(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241114BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241114BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241114BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09J7/38
C09J201/00
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2023524244
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2022021688
(87)【国際公開番号】W WO2022250132
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2021090476
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】安井 浩登
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏嘉
(72)【発明者】
【氏名】木下 仁
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195746(JP,A)
【文献】特開2005-268613(JP,A)
【文献】国際公開第2019/139055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 201/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路形成面を有するウエハと、前記ウエハの前記回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記ウエハの前記回路形成面側とは反対側の面をバックグラインドする工程(B)と、
前記粘着性フィルムに紫外線を照射し、その後、前記ウエハから前記粘着性フィルムを除去する工程(C)と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法であって、
前記粘着性フィルムは、基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられた、紫外線硬化性粘着性樹脂材料により構成された粘着性樹脂層と、を備え、
前記紫外線硬化性粘着性樹脂材料について、以下の手順(i)および(ii)により粘弾性特性を測定したときの、5℃における貯蔵弾性率をE'(5℃)、100℃における貯蔵弾性率をE'(100℃)としたとき、
E'(5℃)は2.0×10
6~2.0×10
9Paであり、
E'(100℃)は1.0×10
6~3.0×10
7Paである電子装置の製造方法。
[手順]
(i)前記紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用いて膜厚0.2mmの膜を形成し、その膜に対して、25℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて、主波長365nmの紫外線を、照射強度100W/cm
2で、紫外線量1080mJ/cm
2で照射して紫外線硬化させ、硬化膜を得る。
(ii)前記硬化膜について、周波数1Hz、引張モードで、温度-50~200℃の範囲で動的粘弾性を測定する。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置の製造方法であって、
前記粘着性フィルムの前記粘着性樹脂層と、鏡面研磨されたシリコンウエハと、を貼り合わせ、1時間放置後、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったときの剥離強度をF0とし、
当該粘着性フィルムの前記粘着性樹脂層と、鏡面研磨されたシリコンウエハと、を貼り合わせ、波長365nmの紫外線を1080mJ/cm
2照射し、その後、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったときの剥離強度をF1としたとき、
F1/F0が0.02~0.60である電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置の製造方法であって、
前記粘着性樹脂層は、側鎖および/または末端に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂と、光開始剤と、を含む電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の電子装置の製造方法であって、
前記ウエハは、ハーフカットされている、または改質層が形成されている電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の電子装置の製造方法であって、
前記粘着性樹脂層の厚みが5μm以上300μm以下である電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1
または2に記載の電子装置の製造方法であって、
前記基材層を構成する樹脂がポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフェニレンエーテルから選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1
または2に記載の電子装置の製造方法であって、
前記工程(A)は、
前記ウエハをハーフカットする工程(A1-1)および前記ウエハに対してレーザーを照射し、前記ウエハに改質層を形成する工程(A1-2)から選択される少なくとも一種の工程(A1)と、
前記工程(A1)の後に、前記ウエハの前記回路形成面側に前記バックグラインド用粘着性フィルムを貼り付ける工程(A2)と、
を含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程の中で、ウエハを研削する工程においては、ウエハを固定したり、ウエハの損傷を防止したりするために、ウエハの回路形成面に粘着性フィルムが貼り付けられることがある。
このような粘着性フィルムとしては、一般的に、基材フィルムに粘着性樹脂層を積層させたフィルムが用いられている。
【0003】
高密度実装技術の進歩に伴い、半導体ウエハ等の薄盤化の要求があり、例えば50μm以下の厚さまでウエハを薄研削加工することが求められている。
このような薄研削加工の一つとして、ウエハの研削加工の前に、ウエハの片面に所定の深さの溝を形成し、次いで研削を行うことでウエハを個片化する先ダイシング法がある。また、研削加工の前に、ウエハ内部にレーザーを照射することで改質領域を形成し、次いで研削を行うことでウエハを個片化する先ステルス法がある。
【0004】
このような先ダイシング法や先ステルス法への適用に適した粘着性フィルムに関する技術として、例えば、特許文献1(特開2014-75560号公報)および特許文献2(特開2016-72546号公報)に記載の技術が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、基材上に粘着剤層を有する表面保護シートであって、下記要件(a)~(d)を満たす表面保護シートが記載されている。
(a)基材のヤング率が、450MPa以上である
(b)粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率が、0.10MPa以上である
(c)粘着剤層の50℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以下である
(d)粘着剤層の厚さが、30μm以上である
特許文献1には、このような表面保護シートは、ワークの裏面研削工程の際に、ワークが割断され形成される間隙からワークの被保護表面に、水の浸入(スラッジ浸入)を抑制して、ワークの被保護表面の汚染を防止し得ると記載されている。
【0006】
特許文献2には、基材樹脂フィルムと、基材樹脂フィルムの少なくとも片面側に形成された放射線硬化性の粘着剤層とを有し、基材樹脂フィルムは、引張弾性率が1~10GPaである剛性層を少なくとも1層有し、上記粘着剤層を放射線硬化させた後における剥離角度30°での剥離力が、0.1~3.0N/25mmであることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープが記載されている。
特許文献2には、このような半導体ウエハ表面保護用粘着テープによれば、先ダイシング法または先ステルス法を適用した半導体ウエハの裏面研削工程において、個片化された半導体チップのカーフシフトを抑制するとともに、半導体ウエハを破損や汚染することなく加工することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-75560号公報
【文献】特開2016-72546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らの検討によれば、例えば、電子装置の製造プロセスおいて、バックグラインド工程後にウエハから粘着性フィルムを剥離する際に、ウエハ側のダイシング・ストリート(スクライブ・ライン)上に糊残りが生じやすいことが明らかになった。特に、先ダイシング法や先ステルス法等を用いた電子装置の製造プロセスおいて、バックグラインド工程後にウエハ(個片化されたチップ)から粘着性フィルムを剥離する際に、ウエハ側に糊残りが生じやすいことが明らかになった。
具体的には、先ダイシング法においては、一方の面に溝が設けられたウエハの、その一方の面に粘着性フィルムを貼り付けるため、その溝および/または溝近傍に糊残りが生じやすい。特に、溝は、通常、ブレードを用いて切り込むため、溝には微小な欠けが生じやすく、糊残り発生の一因となっていると考えられる。
先ステルス法においても、個片化されたウエハ(チップ)から粘着性フィルムを剥離する際に、チップ端部において、糊残りが生じやすいと考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、電子装置の製造において、バックグラインド工程後にウエハ(または個片化されたチップ)から粘着性フィルムを剥離する際の「糊残り」を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、様々な観点から改良を検討した。その結果、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
本発明は、以下の通りである。
【0011】
1.
回路形成面を有するウエハと、前記ウエハの前記回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記ウエハの前記回路形成面側とは反対側の面をバックグラインドする工程(B)と、
前記粘着性フィルムに紫外線を照射し、その後、前記ウエハから前記粘着性フィルムを除去する工程(C)と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法であって、
前記粘着性フィルムは、基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられた、紫外線硬化性粘着性樹脂材料により構成された粘着性樹脂層と、を備え、
前記紫外線硬化性粘着性樹脂材料について、以下の手順(i)および(ii)により粘弾性特性を測定したときの、5℃における貯蔵弾性率をE'(5℃)、100℃における
貯蔵弾性率をE'(100℃)としたとき、
E'(5℃)は2.0×106~2.0×109Paであり、
E'(100℃)は1.0×106~3.0×107Paである電子装置の製造方法。
[手順]
(i)前記紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用いて膜厚0.2mmの膜を形成し、その膜に対して、25℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて、主波長365nmの紫外線を、照射強度100W/cm2で、紫外線量1080mJ/cm2で照射して紫外線硬化させ、硬化膜を得る。
(ii)前記硬化膜について、周波数1Hz、引張モードで、温度-50~200℃の範囲で動的粘弾性を測定する。
2.
1.に記載の電子装置の製造方法であって、
前記粘着性フィルムの前記粘着性樹脂層と、鏡面研磨されたシリコンウエハと、を貼り合わせ、1時間放置後、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったときの剥離強度をF0とし、
当該粘着性フィルムの前記粘着性樹脂層と、鏡面研磨されたシリコンウエハと、を貼り合わせ、波長365nmの紫外線を1080mJ/cm2照射し、その後、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったときの剥離強度をF1としたとき、
F1/F0が0.02~0.60である電子装置の製造方法。
3.
1.または2.に記載の電子装置の製造方法であって、
前記粘着性樹脂層は、側鎖および/または末端に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂と、光開始剤と、を含む電子装置の製造方法。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法であって、
前記ウエハは、ハーフカットされている、または改質層が形成されている電子装置の製造方法。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法であって、
前記粘着性樹脂層の厚みが5μm以上300μm以下である電子装置の製造方法。
6.
1.~5.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法であって、
前記基材層を構成する樹脂がポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフェニレンエーテルから選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
7.
1.~6.のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法であって、
前記工程(A)は、
前記ウエハをハーフカットする工程(A1-1)および前記ウエハに対してレーザーを照射し、前記ウエハに改質層を形成する工程(A1-2)から選択される少なくとも一種の工程(A1)と、
前記工程(A1)の後に、前記ウエハの前記回路形成面側に前記バックグラインド用粘着性フィルムを貼り付ける工程(A2)と、
を含む電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子装置の製造方法により、バックグラインド工程後において、ウエハ(または個片化されたチップ)から粘着性フィルムを剥離する際の糊残りを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した図(断面図)である。
【
図2】電子装置の製造方法の一例を模式的に示した図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に
図2以降において、
図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0015】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0016】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本明細書における「電子装置」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
【0017】
図1は、本実施形態において用いられる粘着性フィルム(粘着性フィルム50)の構造の一例を模式的に示した断面図である。
粘着性フィルム50は、ウエハの表面を保護するために用いられる。
図1に示すように、粘着性フィルム50は、基材層10と、基材層10の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層20(紫外線硬化性粘着性樹脂材料により構成された粘着性樹脂層)と、を備える。
【0018】
粘着性樹脂層20を構成する紫外線硬化性粘着性樹脂材料について、以下の手順(i)および(ii)により粘弾性特性を測定したときの、5℃における貯蔵弾性率をE'(5
℃)、100℃における貯蔵弾性率をE'(100℃)としたとき、E'(5℃)は2.0×106~2.0×109Pa、好ましくは2.5×107~6.5×108Paであり、E'(100℃)は1.0×106~3.0×107Pa、好ましくは3.0×106
~2.0×107Paである。
また、紫外線硬化性粘着性樹脂材料の5℃における貯蔵弾性率(E'(5℃))は、2
.0×106Pa以上、好ましくは5.0×106Pa以上、より好ましくは1.0×107Pa以上、さらに好ましくは2.0×107Pa以上、さらに好ましくは2.5×107Pa以上であり、そして、2.0×109Pa以下、好ましくは1.0×109Pa以下、より好ましくは8.0×108Pa以下、さらに好ましくは6.5×108Pa以下、さらに好ましくは5.0×108Pa以下である。紫外線硬化性粘着性樹脂材料の100℃における貯蔵弾性率(E'(100℃))は、1.0×106Pa以上、好ましく
は3.0×106Pa以上、より好ましくは4.0×106Pa以上、さらに好ましくは5.0×106Pa以上であり、そして、3.0×107Pa以下、好ましくは2.5×107Pa以下、より好ましくは2.0×107Pa以下である。
【0019】
[手順]
(i)紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用いて膜厚0.2mmの膜を形成し、その膜に対して、25℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて、主波長365nmの紫外線を、照射強度100W/cm2で、紫外線量1080mJ/cm2で照射して紫外線硬化させ、硬化膜を得る。
(ii)上記硬化膜について、周波数1Hz、引張モードで、温度-50~200℃の範囲で動的粘弾性を測定する。
【0020】
ちなみに、酸素による重合阻害を抑えるため、上記(i)における紫外線照射の際、紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用いて形成された膜は、例えば、離型フィルムに貼り合わせられた状態である。具体的には以下の通りである。
・粘着性樹脂層20と同じ組成の、厚さ0.2mmの紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用意する。
・上記紫外線硬化性粘着性樹脂材料は、両側をシリコーン離型処理された無色透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)のシリコーン離型処理面同士に挟まれた状態とする。
シリコーン離型処理された無色透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)としては、三井化学東セロ社製SP-PET T15、T18や、東洋紡社製ピューレックスA31、A41等が挙げられる。
・得られたサンプル(セパレータ/粘着性樹脂層20/セパレータの3層構成)を、25℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて、主波長365nmの紫外線を、照射強度100W/cm2で、紫外線量1080mJ/cm2で照射して紫外線硬化させる。
・紫外線硬化の後、両側のセパレータを剥がして測定用サンプルとする。測定用サンプルのサイズは、幅10mm、長さ50mmとする。
・固体粘弾性測定装置を用いて、チャック間が20mmになるように装置にセットし、周波数1Hz、引張モードで、温度-50~200℃の範囲で粘弾性を測定する。固体粘弾性測定装置の例としては、TAインスツルメント社製、RSA3などが挙げられる。
【0021】
粘着性フィルム50の特徴の1つは、粘着性樹脂層20を構成する紫外線硬化性粘着性樹脂材料が、上記の貯蔵弾性率の規定を満たすことである。
上記の貯蔵弾性率の規定と糊残りの抑制との関係については、以下のように説明することができる。念のため述べておくと、以下記載により本発明は限定されない。
【0022】
ポリマーの粘弾性に関して、周波数変化は温度変化とよく似ており、周波数を高めることと温度を下げることは、同様の効果を示すことが知られている(時間-温度換算則)。
粘着性フィルムの剥離の際には、粘着性樹脂層の硬化膜が瞬間的に大きく変形する。よって、周波数のより大きな領域(すなわち、より低温領域)での粘弾性挙動が、実際の剥離の態様とよく対応すると考えられる。つまり、硬化後の粘着性フィルムの剥離は通常室温で行われるが、周波数の大きな領域(すなわち、低温領域)での粘弾性挙動が、実際の剥離の挙動とよく対応すると考えられる。また、発明者らの過去の知見などから、周波数の小さな領域(つまり、高温領域)での粘弾性挙動は、粘着性樹脂層の硬化膜の架橋の状態を反映すると考えられる。
つまり、硬化後の粘着性フィルムの剥離は通常室温で行われるが、5℃程度の低温における貯蔵弾性率と、100℃程度の高温における貯蔵弾性率が、剥離の態様と密接に関係しているのではないかと推定される。より具体的には、以下の通りである。
【0023】
5℃における貯蔵弾性率に関して:周波数変化は温度変化とよく似ており、周波数を高めることと温度を下げることは、同様の効果を示すことが知られている(時間-温度換算則)。テープ剥離の際には、粘着材が瞬間的に大きく変形することが知られており、周波数のより大きな領域(すなわち、より低温領域)での粘弾性挙動が実際の剥離モードに近いと考えられる。従って、テープ剥離は通常は室温で行われるが、より低温である5℃での貯蔵弾性率が、テープが実際に剥離される際の粘着材の挙動をよく表現しているものと推定される。E'(5℃)が高すぎる場合は、粘着材の靭性が著しく損なわれるために、
粘着層破断によるのり残りがしやすく、また、E'(5℃)が低すぎる場合は、粘着材と
被着材との相互作用が大きすぎて剥離がしづらいために、糊残りが生じやすくなるものとの推定される。
100℃における貯蔵弾性率に関して:100℃という温度は粘着材のガラス転移温度に対して、十分に高い温度であり、非晶性の粘着材は完全にアモルファス状態であると考えられる。従って、E'(100℃)は粘着材の架橋密度を示していると考えられる。E'(100℃)が高すぎる場合には、粘着材の靭性が著しく損なわれており、粘着材が脆く破断しやすいため、のり残りしやすいと推定される。また、E'(100℃)が低すぎる
ものについては、粘着材と被着材との相互作用が高く、剥離がしづらいために、糊残りが生じたものとの推定される。
【0024】
そして、E'(5℃)とE'(100℃)の両方が、それぞれ適当な数値範囲内にあるということは、剥離時の靭性と、架橋密度という観点で、粘着剤の性能バランスが特に良好であることを意味すると考えられる。つまり、E'(5℃)とE'(100℃)の両方が、それぞれ適当な数値となる粘着性フィルム(特に粘着性樹脂層)を用いて電子装置を製造することで、特に先ダイシング法や先ステルス法において糊残りが生じにくくなると考えられる。
【0025】
上記の貯蔵弾性率の規定を満たす粘着性フィルム50は、素材の適切な選択、各素材の適切な配合、製造条件などを適切に選択することによって製造することができる。これらの詳細については以下で随時説明する。
【0026】
以下「1.粘着性フィルム」の項目にて、粘着性フィルム50を構成する各層などについて具体的に説明する。
【0027】
1.粘着性フィルム
(基材層)
基材層10は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は、ウエハを加工する際に加わる外力に耐えうる機械的強度があれば特に限定されず、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
基材層10を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート、ポリメタアクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、機械物性および透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびポリブチレンテレフタレートからなる群より選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0028】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を設けるために使用する樹脂フィルムの形態は、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。基材層10の機械的強度を向上させる観点からは、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
基材層10は、研削後のウエハの反りを抑制する観点から、予めアニール処理されているものが好ましい。基材層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0029】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、20μm以上250μm以下が好ましく、30μm以上200μm以下がより好ましく、50μm以上150μm以下がさらに好ましい。
【0030】
(粘着性樹脂層)
粘着性フィルム50は紫外線硬化型の粘着性樹脂層20を備える。
粘着性樹脂層20は、基材層10の一方の面側に設けられる層であり、粘着性フィルム50をウエハの回路形成面に貼り付ける際に、その回路形成面に接触して粘着する層である。
【0031】
粘着性樹脂層20は、適当な紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用いて形成される。具体的には、粘着性樹脂層20は、紫外線により粘着力が低下する紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用いて形成される。
粘着性樹脂層20に紫外線を照射すると、硬化(架橋など)して粘着力が減少するため、粘着性フィルム50からウエハ(またはウエハが個片化されたチップ)を剥離し易くなる。
【0032】
紫外線硬化性粘着性樹脂材料は、粘着剤・接着剤などの分野で知られている(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。原料モノマーである(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーを用いる場合は、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
紫外線硬化性粘着性樹脂材料は、好ましくは、側鎖および/または末端に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂と、光開始剤とを含み、さらに必要に応じて架橋剤などを含む。紫外線硬化性粘着性樹脂材料は、さらに、1分子内に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物(多官能(メタ)アクリレート化合物等)をさらに含んでもよい。
【0034】
側鎖および/または末端に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂は、具体的には次のようにして得られる。まず、エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーを共重合させる。次いで、この共重合体に含まれる官能基(P)と、官能基(P)と付加反応、縮合反応等を起こしうる官能基(Q)を有するモノマーとを、モノマー中の二重結合を残したまま反応させ、共重合体分子中に重合性炭素-炭素二重結合を導入する。
【0035】
エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー、酢酸ビニルの如きビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等のエチレン性二重結合を有するモノマーの中から、1種又は2種以上が用いられる。
【0036】
官能基(P)を有する共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーの割合は、エチレン性二重結合を有するモノマーが70~99質量%であり、官能基(P)を有する共重合性モノマーが1~30質量%であることが好ましい。さらに好ましくは、エチレン性二重結合を有するモノマーが80~95質量%であり、官能基(P)を有する共重合性モノマーが5~20質量%である。
官能基(Q)を有するモノマーとしては、例えば、上記官能基(P)を有する共重合性モノマーと同様のモノマーを挙げることができる。
【0037】
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーとの共重合体に、重合性炭素-炭素二重結合を導入する際に反応させる官能基(P)と官能基(Q)の組み合わせとして、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジニル基、水酸基とイソシアネート基等、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。また、付加反応に限らずカルボン酸基と水酸基との縮合反応等、重合性炭素-炭素二重結合が容易に導入できる反応であれば如何なる反応も適用可能である。
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーを共重合させる際は、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0038】
1分子中に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらを用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。分子中に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは5~18質量部である。
また、分子中に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは13質量部以下である。
【0039】
光開始剤は、通常、紫外線を照射されることにより、重合性炭素-炭素二重結合を重合させる化学種(ラジカルなど)を発生させるものである。
光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4'-モルフォリノブチロフェノン、2,2-ジメトキシ-2
-フェニルアセトフェノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0040】
光開始剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
光開始剤の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは1~10質量部であり、さらに好ましくは4~10質量部である。
また、光開始剤の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。
【0041】
紫外線硬化性粘着性樹脂材料は架橋剤を含んでもよい。
架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等の
アジリジン系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。
架橋剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0042】
架橋剤を用いる場合、その量は、通常、架橋剤中の官能基数が(メタ)アクリル系樹脂中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
架橋剤を用いる場合、紫外線硬化性粘着性樹脂材料中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層20の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
また、架橋剤を用いる場合、紫外線硬化性粘着性樹脂材料中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層20の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0043】
粘着性樹脂層20は、例えば、基材層10の一方の面上に、紫外線硬化性粘着性樹脂材料を塗布することにより形成することができる。すなわち、上記各成分を適当な溶剤(典型的には有機溶剤)に溶解または分散させて調製した紫外線硬化性粘着性樹脂材料を、基材層10の一方の面上に塗布するなどして粘着性樹脂層20を設けることができる。
塗布方法としては、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等の従来公知の塗布方法を採用することができる。乾燥条件は特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と(メタ)アクリル系樹脂との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0044】
基材層10の一方の面上に紫外線硬化性粘着性樹脂材料を塗布するのとは別の方法として、後掲の実施例に示すように、(i)まず、紫外線硬化性粘着性樹脂材料を、易剥離性の基材(セパレータ)の表面に塗布して粘着性樹脂層20を形成し、(ii)その後、形成された粘着性樹脂層を基材層10の一方の面に貼り合わせる方法を挙げることもできる。
【0045】
粘着性樹脂層20の厚みは、好ましくは5μm以上300μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。粘着性樹脂層20の厚みが適度に大きいことにより、十二分な粘着性が得られる。また、粘着性樹脂層20が厚すぎないことにより、粘着性フィルム50の取扱い性が向上する。
また、粘着性樹脂層20の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0046】
(その他の層)
粘着性フィルム50は、糊残りの抑制効果を損なわない範囲で、その他の層を備えていてもよい。例えば、各層の間に凹凸吸収性樹脂層や接着層、帯電防止層等の他の層があってもよい。凹凸吸収性樹脂層を設けることで、粘着性フィルム50の凹凸吸収性を向上させることができる。接着層を設けることで、各層の間の接着性を向上させることができる。また、帯電防止層を設ければ、粘着性フィルム50の帯電防止性を向上させることができる。
また、使用前における劣化や異物付着を抑制する観点から、粘着性樹脂層20の露出面は、離型フィルムなどの適当な保護フィルム(易剥離性のフィルム)で保護されていてもよい。
【0047】
(全体厚み)
粘着性フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは50μm以上600μm以下であり、より好ましくは50μm以上400μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上300μm以下である。
【0048】
(紫外線露光による粘着力の低下)
前述のように、粘着性フィルム50において、粘着性樹脂層20は、紫外線により粘着力が低下する紫外線硬化性粘着性樹脂材料を用いて形成される。
紫外線により粘着力が低下する程度については、好ましくは以下のように定量化される。
【0049】
・粘着性フィルム50の粘着性樹脂層20と、鏡面研磨されたシリコンウエハと、を貼り合わせ、1時間放置後、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったときの剥離強度をF0とする。
・粘着性フィルム50の粘着性樹脂層20と、鏡面研磨されたシリコンウエハと、を貼り合わせ、波長365nmの紫外線を1080mJ/cm2照射した後、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で剥離試験を行ったときの剥離強度をF1とする。
・F1/F0は、好ましくは0.01~0.60、より好ましくは0.01~0.20、さらに好ましくは0.02~0.20である。
また、F1/F0は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、より好ましくは0.02以上であり、そして、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.12以下である。
【0050】
F1/F0が適当な値であることにより、バックグラインド工程の際のウエハの位置ずれが抑えられ、かつ、バックグラインド工程後においては粘着性フィルム50の剥離が容易となる。
【0051】
ちなみに、F0そのものの値は、例えば3~20N/25mm、具体的には3~16N/25mmである。
また、F1そのものの値は、例えば10N/25mm以下、具体的には1N/25mm以下、より具体的には0.5N/25mm以下である。F1はゼロであってもよいが、F1は、通常0.005N/25mm以上、具体的には0.01N/25mm以上である。
【0052】
2.電子装置の製造方法
図2は、粘着性フィルム50を用いた電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
電子装置の製造方法は、通常、以下の3つの工程を少なくとも備えている。
(A)回路形成面30Aを有するウエハ30と、ウエハ30の回路形成面30A側に貼り合わされた粘着性フィルム50と、を備える構造体100を準備する工程
(B)ウエハ30の回路形成面30A側とは反対側の面をバックグラインドする工程
(C)粘着性フィルム50に紫外線を照射した後にウエハ30から粘着性フィルム50を除去する工程
このような一連の工程において、粘着性フィルム50として、上記<粘着性フィルム>の項で説明した粘着性フィルムを使用する。本実施形態の電子装置の製造方法は、ウエハ30の裏面を研削する際に、粘着性フィルム50を、いわゆるバックグラインドテープとして用いることに特徴がある。
以下、電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0053】
(工程(A))
はじめに、回路形成面30Aを有するウエハ30と、ウエハ30の回路形成面30A側に貼り合わされた粘着性フィルム50と、を備える構造体100を準備する。
このような構造体100は、例えば、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層20から離型フィルムを剥離し、粘着性樹脂層20の表面を露出させ、その粘着性樹脂層20上に、ウエハ30の回路形成面30Aを貼り付けることにより作製することができる。
【0054】
ここで、粘着性フィルム50にウエハ30の回路形成面30Aを貼り付ける際の条件は特に限定されないが、例えば、温度は20~80℃、圧力は0.05~0.5MPa、貼り付け速度は0.5~20mm/秒とすることができる。
【0055】
工程(A)は、ウエハ30をハーフカットする工程(A1-1)およびウエハ30に対してレーザーを照射し、ウエハ30に改質層を形成する工程(A1-2)から選択される少なくとも一種の工程(A1)と、工程(A1)の後に、ウエハ30の回路形成面30A側にバックグラインド用粘着性フィルム50を貼り付ける工程(A2)と、をさらに含むことが好ましい。
既に説明したように、粘着性フィルム50は、先ダイシング法や先ステルス法等を用いた電子装置の製造プロセスに、好適に用いることができる。そのため、先ダイシング法となる上記工程(A1-1)や先ステルス法となる上記工程(A1-2)を行う製造方法が好ましい。
【0056】
工程(A2)では、ウエハ30の回路形成面30Aに粘着性フィルム50を加温して貼り付けることができる。これにより、粘着性樹脂層20とウエハ30との接着状態を長時間にわたって良好にすることができる。加温温度は特に限定されないが、例えば60~80℃である。
【0057】
粘着性フィルム50をウエハ30に貼り付ける操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着性フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行うことができる。
【0058】
粘着性フィルム50に貼り付けるウエハ30としては特に限定されないが、回路形成面30Aを有するウエハ30であることが好ましい。例えば、半導体ウエハ、エポキシモールドウエハ、エポキシモールドパネル等が挙げられ、好ましくは半導体ウエハおよびエポキシモールドウエハである。
また、半導体ウエハとしては、例えば、シリコンウエハ、サファイアウエハ、ゲルマニウムウエハ、ゲルマニウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、タンタル酸リチウムウエハ等が挙げられ、シリコンウエハに好適に用いられる。エポキシモールドウエハとしては、ファンアウト型WLPの作製方法のひとつであるeWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)プロセスによって作製されたウエハが挙げられる。
回路形成面を有する半導体ウエハおよびエポキシモールドウエハは特に限定されず、例えば、表面に配線、キャパシタ、ダイオードまたはトランジスタ等の回路が形成されたものが挙げられる。また、回路形成面にプラズマ処理がされていてもよい。
【0059】
ウエハ30の回路形成面30Aは、例えば、バンプ電極等を有することにより、凹凸面となっていてもよい。
バンプ電極は、例えば、電子装置を実装面に実装する際に、実装面に形成された電極に対して接合されて、電子装置と実装面(プリント基板等の実装面)との間の電気的接続を形成するものである。
バンプ電極としては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプ、ピラーバンプ等が挙げられる。すなわち、バンプ電極は、通常凸電極である。これらのバンプ電極は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
バンプ電極の高さおよび径は特に限定されないが、それぞれ、好ましくは10~400μm、より好ましくは50~300μmである。その際のバンプピッチにおいても特に限定されないが、好ましくは20~600μm、より好ましくは100~500μmである。
バンプ電極を構成する金属種は特に限定されず、例えば、はんだ、銀、金、銅、錫、鉛、ビスマス及びこれらの合金等が挙げられるが、粘着性フィルム50はバンプ電極がはんだバンプの場合に好適に用いられる。これらの金属種は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0060】
(工程(B))
次に、ウエハ30の回路形成面30A側とは反対側の面(裏面とも呼ぶ)をバックグラインドする。
「バックグラインドする」とは、ウエハ30を破損することなく、所定の厚みまで薄化加工することを意味する。
例えば、研削機のチャックテーブル等に構造体100を固定し、ウエハ30の裏面(回路非形成面)を研削する。
【0061】
このような裏面研削操作において、ウエハ30は、厚みが所望の厚み以下になるまで研削される。研削する前のウエハ30の厚みは、ウエハ30の直径、種類等により適宜決められ、研削後のウエハ30の厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。
また、ウエハ30がハーフカットされている、またはレーザー照射により改質層が形成されている場合、
図2に示すように工程(B)によって、ウエハ30は個片化されて、チップ31となる。
【0062】
裏面研削方式は特に限定されず、公知の研削方式を採用することができる。研削は、水をウエハ30と砥石にかけて冷却しながら行うことができる。必要に応じて、研削工程の最後に研削水を用いない研削方式であるドライポリッシュ工程を行うことができる。
裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、弗化水素酸、硝酸、硫酸、酢酸等の単独若しくは混合液からなる酸性水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着性フィルム50を貼着した状態でウエハ30を浸漬する等の方法により行われる。エッチングは、ウエハ30の裏面に生じた歪みの除去、ウエハ30のさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。
【0063】
(工程(C))
次いで、粘着性フィルム50に紫外線を照射した後にウエハ30から粘着性フィルム50を除去する。工程(C)では、粘着性フィルム50に対し、例えば、200mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下の線量の紫外線を照射することによって、粘着性樹脂層20を紫外線硬化させて粘着性樹脂層20の粘着力を低下させ、その後、ウエハ30から粘着性フィルム50を除去する。
紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を用いておこなうことができる。
紫外線の照射強度は、例えば、50mW/cm2以上500mW/cm2以下である。
【0064】
ウエハ30から粘着性フィルムを除去する前に、リングフレームとともに、ダイシングテープ、またはダイアタッチフィルム付きダイシングテープ上にウエハ30をマウントしてもよい。ウエハ30から粘着性フィルム50を除去する操作は、人手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置により行うことができる。
粘着性フィルム50を剥離した後のウエハ30の表面は、必要に応じて洗浄されてもよい。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。洗浄方法は、ウエハ30の表面の汚染状況により適宜選択することができる。
【0065】
(その他の工程)
工程(A)~工程(C)を行った後、得られたチップ31を回路基板に実装する工程等をさらに行ってもよい。これらの工程は、公知の情報に基づいておこなうことができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0067】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
実施例において、指数表記を記号「E」で示す場合がある。例えば、1.3E+06との表記は、1.3×106を意味する。
【0068】
<原材料の準備>
以下の原材料を準備した。
【0069】
(基材層)
基材層1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、製品名:E7180、厚み:50μm、片面コロナ処理品)
【0070】
基材層2:以下のようにして製造した、低密度ポリエチレンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/低密度ポリエチレンフィルムからなる積層フィルム(総厚み:110μm)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm)の両側に低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.925kg/m3、厚み:30μm)をラミネートして得た。得られた積層フィルムの片側にはコロナ処理を実施した。
【0071】
基材層3:以下のようにして製造した、ポリエチレンテレフタレートフィルム/エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム/アクリルフィルムからなる積層フィルム(総厚み:145μm)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、製品名:E7180、厚み:50μm)とエチレン・酢酸ビニル共重合体(三井・ダウポリケミカル株式会社製、MFR:2.5g/10分)フィルム(厚み:70μm)を、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムとの貼り合わせ面側にコロナ処理を施すことで積層した。さらに、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムの反対面側にもコロナ放電処理を施した。
次に、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)の離型面に、以下に示す基材層用のアクリル系樹脂塗布液をドライ厚み20μmになるようにコート・乾燥させ、上記のポリエチレンテレフタレートフィルム/エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムからなる積層フィルムにエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムを介して貼り合わせ、熟成(40℃、3日間)した。その後、セパレータを剥離した。
以上のようにして基材層3を得た。
【0072】
(基材層用のアクリル系樹脂塗布液)
重合開始剤として4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド(大塚化学社製
、製品名:ACVA)を0.5質量部用い、アクリル酸ブチル74質量部、メタクリル酸メチル14質量部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル9質量部、メタクリル酸2質量部、アクリルアミド1質量部、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウムの水溶液(第一工業製薬社製、製品名:アクアロンHS-1025)3質量部を、脱イオン水中で70℃において9時間乳化重合させた。重合終了後、アンモニア水でpH=7に調整し、固形分濃度42.5質量%のアクリルポリマー水系エマルジョンを得た。次に、このアクリルポリマー水系エマルジョン100質量部に対し、アンモニア水を用いて、pH=9以上に調整するとともに、アジリジン系架橋剤〔日本触媒化学工業製、ケミタイトPZ-33〕0.75質量部、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル5質量部を配合した。
以上のようにして、基材層用のアクリル系樹脂塗布液を得た。
【0073】
((メタ)アクリル系樹脂溶液)
(メタ)アクリル系樹脂溶液1:
アクリル酸エチル49質量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル20質量部、アクリル酸メチル21質量部、メタクリル酸グリシジル10質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤0.5質量部(固形分換算)を、トルエン65質量部および酢酸エチル50質量部の混合溶剤中で、80℃で10時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を冷却し、冷却した溶液にキシレン25質量部、アクリル酸5質量部、およびテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.5質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で32時間反応させた。
以上のようにして、(メタ)アクリル系樹脂溶液1を得た。
【0074】
(メタ)アクリル系樹脂溶液2:
アクリル酸n-ブチル77質量部、メタクリル酸メチル16質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル16質量部、および重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3質量部を、トルエン20質量部および酢酸エチル80質量部の混合溶剤中で、85℃で10時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を冷却し、これにトルエン30質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、製品名:カレンズMOI)7質量部、およびジラウリル酸ジブチル錫0.05質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で12時間反応させた。
以上のようにして、(メタ)アクリル系樹脂溶液2を得た。
【0075】
(メタ)アクリル系樹脂溶液3:
アクリル酸エチル30質量部、アクリル酸メチル11質量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル26質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル7質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤0.8質量部(固形分換算)を、トルエン7質量部および酢酸エチル50質量部の混合溶剤中で、80℃で9時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を冷却し、冷却した溶液にトルエン25質量部を加えた。
以上のようにして、(メタ)アクリル系樹脂溶液3を得た。
【0076】
(光開始剤)
オムニラッド651(IGM社製):2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン
オムニラッド369(IGM社製):2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4'-モル
フォリノブチロフェノン
【0077】
(多官能(メタ)アクリレート)
アロニックスM400(東亜合成社製):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物
【0078】
(架橋剤)
イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名:オレスターP49-75S)
【0079】
<紫外線硬化性粘着性樹脂材料(粘着性樹脂層形成用の塗布液)の調製>
表1の「紫外線硬化性粘着性樹脂材料(粘着性樹脂層形成用の塗布液)」の欄に記載の各材料を均一に混合して、紫外線硬化性粘着性樹脂材料(粘着性樹脂層形成用の塗布液)を得た。
【0080】
<紫外線硬化性粘着性樹脂材料の硬化膜の粘弾性測定>
まず、表1に記載の紫外線硬化性粘着性樹脂材料(粘着性樹脂層形成用の塗布液)を、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)(三井化学東セロ社製SP-PET T18(厚み31μm))に塗布した。次に、120℃で3分間乾燥させて、厚み30~40μmの粘着性樹脂層を形成した。得られた粘着性樹脂層を何層か重ね合わせることで、セパレータ/厚み0.2mmの粘着性樹脂層/セパレータ構成の積層体サンプルを得た。得られた積層体サンプルをオーブンで40℃、3日間加熱し、熟成させた。
得られた積層体サンプル(セパレータ/粘着性樹脂層/セパレータ構成)を25℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて、主波長365nmの紫外線を、照射強度100W/cm2で、紫外線量1080mJ/cm2で照射して紫外線硬化させた。
次に、固体粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、RSA3)を用いて、粘弾性を測定した。具体的には、硬化後積層体サンプルを幅10mm、長さ50mmにカットし、硬化後積層体サンプルの両側のセパレータを取り除き、測定サンプルを得た。その後、その測定サンプルを、チャック間が20mmになるように装置にセットした。そして、周波数1Hz、引張モードで、温度-50~200℃の範囲で動的粘弾性を測定した。
5℃における貯蔵弾性率をE'(5℃)、100℃における貯蔵弾性率をE'(100℃)とした。
【0081】
<粘着性フィルムの作製>
まず、表1に記載の紫外線硬化性粘着性樹脂材料(粘着性樹脂層形成用の塗布液)を、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)に塗布した。そして、120℃で3分間乾燥させて、厚み20μmの粘着性樹脂層を形成した。
形成された粘着性樹脂層を、基材層に貼り合わせて積層体とした。具体的には、基材層として基材層1または2を用いた場合には、コロナ処理面に貼り合わせた。基材層として基材層3を用いた場合には、セパレータを剥がし、アクリルフィルム層側に貼り合わせた。
得られた積層体をオーブンで40℃、3日間加熱し、熟成させた。
以上により、バックグラインド用粘着性フィルムを得た。
【0082】
<基礎物性の確認>
(1)粘着力評価:紫外線照射前後での粘着力の測定
(i)粘着力の測定のための被着体ウエハの準備:
シリコンミラーウエハ(SUMCO社製、4インチ片面ミラーウエハ)の鏡面を、UVオゾン洗浄装置(テクノビジョン社製、UV-208)により、オゾン洗浄した(オゾン処理時間:60秒)。その後、ウエハ鏡面をエタノールでふき取ったものを被着体ウエハとした。
【0083】
(ii)紫外線照射前粘着力の測定:
23℃、50%RHの環境下、<粘着性フィルムの作製>で得られた粘着性フィルムを横幅50mmに切り、セパレータを剥がし、ハンドローラを用いて、粘着性フィルムをその粘着性樹脂層を介して、被着体ウエハ鏡面に貼り付けた。そして、1時間放置した。
放置後、引張試験機(島津製作所、製品名:オートグラフAGS-X)を用いて、粘着性フィルムの一端を挟持し、剥離角度:180°、剥離速度:300mm/分で被着体ウエハの表面から粘着性フィルムを剥離した。この際の応力を測定してN/25mmに換算し、粘着力を求めた。評価はN=2で実施し、得られた2つの値を平均して剥離強度F0とした。
【0084】
(iii)紫外線照射後粘着力の測定:
23℃、50%RHの環境下、粘着力評価用粘着性フィルムを横幅50mmに切り、セパレータを剥がし、ハンドローラを用いて、粘着性フィルムをその粘着性樹脂層を介して、被着体ウエハ鏡面に貼り付けた。そして、1時間放置した。
放置後、25℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて、主波長365nmの紫外線を、照射強度100mW/cm2で、粘着性フィルムに、紫外線量1080mJ/cm2照射した。その後、引張試験機(島津製作所、製品名:オートグラフAGS-X)を用いて、粘着性フィルムの一端を挟持し、剥離角度:180°、剥離速度:300mm/分で被着体ウエハの表面から粘着性フィルムを剥離した。この際の応力を測定してN/25mmに換算し、粘着力を求めた。評価はN=2で実施し、得られた2つの値を平均して剥離強度F1とした。
そして、得られたF1とF0の数値から、F1/F0を計算した。
【0085】
(2)糊残り評価
上記(iii)において、紫外線剥離後の被着体ウエハを目視により観察し、糊残りの有無を判断した。糊残りが確認できなった場合、表1に「無し」と記した。
【0086】
<先ダイシング法における各種評価>
(1)評価ウエハの作製
評価ウエハ1:
ダイシングソーを用いて、ミラーウエハ(ケイ・エス・ティ・ワールド社製、8インチミラーウエハ、直径:200±0.5mm、厚さ:725±50μm、片面ミラー)の鏡面をハーフカットし、評価ウエハ1を得た。(ブレード:ZH05-SD3500-N1-70-DD、チップサイズ:5mm×8mm、切込み深さ:58μm、ブレード回転速度:30000rpm)。評価ウエハ1を光学顕微鏡で観察したところ、カーフ幅は35μmであった。
【0087】
評価ウエハ2:
ダイシングソーを用いて、ミラーウエハ(ケイ・エス・ティ・ワールド社製、8インチミラーウエハ、直径:200±0.5mm、厚さ:725±50μm、片面ミラー)の鏡面に1段階目のハーフカットを実施した(ブレード:Z09-SD2000-Y1 58×0.25A×40×45E-L、チップサイズ:5mm×8mm、切込み深さ:15μm、ブレード回転速度:30000rpm)。光学顕微鏡で観察したところ、カーフ幅は60μmであった。続いて、2段階目のハーフカットを実施し(ブレード:ZH05-SD3500-N1-70-DD、チップサイズ:5mm×8mm、切込み深さ:58μm、ブレード回転速度:30000rpm)、評価ウエハ2を得た。
【0088】
(2)先ダイシング法の実施、各種評価
テープラミネータ(日東電工社製、DR3000II)を用いて、粘着性フィルムを上記評価ウエハ(評価ウエハ1または2)のハーフカットされた面に貼り付けた(23℃、貼付速度:5mm/秒、貼付圧力:0.36MPa)。
続いて、グラインダ(DISCO社製、DGP8760)を用いて、上記ウエハを裏面研削し(粗削りおよび精密削り、精密削り量:40μm、ポリッシュなし、研削後厚み:38μm)、個片化した。
【0089】
その後、UV照射および粘着性フィルムの剥離を行い、先ダイシング法後の装置剥離性および糊残りを評価した。
UV照射について具体的には、25℃の環境下で、高圧水銀ランプを用いて、主波長365nmの紫外線を、照射強度100mW/cm2で、粘着性フィルムに紫外線量1080mJ/cm2を照射した。
粘着性フィルムの剥離は、以下の手順で行った。まず、ウエハマウンター(日東電工社製、MSA300)を用いて、別途用意したダイシングテープ(マウント用テープとして利用)を、当該ダイシングテープの粘着面を介して、8インチウエハ用リングフレームおよび上述の個片化されたウエハのウエハ側に貼り付けた。続いて、テープ剥離機(日東電工社製、HR3000III)を用いて、剥離テープ(ラスティングシステム社製、PET38REL)により、ウエハノッチ部から先ダイシング評価用粘着性フィルムを剥離した。
そして、装置剥離性を評価した。表1においては、一度で先ダイシング評価用粘着性フィルムをウエハから剥離できた場合を「OK」と記載した。
【0090】
また、先ダイシング法実施後の個片化されたウエハ上の糊残りを、光学顕微鏡(オリンパス社製)を用いて観察・評価した。観察においては、特に、予め溝が設けられていた部分に、糸状の糊残りが無いかを観察した。表1においては、糊残りが確認されなかった場合を「OK」、糊残りがあったものを「有り」と記載した。
【0091】
各種情報をまとめて表1に示す。
【0092】
【0093】
表1に示されるとおり、先ダイシング法による電子装置の製造に際し、硬化膜としたときの5℃における貯蔵弾性率E'(5℃)が2.0×106~2.0×109Paであり
、100℃における貯蔵弾性率E'(100℃)が1.0×106~3.0×107Pa
である紫外線硬化性粘着性樹脂材料により構成された粘着性樹脂層を備える粘着性フィルムを用いた評価では、先ダイシング法実施後の糊残りの発生が抑えられた。
一方、E'(100℃)が1.0×106~3.0×107Paの範囲外である紫外線
硬化性粘着性樹脂材料により構成された粘着性樹脂層を備える粘着性フィルムを用いた評価では、先ダイシング法実施後に糊残りが発生した(比較例1および2)。
【0094】
この出願は、2021年5月28日に出願された日本出願特願2021-090476号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0095】
10 基材層
20 粘着性樹脂層
30 ウエハ
30A 回路形成面
31 チップ
50 粘着性フィルム
100 構造体