(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム及びその取り付け方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20241114BHJP
B22D 41/00 20060101ALI20241114BHJP
C21C 7/072 20060101ALI20241114BHJP
F27D 3/16 20060101ALI20241114BHJP
F27D 27/00 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
B22D11/10 310A
B22D11/10 360Z
B22D41/00 D
C21C7/072 J
F27D3/16 Z
F27D27/00
(21)【出願番号】P 2023575681
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2022083821
(87)【国際公開番号】W WO2022267596
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】202110704169.5
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522434738
【氏名又は名称】莱蕪鋼鉄集団銀山型鋼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】武 光君
(72)【発明者】
【氏名】張 佩
(72)【発明者】
【氏名】武 文健
(72)【発明者】
【氏名】趙 燕
(72)【発明者】
【氏名】王 金洪
(72)【発明者】
【氏名】杜 鵬
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05945063(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103862028(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106041044(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111774560(CN,A)
【文献】中国実用新案第201793623(CN,U)
【文献】中国実用新案第204052886(CN,U)
【文献】中国実用新案第212560340(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
41/00
41/42
41/58
C21C 7/072
F27D 3/16
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)が設けられている取鍋を含み、前記取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)内にはガス流入管(9)が設けられている取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステムであって、さらに、順次接続された回転接続管部材(6)、接続管(4)、高温逆止弁(3)、外部接続管(2)及び急速継手(1)を含み、前記接続管(4)から急速継手(1)までの間の接続方式はいずれも取外し可能な接続であり、
前記回転接続管部材(6)は、順次接続された第1回転接続雌型(16)、第1可動継手プラグロッド(17)、内側接続管(18)、第2可動継手プラグロッド(19)及び第2回転接続雌型(20)を含み、ここで、第1回転接続雌型(16)はガス流入管(9)に接続され、第2回転接続雌型(20)は接続管(4)に接続され、前記第1回転接続雌型(16)とガス流入管(9)との間及び第2回転接続雌型(20)と接続管(4)との間は、いずれも取外し可能な接続である、
ことを特徴とする取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム。
【請求項2】
前記内側接続管(18)はL字状であり、前記第1可動継手プラグロッド(17)は水平方向であり、前記第2可動継手プラグロッド(19)は垂直方向であり、前記接続管(4)はL字状であり、前記高温逆止弁(3)、外部接続管(2)及び急速継手(1)は、いずれも取鍋の外部に設けられるとともに、水平方向に沿って配置され、前記取鍋には位置決め穴(7)が設けられ、前記接続管(4)は位置決め穴(7)を貫通して高温逆止弁(3)に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム。
【請求項3】
前記接続管(4)から急速継手(1)までの間の接続方式はいずれもねじ接続であり、前記第1回転接続雌型(16)とガス流入管(9)との間及び第2回転接続雌型(20)と接続管(4)との間は、いずれもねじ接続である、
ことを特徴とする請求項1に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム。
【請求項4】
前記接続管には、第1位置決め板(5)及び第2位置決め板(8)が固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム。
【請求項5】
前記第1位置決め板(5)及び第2位置決め板(8)は、いずれも接続管(4)と取鍋との間に固定され、前記第1位置決め板(5)と第2位置決め板(8)との間の距離は、接続管(4)の水平部分の長さの2/3~3/4に等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム。
【請求項6】
前記第2位置決め板(8)は、接続管(4)の屈曲箇所に固定され、前記第1位置決め板(5)は、第2位置決め板(8)と高温逆止弁(3)との間に位置する、
ことを特徴とする請求項5に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム。
【請求項7】
前記外部接続管(2)、接続管(4)、内側接続管(18)及び回転接続管部材(6)の材質は、いずれも耐熱ステンレス鋼であり、前記第1位置決め板(5)及び第2位置決め板(8)は、いずれも材質がQ235であり、厚さが20mm~30mmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム。
【請求項8】
請求項1~7に記載のアルゴン吹込みシステムの一次取鍋における取り付け方法であって、
ここで、一次取鍋とは、取鍋の底部作業ライニング(14)をいい、いずれも始めて使用されるスラグラインマグネシアカーボン煉瓦、壁キャスタブル、取鍋の底部キャスタブルを含み、
具体的な取り付けステップは、
必要な接続管の長さを測定してその両端にワイヤを絡み、接続管(4)の一端を高温逆止弁(3)、外部接続管(2)及び急速継手(1)に順次接続し、接続管(4)の他端を取鍋の内部に挿入して、取鍋の永久ライニング(13)及び取鍋の底部作業ライニング(14)を施工するS1と、
取鍋の永久ライニング(13)や取鍋の底部作業ライニング(14)の施工が完了した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)を吊設し、回転接続管部材(6)中の第1回転接続雌型(16)をガス流入管(9)に接続し、第2回転接続雌型(20)を接続管(4)の取鍋に挿入された一端に接続するS2と、
急速継手(1)をアルゴンガス源に連通させ、ガス漏れ検出を行い、連通後のアルゴン吹込みシステムにガス漏れがないことを確認した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)の通気面に防水ステッカー(15)を貼り付けることにより、キャスタブル中のスラリーが通気面を介して通気穴に滲入して、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)の通気性能に影響を与え、さらに、アルゴン吹込み冶金の効果に影響を与えることを防止するS3と、
取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット(12)を注入し、取鍋を養生して焼成すると、生産ラインで使用できるS4とを含む、
ことを特徴とするアルゴン吹込みシステムの一次取鍋における取り付け方法。
【請求項9】
請求項1~7に記載のアルゴン吹込みシステムの二次取鍋における取り付け方法であって、
ここで、二次取鍋とは、アルゴン吹込みシステムが取り付けられている一次取鍋を生産ラインで使用して45~50炉を生産した後、生産ラインからはずして小規模に修理したものをいい、小規模な修理内容には、スラグラインマグネシアカーボン煉瓦や通気アッパーノズルポケットブロック(10)の交換、取鍋の底部作業ライニングの補修(14)が含まれ、
具体的な取り付けステップは、
一次取鍋を生産ラインで使用して45~50炉を生産した後、生産ラインからはずして小規模に修理し、取鍋解体機を用いて使用後のスラグラインマグネシアカーボン煉瓦を取り外し、空気ピックを用いて取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット(12)部位のキャスタブルをクリーニングするS1と、
先に回転接続管部材(6)を取り外してから、使用後の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)を取り外すS2と、
取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)の取付ピット(12)内に新しい取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)を取り付け、回転接続管部材(6)中の第1回転接続雌型(16)をガス流入管(9)に接続し、第2回転接続雌型(20)を接続管(4)の取鍋に挿入された一端に接続するS3と、
急速継手(1)をアルゴンガス源に連通させ、ガス漏れ検出を行い、連通後のアルゴン吹込みシステムにガス漏れがないことを確認した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)の通気面に防水ステッカー(15)を貼り付けるS4と、
取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット(12)を注入し、取鍋の底部作業ライニング(14)を補修し、スラグラインマグネシアカーボン煉瓦を積み、取鍋を養生して焼成すると、生産ラインで使用できるS5と、含む、
ことを特徴とするアルゴン吹込みシステムの二次取鍋における取り付け方法。
【請求項10】
前記防水ステッカー(15)は円環状であり、且つ寸法が取鍋通気アッパーノズルポケットブロック(10)の通気面の寸法と同じであり、市販の円環状防水ステッカー(15)を使用するか、又は防水粘着ラベル紙を裁断してなる、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼冶金における製鋼プロセス技術分野に関し、具体的には、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム及びその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造用の取鍋で注入する過程において、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込み冶金技術は、アッパーノズルの周囲に環状のマイクロバブルエアカーテンバリアを形成し、これらのマイクロバブルで取鍋のアッパーノズルに流れる溶鋼をエアパージし、介在物の浮上と除去を促進するとともに、溶鋼の循環流動を促進して、連続鋳造用の取鍋の静置中に形成される温度勾配を解消し、連続鋳造用の取鍋内の溶鋼温度の分層、成分の不均一、及び合流渦によるスラグ降下等の業界共通の難題を克服し、溶鋼の清浄度及び均質化を向上させる。
【0003】
特許文献1には、ガス源を含む取鍋の浸透防止アルゴン吹込みシステムが開示され、前記ガス源は、ガスバッファタンク及び一方向吸気弁を順次通過して取鍋通気煉瓦のアルゴンガス入口に連通し、ガスバッファタンク及び一方向弁を設けることにより、ガス源を閉じてアルゴン吹込みを停止したとき、管路弁の後部分の管が正圧になって、一方向弁が閉じられるため、負圧による溶鋼の通気煉瓦のスリットへの入り込みを回避し、通気煉瓦が浸透液により侵食されないようにして、取鍋に鋼漏れ事故が発生することを回避する。しかし、この装置のアルゴン吹込み管路の接続施工が難しく、取鍋の通気煉瓦に鋼が浸透した後、通気煉瓦の通気作業面が詰まられるため、通気煉瓦の回復率が低く、且つ、従来技術では、溶接施工による分解と装着が困難であるため、管路の各接続箇所も、同様に、溶接施工によりガス漏れの問題が発生しやすく、それにより、アルゴン吹込み効果が理想的でなく、取鍋のエアパージ条件を満たすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許文献CN201678699 U(出願番号201020145666.3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術の不足を克服するために、新型アルゴン吹込み管路を設けるとともに、管路に高性能の逆止弁を設けることにより、アルゴン吹込み管路の取り付けプロセスを簡素化し、管路のガス漏れ及び「ガス逆流」という問題を解決し、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの回復率を顕著に向上させ、アルゴン吹込み管路の循環利用が実現された取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステム及びその取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を実現するために、下記の技術的解決手段を用いる。
内部に取鍋通気アッパーノズルポケットブロックが設けられている取鍋を含み、前記取鍋通気アッパーノズルポケットブロック内にはガス流入管が設けられている取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステムであって、アルゴン吹込みシステムは、さらに、順次接続された回転接続管部材、接続管、高温逆止弁、外部接続管及び急速継手を含み、接続管から急速継手までの間の接続方式は、取外し可能な接続であり、
前記回転接続管部材は、順次接続された第1回転接続雌型、第1可動継手プラグロッド、内側接続管、第2可動継手プラグロッド及び第2回転接続雌型を含み、ここで、第1回転接続雌型はガス流入管に接続され、第2回転接続雌型は接続管に接続され、第1回転接続雌型と取鍋通気アッパーノズルポケットブロック付属ガス流入管との間及び第2回転接続雌型と接続管との間は、同じく取外し可能な接続である。
【0007】
高温逆止弁の設置により、アルゴンガスの導入を停止した場合、アルゴン吹込みシステムがガス流入管路における「ガス逆流」のせいで通気アッパーノズルポケットブロックに鋼が浸透することにより回復できなくなることがないことを保証し、アルゴン吹込みシステムの管路の複数の箇所で取外し可能な接続を使用して接続プロセスを簡素化し、システム全体の取り付けや取外し時間を大幅に短縮し、そして、取外し可能な接続により、管路の各箇所のシール性能も保証される。
【0008】
前記内側接続管はL字状であり、前記第1可動継手プラグロッドは水平方向であり、前記第2可動継手プラグロッドは垂直方向であり、回転接続管部材全体はL字状であり、気流の縦方向から横方向への変換が実現され、アルゴン吹込み管路と従来の常用ノズルポケットブロックとの適合を満たし、アルゴン吹込みシステムの適用範囲を効果的に広げる。
【0009】
前記接続管はL字状であり、前記高温逆止弁、外部接続管、急速継手は、いずれも取鍋の外部に設けられるとともに、水平方向に沿って配置され、前記取鍋には位置決め穴が設けられ、前記接続管は位置決め穴を貫通して高温逆止弁に接続される。スライディングノズル機構がアルゴン吹込みシステムのガス流入端に平行に配置されることを保証し、アルゴンガス吹き込み時に管路と外部のガス源との接続を容易にする。
【0010】
前記接続管と急速継手との接続方式はねじ接続であり、前記第1回転接続雌型とガス流入管との間及び第2回転接続雌型と接続管との間は、いずれもねじ接続である。アルゴン吹込みシステムの各重要な部位は、いずれにもねじ接続が使用され、シール効果を保証するだけでなく、使用中のシステム内の各コンポーネントのメンテナンスも容易にする。
【0011】
前記接続管には第1位置決め板及び第2位置決め板が固定されており、第1位置決め板及び第2位置決め板は、いずれも接続管と取鍋との間に固定され、第1位置決め板と第2位置決め板との間の距離は、接続管の水平部分の長さの2/3~3/4に等しい。さらに、第2位置決め板は、接続管の屈曲箇所に固定され、第1位置決め板は第2位置決め板と高温逆止弁との間に位置する。2つの位置決め板を利用してアルゴン吹込みシステム中の管路及び取鍋を効果的に位置制限して、使用中に管路と取鍋との間に相対的な変位が発生してアルゴン吹込みの冶金効果に影響することを防止する。
【0012】
前記第1位置決め板及び第2位置決め板は、いずれも材質がQ235で、厚さが20mm~30mmであり、管路に対する補強効果を効果的に確保する。
【0013】
前記高温逆止弁は、耐高温(即ち≧650℃)、ハードシール構造、小さい開弁圧(即ち≦0.1bar)、低い漏れ率等の優れた性能を有し、スイスFC-Technik社の型番規格がPN25FBSP3/4インチである高温逆止弁を使用し、前記外部接続管、接続管、内側接続管及び回転接続管部材の材質は、いずれも耐熱ステンレス鋼であり、耐熱ステンレス鋼の使用により、アルゴン吹込みシステム内の各コンポーネントの耐用年数を保証し、システムを繰り返して循環使用することを可能にした。
【0014】
本発明は、さらに、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステムの一次取鍋における取り付け方法を提供し、
ここで、一次取鍋とは、取鍋の底部作業ライニングをいい、それぞれ交換した後又は嵌めて注入した後に初めて使用されるスラグラインマグネシアカーボン煉瓦、壁キャスタブル、取鍋の底部キャスタブルを含み、
具体的な取り付けステップは、
必要な接続管の長さを測定してその両端にワイヤを絡み、接続管の一端を高温逆止弁、外部接続管及び急速継手に順次接続し、接続管の他端を取鍋の内部に挿入して、取鍋の永久ライニング及び取鍋の底部作業ライニングを施工するS1と、
取鍋の永久ライニングや取鍋の底部作業ライニングの施工が完了した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックを吊設し、回転接続管部材中の第1回転接続雌型をガス流入管に接続し、第2回転接続雌型を接続管の取鍋に挿入された一端に接続するS2と、
急速継手をアルゴンガス源に連通させ、ガス漏れ検出を行い、連通後のアルゴン吹込み管路にガス漏れがないことを確認した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの通気面に防水ステッカーを貼り付けることにより、キャスタブル中のスラリーが通気面を介して通気穴に滲入して、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの通気性能に影響を与え、さらに、アルゴン吹込み冶金の効果にも影響を与えることを防止するS3と、
取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピットを注入し、取鍋を養生して焼成すると、生産ラインで使用できるS4とを含む。
【0015】
本発明は、さらに、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステムの二次取鍋における取り付け方法を提供し、
二次取鍋とは、アルゴン吹込み管路が取り付けられている一次取鍋を生産ラインで使用して45~50炉を生産した後、生産ラインからはずして小規模に修理したものをいい、小規模な修理内容には、スラグラインマグネシアカーボン煉瓦や通気アッパーノズルポケットブロックの交換、取鍋の底部作業ライニングの補修が含まれ、
具体的な取り付けステップは、
一次取鍋を生産ラインで使用して45~50炉を生産した後、生産ラインからはずして小規模に修理し、取鍋解体機を用いて使用後のスラグラインマグネシアカーボン煉瓦を取り外し、空気ピックを用いて取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット部位のキャスタブルをクリーニングするS1と、
先に回転接続管部材を取り外してから、使用後の取鍋通気アッパーノズルポケットブロックを取り外すS2と、
取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット内に新しい取鍋通気アッパーノズルポケットブロックを取り付け、回転接続管部材中の第1回転接続雌型をガス流入管に接続し、第2回転接続雌型を接続管の取鍋に挿入された一端に接続するS3と、
急速継手をアルゴンガス源に連通させ、ガス漏れ検出を行い、連通後のアルゴン吹込みシステムにガス漏れがないことを確認した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの通気面に防水ステッカーを貼り付けるS4と、
取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピットを注入し、取鍋の底部作業ライニングを補修し、スラグラインマグネシアカーボン煉瓦を積み、取鍋を養生して焼成すると、生産ラインで使用できるS5とを含む。
【0016】
前記防水ステッカーは、円環状であり、且つ寸法が取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの通気面の寸法と同じであり、市販の円環状防水ステッカーを使用するか、又は防水粘着ラベル紙を裁断してなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果は下記のとおりである。
【0018】
1)本発明にて提供されるアルゴン吹込みシステムでは、回転接続管部材を使用し、その両端の接続はいずれも取外し可能な接続であり、接続方法が簡単で、分解と装着が容易であり、接続・シール性能がよく、アルゴン吹込み管路全体の取り付け時間を短縮し、高温逆止弁の使用により、従来のアルゴン吹込み管路に一般的に使用される逆止弁や一方向弁等の、高温に弱い(使用温度<400℃)ことによるシール作用の失効問題が解決され、高温作業条件(400℃~600℃)下で、アルゴン吹込み管路のアルゴンガス源を遮断した後、「ガス逆流」により取鍋通気アッパーノズルポケットブロックに鋼浸透が発生するという業界共通の難題を解決し、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの100%回復率が実現され、これにより、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの酸素燃焼での洗浄時間を短縮し、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの平均使用年数を向上させた。
【0019】
2)本発明にて提供される管路の取鍋の外部に位置する部分、即ち接続管の屈曲箇所から急速継手までの部分をスライディングノズル機構に平行に配置し、急速継手の接続や分離操作と、スライディングノズル機構のシリンダの掛けや摘み操作との同期実施を実現するのに役立ち、操作ステップを簡素化し、操作者の操作難度を低下させる。
【0020】
3)本発明に使用される各管路の材質は、いずれも耐熱ステンレス鋼であり、変形しにくく、管路全体の繰り返し循環利用が実現され、材料費及び使用・メンテナンスコストを低減し、使用効果を保証するとともに、企業の使用コストを低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例における、アルゴン吹込み管路の取り付け及び取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取り付けと接続の概略図である。
【
図2】本発明の実施例における、回転接続管部材の概略構造図である。
【
図3】本発明の実施例における、回転接続雌型の概略構造図であり、ここで、(a)は正面図であり、(b)は図(a)のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明についてさらに説明する。
【0023】
本明細書の添付の図面に示された構造、比例、大きさなどは、いずれも本明細書に開示の内容に合わせて、この技術に詳しい者の理解と閲覧のために用いられるものであり、本発明の実施を限定する限定条件ではなく、そのため、技術上の実質的な意味を持たず、いずれの構造の修飾、比率関係の変更又は大きさの調整は、本発明によって発生できる効果及び達成できる目的に影響を与えることなく、いずれも本発明に掲示される技術内容の範囲内に入るべきである。また、本明細書で引用される「上」、「下」、「左」、「右」、「中間」及び「一」などの用語は、単に説明の便宜上のものであり、本発明の実施可能な範囲を限定するためのものではなく、その相対的関係の変更や調整も、実質的な技術的内容の変更がない限り、本発明の実施可能な範囲とみなされるべきである。
【0024】
(実施例1)
図1に示すように、内部に取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10が設けられている取鍋を含み、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10にはガス流入管9が設けられている取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステムであって、さらに、順次接続された回転接続管部材6、接続管4、高温逆止弁3、外部接続管2及び急速継手1を含み、急速継手1は外部のアルゴンガス源に接続され、高温逆止弁3は、耐高温(即ち≧650℃)、ハードシール構造、小さい開弁圧(即ち≦0.1bar)、低い漏れ率等の優れた性能を有し、スイスFC-Technik社の型番規格がPN25FBSP3/4インチである高温逆止弁を使用し、高温逆止弁3は、アルゴン吹込み管路内でのガスの一方向の流れを保証するために用いられ、アルゴンガス源を遮断した後、ガス流入管路内での「ガス逆流」による溶鋼のノズルポケットブロック内への滲入を防止する。
【0025】
図2に示すように、回転接続管部材6は、順次接続された第1回転接続雌型16、第1可動継手プラグロッド17、内側接続管18、第2可動継手プラグロッド19及び第2回転接続雌型20を含み、ここで、第1回転接続雌型16はガス流入管9に接続され、第2回転接続雌型20は接続管に接続される。
【0026】
内側接続管18はL字状であり、第1可動継手プラグロッド17は水平方向であり、第2可動継手プラグロッド19は垂直方向であり、接続管4はL字状であり、高温逆止弁3、外部接続管2及び急速継手1は、いずれも取鍋の外部に設けられるとともに、水平方向に沿って配置され、取鍋には位置決め穴7が設けられ、位置決め穴7は、取鍋の底部のシェル11に設けられるとともに、取鍋の底部のシェル11を縦方向に貫通し、接続管4は、位置決め穴7を貫通すして高温逆止弁3に接続される。接続管から急速継手1までの間の接続は、いずれも取外し可能な接続であり、第1回転接続雌型16と取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10付属ガス流入管9との間及び第2回転接続雌型20と接続管4との間も、同じく取外し可能な接続である。取外し可能な接続は、ねじ接続であることが好ましい。アルゴン吹込み管路中の各重要な部位は、いずれにもねじ接続が使用され、シール効果を保証するだけでなく、使用中の管路内の各コンポーネントのメンテナンスも容易にする。
【0027】
第1回転接続雌型16及び第1可動継手プラグロッド17は、それぞれ第2回転接続雌型20及び第2可動継手プラグロッド19と完全に同じである。可動継手プラグロッド全体は、T字状であり、ロッドヘッド及びロッド本体を含み、且つ内部にはガスを流通させるための貫通孔が開けられており、
図3に示すように、回転接続雌型全体は、正六角柱状であり、その一端には可動継手プラグロッドが貫通するための開口部が開けられ、可動継手プラグロッドのロッド本体は回転接続雌型の開口部を通過し、ロッドヘッドは、回転接続雌型の内腔の寸法と一致し、且つ開口部の内側に係止される。可動継手プラグロッドのロッド本体の延長部分は内側接続管18内に挿入され、ロッド本体の外径は内側接続管18の内径と一致し、ロッド本体と内側接続管18との接続箇所を溶接してシール補強を行い、回転接続雌型が取鍋通気アッパーノズルポケットブロック付属ガス流入管9又は接続管4とねじ接続する際に、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック付属ガス流入管又は接続管4が内向きに締められるとともに、可動継手プラグロッドのロッドヘッドを回転接続雌型の開口部箇所に押し締め、可動継手プラグロッドと回転接続雌型との間の良好なシール性を保証する。
【0028】
外部接続管2、接続管4、内側接続管18及び回転接続管部材6の材質は、耐熱ステンレス鋼であり、ここで、外部接続管及び接続管は、外径が21.34mmで、肉厚が2mmであり、内側接続管は、外径が26.67mmで、肉厚が2mmであり、回転接続雌型の雌ネジの規格番号はM30*2であり、回転接続雌型に適合するように、可動継手プラグロッドの寸法を選択する。
【0029】
接続管には、第1位置決め板5及び第2位置決め板8が固定され、第1位置決め板5及び第2位置決め板8は、いずれも接続管4と取鍋との間に固定され、且つ第1位置決め板5と第2位置決め板8との間の距離は、接続管4の水平部分の長さの2/3~3/4に等しい。好ましくは、第2位置決め板8は接続管4の屈曲箇所に固定され、第1位置決め板5は第2位置決め板8と高温逆止弁3との間に位置する。2つの位置決め板を利用して管路全体と所在の取鍋を効果的に位置制限して、使用中にアルゴン吹込み管路と取鍋の底部のシェル11との間に相対的な変位が発生することを防止する。第1位置決め板5及び第2位置決め板8は、いずれも材質がQ235で、厚さが25mmであり、管路に対する補強効果を効果的に確保する。
【0030】
(実施例2)
実施例1に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステムの取り付け方法であって、具体的な取り付け方法は、
現場で必要な接続管4の長さを測定してその両端にワイヤを絡み、接続管4をL字状に曲げ、接続管4の水平方向の一端は高温逆止弁3、外部接続管2及び急速継手1に順次接続され、接続管4の縦方向部分を取鍋の底端である取鍋の底部のシェル11に開けられた位置決め穴7を介して取鍋内部に挿入し、接続管4と取鍋との間に第1位置決め板5及び第2位置決め板8を溶接固定し、接続管4と取鍋との位置を相対的に固定し、取鍋の永久ライニング13及び取鍋の底部作業ライニング14を施工するS1と、
取鍋の永久ライニング13、取鍋の底部作業ライニング14の施工が完了した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10を吊設し、回転接続管部材6中の第1回転接続雌型16をガス流入管9に接続し、第2回転接続雌型20を接続管4の縦方向ポートに接続するS2と、
急速継手1をアルゴンガス源に連通させ、従来の方法にしたがってガス漏れ検出を行い、連通後のアルゴン吹込み管路にガス漏れがないことを確認した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10の通気面に防水ステッカー15を貼り付けることにより、キャスタブル中のスラリーが通気面を介して通気穴に滲入して、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10の通気性能に影響を与え、さらに、アルゴン吹込み冶金の効果に影響を与えることを防止するS3と、
従来技術を用いて取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット12を注入し、従来技術にしたがって取鍋を養生して焼成した後、生産ラインで使用できるS4と、を含む。
【0031】
ここで、ステップS3で使用される防水ステッカー15は円環状であり、且つその寸法は取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10の通気面の寸法と同じであり、市販の円環状防水ステッカーを使用するか、又は防水粘着ラベル紙を裁断してなる。
【0032】
(実施例3)
実施例1に記載の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック用のアルゴン吹込みシステムの取り付け方法であって、本実施例は、実施例2の取り付け済みの取鍋(即ち、一次取鍋)が一定期間動作して二次取鍋になった時の、アルゴン吹込みシステムの着脱方法であり、具体的には、
一次取鍋を生産ラインで使用して45~50炉を生産した後、生産ラインからはずして小規模に修理し、取鍋解体機を用いて使用後のスラグラインマグネシアカーボン煉瓦を取り外し、空気ピックを用いて取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット12部位のキャスタブルをクリーニングするS1と、
先に回転接続管部材6を取り外してから、使用後の取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10を取り外すS2と、
取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット12内に新しい取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10を取り付け、回転接続管部材6内の第1回転接続雌型16を取鍋通気アッパーノズルポケットブロック付属ガス流入管9に接続し、第2回転接続雌型20を接続管4の縦方向ポートに接続するS3と、
急速継手1をアルゴンガス源に連通させ、従来の方法にしたがってガス漏れ検出を行い、連通後のアルゴン吹込み管路にガス漏れがないことを確認した後、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10の通気面に、実施例2で使用される防水ステッカー15と同じの防水ステッカー15を貼り付けるS4と、
従来技術を用いて取鍋の底部作業ライニング14を補修し、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの取付ピット12を注入し、スラグラインマグネシアカーボン煉瓦を積み、従来技術にしたがって取鍋を養生して焼成すると、生産ラインで使用できるS5と、を含む。
【0033】
(比較例1)
中国特許文献CN109732074Aには、取鍋のエアリー円盤通気アッパーノズルポケットブロック及びそのアルゴン吹込み冶金方法が開示され、ここで、アルゴン吹込み管路の構造及び接続方式が示された。
【0034】
(比較例2)
中国特許文献CN111774559Aには、取鍋底吹き通気煉瓦の吹きスルー率を向上させる装置及び適用方法が開示され、ここで、同様に、アルゴン吹込み管路の構造及び接続方式が示された。
【0035】
(実験例)
実施例1~3と比較例1、2に記載のアルゴン吹込み管路を莱蕪鉄鋼集団銀山型鋼有限公司の製鋼所の2#130tLF仕上げ取鍋通気アッパーノズルポケットブロックにそれぞれ適用し、その他の条件が同じである(取鍋通気アッパーノズル、アルゴン吹込み流量、アルゴン吹込み時間、取鍋の底部作業ライニング及び建築プロセス等)ように制御し、適用状況の比較は表1に示される。
【0036】
【0037】
比較表1のデータから分かるように、本発明にて提供されるアルゴン吹込み管路は、接続方法が簡単で、分解と取付が容易であり(取り付けに使用される時間が短い)、比較例1(CN109732074A)及び比較例2(CN111774559A)に示された溶接施工によるアルゴン吹込み管路の分解と装着が困難であるという適用技術難題を解決し、アルゴン吹込み管路の取り付け時間を大きく短縮し、アルゴン吹込み管路の循環利用を実現して、ガス流入管路内での「ガス逆流」による取鍋通気アッパーノズルポケットブロックへの鋼の浸透により完全に回復することができないという難題を解決し、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10の100%回復率を実現して、取鍋通気アッパーノズルポケットブロックの酸素燃焼での洗浄時間を短縮し、取鍋通気アッパーノズルポケットブロック10の平均使用年数を向上させた。
【0038】
以上は、図面を参照しながらの本発明の具体的な実施形態に対する説明であるが、本発明の保護範囲を限定するものではなく、当業者でれば、本発明の技術的解決手段を基に、創造的な労働なしに行える様々な修正や変形は依然として本発明の保護範囲内に入るべきであることを理解できるはずである。
【符号の説明】
【0039】
1…急速継手、
2…外部接続管、
3…高温逆止弁、
4…接続管、
5…第1位置決め板、
6…回転接続管部材、
7…位置決め穴、
8…第2位置決め板、
9…ガス流入管、
10…通気アッパーノズルポケットブロック、
11…取鍋の底部のシェル、
12…取付ピット、
13…取鍋の永久ライニング、
14…取鍋の底部作業ライニング、
15…防水ステッカー、
16…第1回転接続雌型、
17…第1可動継手プラグロッド、
18…内側接続管、
19…第2可動継手プラグロッド、
20…第2回転接続雌型。