(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】多方向入力装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/04 20060101AFI20241114BHJP
G05G 9/047 20060101ALI20241114BHJP
G06F 3/0338 20130101ALI20241114BHJP
【FI】
H01H25/04 C
G05G9/047
G06F3/0338 411
(21)【出願番号】P 2024505969
(86)(22)【出願日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2023004409
(87)【国際公開番号】W WO2023171224
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022035033
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸之
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053817(JP,A)
【文献】特開2002-208331(JP,A)
【文献】特開2000-215761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 25/00 - 25/06
H01H 89/00
G05G 9/047
G06F 3/0338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
第1回動軸周りに回動する傾倒動作可能な操作部材と、
前記第1回動軸周りに回動可能に前記筐体に支持される第1軸支部を有し、前記操作部材の傾倒操作に連動して回動する第1連動部材と、
前記操作部材を付勢して前記第1連動部材の前記第1軸支部を前記筐体に押圧するとともに、前記操作部材を中立位置に復帰させる復帰力を前記操作部材に付与する付勢部材と、
前記第1連動部材の回動を検知する第1回動検知部と、
を備え、
前記筐体は、前記第1軸支部から押圧される受圧部を有し、
前記第1軸支部と前記受圧部とは、一方が他方側に突出する突起部を有し、他方が前記突起部と接する受け部を有し、
前記突起部と前記受け部とは前記第1回動軸周りに転動接触する、ことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記受け部は、前記突起部を受容する凹形状を有する、請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記第1回動軸に沿ってみたときに、前記突起部の先端はV字形状を有し、前記受け部の前記凹形状は、前記突起部の前記先端のV字角よりも開いたV字形状を含む、請求項2に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記V字形状の先端はR加工されている、請求項3に記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記第1軸支部が前記突起部を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記受圧部が前記突起部を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記第1回動軸に交差する第2回動軸周りに回動可能に前記筐体に支持される第2軸支部を有し、前記操作部材の傾倒操作に連動して回動する第2連動部材と、
前記第2連動部材の回動を検知する第2回動検知部と、
をさらに備える、請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記第2軸支部に接触する軸支接触部を有し、
前記第2軸支部と前記軸支接触部とは、一方が他方側に突出する突起部を有し、他方が前記突起部と接する受け部を有し、
前記突起部と前記受け部とは前記第2回動軸周りに転動接触する、請求項7に記載の多方向入力装置。
【請求項9】
前記第2軸支部と前記軸支接触部との接触圧を増加させる増圧手段を有する、請求項8に記載の多方向入力装置。
【請求項10】
前記増圧手段は、磁力により前記第2軸支部と前記軸支接触部との接触圧を増加させる、請求項9に記載の多方向入力装置。
【請求項11】
前記磁力の発生源は、前記第2連動部材に設けられる、請求項10に記載の多方向入力装置。
【請求項12】
前記磁力の発生源は、前記筐体に設けられる、請求項10に記載の多方向入力装置。
【請求項13】
前記突起部は磁性材料からなる部分を有し、前記磁力の発生源は、前記受け部を有する部材に設けられる、請求項10に記載の多方向入力装置。
【請求項14】
前記増圧手段は、前記第2軸支部の弾性回復力により前記第2軸支部と前記軸支接触部との接触圧を増加させる、請求項9に記載の多方向入力装置。
【請求項15】
前記第2軸支部は、筐体との接触により弾性的に圧縮変形する可変部分を前記軸支接触部との接触部分以外に有し、
前記可変部分の弾性回復力により、前記第2軸支部は前記軸支接触部に弾圧接触する請求項14に記載の多方向入力装置。
【請求項16】
前記操作部材は、前記第1回動軸周りとは異なる方向に沿って変位可能であって、当該変位は変位検知部により検知される、請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項17】
前記操作部材は、前記第1回動軸周りおよび前記第2回動軸周りのいずれとも異なる方向に沿って変位可能であって、当該変位は変位検知部により検知される、
請求項7に記載の多方向入力装置。
【請求項18】
前記受け部の剛性は、前記突起部の剛性よりも高い、請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項19】
前記受け部は金属系材料からなり、前記突起部は樹脂系材料からなる、請求項18に記載の多方向入力装置。
【請求項20】
前記突起部は金属系の板材の抜き加工品からなり、前記板材の抜き加工方向は、前記板材の前記操作部材に対向する板面側から当該板面とは反対側へと向かう方向である、請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材を所望の方向に傾倒することで入力を行う多方向入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作レバー等の操作部材を傾倒することで入力を行う多方向入力装置として、特許文献1には、薄型化、小型化が可能であり、軽操作力である多方向スイッチが開示される。この多方向スイッチでは、操作レバーを傾けるにつれて操作レバーの下端と可動部材との圧接位置が操作レバーの中心軸側に移動するような曲面形状が操作レバーの下端に設けられている。
【0003】
また、特許文献2には、操作軸の操作感触が良好な多方向入力装置が開示される。この多方向入力装置では、操作軸と作動部材とをスプライン結合したため、操作軸を傾倒した状態で操作軸を回転すると、作動部材は、付勢部材の弾圧による底部と底板との間に摩擦があっても、操作軸にスプライン結合された作動部材が共回りし、作動部材が底板上でスリップすることなく、転がるように回転する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-024777号公報
【文献】特開2000-305647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多方向入力装置には、操作部材の傾倒動作に連動する連動部材が設けられる。連動部材は筐体に軸支されており、筐体に対して所定の回動軸周りに回動(揺動)するようになっている。この連動部材の軸支部と、軸支部を受ける筐体の受け部分との摩擦力を低減することが、製品耐久性の向上、摩耗粉の発生の抑制、および操作の安定性向上を図る上で重要である。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、操作部材の動作に連動する連動部材と筐体との摩擦力を低減し、製品耐久性の向上、摩耗粉の発生の抑制、および操作の安定性向上を図ることができる多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、筐体と、第1回動軸周りに回動する傾倒動作可能な操作部材と、第1回動軸周りに回動可能に筐体に支持される第1軸支部を有し、操作部材の傾倒操作に連動して回動する第1連動部材と、操作部材を付勢して第1連動部材の第1軸支部を筐体に押圧するとともに、操作部材を中立位置に復帰させる復帰力を操作部材に付与する付勢部材と、第1連動部材の回動を検知する第1回動検知部と、を備え、筐体は、第1軸支部から押圧される受圧部を有し、第1軸支部と受圧部とは、一方が他方側に突出する突起部を有し、他方が突起部と接する受け部を有し、突起部と受け部とは第1回動軸周りに転動接触する、ことを特徴とする多方向入力装置である。
【0008】
このような構成によれば、突起部と受け部とが転動接触するため、摺動接触の場合に比べて接触部での摩擦力が小さくなる。これにより、操作部材への外力が解除されたときに、操作部材は中立位置へ復帰しやすい。また、転動接触であることから、第1回動軸は摺動接触の場合よりも接触部の近傍を通る。このため、第1軸支部と筐体とのクリアランスに基づく軸ぶれが摺動接触の場合よりも抑制される。
【0009】
上記多方向入力装置において、受け部は、突起部を受容する凹形状を有していてもよい。受け部の凹形状に突起部が受容されることで、突起部と受け部とが転動接触しやすくなる。
【0010】
上記多方向入力装置において、第1回動軸に沿ってみたときに、突起部の先端はV字形状を有し、受け部の凹形状は、突起部の先端のV字角よりも開いたV字形状を含んでいてもよい。これにより、操作部材の傾倒操作の範囲において突起部と受け部との第1回動軸周りの転動接触が維持される。
【0011】
上記多方向入力装置において、V字形状の先端はR加工されていてもよい。これにより、突起部と受け部との転動接触を維持しつつ接触圧の分散を図ることができる。上記多方向入力装置において、第1軸支部が突起部を有していてもよいし、受圧部が突起部を有していてもよい。
【0012】
上記多方向入力装置において、第1回動軸に交差する第2回動軸周りに回動可能に筐体に支持される第2軸支部を有し、操作部材の傾倒操作に連動して回動する第2連動部材と、第2連動部材の回動を検知する第2回動検知部と、をさらに備えていてもよい。これにより、第1連動部材の回動による第1回動軸周りの傾倒動作の検知と、第2連動部材の回動による第2回動軸周りの傾倒動作の検知とによって、操作部材の軸方向にみて360度の方向への傾倒動作を検知することができる。
【0013】
上記多方向入力装置において、筐体は、第2軸支部に接触する軸支接触部を有し、第2軸支部と軸支接触部とは、一方が他方側に突出する突起部を有し、他方が突起部と接する受け部を有し、突起部と受け部とは第2回動軸周りに転動接触する構成となっていてもよい。このような構成によれば、突起部と受け部とが転動接触するため、摺動接触の場合に比べて接触部での摩擦力が小さくなる。これにより、操作部材への外力が解除されたときに、操作部材は中立位置へ復帰しやすい。また、転動接触であることから、第2回動軸は摺動接触の場合よりも軸支接触部の近傍を通る。このため、第2軸支部と筐体とのクリアランスに基づく軸ぶれが摺動接触の場合よりも抑制される。
【0014】
上記多方向入力装置において、第2軸支部と軸支接触部との接触圧を増加させる増圧手段を有していてもよい。これにより、第2連動部材が筐体に対して安定して配置され、第2軸支部と軸支接触部との間のクリアランスに基づく軸ぶれが抑制される。
【0015】
上記多方向入力装置において、増圧手段は、磁力により第2軸支部と軸支接触部との接触圧を増加させるものであってもよい。また、磁力の発生源は、第2連動部材に設けられていてもよいし、筐体に設けられていてもよい。
【0016】
上記多方向入力装置において、突起部は磁性材料からなる部分を有し、磁力の発生源は、受け部を有する部材に設けられていてもよい。これにより、受け部を有する部材に設けられた磁力の発生源と磁性材料からなる突起部の部分との間の磁力によって第2軸支部と軸支接触部との接触圧が増加する。
【0017】
上記多方向入力装置において、増圧手段は、第2軸支部の弾性回復力により第2軸支部と軸支接触部との接触圧を増加させる構成でもよい。これにより、第2軸支部の弾性回復力によって第2軸支部と軸支接触部との接触圧が増加し、第2連動部材が筐体に対して安定して配置される。
【0018】
上記多方向入力装置において、第2軸支部は、筐体との接触により弾性的に圧縮変形する可変部分を軸支接触部との接触部分以外に有し、可変部分の弾性回復力により、第2軸支部は軸支接触部に弾圧接触する構成でもよい。これにより、可変部分の弾性回復力によって第2軸支部と軸支接触部との接触圧が増加し、第2連動部材が筐体に対して安定して配置される。
【0019】
上記多方向入力装置において、操作部材は、第1回動軸周りとは異なる方向に沿って変位可能であって、当該変位は変位検知部により検知される構成となっていてもよい。これにより、操作部材によって第1回動軸に沿った方向とは異なる方向に沿った変位が検知される。
【0020】
上記多方向入力装置において、操作部材は、第1回動軸周りおよび第2回動軸周りのいずれとも異なる方向に沿って変位可能であって、当該変位は変位検知部により検知される構成となっていてもよい。これにより、操作部材によって第1回動軸および第2回動軸のそれぞれに沿った方向とは異なる方向に沿った変位が検知される。
【0021】
上記多方向入力装置において、受け部の剛性は、突起部の剛性よりも高くてもよい。この場合における受け部の構成材料の具体例は金属系材料であり、突起部の構成材料の具体例は樹脂系材料である。これにより、突起部から受け部に対して応力が集中する場合でも、突起部から受け部への影響(例えば受け部での亀裂発生)が抑制される。
【0022】
上記多方向入力装置において、突起部は金属系の板材の抜き加工品からなり、板材の抜き加工方向は、板材の操作部材に対向する板面側から当該板面とは反対側へと向かう方向であることが好ましい。これにより、突起部を金属系板材の抜き加工品とした場合、加工のバリが装置内側に向くことを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多方向入力装置において、操作部材の動作に連動する連動部材と筐体との摩擦力を低減し、製品耐久性の向上、摩耗粉の発生の抑制、および操作の安定性向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る多方向入力装置を例示する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る多方向入力装置を例示する斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る多方向入力装置の構成を例示する分解斜視図である。
【
図4】操作部材による傾倒動作を例示する斜視図である。
【
図5A】本実施形態に係る多方向入力装置の側面図である。
【
図5B】突起部および受け部を例示する断面斜視図である。
【
図6A】操作部材を傾倒した状態を例示する側面図である。
【
図6B】操作部材を傾倒した状態を例示する側面図である。
【
図7】第2連動部材の第2軸支部を例示する側面図である。
【
図8】第2連動部材の第2軸支部を例示する側面図である。
【
図9A】操作部材によるプッシュ動作を例示する断面図である。
【
図9B】操作部材によるプッシュ動作を例示する断面図である。
【
図10A】操作部材によるプッシュ動作を例示する断面図である。
【
図10B】操作部材によるプッシュ動作を例示する断面図である。
【
図11A】操作部材によるプッシュ動作を例示する断面図である。
【
図11B】操作部材によるプッシュ動作を例示する断面図である。
【
図12】増圧手段(その1)を例示する斜視図である。
【
図13】増圧手段(その1)を例示する断面図である。
【
図14A】増圧手段(その2)を例示する断面図である。
【
図14B】増圧手段(その2)を例示する拡大断面図である。
【
図15】突起部および受け部の他の例(その1)を示す斜視図である。
【
図16】突起部および受け部の他の例(その2)を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0026】
(多方向入力装置の構成)
図1および
図2は、本実施形態に係る多方向入力装置を例示する斜視図である。
図3は、本実施形態に係る多方向入力装置の構成を例示する分解斜視図である。
本実施形態に係る多方向入力装置1は、筐体10に対して操作部材20を傾倒動作させることで入力を受け付ける装置である。
実施形態の説明において、操作部材20の傾倒動作における回動軸のうち、第1回動軸AX1はX軸と平行であり、第2回動軸AX2はY軸と平行であり、操作部材20の中立位置における軸(中立軸AX3)をZ軸と平行であるとする。
【0027】
多方向入力装置1は、筐体10、操作部材20、第1連動部材30、第2連動部材40、付勢部材50、第1回動検知部60、第2回動検知部70および変位検知部80を備える。筐体10は、下部に開口を有する略箱型に設けられる。筐体10の上部中央には操作部材20を配置する孔10hが設けられる。筐体10の下部の開口部分には底板部材15が取り付けられ、筐体10の側面には枠板部材17が取り付けられる。なお、底板部材15は筐体10の一部として構成されていてもよい。筐体10および底板部材15の構成材料の限定されない例として、鉄系材料、アルミニウム系材料、銅系材料などの金属系材料が挙げられる。底板部材15の構成材料は筐体10の構成材料と異なる材料(例えば、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミドといった樹脂系材料)から構成されていてもよい。
【0028】
操作部材20は、筐体10の内部に配置される筒部21と、筐体10の内側から孔10hを通して外側に延出する延出部22とを有する。操作部材20が中立位置にある場合、延出部22の延出方向DはZ軸と平行である。一方、操作部材20が傾倒している場合、延出部22の延出方向DはZ軸と非平行である。また、操作部材20は、筐体10に対して第1回動軸AX1周りおよび第2回動軸AX2周りのそれぞれに傾倒動作可能となっている。
【0029】
第1連動部材30は、第1回動軸AX1周りに回動可能に筐体10に支持される第1軸支部31を有し、操作部材20の傾倒操作に連動して回動するように設けられる。第1連動部材30は、中央に孔30hを有する枠型に設けられる。操作部材20は第1連動部材30の中央の孔30hに挿通される。操作部材20の筒部21には連結部23が突出しており、この連結部23が第1連動部材30に設けられた嵌合孔30aと摺動可能に嵌合している。第1連動部材30の構成材料の限定されない例として、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミドといった樹脂系材料が挙げられる。
【0030】
第2連動部材40は、第2回動軸AX2周りに回動可能に筐体10に支持される第2軸支部41を有し、操作部材20の傾倒操作に連動して回動するように設けられる。第2連動部材40はアーチ状に湾曲したアーチ部42を有する。第2連動部材40のアーチ部42の中央には孔42hが設けられる。操作部材20の延出部22は第2連動部材40のアーチ部42の中央の孔42hに挿通される。操作部材20の延出部22には凸部分22aが設けられており、操作部材20がアーチ部42の孔42hに挿通された状態で凸部分22aがアーチ部42に当接し、延出部22が孔42hに摺動可能に嵌合するようになっている。
【0031】
また、第2連動部材40は、第1連動部材30をY軸方向に跨ぐように配置される。第2連動部材40が第1連動部材30を跨ぎ、第1連動部材30の孔30hおよび第2連動部材40の孔42hに操作部材20の延出部22が挿通した状態で、これらが筐体10の内部に組み込まれる。第2連動部材40の構成材料の限定されない例として、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミドといった樹脂系材料が挙げられる。
【0032】
付勢部材50は、操作部材20を付勢して第1連動部材30の第1軸支部31を筐体10に押圧するとともに、操作部材20を中立位置に復帰させる復帰力を操作部材20に付与する。付勢部材50は例えばコイルバネである。付勢部材50は、操作部材20の筒部21内に挿入される。付勢部材50が挿入された筒部21の底には底蓋25が設けられる。底蓋25は、筒部21内で延出部22の延出方向Dに摺動可能に設けられる。底蓋25は底板部材15に当接しており、これにより、付勢部材50が、底蓋25と筒部21の内部上壁21a(
図9A参照)との間に挟み込まれて操作部材20に付勢力を与える。
【0033】
操作部材20を傾倒させた際には底板部材15に当接する底蓋25が底板部材15からの反力を受けて延出方向Dに沿って摺動し、付勢部材50を押圧する。操作部材20への傾倒動作を解除すると、付勢部材50による付勢力によって操作部材20が中立位置へ復帰することになる。
【0034】
第1回動検知部60は第1連動部材30の回動を検知し、第2回動検知部70は第2連動部材40の回動を検知する。第1回動検知部60は、例えば磁気センサ61および永久磁石(マグネット62)を有する。また、第2回動検知部70は、例えば磁気センサ71および永久磁石(マグネット72)を有する。磁気センサ61、71は回路基板90に実装される。磁気センサ61、71を実装した回路基板90は底板部材15に配置される。
【0035】
磁気センサ61に対向するマグネット62は第1連動部材30に設けられたポケット30pに収容され、磁気センサ71に対向するマグネット72は第2連動部材40に設けられたポケット40pに収容される。マグネット62は第1連動部材30の回動によって第1回動軸AX1を中心に揺動し、マグネット72は第2連動部材40の回動によって第2回動軸AX2を中心に揺動する。マグネット62、72の揺動によって回路基板90に固定された磁気センサ61、71との相対位置が変化して、これによる磁場強度の変化を磁気センサ61、71によって検知する。磁気センサ61、71から出力される信号によって、第1連動部材30および第2連動部材40の回動が検知される。
【0036】
底板部材15には側方に延出した部品取付部15aが設けられる。部品取付部15aには変位検知部80が取り付けられる。変位検知部80は、例えばタクトスイッチ(登録商標)などの接触検知型スイッチである。変位検知部80は、操作部材20の第1回動軸AX1周りおよび第2回動軸AX2周りいずれとも異なる方向の変位を検知する。本実施形態では、操作部材20の延在方向に沿った変位を検知する。
【0037】
第1連動部材30には、第1軸支部31が設けられた側とは反対側から変位検知部80の上方に延出するアーム部33が設けられる。例えば、操作部材20が筐体10から延出する向きとは反対向きに操作部材20を押し込む(以下、この押し込む動作を「プッシュ動作」ともいう。)と、第1軸支部31側に支点が位置して、その押圧力によって第1連動部材30のアーム部33が変位検知部80側に押される。これによりアーム部33が変位検知部80と当接し、変位検知部80を作動させる。ここで、上記のプッシュ動作の詳細については後述する。
【0038】
(操作部材による傾倒動作)
図4は、操作部材による傾倒動作を例示する斜視図である。
図4の[P0]は、操作部材20が中立位置にある状態を示す。すなわち、操作部材20に操作力が加わっていない無負荷のときは、[P0]に示すように操作部材20は中立位置となる。本実施形態では、中立位置において、操作部材20の延出部22は、第1回動軸AX1および第2回動軸AX2のいずれにも交差する方向、具体的にはZ軸方向に沿って延在する。
【0039】
中立位置から操作部材20に矢印aの方向へ操作力を加えると、第1連動部材30が第1回動軸AX1周りに回動し、操作部材20は
図4の[P1]に示すように傾倒する。[P1]に示す状態から操作部材20に加えていた操作力を解除すると、付勢部材50の付勢力によって操作部材20は[P0]に示す中立位置に復帰する。反対に、中立位置から操作部材20に矢印bの方向へ操作力を加えると、第1連動部材30が第1回動軸AX1周りに先とは反対向きに回動し、操作部材20は
図4の[P2]に示すように傾倒する。[P2]に示す状態から操作部材20に加えていた操作力を解除すると、付勢部材50の付勢力によって操作部材20は[P0]に示す中立位置に復帰する。
【0040】
また、中立位置から操作部材20に矢印cの方向へ操作力を加えると、第2連動部材40が第2回動軸AX2周りに回動し、操作部材20は
図4の[P3]に示すように傾倒する。[P3]に示す状態から操作部材20に加えていた操作力を解除すると、付勢部材50の付勢力によって操作部材20は[P0]に示す中立位置に復帰する。反対に、中立位置から操作部材20に矢印dの方向へ操作力を加えると、第2連動部材40が第2回動軸AX2周りに先とは反対向きに回動し、操作部材20は
図4の[P4]に示すように傾倒する。[P4]に示す状態から操作部材20に加えていた操作力を解除すると、付勢部材50の付勢力によって操作部材20は[P0]に示す中立位置に復帰する。
【0041】
また、中立位置から操作部材20に矢印a、b、cおよびd以外の方向へ操作力を加えると、その操作力を加えた方向における矢印a、b、cおよびdのそれぞれの方向の成分に応じて第1連動部材30および第2連動部材40が回動し、[P1]、[P2]、[P3]および[P4]以外の位置に操作部材20が傾倒することになる。すなわち、操作部材20はZ軸に沿った方向にみて360度のどの方向にも傾倒可能となる。
【0042】
(軸支部および受圧部)
図5Aは、本実施形態に係る多方向入力装置の側面図である。
図5Bは、突起部および受け部を例示する断面斜視図である。
図5Aでは、X軸に沿った方向にみた側面図が示され、
図5Bでは、YZ面での断面斜視図が示される。
本実施形態に係る多方向入力装置1において、筐体10は、第1軸支部31から押圧される受圧部11を有する。また、第1軸支部31と受圧部11とは、一方が他方側に突出する突起部311を有し、他方が突起部311と接する受け部312を有する。
図5Aおよび
図5Bに示す例では、筐体10の受圧部11に突起部311が設けられ、第1軸支部31に受け部312が設けられる。突起部311と受け部312とは第1回動軸AX1周りに転動接触している。
【0043】
第1軸支部31が筐体10側に押圧されている状態で、突起部311と受け部312とが転動接触するように設けられていることから、第1軸支部31と筐体10の受圧部11とが摺動接触する場合に比べて接触部での摩擦力を小さくすることができる。本実施形態のように突起部311と受け部312とが転動接触しているとき、理想状態において、第1回動軸AX1は突起部311と受け部312との接触部を通る。このため、突起部311と受け部312との間には滑り運動が生じず、摩擦力が高まりにくい。
【0044】
第1軸支部31に設けられる受け部312は、突起部311を受容する凹形状を有している。第1回動軸AX1に沿ってみたときに、突起部311の先端はV字形状を有し、受け部312の凹形状は、突起部311の先端のV字角よりも開いたV字形状を含んでいる。すなわち、受け部312のV字形状の開く角θ2は、突起部311の先端のV字角θ1よりも大きい。
【0045】
突起部311の操作部材20が中立位置にあるときは、受け部312のV字形状の中心と突起部311のV字形状の中心とがほぼ合致するようになっている。これにより、操作部材20の傾倒操作の範囲において第1連動部材30が第1回動軸AX1周りのいずれの方向に回動しても、突起部311と受け部312との転動接触が維持される。
【0046】
ここで、突起部311のV字形状の先端はR加工されていてもよい。これにより、突起部311と受け部312との接触面積が増えるため、転動接触を維持しつつ接触圧の分散を図ることができる。
【0047】
第1軸支部31は、付勢部材50からの付勢力を間接的に受けて筐体10側に押圧される。すなわち、付勢部材50は操作部材20を延出部22の延出方向Dへ付勢している。操作部材20と第1連動部材30とは嵌合しているため、操作部材20に加えられた付勢力が第1連動部材30を介して第1軸支部31に伝わり、第1軸支部31が筐体10側に押圧されることになる。
【0048】
図6Aおよび
図6Bは、操作部材を傾倒した状態を例示する側面図である。
図6Aおよび
図6Bのそれぞれは、X軸に沿った方向にみた側面図である。また、
図6Aおよび
図6Bのそれぞれには、操作部材20を第1回動軸AX1周りに互いに反対に傾倒した状態が示される。操作部材20を第1回動軸AX1周りに傾倒すると、第1連動部材30が第1回動軸AX1周りに回動する。この際、突起部311のV字形状の先端部分と、受け部312のV字形状の谷部分とが接触した状態で、その接触位置を支点として第1軸支部31が第1回動軸AX1周りに転動することになる。
【0049】
傾倒する際に操作部材20に加えていた外力を解除すると、付勢部材50の付勢力によって操作部材20は中立位置に復帰しようとする。このような傾倒および中立位置への復帰の動作において、突起部311と受け部312とが転動接触することで、摺動接触の場合に比べて接触部での摩擦力が小さくなる。このため、傾倒する際に操作部材20へ加えていた外力を解除したとき、操作部材20が中立位置へ復帰しやすくなる。また、第1軸支部31と受圧部11とが摺動接触していると、摺動接触の摩擦力によって操作部材20の中立位置へ復帰が不安定になる可能性がある。例えば、操作部材20の復帰位置が中立軸AX3からずれたり、傾倒方向によって中立位置に復帰するまでの時間にばらつきが生じたりする。
【0050】
本実施形態のように突起部311と受け部312とが転動接触することで、操作部材20が傾倒位置から中立位置へ復帰する際、滑らかに、かつ安定して復帰することになる。また、転動接触であることから、第1回動軸AX1は摺動接触の場合よりも接触部の近傍を通る。このため、第1軸支部31と筐体10とのクリアランスに基づく軸ぶれが摺動接触の場合よりも抑制される。
【0051】
図7および
図8は、第2連動部材の第2軸支部を例示する側面図である。
図7および
図8のそれぞれは、Y軸に沿った方向にみた側面図である。
筐体10は、第2軸支部41に接触する軸支接触部12を有する。第2軸支部41と軸支接触部12とは、一方が他方側に突出する突起部411a、411bを有し、他方が突起部411a、411bと接する受け部412a、412bを有する。第2連動部材40においては、第2回動軸AX2に沿って互いに反対向きに延出する2つの第2軸支部41を有する。
図7に示す一方側の第2軸支部41および軸支接触部12の例では、筐体10の軸支接触部12に突起部411aが設けられ、第2軸支部41に受け部412aが設けられる。突起部411aと受け部412aとは第2回動軸AX2周りに転動接触する。また、
図8に示す他方側の第2軸支部41および軸支接触部12の例では、筐体10の軸支接触部12に突起部411bが設けられ、第2軸支部41に受け部412bが設けられる。突起部411bと受け部412bとは第2回動軸AX2周りに転動接触する。
【0052】
第2軸支部41に設けられる受け部412a、412bのそれぞれは、突起部411a、411bのそれぞれを受容する凹形状を有している。第2回動軸AX2に沿ってみたときに、突起部411a、411bのそれぞれの先端はV字形状を有し、受け部412a、412bのそれぞれの凹形状は、突起部411a、411bの先端のV字角よりも開いたV字形状を含んでいる。
【0053】
このように、突起部411a、411bのそれぞれと、受け部412a、412bのそれぞれとが転動接触するように設けられていることから、第2軸支部41と筐体10の軸支接触部12とが摺動接触する場合に比べて接触部での摩擦力を小さくすることができる。
【0054】
(操作部材によるプッシュ動作)
図9Aから
図11Bは、操作部材によるプッシュ動作を例示する断面図である。
図9Aから
図11Bのそれぞれは、第1回動軸AX1を含みY軸と直交する面での断面図である。
【0055】
図9Aには、操作部材20が中立位置にある状態が示され、
図9Bには、中立位置にある操作部材20にプッシュ動作を与えた状態が示される。
図9Aに示すように、操作部材20が中立位置にある状態でプッシュ動作する前は、付勢部材50から操作部材20に加えられる付勢力により第1連動部材30には延出部22の延出方向Dに付勢力が加えられている。この状態では、第1連動部材30のアーム部33は変位検知部80を作動させるほど変位検知部80と接触していない。
【0056】
図9Bに示すように、操作部材20にプッシュ動作を与えると、操作部材20は付勢部材50からの付勢力に打ち勝って押し込まれる。これにより、操作部材20と嵌合している第1連動部材30のアーム部33は第1軸支部31の位置を支点として変位検知部80側に押される。
【0057】
ここで、第1連動部材30は操作部材20と嵌合しているが、第1回動軸AX1上においては第1軸支部31の位置で支持されている。このため、操作部材20と第1連動部材30との嵌合位置(
図3に示す連結部23と嵌合孔30aとの嵌合位置)は、第1回動軸AX1に沿った方向において第1軸支部31よりもアーム部33に近位である。したがって、操作部材20のプッシュ動作による押圧力が第1連動部材30に加わると、第1軸支部31に支点が位置し、操作部材20と第1連動部材30との嵌合位置が力点となって、アーム部33の先端が作用点となる。それゆえ、操作部材20のプッシュ動作による変位量はアーム部33において拡大され、アーム部33の下方向に位置する変位検知部80と確実に接触して、変位検知部80を作動させる。
【0058】
図10Aには、操作部材20が第2回動軸AX2周りに傾倒した状態が示され、
図10Bには、傾倒位置にある操作部材20にプッシュ動作を与えた状態が示される。
図10Aに示すように、操作部材20を第2回動軸AX2周りに傾倒すると、操作部材20とともに底蓋25も傾倒する。これにより、底蓋25は底板部材15からの反力を受けて延出方向Dに押圧され、筒部21内の付勢部材50を縮めるよう作用する。この状態では、付勢部材50の付勢力が第1連動部材30に加えられているため、第1連動部材30のアーム部33は変位検知部80を作動させるほど変位検知部80と接触していない。
【0059】
図10Bに示すように、傾倒した状態で操作部材20にプッシュ動作を与えると、操作部材20は付勢部材50からの付勢力に打ち勝って押し込まれる。これにより、操作部材20と嵌合している第1連動部材30のアーム部33は第1軸支部31の位置を支点として変位検知部80側に押される。これにより、アーム部33が変位検知部80と当接し、変位検知部80を作動させる。
【0060】
図11Aには、操作部材20が第1回動軸AX1周りに傾倒した状態が示され、
図11Bには、傾倒位置にある操作部材20にプッシュ動作を与えた状態が示される。
図11Aに示すように、操作部材20を第1回動軸AX1周りに傾倒すると、操作部材20とともに第1連動部材30も回動する。また、操作部材20の傾倒とともに底蓋25も傾倒する。これにより、底蓋25は底板部材15からの反力を受けて延出方向Dに押圧され、筒部21内の付勢部材50を縮めるよう作用する。また、第1連動部材30は回動するが、付勢部材50の付勢力が第1連動部材30に加えられているため、第1連動部材30のアーム部33は変位検知部80を作動させるほど変位検知部80と接触していない。
【0061】
図11Bに示すように、傾倒した状態で操作部材20にプッシュ動作を与えると、操作部材20は付勢部材50からの付勢力に打ち勝って押し込まれる。これにより、操作部材20と嵌合している第1連動部材30のアーム部33は第1軸支部31の位置を支点として変位検知部80側に押される。これにより、アーム部33が変位検知部80と当接し、変位検知部80を作動させる。
【0062】
(増圧手段)
図12は、増圧手段(その1)を例示する斜視図である。
図13は、増圧手段(その1)を例示する断面図である。
図13は、第2回動軸AX2を含みX軸と直交する面での断面図である。
操作部材20の延出部22は第2連動部材40のアーチ部42の孔42hに挿通しているため、アーチ部42と延出部22とは強い嵌合状態ではない。このため第2連動部材40は操作部材20に与えられる付勢部材50からの付勢力を強く受けていない。したがって、第2連動部材40は筐体10側に積極的に押圧されていない。
【0063】
そこで、
図12および
図13に示すように、第2軸支部41と軸支接触部12との間の接触圧を増加させる増圧手段45を設けるようにしてもよい。増圧手段45の例(その1)は、磁力により第2軸支部41と軸支接触部12との接触圧を増加させるものであり、具体的には、磁力の発生手段としての永久磁石(マグネット)と磁性部材との組み合わせが挙げられる。例えば、増圧手段45のマグネットは第2連動部材40の第2軸支部41に設けられたポケット41pに収容される。増圧手段45としてマグネットを用いる場合、第2軸支部41と対向する軸支接触部12(筐体10の突起部411b)は、磁性材料からなる部分を有する。これにより、第2連動部材40が筐体10に対して安定して配置され、第2軸支部41と軸支接触部12との間のクリアランスに基づく軸ぶれが抑制される。
【0064】
なお、上記では、増圧手段45における磁力の発生源(マグネット)を第2軸支部41に設け、磁性材料からなる部分を突起部411bに設ける例を示したが、磁力の発生源を筐体10側に設け、磁性材料からなる部分を第2軸支部41側に設けるようにしてもよい。
【0065】
図14Aは、増圧手段(その2)を例示する断面図である。
図14Bは、増圧手段(その2)を例示する拡大断面図である。
図14Aは、第2回動軸AX2を含みX軸と直交する面での断面図である。また、
図14Bには、
図14AのA部におけるY1-Y2断面が示される。
図14Aおよび
図14Bに示す増圧手段45の例(その2)は、第2軸支部41の弾性回復力により第2軸支部41と軸支接触部12との接触圧を増加させるものである。
【0066】
具体的には、第2軸支部41は、筐体10との接触により弾性的に圧縮変形する可変部分451を軸支接触部12との接触部分以外に有している。例えば、可変部分451は、第2軸支部41の軸支接触部12とは反対側(底板部材15と接触する側)に設けられる。可変部分451は、第2軸支部41に設けられた中空部分452と隣接して設けられており、第2軸支部41を軸支接触部12と底板部材15との間に配置した際、底板部材15と接触して中空部分452側に弾性変形する構成となっている。この可変部分451の弾性回復力によって第2軸支部41が軸支接触部12に弾圧接触することになる。これにより、第2連動部材40が筐体10に対して安定して配置され、第2軸支部41と軸支接触部12との間のクリアランスに基づく軸ぶれが抑制される。
【0067】
(突起部および受け部の他の例)
図15は、突起部および受け部の他の例(その1)を示す斜視図である。
図15に示す例では、第2連動部材40の第2軸支部41を底板部材15に設けられた軸支接触部16で受ける構成となっている。この構成において、第2連動部材40の第2軸支部41に受け部414a、414bが設けられ、底板部材15の軸支接触部16に突起部413a、413bが設けられる。
【0068】
すなわち、第2回動軸AX2に沿って互いに反対向きに延出する2つの第2軸支部41において、一方側の第2軸支部41には受け部414aが設けられ、底板部材15の軸支接触部16にはこの受け部414aに受容される突起部413aが設けられ、突起部413aと受け部414aとは第2回動軸AX2周りに転動接触する。また、他方側の第2軸支部41には受け部414bが設けられ、底板部材15の軸支接触部16にはこの受け部414bに受容される突起部413bが設けられ、突起部413bと受け部414bとは第2回動軸AX2周りに転動接触する。
【0069】
第2軸支部41に設けられる受け部414a、414bのそれぞれは、突起部413a、413bのそれぞれを受容する凹形状を有している。第2回動軸AX2に沿ってみたときに、突起部413a、413bのそれぞれの先端はV字形状を有し、受け部414a、414bのそれぞれの凹形状は、突起部413a、413bの先端のV字角よりも開いたV字形状を含んでいる。
【0070】
このように、第2軸支部41の下側に位置する底板部材15に突起部413a、413bが設けられることで、第2連動部材40の自重によって受け部414a、414bと突起部413a、413bとの接触圧を増加しやすくなり、第2軸支部41と軸支接触部16との間のクリアランスに基づく軸ぶれが抑制される。
【0071】
図16は、突起部および受け部の他の例(その2)を示す斜視図である。
なお、説明の便宜上、
図16では、第2軸支部41の一方側のみ示しているが、他方側も同様に構成してもよい。
図16に示す例では、第2連動部材40の第2軸支部41に突起部415が設けられ、底板部材15の軸支接触部16に受け部416が設けられる。突起部415と受け部416とは第2回動軸AX2周りに転動接触する。
【0072】
軸支接触部16に設けられる受け部416は、突起部415を受容する凹形状を有している。第2回動軸AX2に沿ってみたときに、突起部415の先端はV字形状を有し、受け部416の凹形状は、突起部415の先端のV字角よりも開いたV字形状を含んでいる。
【0073】
このように、第2軸支部41の下側に位置する底板部材15に受け部416が設けられることで、第2連動部材40の自重によって突起部415と受け部416との接触圧を増加しやすくなり、第2軸支部41と軸支接触部16との間のクリアランスに基づく軸ぶれが抑制される。なお、
図16に示す例では、第2軸支部41にバランス部47を設けることが好ましい。バランス部47は、突起部415と受け部416との接触位置よりも下方に延出する部分である。これにより、第2連動部材40の重心位置を下げて、突起部415と受け部416との転動接触が安定する。
【0074】
図16に示される構造において、第2連動部材40が樹脂系材料からなり、底板部材15が樹脂系材料からなる場合には、受け部416の剛性が突起部415の剛性よりも高くなる。この場合には、例えば操作部材20から突起部415を介して受け部416に押圧力が加わるなどにより、突起部415から受け部416に対して応力集中が生じても、突起部415から受け部416への影響(例えば受け部416での亀裂発生)が抑制される。
【0075】
(筐体の組み立て)
図17、
図18は、筐体の構成例について示す斜視図である。
筐体10は、金属系板材の抜き加工品から構成されることが好ましい。
図17には、金属系板材を抜き加工して形成された筐体10のブランク(板材)10Bが示される。
図18には、
図17に示すブランク10Bを曲げ加工して箱型に構成した例が示される。
【0076】
筐体10を構成するには、先ず、
図17に示すように金属系板材を抜き加工してブランク10Bを形成する。ブランク10Bは、筐体10の略正方形となる天板101の各辺の位置に側板102が展開された板状体である。天板101の中央には孔10hが設けられ、側板102には突起部311、411a、411bが形成される。
【0077】
ブランク10Bを形成した後は、
図18に示すように天板101に対して各側板102を直角に折り曲げることで箱型を形成する。これにより筐体10が完成する。
【0078】
このように、金属系板材の抜き加工によって筐体10のブランク10Bを形成する際、板材の抜き加工方向は、板材の操作部材20に対向する板面側から当該板面とは反対側へと向かう方向であることが好ましい。すなわち、板材の抜き加工方向は、箱型となる筐体10の内側から外側に向く方向であることが好ましい。これにより、突起部311、411a、411bを金属系板材の抜き加工品とした場合、加工のバリが装置内側に向くことを抑制できる。
【0079】
このように、本実施形態に係る多方向入力装置1によれば、操作部材20の動作に連動する第1連動部材30や第2連動部材40と筐体10との摩擦力を低減し、製品耐久性の向上、摩耗粉の発生の抑制、および操作の安定性向上を図ることが可能となる。
【0080】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、多方向入力装置1は、第2連動部材40および第2回動検知部70を備えていない構成であってもよいし、変位検知部80を備えていない構成であってもよい。また、第1回動検知部60および第2回動検知部70は磁気変化以外の方式(例えば、電気抵抗変化式)であってもよく、変位検知部80も接触検知以外の方式(例えば光学検知式、容量検知式)であってもよい。また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0081】
1…多方向入力装置
10…筐体
10B…ブランク
10h…孔
11…受圧部
12…軸支接触部
15…底板部材
15a…部品取付部
16…軸支接触部
17…枠板部材
20…操作部材
21…筒部
21a…内部上壁
22…延出部
22a…凸部分
23…連結部
25…底蓋
30…第1連動部材
30a…嵌合孔
30h…孔
30p…ポケット
31…第1軸支部
33…アーム部
40…第2連動部材
40p…ポケット
41…第2軸支部
41p…ポケット
42…アーチ部
42h…孔
45…増圧手段
47…バランス部
50…付勢部材
60…第1回動検知部
61…磁気センサ
62…マグネット
70…第2回動検知部
71…磁気センサ
72…マグネット
80…変位検知部
90…回路基板
101…天板
102…側板
311…突起部
312…受け部
411a,411b,413a,413b,415…突起部
412a,412b,414a,414b,416…受け部
451…可変部分
452…中空部分
AX1…第1回動軸
AX2…第2回動軸
AX3…中立軸
D…延出方向
θ1…V字角
θ2…開く角