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特許7588253窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241114BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023565576
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2022108630
(87)【国際公開番号】W WO2023071336
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】202111271987.7
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522263633
【氏名又は名称】格林美股▲ブン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GEM CO,. LTD
【住所又は居所原語表記】NUMBER 2008, 20F BLOCK A, MARINA BAY CENTER, SOUTH OF XINGHUA RD., BAO’AN CENTER, SHENZHEN, GUANGDONG 518101, CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】523402165
【氏名又は名称】格林美(湖北)新能源材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】GEM (HUBEI) NEW ENERGY MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Number 8, Yingbin Avenue, Duodao District, Jingmen, Hubei 448124, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】許 開華
(72)【発明者】
【氏名】何 鋭
(72)【発明者】
【氏名】丁 衛豊
(72)【発明者】
【氏名】張 云河
(72)【発明者】
【氏名】張 翔
(72)【発明者】
【氏名】張 坤
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109227(JP,A)
【文献】国際公開第2021/011647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料であって、三元系正極材料基体と、被覆層と、を備え、被覆層は窒化物と黒鉛化炭素で構成され、黒鉛化炭素は窒化物の被覆プロセス中で原位置形成されることを特徴とする窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料。
【請求項2】
前記窒化物は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化ニオブのうちの1種または複数種であり、前記被覆層の厚さは1~100nmであることを特徴とする請求項1に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法において、
三元系正極材料基体を提供するステップと、
湿式被覆によってAl、Si、Ti、Zr、Ta、Nbのうちの1種または複数種である被覆元素を三元系正極材料基体の表面に被覆させることで中間生成物を取得するステップと、
前記中間生成物と炭素窒素含有化合物を均一に混合し、焼結、粉砕、篩分け、及び鉄除去を行って、窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料を取得するステップと、を含み、ここで、焼結の雰囲気は不活性ガスであることを特徴とする窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【請求項4】
前記被覆元素と三元系正極材料基体の質量比は0.0001~0.005:1であることを特徴とする請求項3に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【請求項5】
前記湿式被覆のステップは、
元系正極材料基体を第1溶媒に加えて溶液Iを形成するステップと、
被覆元素を含有する化合物を第2溶媒に加えて溶液IIを形成するステップと、
前記溶液Iに前記溶液IIをゆっくりと添加し、温度を一定に保持して反応を行い、固液分離と乾燥により中間生成物を取得するステップと、を含むことを特徴とする請求項3に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【請求項6】
前記被覆元素を含有する化合物は、被覆元素を含有するアルコキシドであり、
前記第1溶媒及び第2溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールのうちの1種または複数種であることを特徴とする請求項5に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【請求項7】
前記温度を一定に保持して反応を行う場合の温度は30~80℃であり、温度を一定に保持して反応を行う場合の時間は0.5~5時間であることを特徴とする請求項5に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【請求項8】
前記炭素窒素含有化合物は、アミノ酸、メラミン、尿素のうちの1種または複数種であることを特徴とする請求項3に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【請求項9】
前記炭素窒素含有化合物と中間生成物の質量比は5~20:100であることを特徴とする請求項3に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【請求項10】
前記焼結の温度は500~1000℃であり、焼結の時間は3~12時間であることを特徴とする請求項3に記載の窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池の技術分野に関し、特に、窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、新しいタイプのエネルギー貯蔵・変換デバイスとして、その高い動作電圧、高エネルギー密度、高いクーロン効率、メモリー効果なし、長いサイクル寿命、環境に優しいなどの利点により、ポータブル消費者用電子機器、新エネルギー自動車、エネルギー貯蔵グリッドなどの分野に広く使用されている。リチウムイオン電池の正極材料は、電池の全体的な性能を左右し、現在主流の正極材料の中で、三元系正極材料であるLiNiCo1-x-y(M=MnまたはAl)が、その高いエネルギー/電力密度と低温性能により、研究の焦点となっている。
【0003】
三元系材料中のNi含有量の増加に伴い、材料容量は上昇するが、Ni-O結合の結合エネルギーが弱まり、結晶構造の安定性が悪化するため、構造安定性が悪くなる。特に、充放電過程では、高活性界面と電解液の酸化還元反応により、不活性な岩塩相構造が生成され、電解液が分解すると同時に、多量の熱を放出するため、セルのガス膨張、安全性能の低下、放電容量の減衰、サイクル安定性の悪化などの一連の問題が発生する。現在、この問題を解決するための主な技術手段の1つは被覆することであり、被覆剤は、高活性正極界面と電解液との直接接触を効果的に回避して副反応の発生を軽減できるだけでなく、高速イオン伝導体(fast ionic conductor)としても機能して、リチウムイオンの拡散と伝達に優れたチャネルを提供し、それによりレート特性をさらに改善することができる。現在、被覆剤として、主にAl、TiO、ZrO、B、SiOなどの酸化物があり、この酸化物被覆剤は上記の界面安定性の問題を改善することができるが、酸化物の多くは半導体に属し、電子伝導性が低く、大電流の充放電の要求を満たすことができない。窒化物は酸化物と比較してより優れた耐化学腐食性や、電子伝導性、熱安定性を有し、被覆剤として三元系材料の電気特性を最大限に向上させることができる。
【0004】
現在存在する窒化物被覆技術のうち、中国特許出願公開番号CN113097459Aに開示されているように、気相堆積被覆法が用いられているが、その気相反応プロセスが複雑で大量生産が困難である。中国特許出願公開番号CN112174222Aに開示された方法では、被覆対象である三元系正極材料、チタン源、及び窒素含有化合物を一段階で混合及び焼結した、窒化チタンで被覆された三元系正極材料を製造する。この方法はプロセスが簡単で工業生産が容易であるが、製造プロセス中に窒素含有化合物の還元ガスが三元系材料と直接反応する可能性があり、それによって三元系正極の本体材料の格子構造が破壊され、材料の電気特性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のことを鑑みて、従来技術における気相堆積被覆法のプロセスフローが複雑で、一段階混合焼結法が三元系正極の本体材料の格子構造を破壊しやすく、材料性能に影響を与えるという技術問題を解決するための窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料及びその製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、三元系正極材料基体と、被覆層と、を備え、被覆層は窒化物と黒鉛化炭素で構成され、黒鉛化炭素は窒化物の被覆プロセス中で原位置形成される窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料を提供する。
【0007】
本発明の第2態様は、窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法を提供しており、
三元系正極材料基体を提供するステップと、
湿式被覆によってAl、Si、Ti、Zr、Ta、Nbのうちの1種または複数種である被覆元素を三元系正極材料基体の表面に被覆させることで中間生成物を取得するステップと、
中間生成物と炭素窒素含有化合物を均一に混合し、焼結、粉砕、篩分け、及び鉄除去を行って、窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料を取得するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0009】
本発明は、三元系正極材料の表面層を窒化物で被覆するプロセスにおいて、黒鉛化炭素層構造を原位置生成し、物理的混合法と比較して、原位置生成された炭素層は基体の材料とより密接に接続し、導電ネットワークがより緻密になるため、材料のレート特性を最大限に高めることができ、当該三元系正極材料は優れたレート特性とサイクル安定性を有し、その製造方法はプロセスフローが単純で工業生産を容易に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的、技術手段及び利点をさらに明らかにするために、以下に実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は本発明の解釈のためにのみ用いられ、本発明を限定するためのものではないことが理解されるべきである。
【0011】
本発明の第1態様は、三元系正極材料基体と、被覆層と、を備え、被覆層は窒化物と黒鉛化炭素で構成され、黒鉛化炭素は窒化物の被覆プロセス中で原位置形成される窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料を提供する。アモルファスカーボンと比較して、黒鉛化炭素材料は導電性がよりよく、レート特性の向上にさらに寄与する。
【0012】
本発明において、三元系正極材料基体は、ニッケル-コバルト-マンガン三元系正極材料またはニッケル-コバルト-アルミニウム三元系正極材料のうちの1種または複数種であり、その構造式は、LiNiCo1-x-y(M=MnまたはAl)である。本発明の幾つかの特定の実施形態では、x≧0.8である。
【0013】
本発明において、窒化物は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化ニオブのうちの1種または複数種である。
【0014】
本発明において、被覆層の厚さは1~100nmである。
【0015】
本発明の第2態様は、窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料の製造方法を提供しており、
S1:三元系正極材料基体を提供するステップと、
S2:湿式被覆によってAl、Si、Ti、Zr、Ta、Nbのうちの1種または複数種である被覆元素を三元系正極材料基体の表面に被覆させることで中間生成物を取得するステップと、
S3:中間生成物と炭素窒素含有化合物を均一に混合し、焼結、粉砕、篩分け、及び鉄除去を行って、窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料を取得するステップと、を含む。
【0016】
本発明は、炭素窒素含有化合物における窒素元素が高温環境下で中間生成物の表面層に被覆された遷移金属酸化物と反応して遷移金属窒化物を生成する。同時に、炭素元素は遷移金属の触媒黒鉛化作用の下で、黒鉛化カーボンナノシートを原位置生成し、最終的に窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料を形成する。
【0017】
本発明において、三元系正極材料基体を提供するステップは、具体的に、三元系正極材料前駆体とリチウム源を均一に混合し、次いで、焼成、粉砕、及び篩分けして三元系正極材料基体を取得する。
【0018】
さらに、三元系正極材料前駆体は、ニッケル-コバルト-マンガンまたはニッケル-コバルト-アルミニウムの酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物のうちの1種または複数種であり、リチウム源は、炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムのうちの1種または複数種の混合物であり、三元系正極材料前駆体とリチウム源のモル比は1:1~1.15であり、三元系正極材料前駆体とリチウム源を高速ミキサーで均一に混合し、高速ミキサーの回転数は100~1500rpm、さらに1000rpmであり、混合処理時間は0.5~5時間、さらに1時間であり、焼成は酸素雰囲気下で行い、通す酸素雰囲気の体積濃度は99%以上であり、焼成温度は500~1200℃、さらに650~850℃、さらに750℃であり、焼成時間は5~24時間、さらに10~14時間、さらに12時間である。
【0019】
さらに、三元系正極材料基体の製造プロセス中に、正極材料の構造安定性を向上させるためにドーパントも添加する。例えば、ドーパントは、二酸化ジルコニウム、三酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化マグネシウムなどであってもよいが、本発明はこれらに限定されない。さらに、ドーパントと三元系正極材料前駆体のモル比は0.0001~0.1:1である。
【0020】
本発明において、被覆元素と三元系正極材料基体の質量比は0.0001~0.005:1、さらに0.0004~0.003:1、さらに0.0008~0.001:1である。
【0021】
本発明において、湿式被覆のステップは、具体的に、
三元系正極材料基体を第1溶媒に加えて溶液Iを形成するステップと、
被覆元素を含有する化合物を第2溶媒に加えて溶液IIを形成するステップと、
溶液Iに溶液IIをゆっくりと添加し、温度を一定に保持して反応を行い、固液分離と乾燥により中間生成物を取得するステップと、を含む。
【0022】
さらに、被覆元素を含有する化合物は被覆元素を含有するアルコキシドである。本発明の幾つかの特定の実施形態では、被覆元素を含有する化合物は、アルミニウムトリエトキシド、オルトケイ酸テトラエチル、テトラブチルチタネート、チタンイソプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ペンタエトキシドタンタル、ペンタエトキシドニオブのうちの1種または複数種であり、第1溶媒及び第2溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールのうちの1種または複数種である。
【0023】
さらに、溶液Iでは、三元系正極材料基体と溶媒の用量比は1~20g:100ml、さらに10~20g:100mlであり、溶液IIでは、被覆元素を含有する化合物と溶媒の用量比は0.01~10g:100ml、さらに0.04~1g:100ml、さらに0.1~0.6g:100ml、さらに0.2g:100mlである。
【0024】
さらに、温度を一定に保持して反応を行う温度は30~80℃、さらに60℃であり、温度を一定に保持して反応を行う時間は0.5~5時間、さらに1~2時間であり、乾燥の温度は80~120℃であり、乾燥の時間は5~20時間である。
【0025】
本発明において、炭素窒素含有化合物は、アミノ酸、メラミン、尿素のうちの1種または複数種である。さらに、炭素窒素含有化合物と中間生成物の質量比は5~20:100であり、質量比が高すぎると表面被覆層(窒化物や黒鉛化炭素)が多くなりすぎ、材料容量に影響を与え、低すぎると、被覆層が少なくなり、被覆効果が達成できなくなり、さらに6~17:100、さらに10:100である。炭素窒素含有化合物と中間生成物を高速ミキサーで均一に混合し、高速ミキサーの回転数は1000~4000rpm、さらに2000rpmであり、混合処理時間は1~8時間、さらに2時間であり、焼結は不活性ガス(アルゴンガスや窒素ガスなど)の保護下で行われ、焼結温度は500~1000℃、さらに800℃であり、焼結時間は3~12時間、さらに6時間である。
【0026】
<実施例1>
(1)ニッケルコバルトマンガン水酸化物の三元系正極材料前駆体であるNi0.83Co0.12Mn0.05(OH) 500g、水酸化リチウム(LiOH・HO) 240g、及び二酸化ジルコニウムナノ粒子(ZrO) 1.5gを秤量し、高速ミキサーに移し、回転数1000rpmで1時間混合した後取り出し、その後、マッフル炉に移して焼成し、酸素雰囲気中、750℃で12時間焼結し、焼結終了時に材料を取り出した後、粉砕、篩分けして三元系正極材料基体を取得した。
【0027】
(2)三元系正極材料基体400gを秤量し、3000mlのエタノール溶媒に移し、溶液Iを形成する。チタンイソプロポキシド被覆剤2gを秤量し、1000mlのエタノール溶媒に移し、溶液IIを形成する。各溶液をそれぞれ10分間撹拌した後、溶液Iに溶液IIをゆっくりと加え、撹拌を続け、水浴を60℃に加熱し、温度を1時間一定に保持し、混合溶液をプレス濾過し、固液分離により濾過ケーキを得る。その後、100℃のオーブンの内部に移して乾燥させ、温度を10時間一定に保持して乾燥した中間生成物を得た。
【0028】
(3)中間生成物300gとメラミン30gを秤量し、混合した後、高速ミキサーに移して高速撹拌し、2000rpmの回転数で2時間撹拌した後、アルゴンガス雰囲気のマッフル炉に移し、アルゴンガス雰囲気中、800℃で6時間焼結し、焼結完了後、得られた材料を粉砕、篩分け、及び鉄除去して、最終的に窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料となる。
【0029】
ボタン電池試験:得られた窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料(LiNi0.83Co0.12Mn0.05)、アセチレンブラック、PVDFを94:4:4の割合で混合し、NMPを溶媒として均一に混合した後、アルミホイルに塗布し、2032ボタン電池を制作し、電気化学的性能試験を行い、試験電圧範囲は2.8~4.3Vであり、最初の1周期は0.1C/0.1Cで充放電し、その後1C/1Cでサイクル試験を50周期実施する。最終試験結果:0.1C放電容量は210mAh/g、1C放電容量は199mAh/gであり、50周期のサイクル容量維持率は98.6%である。
【0030】
<実施例2>
(1)ニッケルコバルトマンガン水酸化物の三元系正極材料前駆体であるNi0.83Co0.12Mn0.05(OH) 500g、水酸化リチウム(LiOH・HO) 240g、及び二酸化ジルコニウムナノ粒子(ZrO) 1.5gを秤量し、高速ミキサーに移し、回転数1000rpmで1時間混合した後取り出し、その後、マッフル炉に移して焼成し、酸素雰囲気中、750℃で12時間焼結し、焼結終了時に材料を取り出した後、粉砕、篩分けして三元系正極材料基体を取得した。
【0031】
(2)三元系正極材料基体400gを秤量し、3000mlのエタノール溶媒に移し、溶液Iを形成する。チタンイソプロポキシド被覆剤0.4gを秤量し、1000mlのエタノール溶媒に移し、溶液IIを形成する。各溶液をそれぞれ10分間撹拌した後、溶液Iに溶液IIをゆっくりと加え、撹拌を続け、水浴を60℃に加熱し、温度を1時間一定に保持し、混合溶液をプレス濾過し、固液分離により濾過ケーキを得る。その後、100℃のオーブンの内部に移して乾燥させ、温度を10時間一定に保持して乾燥した中間生成物を得た。
【0032】
(3)中間生成物300g、メラミン15gを秤量し、混合した後、高速ミキサーに移して高速撹拌し、2000rpmの回転数で2時間撹拌した後、アルゴンガス雰囲気のマッフル炉に移し、アルゴンガス雰囲気中、800℃で6時間焼結し、焼結完了後、得られた材料を粉砕、篩分け、及び鉄除去して、最終的に窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料となる。
【0033】
ボタン電池試験:得られた窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料(LiNi0.83Co0.12Mn0.05)、アセチレンブラック、PVDFを94:4:4の割合で混合し、NMPを溶媒として均一に混合した後、アルミホイルに塗布し、2032ボタン電池を制作し、電気化学的性能試験を行い、試験電圧範囲は2.8~4.3Vであり、最初の1周期は0.1C/0.1Cで充放電し、その後1C/1Cでサイクル試験を50周期実施する。最終試験結果:0.1C放電容量は208mAh/g、1C放電容量は194mAh/gであり、50周期のサイクル容量維持率は93.7%である。
【0034】
<実施例3>
(1)ニッケルコバルトマンガン水酸化物の三元系正極材料前駆体であるNi0.83Co0.12Mn0.05(OH) 500g、水酸化リチウム(LiOH・HO) 240g、及び二酸化ジルコニウムナノ粒子(ZrO) 1.5gを秤量し、高速ミキサーに移し、回転数1000rpmで1時間混合した後取り出し、その後、マッフル炉に移して焼成し、酸素雰囲気中、750℃で12時間焼結し、焼結終了時に材料を取り出した後、粉砕、篩分けして三元系正極材料基体を取得した。
【0035】
(2)三元系正極材料基体400gを秤量し、3000mlのエタノール溶媒に移し、溶液Iを形成する。チタンイソプロポキシド被覆剤1gを秤量し、1000mlのエタノール溶媒に移し、溶液IIを形成する。各溶液をそれぞれ10分間撹拌した後、溶液Iに溶液IIをゆっくりと加え、撹拌を続け、水浴を60℃に加熱し、温度を2時間一定に保持し、混合溶液をプレス濾過し、固液分離により濾過ケーキを得る。その後、100℃のオーブンの内部に移して乾燥させ、温度を10時間一定に保持して乾燥した中間生成物を得た。
【0036】
(3)中間生成物300gとメラミン20gを秤量し、混合した後、高速ミキサーに移して高速撹拌し、2000rpmの回転数で2時間撹拌した後、アルゴンガス雰囲気のマッフル炉に移し、アルゴンガス雰囲気中、800℃で6時間焼結し、焼結完了後、得られた材料を粉砕、篩分け、及び鉄除去して、最終的に窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料となる。
【0037】
ボタン電池試験:得られた窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料(LiNi0.83Co0.12Mn0.05)、アセチレンブラック、PVDFを94:4:4の割合で混合し、NMPを溶媒として均一に混合した後、アルミホイルに塗布し、2032ボタン電池を制作し、電気化学的性能試験を行い、試験電圧範囲は2.8~4.3Vであり、最初の1周期は0.1C/0.1Cで充放電し、その後1C/1Cでサイクル試験を50周期実施する。最終試験結果:0.1C放電容量は209mAh/g、1C放電容量は196mAh/gであり、50周期のサイクル容量維持率は97.9%である。
【0038】
<実施例4>
(1)ニッケルコバルトマンガン水酸化物の三元系正極材料前駆体であるNi0.83Co0.12Mn0.05(OH) 500g、水酸化リチウム(LiOH・HO) 240g、及び二酸化ジルコニウムナノ粒子(ZrO) 1.5gを秤量し、高速ミキサーに移し、回転数1000rpmで1時間混合した後取り出し、その後、マッフル炉に移して焼成し、酸素雰囲気中、750℃で12時間焼結し、焼結終了時に材料を取り出した後、粉砕、篩分けして三元系正極材料基体を取得した。
【0039】
(2)三元系正極材料基体400gを秤量し、3000mlのエタノール溶媒に移し、溶液Iを形成する。チタンイソプロポキシド被覆剤6gを秤量し、1000mlのエタノール溶媒に移し、溶液IIを形成する。各溶液をそれぞれ10分間撹拌した後、溶液Iに溶液IIをゆっくりと加え、撹拌を続け、水浴を60℃に加熱し、温度を2時間一定に保持し、混合溶液をプレス濾過し、固液分離により濾過ケーキを得る。その後、100℃のオーブンの内部に移して乾燥させ、温度を10時間一定に保持して乾燥した中間生成物を得た。
【0040】
(3)中間生成物300g、メラミン50gを秤量し、混合した後、高速ミキサーに移して高速撹拌し、2000rpmの回転数で2時間撹拌した後、アルゴンガス雰囲気のマッフル炉に移し、アルゴンガス雰囲気中、800℃で6時間焼結し、焼結完了後、得られた材料を粉砕、篩分け、及び鉄除去して、最終的に窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料となる。
【0041】
ボタン電池試験:得られた窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料(LiNi0.83Co0.12Mn0.05)、アセチレンブラック、PVDFを94:4:4の割合で混合し、NMPを溶媒として均一に混合した後、アルミホイルに塗布し、2032ボタン電池を制作し、電気化学的性能試験を行い、試験電圧範囲は2.8~4.3Vであり、最初の1周期は0.1C/0.1Cで充放電し、その後1C/1Cでサイクル試験を50周期実施する。最終試験結果:0.1C放電容量は207mAh/g、1C放電容量は193mAh/gであり、50周期のサイクル容量維持率は97.4%である。
【0042】
<実施例5>
(1)ニッケルコバルトマンガン水酸化物の三元系正極材料前駆体であるNi0.83Co0.12Mn0.05(OH) 500g、水酸化リチウム(LiOH・HO) 240g、及び二酸化ジルコニウムナノ粒子(ZrO) 1.5gを秤量し、高速ミキサーに移し、回転数1000rpmで1時間混合した後取り出し、その後、マッフル炉に移して焼成し、酸素雰囲気中、750℃で12時間焼結し、焼結終了時に材料を取り出した後、粉砕、篩分けして三元系正極材料基体を取得した。
【0043】
(2)三元系正極材料基体400gを秤量し、3000mlのエタノール溶媒に移し、溶液Iを形成する。チタンイソプロポキシド被覆剤10gを秤量し、1000mlのエタノール溶媒に移し、溶液IIを形成する。各溶液をそれぞれ10分間撹拌した後、溶液Iに溶液IIをゆっくりと加え、撹拌を続け、水浴を60℃に加熱し、温度を2時間一定に保持し、混合溶液をプレス濾過し、固液分離により濾過ケーキを得る。その後、100℃のオーブンの内部に移して乾燥させ、温度を10時間一定に保持して乾燥した中間生成物を得た。
【0044】
(3)中間生成物300g、メラミン60gを秤量し、混合した後、高速ミキサーに移して高速撹拌し、2000rpmの回転数で2時間撹拌した後、アルゴンガス雰囲気のマッフル炉に移し、アルゴンガス雰囲気中、800℃で6時間焼結し、焼結完了後、得られた材料を粉砕、篩分け、及び鉄除去して、最終的に窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料となる。
【0045】
ボタン電池試験:得られた窒化物/黒鉛化カーボンナノシートで被覆された三元系正極材料(LiNi0.83Co0.12Mn0.05)、アセチレンブラック、PVDFを94:4:4の割合で混合し、NMPを溶媒として均一に混合した後、アルミホイルに塗布し、2032ボタン電池を制作し、電気化学的性能試験を行い、試験電圧範囲は2.8~4.3Vであり、最初の1周期は0.1C/0.1Cで充放電し、その後1C/1Cでサイクル試験を50周期実施する。最終試験結果:0.1C放電容量は198mAh/g、1C放電容量は176mAh/gであり、50周期のサイクル容量維持率は97.5%である。
【0046】
<比較例1>
(1)ニッケルコバルトマンガン水酸化物の三元系正極材料前駆体であるNi0.83Co0.12Mn0.05(OH) 500g、水酸化リチウム(LiOH・HO) 240g、及び二酸化ジルコニウムナノ粒子(ZrO) 1.5gを秤量し、高速ミキサーに移し、回転数1000rpmで1時間混合した後取り出し、その後、マッフル炉に移して焼成し、酸素雰囲気中、750℃で12時間焼結し、焼結終了時に材料を取り出した後、粉砕、篩分けして三元系正極材料基体を取得した。
【0047】
(2)三元系正極材料基体400gを秤量し、3000mlのエタノール溶媒に移し、溶液Iを形成する。チタンイソプロポキシド被覆剤2gを秤量し、1000mlのエタノール溶媒に移し、溶液IIを形成する。各溶液をそれぞれ10分間撹拌した後、溶液Iに溶液IIをゆっくりと加え、撹拌を続け、水浴を60℃に加熱し、温度を1時間一定に保持し、混合溶液をプレス濾過し、固液分離により濾過ケーキを得る。その後、100℃のオーブンの内部に移して乾燥させ、温度を10時間一定に保持して乾燥した中間生成物を得た。
【0048】
(3)中間生成物300g、メラミン30gを秤量し、混合した後、高速ミキサーに移して高速撹拌し、2000rpmの回転数で2時間撹拌した後、酸素雰囲気のマッフル炉に移し、酸素雰囲気中、800℃で6時間焼結し、焼結完了後、得られた材料を粉砕、篩分け、及び鉄除去して、最終的に窒化物で被覆された三元系正極材料となる。
【0049】
ボタン電池試験:得られた窒化物で被覆された三元系正極材料(LiNi0.83Co0.12Mn0.05)、アセチレンブラック、PVDFを94:4:4の割合で混合し、NMPを溶媒として均一に混合した後、アルミホイルに塗布し、2032ボタン電池を制作し、電気化学的性能試験を行い、試験電圧範囲は2.8~4.3Vであり、最初の1周期は0.1C/0.1Cで充放電し、その後1C/1Cでサイクル試験を50周期実施する。最終試験結果:0.1C放電容量は206mAh/g、1C放電容量は190mAh/gであり、50周期のサイクル容量維持率は97.0%である。
【0050】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0051】
(1)製造方法のプロセスフローが単純であり、純粋な固相反応プロセスであり、条件の制御が容易で、大規模な工業生産が容易である。
【0052】
(2)被覆プロセス全体が湿式プレ被覆ステップとその後の高温窒化ステップに分けられ、1回被覆プロセスと比較して、プレ被覆プロセスは、その後の窒化のための前駆体を提供するだけでなく、その後の炭素、窒素を含む還元ガスによる損傷から三元系正極基体材料を保護することもできる。
【0053】
(3)黒鉛化ナノシートは、遷移金属の触媒作用により直接原位置生成され、物理的混合法と比較して、材料間の接触がより密接し、導電性炭素層ネットワークがより均一に分布するため、複合材料の導電性が大幅に向上し、三元系正極材料のレート特性を最大化する。
【0054】
(4)窒化物の生成に伴い、黒鉛化炭素被覆層が形成され、イオン伝導性と電子伝導性の両方を向上させる。
【0055】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者が本発明に開示された技術範囲内で、容易に想到できるすべての変更又は置換は、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。