(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】SOT及びMRAMデバイスのための高い動作温度を有するBiSbX(012)層
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20241114BHJP
H10N 50/20 20230101ALI20241114BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/20
G11B5/39
(21)【出願番号】P 2024501784
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2022027960
(87)【国際公開番号】W WO2023022764
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2024-01-12
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レ、クァン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク、ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チャンジー
(72)【発明者】
【氏名】岡村 進
(72)【発明者】
【氏名】リュー、シャオヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、クオック サン
(72)【発明者】
【氏名】高野 公史
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-057357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0249038(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0104344(US,A1)
【文献】国際公開第2019/054484(WO,A1)
【文献】中野総一郎,埋め込みMRAMに向けた純スピン流源BiSbの熱耐久性の向上,応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,日本,2020年02月28日,Vol.67,p.14p-A501-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 61/00
H10N 50/20
G11B 5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスであって、
トポロジカル絶縁体(TI)変調層であって、前記TI変調層が、
約96%から約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチビスマスアンチモン(BiSb)組成変調層、並びに、
複数のTIラメラ層であって、前記TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、前記原子のクラスタが、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含み、前記原子のクラスタが、約1400℃未満のバルク溶融温度を有する粒界において約400℃未満の粒界ガラス形成温度を有するように構成される、複数のTIラメラ層、
を含むTI変調層と、
複数のテクスチャリング層と、
を備えたスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイス。
【請求項2】
前記TIラメラ層が、(012)の結晶配向を有するBiSbを含む、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項3】
前記複合セラミック材料が、約1400℃未満の溶融温度を有する、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項4】
前記テクスチャリング層が、共有結合した炭化物、酸化物、又は窒化物を含む非晶質材料、面心立方晶(fcc)材料、正方晶材料、体心立方晶(bcc)材料、及び金属非晶質材料からなる群から選択される、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項5】
バッファ層であって、前記TI変調層が前記バッファ層の上に配置される、バッファ層と、
前記TI変調層上に配置された中間層と、
を更に備えている、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項6】
前記複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第1のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層が、前記バッファ層と接触して配置され、前記複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第2のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層が、前記中間層と接触して配置される、請求項5に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項7】
前記炭化物材料が、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、SiC、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択され、前記酸化物材料が、Fe
O、ZrO、MgO、TiO、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項8】
前記窒化物材料が、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、GaN、FeN、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合セラミック材料の組合せからなる群から選択され
、
前記複合セラミック材料は、Bi、Pb、Ga、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、In、Ir、Ru、V、Os、Rh、Pd、WV、CrV、CrNb、Ge、ZnNb、ZnTa、Co、Mg、Sn、Sb、Te、Hf、Ta、W、これらの酸化物、これらの窒化物、これらの炭化物、及びこれらの合金からなる群から選択される
、
請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のSOT MTJデバイスを備える磁気抵抗ランダムアクセスメモリデバイス。
【請求項10】
請求項
1に記載の
SOT MTJデバイスを備える磁気記録ヘッドを備える磁気記録デバイス。
【請求項11】
請求項1に記載のSOT MTJ
デバイスを含む磁気抵抗メモリ。
【請求項12】
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスであって、
トポロジカル絶縁体(TI)変調層であって、前記TI変調層が、
約96%から約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチ組成変調層と、
(012)の結晶配向を有するビスマスアンチモン(BiSb)を含む複数のTIラメラ層であって、前記TIラメラ層が原子のクラスタと共堆積され、前記原子のクラスタが炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含む、複数のTIラメラ層と、
複数のテクスチャリング層であって、各テクスチャリング層がTIラメラ層の間に交互に積層されている、複数のテクスチャリング層と、
を備えているTI変調層を備えたスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイス。
【請求項13】
前記TIラメラ層が、変調された配向で前記原子のクラスタと共堆積される、請求項12に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項14】
前記TIラメラ層が、エッジ配向で前記原子のクラスタと共堆積される、請求項12に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項15】
前記TIラメラ層が、均一に又は不均一に分布した配向で前記原子のクラスタと共堆積される、請求項12に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項16】
前記炭化物材料が、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、SiC、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される、請求項12に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項17】
前記窒化物材料が、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、GaN、FeN、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される、請求項12に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項18】
前記酸化物材料が、FeO
、ZrO、MgO、TiO、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択された1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される、請求項12に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項19】
請求項12に記載のSOT MTJデバイスを備える磁気抵抗ランダムアクセスメモリデバイス。
【請求項20】
請求項1
2に記載の
SOT MTJデバイスを備える磁気記録ヘッドを備える磁気記録デバイス。
【請求項21】
請求項12に記載のSOT MTJ
デバイスを含む磁気抵抗メモリ。
【請求項22】
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスであって、
バッファ層と、
前記バッファ層の上に配置された中間層と、
前記バッファ層と前記中間層との間に配置されたトポロジカル絶縁体(TI)変調層であって、前記トポロジカル絶縁体(TI)変調層が、
約96%から約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチビスマスアンチモン(BiSb)組成変調層、並びに、
(012)の結晶配向を有するBiSbを含む複数のTIラメラ層であって、前記TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、前記原子のクラスタが、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含み、各TIラメラ層が、2つのビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層と接触して配置される、複数のTIラメラ層と、
複数のテクスチャリング層であって、各テクスチャリング層が、2つのビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層と接触して配置されている、複数のテクスチャリング層と、
を備えている、トポロジカル絶縁体(TI)変調層、
を備えた、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイス。
【請求項23】
前記炭化物材料が、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、SiC、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される、請求項22に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項24】
前記窒化物材料が、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、GaN、FeN、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される、請求項22に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項25】
前記酸化物材料が、FeO
、ZrO、MgO、TiO、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択された1つ又は複数の元素を有するそれらの複合材料の組合せからなる群から選択される、請求項22に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項26】
前記複合セラミック材料が、Bi、Pb、Ga、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、In、Ir、Ru、V、Os、Rh、Pd、WV、CrV、CrNb、Ge、ZnNb、ZnTa、Co、Mg、Sn、Sb、Te、Hf、Ta、W、それらの酸化物、それらの窒化物、それらの炭化物、及びそれらの合金からなる群から選択される、請求項22に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項27】
前記複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第1のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層が、前記バッファ層と接触して配置され、前記複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第2のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層が、前記中間層と接触して配置される、請求項22に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項28】
前記中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、テクスチャfcc(111)材料、テクスチャhcp(002)材料、共有結合した炭化物、酸化物、又は窒化物を含む非晶質材料、非晶質金属材料、及び前述の材料のいずれか1つ又は複数の層状の組合せからなる群から選択される1つ又は複数の材料を含む、請求項22に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項29】
前記バッファ層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、テクスチャfcc(111)材料、テクスチャhcp(002)材料、非晶質金属材料、共有結合した炭化物、酸化物、又は窒化物を含む非晶質材料、及び前述の材料のいずれか1つ又は複数の層状の組合せからなる群から選択された1つ又は複数の材料を含む1つ又は複数の副層を含む、請求項22に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項30】
請求項22に記載のSOT MTJデバイスを備える磁気抵抗ランダムアクセスメモリデバイス。
【請求項31】
請求項
22に記載の
SOT MTJデバイスを備える磁気記録ヘッドを備える磁気記録デバイス。
【請求項32】
請求項22に記載のSOT MTJ
デバイスを含む磁気抵抗メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月18日に出願された「BISBX(012)LAYERS HAVING INCREASED OPERATING TEMPERATURES FOR SOT AND MRAM DEVICES」と題する米国非仮出願第17/405,954号の利益を主張し、その内容の全体はあらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、概して、(012)配向を有するビスマスアンチモン(BiSb)層内のアンチモン(Sb)の移動を抑制するバッファ層及び中間層に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
トポロジカル絶縁体(Tis)は、その内部で絶縁体として挙動するが、導電状態を含む表面を有する材料である。BiSbは例示的なTIであり、スピントルク発振器(STO)及び磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイスのためのスピンホール層として提案されている。BiSbは、巨大なスピンホール効果と高い導電性の両方を有する狭いギャップのトポロジカル絶縁体である。
【0004】
N.H.D.Khang、Y.Ueda、及びP.N.Haiの「A conductive topological insulator with large spin Hall effect for ultralow power spin orbit torque switching」Nature Materials,v.17,808(2018)は、(012)結晶配向を有するBiSbが、(001)結晶配向を有するBiSbと比較して、高いスピンホール角及び高い導電性を有することを発見した。(001)結晶配向を有するGaAs基板上に形成された(001)結晶配向を有するMnGa膜上に、(012)結晶配向を有するBiSbを形成した。
【0005】
N.Roschewsky、E.S.Walker、P.Gowtham、S.Muschinske、F.Hellman、S.R.Bank、及びS.Salahuddinの「Spin-orbit torque and Nernst effect in Bi-Sb/Co heterostructures」,Phys.Rev.B,vol.99,195103(2 May 2019)は、BiSb成長、結晶配向、スピンホール角、及び高い導電性が実験間で低い一貫性を有することを確認した。
【0006】
E.S.Walker、S.Muschinske、C.J.Brennan、S.R.Na、T.Trivedi、S.D.March、Y.Sun、T.Yang、A.Yau、D.Jung、A.F.Briggs、E.M.Krivoy、M.L.Lee、K.M.Liechti、E.T.Yu、D.Akinwande、及びS.R.Bank、の「Composition-dependent structural transition in epitaxial Bi1-xSbx thin films on Si(111)」,Phys.Rev.Materials 3,064201(2019年6月7日)は、Si(111)上に(012)配向を有するBiSb合金膜、並びにSi(111)基板上の純粋なBi<20Åの(012)テクスチャ化超薄膜を成長させた。
【0007】
N.Eustathopoulosの「Wetting by Liquid Metals-Application in Materials Processing:The Contribution of the Grenoble Group」、Metals2015,5(1),350-370は、液体金属が、一般に、低いバンドギャップを有するか、又は高い共有結合凝集力でいくらか導電性である遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物、及び酸化物材料を濡らすことを認識した。この濡れ挙動は、そのような低バンドギャップ又は導電性セラミックと、その溶融温度(Tm)付近又はそれ以上の低溶融点BiSbX液体合金との界面、又はそのTm付近又はそれ以上の液体メタルBiSbXマトリックス中の酸化物、炭化物、及び窒化物の低バンドギャップ又は導電性セラミック層のナノ粒子の境界付近で予想される。
【0008】
T.Frolov、D.Olmsted、M.Asta、及びY.Mishin.の「Structural phase transformations in metallic grain boundaries」,Nature Communications,vol.4,1899(2013)は、分子動力学シミュレーションを使用して、粒界(GB)がアニーリング温度の関数として転位(格子欠陥)を蓄積すること、及びGBが温度とともに幅を増加させ、溶融温度よりも十分に低いGBの完全な濡れを伴って予備溶融することを見出した。したがって、ガラス形成材料のより厚い又はより広い粒界は、より多くの粒子分離、及びGBにわたるSbもしくはBi又は一般的な金属移動に対する増加した抵抗を生成し、より高い温度が利用されることを可能にする。
【0009】
J.Berry、K.R.Elder、及びM.Grantの「Molecular Dynamic Simulation Literature such as:A phase field crystal study」Phys Rev.B、77、224114、2008;転位及び粒界での溶融、並びに粒界の完全な濡れを伴う転位及び他の欠陥のその予備溶融は、バルク溶融温度Tmよりもかなり低い温度で起こる。O.Kogtenkova、B.Straumal、A.Korneva、T.Czeppe、A.Wierzbicka-Miernik、M.Faryna、及びP Ziebaの「Grain Boundary Complexions and Phase Transformations in Al-and Cu-based Alloys」,Metals,2019,9(1),10.は、NiCu粒界予備溶融及び湿潤がTmより600℃を超えて下で起こることを示した。
【0010】
P.Buffat及びJ-P.Borelの「Size effect on the melting temperature of gold particles」,Phys Rev.A,Vol.13,Num.6,1976,2287-2298は、Auのナノ粒子がバルクAuのTm(約10Åのナノ粒子サイズについては)約1000℃、約20Åのナノ粒子サイズについては約600℃)より下で融解し得ることを最初に示した。P.R.Cantwell、M.Tang、S.J.Dillon、J.Luo、G.S.Rohrer、及びM.P.Harmerの「Grain boundary complexions」,Acta Materialia,62,(2014),1-48は、すべてバルク温度Tm値よりかなり下での、表面及び界面溶融、ナノ粒子溶融及び転位予備溶融並びに完全な粒界湿潤のサイズ依存性についての総説論文であった。Tanaka T,Hara S.Z,Metallkd 2001;92:1236は、BiCu二元合金ナノ粒子固相線-液相線もサイズ依存性であり、合金バルクTmより約600℃低い温度で融解することを示した。
【0011】
薄膜堆積の当業者は、主に、高度に凝集性の酸化物、炭化物、及び窒化物セラミックの原子のクラスタを金属合金と共堆積させることができる。そのようなセラミックの原子のクラスタは、依然としていくらかの凝集を保持し、原子のクラスタとして金属マトリックス中に埋め込むことができる。上記の先行技術から、小さな原子のクラスタは小さなナノ粒子として挙動する。セラミッククラスタが、低いバンドギャップ又は金属結合を示す材料からのものであるか、又は導電性である場合、これらのクラスタの境界は、クラスタの溶融点付近又はそれを超えるBiSbX合金のような液体金属によって濡らすことができる。これらの原子のクラスタは、粒界GBに合体し、原子のクラスタのサイズが小さいことを考慮すると、それらのバルクTmよりも十分に低い温度で溶融して、GBにおいて、場合によっては、セラミックの元のバルクTmよりも約1000℃低い温度で非晶質ガラスを形成することができる。融点付近又はそれを超える温度は、GBを広げ、GBを通るBi及びSbの移動に対するより良好な耐性を提供する。したがって、約1400℃のバルクTmを有するセラミックは、GBで溶融し、約400℃でガラスを形成することができ、これは、BiSbX合金の溶融温度よりも十分に高いが、MRAMデバイスに必要なプロセス温度内である。
【0012】
したがって、高スピンホール角及び高い導電性を有するBiSbX合金のような低溶融点トポロジカル絶縁体(TI)の改善されたプロセス温度、並びに高スピンホール角及び高い導電性を有するTI層を有する改善されたデバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、概して、トポロジカル絶縁体(TI)変調層を備えるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスに関する。TI変調層は、複数のビスマス又はビスマスリッチ組成変調層と、(012)結晶配向を有するBiSbを含む複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層とを含む。TIラメラ層は、ドーパント又は原子のクラスタを含み、原子のクラスタは、高度に凝集性の炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含む。原子のクラスタは、粒界において約400℃未満の粒界ガラス形成温度を有するように構成される(バルク溶融温度は約1400℃を超える)。(012)結晶配向を有するBiSbを含むTIラメラ層を、凝集性の高い炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含む原子のクラスタでドーピングすることにより、SOT MTJデバイスは、TIラメラ層のBiSbからのSbの移動を抑制しながら、より高い温度で動作することが可能になる。
【0014】
一実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスは、トポロジカル絶縁体(TI)変調層を備え、TI変調層は、約96%~約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチビスマスアンチモン(BiSb)組成変調層と、複数のTIラメラ層であって、TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、原子のクラスタが、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含み、原子のクラスタが、約1400℃未満のバルク溶融温度を有する粒界において約400℃未満の粒界ガラス形成温度を有するように構成される、複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層とを備える。
【0015】
別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、TI変調層を備え、TI変調層は、約96%から約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチ組成変調層と、(012)の結晶配向を有するビスマスアンチモン(BiSb)を含む複数のTIラメラ層であって、TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、原子のクラスタが、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含む、複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層であって、各テクスチャリング層がTIラメラ層間に交互に積層された複数のテクスチャリング層と、を備える。
【0016】
更に別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、バッファ層と、バッファ層の上に配置された中間層と、バッファ層と中間層との間に配置されたTI変調層とを備え、TI変調層は、約96%から約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチビスマスアンチモン(BiSb)組成変調層と、(012)の結晶配向を有するBiSbを含む複数のTIラメラ層であって、TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、原子のクラスタが炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含み、各TIラメラ層が2つのビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層と接触して配置される複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層であって、各テクスチャリング層が2つのビスマスリッチ組成変調層と接触して配置される複数のテクスチャリング層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、簡潔に上で要約した本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによってなされ得、それらのいくつかが添付の図面に例示されている。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを例示し、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではなく、本開示が他の同等に有効な実施形態を認め得ることに留意すべきである。
【
図1】SOT MTJデバイスを有するMAMR書込みヘッドを含む磁気媒体ドライブの特定の実施形態の概略図である。
【
図2】SOT MTJデバイスを有する読取り/書込みヘッドの特定の実施形態の部分断面側面図である。
【
図3A】様々な実施形態によるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを示す図である。
【
図3B】様々な実施形態によるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを示す図である。
【
図4A】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに利用され得るTI変調層の例示的な多層構造を示す図である。
【
図4B】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに利用され得るTI変調層の例示的な多層構造を示す図である。
【
図5A】TI変調層及びテクスチャリング層のTIラメラ層の例示的な積層構造を深さの関数として示す図である。
【
図5B】TI変調層及びテクスチャリング層のTIラメラ層の例示的な積層構造を深さの関数として示す図である。
【
図5C】TI変調層及びテクスチャリング層のTIラメラ層の例示的な積層構造を深さの関数として示す図である。
【
図6A】TI積層の溶融前後の結晶粒構造を修正する能力を示す図である。
【
図6B】TI積層の溶融前後の結晶粒構造を修正する能力を示す図である。
【
図7】参照文献、P.Buffat及びJ-P Borel,Phys Rev.A,Vol.13,Num.6,1976から取られた、Au粒子のナノ結晶の直径に対する、Kでの溶融温度を示すグラフであり、Auメルトのナノ結晶の融点がバルク溶融温度(Tm)よりも十分に低いことを示している。
【
図8A】3倍fcc(111)テクスチャリング層を利用して、BiSb(012)エピタキシ及び界面粗さを改善することを示すグラフである。
【
図8B】bcc(100)Cr、Ta、W、B2(100)NiAl、及びfcc(100)MgOの様々な4倍テクスチャリング層の利用を示すグラフであり、これらは、BiSb層においてBiSb(012)テクスチャを生成するために使用することができる。
【
図8C】bcc(100)Cr、Ta、W、B2(100)NiAl、及びfcc(100)MgOの様々な4倍テクスチャリング層の利用を示すグラフであり、これらは、BiSb層においてBiSb(012)テクスチャを生成するために使用することができる。
【
図8D】4重(100)テクスチャリング層を使用して高度にテクスチャリングされた(012)BiSb層を生成することを示すグラフである。
【
図8E】(100)テクスチャを有するMgO(100)膜を示す
図8Dのグラフを引き延ばした図であり、MgO膜の粒径は小さいので、ピークは、面外2θXRDプロットにおいて42度付近で広く現れる。
【
図9A】マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)書込みヘッドにおいて使用するためのSOTデバイスの概略断面図である。
【
図9B】
図9AのSOTデバイスを有するMAMR書込みヘッドの一部の特定の実施形態の概略MFS図である。
【
図9C】
図9AのSOTデバイスを有するMAMR書込みヘッドの一部の特定の実施形態の概略MFS図である。
【
図10】磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイスとして用いられるSOT MTJの概略断面図である。
【0018】
理解を容易にするために、図面に共通する同一の要素を示すために、可能な限り、同一の参照番号を使用している。一実施形態で開示される要素は、特に断ることなく、他の実施形態に有益に利用され得ることが企図される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本開示の実施形態を参照する。しかしながら、本開示は、具体的に説明される実施形態に限定されないことを理解されたい。その代わりに、以下の特徴及び要素の任意の組合せが、異なる実施形態に関連するか否かに関わらず、本開示を実施及び実践すると企図される。更に、本開示の実施形態は、他の可能な解決策に勝る、及び/又は先行技術に勝る利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、以下の態様、特徴、実施形態、及び利点は、単なる例示に過ぎず、請求項(複数可)に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定と見なされない。同様に、「本開示」への言及は、本明細書に開示される任意の発明の主題の一般化として解釈されるものではなく、請求項に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定であると見なされるべきではない。
【0020】
本開示は、概して、トポロジカル絶縁体(TI)変調層を備えるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスに関する。TI変調層は、複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層と、(012)結晶配向を有するBiSbを含む複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層とを含む。TIラメラ層は、ドーパント又は原子のクラスタを含み、原子のクラスタは、炭化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、窒化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、酸化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、又は複合セラミック材料を含む。原子のクラスタは、粒界において約400℃未満の粒界ガラス形成温度を有するように構成される(バルク溶融温度は約1400℃を超える)。(012)結晶配向を有するBiSbを含むTIラメラ層を、炭化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、窒化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、酸化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、又は複合セラミック材料を含む原子のクラスタでドーピングすることにより、SOT MTJデバイスは、TIラメラ層のBiSbからのSb又はBiの移動を抑制しながら、より高い温度で動作することが可能になる。
【0021】
本開示の実施形態は、概して、(012)配向を有するトポロジカル絶縁体(TI)層への原子のクラスタの導入に関する。堆積中の原子のクラスタの導入は、粒界体積を高め、TI粒子分離を改善することができ、その結果、粒界(GB)は、反応性TI成分の移動に対して追加のエネルギー障壁を提供することができる。
【0022】
TIがビスマスアンチモン(BiSb)である例では、GBはアンチモン(Sb)が移動するのを防ぐことができる。アンチモン(Sb)は高反応性であり、高凝集性セラミックGBは、(012)配向におけるBiSbの成長を促進しながら、BiSb層と外部材料との間の化学的相互作用を低減する低反応性媒体を提供する。
【0023】
(012)配向を有する従来のBiSb層は、大きなスピンホール角効果及び高い導電性を有する。(012)配向を有するBiSb層を使用して、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを形成することができる。例えば、(012)配向を有するBiSb層は、磁気記録ヘッド内のスピン軌道トルクデバイス内のスピンホール層として、例えば、読取りヘッド及び/又はマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)書込みヘッドの一部として使用することができる。別の例では、(012)配向を有するBiSb層を、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイスにおけるスピンホール電極層として使用することができる。SOT MTJデバイスは、垂直スタック構成又は面内スタック構成とすることができる。SOT MTJデバイスは、例えば、MAMR書込みヘッド、MRAM、人工知能チップ、及び他の用途において利用することができる。(012)配向を有するトポロジカル絶縁体(TI)変調層複合体304は、(001)配向を有するBiSb層よりも、SOT MTJデバイスにおいてより高いスピンホール角及びより高い性能を有する。
【0024】
図1は、SOT MTJデバイスを有するMAMR書込みヘッドを含む磁気媒体ドライブ100の特定の実施形態の概略図である。そのような磁気媒体ドライブは、単一のドライブであり得るか、又は複数のドライブを含み得る。説明を容易にするために、特定の実施形態による単一のディスクドライブ100が示されている。図示のとおり、少なくとも1つの回転可能な磁気媒体112は、スピンドル114に支持され、ディスク駆動モータ118によって回転される。各磁気ディスク112上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンなどの、データトラックの任意の好適なパターンの形態である。
【0025】
少なくとも1つのスライダ113は、磁気媒体112の近傍に配置され、各スライダ113は、SOTデバイスを含む1つ又は複数の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスク112が回転すると、スライダ113は、磁気ヘッドアセンブリ121が、所望のデータが書き込まれる磁気ディスク112の異なるトラックにアクセスすることができるように、ディスク表面122の上方で半径方向において中及び外に移動する。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115は、スライダ113をディスク表面122に向かって付勢するわずかなばね力を提供する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に取り付けられる。
図2に示されるようなアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモータ(VCM)であり得る。VCMは、固定磁場内で移動可能なコイルを含み、コイル移動の方向及び速度は、制御ユニット129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0026】
ディスクドライブ100の動作中、磁気ディスク112の回転は、スライダ113とディスク表面122との間に空気軸受を生成し、これがスライダ113に上向きの力又は揚力を作用させる。したがって、空気軸受は、サスペンション115のわずかなばね力と相殺し、通常の動作中、スライダ113をディスク表面122から、小さい、実質的に一定の間隔だけ離して、ディスク表面122のわずかに上方で支持する。
【0027】
ディスクドライブ100の各種構成要素は、アクセス制御信号及び内部クロック信号などの、制御ユニット129によって生成された制御信号によって動作制御される。典型的には、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶手段、及びマイクロプロセッサを備える。制御ユニット129は、ライン123のドライブモータ制御信号及びライン128のヘッド位置及びシーク制御信号など、様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113を媒体112上の所望のデータトラックに最適に移動及び配置するため、所望の電流プロファイルを提供する。書込み及び読取り信号は、記録チャネル125によってアセンブリ121上の書込み及び読取りヘッドへ/から通信される。
【0028】
典型的な磁気媒体ドライブについての上記説明、及びそれに係る
図1の図示は、あくまで例示の目的のためのものである。磁気媒体ドライブが、多数の媒体又はディスク、及びアクチュエータを含み得、各アクチュエータが、多数のスライダを支持可能であることは明らかであろう。
【0029】
図2は、SOT MTJデバイスを有する読取り/書込みヘッド200の特定の実施形態の部分断面側面図である。読取り/書込みヘッド200は磁気媒体112に面している。読取り/書込みヘッド200は、
図1に示す磁気ヘッドアセンブリ121に対応し得る。読取り/書込みヘッド200は、ディスク112に対向するガスベアリング面などの媒体対向面(MFS)212と、MAMR書込みヘッド210と、磁気読取りヘッド211とを含む。
図2に示すように、磁気媒体112は、矢印232によって示される方向に、MAMR書込みヘッド210を通過して移動し、読取り/書込みヘッド200は、矢印234によって示される方向に移動する。
【0030】
いくつかの実施形態では、磁気読取りヘッド211は、磁気抵抗(magnetoresistive、MR)読取りヘッドであり、MRシールドS1とS2との間に位置付けられるMR感知素子204を含む。他の実施形態では、磁気読取りヘッド211は、磁気トンネル接合(MTJ)読取りヘッドであり、MRシールドS1とS2との間に位置付けられるMTJ感知デバイス204を含む。磁気媒体112内の隣接する磁化領域の磁場は、記録ビットとしてMR(又はMTJ)感知素子204によって検出可能である。様々な実施形態のSOT MTJデバイスは、読取りヘッド211に組み込むことができる。
【0031】
MAMR書込みヘッド210は、主極220と、リーディングシールド206と、トレーリングシールド240と、スピン軌道トルク(SOT)デバイス250と、主極220を励起するコイル218とを含む。コイル218は、
図2に示される「らせん」構造の代わりに、主極220とトレーリングシールド240との間の後部接触の周りに巻き付ける「パンケーキ」構造を有し得る。SOTデバイス250は、主極220とトレーリングシールド240との間のギャップ254に形成される。主極220は、トレーリングテーパ242及びリーディングテーパ244を含む。トレーリングテーパ242は、MFS212から凹んだ位置からMFS212まで延びている。リーディングテーパ244は、MFS212から凹んだ位置からMFS212まで延びている。トレーリングテーパ242及びリーディングテーパ244は、同程度のテーパを有してもよく、テーパの程度は、主極220の長手方向軸260に対して測定される。
【0032】
いくつかの実施形態では、主極220はトレーリングテーパ242及びリーディングテーパ244を含まない。代わりに、主極220は、トレーリング側(図示せず)及びリーディング側(図示せず)を含み、トレーリング側及びリーディング側は、実質的に平行である。主極220は、FeCo合金などの磁性材料であり得る。リーディングシールド206及びトレーリングシールド240は、NiFe合金などの磁性材料であり得る。特定の実施形態において、トレーリングシールド240は、トレーリングシールドホットシード層241を含むことができる。トレーリングシールドホットシード層241は、CoFeN又はFeXNなどの高モーメントスパッタ材料を含むことができ、ここで、Xは、Rh、Al、Ta、Zr、及びTiのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、トレーリングシールド240は、トレーリングシールドホットシード層を含まない。
【0033】
図3A及び
図3Bは、様々な実施形態によるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイス300、301を示す。SOT MTJデバイス300、301はそれぞれ、
図1のドライブ100のMAMR書込みヘッド、
図2の読取り/書込みヘッド200、又は他の適切な磁気媒体ドライブにおいて個々に使用され得る。
【0034】
図3Aは、一実施形態による、SOT MTJデバイス300を示している。SOT MTJデバイス300は、基板302と、基板302上に配置されたバッファ層310と、バッファ層310上に配置された(012)の結晶配向を有するビスマスアンチモン(BiSb)を含むTI変調層304と、TI変調層304上に配置された中間層320と、中間層320上に配置されたトンネル磁気抵抗(TMR)様自由層322と、TMR様自由層322上に配置されたMgO層324とを備える。
【0035】
図3Bは、一実施形態による、逆SOT MTJデバイス301を示す。SOT MTJデバイス301は、基板302と、基板302上に配置されたMgO層324と、MgO層324上に配置されたTMR様自由層322と、TMR様自由層322上に配置されたバッファ層310と、バッファ層310上に配置された(012)の結晶配向を有するBiSbを含むTI変調層304と、TI変調層304上に配置された中間層320とを備える。SOT MTJデバイス300、301は、異なる配置で同じ層302、304、310、320、322、及び324を備える。
【0036】
基板302は、シリコン基板又はアルミナ基板とすることができる。シリコン基板302は、(111)、(100)、(100)、又は他の結晶配向の立方晶構造を有する。アルミナ基板302は、(001)配向又は他の結晶配向を有する六方晶系構造を有するか、又は非晶質構造を有する。基板302は、ベア基板であってもよいし、その上に熱成長又は堆積された酸化物層など、その上に形成された1つ又は複数の層を有してもよい。
【0037】
一実施形態において、中間層320は、バッファ層310と同じ材料であってもよい。例えば、
図3A及び
図3Bに示すように、中間層320及びバッファ層310は、それぞれ個別に、結晶性又は非晶質材料の単一層を含むことができる。別の例では、中間層320及びバッファ層310は、それぞれ個別に、結晶材料及び/又は非晶質材料の複数の層を含むことができる。別の実施形態では、中間層320及びバッファ層310はそれぞれ個別に、1つ又は複数の異なる材料を含む。
【0038】
バッファ層310及び中間層320は、
図4A及び
図4Bにおいて以下で更に説明するように、それぞれ個別に多層構造であってもよい。一実施形態では、バッファ層310及び/又は中間層320は、非晶質金属層又は共有結合非晶質層である。共有結合した非晶質材料は、共有結合した炭化物、共有結合した酸化物、又は共有結合した窒化物、又は複合セラミックのうちの1つを含み得る。共有結合された非晶質材料又は金属非晶質層は、約3.5Å~3.8Åの格子定数(a
fcc)を有する立方fcc格子の(111)d間隔に対応する約2.0Å~2.2Åの最近傍XRD回折ピークを有するべきであり、金属又は共有結合された非晶質材料は、約a
fccを2の平方根で割ったものに等しい最近傍距離を有する。共有結合された非晶質材料は、低いバンドギャップを有するか、金属結合を示すか、又はいくらか導電性であるべきである。
【0039】
いくつかの実施形態では、バッファ層310及び中間層320はそれぞれ、材料がイオン性化学物質よりもTI変調層304と相互作用する可能性が低いように、1つ又は複数の高凝集性結合材料を個々に含む。
図4A及び
図4Bにおいて以下で更に説明するように、バッファ層310及び中間層320は、それぞれ個別に、高凝集性共有結合非晶質材料、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)又は規則B2立方晶(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、非晶質金属材料、fcc(111)テクスチャ材料、六方最密充填(hcp)(002)テクスチャ材料、及び前述の材料のいずれか1つ又は複数の層状の組合せからなる群から選択される1つ又は複数の材料を含むことができる。fcc(100)、bcc(100)、正方晶(001)、及び正方晶(110)材料の各々は、低いバンドギャップを有するか、金属結合を示すか、又はいくらか導電性であるべきである。
【0040】
非晶質金属材料は、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにNi、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択された1つ又は複数の元素を有するこれらの合金の組合せからなる群から選択することができる。
【0041】
テクスチャ(100)層は、(1)RuAl、及び(2)いくつかの選択肢(2a)250℃以上の温度で堆積する、(2b)X=Ru、Mo、W、Ti<10原子パーセント(at.%)である加熱されたCrX合金内、(2c)nが約20at.%から約50at.%である、CrMon、又は(2d)加熱されたCr/CrMonの積層体において又はCrMon/Cr/CrMonの積層のスタック(例えば、約200℃以下まで加熱される)、並びに(2e)NiAl及びRhAlなどの他のB2相材料との組合せに従って組み込まれたCrからなる群から選択されてもよい。
【0042】
正方晶(001)又は(110)材料は、約4.4Å~約4.75Åの範囲内のa軸、及び約2.86Å~約3.19Åの範囲内のc軸を有し得る。正方晶(001)又は(110)材料は、約4.20Å~約4.75Åの範囲内のa軸格子パラメータを有し得る。正方晶(001)又は(110)材料は、SbO2、TiO2、IrO2、RuO2、CrO2、VO2、OsO2、RhO2、PdO2、WVO4、CrNbO4、SnO2、GeO2、ZnNb、及びZnTa、それらの複合材料、並びにW、Ta、及びNbからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するそれらの合金からなる群から選択することができる。
【0043】
fcc(100)材料は、約4.08Å~約4.75Åの範囲の格子パラメータを有し得る。fcc(100)材料は、(1)岩塩型立方晶、(2)FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、及びWCからなる群から選択されるfcc(100)材料、(3)CoO、SiC、GaN、FeN、及びZnOからなる群から選択される閃亜鉛鉱立方晶fcc(100)材料、並びに(4)それらの(1)、(2)、及び/又は(3)と、W、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素との複合材料の組合せから選択され得る。言い換えれば、fcc(100)材料は、FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、CoO、SiC、GaN、FeN、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。
【0044】
bcc(100)材料は、V、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、Al10Nb40Ti50、Cr、CrMo、B2相のRuAl、B2相のNiAl、並びにTi、Al、Pd、Pt、Ni、Fe、及びCrからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの合金の組合せからなる群から選択されてもよい。
【0045】
共有結合した非晶質材料は、共有結合した炭化物、共有結合した酸化物、共有結合した窒化物、又はそれらのセラミック複合材料のうちの1つを含んでもよい。共有結合した非晶質材料は、約3.5Å~3.8Åのafccを有するafcc結晶構造からの(111)d間隔に対応し得る、約2.0Å~約2.2Åのd間隔を有する最近傍XRD回折ピークを有するべきである。高度に凝集性の共有結合した非晶質材料は、低いバンドギャップを有するか、又は金属結合を示すか、又はいくらか導電性であるべきである。
【0046】
fcc(111)テクスチャリング材料は、3.49Å<afcc<3.71Åの範囲のa軸を有する任意の材料から選択することができ、あるいはhcp(002)テクスチャリング材料は、2.47Å<ahcp<2.63Åの範囲のa軸を有する任意の材料から選択することができる。
【0047】
図4A及び
図4Bは、様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス300、301とともに利用され得るTI変調層304の例示的な多層構造を示す。
図4A及び
図4Bは、
図3AのSOT MTJデバイス300において利用されているTI変調層304を示すが、
図4A及び
図4BのTI変調層304a、304bは、
図3BのSOT MTJデバイス301においても利用することができる。TI変調層304aとTI変調層304bとの両方は、
図3A及び/又は
図3BのTI変調層304であってもよい。
図4A及び
図4Bに示すように、TI変調層304a、304bは、1つ又は複数のBi又はBiリッチBiSb組成変調層402と、1つ又は複数のテクスチャリング層408と、低いバンドギャップを有するか、金属結合を示すか、又はいくらか導電性である炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含む原子のクラスタ406と共堆積された1つ又は複数のTIラメラ層404とを含んでもよい。1つ又は複数のBi又はBiリッチBiSb組成変調層402は、約96%~約100%の原子パーセントのBiを含む。
【0048】
以下で更に説明するように、TIラメラ層404は、(012)結晶配向412を有するBiSbと、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含むドーパント又は原子のクラスタ406とを含む。TIラメラ層404は、
図5A~
図5Cにおいて以下で更に説明するように、BiSbラメラ412及びドーパントラメラ406を含む積層構造であってもよい。
【0049】
図4Aに例示されるように、TIラメラ層404は、テクスチャリング層408と交互に積層されてもよく、Bi又はBiリッチBiSb組成変調層402の間に配置されてもよい。したがって、
図4Aに示す一実施形態では、TI変調層304aは、バッファ層310上に配置された第1のBiリッチ組成層402と、第1のBiリッチ組成層402上に配置された第1のTIラメラ層404と、第1のTIラメラ層404上に配置された第1のテクスチャリング層408と、第1のテクスチャリング層408上に配置された第2のTIラメラ層404と、第2のTIラメラ層404上に配置された第2のテクスチャリング層408と、第2のテクスチャリング層408上に配置された第3のTIラメラ層404と、第3のTIラメラ層404上に配置された第2のBi又はBiリッチBiSb組成層402と、を含む。3つのTIラメラ層404、2つのテクスチャリング層408、及び2つのBiリッチ組成物層402が
図4Aに示されているが、TI変調層304aは、より少ない又は追加のTIラメラ層404、テクスチャリング層408、及びBi又はBiリッチBiSb組成物層402を含んでもよい。
【0050】
図4Bは、別の実施形態による、TI変調層304bの別の例示的な構成を示す。
図4Bにおいて、TIラメラ層404は、Bi又はBiリッチBiSb組成物層402(すなわち、約96%~約100%の原子パーセントでBiを含む)の間に挟まれ、次にテクスチャリング層408と交互に積層される。言い換えれば、
図4BのTI変調層304は、
図4AのTI変調層304aと同様である。しかしながら、テクスチャリング層408の各々は、2つのBiリッチ組成物層402の間に配置され、2つのBiリッチ組成物層402と接触している。
図4A及び
図4Bは、可能なTI変調層304構造の例であるが、TI変調層304内の層402、404、408の配置は、
図4A及び
図4Bの例に限定されない。
【0051】
テクスチャリング層408は、共有結合炭化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力を含む非晶質材料、共有結合酸化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、共有結合窒化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、面心立方晶(fcc)(100)テクスチャリング材料、正方晶(001)テクスチャリング材料、正方晶(110)テクスチャリング材料、体心立方晶(bcc)(100)テクスチャリング材料、fcc(111)テクスチャリング材料、及びhcp(002)テクスチャリング金属からなる群から選択することができる。共有結合した炭化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、共有結合した酸化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力、又は共有結合した窒化物を形成するための高い凝集性及び高い化学親和力を含む非晶質材料を含むテクスチャリング層408は、BiSbX合金と強いイオン結合又は共有化学結合を形成し、その結果、炭化物、窒化物、及び/又は酸化物は、結合したままであり、次いで解離してBiSbX合金と反応するのによりエネルギー的に有利である。
【0052】
テクスチャリング層408に使用される非晶質材料は、共有結合炭化物、共有結合酸化物、共有結合窒化物、又は非晶質金属層を含むことができ、約3.5Å~3.8Åのafccを有するafcc結晶構造からの(111)d間隔に対応し得る、約2.0Å~約2.2Åのd間隔を有する最近傍XRD回折ピークを有する。共有結合した非晶質材料を形成するための高い化学親和力(炭素、酸素、又は窒素に対する)を有する高い凝集性は、低いバンドギャップを有するか、又は金属結合を示すか、又はいくらか導電性であるべきである。
【0053】
テクスチャリング層408に使用されるfcc(100)テクスチャリングされた材料は、(1)FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、及びWC;CoO、SiC、GaN、FeN、及びZnOからなる群から選択される閃亜鉛鉱立方晶fcc(100)材料;並びに(3)その(1)及び(2)と、W、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素との複合材料の組合せからなる群から選択され得る。言い換えれば、fcc(100)テクスチャリング材料は、FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、CoO、SiC、GaN、FeN、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。
【0054】
fcc(111)テクスチャリング材料は、3.49Å<afcc<3.71Åの範囲のa軸を有する任意の材料から選択することができ、あるいはhcp(002)テクスチャリング材料は、2.47Å<ahcp<2.63Åの範囲のa軸を有する任意の材料から選択することができる。
【0055】
テクスチャリング層408に使用される正方晶(001)及び(110)テクスチャリング材料は、SbO2、TiO2、IrO2、RuO2、CrO2、VO2、OsO2、RhO2、RhO2、PdO2、WVO4、CrVO4、CrNbO4、SnO2、GeO2、Zn、Ti、Nb、及びTaの元素とのそれらの組合せ、並びにそれらの複合材料の組合せからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、TIラメラ層404内のドーパント又は原子のクラスタ406は、正方晶材料、又は炭素、酸素、もしくは窒素に対して高い化学親和力を有する任意の高い凝集性を含み、低いバンドギャップを有するセラミック材料、BiSbとの強いもしくは共有化学結合、金属結合を示す材料、又はいくらか導電性であり、約1400℃を超える溶融温度を有する材料を形成する。
【0056】
TIラメラ層404は、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含むドーパント又は原子のクラスタ406と同時スパッタリングされた(012)配向412を有するBiSbを含む。ドーパント又は原子のクラスタ406が複合セラミック材料を含む場合、複合セラミック材料は、Bi、Pb、Ga、Sc、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、In、Ir、Ru、V、Os、Rh、Pd、WV、CrV、CrNb、Ge、Zn、ZnNbTi、ZnTiTa、Co、Mg、Sn、Sb、Te、Hf、Ta、W、それらの酸化物、それらの窒化物、それらの炭化物、及びそれらの複合セラミックの組合せからなる群から選択することができる。
【0057】
ドーパント又は原子のクラスタ406は、例えば、Bi、Sn、Sb、Pd、Inの酸化物のような低融点セラミックであってもよく、そのようなバルクセラミックは、低い融点を有し、いずれかの低いバンドギャップを有する高い酸素親和性を有する凝集性共有結合構造を形成するか、又は金属結合特性を示すか、又は高い抵抗率を伴っていくらか導電性である。これらのクラスタは、一般に、クラスタとして留まり、解離せず、BiSbX金属と反応せず、容易に合体し、粒界で酸化物ガラスを形成することを好む。上述の低溶融セラミック原子のクラスタは、BiSbX合金及びその合金のような低溶融点TI金属によって湿潤され、BiSbX合金の処理温度を上昇させるとともにSb及び/又はBiの熱移動を改善するはずの粒界において合体し、セラミックガラスを形成する。セラミッククラスタは、BiSbX合金と結合する傾向がなく、熱移動粒界バリアとして働く強いイオン結合又は共有結合構造を形成するために、炭素、酸素、又は窒素に対して凝集性の高い化学親和力を形成する。より低い融点の粒界セラミックガラスは、製造プロセスにおいて高温が必要とされる場合にいくつかの工学的利点を提供し得るか、又はより良好な材料特性の妥協、もしくはSOTデバイスの構築の容易さを提供し得る。
【0058】
ドーパント又は原子のクラスタ406は、約1400℃未満の溶融温度を有してもよい。原子のクラスタのサイズが小さいこと及び合金の相互作用により、原子のクラスタの融点は実質的に低下し得る。原子のクラスタは、約400℃未満の粒界ガラス形成温度を有するように構成されてもよい。TIラメラ層404を原子のクラスタ406でドーピングすることは、TIラメラ層404におけるBiSbX粒子成長を低減し、BiSb(012)テクスチャリング層を有するエピタキシャル成長を提供する。高度の凝集性、炭素、酸素、又は窒素に対する高い化学的親和性、ドーパント又は原子のクラスタ406のイオン結合又は共有化学結合の性質のために、ドーパント又は原子のクラスタ406は、クラスタとして留まり、TIラメラ層404のBiSbX合金と最小限の化学的相互作用を有する傾向があり、それによって、MTJ SOTデバイス300、301における結晶粒成長を低減し、粗さを改善しながら、Sbの移動に対する界面層バリアを提供する。
【0059】
TIラメラ層404の各々は、SOT MTJデバイスの成長粗さ及び全体的なスタック粗さを改善するために、低エネルギー及び視射角プラズマ処理(PT)で処理され得る。原子のクラスタ406は、高い熱移動度を有する低融点合金であってもよく、原子のクラスタの少なくともいくらかは、同時スパッタリング中に酸化される。SOT MTJデバイス300、301を形成する方法は、ポストアニーリングを含むことができる。アニーリングプロセスは、原子のクラスタを溶融して、TI粒子の周りにガラス境界を形成する。
【0060】
図5A~
図5Cは、深さの関数としてTI変調及びテクスチャリング層304のTIラメラ層404の例示的な積層構造を深さの関数として示す。
図5A~
図5Cにおいて、ドーパント又は原子のクラスタ406(すなわち、ドーパントXラメラ)は、上述のように、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含み、BiSbラメラ412は、(012)の結晶配向を有するBiSbXを含む。
図5Aは、原子の各クラスタ406が2つのBiSbラメラ412の間にドーピングされた変調構造を示す。
図5Bは、エッジ構造を示し、原子の2つのクラスタ406毎に、3つのBiSbラメラ412が存在する。
図5Cは、BiSbラメラ412及び原子のクラスタ406が均一に分布している均一な構造を示す。
図5A~
図5Cは、BiSbラメラ412内の原子のクラスタ406のドーピングの例であり、TI変調層304は、BiSbラメラ412内への原子のクラスタ406のドーピングの不均一分布の任意の方法を含むことができる。
【0061】
図6A及び
図6Bは、TI積層304の溶融前後の結晶粒構造を修正する能力を示す。TI変調層304は、例えば、MTJ SOTデバイス300、301の使用中に溶融することがある。
図6Aは、BiSbラメラ412の堆積と、それに続く原子のクラスタ406の薄い均一な堆積を示す。
図6Aに示すように、原子のクラスタ406は、BiSbラメラ412上にランダムに配置されている。
図6Bは、BiSbラメラ412の成長及びアニール後の原子のクラスタ406の分布を示す。
図6Bに示すように、原子のクラスタ406は、BiSbラメラ412の粒界614に移動し、その結果、粒界614が熱移動に対して強化されると同時に、Sbの移動に対する追加のバリアが提供される。ドーパント又は原子のクラスタ406は、BiSbXラメラ412の堆積時の粒径を減少させ、ポストアニール時の結晶粒粗大化によって結晶粒界614への熱移動を可能にする。
【0062】
図7は、Auナノ粒子の直径に対するKでのAuのナノ粒子の溶融温度を示すグラフ700である。この挙動は、一般に、フィーチャサイズ、粒子サイズ、又はクラスタサイズが低減され、これらのフィーチャを形成するために使用される材料の溶融も低減されるとき、すべての材料に当てはまる。Auの場合、溶融温度は、10Åの粒径については1000℃、又は20Åの粒径については600℃である。文献は、このことが、薄い表面層又は界面層、並びに粒界の予備溶融及び完全な濡れが材料のバルク溶融温度よりも十分に低い温度で達成され得る粒界にも当てはまることを示している。ドーパント又は原子のクラスタ406は、堆積されたままのBiSbXラメラ412の粒径を小さくすることができる。しかしながら、溶融すると、TI変調層304は室温で大きな粒径に戻り、適切なバッファ310、テクスチャ408、及び中間層320により、TI変調層304は、溶融後にその結晶構造及びその(012)テクスチャの大部分を保持する。
【0063】
図8Aは、成長中のエピタキシを改善するために(111)テクスチャリングされたテクスチャリング層を利用して界面粗さを改善することを示すグラフ800である。約8度の半値全幅(FWHM)の最も高いテクスチャは、約8Å未満の最も低い界面粗さを有する。層310、320、及び408は、3.49Å<a
fcc<3.71Åの範囲の格子間隔を有する3重fcc(111)テクスチャリング材料、又は2.47Å<a
hcp<2.63Åの範囲のa軸を有するhcp(002)テクスチャリング材料とすることができる。
【0064】
図8B及び
図8Cは、それぞれ、BiSb(012)テクスチャを生成するために使用することができる4重テクスチャリング層の例を示すグラフ801、803である。
図8Dは、高度にテクスチャリングされたBiSb(012)膜を生成する4重テクスチャリング層の例を示すグラフ805である。
図8Eは、
図8Dのグラフ805の引き延ばした部分を示すグラフ807であり、25Å厚のMgOテクスチャリング膜が(100)テクスチャを有することを示す。
【0065】
図9Aは、
図1のドライブ100又は他の適切な磁気媒体ドライブのMAMR書込みヘッドなどのマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)書込みヘッドにおいて使用するためのSOTデバイス900の概略断面図である。SOTデバイス900は、(012)結晶配向を有するBiSbと、
図3A~
図6BのTI変調層304及びバッファ層310など、基板302上に形成されたバッファ層310上に配置されて形成された炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含むドーパント又は原子のクラスタとを含むTI変調層304を含む。TI変調層304の上にはスピントルク層(STL)970が形成されている。STL970は、CoFe、CoIr、NiFe、及びCoFeX合金(式中、X=B、Ta、Re、又はIr)のうちの1つ又は複数からなる層などの強磁性材料を含む。
【0066】
特定の実施形態において、電流シャントブロック層960は、TI変調層304とSTL970との間に配置される。電流シャントブロッキング層960は、TI変調層304からSTL970に流れる電流を低減するが、TI変調層304とSTL970とのスピン軌道結合を可能にする。特定の実施形態において、電流シャントブロッキング層960は、TI変調層304とSTL970との間に、非磁性材料よりも大きなスピン軌道結合を提供する磁性材料を含む。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層960は、FeCo、FeCoM、FeCoMO、FeCoMMeO、FeCoM/MeOスタック、FeCoMNiMnMgZnFeO、FeCoM/NiMnMgZnFeOスタック、それらの複数の層/スタック、又はそれらの組合せの磁性材料を含み、Mは、B、Si、P、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mo、Mg、Y、Cu、Cr、及びNiのうちの1つ又は複数であり、Meは、Si、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mg、Y、又はCrである。特定の実施形態において、電流シャントブロッキング層960は、約10Å~約100Åの厚さに形成される。特定の態様では、100Åを超える厚さを有する電流シャントブロッキング層960は、TI変調層304とSTL970とのスピン軌道結合を低減することができる。特定の態様では、10Å未満の厚さを有する電流シャントブロッキング層は、TI変調層304からSTL970への電流を十分に低減しない場合がある。
【0067】
特定の実施形態では、スペーサ層980及びピニング層990などの追加の層がSTL970の上に形成される。ピニング層990は、STL970を部分的にピン止めすることができる。ピニング層990は、PtMn、NiMn、IrMn、IrMnCr、CrMnPt、FeMn、他の反強磁性材料、又はそれらの組合せの単一層又は複数層を含む。スペーサ層980は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、他の非磁性材料、又はそれらの組合せの単一又は複数の層を含む。
【0068】
図9B及び
図9Cは、
図9AのSOTデバイス900を有するMAMR書込みヘッド210の一部の特定の実施形態の概略MFS図である。MAMR書込みヘッド210は、
図2の書込みヘッド、又は
図1のドライブ100内の他の適切な書込みヘッド、又はテープドライブなどの他の適切な磁気媒体ドライブとすることができる。MAMR書込みヘッド210は、トラッキング方向に主極220とトレーリングシールド240とを含む。SOTデバイス900は、主極とトレーリングシールド240との間のギャップに配置される。
【0069】
動作時に、スピンホール層として作用するTI変調層304を通る充電電流により、BiSb層にスピン電流が発生する。BiSb層とスピントルク層(STL)970とのスピン軌道結合は、TI変調層304からのスピン電流のスピン軌道結合により、STL970の磁化のスイッチング又は歳差運動を引き起こす。STL970の磁化のスイッチング又は歳差運動は、書込み磁界に対する補助AC磁界を生成することができる。SOTに基づくエネルギー支援書込みヘッドは、スピン転移トルクに基づくMAMR書込みヘッドと比較して、数倍大きい電力効率を有する。
図9Bに示されるように、STL970の磁化方向の容易軸は、STL970の形状異方性から、
図9Aのピニング層990から、及び/又はSTL970に近接するハードバイアス要素から、MFSに垂直である。
図9Cに示されるように、STL970の磁化方向の容易軸は、STL970の形状異方性から、
図9Aのピニング層990から、及び/又はSTL970に近接するハードバイアス要素から、MFSに平行である。
【0070】
図10は、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイス1000として使用されるSOT MTJ1001の概略断面図である。MRAMデバイス1000は、基準層(RL)1010と、RL1010上に配置されたスペーサ層1020と、スペーサ層1020上に配置された記録層1030と、記録層1030上に配置された電流シャントブロック層1040上のバッファ層310と、(012)結晶配向を有するBiSb、バッファ層310上に配置された炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含むドーパント又は原子のクラスタを含むTI変調層304とを含む。TI変調層304及びバッファ層310は、
図3A~
図6BのTI変調層304及びバッファ層310であってもよい。
【0071】
RL1010は、CoFe、他の強磁性材料、又はそれらの組合せの単一又は複数の層を含む。スペーサ層1020は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、他の誘電体材料、又はそれらの組合せの単一又は複数の層を含む。記録層1030は、CoFe、NiFe、他の強磁性材料、又はそれらの組合せの単一又は複数の層を含む。
【0072】
上述したように、特定の実施形態において、電流シャントブロック層1040は、バッファ層310と記録層1030との間に配置される。電流シャントブロッキング層1040は、TI変調層304から記録層1030へ流れる電流を低減するが、TI変調層304と記録層1030とのスピン軌道結合を可能にする。例えば、MRAMデバイスへの書込みは、BiSb層と記録層1030とのスピン軌道結合によって可能にすることができ、これは、TI変調層304からのスピン電流のスピン軌道結合によって記録層1030の磁化のスイッチングを可能にする。特定の実施形態において、電流シャントブロッキング層1040は、TI変調層304と記録層1030との間に、非磁性材料よりも大きなスピン軌道結合を提供する磁性材料を含む。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1040は、FeCoM、FeCoMO、FeCoMMeO、FeCoM/MeOスタック、FeCoMNiMnMgZnFeO、FeCoM/NiMnMgZnFeOスタック、それらの複数の層/スタック、又はそれらの組合せの磁性材料を含み、Mは、B、Si、P、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mo、Mg、Y、Cu、Cr、及びNiのうちの1つ又は複数であり、Meは、Si、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mg、Y、又はCrである。
【0073】
図10のMRAMデバイス1000は、ピニング層、ピニング構造(例えば、合成反強磁性(SAF)ピン止め構造)、電極、ゲート、及び他の構造などの他の層を含むことができる。
図10の構造以外の他のMRAMデバイスは、バッファ層310上に(012)配向を有するTI変調層304を利用して形成して、SOT MTJ1001を形成することができる。
【0074】
(012)結晶配向を有するBiSbを含むTIラメラ層を炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料でドーピングすることによって、ドーパント又は原子のクラスタの融点を実質的に低下させることができ、MTJ SOTデバイスがより高い温度で動作することを可能にしながら、TIラメラ層内のSbの移動を更に低減する。原子のクラスタは、TIラメラ層のBiSbラメラの粒界に移動し、その結果、粒界が熱移動に対して強化される一方で、Sbの移動に対する追加のバリアが提供される。炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料でTIラメラ層をドーピングすることは、TIラメラ層におけるBiSbX結晶粒成長を低減し、BiSb(012)テクスチャリング層を有するエピタキシャル成長を提供する。ドーパント又は原子のクラスタの高い又は強いイオン結合又は共有化学結合の性質のために、ドーパント又は原子のクラスタは、TIラメラ層のBiSbX合金と最小限の化学的相互作用を有し、それによって、MTJ SOTデバイスにおける結晶粒成長を低減し、粗さを改善しながら、Sb移動に対する界面層バリアを提供する。
【0075】
更に、MRAM又はSOTデバイス中間層又はバッファ層に適合するようにTI材料の成長及び(012)テクスチャを維持するために、セラミック-TI積層、組成変調層、及び後に規定される成長テクスチャリング層とともに、ガラス形成粒界が広い粒界で分離するので、低バンドギャップ又は導電性セラミック、又は金属結合を有するセラミックを使用することによって、BiSbXのような低溶融点TI材料を使用して、より高いプロセス温度に達することができる。
【0076】
一実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスは、トポロジカル絶縁体(TI)変調層を備え、TI変調層は、約96%~約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチビスマスアンチモン(BiSb)組成変調層と、複数のTIラメラ層であって、TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、原子のクラスタが、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含み、原子のクラスタが、約1400℃未満のバルク溶融温度を有する粒界において約400℃未満の粒界ガラス形成温度を有するように構成される、複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層とを備える。
【0077】
TIラメラ層は、(012)の結晶配向を有するビスマスアンチモン(BiSb)を含む。複合セラミック材料は、約1400℃未満の溶融温度を有する。テクスチャリング層は、共有結合した炭化物、酸化物、又は窒化物を含む非晶質材料、面心立方晶(fcc)材料、正方晶材料、及び体心立方晶(bcc)材料からなる群から選択される。SOT MTJデバイスは、バッファ層であって、TI変調層がバッファ層の上に配置される、バッファ層と、TI変調層上に配置される中間層とを更に備える。複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第1のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層は、バッファ層に接触して配置され、複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第2のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層は、中間層に接触して配置される。
【0078】
炭化物材料は、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、SiC、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。酸化物材料は、FeO、CoC、ZrO、MgO、TiO、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するそれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。窒化物材料は、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、GaN、FeN、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。複合セラミック材料は、Bi、Pb、Ga、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、In、Ir、Ru、V、Os、Rh、Pd、WV、CrV、CrNb、Ge、ZnNb、ZnTa、Co、Mg、Sn、Sb、Te、Hf、Ta、W、これらの酸化物、これらの窒化物、これらの炭化物、及びこれらの合金からなる群から選択される。磁気抵抗ランダムアクセスメモリデバイスは、SOT MTJを備える。
【0079】
別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、TI変調層を備え、TI変調層は、約96%から約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチ組成変調層と、(012)の結晶配向を有するビスマスアンチモン(BiSb)を含む複数のTIラメラ層であって、TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、原子のクラスタが、炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含む、複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層であって、各テクスチャリング層がTIラメラ層間に交互に積層された複数のテクスチャリング層と、を備える。
【0080】
TIラメラ層は、変調された配向で原子のクラスタと共堆積される。TIラメラ層は、エッジ配向で原子のクラスタと共堆積される。TIラメラ層は、均一又は不均一に分布した配向で原子のクラスタと共堆積される。炭化物材料は、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、SiC、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。窒化物材料は、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、GaN、FeN、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。酸化物材料は、FeO、CoC、ZrO、MgO、TiO、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するそれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。磁気抵抗ランダムアクセスメモリデバイスは、SOT MTJを備える。
【0081】
更に別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、バッファ層と、バッファ層の上に配置された中間層と、バッファ層と中間層との間に配置されたTI変調層とを備え、TI変調層は、約96%から約100%の原子パーセントのビスマスを含む複数のビスマス又はビスマスリッチビスマスアンチモン(BiSb)組成変調層と、(012)の結晶配向を有するBiSbを含む複数のTIラメラ層であって、TIラメラ層が、原子のクラスタと共堆積され、原子のクラスタが炭化物、窒化物、酸化物、又は複合セラミック材料を含み、各TIラメラ層が2つのビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層と接触して配置される複数のTIラメラ層と、複数のテクスチャリング層であって、各テクスチャリング層が2つのビスマスリッチ組成変調層と接触して配置される複数のテクスチャリング層と、を含む。
【0082】
炭化物材料は、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、SiC、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。窒化物材料は、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、GaN、FeN、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するこれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。酸化物材料は、FeO、CoC、ZrO、MgO、TiO、ZnO、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ又は複数の元素を有するそれらの複合材料の組合せからなる群から選択される。複合セラミック材料は、Bi、Pb、Ga、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Zr、Nb、Mo、In、Ir、Ru、V、Os、Rh、Pd、WV、CrV、CrNb、Ge、ZnNb、ZnTa、Co、Mg、Sn、Sb、Te、Hf、Ta、W、これらの酸化物、これらの窒化物、これらの炭化物、及びこれらの合金からなる群から選択される。複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第1のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層は、バッファ層に接触して配置され、複数のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層のうちの第2のビスマス又はビスマスリッチBiSb組成変調層は、中間層に接触して配置される。
【0083】
中間層は、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、テクスチャfcc(111)材料、テクスチャhcp(002)材料、共有結合した炭化物、酸化物、又は窒化物を含む非晶質材料、非晶質金属材料、及び前述の材料のいずれか1つ又は複数の層状の組合せからなる群から選択される1つ又は複数の材料を含む。バッファ層は、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、テクスチャfcc(111)材料、テクスチャhcp(002)材料、非晶質金属材料、共有結合した炭化物、酸化物、又は窒化物を含む非晶質材料、及び前述の材料のいずれか1つ又は複数の層状の組合せからなる群から選択される1つ又は複数の材料を含む1つ又は複数の副層を含む。磁気抵抗ランダムアクセスメモリデバイスは、SOT MTJを備える。
【0084】
上記は本開示の実施形態を目的とするが、本開示の他の及び更なる実施形態が、その基本的範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。