(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】施工パターン検証装置及び施工パターン検証方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20241114BHJP
E02D 3/08 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E02D3/10 104
E02D3/08
(21)【出願番号】P 2024051983
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 健一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竹史
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-143708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00-3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置に用いられる施工パターンを検証する施工パターン検証装置であって、
前記締固め杭造成装置で施工された施工情報を取得する施工情報取得部と、
前記施工情報
と、あらかじめ定められた閾値と、に基づいて、
前記柱状物を形成する材料の排出状況を過排出、正常、及び不足に区分した評価区分を生成し、前記締固め杭造成装置の操作の前後における前記評価区分の出現確率を含む前記施工パターンを生成するパターン情報生成部と、
前記施工パターンに対して、
前記締固め杭造成装置の操作を連続して行った場合の、前記評価区分の前記出現確率のシミュレーションを実行するシミュレーション実行部と、
前記シミュレーションの結果を表示する計算結果表示部と、
を備える、施工パターン検証装置。
【請求項2】
前記シミュレーション実行部は、マルコフ連鎖モンテカルロ法により、前記出現確率の前記シミュレーションを実行する、請求項1に記載の施工パターン検証装置。
【請求項3】
コンピュータによって実行され、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置に用いられる施工パターンを検証する検証方法であって、
前記締固め杭造成装置で施工された施工情報を取得し、
前記施工情報
と、あらかじめ定められた閾値と、に基づいて、
前記柱状物を形成する材料の排出状況を過排出、正常、及び不足に区分した評価区分を生成し、前記締固め杭造成装置の操作の前後における前記評価区分の出現確率を含む前記施工パターンを生成し、
前記施工パターンに対して、
前記締固め杭造成装置の操作を連続して行った場合の、前記評価区分の前記出現確率のシミュレーションを実行し、
前記シミュレーションの結果を表示する検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工パターン検証装置及び施工パターン検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に砂杭を造成することにより周辺地盤を締め固める工法において、砂や砕石などの粒状体材料を投入したケーシングを所定深度まで貫入させ、ケーシング内の材料を適切に地中に排出するための技術が提案されている。特許文献1には、打戻し方式圧縮砂杭打設工法における砂の排出方法が開示されている。特許文献1に開示された砂の排出方法は、ケーシング内の砂にエアー圧を加えることによる砂の排出に加え、ケーシング先端部の側方からエアージェットを噴出させることにより、効率よく砂を排出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法において、ケーシングから排出させる砂の量は、使用する材料砂や地盤状況に応じて、適切な量に調整する必要がある。一方で、従来は、熟練したオペレータが、上昇させるケーシングの圧力やエアージェットの操作を行い、排出させる砂の量に関する施工パターンを調整していた。そのため、熟練したオペレータの技能に頼ることなく当該工法を実施するには、工法における適切な施工パターンを生成し、当該検証パターンで適切な施工が行えるか検証するための装置が必要とされている。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法における適切な施工パターンを生成し、検証することが可能な施工パターン検証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る施工パターン検証装置は、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置に用いられる施工パターンを検証する施工パターン検証装置であって、締固め杭造成装置で施工された施工情報を取得する施工情報取得部と、施工情報に基づいて、施工パターンを生成するパターン情報生成部と、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行するシミュレーション実行部と、シミュレーションの結果を表示する計算結果表示部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係る施工パターン検証方法は、コンピュータによって実行され、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置に用いられる施工パターンを検証する検証方法であって、締固め杭造成装置で施工された施工情報を取得し、施工情報に基づいて、施工パターンを生成し、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行し、シミュレーションの結果を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法における適切な施工パターンを生成し、検証することが可能な施工パターン検証装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る施工パターン検証装置における検証の対象となる砂杭打設による締固め工法について説明するための図である。
【
図2】砂杭打設による締固め工法について説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係る施工パターン検証装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る施工パターン検証装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る施工パターン検証装置に適用される施工情報について説明するための図である。
【
図6A】本実施形態に係る施工パターン検証装置に適用される施工パターンの一例について説明するための図である。
【
図6B】本実施形態に係る施工パターン検証装置に適用される施工パターンの一例について説明するための図である。
【
図7A】本実施形態に係る施工パターン検証装置に適用される操作の出現確率の一例について説明するための図である。
【
図7B】本実施形態に係る施工パターン検証装置に適用される操作の出現確率の一例について説明するための図である。
【
図7C】本実施形態に係る施工パターン検証装置に適用される操作の出現確率の一例について説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係る施工パターン検証装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係る施工パターン検証装置100について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
(砂杭打設による締固め工法)
図1は、本実施形態に係る施工パターン検証装置100の検証対象となる工法について説明するための図である。本実施形態において施工パターン検証装置100が適用される工法は、締固め杭造成装置20により、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める工法である。
【0012】
地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める工法は、例えば、ケーシングにより地中に排出した粒状体材料を打ち戻すことにより、抗体を拡径し、周辺地盤を締め固めるサンドコンパクションパイル工法やサンドドレーン工法、静的締固め工法に相当する。また、工法は、粒状体材料に流動化剤やセメントを混合した材料を地中に圧入する圧入式静的締固め工法や、コンパクショングラウチング工法であってもよい。
【0013】
本実施形態に係る締固め杭造成装置20は、ホッパー30と、昇降装置31と、回転駆動装置32と、ケーシングパイプ33と、を含んで構成される。ホッパー30は、ケーシングパイプ33の上端側に設けられ、ケーシングパイプ33内に粒状体を投入するための部位である。本実施形態において粒状体は、例えば、砂である。
【0014】
昇降装置31は、昇降用モーターと、昇降用モーターの回転力をケーシングパイプ33に伝達する動力伝達手段を有し、ケーシングパイプ33を地盤中に昇降させる。また、昇降装置31には、ケーシングパイプ33の昇降動作時の油圧を検出する油圧センサ(図示なし)が設けられている。また、昇降装置31には、ケーシングパイプ33の下端の深度を検知する深度計(図示なし)が設けられている。
【0015】
回転駆動装置32は、回転用モーターを備え、ケーシングパイプ33を任意方向に回転させるための機構である。また、回転駆動装置32には、回転用モーターの電流値を検出する電流センサ(図示なし)が設けられている。
【0016】
締固め杭造成装置20は、昇降装置31及び回転駆動装置32により、ケーシングパイプ33を地盤中の所定深度まで貫入させる。また、締固め杭造成装置20は、ケーシングパイプ33の下端から粒状体を排出し、ケーシングパイプ33の引き抜き工程及び再貫入を繰り返すことにより、排出した粒状体を締め固める。また、締固め杭造成装置20は、ケーシングパイプ33を地中に貫入させる際の貫入速度を計測する装置(速度計)を備えてもよい。
【0017】
図1に示す例においては、締固め杭造成装置20に設けられたケーシングパイプ33を回転駆動装置32によって、地中の所定深度まで貫入させた後、細かくウェービングすることによって、抗体を拡径し同時に杭間のN値を増加させる。なお、N値とは、土の締まり具合や強度を求める基準となる数値である。
【0018】
図2は、施工方法について説明するための図である。
図2における工程Aにおいて、ケーシングパイプ33を所定位置に据え、ホッパー30を介して一定量の砂を投入する。工程Bにおいて、回転駆動装置32によりケーシングパイプ33を回転させながら地中に貫入させる。工程Cにおいて、所定深度まで貫入させる。工程Dにおいて、ケーシングパイプ33を規定の高さに引き上げながら、ケーシングパイプ33内の砂を排出する。工程Eにおいて、ケーシングパイプ33を打戻し、排出した砂と周囲の地盤を締め固める。工程Fにおいて工程D及び工程Eを細かく繰り返して拡径するウェーブ施工により、造成する。
【0019】
すなわち、材料排出操作においては、圧縮空気を管内に導き管内圧力を上昇さる給気操作により材料をケーシングパイプ33から押し出している。また、管内の材料をほぐす目的でジェットが装備されている。これら給気操作やジェットの操作をどのタイミングでどの位の時間行うかにより、材料排出状況が異なってくる。
【0020】
また、1本の砂杭の造成において、深度が大きな箇所と小さな箇所で操作方法が異なる場合がある。深度が大きな領域では、ケーシングパイプ33の先端部の土圧・水圧が大きくそれに対抗して材料を排出するために、ケーシング内の管内圧力を高める必要がある。また、深度が小さな領域では、土圧・水圧は深度が大きな領域ほど、ケーシングパイプ33の先端部の土圧・水圧が大きくなく、ケーシング内の管内圧力を深度が大きな領域ほど高める必要が無い。そのため、ケーシングパイプ33に圧縮空気を注入する給気操作に係る時間は、深度が大きな領域ほど長く、深度が小さな領域ほど短くなるという傾向が見られる。さらに、ケーシングパイプ33の引き抜き時の操作と、ケーシングパイプ33の打ち戻し時の操作にも相違が見られる。
【0021】
本実施形態に係る施工パターン検証装置100は、上述の地盤を締め固める工法において、施工情報を取得し、施工パターンによって砂抜け度合(材料排出状況)の良否を検証するための装置である。次に、この施工パターン検証装置100の詳細について説明する。
【0022】
(施工パターン検証装置100の構成)
図3は、本実施形態に係る施工パターン検証装置100の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、施工パターン検証装置100は、制御部110(CPU)と、記憶部120(メモリ)と、入出力IF130(Interface)と、通信IF140と、を含む汎用のマイクロコンピュータを備えるシステムとして構成してもよい。この場合、マイクロコンピュータには、施工パターン検証装置100として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされていてもよい。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、施工パターン検証装置100が備える複数の情報処理回路として機能する。
【0023】
なお、本実施形態においては、ソフトウェアによって施工パターン検証装置100が備える複数の情報処理機能を実現する例を示す。施工パターン検証装置100は、コンピュータプログラムを実行することにより、施工パターン検証装置100が備える複数の情報処理回路として機能する。
【0024】
また、別の構成としては、施工パターン検証装置100は、各情報処理機能を実行するための専用のハードウェアを用意して、システムLSI(Large Scale Integration)等により当該情報処理機能を構成することも可能である。また、施工パターン検証装置100は、複数の情報処理機能を個別のハードウェアによりシステムを構成してもよい。
【0025】
制御部110は、記憶部120に格納されたプログラム(図示なし)に基づいて動作し、施工パターン検証装置100が備える各機能を実行する。なお、プログラムは、記憶部120に格納される形態に限定されず、例えば、施工パターン検証装置100内の、ROM等(図示なし)に記憶された構成としてもよい。
【0026】
記憶部120は、
図4に示すように、施工情報DB121(Data Base)、パターン情報DB122、及び計算結果情報DB123に格納される情報をデータとして記憶部120に記憶する。
【0027】
また、記憶部120は、上述の通り、制御部110において実行される各機能に対するプログラムを記憶してもよい。なお、記憶部120に格納される情報やプログラムは、一つのストレージデバイスの中に物理的又は論理的に分けて設けられた領域として構成されていてもよい。あるいは、物理的に異なる複数のストレージデバイスに各データの記憶部120を設ける構成としてもよい。
【0028】
入出力IF130は、施工パターン検証装置100と、外部とのデータの送受信を行うためのインタフェースである。また、入出力IF130は、ユーザ(施工管理者)との間においてやりとりさせる情報を送受信するためのインタフェースであってもよい。入出力IF130は、例えば、入力IFと、出力IFとを備える(図示なし)。
【0029】
また、入出力IF130における入力IFは、ユーザ(施工管理者)によるさまざまな情報を入力するためのインタフェース機能を有し、施工パターン検証装置100の外部より情報が入力されてもよい。入力IFには、施工パターン検証装置100と接続された、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール、及び、音声認識デバイス等を通じてユーザによって情報が入力される。また、入力IFは、外部記憶装置(図示なし)等からデータを入力するためのデータ入力端子として、情報を入力することができる。
【0030】
さらに、入出力IF130における出力IFは、施工パターン検証装置100に接続されたモニタ等の表示装置(図示なし)に、後述の施工情報やパターン情報、計算結果情報等を表示させることができる。表示装置は、例えば、ディスプレイ装置、プロジェクター装置などである。
【0031】
通信IF140は、例えば、施工パターン検証装置100と、外部の装置との相互の通信を可能にするためのインタフェースである。
【0032】
(施工パターン検証装置100の機能的構成)
図4は、本実施形態に係る施工パターン検証装置100の機能的構成を示すブロック図である。
図4に示すように、施工パターン検証装置100の制御部110は、施工情報取得部111と、パターン情報生成部112と、シミュレーション実行部113と、計算結果表示部114と、操作情報選択部115と、を機能として備える。
【0033】
施工情報取得部111は、締固め杭造成装置20で施工された施工情報を取得する。また、施工情報取得部111は、取得した施工情報を施工情報DB121に格納する。
図5は、本実施形態に係る施工パターン検証装置100に適用される施工情報について説明するための図である。
【0034】
上述の通り、砂杭打設による締固め工法においては、施工パターンを検証するにあたり、施工におけるパターンを深度、作業内容で区分し、それぞれの操作を指定する必要が有る。
【0035】
例えば15mの砂杭を造成することを考えると、15mから10mの深度が大きな領域での、ケーシングパイプ33の引き抜きと打ち戻しの各操作が考えられる。また、10mから5mの深度が中程度の領域でのケーシングパイプ33の引き抜きと打ち戻しの各操作、5mから地表面の深度が小さな領域でのケーシングパイプ33の引き抜きと打ち戻しの各操作といった区分が考えられる。また、必要に応じケーシングパイプ33の貫入時の操作や、材料補給中の操作といったものも追加される。
【0036】
例えば、15mの砂杭造成において、その最深区分である15mから10mの区部では、ケーシングパイプ33の引き抜きと打ち戻しの各操作を各々4分割する。また、引き抜き作業では最初の1区間及び2区間で給気操作をON、ジェット操作をOFF、排気操作をOFFとする。また、続く3区間及び4区間では全てをOFFとする。また、打ち戻し作業では1区間から3区間まで全てをOFFとし、最後の4区間でジェット操作のみONとする。これらの操作を纏めると
図5に示すような、作業内容、深度区分及び区間と、ジェット、給気、及び排気との関係が示される。
【0037】
図5に示す例においては、10m~15mの深度区分の例について示したが、他の深度区分においても、各操作の設定が行われる。
【0038】
また、施工情報取得部111は、データ項目として対象操作を行った前後の砂面計データを取得する。さらに、施工情報取得部111は、必要に応じケーシングパイプ33の先端深度などの情報も合わせて取得する。
【0039】
パターン情報生成部112は、施工情報に基づいて、施工パターン(パターン情報)を生成する。また、パターン情報生成部112は、生成したパターン情報をパターン情報DB122に格納する。
【0040】
具体的には、パターン情報生成部112は、あらかじめ定められた砂抜けの良否を判定する閾値に対し、閾値と砂面計データとを比較し、過排出、正常、及び不足に区分する。
【0041】
この判定は、引き抜きと打ち戻しの1組の操作に対し、砂面計の移動量の合計値に対して行われる。あるいは、引き抜きと打ち戻しの1組の操作に対しケーシングの引抜長と砂面計の移動量の比などにより評価しても良い。また抽出された組に対し、1つ前の組の評価区分も用いられる。これにより、指定された操作を行う前の砂抜け状況と操作を行った後の砂抜け状況の遷移状況を取得することができる。なお、1つ前の組は指定された施工パターンと一致とている必要はない。
【0042】
遷移状況として、不足から不足・正常・過排出への3パターン、正常から不足・正常・過排出への3パターン、及び過排出から不足・正常・過排出への3パターンの計9パターンがあり、パターン情報生成部112は、それぞれの出現確率を求める。
【0043】
例えば、操作前の評価区分が不足であるものが100組とすると、その内、操作後の評価区分が不足のままであるものが5組、正常へ遷移したものが91組、過排出へ遷移したものが4組とした場合、順に出現確率は5%、91%、4%となる。この出現確率は、操作前が不足である場合に操作を行うことにより、各評価区分へ移行する確率を表しており、各出現確率の合計値は100%となる。操作前の評価区分が正常・過排出についても同様に各出現確率を求める。
【0044】
図6Aは、あるパターンAの操作を行った場合の各遷移パターンの出現確率を示す。例えば、
図6Aに示す例においては、最深部で指定の操作を行った後の評価区分が不足であった場合、次の操作で91%の確率で正常となり、次の操作で95%の確率で正常となることを表している。また、
図6Bは、あるパターンBの操作を行った場合の各遷移パターンの出現確率を示す。例えば、
図6Bに示すパターンBは、
図6Aに示すパターンAに比べ、正常から正常への遷移確率が高いことが示されている。
【0045】
シミュレーション実行部113は、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行する。また、シミュレーション実行部113は、シミュレーション結果を計算結果情報DB123に格納する。具体的には、シミュレーション実行部113は、柱状物を形成する材料の抜け具合に対する状態として、不足、正常、及び過排出に関する出現確率のシミュレーションを実行し、計算結果情報DB123に格納する。
【0046】
また、シミュレーション実行部113は、一般的なマルコフ連鎖モンテカルロ法により、出現確率のシミュレーションを実行する。マルコフ連鎖モンテカルロ法は、乱数を繰り返し生成することによりパラメータを概算するモンテカルロ法に、現在の状態は直前の状態のみに依存するという確率モデルであるマルコフ連鎖を適用したものである。すなわち、マルコフ連鎖モンテカルロ法は、マルコフ連鎖に対応した乱数を多数発生させ確率を求めるシミュレーション方法である。
【0047】
ここで、シミュレーション実行部113で実行されるシミュレーションの詳細について説明する。
【0048】
例えば、砂杭造成の施工において、
図6A及び
図6Bに示すパターンAとパターンBのどちらを採用すべきか、という問題が生じる。どちらを採用すべきかに関する判断方法としては、各操作を連続して行った場合の、操作後の不足・正常・過排出の出現確率を求め、正常の出現確率が高い方を採用することが考えられる。このような問題の解決方法として、例えば、マルコフ連鎖モンテカルロ法が適用可能となる。
【0049】
具体的には、パターンAとパターンBの操作を各々1000回繰り返すとすると、最初が不足であった場合、次の操作により、不足・正常・過排出のいずれかに遷移するが、これを乱数発生によりシミュレーションを行う。
【0050】
例えば0、1、2の3種類の乱数を計算機上で発生するようにし、0は不足を、1は正常を、2は過排出を表し、1000回繰り返した後で、不足から各評価区分への遷移確率がパターンAでは、それぞれ5%、91%、4%となるようにする。
【0051】
シミュレーション実行部113は、正常・過排出から各評価区分へも表に示す遷移確率となるように乱数を発生させ、1000回繰り返した後で各評価区分の発生確率を求める。このようにすることでパターンAとパターンBをそれぞれ1000回繰り返した後の正常の発生確率を知ることができる。
【0052】
図7A及び
図7Bは、シミュレーション実行部113で計算された各操作の確率の結果を示す。シミュレーション実行部113での計算により、
図7A及び
図7Bに示す結果が得られ、
図7Bに示すパターンBの方が正常の出現確率が高いことがわかる。
【0053】
このように、シミュレーション実行部113において、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いることにより、施工パターンによる施工結果をあらかじめ予想することが可能なシミュレータを構成することができる。
【0054】
例えば、オペレータが手動で操作する場合は状況に応じ、オペレータの経験に照らし柔軟に最適な操作を行うことが可能であるが、自動運転を行う場合は予め施工パターンを施工機にインプットしておく必要が有り、事前の施工パターンの選択が重要となる。
【0055】
しかし、本実施形態に係る施工パターン検証装置100によって確率を算出することで、オペレータによる複雑な手段を用いなくとも、直接、各評価区分の確率を求めることが可能となる。
【0056】
また、パターンAとパターンBを選択的に利用した施工を行った場合の確率は、オペレータによる複雑な手段の場合、該当する施工データが無いと確率を直接求めることはできない。一方で、本実施形態に係る施工パターン検証装置100では、例えば、操作前の状況が不足の場合にパターンBの操作を採用し、その他はパターンAを採用するといった場合にも対応可能となる。
図7Cは、操作前の状況が不足の場合にパターンBの操作を採用し、その他はパターンAを採用した場合のシミュレーション実行部113による計算結果を示す。このように、本実施形態に係る施工パターン検証装置100は、複数のパターンで示される操作状況に応じて、遷移確率を算出することが可能となる。
【0057】
計算結果表示部114は、シミュレーション実行部113における計算結果を表示する。例えば、計算結果は、施工パターン検証装置100の入出力IF130を介して、モニタ等の表示装置(図示なし)に、表示させてもよい。
【0058】
操作情報選択部115は、計算結果表示部114で表示されたシミュレーションの結果に基づいて、操作情報の選択を行う。具体的には、例えば、ユーザが計算結果表示部114に表示された計算結果に基づき、入出力IF130を介して、砂杭造成において操作する操作情報を選択してもよい。あるいは、操作情報選択部115は、あらかじめ設けられた所定の閾値に基づいて、計算結果表示部114に表示された計算結果から適切な操作情報を自動で選択する構成としてもよい。
【0059】
これにより、施工パターン検証装置100は、地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法における適切な施工パターンを検証する。そして、ユーザは、この検証結果に基づいて、適切な施工を実施することが可能となる。
【0060】
(施工パターン検証装置100の処理フローの概略)
次に、
図8に示すフローチャートを用いて施工パターン検証装置100における処理の流れを示す。
図8のフローチャートに示す施工パターン検証装置100の一連の動作は、施工パターン検証装置100が起動されると開始され、作業終了により処理を終了する。また、
図8に示すフローチャートは、電源オフや処理終了の割り込みによっても処理は終了する。また、以下のフローチャートの説明において、上述の施工パターン検証装置100の説明で記載した内容と同じ内容については、省略又は簡略化して説明する。
【0061】
ステップS801において、施工情報取得部111は、締固め杭造成装置20で施工された施工情報を取得する。また、施工情報取得部111は、取得した施工情報を施工情報DB121に格納する。その後、処理はステップS802に進む。
【0062】
ステップS802において、パターン情報生成部112は、施工情報に基づいて、施工パターン(パターン情報)を生成する。また、パターン情報生成部112は、生成したパターン情報をパターン情報DB122に格納する。その後、処理はステップS803に進む。
【0063】
ステップS803において、シミュレーション実行部113は、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行する。また、シミュレーション実行部113は、シミュレーション結果を計算結果情報DB123に格納する。シミュレーション実行部113は、所定の回数、シミュレーションを実行する。シミュレーション実行部113で実行されるシミュレーションは、例えば、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたシミュレーションである。また、所定の回数は、例えば、1000回に相当する。その後、処理はステップS804に進む。
【0064】
ステップS804において、シミュレーション実行部113は、所定の回数シミュレーションが実行されたか否かを判定する。所定の回数は、例えば、1000回である。ステップS804において、シミュレーション実行部113は、所定の回数の実行が終了したと判定した場合(ステップS804:YES)には、処理はステップS805に進む。一方で、ステップS804において、シミュレーション実行部113は、所定の回数の実行が終了していないと判定した場合(ステップS804:NO)には、処理はステップS803に戻り、ステップS803からの処理を繰り返し実施する。
【0065】
ステップS805において、計算結果表示部114は、シミュレーション実行部113における計算結果を表示する。例えば、計算結果は、施工パターン検証装置100の入出力IF130を介して、モニタ等の表示装置(図示なし)に、表示させてもよい。その後、処理はステップS806に進む。
【0066】
ステップS806において、制御部110は、検証処理が終了したか否かを判定する。例えば、制御部110は、あらかじめ定められた検証スケジュールに基づいて、検証処理の完了を判定してもよい。あるいは、計算結果表示部114で表示された結果に基づき、ユーザが処理を終了するか否かを判断した場合に、入出力IF130を介して、ユーザが処理を継続するか否か関する情報を入力し、制御部110は、その情報に基づいて終了判定をしてもよい。なお、ステップS806における検証処理の判定処理はこれらの処理に限定されるものではなく、施工パターン検証装置100における処理の終了(電源オフの制御)等に基づいて、終了と判定してもよい。
【0067】
ステップS806において、制御部110は、検証処理が終了したと判定した場合(ステップS806:YES)には、処理は終了する。一方で、ステップS806において、制御部110は、検証処理が終了していないと判定した場合(ステップS806:NO)には、処理はステップS807に進む。
【0068】
ステップS807において、操作情報選択部115は、計算結果表示部114で表示されたシミュレーションの結果に基づいて、操作情報の選択を行う。具体的には、例えば、ユーザが計算結果表示部114に表示された計算結果に基づき、入出力IF130を介して、砂杭造成において操作する操作情報を選択してもよい。あるいは、操作情報選択部115は、あらかじめ設けられた所定の閾値に基づいて、計算結果表示部114に表示された計算結果から適切な操作情報を自動で選択する構成としてもよい。その後、処理はステップS803に戻り、ステップS803からの処理が繰り返し実施される。
【0069】
上述の通り、本実施形態に係る施工パターン検証装置100は、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置20に用いられる施工パターンを検証する施工パターン検証装置100である。施工パターン検証装置100は、締固め杭造成装置20で施工された施工情報を取得する施工情報取得部111を備える。また、施工パターン検証装置100は、施工情報に基づいて、施工パターンを生成するパターン情報生成部112を備える。また、施工パターン検証装置100は、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行するシミュレーション実行部113を備える。さらに、施工パターン検証装置100は、シミュレーションの結果を表示する計算結果表示部114を備える。
【0070】
これにより、施工パターン検証装置100は、地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法における適切な施工パターンを生成し、検証することが可能となる。そのため、ユーザは、この検証結果に基づいて、適切な施工を実施することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態に係る施工パターン検証装置100のシミュレーション実行部113は、柱状物を形成する材料の抜け具合に対する状態として、不足、正常、及び過排出に関する出現確率のシミュレーションを実行してもよい。
【0072】
これにより、施工パターン検証装置100は、締固め杭造成装置20における砂抜け量の結果に対応する各状態を、シミュレーションに適用することで、より正確な出現確率のシミュレーションを実施することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態に係る施工パターン検証装置100のシミュレーション実行部113は、マルコフ連鎖モンテカルロ法により、出現確率のシミュレーションを実行してもよい。
【0074】
これにより、施工パターン検証装置100は、シミュレーション実行部113におけるシミュレーションにマルコフ連鎖モンテカルロ法を適用することで、より適切な施工パターンの検証を実施することが可能となる。
【0075】
(他の実施形態)
実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0076】
また、上述した施工パターン検証装置100における処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム(施工パターン検証プログラム)、及びそのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、本実施形態の範囲に含まれる。ここで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の種類は任意である。また、上記コンピュータプログラムは、上述の記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0077】
(作用効果等)
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0078】
(1)本実施形態の第1の態様に係る施工パターン検証装置100は、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置20に用いられる施工パターンを検証する施工パターン検証装置100である。施工パターン検証装置100は、締固め杭造成装置20で施工された施工情報を取得する施工情報取得部111を備える。また、施工パターン検証装置100は、施工情報に基づいて、施工パターンを生成するパターン情報生成部112を備える。また、施工パターン検証装置100は、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行するシミュレーション実行部113を備える。さらに、施工パターン検証装置100は、シミュレーションの結果を表示する計算結果表示部114を備える。
【0079】
この構成により、施工パターン検証装置100は、地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法における適切な施工パターンを生成し、検証することが可能となる。これにより、ユーザは、この検証結果に基づいて、適切な施工を実施することが可能となる。
【0080】
(2)本実施形態の第2の態様に係る施工パターン検証装置100のシミュレーション実行部113は、柱状物を形成する材料の抜け具合に対する状態として、不足、正常、及び過排出に関する出現確率のシミュレーションを実行してもよい。
【0081】
この構成により、施工パターン検証装置100は、締固め杭造成装置20における砂抜け量の結果に対応する各状態を、シミュレーションに適用することで、より正確な出現確率のシミュレーションを実施することが可能となる。
【0082】
(3)本実施形態の第3の態様に係る施工パターン検証装置100のシミュレーション実行部113は、マルコフ連鎖モンテカルロ法により、出現確率のシミュレーションを実行してもよい。
【0083】
この構成により、施工パターン検証装置100は、シミュレーション実行部113におけるシミュレーションにマルコフ連鎖モンテカルロ法を適用することで、より適切な施工パターンの検証を実施することが可能となる。
【0084】
(4)本実施形態の第4の態様に係る施工パターン検証方法は、コンピュータによって実行され、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置20に用いられる施工パターンを検証する検証方法である。施工パターン検証方法は、締固め杭造成装置20で施工された施工情報を取得する。また、施工パターン検証方法は、施工情報に基づいて、施工パターンを生成する。また、施工パターン検証方法は、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行する。さらに、施工パターン検証方法は、シミュレーションの結果を表示する。
【0085】
この構成により、施工パターン検証方法は、地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法における適切な施工パターンを生成し、検証することが可能となる。これにより、ユーザは、この検証結果に基づいて、適切な施工を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
10 検証システム
20 締固め杭造成装置
30 ホッパー
31 昇降装置
32 回転駆動装置
33 ケーシングパイプ
100 施工パターン検証装置
110 制御部
111 施工情報取得部
112 パターン情報生成部
113 シミュレーション実行部
114 計算結果表示部
115 操作情報選択部
120 記憶部
121 施工情報DB
122 パターン情報DB
123 計算結果情報DB
130 入出力IF
140 通信IF
【要約】
【課題】地中に砂杭を造成し地盤を締め固める工法における適切な施工パターンを生成し、検証することが可能な施工パターン検証装置を提供する。
【解決手段】施工パターン検証装置100は、地中に柱状物を造成することにより地盤を締め固める締固め杭造成装置に用いられる施工パターンを検証する検証装置である。施工パターン検証装置100は、締固め杭造成装置で施工された施工情報を取得する施工情報取得部111を備える。また、施工パターン検証装置100は、施工情報に基づいて、施工パターンを生成するパターン情報生成部112を備える。また、施工パターン検証装置100は、施工パターンに対して、柱状物を形成する材料の抜け具合の良否に関する出現確率のシミュレーションを実行するシミュレーション実行部113を備える。さらに施工パターン検証装置100は、シミュレーションの結果を表示する計算結果表示部114を備える。
【選択図】
図4