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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】耐折曲剤および積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/00 20060101AFI20241114BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B32B29/00
B65D65/42 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024074909
(22)【出願日】2024-05-02
【審査請求日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023214871
(32)【優先日】2023-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤史
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-007353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0265529(US,A1)
【文献】特開2009-057490(JP,A)
【文献】特開2014-077212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 29/00
B65D 65/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材層と耐折曲層と機能層とがこの順で積層された積層体において、
以下の条件1~条件3を満たし、
前記耐折曲層を形成するための、耐折曲剤(ただし、耐折曲剤がOKS-1009であり、かつ、機能層が活性エネルギー線硬化型インク組成物層である場合を除く)。
(条件1)
前記耐折曲剤は、樹脂および媒体を含み、
前記樹脂は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂および塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記樹脂の含有量(固形分換算)は、耐折曲剤中、70~100質量%である。
(条件2)
前記耐折曲層の、下記式で求められる引張試験における伸長度は、200%以上である。
伸長度(%)=100×(Lb-L0)/L0
ただし、Lbは破断時の標線間長さを指し、L0は引張試験前の標線間長さを指す。引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。
(条件3)
前記耐折曲層の、下記式で求められる形状復元度は、80%以上である。
形状復元度(%)=100×(L1-L2)/(L1-L0)
ただし、L0は引張試験前の標線間長さを指す。L1は引張試験における伸長度100%の標線間長さを指し、100%まで伸長が不可能なものについては破断しない限界の標線間長さである。L2は引張試験後に外力を取り除いた際の耐折曲層の標線間長さ、引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。
【請求項2】
前記機能層は、防湿層、ガスバリア層、耐油層、耐水層または撥水層のうち少なくともいずれかの層を含む、請求項1記載の耐折曲剤。
【請求項3】
紙基材層と、耐折曲層と、機能層とがこの順で積層され、
前記耐折曲層は、請求項1または2記載の耐折曲剤が付与されて形成された層である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐折曲剤および積層体に関する。より詳細には、本発明は、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、折り曲げ前後において機能層の機能低下を生じにくくするための耐折曲剤および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対応や、SDGs(持続可能な開発目標)の要請に対応するために、食品分野においても脱プラスチック、脱アルミの要望がある。これらの要望に対して、バリア性(防湿性)を付与した紙製包装体が検討されている(たとえば、特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-220494号公報
【文献】特開2009-155780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~2に記載の紙積層体を用いて包材を作製した場合、包装体は、折り曲げにより、機能層の機能(たとえば防湿性等)が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、折り曲げ前後において機能層の機能低下を生じにくくするための耐折曲剤および積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、紙基材層と機能層との間に、耐折曲層を設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題を解決する本発明の耐折曲剤および積層体には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)紙基材層と耐折曲層と機能層とがこの順で積層された積層体において、以下の条件1~条件3を満たし、前記耐折曲層を形成するための、耐折曲剤(ただし、耐折曲剤がOKS-1009であり、かつ、機能層が活性エネルギー線硬化型インク組成物層である場合を除く)。
(条件1)
前記耐折曲剤は、樹脂および媒体を含み、
前記樹脂は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂および塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記樹脂の含有量(固形分換算)は、耐折曲剤中、70~100質量%である。
(条件2)
前記耐折曲層の、下記式で求められる引張試験における伸長度は、200%以上である。
伸長度(%)=100×(Lb-L0)/L0
ただし、Lbは破断時の標線間長さを指し、L0は引張試験前の標線間長さを指す。引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。
(条件3)
前記耐折曲層の、下記式で求められる形状復元度は、80%以上である。
形状復元度(%)=100×(L1-L2)/(L1-L0)
ただし、L0は引張試験前の標線間長さを指す。L1は引張試験における伸長度100%の標線間長さを指し、100%まで伸長が不可能なものについては破断しない限界の標線間長さである。L2は引張試験後に外力を取り除いた際の耐折曲層の標線間長さ、引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。
【0008】
このような構成によれば、耐折曲剤は、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、紙基材と機能層との間に、耐折曲層を形成するよう適用される。得られた積層体は、折り曲げ前後において機能層の機能が低下しにくい。
【0009】
(2)前記機能層は、防湿層、ガスバリア層、耐油層、耐水層または撥水層のうち少なくともいずれかの層を含む、(1)記載の耐折曲剤。
【0010】
このような構成によれば、耐折曲剤は、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、紙基材と機能層との間に、耐折曲層を形成するよう適用される。得られた積層体は、折り曲げ前後において各種の機能層の機能(防湿性、ガスバリア性、耐油性、耐水性または撥水性)が低下しにくい。
【0011】
(3)紙基材層と、耐折曲層と、機能層とがこの順で積層され、前記耐折曲層は、(1)または(2)記載の耐折曲剤が付与されて形成された層である、積層体。
【0012】
このような構成によれば、得られた積層体は、折り曲げ前後において機能層の機能が低下しにくい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、折り曲げ前後において機能層の機能低下を生じにくくするための耐折曲剤および積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<耐折曲剤>
本発明の一実施形態の耐折曲剤は、紙基材層と耐折曲層と機能層とがこの順で積層された積層体において、耐折曲層を形成するための、耐折曲剤である。ただし、耐折曲剤がOKS-1009であり、かつ、機能層が活性エネルギー線硬化型インク組成物層である場合を除く。耐折曲剤は、以下の条件1~条件3を満たす。なお、本実施形態の耐折曲剤は、上記紙基材層と耐折曲層と機能層とがこの順で積層された構成であればよく、その前後、または、中間に、他の層が設けられていてもよい。
(条件1)
前記耐折曲剤は、樹脂および媒体を含み、前記樹脂は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂および塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記樹脂の含有量(固形分換算)は、耐折曲剤中、70~100質量%である。
(条件2)
前記耐折曲層の、下記式で求められる引張試験における伸長度は、200%以上である。
伸長度(%)=100×(Lb-L0)/L0
ただし、Lbは破断時の標線間長さを指し、L0は引張試験前の標線間長さを指す。引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。
(条件3)
前記耐折曲層の、下記式で求められる形状復元度は、80%以上である。
形状復元度(%)=100×(L1-L2)/(L1-L0)
ただし、L0は引張試験前の標線間長さを指す。L1は引張試験における伸長度100%の標線間長さを指し、100%まで伸長が不可能なものについては破断しない限界の標線間長さである。L2は引張試験後に外力を取り除いた際の耐折曲層の標線間長さ、引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。以下、それぞれについて説明する。
【0015】
(条件1について)
・樹脂
樹脂は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂および塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。樹脂は、固形分と粘度の観点から、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂または塩化ビニル系樹脂のエマルジョンであることが好ましい。これにより、耐折曲剤は、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、紙基材と機能層との間に、上記樹脂を含む耐折曲層を形成するよう適用される。得られた積層体は、折り曲げ前後において機能層の機能が、より低下しにくい。
【0016】
ポリウレタン系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート化合物とジオール化合物と、任意に、鎖伸長剤や反応停止剤とを反応して得られるポリウレタン樹脂等である。
【0017】
ジイソシアネート化合物は特に限定されない。一例を挙げると、ジイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等である。
【0018】
ジオール化合物は特に限定されない。一例を挙げると、ジオール化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の低分子ジオール類;ポリエステルジオール化合物、ポリエーテルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、ポリブタジエングリコール化合物等の高分子ジオール類等である。
【0019】
また、ポリウレタン系樹脂は、各種骨格を有してもよい。一例を挙げると、ポリウレタン系樹脂は、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル・ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等である。
【0020】
ポリエステル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとを原料成分とするエステル化反応により得ることができる。
【0021】
多価カルボン酸は特に限定されない。一例を挙げると、多価カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ピロメリット酸等、およびこれらの酸無水物等である。
【0022】
多価アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、多価アルコールは、グリコールおよび3価以上の多価アルコールが挙げられる。グリコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、メチルプロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、3,3-ジエチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられる。また、3価以上の多価アルコールとして、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0023】
アクリル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル系樹脂としては、例えば、ポリエステル変性アクリル樹脂、ポリウレタン変性アクリル樹脂、バーサチック酸ビニルエステルとアクリル系モノマーとの共重合体であるバーサチック酸ビニルエステルとアクリル系モノマーとの共重合体であってもよい。
【0024】
ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールであってもよく、ポリビニルアルコールの誘導体および変性物であってもよい。
【0025】
ポリビニルアルコール系樹脂は、重合度が100~5000であることが好ましく、500~3000であることがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が上記範囲内であることにより、耐折曲剤は、被膜強度とハンドリング適性とが優れる。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、60モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が上記範囲内であることにより、耐折曲剤は、被膜強度と耐水性とが優れる。
【0027】
ポリビニルアルコールの誘導体は、水酸基の40モル%程度までがアセタール化されているポリビニルアルコール誘導体等である。
【0028】
ポリビニルアルコールの変性物は、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、スルホン基含有単量体、アセトアセチル基含有単量体、ブテンジオール等を共重合して得られるポリビニルアルコール変性物等である。
【0029】
ポリビニルアルコール系樹脂はポバール、エクセバール(以上、(株)クラレ製)、ゴーセノール、ニチゴーGポリマー(以上、三菱ケミカル(株)製)等である。
【0030】
スチレン・ブタジエン系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、スチレン・ブタジエン系樹脂は、スチレン系単量体と、ブタジエンと、必要に応じ、スチレン系単量体およびブタジエンと共重合可能な他の単量体とを含む単量体組成物を、乳化重合または溶液重合して得られる樹脂エマルジョンである。
【0031】
スチレン系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-エチルスチレン、α-ブチルスチレン、4-メトキシスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等である。
【0032】
スチレン系単量体およびブタジエンと共重合可能な他の単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体;イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体等である。スチレン・ブタジエン系樹脂エマルジョンは、カルボキシ(カルボキシ基)変性スチレン・ブタジエン系樹脂エマルジョンであることが好ましい。
【0033】
スチレン・ブタジエン系樹脂エマルジョンは、ブロッキング性およびレベリング性を向上させる観点から、樹脂のガラス転移温度が、-20℃以上であることが好ましく、-10℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められ、通常、ガラス転移が起こる温度範囲の中点により算出される。
【0034】
スチレン・ブタジエン系樹脂エマルジョンは、ニッポールSX1105A、ニッポールLX407S12、ニッポールLX435(以上、日本ゼオン(株)製)等である。
【0035】
塩化ビニル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルル単独重合体、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体、この塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体等である。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂エマルジョンであることが好ましい。
【0036】
塩化ビニル系樹脂の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、塩化ビニル系樹脂は、任意の公知の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造することができる。
【0037】
塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体を構成する塩化ビニルと共重合可能な単量体は、分子中に反応性二重結合を有するものである限り、特に限定されない。このような単量体は、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα-オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのN-置換マレイミド類等である。
【0038】
塩化ビニル系共重合体以外の重合体は、塩化ビニルをグラフト共重合できるものである限り、特に限定されない。
【0039】
塩化ビニル系樹脂はビニブラン(日新化学工業(株)製)、スミカフレックス(住化ケムテックス(株)製)等である。
【0040】
耐折曲剤の固形分中の樹脂の含有量(固形分換算)は特に限定されない。一例を挙げると、樹脂の含有量は、耐折曲剤中、70質量%以上であればよく、80質量%以上であることが好ましい。また、樹脂の含有量は、耐折曲剤中、100質量%以下であればよい。樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、耐折曲剤は、塗工適性と塗膜物性の両立を図れる。
【0041】
・媒体
条件1~条件3を満たす限りにおいて、媒体は特に限定されない。一例を挙げると、媒体は、耐折曲剤が水性である場合には、水のみであってもよく、水と水混和性有機溶媒とを混合した水系媒体であってもよい。水混和性有機溶媒は特に限定されない。一例を挙げると、水混和性有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類等である。
【0042】
また、媒体は、耐折曲剤が溶剤性である場合には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤およびこれらのエステル化物等である、エステル化物は、主にアセテート化したものであることが好ましく、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0043】
耐折曲剤が溶剤性である場合、媒体は、環境面から、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤およびケトン系有機溶剤の混合溶剤、または、より環境問題への対応を進めたエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合溶剤等であることが好ましい。
【0044】
媒体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、媒体の含有量は、耐折曲剤中、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。また、媒体の含有量は、耐折曲剤中、80質量%以下であることが好ましい。媒体の含有量が上記範囲内であることにより、耐折曲剤は、貯蔵安定性と印刷適性や塗布量との最適化を図ることができる。
【0045】
・任意成分
本実施形態の耐折曲剤は、上記樹脂および媒体に加え、適宜、任意成分を含んでもよい。任意成分は特に限定されない。一例を挙げると、任意成分は、ワックス、消泡剤、無機フィラー、離型剤、増粘剤、表面調整剤、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤等である。
【0046】
(条件2について)
本実施形態の耐折曲剤は、紙基材層と耐折曲層と機能層とがこの順で積層された積層体において、耐折曲層を形成するための耐折曲剤である。
【0047】
条件2に関して、本実施形態の耐折曲剤を用いて得られた耐折曲層の引張試験における伸長度は、200%以上である。伸長度は下式によって表される。
伸長度(%)=100×(Lb-L0)/L0
ただし、Lbは破断時の標線間長さを指し、L0は引張試験前の標線間長さを指す。引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。
【0048】
耐折曲層の伸長度は、200%以上であればよく、250%以上であることが好ましい。耐折曲層の伸長度が200%未満である場合、耐折曲層は、積層体を折り曲げる前後において、機能層の機能を維持しにくく、機能が低下しやすい。本実施形態において、耐折曲層の伸長度は、以下の方法により測定し得る。
【0049】
・耐折曲層の伸長度の測定方法
ガラス等の任意の基板上に耐折曲剤を塗布し、乾燥し、これを剥離して、JIS K 6251 引張 3号型 ダンベル状(膜厚300μm)の試験片を作製する。次いで、下記条件にて、下記試験機を用いて各試験片が破壊に至るまで引っ張った際の伸びを測定する。
引張試験機:AGS-X、(株)島津製作所製
延伸速度:300mm/min
温度:23℃
湿度:50%
【0050】
(条件3について)
条件3に関して、耐折曲層の、形状復元度は、80%以上である。形状復元度は、80%以上であればよく、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。形状復元度が80%未満である場合、耐折曲層は、機能層の機能を維持しにくい。
【0051】
本実施形態において、形状復元度は、JIS K 6251に準じて実施される引張試験を行うことにより評価し得る。形状復元度を評価するための引張試験は、下記条件にて、下記試験機を用いて実施され得る。
【0052】
・耐折曲層の形状復元度の評価方法
ガラス等の任意の基板上に耐折曲剤を塗布し、乾燥し、これを剥離して、試験片形状とする。得られた試験片を用いて、JIS K 6251 引張 3号型 ダンベル状(膜厚300μm)を作製する。次いで、下記条件にて、下記試験機を用いて各試験片を伸長し、その状態で5分間保持する。その後、試験機から試験片を取り外し、3時間後の試験片の長さを測定する。
引張試験機:AGS-X、(株)島津製作所製
延伸速度:50mm/min
温度:23℃
湿度:50%
形状復元度は、下記の式で求められる。
形状復元度(%)=100×(L1-L2)/(L1-L0
ただし、L0は引張試験前の標線間長さを指す。L1は引張試験における伸長度100%の標線間長さを指し、100%まで伸長が不可能なものについては破断しない限界の標線間長さである。L2は引張試験後に外力を取り除いた際の標線間長さである。
【0053】
耐折曲剤全体の説明に戻り、耐折曲剤が付与される積層体は、紙基材層と耐折曲層と機能層とがこの順で積層された積層体である。
【0054】
(紙基材層)
紙基材層は特に限定されない。一例を挙げると、紙基材層を構成する紙は特に限定されない。一例を挙げると、紙は、植物由来のパルプを主成分として一般的に用いられている紙であればよく、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等である。これらの中でも、紙は、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
【0055】
紙基材層の坪量、厚みは特に限定されない。一例を挙げると、紙基材層の坪量は、30g/m2以上であることが好ましく、50g/m2以上であることがより好ましい。また、紙基材層の厚みは、300g/m2以下であることが好ましく、250g/m2以下であることがより好ましい。紙基材層の厚みおよび坪量が上記範囲内であることにより、耐折曲剤は、機能層の機能を維持しやすい。
【0056】
(耐折曲層)
耐折曲層は、本実施形態の耐折曲剤が付与されることにより形成される層である。
【0057】
耐折曲剤を紙基材に付与する方法は特に限定されない。一例を挙げると、付与方法は、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、マイクログラビアコーター、ゲートロールコーター等を用いる方法である。
【0058】
付与された耐折曲剤は、乾燥される。耐折曲剤を乾燥するための乾燥方法は特に限定されない。一例を挙げると、乾燥方法は、公知の乾燥設備を用いることができ、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ガスバーナー、熱板等が用いられ得る。
【0059】
耐折曲層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、耐折曲層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、耐折曲層の厚みは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。耐折曲層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる積層体は、折り曲げ前後において機能層の機能が低下しにくい。
【0060】
(機能層)
機能層は、紙基材に対して各種機能を付与するための層である。本実施形態の積層体は、上記した耐折曲剤が付与されて形成された耐折曲層を備える。その結果、積層体は、機能層によって付与された機能が、折り曲げの前後において損なわれにくい。
【0061】
機能層は特に限定されない。機能層は、所望する用途によって適宜、選択され得る。具体的には、機能層は、防湿層、ガスバリア層、耐油層、耐水層または撥水層のうち少なくともいずれかの層を含むことが好ましい。これにより、得られた積層体は、折り曲げ前後において各種の機能層の機能(防湿性、ガスバリア性、耐油性、耐水性または撥水性)が低下しにくい。
【0062】
・機能層が防湿層である場合
防湿層は、防湿コート剤を付与することにより設けられる。例えば、防湿コート剤は、アニオン性バインダー樹脂、無機層状化合物、水系媒体を含む。
【0063】
アニオン性バインダー樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アニオン性バインダー樹脂は、スチレン・ブタジエン系共重合体、スチレン・アクリル系共重合体、メタクリレート・ブタジエン系共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン系共重合体、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体、アクリルエステル系重合体等である。これらの中でも、アニオン性バインダー樹脂は、耐水性が良好で、伸びがよく、折割れによる機能層の亀裂が生じにくい点から、スチレン・ブタジエン系共重合体、スチレン・アクリル系共重合体およびオレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体であることがより好ましい。
【0064】
スチレン・ブタジエン系共重合体は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物と、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどの共役ジエン化合物、およびこれらと共重合可能なその他の化合物からなる単量体を乳化重合することによって得られる共重合体である。芳香族ビニル化合物は、スチレン等であることが好ましい。共役ジエン化合物は、1,3-ブタジエンであることが好ましい。
【0065】
スチレン・アクリル系共重合体は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物と、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステルおよびマレイン酸モノブチルエステルなどの少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル、アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩などの不飽和スルホン酸単量体またはその塩と、これらと共重合可能なその他の化合物からなる単量体とを乳化重合することによって得られる共重合体である。芳香族ビニル化合物は、スチレン等であることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体、不飽和スルホン酸単量体またはその塩は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等であることが好ましい。
【0066】
オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体は、オレフィン、とりわけエチレン、プロピレン等のα-オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステルおよびマレイン酸モノブチルエステルなどの、少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル、アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩などの不飽和スルホン酸単量体またはその塩、およびこれらと共重合可能なその他の化合物からなる単量体とを乳化重合することによって得られる共重合体である。オレフィンは、α-オレフィン、とりわけエチレン等であることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体、不飽和スルホン酸単量体またはその塩は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等であることが好ましい。オレフィン・不飽和カルボン酸系共重合体の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液が、ザイクセンAC、ザイクセンA等(住友精化(株)製)として市販されており、容易に入手し利用することができる。
【0067】
アニオン性バインダー樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アニオン性バインダー樹脂の含有量は、防湿コート剤の全固形分に対して、20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。また、アニオン性バインダー樹脂の含有量は、防湿コート剤の全固形分中、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。アニオン性バインダー樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、得られる機能層(防湿層)は、高い防湿性を発現できる。
【0068】
無機層状化合物は特に限定されない。一例を挙げると、無機層状化合物は、天然物もしくは合成物のいずれであってもよく、またこれらを混合したものでもよい。天然物は、モンモリロナイト、カオリナイト(カオリン鉱物)、パイロフィライト、タルク、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト系の粘土鉱物、ベントナイト、純雲母、脆雲母等のマイカ系粘土鉱物等である。合成物は、合成ヘクトライト(ケイ酸ナトリウム・マグネシウム)、合成ベントナイト、合成サポナイト、合成マイカ等である。これらの中でも、分散性を向上させる観点から、無機層状化合物は、水膨潤性のモンモリロナイト、ベントナイトおよび合成マイカ、合成ヘクトライト、合成ベントナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、無機層状化合物は、バリア性を向上させる観点から、モンモリロナイト、合成マイカ、合成ヘクトライトであることがより好ましい。無機層状化合物は、併用されてもよい。
【0069】
無機層状化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、無機層状化合物の含有量は、防湿コート剤中の全固形分に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。一方、無機層状化合物の含有量は、防湿コート剤中の全固形分に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。無機層状化合物の含有量が上記範囲内であることにより、得られる機能層(防湿層)は、高い防湿性を発現できる。
【0070】
水系媒体は特に限定されない。一例を挙げると、水系媒体は、水のみであってもよく、水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類といった水混和性有機溶媒とを混合した水系媒体であってもよい。
【0071】
防湿コート剤は、防湿性をより向上させるために、アミノ酸類、カチオン性樹脂から選択される少なくとも1種を含んでもよい。アミノ酸類、カチオン性樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アミノ酸類は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸等のアミノ酸、アミノ酸の重合体、アミノ酸誘導体等である。アミノ酸類は、アミノ酸類のコポリマーであってもよい。アミノ酸類は、防湿性がより優れる点から、アミノ酸類のコポリマーまたは重合体であることが好ましい。
【0072】
カチオン性樹脂は、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドアミンポリ尿素-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物およびポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等である。
【0073】
防湿コート剤は、必要に応じて、適宜、添加剤が配合されてもよい。添加剤は特に限定されない。一例を挙げると、添加剤は、分散剤、界面活性剤、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤等である。
【0074】
防湿コート剤の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、防湿コート剤は、アニオン性バインダー樹脂、無機層状化合物、水系媒体および適宜アミノ酸類、カチオン性樹脂、添加剤を混合し、常温で充分に攪拌、混合することによって調製し得る。
【0075】
機能層が防湿層である場合、防湿層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、防湿層の厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、防湿層の厚みは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。防湿層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる積層体は、防湿性が優れる。
【0076】
・機能層がガスバリア層である場合
ガスバリア層は、ガスバリア性コート剤を付与することにより設けられる。例えば、ガスバリア性コート剤は、水性高分子、無機層状化合物、水系媒体を含む。
【0077】
水性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水性高分子は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等である。これらの中でも、水性高分子は、より優れたガスバリア性を付与し得る点から、完全ケン化または部分ケン化したポリビニルアルコール、または変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。変性ポリビニルアルコールとしては、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0078】
水性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水性高分子の含有量は、ガスバリア性コート剤の全固形分中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0079】
無機層状化合物は、防湿層に関連して上記した無機層状化合物と同様である。無機層状化合物は、ガスバリア性を向上させる点から、マイカ、ベントナイトおよびカオリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0080】
無機層状化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、無機層状化合物の含有量は、ガスバリア性コート剤の水性高分子100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。また、無機層状化合物の含有量は、ガスバリア性コート剤の水性高分子100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。無機層状化合物の含有量が上記範囲内であることにより、得られる機能層(ガスバリア層)は高湿度下におけるガスバリア性が優れる。
【0081】
水系媒体は、水のみであってもよく、水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類といった水混和性有機溶媒とを混合した水系媒体であってもよい。
【0082】
ガスバリア性コート剤の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、ガスバリア性コート剤は、水性高分子、無機層状化合物、水系媒体を混合し、常温で充分に攪拌、混合することによって調製され得る。
【0083】
機能層がガスバリア層である場合、ガスバリア層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、ガスバリア層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、ガスバリア層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。ガスバリア層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる積層体は、ガスバリア性が優れる。
【0084】
・機能層が耐油層である場合
耐油層は、耐油コート剤を付与することにより設けられる。例えば、耐油コート剤は、顔料、スチレン・ブタジエン共重合体およびポリビニルアルコール、水系媒体を含む耐油コート剤、スチレン・アクリル系共重合体、ワックス、水性媒体を含有する耐油コート剤が使用できる。
【0085】
顔料、スチレン・ブタジエン共重合体およびポリビニルアルコール、水系媒体を含む耐油コート剤について説明する。
【0086】
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、無機顔料や有機顔料等の各種顔料である。無機顔料は、カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、焼成カオリン等のカオリン類、合成マイカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物等である。これらの中でも、カオリンは、優れた耐油性と耐水性を付与し得るため、好ましい。また、カオリンは、耐油紙の密度を高めたときの透明性が優れ、光沢性も優れる。
【0087】
顔料がカオリンである場合、カオリンの平均粒子径は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、カオリンの平均粒子径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。カオリンの平均粒子径が上記範囲内であることにより、得られる機能層(耐油層)は、耐油性が優れる。
【0088】
有機顔料は、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系モノマーの重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等である。
【0089】
顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、顔料の含有量は、耐油コート剤の全固形量中、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、顔料の含有量は、耐油コート剤の全固形量中、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。顔料の含有量が上記範囲内であることにより、得られる耐油層は、耐油性と耐水性とが優れる。
【0090】
スチレン・ブタジエン共重合体は、機能層に、優れた耐水性(撥水性)を付与するために配合される。スチレン・ブタジエン共重合体は、モノマーとしてスチレンとブタジエンとを共重合させることにより得られる。なお、水不溶性の共重合体が用いられるときは、共重合体は、ラテックスの形態で用いられ得る。本実施形態のスチレン・ブタジエン共重合体は特に限定されない。一例を挙げると、スチレン・ブタジエン共重合体は、旭化成(株)から市販されている「A6160」等である。
【0091】
スチレン・ブタジエン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、30℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。また、スチレン・ブタジエン共重合体のTgは、-40℃以上であることが好ましく、-30℃以上であることがより好ましく、-20℃以上であることがさらに好ましい。スチレン・ブタジエン共重合体のTgが上記範囲内であることにより、得られる耐油層は、優れた成膜能力と、優れた撥水耐油性を発揮し得る。
【0092】
スチレン・ブタジエン共重合体の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。また、スチレン・ブタジエン共重合体の平均粒子径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。スチレン・ブタジエン共重合体の平均粒子径が上記範囲内であることにより、スチレン・ブタジエン共重合体は、水分散性が優れる。
【0093】
スチレン・ブタジエン共重合体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、スチレン・ブタジエン共重合体の含有量は、耐油コート剤の全固形量中、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、スチレン・ブタジエン共重合体の含有量は、耐油コート剤の全固形量中、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。スチレン・ブタジエン共重合体の含有量が上記範囲内であることにより、耐油コート剤は、紙基材に対して、耐油性に加えて耐水性(撥水性)も優れた耐油層を形成し得る。
【0094】
ポリビニルアルコールは特に限定されない。一例を挙げると、ポリビニルアルコールは、未変性の完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコールや変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂等である。変性ポリビニルアルコールは、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトン基変性ポリビニルアルコール等である。これらの中でも、未変性の完全ケン化ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコールは、優れた耐油性を付与し得るため好ましい。さらに、エチレン変性ポリビニルアルコールは、耐油コート剤の増粘を抑制し得る。これにより、耐油コート剤は、塗工適性が優れる。また、得られる耐油層は、塗工面の状態が優れる。
【0095】
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、耐油コート剤の全固形量中、0.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、耐油コート剤の全固形量中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、得られる耐油層は、より優れた耐油性を示し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂は、耐油コート剤の増粘を抑制し得る。これにより、耐油コート剤は、塗工欠陥の発生を抑制し得る。
【0096】
水系媒体は、水のみであってもよく、水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類といった水混和性有機溶媒とを混合した水系媒体であってもよい。
【0097】
次いで、スチレン・アクリル系共重合体、ワックス、水性媒体を含有する耐油コート剤について説明する。
【0098】
スチレン・アクリル系共重合体は、スチレンおよびスチレン誘導体と、アクリル酸(メタクリル酸)およびアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル類やメタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル等を共重合したスチレン・アクリル系共重合体が挙げられ、好ましくは、スチレン・アクリル系共重合体エマルジョンである。
【0099】
ワックスは、パラフィンワックス、カルボキシル基含有パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン・プロピレン共重合体ワックス等のポリオレフィン系ワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ビスアミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられる。ワックスの含有量は、耐油コート剤の全固形量中、1.5~20質量%であることが好ましい。
【0100】
水性媒体は、水のみであってもよく、水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類といった水混和性有機溶媒とを混合した水系媒体であってもよい。
【0101】
耐油コート剤の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、耐油コート剤は、顔料、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールおよび水系媒体を混合することにより、スチレン・アクリル系共重合体、ワックス、水性媒体を混合することにより、常温で充分に攪拌、混合することによって調製し得る。
【0102】
機能層が耐油層である場合、耐油層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、耐油層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、耐油層の厚みは、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。耐油層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる積層体は、耐油性が優れる。
【0103】
・機能層が耐水層である場合
耐水層は、耐水コート剤を付与することにより設けられる。耐水コート剤は特に限定されない。一例を挙げると、耐水コート剤は、スチレン・アクリル系共重合体、ワックス、水性媒体を含有する耐水コート剤等である。
【0104】
スチレン・アクリル系共重合体は特に限定されない。一例を挙げると、スチレン・アクリル系共重合体は、スチレンおよびスチレン誘導体と、アクリル酸(メタクリル酸)およびアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル類やメタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル等を共重合したスチレン・アクリル系共重合体等である。これらの中でも、スチレン・アクリル系共重合体は、スチレン・アクリル系共重合体エマルジョンであることが好ましい。
【0105】
ワックスは特に限定されない。一例を挙げると、ワックスは、パラフィンワックス、カルボキシル基含有パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン・プロピレン共重合体ワックス等のポリオレフィン系ワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ビスアミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等である。ワックスの含有量は、耐水コート剤の全固形量中、1.5~20質量%であることが好ましい。
【0106】
水性媒体は、水のみであってもよく、水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類といった水混和性有機溶媒とを混合した水系媒体であってもよい。
【0107】
耐水コート剤の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、耐水コート剤は、スチレン・アクリル系共重合体、ワックス、水性媒体を混合することにより、常温で充分に攪拌、混合することによって調製し得る。
【0108】
機能層が耐水層である場合、耐水層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、耐水層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、耐水層の厚みは、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。耐水層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる積層体は、耐水性が優れる。
【0109】
・機能層が撥水層である場合
撥水層は、撥水コート剤を付与することにより設けられる。例えば、撥水コート剤は、撥水剤、水系媒体、必要に応じて無機顔料を含む。
【0110】
撥水剤は特に限定されない。一例を挙げると、撥水剤は、パラフィン系炭化水素を含む水系コート剤(例えば、サカタインクス(株)製のブライトーンFC-350)、ワックス系撥水剤(例えば、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のセレスタール40R)等である。撥水剤は、パラフィン系に限定されない。撥水剤は、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスやマレイン化石油樹脂等の変性ワックス成分等が含まれてもよい。また、ワックス系成分は、ロジン系樹脂または不飽和高級アルコール等を含んでもよい。
【0111】
水系媒体は、水のみであってもよく、水と、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとそのアルキルエーテル誘導体、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類といった水混和性有機溶媒とを混合した水系媒体であってもよい。
【0112】
撥水コート剤の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、撥水コート剤は、撥水剤、水系媒体を混合し、常温で充分に攪拌、混合することによって調製し得る。
【0113】
機能層が撥水層である場合、撥水層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、撥水層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、撥水層の厚みは、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。撥水層の厚みが上記範囲内であることにより、得られる積層体は、撥水性が優れる。
【0114】
耐折曲剤の説明に戻り、本実施形態の耐折曲剤は、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、紙基材と機能層との間に、耐折曲層を形成するよう適用される。得られた積層体は、折り曲げ前後において機能層の機能が低下しにくい。
【0115】
<積層体および積層体の製造方法>
本発明の一実施形態の積層体は、紙基材層と、耐折曲層と、機能層とがこの順で積層された積層体である。耐折曲層は、上記した耐折曲剤が付与されて形成された層である。
【0116】
積層体を構成する紙基材層、耐折曲層および機能層は、耐折曲剤の実施形態に関連して上記したとおりである。
【0117】
積層体の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、積層体は、紙基材層に耐折曲剤を付与し、次いで、各種機能性コート剤(防湿コート剤、ガスバリア性コート剤、耐油コート剤、耐水コート剤、撥水コート剤)を付与することにより作製され得る。付与された耐折曲剤および機能性コート剤は、それぞれが付与された後に乾燥されてもよく、両方が付与された後にまとめて乾燥されてもよい。
【0118】
耐折曲層の塗工量(固形分換算)は、1g/m2以上であることが好ましく、3g/m2以上であることがより好ましい。また、耐折曲層の塗工量(固形分換算)は、30g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以下であることがより好ましい。耐折曲層の塗工量が上記範囲内であることにより、得られる積層体は、優れた耐折曲性を示す。
【0119】
機能層が防湿層である場合、防湿コート剤の塗工量(固形分換算)は、1g/m2以上であることが好ましく、3g/m2以上であることがより好ましい。また、防湿コート剤の塗工量(固形分換算)は、30g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以下であることがより好ましい。防湿コート剤の塗工量が上記範囲内であることにより、積層体は、優れた防湿性を示す。
【0120】
機能層がガスバリア層である場合、ガスバリア性コート剤の塗工量(固形分換算)は、0.1g/m2以上であることが好ましく、0.5g/m2以上であることがより好ましい。また、ガスバリア性コート剤の塗工量(固形分換算)は、10g/m2以下であることが好ましく、5g/m2以下であることがより好ましい。ガスバリア性コート剤の塗工量が上記範囲内であることにより、積層体は、優れたガスバリア性を示す。
【0121】
機能層が耐油層である場合、耐油コート剤の塗工量(固形分換算)は、1g/m2以上であることが好ましく、3g/m2以上であることがより好ましい。また、耐油コート剤の塗工量(固形分換算)は、20g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以下であることがより好ましい。耐油コート剤の塗工量が上記範囲内であることにより、積層体は、優れた耐油性を示す。
【0122】
機能層が耐水層である場合、耐水コート剤の塗工量(固形分換算)は、1g/m2以上であることが好ましく、3g/m2以上であることがより好ましい。また、耐水コート剤の塗工量(固形分換算)は、20g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以下であることがより好ましい。耐水コート剤の塗工量が上記範囲内であることにより、積層体は、優れた耐水性を示す。
【0123】
機能層が撥水層である場合、撥水コート剤の塗工量(固形分換算)は、1g/m2以上であることが好ましく、3g/m2以上であることがより好ましい。また、撥水コート剤の塗工量(固形分換算)は、20g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以下であることがより好ましい。撥水コート剤の塗工量が上記範囲内であることにより、積層体は、優れた撥水性を示す。
【0124】
以上、本実施形態によれば、紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、紙基材と機能層との間に、上記した耐折曲剤を付与した耐折曲層が形成されている。そのため、得られる積層体は、折り曲げ前後において機能層の機能が低下しにくい。
【実施例
【0125】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。また、表中の各材料の分量の数字は「質量部」である。
【0126】
使用した原材料を、以下に示す。
<紙基材>
OKブリザード(坪量70g/m2、王子マテリア(株)製)
【0127】
<防湿コート剤>
アニオン性バインダー(ザイクセンA、固形分25%、住友精化(株)製)60.0部に、撹拌下で無機層状化合物(ソマシフME300B-4T、固形分8%、片倉コープアグリ(株)製)25.0部を加え、さらに分散剤として変性アミド系樹脂(Sumirez(登録商標) Resin SPI-203(50)H、田岡化学工業(株)製)2.0部とイオン交換水13部を加え撹拌することで防湿コート剤を得た。
【0128】
<耐油コート剤>
耐油コート剤は、INXKote WB FLEXO FDA GREASE RES AC4551を使用した。
【0129】
<耐折曲剤>
ポリウレタン系樹脂1(スーパーフレックス460S、第一工業製薬(株)製)
ポリウレタン系樹脂2(スーパーフレックス210、第一工業製薬(株)製)
アクリル系樹脂1(DXA.4081、VANORA社製)
アクリル系樹脂2(Neocryl A-1125、Covestro社製)
ポリビニルアルコール系樹脂1(OKS-1009、三菱ケミカル(株)製)
ポリビニルアルコール系樹脂2(BVE8049Q、三菱ケミカル(株)製)
ポリビニルアルコール系樹脂3(OKS-8118、三菱ケミカル(株)製)
スチレン・ブタジエン系樹脂1(スマ-テックス VA-1015、日本エイアンドエル(株)製)
スチレン・ブタジエン系樹脂2(Nipol LX407S12、日本ゼオン(株)製)
【0130】
<耐折曲剤の製造法>
表1に記載のようにポリウレタン系樹脂1、2、アクリル系樹脂1、およびスチレン・ブタジエン系樹脂1、2、を固形分30%となるように媒体(イオン交換水)で希釈して、耐折曲剤1~3、8、9を得た。アクリル系樹脂2については原液を耐折曲剤4として使用した。また、ポリビニルアルコール系樹脂1~3を溶媒(イオン交換水)に溶解し、固形分10%の溶液として、耐折曲剤5~7を得た。
【0131】
【表1】
【0132】
<実施例1>
紙基材の一方の面上に、耐折曲剤1を乾燥後塗布量が3g/m2となるように、バーコーターにて塗布後、60℃のドライヤー風にて乾燥して耐折曲層を形成した。さらにその上から耐油剤を乾燥後塗布量が6g/m2となるようにバーコーターにて塗布後、60℃のドライヤー風にて乾燥して耐油層を形成することで実施例1の耐油性評価用積層体を作成した。
【0133】
<実施例2~8>
以下の表2に示される組み合わせにて、耐油層と防湿層について耐折曲剤1、3、5、6を採用した以外は、実施例1と同様の方法により、耐油性評価用積層体または防湿性評価用積層体を作製した。
【0134】
<比較例1、2>
紙基材の一方の面上に、各機能層を乾燥後塗布量が6g/m2となるようにバーコーターにて塗布後、60℃のドライヤー風にて乾燥して耐油層を形成することで比較例1および2の耐油性評価用積層体または防湿性評価用積層体を作成した。
【0135】
<比較例3~10>
以下の表2に示される組み合わせにて、耐油層と防湿層について耐折曲剤2、4、7、9を採用した以外は、実施例1と同様の方法により、耐油性評価用積層体または防湿性評価用積層体を作製した。
【0136】
以下の評価方法により、耐折曲層の伸長度および耐折曲層の形状復元度を評価した。結果を表2に示す。
【0137】
また、得られた積層体について、作製した機能層の種類に応じて、防湿性、および耐油性を評価した。これらの評価は、以下に示される折り曲げの前後において評価した。結果を表2に示す。
【0138】
(耐折曲層の伸長度の測定方法)
ガラス基板上に耐折曲剤を塗布し、乾燥し、これを剥離して、JIS K 6251 引張 3号型 ダンベル状(膜厚300μm)の試験片を作製した。次いで、下記条件にて、下記試験機を用いて各試験片が破壊に至るまで引っ張った際の伸びを測定した。
引張試験機:AGS-X、(株)島津製作所製
延伸速度:300mm/min
温度:23℃
湿度:50%
伸長度は、下記の式で求められる。
伸長度(%)=100×(Lb-L0)/L0
ただし、Lbは破断時の標線間長さを指し、L0は引張試験前の標線間長さを指す。引張試験はJIS K 6251に準じて実施される引張試験である。
【0139】
(耐折曲剤の形状復元度の評価方法)
形状復元度は、JIS K 6251に準じて実施される引張試験を行うことにより評価した。形状復元度を評価するための引張試験は、下記条件にて、下記試験機を用いて実施した。ガラス基板上に耐折曲剤を塗布し、乾燥し、これを剥離して、JIS K 6251 引張 3号型 ダンベル状(膜厚300μm)の試験片を作製した。次いで、下記条件にて、下記試験機を用いて各試験片を伸長し、その状態で5分間保持した。その後、試験機から試験片を取り外し、3時間後の試験片の長さを測定した。
引張試験機:AGS-X、(株)島津製作所製
延伸速度:50mm/min
温度:23℃
湿度:50%
形状復元度は、下記の式で求められる。
形状復元度(%)=100×(L1-L2)/(L1-L0)
ただし、L0は引張試験前の標線間長さを指す。L1は引張試験における伸長度100%の標線間長さを指し、100%まで伸長が不可能なものについては破断しない限界の標線間長さである。L2は引張試験後に外力を取り除いた際の標線間長さである。
【0140】
(折り曲げ方法)
4000gのローラーを30cm/秒の速さで転がしながら、積層体上を10回通過させることで積層体に1つ目の折り目をつけた。折り目をつけた積層体を開き、さらに1つ目の折り目と垂直となるように1つ目の折り目と同様にして2つ目の折り目をつけた。なお、積層体の折る向きはコート剤を塗工した側が内側となるようにした。
【0141】
(耐油性)
サラダ油0.03gを積層体の塗工面(折り曲げ後サンプルについては折り目の交点上)に滴下した。90分後裏面へサラダ油が染み出した面積を測定し、耐折曲層を設けない場合と比較して染みの面積がどれだけ低減したかを評価した。なお、耐折曲層を設けない場合(比較例1)の染み面積は12.4cm2であった。また、全ての実施例および比較例で積層体に折り目を付けない場合は裏面への染み出しは全く無かった。
【0142】
(防湿性)
上記で得られた積層体をJIS Z 0208-1976に準じて、水蒸気透過率(WVTR値、g/m2/day)を測定した。温湿度条件は、温度40±0.5℃、相対湿度90±2%とした。折り曲げの前後で水蒸気透過率の劣化値を算出し、耐折曲層を設けない場合と比較して劣化値がどれだけ低減したかを評価した。なお、耐折曲層を設けない場合(比較例2)の折り曲げ前の水蒸気透過率は25.6g/m2/day、折り曲げ後の水蒸気透過率は56.6g/m2/dayであり、劣化値は31.0g/m2/dayであった。
【0143】
【表2】
【0144】
表2に示されるように、本発明の実施例1~8の耐折曲剤を用いて得られた積層体は、折り曲げ前後において機能層の機能が低下しにくいことが分かった。
【要約】
【課題】紙基材に各種の機能層が設けられた積層体において、折り曲げ前後において機能層の機能低下を生じにくくするための耐折曲剤および積層体を提供する。
【解決手段】紙基材層と耐折曲層と機能層とがこの順で積層された積層体において、以下の条件1~条件3を満たし、耐折曲層を形成するための、耐折曲剤(ただし、耐折曲剤がOKS-1009であり、かつ、機能層が活性エネルギー線硬化型インク組成物層である場合を除く)。
(条件1)
耐折曲剤は、樹脂および媒体を含み、樹脂は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂および塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、樹脂の含有量(固形分換算)は、耐折曲剤中、70~100質量%である。
(条件2)
耐折曲層の、引張試験における伸長度は、200%以上である。
(条件3)
耐折曲層の、形状復元度は、80%以上である。
【選択図】なし