、各画素は背景の輝度を示す。このため、実装制御装置19は、S300,S310で背景の輝度から変化がなく曲がり無しと判定する。上述したように、曲がりに対する許容量が大きく、若干の曲りであれば検出する必要がない場合がある。このため、本実施形態では、
図12(
図10)のように、
図11(
図9)よりもリード領域から離れた位置に小さなサイズの判定領域Aを設定することで、若干の曲がりであれば曲がり無しと検出して曲がりを許容するのである。即ち、実装制御装置19は、実装不可となる曲がりに絞って、曲がりの有無を検出することができる。
【0027】
実装制御装置19は、S330で全ての判定領域Aの処理が完了したと判定すると、いずれかの判定領域Aで曲がりを検出したか否かを判定する(S340)。実装制御装置19は、曲がりを検出してないと判定すると、S250に進んで全てのリードの処理を完了したか否かを判定し、処理を完了したと判定すると、リード曲がり検出処理を終了する。一方、実装制御装置19は、いずれかの判定領域Aで曲がりが検出されたと判定すると、その曲がりのために実装不可であると判断し、全てのリードの処理が完了していなくても、リード曲がり検出処理を終了する。
【0028】
図3のリード部品実装処理では、実装制御装置19は、S130(
図4)のリード曲がり検出処理を実行すると、リード部品LPを実装可能であるか否かを判定する(S140)。実装制御装置19は、
図4のS340で特定リードLsの曲がりを検出したと判定することなくリード曲がり検出処理を終了していれば、実装可能であると判定し、リード部品LPを基板Sに実装して(S150)、リード部品実装処理を終了する。この場合、実装制御装置19は、
図4のS240で検出した曲がり量に基づいてリード部品LPの実装位置を補正して、基板Sにリード部品LPを実装する。このため、通常リードLnの曲がりに応じて補正した実装位置にリード部品LPを適切に実装することができる。なお、実装制御装置19は、S230,S240で検出した曲がり量に基づいて実装不可と判定する場合があってもよい。
【0029】
また、実装制御装置19は、S140で実装可能でないと判定すると、リード部品LPを所定の廃棄ボックスに廃棄して(S160)、リード部品実装処理を終了する。このように、リード曲がり検出処理で特定リードLsの曲がりの有無を適切に検出することで、実装可否を適切に判断することができる。なお、特定リードLsの曲がりを検出した場合に、曲がり異常を報知して作業者に確認を促すようにしてもよい。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のリード部品実装処理のS120がステップ(a)に相当し、リード曲がり検出処理のS200がステップ(b)に相当し、同処理のS260~S330がステップ(c)に相当する。同処理のS230,S240がステップ(d)に相当する。パーツカメラ18が撮像部に相当し、リード曲がり検出処理のS200を実行する実装制御装置19が取得部に相当し、同処理のS260~S330を実行する実装制御装置19が判定部に相当する。
【0031】
以上説明したリード曲がり検出方法では、リード領域の周辺に判定領域Aを設定し、判定領域A内の輝度に基づいて特定リードLsの曲がりの有無を判定する。このため、リード領域に隣接してリードと同等の輝度の領域がある場合でも、特定リードLsの曲がりを適切に検出してリード部品LPの実装可否を判断することができる。
【0032】
また、判定領域A内の輝度が背景を示す輝度であるか、背景を示す輝度とは異なる輝度であるかに基づいて、判定領域A毎に曲がりの有無を容易に判定することができる。
【0033】
また、リード孔のサイズの情報に基づいて判定領域Aのサイズや位置を設定し、若干の曲がりがあってもリード孔に挿入可能であれば曲がり有りと判定しないようにする。即ち、リード孔への挿入が困難な曲がりに絞って曲がりの有無を判定することが可能となるから、リード部品LPの実装可否をより適切に判断することができる。
【0034】
また、特定リードLsの曲がり可能方向に判定領域Aを設定するから、判定処理を効率よく行って曲がりの有無を適切に判定することができる。
【0035】
また、通常リードLnの場合、判定領域Aを設定する曲がり判定に代えて、画像から検出したリードの位置とリード位置の情報とに基づいてリードの曲がりを検出する。リードの形状に応じて異なる処理を行うことで、リード部品LPの各リードの曲がりの検出を適切に行うことができる。
【0036】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、判定領域A内の輝度が背景を示す輝度であるか否かに応じて曲がりの有無を判定したが、これに限られない。例えば、判定領域A内の各画素の輝度がリードを示す輝度であるか背景を示す輝度であるかを判定し、リードを示す輝度が所定割合以上である場合に曲がり有りと判定してもよい。あるいは、実装制御装置19は、判定領域A内の各画素の輝度の平均値などを算出し、その算出値を背景を示す輝度などの基準値と比較することにより、曲がりの有無を判定してもよい。
【0038】
実施形態では、リード領域に対して例えば左右方向(または上下方向)となる二方向に2つの判定領域A(AL,AR)を設定するものを例示したが、これに限られず、リード領域の周辺に1以上の判定領域Aを設定するものであればよい。
【0039】
実施形態では、判定領域A内の輝度に基づいて曲がりがあると判定すると実装不可と判断したが、これに限られない。例えば、リード領域に対して同じ方向で距離が異なる複数の判定領域Aを設けておき、各判定領域Aの判定結果に基づいて異なる対応を行ってもよい。
図13は、変形例の判定領域Aの一例を示す説明図である。図示するように、リード領域に対して左側に、リード領域に近い方から判定領域AL1,AL2を設定し、リード領域に対して右側に、リード領域に近い方から判定領域AR1,AR2を設定する。実装制御装置19は、判定領域AL1,AL2内の輝度がいずれも背景を示す輝度であれば曲がり無しと判定し、判定領域AL1内の輝度が背景の輝度と異なり判定領域AL2の輝度が背景を示す輝度であれば判定領域AL1までの比較的小さな曲がり有りと判定する。また、実装制御装置19は、判定領域AL1,AL2内の輝度がいずれも背景の輝度と異なれば判定領域AL2までの比較的大きな曲がり有りと判定する。そして、実装制御装置19は、判定領域AL1までの比較的小さな曲がりの場合には、判定領域AL1までの曲がり量とし、その曲がりを補正してリード部品LPを実装し、判定領域AL2までの比較的大きな曲がりの場合には、実装不可とする。また、右側の判定領域AR1,AR2についても同様な対応を行う。このように、実装制御装置19は、リード領域から最も離れた(最も外側の)判定領域Aで曲がり有りと判定すると実装不可とし、それよりも内側の判定領域Aで曲がり有りと判定すると、その判定領域Aまでの距離に相当する曲がり量に応じた補正量で実装位置を補正してリード部品LPを実装するようにすればよい。
【0040】
実施形態では、1つのリード部品LPで、通常リードLnに対する処理と、特定リードLsに対する処理とを異なる処理としたが、これに限られない。リードの形状に拘わらず、リード領域の周辺に判定領域Aを設定して曲がりの有無を判定してもよい。また、特定リードLsに対する処理を先に行ってから通常リードLnに対する処理を行ってもよい。
【0041】
実施形態では、カバーCと一体的に形成されて下方に延在する特定リードLsに対して、リード曲がり検出処理のS260~S340の処理を適用したが、これに限られない。本体Bから下方に延在する特定リードLsに適用してもよい。また、基端部Ls2が先端部Ls1に対して大きく形成されたリード(特定リードLs)に限られず、カバーCから下面視で略長方形状に延在するリードに適用してもよい。略長方形状に延在するリードも曲がり可能方向が限定されるから、長辺の隣側に判定領域を設定すればよい。このように、リードの全周囲に背景との輝度差があると判定されないリード、即ちリードの周囲の一方向でも背景との輝度差がないリードに対して適用すればよい。
【0042】
実施形態では、リードやリード孔のサイズに応じて判定領域Aの位置とサイズの両方が異なるものとしが、これに限られず、リード孔のサイズに応じて判定領域Aの位置とサイズの一方のみが異なるものでもよい。また、リードの材質や長さなどの他の情報に応じて判定領域Aの位置やサイズが異なるものとしてもよい。あるいは、判定領域Aの位置やサイズが異なることなく、一定の位置やサイズに設定されるものでもよい。
【0043】
実施形態では、実装装置10が備える実装制御装置19がリードの曲がりを検出したが、これに限られず、管理装置20の管理制御装置22など、実装装置10以外に設けられた制御装置がリードの曲がりを検出してもよい。
【0044】
ここで、本開示のリード曲がり検出方法は、以下のようにしてもよい。例えば、本開示のリード曲がり検出方法において、前記ステップ(c)では、前記判定領域内の輝度が前記画像内で前記リード領域の周辺の背景を示す輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが無いと判定し、前記判定領域内の輝度が前記背景を示す輝度とは異なる輝度の場合に該判定領域側への前記リードの曲がりが有ると判定するものとしてもよい。こうすれば、判定領域毎にリードの曲がりの有無を容易に判定することができる。
【0045】
本開示のリード曲がり検出方法において、前記ステップ(b)では、前記リード部品が実装される基板に形成され、前記リードが挿入されるリード孔のサイズの情報を取得し、前記ステップ(c)では、前記リード孔のサイズの情報に基づいて前記判定領域のサイズおよび位置の少なくとも一方を設定するものとしてもよい。こうすれば、多少の曲がりがあってもリード孔に挿入可能であれば曲がりが有ると判定しないように判定領域のサイズや位置を設定することができる。即ち、リード孔への挿入が困難となる曲がりに絞って曲がりの有無を判定することが可能となるから、リード部品の実装可否をより適切に判断することができる。
【0046】
本開示のリード曲がり検出方法において、前記ステップ(b)では、前記リードの情報として、下面視で1以上の所定方向を除いて先端側よりも基端側が大きく形成された特定リードであるか否かの情報を取得し、前記ステップ(c)では、対象のリードが前記特定リードの場合、前記リード領域に対して前記所定方向に位置する領域を前記判定領域に設定するものとしてもよい。特定リードの先端は、基端側が大きく形成されている方向には曲がり難く、曲がり可能方向が所定方向に限定される。このため、所定方向に判定領域を設定することで、判定処理の負担を抑えて曲がりの有無を適切に判定することができる。
【0047】
本開示のリード曲がり検出方法において、(d)対象のリードが、前記特定リードではなく先端側まで略一定の径で延在する他のリードの場合、前記ステップ(c)に代えて、前記画像を処理して前記リードを検出し、該検出したリードの位置と前記リード位置の情報とに基づいて該リードの曲がりを検出するステップを含むものとしてもよい。先端部まで略一定の径で延在するリードは、画像内の背景との輝度差により位置を検出し易いから、曲がりの判定も比較的容易となる。このため、リードの形状に応じて異なる処理を行うことで、リードの曲がりを適切に検出することができる。
【0048】
本開示の実装装置は、前記リード部品を下方から撮像する撮像部と、前記撮像された画像内で前記リードが存在すべきリード位置を含む情報を取得する取得部と、前記リード位置の情報に基づくリード領域の周辺に1以上の判定領域を設定し、前記判定領域内の輝度に基づいて前記リードの曲がりの有無を判定する判定部と、を備えることを要旨とする。
【0049】
本開示の実装装置では、上述したリード曲がり検出方法と同様に、リードの位置検出が困難な場合でもリードの曲がりを適切に検出することができる。なお、この実装装置において、リード曲がり検出方法の各ステップを実現するような機能を追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示は、リード部品の実装処理などに利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 実装装置、11 部品供給装置、12 基板搬送装置、13 ヘッド、14 ノズル、15 移動装置、17 マークカメラ、18 パーツカメラ、19 実装制御装置、20 管理装置、22 管理制御装置、24 入力デバイス、26 ディスプレイ、28 記憶装置、A,AL,AR 判定領域、B 本体、C カバー、Gn,Gs 画像、LP リード部品、Ln 通常リード、Ls 特定リード、Ls1 先端部、Ls2 基端部、S 基板。