(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】導電性粘着シート
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241114BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241114BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H05K9/00 W
B32B27/18 B
B32B27/18 J
H01Q17/00
(21)【出願番号】P 2024543433
(86)(22)【出願日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2023036566
(87)【国際公開番号】W WO2024095699
(87)【国際公開日】2024-05-10
【審査請求日】2024-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2022177049
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】水谷 拓雄
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-42297(JP,A)
【文献】特開2014-112662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 27/18
H01Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、導電層と、移行防止層と、粘着層とをこの順に含む導電性粘着シートであって、
前記基材は、難燃性材料から構成され、
前記導電層は、導電性材料と、バインダとを含み、
前記導電性材料は、導電性高分子材料及び炭素材料から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記移行防止層は、樹脂材料から構成され、
前記粘着層は、粘着剤と、難燃剤とを含み、
前記基材側の表面電気抵抗値が、50~200Ω/スクエアであり、
全厚が、50~200μmであることを特徴とする導電性粘着シート。
【請求項2】
前記基材の厚さが、25~180μmである請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項3】
前記導電層の厚さが、0.5~2.0μmである請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項4】
前記移行防止層の厚さが、0.1~2.0μmである請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項5】
前記移行防止層の樹脂材料が、水酸基を含む高分子化合物である請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項6】
前記水酸基を含む高分子化合物が、ポリビニルアルコール、又は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、又は、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合体である請求項5に記載の導電性粘着シート。
【請求項7】
前記粘着層の難燃剤が、リン含有化合物を含む請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項8】
前記粘着層の難燃剤が、2種類以上のリン含有化合物を含む請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項9】
前記移行防止層の樹脂材料が、水酸基を含む高分子化合物であり、
前記粘着層の難燃剤が、リン含有化合物を含む請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項10】
前記移行防止層の樹脂材料が、水酸基を含む高分子化合物であり、
前記粘着層の難燃剤が、2種類以上のリン含有化合物を含む請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項11】
前記移行防止層の樹脂材料が、水酸基を含む高分子化合物であり、
前記水酸基を含む高分子化合物が、ポリビニルアルコール、又は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、又は、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合体であり、
前記粘着層の難燃剤が、リン含有化合物を含む請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項12】
前記粘着層中での前記リン含有化合物の含有量が、10~60質量%である請求項7~11のいずれかに記載の導電性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、マイクロ波帯からミリ波帯の電磁波を吸収する導電性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線通信技術の発達に伴い、様々な機器やセンサが無線によってネットワークにつながりつつある。また、医療分野でも感染予防の観点から機器のコードレス化が進み、医療機器が無線でつながり始めている。これらの通信は比較的短距離での高速大容量が求められており、利用周波数が高い。この様な高周波数を利用する機器の増加に伴い、機器から発生するノイズによる動作不良・利用電磁波との干渉等によって電子機器や通信に不具合が起こる危険性が増大している。更に、近年、自動車の衝突事故防止を目的としたミリ波レーダの搭載も始まっている。これら医療、自動車分野の機器での不具合は人命に影響を与えるため、誤動作があってはならない。そこで、機器のノイズや干渉による不具合の防止、いわゆるEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)対策としての電磁波吸収体を、マイクロ波帯からミリ波帯の電磁波を発受信する回路素子や伝送路に適用する必要性が高まっている。
【0003】
高い周波数のノイズを抑制するためには、従来用いられてきた磁性材料の磁気損失を利用した電磁波吸収シートでは効果が低い。このため、λ/4型電磁波吸収体が提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1に提案されているλ/4型電磁波吸収体は、反射層と誘電体層と低抵抗層とを備える必要があるため、λ/4型電磁波吸収体をノイズの影響を防ぎたい電子装置に粘着剤等によって貼り合せて使用することが困難である。また、特許文献1には、λ/4型電磁波吸収体を形成する前の反射層及び誘電体層を備えていない前駆体であって、シート基材、低抵抗層、バリア層、接着層をこの順で備える電波吸収体用積層体が記載されているが、その低抵抗層の表面抵抗値は300~450Ω/スクエアと大きく、その電磁波吸収体用積層体をそのまま電磁波吸収シートとして用いても、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収性能を向上させることはできない。
【0004】
また、本願の導電性粘着シートに関連する先行技術文献として特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-120836号公報
【文献】特開2017-54734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、上記問題を解決したもので、ノイズの影響を防ぎたい電子装置に粘着剤等によって貼り合せて使用でき、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収性能を有し、更に、電子装置の発熱トラブルに対応できる安全性の高い導電性粘着シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の導電性粘着シートは、基材と、導電層と、移行防止層と、粘着層とをこの順に含み、前記基材は、難燃性材料から構成され、前記導電層は、導電性材料と、バインダとを含み、前記導電性材料は、導電性高分子材料及び炭素材料から選ばれる少なくとも1種を含み、前記移行防止層は、樹脂材料から構成され、前記粘着層は、粘着剤と、難燃剤とを含み、前記基材側の表面電気抵抗値が、50~200Ω/スクエアであり、全厚が、50~200μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願によれば、電子装置に貼り合せて使用でき、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収性能を有し、更に、電子装置の発熱トラブルに対応できる安全性の高い導電性粘着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の導電性粘着シートの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(導電性粘着シート)
本願の導電性粘着シートの実施形態を説明する。本実施形態の導電性粘着シートは、基材と、導電層と、移行防止層と、粘着層とをこの順に備え、前記基材は、難燃性材料から構成され、前記導電層は、導電性材料と、バインダとを含み、前記導電性材料は、導電性高分子材料及び炭素材料から選ばれる少なくとも1種を含み、前記移行防止層は、樹脂材料から構成され、前記粘着層は、粘着剤と、難燃剤とを含み、前記基材側の表面電気抵抗値が、50~200Ω/スクエアであり、全厚が、50~200μmであることを特徴とする。
【0011】
本願の導電性粘着シートでは、前記導電層が導電性材料を含んでいるので、前記導電層が電磁波吸収機能を有し、従来の磁性材料からなる電磁波吸収層に比べて、より高い周波数の電磁波を吸収できる。また、前記導電層はバインダを含み、前記移行防止層は樹脂材料から構成されているため、導電性粘着シート全体に柔軟性を付与でき、導電性粘着シートを装着させる電子機器の表面形状に追従させることが容易となる。更に、前記基材は難燃性材料から構成され、前記粘着層は難燃剤を含んでいるので、ノイズの影響を防ぎたい電子装置に貼り合せて使用した場合、電子装置の発熱トラブルなどに対応でき、安全性の高い導電性粘着シートを提供できる。
【0012】
上記導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値は、低すぎても高すぎても特定の周波数の電磁波に対する吸収性能を発揮しにくくなる。ノイズの影響を防ぎたい電子装置に粘着剤等によって貼り合せて使用する導電性粘着シートにおいて、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収性能を発揮させるのに適切な導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値は、50~200Ω/スクエアであり、80~150Ω/スクエアが最適である。
【0013】
以下、本実施形態の導電性粘着シートについて図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態の導電性粘着シートの一例を示す模式断面図である。
図1において、導電性粘着シート10は、基材11と、基材11の上に配置された導電層12と、導電層12の上に配置された移行防止層13と、移行防止層13の上に配置された粘着層14とを備えている。
【0014】
以下、本実施形態の導電性粘着シートの各構成部材について説明する。
【0015】
<基材>
本実施形態の導電性粘着シートに用いる基材は、難燃性材料から構成されている。上記基材を難燃性材料で構成することにより、導電性粘着シートを貼り合わせて使用する電子装置の発熱トラブルなどに対応でき、安全性の高い導電性粘着シートを提供できる。上記基材は、通常、難燃性樹脂フィルムの形態で使用される。
【0016】
上記難燃性材料としては、難燃性の樹脂材料又は難燃剤を含む樹脂材料を用いることができる。難燃性の樹脂材料は、樹脂自体が難燃性を有する樹脂材料であり、例えば、ポリアミド(アラミド)、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。上記難燃性の樹脂材料を用いた難燃性樹脂フィルムとしては、例えば、耐熱性・難燃性メタアラミド繊維を用いた帝人デュポンアドバンストペーパー社製の「ノーメックス」(登録商標)、高耐熱性ポリイミドフィルムとしてゼノマックスジャパン社製の「ゼノマックス」(登録商標)、バラ系の芳香族ポリアミド(アラミド)フィルムとして東レ社製の「ミクトロン」(登録商標)、ポリフェニレンサルファイドフィルムとして東レ社製の「トレリナ」(登録商標)等が挙げられる。
【0017】
また、難燃剤を含む樹脂材料とは、難燃性を有さない樹脂に難燃剤を含有させた樹脂材料であり、上記難燃剤を含有させた樹脂材料を用いた難燃性樹脂フィルムとしては、例えば、東洋紡社製の「テトロンUF」(商品名)、ワコー化成社製の「フミロン」(登録商標)、三菱ケミカル社製の「ダイアラミー」(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「ユーピロン」(登録商標)、住友ベークライト社製の「サンロイドエコシートポリカPHFシリーズ」(商品名)等が挙げられる。
【0018】
上記難燃性材料から構成された難燃基材の厚さは、25~180μmが好ましく、80~150μmがより好ましい。上記厚さが25μmより小さいと、難燃性の規格であるUL94VTMを満足することができず、基材の難燃性を確保できない。一方、上記厚さが180μmより大きいと、難燃性は問題ないが、難燃性樹脂フィルムとして可撓性が低下するため、電子部品に貼り付ける際の追従性が低下したり、配線等に巻き付けることが難しくなる。上記厚さが50μm以上あれば難燃性の基準VTM-2(最低限の基準)を満足することができる。更に、上記厚さが100μm以上あれば、難燃性の基準がVTM-2よりも厳しいVTM-0を満足することができる。
【0019】
<導電層>
本実施形態の導電性粘着シートに用いる導電層は、導電性材料と、バインダとを含み、上記導電性材料は、導電性高分子材料及び炭素材料から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。上記導電層が、導電性高分子材料及び炭素材料から選ばれる少なくとも1種を含む導電性材料を含むことにより、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を50~200Ω/スクエアの範囲内に設定できる。上記表面電気抵抗値を50~200Ω/スクエアの範囲内に設定することにより、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収性能を導電性粘着シートに付与することができる。
【0020】
また、上記導電層がバインダを含むことにより、硬度が高く基材への密着性が高い導電層を形成できる。更に、上記導電層がバインダを含むことにより、基材上に厚みのばらつきが小さい導電層を形成できるため、導電層全体の表面電気抵抗値を均一にできる。
【0021】
上記導電層の厚さは、0.5μm以上2.0μm以下が好ましい。上記導電層の厚さが0.5μmを下回ると、導電層の表面電気抵抗値が上昇し、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を200Ω/スクエア以下とすることが困難となる。また、上記導電層の厚さが2.0μmを超えると、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を200Ω/スクエア以下とすることはできるが、導電性粘着シートの全厚が大きくなるため、導電性粘着シートの可撓性が低下し、電子部品に貼り付ける際の追従性が低下したり、配線等に巻き付けることが難しくなる。
【0022】
[導電性高分子材料]
上記導電性高分子材料としては、ポリチオフェン系導電性高分子を用いることが好ましい。上記ポリチオフェン系導電性高分子は、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収機能を有し、主鎖がπ共役系で構成される有機高分子であり、導電性を有すると共に、可視光領域の光をほとんど吸収しないため、高い透明性を有する導電層を形成できる。このため、ポリチオフェン系導電性高分子を用いた導電層を透明な基材の上に積層することにより、高い光透過率を有する導電性粘着シートを形成できる。
【0023】
上記ポリチオフェン系導電性高分子としては、例えば、ポリ(チオフェン)、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)等が挙げられる。
【0024】
上記ポリチオフェン系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記ポリチオフェン系導電性高分子の電気伝導度を高めるために、ドーパントを併用することが好ましい。上記ドーパントとしては、ヨウ素、塩素等のハロゲン類、BF3、PF5等のルイス酸類、硝酸、硫酸等のプロトン酸類や、遷移金属、アルカリ金属、アミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、クロラニル、テトラシアノエチレン、TCNQ等が使用できる。
【0026】
上記ポリチオフェン系導電性高分子として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を用い、上記ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を用いた混合物(PEDOT/PSSともいう。)を用いることが好ましい。
【0027】
導電層中における上記導電性高分子材料の含有量は、全固形分に対して10~40質量%であることが好ましい。上記含有量をこの範囲とすることにより、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を50~200Ω/スクエアの範囲内に設定でき、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収性能を導電性粘着シートに付与することができる。
【0028】
一方、上記導電性高分子材料の含有量が10質量%未満では、導電層中に導電パスが形成されにくくなり、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を下げることが困難となる。また、上記含有量が40質量%を超えると、上記表面電気抵抗値の低減効果が飽和すると共に、導電層中のバインダの含有量が相対的に低下し、導電層の強度が低下し、基材及び後述する移行防止層への密着性が低下しやすくなる。
【0029】
[炭素材料]
上記炭素材料は、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収機能を有する電磁波吸収材料であり、具体的には、黒鉛;カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等);グラフェン;カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ、分岐型カーボンナノチューブ、分岐型マルチウォールカーボンナノチューブ);炭素繊維等が挙げられる。
【0030】
上記炭素材料としては、特に平均粒子径が10~300nmのカーボンブラックが好ましい。上記カーボンブラックは、導電性に優れ、少量の使用で電磁波吸収機能を発揮できる。上記カーボンブラックの平均粒子径は、堀場製作所製の粒子径分布測定装置“LA-920”等により測定できる。
【0031】
導電層中における上記炭素材料の含有量は、全固形分に対して30~70質量%であることが好ましい。上記含有量をこの範囲とすることにより、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を50~200Ω/スクエアの範囲内に設定でき、1~30GHzのマイクロ波からミリ波の帯域での電磁波吸収性能を導電性粘着シートに付与することができる。
【0032】
一方、上記炭素材料の含有量が30質量%未満では、導電層中に導電パスが形成されにくくなり、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を下げることが困難となる。また、上記含有量が70質量%を超えると、上記表面電気抵抗値の低減効果が飽和すると共に、導電層中のバインダの含有量が相対的に低下し、導電層の強度が低下し、基材及び後述する移行防止層への密着性が低下しやすくなる。
【0033】
[バインダ]
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニリデン-アクリル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂を含むバインダ;ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等を含むバインダ等が使用できる。
【0034】
<粘着層>
本実施形態の導電性粘着シートに用いる粘着層は、粘着剤と、難燃剤とを含んでいる。
【0035】
上記粘着層の厚さは10~50μmが好ましく、15~35μmがより好ましい。上記厚さが10μm未満では十分な粘着力が得られなくなるおそれがある。また、上記厚さが50μmを超えると、粘着層の粘着効果が飽和すると共に、導電性粘着シートの全厚が大きくなるため、導電性粘着シートの可撓性が低下し、電子部品に貼り付ける際の追従性が低下したり、配線等に巻き付けることが難しくなる。
【0036】
[粘着剤]
上記粘着層は、粘着剤として酸フリー架橋樹脂を含んでいることが好ましい。これにより、高温高湿下での導電層の表面電気抵抗値の経時変化を抑制できると共に、被着体の腐食を防止できる。
【0037】
上記酸フリー架橋樹脂とは、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の酸性基を含まないモノマーを重合して形成した酸フリーポリマーを、更に架橋剤により架橋した架橋ポリマーをいう。上記酸性基を含まないモノマーは、架橋剤との架橋反応を行うため、水酸基、アミノ基等の官能基を含んでいる。但し、上記酸フリー架橋樹脂は酸性基を意識的に有さないものを意味し、酸性基が全く検出されないことを意味するものではなく、また、粘着層の製造過程で不可避的に混入する微量の酸は許容する意味である。
【0038】
上記酸フリー架橋樹脂の形成に用いる酸性基以外の官能基を有する酸フリーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等の少なくとも1種を用いることができる。
【0039】
上記酸フリー架橋樹脂を形成するための架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤等を用いることができる。これらの中でも、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及び金属キレート系架橋剤を用いることが好ましい。エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤を用いることで、室温等の比較的低温な条件であっても、酸性基以外の官能基を有する酸フリーポリマーの架橋が進行するからである。
【0040】
[難燃剤]
上記難燃剤としては、リン含有化合物、ハロゲン含有化合物等の有機系難燃剤、及び、金属水酸化物、アンチモン系化合物等の無機系難燃剤が使用できる。これらの中でも難燃性及び安全性の両面で優れるリン含有化合物を用いることが好ましい。
【0041】
上記リン含有化合物としては、赤リン系化合物、リン酸系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アンモニウム系化合物、もしくはこれらを重合した高分子化合物などが挙げられる。
【0042】
上記リン含有化合物は、2種類以上を合わせて用いることができる。リン含有化合物は、構造により難燃性が高いもの、溶解性に優れるもの、樹脂、粘着剤への相溶性に優れるものなどがあり、難燃性と粘着力とを両立させるためには、これらのリン含有化合物の性質を理解した上で、2種類以上のリン含有化合物を組み合わせて用いることで、より難燃性と粘着力に優れた粘着層を実現できる。具体的には、優れた難燃性を発揮するためには、例えば、ポリリン酸アンモニウムを多量に加える方がよい。しかし、ポリリン酸アンモニウムを加えすぎると粘着層の粘着力が劣る。そのため、ポリリン酸アンモニウムを多量に加えた場合には、例えば、リン酸エステルを更に加えることで難燃性と粘着力との両立ができる。このようにして、難燃性と粘着力との両立といった達成すべき粘着層の性能を引き出すことができる。
【0043】
粘着層中における上記リン含有化合物の含有量(2種類以上のリン含有化合物を用いる場合は、その合計含有量)は、全固形分に対して10~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。上記含有量が10質量%を下回ると、UL94VTM難燃性規格のUL94VTM-2基準を満足できず、十分な難燃性が得られないおそれがある。また、上記含有量が60質量%を超えると、粘着層中の粘着剤の量が相対的に少なくなるため、導電性粘着シートの被着体に対する粘着力、保持力が得られなくなるおそれがある。即ち、上記含有量が10~60質量%の場合、難燃性と、粘着力、保持力との両立がより効果的に発揮できる。また、上記含有量が20~50質量%の場合、難燃性と、粘着力、保持力との両立が更に効果的に発揮できる。
【0044】
[その他の成分]
上記粘着層には、粘着力を制御するため、必要に応じて粘着付与剤を添加してもよい。上記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、合成石油系樹脂、及びこれらの水添系樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて染料、顔料などの着色剤、UV吸収剤、無機フィラーなどを添加してもよい。
【0045】
<移行防止層>
本実施形態の導電性粘着シートに用いる移行防止層は、樹脂材料から構成され、導電層と粘着層との間に配置されることにより、粘着層に含まれる難燃剤や、粘着剤の低分子成分が、粘着層から導電層へ移行するのを防止できる。
【0046】
上記移行防止層の厚さは、0.1~2.0μmが好ましく、0.3~1.0μmがより好ましい。上記厚さが0.1μmより薄いと、粘着層に含まれる難燃剤や、粘着剤の低分子量成分が時間の経過と共に導電層に移行し、その結果、導電層の表面電気抵抗値が上昇し、導電性粘着シートの基材側の表面電気抵抗値を200Ω/スクエア以下に維持することが困難となる場合がある。また、上記厚さが2.0μmより厚いと、導電性粘着シートの全厚が大きくなるため、導電性粘着シートの可撓性が低下し、電子部品に貼り付ける際の追従性が低下したり、配線等に巻き付けることが難しくなる。
【0047】
[樹脂材料]
上記樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられるが、特に水酸基のような極性の高い官能基を有する高分子化合物はガスバリア性に優れ、とりわけポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合樹脂など分子中の水酸基含有率の高い高分子は、特にガスバリア性に優れることから薄膜層として用いても、粘着層成分の導電層への移行防止効果を発揮しやすいため好ましい。
【0048】
上記ポリビニルアルコール樹脂としては、クラレ社製の「エクセバール」(登録商標)、三菱ケミカル社製の「ゴーセノール」(登録商標)、デンカ社製の「デンカポバール」(登録商標)等が挙げられる。上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂としては、クラレ社製の「エバール」(登録商標)、住友化学社製の「STRADER」(登録商標)、「エクセビア」(登録商標)、三菱ケミカル社製の「ソアノール」(登録商標)等が挙げられる。上記ブテンジオール-ビニルアルコール共重合樹脂としては、三菱ケミカル社製の「ニチゴーG-Polymer」(登録商標)等が挙げられる。
【0049】
また、上記移行防止層の樹脂材料が、水酸基のような極性の高い官能基を有する高分子化合物であるとき、特に上記移行防止層の樹脂材料が、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ブテンジオール-ビニルアルコール共重合樹脂であるとき、粘着層の難燃剤がリン含有化合物であることが好ましく、2種類以上のリン含有化合物を用いることがより好ましい。この場合、難燃性の粘着層と移行防止層とを組み合わせることでより効果的な難燃性を持つ導電性粘着シートを実現することができる。
【0050】
上記移行防止層に前述の粘着層を組み合わせる場合には、前述のとおり、上記粘着層中における上記リン含有化合物の含有量(2種類以上のリン含有化合物を用いる場合は、その合計含有量)は、全固形分に対して10~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。上記含有量が10質量%以上で、UL94VTM難燃性規格のUL94VTM-2基準を満足でき、十分な難燃性を担保することができる。また、上記含有量が60質量%以下で、導電性粘着シートの被着体に対する粘着力、保持力を担保できる。即ち、上記含有量が10~60質量%の範囲とすることで、上記移行防止層の優れたバリア性に加え、難燃性と、粘着力、保持力との両立が効果的に発揮できる。また、上記含有量が20~50質量%の場合には、上記移行防止層の優れたバリア性に加え、難燃性と、粘着力、保持力との両立が更に効果的に発揮できる。
【0051】
[その他の成分]
上記樹脂材料にガスバリア性、密着性、塗膜強度等の性能を付与させるために、シリカやアルミナなどのバリア性に優れたフィラーや、エポキシ系、イソシアネート系等の硬化剤を上記樹脂材料に添加して移行防止層を構成しもよい。
【0052】
(導電性粘着シートの製造方法)
本願の導電性粘着シートの製造方法の実施形態を説明する。本実施形態の導電性粘着シートの製造方法は、導電性材料と、バインダと、溶媒とを含む導電層形成用塗料を作製する工程と、上記導電層形成用塗料を基材の上に塗布して乾燥することにより、上記基材の上に導電層を形成する工程と、上記導電層の上に移行防止層を形成する工程と、上記移行防止層の上に粘着層を形成又は配置する工程とを備えることができる。
【0053】
<導電層形成用塗料>
上記導電層形成用塗料は、導電性材料と、バインダと、溶媒とを混合することにより作製できる。
【0054】
上記導電性材料としては、前述の導電層を構成する導電性高分子材料及び炭素材料から選ばれる少なくとも1種を使用できる。また、上記バインダとしては、前述の導電層を構成するバインダを使用できる。
【0055】
上記溶媒は、プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを含んでいることが好ましい。プロトン性極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを併用することにより、比較的低い乾燥温度で導電層を形成できる。
【0056】
上記プロトン性極性溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられ、上記非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0057】
上記溶媒の含有量は特に限定されないが、上記導電層形成用塗料の全質量に対して、50.0質量%以上99.5質量%以下とすればよい。
【0058】
<導電層の形成>
上記導電層形成用塗料を基材の上に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、リバース法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法、ディッピング法、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法等の塗布方法を用いることができる。
【0059】
上記塗布後の乾燥は、上記導電層形成用塗料の溶媒成分が蒸発する条件であればよく、100~150℃で5~60分間行うことが好ましい。溶媒が導電層に残っていると強度が劣る傾向にある。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、加熱乾燥法、真空乾燥法、自然乾燥等により行うことができる。また、必要に応じて、塗膜にUV光やEB光を照射して塗膜を硬化させたりして、導電層を形成してもよい。
【0060】
<移行防止層の形成>
上記導電層の上に移行防止層を形成するには、前述の移行防止層を構成する樹脂材料を、前述の導電層形成用塗料で用いるプロトン性極性溶媒に溶解させて移行防止層形成用塗料を作製し、この移行防止層形成用塗料を上記導電層の上に塗布して乾燥すればよい。
【0061】
<粘着層の形成>
上記移行防止層の上に粘着層を形成するには、例えば、前述の粘着剤と、難燃剤と、溶媒とを含む粘着層形成用塗料を塗布して乾燥すればよい。上記移行防止層の上に上記粘着層形成用塗料を塗布して乾燥する方法は特に限定されず、各種の塗工装置、乾燥装置を用いることができる。また、上記溶媒は特に限定されず、上記粘着剤と上記難燃剤を混合できるものであればよい。
【0062】
また、上記移行防止層の上に粘着層を配置するには、上記粘着層形成用塗料を用いて粘着層を別途剥離フィルム上に形成し、この別途形成した粘着層を、上記移行防止層の上に貼りつけることなどにより配置すればよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を用いて本願を詳細に述べる。但し、本願は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0064】
(実施例1)
<導電層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して導電層形成用塗料a1を調製した。
(1)ポリチオフェン系導電性高分子分散液(綜研化学社製、商品名“ベラゾールWED-SM”、導電性高分子:PEDOT-PSS、固形分濃度:1.5質量%、溶媒:水):55.0部
(2)バインダ溶液(水溶性ポリエステル樹脂溶液、互応化学社製、商品名“プラスコートZ-565”、固形分濃度:25.0質量%、溶媒:水):10.0部
(3)溶媒(ジメチルスルホキシド):5.0部
(4)溶媒(n-プロピルアルコール):20.0部
(5)純水:10.0部
【0065】
<導電層の形成>
次に、難燃性材料を含む厚さ130μmのアラミド紙(帝人デュポンアドバンストペーパー社製、商品名“ノーメックス410”)を基材として用い、その基材の一方の主面に上記導電層形成用塗料a1を、バーコータを用いて塗布し、その後110℃で3分間乾燥した。これにより、一方の主面に導電層が形成された導電性シートを作製した。上記導電層の厚さは、1.0μmであった。
【0066】
<移行防止層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して移行防止層形成用塗料b1を調製した。
(1)ブテンジオール-ビニルアルコール共重合樹脂(三菱ケミカル社製、商品名“ニチゴーG-Polymer BVE8049Q”):4.0部
(2)溶媒(エタノール):26.0部
(3)純水:70.0部
【0067】
<移行防止層の形成>
次に、先に作製した導電性シートの導電層側に上記移行防止層形成用塗料b1を、バーコータを用いて塗布し、その後100℃で3分間乾燥した。これにより、一方の主面に導電層、移行防止層が積層された移行防止層付き導電性シートを作製した。上記移行防止層の厚さは、0.5μmであった。
【0068】
<粘着層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して粘着層形成用塗料c1を調製した。
(1)酸フリー樹脂粘着剤(大同化学工業社製、商品名“ダイカラック5021”、固形分濃度:30.0質量%、溶媒:酢酸エチル):58.3部
(2)イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名“コロネートHX”、固形分濃度:100.0質量%):0.1部
(3)粘着付与剤(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製、商品名“YSポリスターK125”):3.5部
(4)難燃剤(リン酸エステル、大八化学工業社製、商品名“CR-741”):7.0部
(5)難燃剤(ポリリン酸アンモニウム、ブーデンハイム社製、商品名“TERRAJU C-30”):7.0部
(6)溶媒(酢酸エチル):24.1部
【0069】
<導電性粘着シートの形成>
PETフィルムの片面に離形処理した厚さ50μmの剥離フィルム(ニッパ社製、商品名“J0-L”)の離形処理面に、上記粘着層形成用塗料c1を塗布し、80℃で5分間乾燥させて、剥離フィルムの上に厚さ30μmの粘着層を形成した。
【0070】
次に、先に作製した移行防止層付き導電性シートの移行防止層側に、上記剥離フィルムの粘着層を重ね合わせ、2kgのゴムローラにより圧着し、40℃の雰囲気下で48時間エージングして、上記剥離フィルムが付いた状態で導電性粘着シートを作製し、この剥離フィルムを除いた部分を実施例1の導電性粘着シートとした。
【0071】
(実施例2)
基材に難燃性材料を含む厚さ50μmのアラミド紙(帝人デュポンアドバンストペーパー社製、商品名“ノーメックス410”)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2の導電性粘着シートを作製した。
【0072】
(実施例3)
導電層の厚さを0.6μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の導電性粘着シートを作製した。
【0073】
(実施例4)
移行防止層の厚さを0.1μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の導電性粘着シートを作製した。
【0074】
(実施例5)
粘着層の厚さを10μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例5の導電性粘着シートを作製した。
【0075】
(実施例6)
<移行防止層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して移行防止層形成用塗料b2を調製した。
(1)エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(住友化学社製、商品名“NOH3000”、固形分濃度:6.0質量%、溶媒:水):66.6部
(2)溶媒(エタノール):20.0部
(3)純水:13.4部
【0076】
次に、実施例1の移行防止層形成用塗料b1に代えて、上記移行防止層形成用塗料b2を用い、厚さ1.0μmの移行防止層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例6の導電性粘着シートを作製した。
【0077】
(実施例7)
<粘着層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して粘着層形成用塗料c2を調製した。
(1)酸フリー樹脂粘着剤(大同化学工業社製、商品名“ダイカラック5021”、固形分濃度:30.0質量%、溶媒:酢酸エチル):60.9部
(2)イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名“コロネートHX”、固形分濃度:100.0質量%):0.1部
(3)粘着付与剤(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製、商品名“YSポリスターK125”):9.0部
(4)難燃剤(リン酸エステル、大八化学工業社製、商品名“CR-741”):5.0部
(5)溶媒(酢酸エチル):25.0部
【0078】
次に、実施例1の粘着層形成用塗料c1に代えて、上記粘着層形成用塗料c2を用い、厚さ25μmの粘着層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例7の導電性粘着シートを作製した。
【0079】
(実施例8)
<粘着層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して粘着層形成用塗料c3を調製した。
(1)酸フリー樹脂粘着剤(大同化学工業社製、商品名“ダイカラック5021”、固形分濃度:30.0質量%、溶媒:酢酸エチル):68.3部
(2)イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名“コロネートHX”、固形分濃度:100.0質量%):0.1部
(3)粘着付与剤(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製、商品名“YSポリスターK125”):4.5部
(4)難燃剤(リン酸エステル、大八化学工業社製、商品名“CR-741”):2.0部
(5)難燃剤(ポリリン酸アンモニウム、ブーデンハイム社製、商品名“TERRAJU C-30”):1.0部
(6)溶媒(酢酸エチル):24.1部
【0080】
次に、実施例1の粘着層形成用塗料c1に代えて、上記粘着層形成用塗料c3を用い、厚さ25μmの粘着層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例8の導電性粘着シートを作製した。
【0081】
(実施例9)
基材に厚さ100μmの難燃剤含有ポリカーボネートシート(住友ベークライト社製、商品名“PHF860MAB”)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例9の導電性粘着シートを作製した。
【0082】
(実施例10)
移行防止層の厚さを0.06μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例10の導電性粘着シートを作製した。
【0083】
(実施例11)
<移行防止層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して移行防止層形成用塗料b3を調製した。
(1)メタクリル共重合樹脂(三菱ケミカル社製、商品名“ダイヤナールBR-113”):4部
(2)溶媒(メチルエチルケトン):96.0部
【0084】
次に、実施例1の移行防止層形成用塗料b1に代えて、上記移行防止層形成用塗料b3を用い、厚さ0.5μmの移行防止層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例11の導電性粘着シートを作製した。
【0085】
(比較例1)
基材に厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名“A4300”)を使用し、難燃性材料を含まない基材を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の導電性粘着シートを作製した。
【0086】
(比較例2)
移行防止層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例2の導電性粘着シートを作製した。
【0087】
(比較例3)
<粘着層形成用塗料の調製>
以下の成分を添加、混合して難燃剤を含まない粘着層形成用塗料c4を調製した。
(1)酸フリー樹脂粘着剤(大同化学工業社製、商品名“ダイカラック5021”、固形分濃度:32.0質量%、溶媒:酢酸エチル):68.3部
(2)イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名“コロネートHX”、固形分濃度:100.0質量%):0.1部
(3)粘着付与剤(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製、商品名“YSポリスターK125”):5.5部
(4)溶媒(酢酸エチル):24.1部
【0088】
次に、実施例1の粘着層形成用塗料c1に代えて、上記粘着層形成用塗料c4を用い、厚さ25μmの粘着層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例3の導電性粘着シートを作製した。
【0089】
(比較例4)
導電層の厚さを0.4μmとした以外は、実施例1と同様にして比較例4の導電性粘着シートを作製した。
【0090】
(比較例5)
実施例1で作製した剥離フィルム付き導電性粘着シートから剥離フィルムを剥がした後、露出した粘着層にアルミニウム箔複合フィルム(パナック社製、商品名“アルペット”品番「10-75」、厚さ:85μm)を貼り合わせた。
【0091】
次に、PETフィルムの片面に離形処理した厚さ50μmの剥離フィルム(ニッパ社製、商品名“J0-L”)の離形処理面に、実施例1で調製した粘着層形成用塗料c1を塗布し、80℃で5分間乾燥させて、剥離フィルムの上に厚さ25μmの粘着層を形成した。
【0092】
続いて、先に準備したアルミニウム箔複合フィルム付き導電性シートのアルミニウム箔複合フィルム側に、上記剥離フィルムの粘着層を重ね合わせ、2kgのゴムローラにより圧着し、40℃の雰囲気下で48時間エージングして、上記剥離フィルムが付いた状態で導電性粘着シートを作製し、この剥離フィルムを除いた部分を比較例5の導電性粘着シートとした。
【0093】
以上の実施例1~11及び比較例1~5の導電性粘着シートについて下記評価を行った。
【0094】
<全厚の測定>
作製した剥離フィルム付き導電性粘着シートから剥離フィルムを剥がした後、導電性粘着シートの全厚をダイヤルゲージで測定した。
【0095】
<表面電気抵抗値の測定>
作製した剥離フィルム付き導電性粘着シートを50mm四方に切断した後、剥離フィルムを剥がし、上記導電性粘着シートの粘着層側を、コーニング社製の無アルカリガラス(商品名“イーグルXG”、厚さ:0.7μm)に圧着して測定用サンプルとした。
【0096】
次に、ナプソン社製の高周波渦電流式非破壊抵抗率測定装置(商品名“EC-80P”)を用いて、上記測定用サンプルの表面電気抵抗値を測定した。具体的には、上記測定用サンプルの基材側に、上記抵抗率測定装置のプローブを当て、基材側の表面電気抵抗値を測定した。この基材側の表面電気抵抗値を導電性粘着シートの表面電気抵抗値とした。続いて、測定した表面電気抵抗値を次にように評価した。
評価A:表面電気抵抗値が50~120Ω/スクエアの場合
評価B:表面電気抵抗値が121~200Ω/スクエアの場合
評価C:表面電気抵抗値が201Ω/スクエア以上の場合
【0097】
<粘着力>
作製した剥離フィルム付き導電性粘着シートを幅25mm、長さ150mmに切り出した後、剥離フィルムを剥がし、ステンレス鋼板(SUS304)に貼り付け、質量2kgのローラを用い、このローラを5mm/秒の速度で1往復させて圧着した。圧着から粘着力の測定までの時間を24~36時間とし、引張試験機にて180°方向へ5mm/秒の速度で引き剥がして粘着力を測定した。測定環境は23±3℃の室内にて行った。
【0098】
<難燃性>
難燃性の規格であるUL94VTMに基づき薄手材料垂直燃焼試験(ASTM D4804)を実施した。具体的には、作製した剥離フィルム付き導電性粘着シートを長さ200mm、幅50mmに切り出した後、剥離フィルムを剥がし、円筒状に巻き、クランプに垂直に取付け、20mm炎による3秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりVTM-0、VTM-1、VTM-2、Notの判定を行った。
【0099】
<長期信頼性>
作製した剥離フィルム付き導電性粘着シートを50mm四方に切断した後、剥離フィルムを剥がし、上記導電性粘着シートの粘着層側を、コーニング社製の無アルカリガラス(商品名“イーグルXG”、厚さ:0.7μm)に圧着して長期信頼性評価用サンプルとした。この評価用サンプルを温度65℃、湿度95%の恒温恒湿槽にて1000時間保管し、保管前後の表面電気抵抗値の上昇率を測定した。続いて、導電性粘着シートの長期信頼性を次にように評価した。
評価A:表面電気抵抗値の上昇率が20%未満で、且つ保管後の表面電気抵抗値が200Ω/スクエア未満の場合
評価B:表面電気抵抗値の上昇率が30%未満で、且つ保管後の表面電気抵抗値が200Ω/スクエア未満の場合
評価C:表面電気抵抗値の上昇率が30%以上、もしくは保管後の表面電気抵抗値が200Ω/スクエア以上の場合
【0100】
上記の結果を、作製した導電性粘着シートの構成と共に表1及び表2に示す。
【0101】
【0102】
【0103】
表1及び表2から、実施例1~9の導電性粘着シートでは、表面電気抵抗値、粘着力、難燃性、長期信頼性において良好な結果を得た。また、実施例10~11の導電性粘着シートでは、表面電気抵抗値、粘着力、難燃性において良好な結果を得たが、移行防止層の厚みが0.1μmを下回った実施例10及び移行防止層を構成する樹脂が水酸基を含まなかった実施例11では、それぞれ長期信頼性が低下する傾向が見られた。
【0104】
一方、難燃基材を使用しなかった比較例1では難燃性が低下し、移行防止層を形成しなかった比較例2では長期信頼性が低下し、粘着層に難燃剤を含まなかった比較例3では難燃性が低下し、導電層の厚さが0.5μmを下回った比較例4では表面電気抵抗値が200Ω/スクエアを超え、長期信頼性も低下し、金属層を配置した比較例5では表面抵抗値が測定限界値を下回って測定不能となり、同様に長期信頼性も測定不能となった。
【0105】
本願は、上記以外の形態としても実施が可能である。本願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本願の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0106】
10 導電性粘着シート
11 基材
12 導電層
13 移行防止層
14 粘着層