(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】Y型分子篩及びその合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/24 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C01B39/24
(21)【出願番号】P 2023541071
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2022070485
(87)【国際公開番号】W WO2022148394
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】202110019016.7
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522173712
【氏名又は名称】中石化(大連)石油化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】薛景航
(72)【発明者】
【氏名】秦波
(72)【発明者】
【氏名】高杭
(72)【発明者】
【氏名】柳偉
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106672996(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1683246(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1621349(CN,A)
【文献】特表2005-519847(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1789125(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒サイズが20~100nmであり、シリカ/アルミナのモル比が4.5~6.5であり、動的光散乱法により測定された40~70nmの結晶粒の割合が80~95%である、ことを特徴とするY型分子篩。
【請求項2】
結晶粒サイズが40~70nmであり、シリカ/アルミナのモル比が5~6.
5であり、動的光散乱法により測定された40~70nmの結晶粒の割合が85~93%である、請求項1に記載の分子篩。
【請求項3】
R値が4.5~9.
5であり、R=比表面積/外比表面積で
ある、請求項1又は2に記載の分子篩。
【請求項4】
比表面積が800~950m
2
/g、外比表面積が100~200m
2
/g、細孔容積が0.38~0.56ml/gである、請求項3に記載の分子篩。
【請求項5】
比表面積が850~920m
2/gであり、外比表面積が150~180m
2/gであり、細孔容積が0.43~0.53ml/gである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の分子篩。
【請求項6】
700℃、0.1MPaの高温水蒸気雰囲気で2h処理した後の結晶化度が、75~90%の
間である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の分子篩。
【請求項7】
ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、及び水を混合して第1結晶化を行い、XRDスペクトルにおいてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった指向剤Aを得るステップ(1)と、
指向剤Aにケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、及び水のうちの1種又は複数種を加えて第2結晶化を行い、結晶化度が5%~20%の指向剤Bを得るステップ(2)と、
指向剤Bにケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、及び水のうちの1種又は複数種を加えて第3結晶化を行いステップ(3)と、を含み、
ステップ(1)におけるNa
2O:H
2Oのモル比が、ステップ(2)におけるNa
2O:H
2Oのモル
比よりも0.01~0.04
5低く、
第1結晶化の温度が、第2結晶化の温度よりも5~60℃高く、第1結晶化の時間が、第2結晶化の時間よりも8~37h短く、
ステップ(1)の結晶化温度が、70~100℃であり、時間が4~12時間であり、
ステップ(2)では、結晶化温度が40~70℃であり、結晶化時間が15~41時間である、
ことを特徴とするY型分子篩の合成方法。
【請求項8】
ステップ(1)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比が、ステップ(2)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比よりも0.015~0.03低い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(1)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比が、ステップ(2)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比よりも0.02~0.026低い、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(2)におけるNa
2O:H
2Oのモル比が、ステップ(3)におけるNa
2O:H
2Oのモル比よりも0.01~0.0
4高い、請求項
7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(2)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比が、ステップ(3)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比よりも0.015~0.035高い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(2)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比が、ステップ(3)におけるNa
2
O:H
2
Oのモル比よりも0.023~0.033高い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(1)の材料のモル配合比が、(7~14)Na
2O:Al
2O
3:(20~33)SiO
2:(300~650)H
2
Oである、請求項
7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1結晶化の温度が、第2結晶化の温度より
も15~40℃高く、第1結晶化の時間が、第2結晶化の時間より
も8~22h短い、請求項
7~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(1)の結晶化温度
が、80~90℃であり、時間
が6~10時間である、請求項
7~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
Al
2O
3質量換算で、ステップ(2)で添加される指向剤Aは、指向剤Bの全質量の25~38wt
%を占める、請求項
7~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(2)では、指向剤Bの材料のモル配合比が、(17~26)Na
2O:Al
2O
3:(13-19)SiO
2:(400~618)H
2
Oである、請求項
7~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(2)では、結晶化温度
が50~65℃であり、結晶化時間
が18~28時間である、請求項
7~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
Al
2O
3質量換算で、ステップ(3)で添加される指向剤Bの質量が、第3結晶化を行う材料の組成の質量の45~65wt
%を占める、請求項
7~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(3)では、第3結晶化を行う材料の組成が、(12~20)Na
2O:Al
2O
3:(14~20)SiO
2:(550~1050)H
2
Oである
、請求項
7~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(3)の結晶化温度が80~105
℃であり、結晶化時間が6~13時
間である、請求項
7~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(1)、ステップ(2)及びステップ(3)では、前記ケイ素源は、同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、水ガラス、シリカゾル、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、
ステップ(1)、ステップ(2)及びステップ(3)では、前記アルミニウム源は、同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、アルミン酸ナトリウム、メタアルミン酸ナトリウム、アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシドのうちの1種又は複数種であり、
ステップ(1)、ステップ(2)及びステップ(3)では、前記アルカリ源は、同一であるか、又は異なり、それぞれ独立して、水酸化ナトリウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムのうちの1種又は複数種である、請求項
7~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年01月07日に提出された中国特許出願202110019016.7の利益を主張しており、当該出願の内容は引用によって本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、分子篩合成の分野に属し、Y型分子篩及びその合成方法に関し、具体的には、結晶粒が小さく、シリカ/アルミナ比が高いY型分子篩及びその合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Y型分子篩は、FAU型骨格構造を有する分子篩であり、フォージャサイトケージの開口同士が連結されてY型分子篩の3次元細孔構造が構成される。Y型分子篩は独特な構造と性質を持つため、近年、触媒、ガス分離、吸着、イオン交換などの分野で広く使用されている。Y型分子篩は、接触分解(FCC)と水素化分解の分野で50年以上応用されており、それ自体が持つ大きな比表面、大きな細孔容積、豊富な酸中心活性サイト、良好な熱安定性や化学安定性により、Y型分子篩は産業界においてかけがえのない地位を占めている。
【0004】
最初に工業化生産に用いられたY型分子篩のサイズはミクロンスケールであるが、ミクロンスケールのY型分子篩の細孔が長いため、接触分解、水素化分解、水素化異性化などの過程で、生成物分子が細孔内に拡散して二次分解が生じやすく、液体の収率が低下する。さらに、従来のY型分子篩は、後処理されていない場合、外表面の面積が小さく、高分子の縮合環芳香族炭化水素への転化が非常に限られている。小結晶粒Y型分子篩は、Y型分子篩の骨格構造を保持しながら、より大きな外比表面積を有するため、ますます注目されている。
【0005】
現在、小結晶粒NaY型分子篩を合成するには、主に以下のいくつかの方法がある。
【0006】
1.合成過程で指向剤を加え、指向剤の性質を改善することによって製品の性質を変化させる。例えば、CN1033503Cは、光透過率が30%未満の従来の指向剤にケイ酸ナトリウム溶液を加えて、光透過率が70%を超える改良指向剤を製造して、結晶化前に、シリカアルミナゲルに加えることにより、SiO2/Al2O3が5以上となり、結晶粒サイズが数百nm程度の小結晶粒NaY型分子篩を得ることができる、小結晶粒NaY型分子篩の製造方法を開示している。CN1032803Cは、シリカアルミノゲルを高温で結晶化させ、結晶化後に誘導剤を投入し、その後、結晶化を継続して最終製品を得ることにより、結晶粒サイズが100~500nmのNaY型分子篩を製造することができる小結晶粒NaY型分子篩の合成方法を提供する。
【0007】
2.界面活性剤又は有機分散剤を加えることにより、NaY型分子篩のサイズを小さくする。例えば、CN103449470Bは、高アルカリメタアルミン酸ナトリウム溶液を水ガラス溶液に加えて、均一に撹拌した後、界面活性剤の水溶液に注入し、熟成して改良型指向剤を得て、この指向剤を一定のモル配合比で配合した材料に加え、8~72時間結晶化させて小結晶粒NaY型分子篩を得る高安定性の小結晶粒NaY型分子篩の合成方法を開示している。結晶粒サイズは100~400nmである。USP3516786は、有機溶媒を用いて小結晶粒NaY型分子篩を合成しており、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの水溶性溶媒を、ゲル量の0.1~20%の添加量で、ゲル化前にケイ素源やアルミニウム源に添加し、又はゲル化後に添加して、結晶化させて小結晶粒Y型分子篩を得ることができる。
【0008】
3.合成系のアルカリ度を高める方法。EP0435625A2には、高アルカリシリカアルミノゲルを利用して小結晶粒Y型分子篩を直接合成する方法を提案しており、合成したY型分子篩は、粒径が数十ナノメートルに達することができる。該方法では、まず、アルミン酸ナトリウム水溶液を高アルカリ水ガラス溶液に注入し、3000rpmの速度で高速回転させてゲルの内部を均一化し、熟成、結晶化をして、製品を得る。しかし、この方法で得られたNaY型分子篩は、SiO2/Al2O3が比較的に低く、水熱安定性が比較的に悪く、工業応用は難しい。
上記の方法で得られたY型分子篩は、シリカ/アルミナ比が低すぎたり、結晶粒が大きかったり、粒径分布が不均一であったりするため、触媒担体として用いた場合に構造が崩れやすい、触媒活性が低い、性能が不安定である、触媒寿命が短い等の欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の欠点に対して、本発明は、高シリカ/アルミナ比、小さな結晶粒サイズ、均一な粒径分布、及び優れた水熱安定性の利点を同時に持つY型分子篩及びその合成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によれば、本発明は、結晶粒サイズが20~100nm、好ましくは40~70nm、より好ましくは50~60nmであり、シリカ/アルミナのモル比が4.5~7、好ましくは5.0~6.5、より好ましくは6.0~6.5であり、動的光散乱法により測定された40~70nmの結晶粒の割合が、80%~95%、好ましくは85%~93%である、Y型分子篩を提供する。
【0011】
好ましくは、本発明のY型分子篩は、比表面積が800~950m2/g、好ましくは850~920m2/g、例えば810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、905、910、914、920、930、940、948m2/gである。
【0012】
好ましくは、本発明のY型分子篩では、外比表面積が、100~200m2/g、好ましくは150~180m2/gである。
【0013】
好ましくは、前記分子篩のR値が、4~9、例えば4、5、6、6.2、6.5、7、7.3、7.8、8、8.5、9であり、R=比表面積/外比表面積である。
【0014】
好ましくは、本発明のY型分子篩は、細孔容積が0.36ml/g以上、好ましくは0.38以上0.56ml/g以下、好ましくは0.53ml/g以下、より好ましくは0.43~0.53ml/g、例えば0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52ml/gである。
【0015】
本発明によるY型分子篩は、NaYであってもよいし、アンモニウム交換をしたHYであってもよい。HYの場合、700℃、0.1MPaの高温水蒸気雰囲気で2h処理した後、得られた分子篩は、結晶化度が75~90%の間、好ましくは83~88%である。
【0016】
NaYの場合、前記Y型分子篩の水熱安定性については、アンモニウム交換をした後、700℃、0.1MPaの高温水蒸気雰囲気で2h処理して得られた分子篩は、結晶化度が75~90%の間、好ましくは83~88%である。
【0017】
本発明のY型分子篩は、粒径が小さく、外比表面積が大きいので、Y型分子篩とナノ材料の性能を兼ね備え、また、シリカ/アルミナ比が高いので、水熱安定性に優れ、崩れにくく、粒径分布が均一であるので、触媒特性が安定している。
【0018】
本発明の第2態様によれば、本発明は、
ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、及び水を混合して第1結晶化を行い、XRDスペクトルにおいてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった指向剤Aを得るステップ(1)と、
指向剤Aにケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、及び水のうちの1種又は複数種を加えて第2結晶化を行い、結晶化度が5%~20%、好ましくは8%~16%の指向剤Bを得るステップ(2)と、
指向剤Bにケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、及び水のうちの1種又は複数種を加えて第3結晶化を行うステップ(3)と、を含み、
ステップ(1)におけるNa2O:H2Oのモル比が、ステップ(2)におけるNa2O:H2Oのモル比よりも0.01~0.045、好ましくは0.01~0.035より好ましくは0.015~0.030、さらに好ましくは0.02~0.026低い、Y型分子篩の合成方法を提供する。
【0019】
本発明の方法では、指向剤Bを製造する結晶化系であるステップ(2)の系は、指向剤Bにケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源、水のうちの1種又は複数種をさらに加えて形成した結晶化系であるステップ(3)の系よりも、Na2O:H2Oのモル比が、(0.01~0.04)、好ましくは(0.015~0.035)、さらに好ましくは(0.023~0.033)高い。
【0020】
上記の方法では、前記ケイ素源は、好ましくは水ガラス、シリカゾル、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、アルミニウム源は、好ましくはメタアルミン酸ナトリウム、アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシドのうちの1種又は複数種であり、アルカリ源は、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムのうちの1種又は複数種である。
【0021】
水は、好ましくは蒸留水である。
【0022】
本発明の1つの特定実施形態によれば、前記Y型分子篩の合成方法は、具体的には、下記のステップを含む。
(1)撹拌しながら、アルミニウム源、好ましくはアルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解し、その後、ケイ素源、好ましくは水ガラスを加え、均一に撹拌した後、水酸化ナトリウムを加え、撹拌を持続し、ゲルを所定の温度で処理時間保温して結晶化させた後、ゲルを取り出して、完全に結晶化させていないY型分子篩溶液を得て、指向剤Aとする。このときに得られた指向剤Aは、いくつかの基本的な構造単位が存在し、全体としてアモルファス相であり、XRDスペクトルにおいてY型分子篩の特徴的な回折ピークが観察されておらず、すなわち、結晶化度が0である。
(2)撹拌しながら、所定量のケイ素源、例えば高アルカリ水ガラス溶液、アルミニウム源例えばアルミン酸ナトリウム溶液を、ステップ(1)で得られた指向剤Aに順次加え、均一に撹拌し、所定の温度で保温して結晶化させ、取り出して室温まで冷却し、指向剤Bを得る。このとき、指向剤Bの結晶化度は5%~20%、好ましくは8%~16%である。
(3)撹拌しながら、低アルカリ水ガラス、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加え、所定の温度で保温して結晶化させ、得た固体生成物を吸引ろ過し、中性まで洗浄し、乾燥し、生成物を得る。
【0023】
本発明では、高アルカリ水ガラス、低アルカリ水ガラスとは、水ガラス溶液中の水酸化ナトリウムの含有量の高さを指し、具体的には、当該ステップに必要な材料のモル配合比を満たせばよい。
【0024】
本発明の方法では、ステップ(1)の材料のモル配合比が、好ましくは(7~14)Na2O:Al2O3:(20~33)SiO2:(300~650)H2O、さらに好ましくは(9~12)Na2O:Al2O3:(23~28)SiO2:(350~550)H2Oである。
【0025】
本発明の方法では、好ましくは、ステップ(1)の結晶化温度が、70~100℃、好ましくは80~90℃であり、時間が4~12時間、好ましくは6~10時間である。
【0026】
本発明の方法では、好ましくは、ステップ(2)で添加される指向剤Aは、指向剤Bの全質量の25~38wt%(Al2O3質量換算で)、好ましくは28~35wt%を占める。指向剤Aを上記の特定割合の範囲とすることにより、指向剤Bの結晶粒サイズを制御し、得られたY型分子篩の結晶粒サイズが所望の範囲で、粒径分布が均一であることが確保される。
【0027】
本発明の方法では、ステップ(2)では、指向剤Bの材料のモル配合比が、(17~26)Na2O:Al2O3:(13~19)SiO2:(400~618)H2O、好ましくは(21~24)Na2O:Al2O3:(15~17)SiO2:(400~550)H2Oである。
【0028】
本発明の方法では、ステップ(2)の結晶化温度が、40~70℃、好ましくは50~65℃であり、結晶化時間が15~41時間、好ましくは18~28時間である。
【0029】
上記の方法では、指向剤Aを製造する際の結晶化温度である第1結晶化の温度は、好ましくは、指向剤Bを製造する際の結晶化温度である第2結晶化の温度よりも(5~60℃)、好ましくは(15~40℃)高い。第2結晶化を低温で行うように制御することにより、分子篩の結晶粒サイズがさらに小さく、雑晶の形成が回避される。
【0030】
好ましくは、第1結晶化の時間が、第2結晶化の時間よりも8~37h、好ましくは8~22h短い。
【0031】
本発明の方法では、ステップ(3)で添加される指向剤Bの質量は、最終的なソル(すなわち、第3結晶化を行う材料)の組成質量の45~65wt%(Al2O3質量換算で)、好ましくは50~60wt%を占める。
【0032】
本発明の方法では、ステップ(3)で水ガラス及びアルミン酸ナトリウム溶液を加えて形成した最終的なソルの組成は、(12~20)Na2O:Al2O3:(14~20)SiO2:(550~1050)H2O、好ましくは(14~17)Na2O:Al2O3:(16~18)SiO2:(650~950)H2Oである。
【0033】
本発明の方法では、ステップ(3)の結晶化温度が85~105℃、好ましくは90~100℃であり、結晶化時間が6~13時間、好ましくは8~12時間である。
【0034】
好ましくは、第3結晶化の温度が、第2結晶化の温度よりも20~60℃、好ましくは35~50℃高い。
【0035】
好ましくは、第3結晶化の時間が、第2結晶化の時間よりも5~35時間、好ましくは6~20時間少ない。
【0036】
本発明の1つの好ましい形態によれば、本発明の方法は、第3結晶化で得られた生成物に1回又は複数のアンモニウム交換を行い、所望のHY型分子篩を得るステップをさらに含む。
【0037】
前記アンモニウム交換は、公知の方式及び条件で行われてもよく、例えば、1.5mol/L、70℃の塩化アンモニウム溶液を用いて3回のアンモニウム交換を行い、1回のアンモニウム交換の固液比を1:10とする。本発明は、これについて詳しく説明しない。
【発明の効果】
【0038】
本発明による合成方法では、まず、原料のシリカ/アルミナ比が高く、アルカリ度が低い条件下で結晶化を行い、溶液中に完全に結晶化させていないナノY型分子篩前駆体を大量に形成し、その後、ゾルのアルカリ度をやや低い温度で高めて二次結晶化を行うことにより、結晶粒が小さく、シリカ/アルミナ比が高いナノ種結晶を得て、その上で、アルカリ度が低く、シリカ/アルミナ比が高い条件で3回目の結晶化を行うことにより、シリカ/アルミナ比をさらに向上させるとともに、結晶化度を向上させて骨格構造をより完全なものとすることができ、これにより、結晶粒が小さく、粒度分布が集中し、シリカ/アルミナ比が高く、水熱安定性に優れたY型分子篩を得ることができ、このY型分子篩は、工業化生産のニーズを満たすことができる。したがって、本発明の合成方法は、産業上の使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】左から右へ、実施例1で製造された指向剤A、指向剤B、及びY型分子篩のXRD回折パターンである。
【
図2】実施例1で製造されたY型分子篩の10k倍率のSEM像及び50k倍率のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の方法では、指向剤A及び指向剤Bの結晶化度は、中国石油化学工業業界標準のSH/T 0340-92法を用いてX線回折により測定する。
【0041】
前記Y型分子篩の水熱安定性試験において、サンプルを700℃、0.1MPaの水蒸気雰囲気で2時間水熱処理したときの結晶化度である。結晶化度が高いほど水熱安定性に優れていることを示す。具体的な試験方法は、まず、1.5mol/L、70℃の塩化アンモニウム溶液で3回のアンモニウム交換を行い、1回のアンモニウム交換の固液重量比を1:10とする。その後、サンプルを700℃、0.1MPaの水蒸気雰囲気で2時間熱処理した後、中国石油化学工業業界標準のSH/T 0340-92法を用いて、X線回折により水熱処理後のサンプルの結晶化度を測定する。
分子篩の比表面積及び細孔容積はN2-吸脱着法を用いて測定する。測定前に、サンプルを300℃で3h熱処理し、次に77Kで窒素を吸着して試験する。分子篩の比表面積はBET法を用いて計算し、全細孔容積はp/p0=0.98で測定し、外比表面積はt-Plot法を用いて求める。
【0042】
分子篩骨格のシリカ/アルミナのモル比は、X線回折法を用いて測定する。中国石油化学工業業界標準のSH/T 0339-92を用いてセルパラメータa0を測定し、Breck式Si/Al=((192×0.00868)/(a0-24.191))-1に代入して計算する。得られたシリカ/アルミナのモル比は、SiO2/Al2O3で表される。
分子篩の結晶粒サイズは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定する。
【0043】
分子篩の粒径分布はGB/T 29022-2012法に規定された動的光散乱法(DLS)を用いて測定する。
【0044】
各ステップにおけるゲル組成は、投入量に基づいて算出される。
【0045】
1,3,5-トリイソプロピルベンゼン(TIPB)をモデル化合物として分子篩の接触分解性能を試験する。反応は固定層反応器で行い、篩分けした20~40メッシュのHY型分子篩2gを計量し、反応器に充填する。触媒は、まず、常温で30分間N2パージされ、N2流量は50mL/minに制御される。その後、500℃まで昇温して活性化し、活性化後温度を450℃まで下げて原料を導入し、原料の流量を12mL/hとする。反応後の生成物についてはAgilent 7890Bガスクロマトグラフ(FID検出器)を用いて分析し、反応48時間後に安定期に入って収集した生成物の組成を表2に示す。
以下では、実施例と比較例を参照して、本発明の方法の製造プロセス及び製品の性能をさらに説明するが、以下の実施例は本発明の方法を制限するものではない。
実施例1
【0046】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が9Na
2O:Al
2O
3:23.0SiO
2:550H
2Oのゲルを得た。ゲルを80℃の温度で保温して10h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が23Na
2O:Al
2O
3:16SiO
2:550H
2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲル全質量の28wt%(ゲル中のAl
2O
3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを65℃で保温して18h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度13%の指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が15Na
2O:Al
2O
3:18SiO
2:820H
2Oのゲルを形成し、指向剤Bは、ゲル全質量の50wt%(ゲル中のAl
2O
3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを90℃の条件で保温して12h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。ステップ(1)、ステップ(2)及びステップ(3)で結晶化させて得た生成物のXRDスペクトルは
図1に示される。実施例1で製造されたY型分子篩の10k倍率のSEM像及び50k倍率のSEM像は
図2に示される。
実施例2
【0047】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が12.0Na2O:Al2O3:25SiO2:450H2Oのゲルを得た。ゲルを90℃の温度で保温して6h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が21Na2O:Al2O3:17SiO2:440H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲル全質量の35wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを50℃で保温して28h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度18%の指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が14Na2O:Al2O3:17SiO2:950H2Oのゲルを形成し、指向剤Bはゲル全質量の60wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを100℃の条件で保温して8h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
実施例3
【0048】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が10.5Na2O:Al2O3:28SiO2:350H2Oのゲルを得た。ゲルを85℃の温度で保温して8h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が21.5Na2O:Al2O3:15SiO2:400H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲル全質量の33wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを60℃で保温して25h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度14%の指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が17Na2O:Al2O3:16SiO2:660H2Oのゲルを得て、指向剤Bは、ゲルの全質量的55wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを100℃の条件で保温して10h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
実施例4
【0049】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が10Na2O:Al2O3:20SiO2:640H2Oのゲルを得た。ゲルを70℃の温度で保温して12h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が25.6Na2O:Al2O3:19SiO2:420H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲルの全質量の30wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを55℃で保温して25h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度10%の指向剤Bを得た。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が20Na2O:Al2O3:18SiO2:950H2Oのゲルを形成し、指向剤Bは、ゲルの全質量の65wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを105℃条件で保温して6h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
実施例5
【0050】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が14.0Na2O:Al2O3:33SiO2:520H2Oのゲルを形成した。ゲルを75℃の温度で保温して4h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が17.0Na2O:Al2O3:16SiO2:400H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲルの全質量の25wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを70℃で保温して15h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度20%指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が12Na2O:Al2O3:14SiO2:1050H2Oのゲルを形成し、指向剤Bは、ゲルの全質量の45wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを90℃条件で保温して10h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
実施例6
【0051】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が7.0Na2O:Al2O3:26SiO2:300H2Oのゲルを形成した。ゲルを100℃の温度で保温して8h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が23.0Na2O:Al2O3:13SiO2:615H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲルの全質量の38wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを40℃で保温して16h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度10%の指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が15Na2O:Al2O3:20SiO2:550H2Oのゲルを形成し、指向剤Bは、ゲルの全質量の55wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを85℃条件で保温して10h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
実施例7
【0052】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が12Na2O:Al2O3:20SiO2:530H2Oのゲルを形成した。ゲルを90℃の温度で保温して6h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が17Na2O:Al2O3:14SiO2:420H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲルの全質量の35wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを60℃で保温して31h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度6%の指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が20Na2O:Al2O3:16SiO2:800H2Oのゲルを形成し、指向剤Bは、ゲルの全質量の55wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを95℃条件で保温して10h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
実施例8
【0053】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が12Na2O:Al2O3:25SiO2:500H2Oのゲルを形成した。ゲルを70℃の温度で保温して4h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が17Na2O:Al2O3:15SiO2:500H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲルの全質量の30wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを40℃で保温して24h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度10%の指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が14.4Na2O:Al2O3:16SiO2:800H2Oのゲルを形成し、指向剤Bは、ゲルの全質量の62wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)のゲルを形成した。ゲルを100℃の条件で保温して6h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
実施例9
【0054】
(1)撹拌しながら、アルミン酸ナトリウムを蒸留水に溶解した後、水ガラス溶液を加え、ゲルが均一となるまで撹拌し、その後、水酸化ナトリウム溶液を加えて、撹拌を持続し、最後に、組成が12Na2O:Al2O3:22SiO2:500H2Oのゲルを得た。ゲルを80℃の温度で保温して5h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、指向剤Aを得た。XRD試験においてY型分子篩に属する特徴的な回折ピークが観察されなかった。
(2)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに順次加えて、組成が25Na2O:Al2O3:17SiO2:500H2Oのゲルを形成し、指向剤Aは、ゲルの全質量の35wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占める。ゲルを60℃で保温して9h結晶化させ、ゲルを取り出して室温まで冷却し、結晶化度8%の指向剤Bとした。
(3)撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Bに加えて、最終的には、組成が20Na2O:Al2O3:18SiO2:800H2Oのゲルを形成し、指向剤Bは、ゲルの全質量の60wt%(ゲル中のAl2O3百分率含有量換算)を占める。ゲルを90℃条件で保温して13h結晶化させ、室温まで冷却し、ろ過して乾燥させ、最終製品を得た。
比較例1
【0055】
指向剤Bを製造せず、直接撹拌しながら、水ガラス溶液、アルミン酸ナトリウム溶液を指向剤Aに加えて、最後の結晶化を行った以外、実施例9の方式に従ってY型分子篩を製造した。指向剤Aは、ゲルの全質量の60wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占め、最終的に形成されたゲルの組成は20Na2O:Al2O3:18SiO2:800H2Oであった。
比較例2
【0056】
指向剤Aを製造せず、25Na2O:Al2O3:17SiO2:500H2Oのゲル組成に従って指向剤Bを製造し、その後、指向剤Bを加えて、最後の結晶化を行った以外、実施例9の方式に従ってY型分子篩を製造した。指向剤Bは、ゲルの全質量の60wt%(ゲル中のAl2O3の百分率含有量換算)を占め、最終的に形成されたゲルの組成は20Na2O:Al2O3:18SiO2:800H2Oであった。
比較例3
【0057】
ステップ(2)の組成が37Na2O:Al2O3:17SiO2:500H2Oであった以外、実施例9の方法に従ってY型分子篩を製造した。
比較例4
【0058】
ステップ(1)で保温して結晶化する温度は70℃、時間は24時間であり、XRDで試験した指向剤Aの結晶化度は25%であった以外、実施例9の方式に従ってY型分子篩を製造した。
比較例5
【0059】
ステップ(2)で保温して結晶化する温度は65℃、時間は50時間であり、XRDで試験した指向剤Bの結晶化度は45%であった以外、実施例9の方式に従ってY型分子篩を製造した。
【0060】
上記の実施例及び比較例の製品の性質を表1に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
上記表1の結果から、本発明によるY型分子篩は、結晶粒が小さく、粒度分布が集中しており、シリカ/アルミナの比が高く、水熱安定性に優れたものであり、工業化生産のニーズを満たすことができる。触媒の製造に用いる場合に触媒の性能が安定している。
【0064】
以上の表2の結果から、本発明によるY型分子篩は、高分子反応物である1,3,5-トリイソプロピルベンゼンに対して良好な分解活性を有することが分かった。この分子篩は、結晶粒が小さく、粒径分布が集中しており、外面の酸性サイトが豊富であり、高分子反応物を低分子生成物(クメンやベンゼン)に分解するのに有利である。この分子篩は、高分子反応物に対する拡散性に優れ、炭素堆積が生じにくく、長時間の運転に有利である。