(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】支援プログラム、支援システムおよび支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20241115BHJP
G06F 40/166 20200101ALI20241115BHJP
G06F 40/253 20200101ALI20241115BHJP
G06F 40/56 20200101ALI20241115BHJP
【FI】
G06Q50/18
G06F40/166
G06F40/253
G06F40/56
(21)【出願番号】P 2023213348
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2024-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519313471
【氏名又は名称】株式会社リセ
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】寄合 龍太
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153110(JP,A)
【文献】特開2020-166864(JP,A)
【文献】特開2020-035165(JP,A)
【文献】国際公開第2023/026467(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第2442350(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 40/166
G06F 40/253
G06F 40/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象文書の作成又は修正を支援するための支援プログラムであって、
前記対象文書は、作成又は修正の対象となる法律文書であり、
取得部と、生成部と、提案部と、としてコンピュータを機能させ、
前記取得部は、
対象文書において不足する、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報と、
前記対象文書に関する情報であって、前記対象文書に応じた提案を行うための補助情報と、を取得し、
前記生成部は、前記項目情報及び補助情報を文章生成モデルに入力し、
前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記対象文書における前記不足項目の作成を支援するための提案情報を出力する、支援プログラム。
【請求項2】
前記項目情報は、前記不足項目に対応する法律文書の記載例を含み、前記記載例は、過去の取決めを規定した文書における記載又はひな形である、請求項1に記載の支援プログラム。
【請求項3】
評価部としてコンピュータを更に機能させ、
前記評価部は、前記対象文書の評価結果を示す評価情報を取得し、
前記取得部は、前記評価情報に基づいて、前記項目情報を取得する、請求項1に記載の支援プログラム。
【請求項4】
前記評価情報は、前記不足項目の種別を示す項目種別を含み、
前記取得部は、項目種別に対応付けてその記載内容を示す記載例を記憶するデータベースから、前記不足項目の項目種別に対応する前記記載例を取得する、請求項3に記載の支援プログラム。
【請求項5】
前記評価情報は、前記不足項目に関する評価コメントを含み、
前記取得部は、前記評価コメントを、前記項目情報として取得する、請求項3に記載の支援プログラム。
【請求項6】
前記評価情報は、前記対象文書に対する1又は複数の指摘事項を含み、
前記指摘事項には、項目不足及び条項の修正を含む複数の群から選択される指摘種別が付与され、
前記取得部は、前記評価情報に含まれる指摘事項の前記指摘種別を判定して、
項目不足の指摘事項について、当該指摘事項に係る不足項目の前記項目情報を取得し、
条項の修正の指摘事項について、当該指摘事項に係る前記対象文書の記載内容を示す対象文書情報を取得し、
前記生成部は、
項目不足の指摘事項については、前記項目情報及び補助情報を前記文章生成モデルに入力する一方、
条項の修正の指摘事項については、前記対象文書情報及び対象文書により規定される取決めに関する情報を、前記文章生成モデルに入力する、請求項3に記載の支援プログラム。
【請求項7】
前記対象文書は、複数の条項を含み、
不足項目を示す指摘種別は、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループについて、グループ内の条項の一部が不足する一部不足と、グループ全体が不足する全部不足と、を含む複数の種別に分けられ、
前記生成部は、複数の条項のグループに係る指摘事項が、一部不足又は全部不足の何れであるかに応じて、前記文章生成モデルに対する入力を決定する、請求項6に記載の支援プログラム。
【請求項8】
項目不足に係る指摘種別が前記一部不足である場合に、
前記取得部は、前記補助情報として、前記対象文書における、前記不足項目に関する条項と同じグループに属する他の条項の記載内容を取得する、請求項7に記載の支援プログラム。
【請求項9】
前記補助情報は、前記対象文書の少なくとも一部の内容を示す対象文書情報を含む、請求項1に記載の支援プログラム。
【請求項10】
前記対象文書情報は、前記対象文書における不足項目の挿入箇所の情報と、当該挿入箇所の前後の記載内容と、を含む、請求項9に記載の支援プログラム。
【請求項11】
前記対象文書は、複数の条項を含み、
前記対象文書情報は、前記対象文書における、不足項目に関連する条項の記載内容を含む、請求項9に記載の支援プログラム。
【請求項12】
前記対象文書は、前文を含む法律文書であり、
前記対象文書情報は、前記対象文書における前文の記載内容を含む、請求項9に記載の支援プログラム。
【請求項13】
前記補助情報は、前記対象文書において用いられる言葉の定義を示す定義情報を含む、請求項1に記載の支援プログラム。
【請求項14】
前記補助情報は、前記対象文書における文体を示す文体情報を含む、請求項1に記載の支援プログラム。
【請求項15】
前記取得部は、ユーザにより選択される修正強度を更に取得し、
前記生成部は、前記修正強度を前記文章生成モデルに更に入力する、請求項1に記載の支援プログラム。
【請求項16】
特定部としてコンピュータを更に機能させ、
前記取得部は、前記不足項目の種別を示す項目種別及び、ユーザにより選択される修正強度を更に取得し、
前記特定部は、項目種別に対応付けて複数の記載例を記憶するデータベースから、前記項目種別に対応する記載例のうち、前記対象文書の作成又は修正に用いる記載例を、前記修正強度に基づいて特定し、
前記生成部は、前記特定部により特定された記載例及び補助情報を、前記文章生成モデルに入力する、請求項2に記載の支援プログラム。
【請求項17】
前記生成部は、前記項目情報及び補助情報に基づいて不足項目に関する案文を生成するよう指示する生成命令を、自然言語による文章として生成して、前記文章生成モデルに入力する、請求項1に記載の支援プログラム。
【請求項18】
評価部としてコンピュータを更に機能させ、
前記評価部は、前記対象文書の評価結果を示す評価情報を取得し、
前記評価情報は、前記対象文書に対する1又は複数の指摘事項を含み、
前記指摘事項には、項目不足及び条項の修正を含む複数の群から選択される指摘種別が付与され、
前記取得部は、前記評価情報に含まれる指摘事項の前記指摘種別を判定して、
項目不足の指摘事項について、当該指摘事項に係る不足項目の項目情報を取得し、
条項の修正の指摘事項について、当該指摘事項に係る前記対象文書の記載内容を示す対象文書情報を取得し、
前記生成部は、
項目不足の指摘事項については、前記項目情報及び補助情報に基づいて、不足項目に関する案文を生成するよう指示する前記生成命令を、前記文章生成モデルに入力する一方、
条項の修正の指摘事項については、前記対象文書情報及び補助情報に基づいて、当該指摘事項に係る修正案を生成するよう指示する前記生成命令を、前記文章生成モデルに入力する、請求項17に記載の支援プログラム。
【請求項19】
対象文書の作成又は修正を支援するための支援システムであって、
前記対象文書は、作成又は修正の対象となる法律文書であり、
取得部と、生成部と、提案部と、を備え、
前記取得部は、
作成又は修正の対象の法律文書である対象文書において不足する、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報と、
前記対象文書に関する情報であって、前記対象文書に応じた提案を行うための補助情報と、を取得し、
前記生成部は、前記
項目情報及び補助情報を文章生成モデルに入力し、
前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記対象文書における前記不足項目の作成を支援するための提案情報を送信する、支援システム。
【請求項20】
対象文書の作成又は修正を支援するための支援方法であって、
前記対象文書は、作成又は修正の対象となる法律文書であり、
取得部と、生成部と、提案部と、を備えるコンピュータによって実行され、
前記取得部は、
作成又は修正の対象の法律文書である対象文書において不足する、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報と、
前記対象文書に関する情報であって、前記対象文書に応じた提案を行うための補助情報と、を取得し、
前記生成部は、前記
項目情報及び補助情報を文章生成モデルに入力し、
前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記対象文書における前記不足項目の作成を支援するための提案情報を送信する、支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法律文書の作成又は修正を支援するための、支援プログラム、支援システムおよび支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文書、特に契約書や規約等の法律文書の評価や作成においては、高い専門性が必要とされる。このような背景から、従来、法律文書のチェックを行う技術や、それをもとに法律文書の修正を支援する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、法律文書に関するレビュー結果について情報の入力を受け付け、修正を行う技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、事前に登録されたレコメンド文章を用いて、対応部分をレコメンド文章に置き換えることで法律文書の修正を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、事前に登録されたレコメンド文章への部分的な置き換えにより修正を行うため、事前に想定される内容にしか対応できず、個々の文書に合わせた修正を柔軟に行うことが難しいという課題があった。そこで本発明は、以上の問題を、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明は、対象文書の作成又は修正を支援するための支援プログラムであって、前記対象文書は、作成又は修正の対象となる法律文書であり、取得部と、生成部と、提案部と、としてコンピュータを機能させ、前記取得部は、対象文書において不足する、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報と、前記対象文書に関する情報であって、前記対象文書に応じた提案を行うための補助情報と、を取得し、前記生成部は、前記項目情報及び補助情報を文章生成モデルに入力し、前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記対象文書における前記不足項目の作成を支援するための提案情報を出力する。
【0007】
このような構成とすることで、対象文書において未作成の部分について、作成することを支援することができる。また、記載例及び補助情報を文章生成モデルに入力し、その出力に基づいて提案情報を出力することにより、単なるひな形の提示にとどまらず、対象文書に応じた文書作成を支援することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記記載例は、前記不足項目に対応する法律文書の記載例を含み、前記記載例は、過去の取決めを規定した文書における記載又はひな形である。
【0009】
このような構成とすることで、不足項目に対応する記載を事前に用意し、これに基づいて対象文書の作成や修正に関する提案を行うことができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、評価部としてコンピュータを更に機能させ、前記評価部は、前記対象文書の評価結果を示す評価情報を取得し、前記取得部は、前記評価情報に基づいて、前記記載例を取得する。
【0011】
このような構成とすることで、対象文書の評価結果に応じて、適切な記載例を用いて提案を行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記評価情報は、前記不足項目の種別を示す項目種別を含み、前記取得部は、項目種別に対応付けてその記載内容を示す記載例を記憶するデータベースから、前記不足項目の項目種別に対応する前記記載例を取得する。
【0013】
このような構成とすることで、項目種別に応じた記載例に基づき、対象文書の作成や修正に関する提案を行うことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記評価情報は、前記不足項目に関する評価コメントを含み、前記取得部は、前記評価コメントを、前記項目情報として取得する。
【0015】
このような構成とすることで、例えば修正の方針等を記載した評価コメントをもとに、対象文書の作成や修正に関する提案を行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記評価情報は、前記対象文書に対する1又は複数の指摘事項を含み、前記指摘事項には、項目不足及び条項の修正を含む複数の群から選択される指摘種別が付与され、前記取得部は、前記評価情報に含まれる指摘事項の前記指摘種別を判定して、項目不足の指摘事項について、当該指摘事項に係る不足項目の前記項目情報を取得し、条項の修正の指摘事項について、当該指摘事項に係る前記対象文書の記載内容を示す対象文書情報を取得し、前記生成部は、項目不足の指摘事項については、前記項目情報及び補助情報を前記文章生成モデルに入力する一方、条項の修正の指摘事項については、前記対象文書情報及び対象文書により規定される取決めに関する情報を、前記文章生成モデルに入力する。
【0017】
このような構成とすることで、指摘種別に応じて、適切な提案を行うことができる。具体的には、項目不足については記載例及び補助情報に基づいて、不足項目の作成を支援することができる。一方、条項の修正については、対象文書の記載内容を示す対象文書情報に基づいて、指摘事項に係る部分の修正を支援することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記対象文書は、複数の条項を含み、項目不足を示す指摘種別は、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループについて、グループ内の条項の一部が不足する一部不足と、グループ全体が不足する全部不足と、を含む複数の種別に分けられ、前記生成部は、複数の条項のグループに係る指摘事項が、一部不足又は全部不足の何れであるかに応じて、前記文章生成モデルに対する入力を決定する。
【0019】
このような構成とすることで、複数の条項でひとまとまりの規定を定める場合にも、適切な提案を行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、項目不足に係る指摘種別が前記一部不足である場合に、前記取得部は、前記補助情報として、前記対象文書における、前記不足項目と同じグループに属する他の条項の記載内容を取得する。
【0021】
このような構成とすることで、複数の条項の関係を考慮した提案を行うことが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記補助情報は、前記対象文書の少なくとも一部の内容を示す対象文書情報を含む。
【0023】
このような構成とすることで、対象文書の内容に基づいて、不足項目に関する作成または修正の提案を行うことができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記対象文書情報は、前記対象文書における不足項目の挿入箇所の情報と、当該挿入箇所の前後の記載内容と、を含む。
【0025】
このような構成とすることで、対象文書における挿入箇所の前後の記載内容に基づいて、適切な提案を行うことができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記対象文書は、複数の条項を含み、前記対象文書情報は、前記対象文書における、不足項目に関連する条項の記載内容を含む。
【0027】
このような構成とすることで、不足項目に関連する対象文書の条項の記載内容に基づいて、適切な提案を行うことができる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記対象文書は、前文を含む法律文書であり、前記対象文書情報は、前記対象文書における前文の記載内容を含む。
【0029】
法律文書では、前文において文書内で用いる言葉の定義等の前提を記載することがある。このような構成とすることで、対象文書の内容を適切に提案に反映することができる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記補助情報は、前記対象文書において用いられる言葉の定義を示す定義情報を含む。
【0031】
このような構成とすることで、対象文書の内容を適切に提案に反映することができる。
【0032】
本発明の好ましい形態では、前記補助情報は、前記対象文書における文体を示す文体情報を含む。
【0033】
このような構成とすることで、文書内の文体を統一した内容で提案を行うことができる。
【0034】
本発明の好ましい形態では、前記取得部は、ユーザにより選択される修正強度を更に取得し、前記生成部は、前記修正強度を前記文章生成モデルに更に入力する。
【0035】
このような構成とすることで、ユーザの意向を反映した提案を行うことができる。
【0036】
本発明の好ましい形態では、特定部としてコンピュータを更に機能させ、前記取得部は、前記不足項目の種別を示す項目種別及び、ユーザにより選択される修正強度を更に取得し、前記特定部は、項目種別に対応付けて複数の記載例を記憶するデータベースから、前記項目種別に対応する記載例のうち、前記対象文書の作成又は修正に用いる記載例を、前記修正強度に基づいて特定し、前記生成部は、前記特定部により特定された記載例及び補助情報を、前記文章生成モデルに入力する。
【0037】
このような構成とすることで、ユーザの意向に応じて記載例を用いて提案を行うことができる。
【0038】
本発明の好ましい形態では、前記生成部は、前記項目情報及び補助情報に基づいて不足項目に関する案文を生成するよう指示する生成命令を、自然言語による文章として生成して、前記文章生成モデルに入力する。
【0039】
このような構成とすることで、例えば文章の入力に対し文章を出力する会話型の文章生成モデルを利用して提案を行うことができる。
【0040】
本発明の好ましい形態では、評価部としてコンピュータを更に機能させ、前記評価部は、前記対象文書の評価結果を示す評価情報を取得し、前記評価情報は、前記対象文書に対する1又は複数の指摘事項を含み、前記指摘事項には、項目不足及び条項の修正を含む複数の群から選択される指摘種別が付与され、前記取得部は、前記評価情報に含まれる指摘事項の前記指摘種別を判定して、項目不足の指摘事項について、当該指摘事項に係る不足項目の項目情報を取得し、条項の修正の指摘事項について、当該指摘事項に係る前記対象文書の記載内容を示す対象文書情報を取得し、前記生成部は、項目不足の指摘事項については、前記項目情報及び補助情報に基づいて、不足項目に関する案文を生成するよう指示する前記生成命令を、前記文章生成モデルに入力する一方、条項の修正の指摘事項については、前記対象文書情報及び補助情報に基づいて、当該指摘事項に係る修正案を生成するよう指示する前記生成命令を、前記文章生成モデルに入力する。
【0041】
このような構成とすることで、会話型の文章生成モデルを利用して、指摘種別に応じた適切な提案を行うことができる。
【0042】
本発明は、法律文書の作成又は修正を支援するための支援システムであって、取得部と、生成部と、提案部と、を備え、前記取得部は、作成又は修正の対象の法律文書である対象文書において不足する、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報と、前記対象文書に関する情報であって、前記対象文書に応じた提案を行うための補助情報と、を取得し、前記生成部は、前記記載例及び補助情報を文章生成モデルに入力し、前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記対象文書における前記不足項目の作成を支援するための提案情報を送信する。
【0043】
本発明は、法律文書の作成又は修正を支援するための支援方法であって、取得部と、生成部と、提案部と、を備えるコンピュータによって実行され、前記取得部は、作成又は修正の対象の法律文書である対象文書において不足する、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報と、前記対象文書に関する情報であって、前記対象文書に応じた提案を行うための補助情報と、を取得し、前記生成部は、前記記載例及び補助情報を文章生成モデルに入力し、前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記対象文書における前記不足項目の作成を支援するための提案情報を送信する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、不足する部分の作成を含む、対象文書の作成又は修正を適切に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の実施形態における支援システムの構成を示すブロック図。
【
図2】本発明の実施形態における支援システムにおけるハードウェア構成図。
【
図3】本発明の実施形態における支援システムの機能構成を示すブロック図。
【
図4】本発明の実施形態における支援システムの記載例の登録例。
【
図5】本発明の実施形態における支援システムの処理手順を示すシーケンス図。
【
図6】本発明の実施形態における支援システムの評価画面の表示例。
【
図7】本発明の実施形態における支援システムの再評価処理に関する処理手順を示すフローチャート。
【
図8】本発明の実施形態における支援システムの提案画面の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を用いて、本発明の支援システムについて説明する。図面には好ましい実施形態が示されている。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
【0047】
例えば、本実施形態では支援システムの構成、動作等について説明するが、支援装置、支援システム又は支援装置が実行する方法、支援プログラム等によっても、同様の作用効果を奏することができる。本実施形態では、支援システムは、クライアント端末(ユーザ端末)でその機能を実現する為に、クライアント端末とネットワークを介して接続されるサーバ(支援装置)において当該支援プログラムを実行する、いわゆるクラウドコンピューティングの態様をとる。
【0048】
支援プログラムは、任意のコンピュータ装置を支援装置として機能させるために、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記憶媒体としてコンピュータ装置へ提供されても良いし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されても良い。また、文書修正プログラムは、例えば、Microsoft Word(登録商標)等の文書編集ソフトウェアにおいて、アドオン(プラグイン)されるプログラムであっても良い。
【0049】
本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらハードウェア資源によって具体的に実現され得るソフトウェアの情報処理とを合わせたものを含み得る。本実施形態において「情報」とは、例えば、電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。広義の回路とは、回路(Circuit)、プロセッサ(Processor)及びメモリ(Memory)等を適宜組み合わせることによって実現される回路類(Circuitry)である。例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のいずれかを含む回路類である。
【0050】
<1.定義>
まず用語の定義について説明する。
本発明は、文章生成モデルを利用して、文書の作成又は修正を支援するための技術である。文章生成モデルとは、文章を出力可能な任意のモデルを指す。文章生成モデルとしては、機械学習により生成されたモデルを代表的に利用することができる。本実施形態では、文章を入力することにより、入力された文章に対する回答として文章を生成する、会話型の文章生成モデルを利用する場合について説明する。
【0051】
より具体的には、文章生成モデルとは、自然言語処理向けの機械学習モデルであり、入力された情報に基づき文章を生成する機能を有するモデルである。例えば、文章生成モデルはself-attentionメカニズムを有するTransformerモデルに基づく機械学習モデルである。Transformerモデルは、例えばGPT(Generative Pre-trained Transformer)モデルである。文章生成モデルは大規模なデータセットにより学習を実行することにより、一般的な自然言語生成タスクだけでなく、専門性の高い文章生成タスクが可能となる。
【0052】
例えば、文章生成モデルは、OpenAIが開発したGPT-3またはGPT-4アルゴリズムを用いて大規模なデータセットにより学習したモデル(例えば、大規模なデータセットによる学習と報酬予測モデルを用いた強化学習を組み合わせて生成されたChatGPTモデル)が適用されうる。また、本実施形態ではモデルへの入力がテキスト情報の例を説明するが、画像情報や音声情報の入力であってもよい。
【0053】
本発明において対象文書とは、ユーザが作成又は修正しようとする対象の文書のことを指す。本実施形態では対象文書として、特に契約書や規則、規約等の法律文書を想定する。法律文書には、条、項、号等に区分された単位を含むものがあり、本実施形態においては、このような単位の各々を「条項」と呼ぶ。本実施形態では、法律文書が契約書である場合について例示する。契約書としては、秘密保持契約書、売買契約書、不動産賃貸借に関する契約書等の契約効果を発揮する文書が挙げられる。さらに本実施形態は契約書に限定されず、例えば、法律文書が規則、規約、通知書等であっても良い。規則としては、就業規則等の法規範の文書等が考えられる。また、通知書としては、プライバシー等のポリシー宣言の文書等が考えられる。この他にも、法律文書は、催告書、委任状等の法律に何らかの関連性がある文書を含む。
【0054】
法律文書を評価する際には、様々な観点から評価が行われる。評価の観点としては、例えば、必要な項目が対象文書中に存在するか、不利な条件になっていないか、不要な項目が含まれていないか、等が挙げられる。本発明における「項目」とは、このような評価の対象となる観点の一つであり、対象文書の内容について不足を確認する際の単位である。本発明は、対象文書において不足する項目である不足項目について、文章生成モデルに情報を入力し、その出力に基づいて提案を行う。例えば、条項を本発明の項目としてもよいし、法律文書の規定する論点を本発明の項目としてもよい。
【0055】
契約書を含む法律文書には、法的観点からみてその内容・要否その他の事項について、現在又は将来において、議論又は交渉の余地のある事項が存在する。それを一般的には論点と呼ぶ。具体的には、本発明における論点には、契約期間や、契約の対象、秘密保持契約における秘密情報の例外として定める、その具体的な例外の種類のそれぞれ、等を挙げることができる。また複数の条項によりひとまとまりの規定を定める場合、そのひとまとまりの規定をひとつの論点としてもよい。本実施形態では、論点を「項目」とする形態、即ち、論点ごとに不足を確認する形態を例示して説明する。
【0056】
ここで、本発明における「不足項目」は、対象文書の作成状態にかかわらず、未作成、又は不十分な項目を広く含む。即ち不足項目とは、既に存在する対象文書において不足すると考えられるものに限られず、これから作成しようとする文書に含めるべき項目も含む。したがって本発明は、文書の修正段階だけでなく、例えば、具体的な文書案が作成される前の段階において、対象文書に含めたい項目に対応する案文を作成するために用いることもできる。
【0057】
本発明において補助情報とは、対象文書に関する情報であって、対象文書に応じた提案を行うための情報である。例えば、対象文書の少なくとも一部の内容を示す対象文書情報、対象文書の背景に関する背景情報、対象文書の文体を示す文体情報、対象文書において用いる言葉の定義を示す定義情報、対象文書に関する評価を示す評価情報、等が、補助情報として用いられる。背景情報、文体情報及び定義情報については、対象文書情報に基づいて、生成及び取得されてもよい。また対象文書情報については、対象文書の全文ではなく一部の内容を用いる場合には、特に後述する項目情報を対象文書に合わせて修正するために用いることが可能な一部の内容を示す情報を用いることが好ましい。
【0058】
背景情報としては、特に対象文書が規定する取決めに関する情報を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、対象文書が示す取決めにおける、取決めの相手、相手との関係、取決めの目的、取決めに関する当事者の要望、取決めたい内容を示す情報、取決めの種類、取決めに関する当事者の要望等が、背景情報に含まれる。
【0059】
文体情報としては、例えば、対象文書の文体が、敬体(ですます調)又は常体(である調)の何れであるかを示す情報を用いることができる。文体情報は、対象文書情報に基づいて、敬体又は常体の何れであるかを判断することにより取得されてもよい。
【0060】
定義情報は、例えば、自社が甲乙の何れであるか、また例えば対象文書の中で用いる用語の定義等を示す情報である。定義情報は、ユーザによる入力で指定されてもよいし、対象文書情報に基づいて、取得されてもよい。具体的には、例えばかっこ内は定義を示す、前文における所定の形式の記載を定義とみなす、等のルールベースで定義情報を取得することができる。
【0061】
対象文書情報以外の補助情報(背景情報、文体情報及び定義情報等)は、例えば、契約交渉に用いられるタームシートにより入力されるタームシート情報であってもよい。タームシートは契約の主要な項目について相手と合意した内容、または提案内容を表形式で整理したものであり、タームシート情報はタームシートに記載されている内容を含む情報である。また、補助情報は、法律文書(例えば契約書)に記載したい内容について質問を行う質問ソフトウェアが生成した質問内容と質問結果に基づく質問情報であってもよい。
【0062】
本発明は、以上のような補助情報を、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報とともに文章生成モデルに入力することで、対象文書の作成又は修正に関する提案を行う。
【0063】
<2.システム構成>
図1は、本実施形態の支援システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、支援システム0は、支援装置1と、ユーザ端末2と、を備える。支援装置1及びユーザ端末2は、ネットワークNWを介して通信可能に構成される。支援装置1はサーバとして、ユーザ端末2はクライアント端末として動作する。ネットワークNWは、本実施形態では、IP(Internet Protocol)ネットワークであるが、通信プロトコルの種類、ネットワークの種類等にも制限はない。
【0064】
また支援装置1は、ネットワークNWを介して更に生成装置3と接続される。生成装置3は、文章生成モデルを提供する外部のサーバ装置である。なお支援装置1が文章生成モデルを記憶し、外部の装置を利用せずに対象文書の作成又は修正に関する提案が可能な構成であってもよいし、本実施形態において支援装置1が実行する処理の一部又は全部をユーザ端末2において実行する構成としてもよい。
【0065】
支援装置1、生成装置3やデータベースサーバとしては、汎用のサーバやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置10(コンピュータ装置)を1又は複数利用することができる。支援装置1は、本実施形態では、支援方法を実行するコンピュータプログラム(支援プログラム)をインストールした情報処理装置10であるが、端末装置90に支援プログラムをインストールすることで支援装置1として機能させてもよい。
【0066】
またユーザ端末2としては、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末等の端末装置90(コンピュータ装置)を利用することができる。ユーザ端末2は、支援装置1に対してリクエストを行い、レスポンスを受け取る為のアプリケーション(ウェブブラウザアプリケーション又は専用アプリケーション)を有し、このアプリケーションを介して、支援装置1において実行される支援プログラムによる処理結果を利用する。
【0067】
支援装置1は、ユーザ端末2のアプリケーションから送信されたリクエストに基づいて、各種の表示情報として所定の形式のデータをユーザ端末2のアプリケーションに送信する。所定の形式のデータは、例えばJSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)形式やXML形式のデータである。ユーザ端末2のアプリケーションは、受信したデータをもとに表示データをレンダリングし、提案情報に基づく各種の情報をユーザ端末2のディスプレイに表示する。
【0068】
例えば、ユーザ端末2のウェブブラウザアプリケーション上で各種情報の表示処理を実行する場合は、まずウェブブラウザアプリケーションはHTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエストをWebサーバに送信し、HTTPリクエストで要求されたファイルを含むHTTPレスポンスを受信する。受信するファイルは、修正案を含む表示情報であり、表示するWebページの内容又は指示を示し、例えば、HTML(Hypertext Markup Language)などのマークアップ言語を用いて記述される。受信するファイルに、ウェブブラウザアプリケーション上で実行されるプログラムであるスクリプトが付加されていてもよい。ウェブブラウザアプリケーションは、受信したファイルに基づいて、表示領域にWebページを描画(レンダリング)する。ファイルにスクリプトが付加されている場合、ブラウザは、スクリプトを実行し、実行結果に応じてWebページを表示する。
【0069】
<3.ハードウェア構成>
図2(a)は、情報処理装置10のハードウェア構成図である。
図2に示すように、情報処理装置10は、制御部101、記憶部102、及び通信部103を有し、各部及び各工程の作用発揮に用いられる。
【0070】
制御部101は、命令セットを実行可能なCPU等のプロセッサを有し、OSやプログラムを実行する。
記憶部102は、命令セットを記憶可能なRAMなどの揮発性メモリ、OS、○○プログラムやDBMS(データベースサーバ)等を記録可能な、HDDやSSD等の不揮発性の記録媒体を有する。
通信部103は、ネットワークに物理的に接続するためのインタフェースを有し、ネットワークNWとの通信制御を実行して、情報の入出力を行う。
【0071】
図2(b)は、端末装置90のハードウェア構成図である。
図2に示すように、端末装置90は、制御部901、記憶部902、通信部903、入力部904及び出力部905を有し、各部及び各工程の作用発揮に用いられる。
【0072】
制御部901は、命令セットを実行可能なCPU等のプロセッサを有し、OSやプログラム等を実行する。
記憶部902は、命令セットを記憶可能なRAM等の揮発性メモリ、OS、判定プログラム等を記録可能な、HDDやSSDなどの不揮発性の記録媒体を有する。
通信部903は、ネットワークに物理的に接続するためのインタフェースを有し、ネットワークNWとの通信制御を実行して、情報の入出力を行う。
入力部904は、タッチパネルやキーボード等の入力処理が可能な操作入力デバイス、マイク等の音声入力が可能な音声入力デバイス等を有する。
出力部905は、ディスプレイ等の表示処理が可能な表示デバイス、スピーカ等の音声出力デバイスを有する。
【0073】
<4.機能構成>
図3は、本実施形態における支援装置1、ユーザ端末2、及び生成装置3の機能構成を示す図である。支援装置1は、取得部11と、評価部12と、特定部13と、生成部14と、提案部15と、データベースDBと、を有する。これは、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア(制御部101等)によって具体的に実現されたものである。例えば、制御部101が記憶部102に記憶されている文書修正プログラムを読み出して記憶部102等の一時記憶領域(RAM等)に展開して実行し、通信部103等を制御することにより、支援装置1の機能が実現される。
【0074】
またユーザ端末2は、表示部を備える。ユーザ端末2は、提案部15が送信した情報を受信し、表示部がその情報に基づく表示を行う。表示例については後述する。
【0075】
取得部11は、対象文書の不足項目に対応する項目情報を取得する。項目情報は、不足項目に対応する記載内容に関する情報であり、具体的には、項目に対応する具体的な記載内容を示す記載例や、項目に関する解説、項目の趣旨を示す文又は文章、対象文書の不足項目に関する評価コメント等、を含む。本実施形態では、項目に対応付けて事前に登録された記載例をデータベースDBから取得する。また取得部11は、補助情報を取得する。本実施形態では、ユーザ端末2がユーザから補助情報の入力を受け付けて、取得部11がユーザ端末2を介して補助情報を取得する。本実施形態では、補助情報として、作成中の対象文書の内容を示す対象文書情報を取得部11が取得する。また本実施形態の取得部11は、更に不足項目の種別を示す項目種別及び、ユーザにより選択される修正強度を取得する。
【0076】
評価部12は、対象文書の評価結果を示す評価情報を取得して、取得部11に受け渡す。本実施形態の評価部12は、取得部11によって取得された対象文書情報に基づいて評価を行うことで評価情報を取得するが、外部の装置やユーザ端末2から評価情報を取得する構成であってもよい。評価の処理の詳細については後述する。
【0077】
特定部13は、項目種別に対応付けて複数の記載例を記憶するデータベースDBから、対象文書における不足項目の項目種別に対応する記載例の中から、対象文書の作成又は修正に用いる記載例を特定する。特定部13が、更にユーザにより選択された修正強度に基づいて、記載例を特定してもよい。
【0078】
生成部14は、取得部11が取得した項目情報及び補助情報を文章生成モデルに入力して、その出力を取得する。本実施形態の取得部11は、項目情報及び補助情報に基づいて不足項目に関する案文を生成するよう指示する生成命令を、自然言語による文章として生成して、生成装置3に送信する。この生成命令の送信が本発明における文章生成モデルへの項目情報及び補助情報の入力に当たる。生成命令の生成処理の詳細については後述する。
【0079】
提案部15は、生成命令に対する文章生成モデルの出力に基づいて、対象文書における不足項目の作成を支援するための提案情報を出力する。本実施形態では、提案情報をユーザ端末2に送信することにより、出力を行う。本実施形態では、提案情報は、文章生成モデルにより生成された、不足項目に対応する案文を含み、ユーザ端末2において表示される後述の提案画面によりユーザに提示される。
【0080】
データベースDBは、項目種別に対応付けて複数の記載例を記憶する。本実施形態では、データベースDBが記憶する記載例は、過去に取決めの過程において作成された法律文書における記載であり、過去の法律文書の記載が項目種別に対応付けて登録されている。
なお本発明における記載例は実際に過去に行われた取決めの過程で作成された法律文書に限られない。例えば、自社独自の法律文書のひな形を、項目種別に対応する記載例としてデータベースDBに登録してもよい。
【0081】
項目種別とは、項目をその趣旨により区分するものであり、各項目が何を定めるものであるのかを特定する種別である。例えば、1.定義において述べた通り、本実施形態では論点を項目とする。したがって本実施形態では論点の種別又は論点を項目種別とし、データベースDBにおいては、論点の種別又は論点に対応付けて記載例が登録され、各記載例は、各論点に関係する範囲の記載内容の例を示す。なお条項を項目とする場合には、条項ごとにその内容を記載例として登録すればよい。
【0082】
例えば、契約類型ごとに、契約書に含まれうる論点の種別を規定することができる。より具体的には、例えば「秘密保持契約」の契約類型においては、論点の種別として、秘密情報の例外規定、損害賠償の責任規定、反社条項、等のグループが想定される。なおここでのグループは、ひとまとまりの規定を定める条項のグループに対応する。そしてそれぞれの論点の種別に、個別の論点が1又は複数含まれる。例えば「秘密情報の例外規定」の種別において、具体的に例外として定める事項が「論点」の一例である。論点ごとに、複数の記載例が登録されていてもよい。
【0083】
図4は、本実施形態においてデータベースDBが記憶する、記載例情報の一例である。記載例情報は、記載例IDと、文書IDと、項目種別と、修正強度と、記載例と、を含む。本実施形態において記載例は、過去の取決めにおいて作成された法律文書の、各項目種別に対応する部分の記載内容、又は、項目種別に応じたひな形である。文書IDとは、記載例が過去の取決めにおいて作成された法律文書である場合に、そのもととなった文書を示すIDである。記載例がひな形である場合には、ひな形であることを示すIDが、記載例情報における文書IDとして記憶される。なおデータの構造は任意に変更することができる。
【0084】
またこの他、記載例のもととなった文書の作成日時、文書をデータベースDBに入力した入力者、当該文書を担当した法務担当者、契約類型、契約者(契約の相手)、自社の立場、契約対象等、上述の背景情報に相当するような、各記載例のもととなった文書の背景に関する情報を更に記憶していてもよい。またこのような情報は、文書IDに紐づけて別途記憶してもよい。
【0085】
なお契約類型は、文書が規定する取決めの種類の一例であり、取決めの種類としては、他に非典型契約、規約又は規則の種類等が挙げられる。また自社の立場とは、契約上の立場を指し、例えば秘密保持契約における情報の開示者又は受領者等の情報である。契約対象とは、「取決めの対象」の一例であり、各契約(取決め)において対象となる、商品やサービス、あるいは事業等のことを指す。例えば売買契約における対象商品等が、契約対象に該当する。
【0086】
なお、支援装置1が有する上記の各部及びデータベースDBの一部が、支援装置1とは別のコンピュータ、例えばユーザ端末2や生成装置3に備えられてもよい。また、支援装置1が、表示部や生成装置3を備えていてもよい。
【0087】
<5.処理手順>
次に、
図5を参照して、本実施形態の支援システム0を使用して、対象文書の作成及び修正を行う場合の処理手順について説明する。
図5は、本実施形態の支援システム0における、支援装置1、ユーザ端末2、及び生成装置3による処理手順の一例を示すシーケンス図である。なおここに示す処理は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で省略や変更を行ってもよい。以下の例では、文書の初案の作成及び修正案の作成の両方を本発明により行う場合について説明するが、本発明は初案の作成及び修正のいずれかのみを行ってもよい。また初案の作成及び修正案の作成は、同一のモデルにより行われる必要はなく、それぞれ別のモデルを利用して作成されてもよい。
【0088】
(1)初案作成
ステップS501~ステップS506は、対象文書の初案の作成、即ち、対象文書情報を含まない補助情報に基づく、案文の作成に係る処理である。なおこの処理は必須ではなく、ユーザが自身で作成した対象文書のドラフトや、外部の機械学習モデル等を用いて生成されたドラフト、契約を結ぼうとする相手から受け取った契約書案等を用いてステップS507以降の処理が行われてもよい。
【0089】
まずステップS501において、ユーザ端末2がユーザから補助情報の入力を受け付け、支援装置1に送信する。補助情報としては、例えば背景情報等が想定される。ステップS501においては、対象文書の初案の作成段階であるため、補助情報には対象文書の内容を示す対象文書情報は含まれない。一方ステップS501において送信される補助情報には、作成しようとする項目(不足項目)の項目種別を特定するための情報が含まれる必要がある。例えば、作成の対象とする項目(不足項目)の項目種別をユーザに選択させることで、項目種別を示す情報を背景情報の一部として取得部11が取得してもよいし、背景情報に基づいて、作成すべき項目の項目種別を支援装置1が特定してもよい。
【0090】
具体的には、例えば取引先に情報を提示する際に秘密保持契約を結ぶ場合に、相手との関係は「情報の開示者」、取決めの種類は契約類型である「秘密保持契約」、当事者の要望は「強気な(自身の立場において有利な)契約にしたい」等の修正強度、がそれぞれステップS501において取得される背景情報の例として挙げられる。また契約当事者の氏名又は名称や契約書における呼称(甲、乙)等を、定義情報として取得部11が取得することが好ましい。
【0091】
これらの補助情報の入力においては、選択肢の中からユーザが選択することにより入力する形態が代表的に想定される。なおこの他、自然言語で表現される文章によりユーザが自由記述して、テキストにより補助情報が入力される形態であってもよい。またこれらの補助情報は、契約交渉に用いられるタームシートの内容を示すタームシート情報や、法律文書に記載したい内容についての質問内容及びその回答に基づく質問情報により取得されてもよい。
【0092】
次にステップS502においては、まず特定部13が、データベースDBに記憶された記載例の中から、不足条項の項目種別に対応する記載例のうち、対象文書の作成に用いる記載例を特定する。なお当事者の要望として、修正の強度を示す修正強度を取得部11が取得した場合、特定部13は、データベースDBに記憶された記載例のうち、不足条項の項目種別に対応し、かつ取得された修正強度に対応する記載例を、対象文書の作成に用いる記載例として特定してもよい。生成部14は、特定された記載例及び補助情報に基づいて、不足条項に関する案文を文章生成モデルに生成させるための生成命令を生成する。
【0093】
本実施形態の文章生成モデルは、自然言語による文章を入力として、回答となる文章を生成する会話型のモデルであるため、生成命令は自然言語による文章として生成される。より具体的には、予め用意した指示文、補助情報に基づいて特定される文言及び記載例を組み合わせた文章を生成することにより、生成部14が生成命令を生成することができる。また例えば、補助情報の選択肢ごとに指示文を予め用意して支援装置1の記憶部に格納しておき、補助情報のうち契約類型に応じて指示文を選択し、当該指示文、補助情報に基づいて特定される文言及び、記載例を組み合わせた文章を、生成部14が生成命令として生成する構成であってもよい。なお当事者の要望として、修正の強度を示す修正強度を取得部11が取得した場合、修正強度は記載例の特定に用いられるのに代えて又は加えて、生成部14が、更に取得された修正強度に対応する言葉を組み合わせた文章を、生成命令として生成してもよい。
【0094】
より具体的には、補助情報が選択により入力される場合、まず選択された補助情報に対応する言葉を特定する。例えば、補助情報の選択肢ごとに、それぞれ対応する言葉を予め設定しておくことにより、選択された補助情報に対応する言葉を特定することができる。修正強度に対応する文言を生成命令に含める場合には、修正強度に対応する言葉についても同様に特定する。そして、それらの言葉と、記載例と、別途事前に支援装置1の記憶部に登録された指示文と、に基づいて、生成部14が生成命令を生成する。一方、補助情報が自由記述のテキストで入力される場合には、入力された補助情報、記載例及び事前に用意された指示文を用いて生成命令を生成すればよい。
【0095】
ここで、補助情報に対応する言葉として、補助情報に応じた文書作成のルールを記載した文字列を格納しておくことが好ましい。例えば法律文書においては、規定の一文の中に例外を記載する場合と、一文の後に但し書きの文を別途記載する場合とで、法的な意味が異なることがある。補助情報に応じてこのような記載方法のルールを指定する言葉を組み合わせることにより、適切な法律文書を作成させることができる。なお、補助情報ごとに対応する複数の文書作成ルールのうち、支援装置1が補助情報に基づいて生成命令に含める文書作成ルールを判定してもよいし、複数の文書作成ルールを生成命令に含めるとともに、複数の文書作成ルールから補助情報に基づいて適切な文書作成ルールを使用する旨を生成命令に含めることで文章生成モデルが使用する文書作成ルールを判定する構成としてもよい。
【0096】
指示文としては、例えば「以下の条件に基づいて、次の記載例をもとに文書を作成してください。」、「契約書の取決めを示す補助情報及び記載例を入力します。以下のルールに基づいて、記載例を補助情報にしたがって修正し、適切な契約書の文章を作成してください。」等の文を予め支援装置1の記憶部に格納しておくことができる。あるいは補助情報の選択肢として契約類型ごとに指示文を用意し、例えば「以下の条件に基づいて、次の記載例をもとに、秘密保持契約書を作成してください。」等のように、指示文の中に補助情報に応じた情報を含めることもできる。そして指示文の後に続けて、補助情報に基づく言葉や記載例を続けるよう文章を生成することで、文章生成モデルに対してドラフトの作成を指示するための生成命令を生成することができる。
【0097】
生成命令が生成されると、ステップS503に進み、生成部14が生成命令を生成装置3に送信する。ステップS503における生成装置3への生成命令の送信が、記載例及び補助情報の文章生成モデルへの入力に該当する。生成装置3は、生成命令を受け取ると、当該生成命令を文章生成モデルに入力する。これにより文章生成モデルが契約書の初案を、不足項目(対象文書に必要な全ての項目)に関する案文として出力する(ステップS504)。
【0098】
生成装置3は、文章生成モデルが出力した案文をステップS505で支援装置1に送信する。そしてステップS506で提案部15が、文章生成モデルにより出力された案文に基づいて、対象文書の初案を提案情報としてユーザ端末2に送信する。以上の処理により、ユーザは、補助情報の入力により、対象文書の初案を取得することができる。
【0099】
(2)評価情報の取得
次に、対象文書の評価情報の取得に係る処理について説明する。ステップS507~ステップS509は、対象文書の評価に係る処理である。なおこの処理は対象文書の評価を示す評価情報を取得するための処理である。本実施形態では以下に説明するように、評価部12が対象文書の評価を行うが、外部の装置に対象文書の評価を行わせることで評価情報を取得してもよいし、ユーザ端末2から補助情報とともに評価情報を受信することで評価情報を取得してもよい。なおステップS506及びステップS507を省略して、ユーザの指示を待たずに対象文書の評価まで一貫して実行してもよい。
【0100】
ステップS507では、ユーザ端末2が支援装置1に対し評価要求を送信する。評価要求は、補助情報を含む。ここで送信される補助情報には、評価対象の対象文書の少なくとも一部の内容を含む対象文書情報と、背景情報と、が含まれる。本実施形態では契約書のドラフトを記載した文書のファイルが、対象文書情報としてアップロードされる。
【0101】
支援装置1においては取得部11が評価要求を受信し、評価部12が対象文書情報及び背景情報に基づいて対象文書の評価を実行する。対象文書の評価は、機械学習モデルによる評価やルールベースによる評価等、任意の方法で行われてよい。一例として、本実施形態では背景情報に応じて、ルールベースで条項を評価する方法を用いる。
【0102】
特に本実施形態では、背景情報のうち契約類型及び契約上の立場を用いて、事前に定められた複数の観点により、評価を行う。なお、契約類型はユーザ選択により決定してもよいし、対象文章における文章のタイトルや各条項のタイトルから推定してもよい。また、さらに評価では対象文書における各条項のタイトルを用いてもよい。具体的には、各条項の内容及び複数の条項の関係について、評価を行う。ここで複数の条項とは、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループを指す。例えばグループ内で、A条項の内容に応じてB条項の有無又は内容を判断し、更にその結果に基づいてC条項を確認する、等、内容に応じて評価処理が分岐するように規定しておくことで複数の条項の関係についてルールベースで評価することができる。各条項の内容の評価は、例えば、特定のキーワードが含まれているか、または、特定のキーワード同士の関係性(キーワードXが肯定で使われているか否定で使われているか等)を予め定められたルールによるルールベースで評価することができる。
【0103】
対象文書の評価においては、不要な記載(又は背景情報における相手との関係から、自身が不利になる条項、記載等)が含まれていないか、追加すべき観点(不足項目)がないか、条項の内容が適切か、等の観点から評価が行われる。例えば、不足項目については、予め契約類型および契約上の立場ごとに用意された項目のリストを示す項目テンプレートにそって、各項目が対象文書に含まれているか否かをルールベースで判定し、含まれていない項目を不足項目として決定される。なお、項目ごとのルールによって判定されてもよいし、複数の項目を一つのルールによって判定してもよい。本実施形態では、特に、契約類型ごとに項目テンプレートを用意しておき、契約類型に応じた項目テンプレートにしたがって、不要な記載や不足項目について評価が行われる。
【0104】
本実施形態では、上記のルールと紐づけて、そのルールに違反する場合の指摘事項を事前に支援装置1の記憶部に登録しておくことで、ルールの確認により対象文書に対する指摘事項を特定する。具体的には、上述の評価のルールごとに、指摘事項と、指摘種別と、評価コメントと、リスクレベルと、が予め記憶部に記憶される。本実施形態の指摘種別は、対象文書に含めるべき項目(論点)の不足を意味する「項目不足」と、条項の記載内容の不備を意味する「条項の修正」と、不要な記載、条項又は論点が存在することを意味する「削除項目」と、の3種である。また「項目不足」の指摘種別は、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループについて、グループ内の条項の一部が不足する一部不足と、グループ全体が不足する全部不足と、に更に分けられる。
【0105】
評価コメントとは、対象文書の内容について修正の提案や問題点の指摘を行う、自然言語の文又は文章であり、例えば「協議条項を規定する必要はありませんか。」や「秘密保持義務を負う期間が必要以上に長く設定されていませんか。」等のような文又は文章である。この他更に、その指摘に関する条項についての解説文や、その指摘に関する論点に対応する記載例の情報が評価コメントに含まれていてもよい。またリスクレベルとは、各指摘事項において想定されるリスクの度合いを示す情報である。リスクレベルは、システム側で固定(変更不可)としてもよいし、ユーザの入力により変更できるようにしてもよい。
【0106】
リスクレベルの設定の例は以下の通りである。契約後に問題になりやすく、会社の重要な権利や義務に関わる争点が関連する指摘事項についてはリスクレベル「A」に設定することができる。例えば、「知的財産の帰属」、「損害賠償の範囲」、「秘密情報の定義」等に関する指摘事項が、リスクレベル「A」とする指摘事項の候補になる。また、抜けていても問題となる可能性が低い争点が関連する指摘事項についてはリスクレベル「C」に設定することができる。例えば、「秘密情報の例外」、「途中の報告義務」等が含まれる。そして、複数のグループのうち、AとCに該当しない指摘事項をリスクレベル「B」に設定することができる。なお上記の例の他、リスクレベルは論点ごとに事前に設定されてもよいし、条項の文言に基づいて都度判定されたリスクであってもよい。例えば、条項の文言に基づいて自社が有利か不利かを評価部12が判定し、判定に基づいてリスクレベルが設定されてもよい。
【0107】
以上のように評価部12が評価処理を実行し、対象文書の評価を示す評価情報を生成する。評価情報は、上記の処理で特定された1又は複数の指摘事項の各々について、当該指摘事項に対応する対象文書中の条項と、評価コメントと、リスクレベルと、を含む。また外部の装置やユーザ端末2から評価情報を取得する場合にも、指摘事項ごとに、当該指摘事項に対応する対象文書中の条項と、評価コメントと、リスクレベルと、を含む評価情報が取得される。
【0108】
なお、文章生成モデルを用いて対象文書の評価を行ってもよい。文章生成モデルは、ドラフト作成に用いる文章生成モデルや修正に用いる文章生成モデルと同じものでもよいし、異なっていてもよい。例えば、取得部11が、対象文書情報と背景情報を取得し、評価部12が背景情報に基づいて、予め記憶された対象文書評価に用いる評価ルールを読み出し、対象文書情報と、背景情報に応じた評価ルールと、に基づく評価命令を生成して生成装置3に送信して、生成装置3が生成した対象文書の評価結果(評価情報)を取得する。評価命令は、自然言語による文章として生成される。これにより、文章の表記揺れや表現の違い等による評価への影響が軽減する効果が期待できる。また、複数の評価ルールのうち、背景情報(例えば契約類型)に基づいて読み出された評価ルール(例えば契約類型ごとに設定された項目テンプレートにしたがった評価ルール)を用いることで適切な評価を行うことが期待できる。なお、評価ルールは、予め定められた指摘事項のうちどの指摘事項を対象文書に付与すべきかを対象文章の内容から判定させるルールであってもよいし、予め定められた指摘事項ごとの基準と対象文書の内容とから対象文書に付与すべき指摘事項としての文章を生成させる評価ルールであってもよい。
【0109】
さらに、文章生成モデルによる評価と、ルールベースの評価の両方を併用してもよい。このとき、文章生成モデルによる評価とルールベースによる評価が異なった場合は、ルールベースの評価を優先することが好ましい。これにより、機械学習による評価の不確かさが生じたとしてもルールベースで最低限の評価を保証することができる。なお、背景情報ごとに対応する複数の評価ルールの中から、支援装置1が背景情報に基づいて生成命令に含める評価ルールを選択してもよい。また、複数の評価ルールを評価命令に含めるとともに、複数のルールから背景情報に基づいて適切なルールを使用する旨を評価命令に含めることで文章生成モデルが使用する評価ルールを判定する構成としてもよい。
【0110】
評価部12が対象文書の評価を終えると、ステップS509において評価部12はユーザ端末2に評価情報を送信する。ユーザ端末2が評価情報を受信すると、評価情報が表示処理され処理結果がディスプレイに表示される。
【0111】
図6に、評価情報の表示処理結果としてユーザ端末2において表示される評価画面の表示例を示す。評価画面W6は、画面上部に対象文書の概要及び、評価結果の概要を表示する。画面左側に対象文書情報により特定される対象文書の内容を表示する。また「読み取り内容編集」のボタンが配置され、対象文書情報の内容に誤りがある場合にはこのボタンを選択することにより内容を編集することができる。
【0112】
画面右側には、評価情報に基づく評価結果が表示される。指摘事項ごとに、その指摘が不要項目、不足項目、内容修正のうち何れであるかを示す指摘種別(
図6における「抜け漏れ」及び「修正」の表示)と、指摘事項に対応する条項の記載例及び解説を含む評価コメントと、が表示される。
【0113】
また各指摘事項について、指摘種別ごとに異なる形状の指摘マークW61が付され、種別ごとの通し番号が表示される。同様の指摘マークW61は画面左側の対象文書における当該指摘事項の対応部分にも通し番号とともに表示され、対象文書中の指摘事項に対応する位置をユーザが認識できるように表示されるとともに、対象文書中の対象の部分がハイライト等で強調して表示される。
図6の例では、丸印が条項の修正、三角印が不足項目に関する指摘事項を示す。
【0114】
また指摘マークW61は、リスクレベルによって異なる色で表示される。そしてリスクフィルタ操作部W62を操作することで、リスクレベルに応じて表示する指摘事項をフィルタリングすることができる。
図6においては、リスクレベルが「B」以上、つまりA又はBの指摘事項について表示するよう設定された状態が表示されている。
【0115】
また一括修正ボタンW63及び個別修正ボタンW64が評価結果とともに表示される。これらのボタンをユーザが選択することにより、
図5におけるステップS510の修正要求が送信される。選択されるボタンにより、修正を指示する範囲が異なる。
【0116】
一括修正ボタンW63は、「全項目修正案一括作成」、「A項目修正案作成」、「AB項目修正案作成」の3種がある。「全項目修正案一括作成」が選択されると、全ての指摘事項に関する修正要求が送信される。「A項目修正案作成」が選択されると、リスクレベルがAの指摘事項についての修正要求が送信される。「AB項目修正案作成」が選択されると、リスクレベルがAの指摘事項及びリスクレベルがBの指摘事項に関する修正要求が送信される。また指摘事項ごとに表示された個別修正ボタンW64が選択されると、当該指摘事項についての修正要求が送信される。
【0117】
またこの他、指摘種別に応じて一括修正を求める入力を受け付けてもよい。例えば、項目不足の指摘事項について、不足項目の案文の作成をまとめて指示する入力を受け付けたり、条項の修正をまとめて指示する入力を受け付けたりしてもよい。
【0118】
また本実施形態では、一括修正ボタンW63又は個別修正ボタンW64が選択された場合に、更に修正に関する当事者からの要望を受け付ける。例えば複数の修正方針が想定される指摘事項について、その何れかを具体的にユーザが選択することにより修正に関する要望を受け付けることができる。あるいは、一括修正ボタンW63により複数の指摘事項について修正要求をする場合には、例えば全体的に「強気(自社に大きく有利)」「中立」「弱気(修正前より自社有利だが他社の方が有利)」等の修正強度を選択させる構成としてもよい。このとき、ユーザが選択した修正強度に応じた修正案(指摘種別が「条項の修正」である場合)又は案文(指摘種別が「項目不足である場合」)のみを生成する命令を生成してもよいし、全ての修正強度の修正案又は案文を生成する命令を生成してもよい。また、このような要望は自由記述のテキストにより入力されてもよい。
【0119】
ここで、一括修正ボタンW63のうち「A項目修正案作成」及び「AB項目修正案作成」のように一部の項目を修正するボタンや、個別修正ボタンW64のように、一部の指摘事項に関する修正要求を行う場合、修正要求には、当該指摘事項に関する事項(項目情報及び、対応する部分についての対象文書情報)のみが含まれる。これにより、全項目(対象文書全体)を一括修正する場合よりもA項目やAB項目等の一部の項目を修正する場合の方が、また更にひとつの指摘事項を指定して一つの項目を修正する場合の方が、より修正命令が短くなる。
また、一部を個別に修正することにより、例えば対象文書の一文の中に複数の指摘事項が含まれる場合等に、複数の指摘事項の修正に伴う整合性の問題を生じにくくすることができる。
更に、ユーザが個別に必要な部分を選択して修正を行うことにより、処理時間が短縮され、修正に係る時間を短縮することができる。
これらの作用により、ユーザ体験を向上する効果が期待できるため、複数の指摘事項のうち一部、特に、ユーザが選択した指摘事項に対応する部分について、項目情報及び補助情報を取得して、修正を行うことがより好ましい。
【0120】
(3)修正処理
次に、対象文書の修正処理について説明する。上述のように修正要求を受け付けると、において取得部11が、補助情報として、ユーザ端末2から対象文書情報及び評価情報を取得する。対象文書情報としては、対象文書の全文の内容を取得してもよいし、前文や修正要求の対象である指摘事項に対応する条項や、その前後の条項のみの内容を取得してもよい。指摘事項に対応する条項とは、例えば指摘種別が項目不足である場合には、その不足項目に関連する条項であり、指摘種別が条項の修正である場合には、修正の対象となる条項である。特に指摘種別が項目不足である場合、対象文書情報は、対象文書における不足項目の挿入箇所を示す情報と、当該挿入箇所の前後の記載内容と、を含む。
【0121】
より具体的には、指摘種別が一部不足である場合に、不足項目に関する条項と同じグループに属する他の条項の記載内容が、対象文書情報として取得される。また指摘種別が条項の修正である場合にも、修正の対象となる条項が、何れかの条項のグループに含まれる場合には、同じグループに属する他の条項の記載内容が、対象文書情報に含まれることが好ましい。また、挿入箇所を示す情報は、対象文書において不足項目を挿入すべき場所を示す情報であり、例えば「A条項とB条項の間」といった情報である。このとき、当該挿入箇所の前後の記載の内容は、例えばA条項の内容とB条項の内容である。なお、挿入箇所の決定は不足項目に関連する項目および挿入ルール(例えばB条項が不足している場合はB条項に関連するA条項の下、等)を予め定め、その関連する項目および挿入ルールにしたがって挿入箇所を決定する。なお、挿入箇所の決定は、契約類型や契約上の立場ごとに用意された項目のリストを示す項目テンプレートに基づいて不足項目と充足項目(対象文書に含まれていると判定された項目)を定め、不足項目と充足項目のリスト上での位置関係に基づく挿入ルール(例えば不足条項のリスト位置と条件を満たす充足条項のリスト位置に基づき挿入箇所を決定する、等)により挿入箇所を決定してもよい。
【0122】
また本実施形態の取得部11は、更に背景情報及び、ステップS510において修正要求とともに送信される修正強度を取得する。本実施形態では、ステップS501又はステップS507でユーザ端末2から受信した背景情報と、ステップS508で評価部12が生成した評価情報とを、記憶部に格納しておき、取得部11がそれらに基づいて評価情報及び背景情報を更に取得する。なお対象文書の作成及び評価を外部の装置により実施する場合は、取得部11が、ユーザ端末2や当該外部の装置から、対象文書情報及び評価情報を取得すればよい。
【0123】
またステップS511において、取得部11は、データベースDBから記載例を取得する。条項の修正案又は不足項目に関する案文の作成に用いる記載例は、データベースDBに登録された記載例の中から、指摘事項に対応する論点の項目種別に基づいて選択される。具体的には、取得部11がまず評価情報に基づいて不足項目の項目種別を特定する。そして、特定部13が、当該項目種別に対応する記載例のうち、取得部11が取得した修正強度と一致する記載例を、データベースDBの中から特定する。そして取得部11が、その記載例をデータベースDBから取得する。また記載例に代えて、評価情報に含まれる評価コメントを、取得部11が項目情報として取得する構成であってもよい。ここでの評価コメントは、対象文書の内容について修正の提案や問題点の指摘を行う、自然言語の文又は文章であって、記載例を含まないものであってよい。
【0124】
そして生成部14が、記載例(項目情報)、対象文書情報、評価情報、背景情報及び修正に関する当事者の要望の情報に基づいて、文章生成モデルに対象文書の修正案又は不足項目の案文を生成させるための生成命令を生成する。本実施形態の文章生成モデルは、自然言語による文章を入力として、回答となる文章を生成する会話型のモデルであるため、生成命令は自然言語による文章として生成される。
【0125】
本実施形態の生成部14は、ステップS507の評価要求に係る指摘事項の内容に応じて、生成装置3に送信する命令を生成する。指摘事項の指摘種別が条項の修正である場合には、対象文書における当該指摘事項に対応する部分の内容を示す対象文書情報と、背景情報と、に基づいて、当該指摘事項に係る修正案を生成するよう指示する生成命令を生成する。そして、これを生成装置3に送信することにより、対象文書情報及び背景情報を入力として、生成装置3から修正案を出力として取得する。なおこれに加えて、記載例を更に入力として用いてもよい。
【0126】
一方、指摘事項の指摘種別が項目不足である場合には、項目情報、例えば特定部13により特定された記載例と、補助情報と、に基づいて、不足項目に関する案文を生成するよう指示する生成命令を生成する。そして、これを生成装置3に送信することにより、記載例及び補助情報を入力として、生成装置3から修正案を出力として取得する。ここで補助情報としては、対象文書情報、背景情報、文体情報、定義情報及び評価情報の一部又は全部を用いることができる。
【0127】
具体的には、生成命令として、修正又は不足項目に関する案文の生成に関する指示を指摘事項ごとに記載した文章を生成する。ただし、例えば一つの条項又はひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループの中に複数の指摘事項がある場合、指摘事項単位で生成命令を生成すると、矛盾する複数の修正案又は案文が生成される等の問題が生じる可能性がある。したがって本実施形態の生成部14は、複数の指摘事項が存在する条項又は条項のグループに関する生成命令については、当該複数の指摘事項に対応する条項又は条項のグループごとに、生成命令の文章を生成する。
【0128】
以下生成命令の生成について具体的に説明する。まず背景情報について、背景情報が選択により入力される場合、まず選択された背景情報に対応する言葉を特定する。例えば、背景情報の選択肢ごとに、それぞれ対応する言葉を予め設定しておくことにより、選択された背景情報に対応する言葉を特定することができる。
【0129】
また要望の情報についても同様に、選択により入力される場合には、まず選択された要望に対応する言葉を特定する。例えば、対象の指摘事項及び要望の選択肢の組み合わせごとに、それぞれ対応する言葉を予め設定しておくことにより、選択された要望に対応する言葉を、指摘事項ごとに特定することができる。
【0130】
そして、それらの言葉と、対象文書情報と、記載例(項目情報)と、別途事前に支援装置1の記憶部に登録された指示文と、に基づいて、生成部14が生成命令を生成する。一方、背景情報及び要望が自由記述のテキストで入力される場合には、記載例(項目情報)と、入力された背景情報と、事前に用意された指示文と、を用いて生成命令を生成すればよい。
【0131】
ここでも文書の初案作成における生成命令の生成と同様に、背景情報に対応する言葉として、背景情報に応じた文書作成のルールを記載した文字列を格納しておくことが好ましい。例えば法律文書においては、規定の一文の中に例外を記載する場合と、一文の後に但し書きの文を別途記載する場合とで、法的な意味が異なることがある。背景情報に応じてこのような記載方法のルールを指定する言葉を組み合わせることにより、適切な法律文書を作成させることができる。なお、背景情報ごとに対応する複数のルールのうち、支援装置1が背景情報に基づいて生成命令に含めるルールを判定してもよいし、複数のルールを生成命令に含めるとともに複数のルールから背景情報に基づいて適切なルールを使用する旨を生成命令に含めることで文章生成モデルが使用するルールを判定する構成としてもよい。
【0132】
指示文は、指摘種別に応じて異ならせることが好ましい。例えば、条項の修正に関する指示文としては、「上記のドラフトに対して、レビューの結果以下の指摘がなされました。指摘を踏まえ、以下の条件に基づいて、修正案を作成してください。」、「上記のドラフトに対して、レビューの結果以下の指摘がなされました。指摘を踏まえ、下記の記載例を参考に、適切な契約書の文章を作成してください。」等の文を予め支援装置1の記憶部に格納しておくことができる。そして、記載例と、対象文書情報と、指示文と、背景情報や評価情報に基づく言葉と、を組み合わせた文章を、文章生成モデルに対して条項の修正案の生成を指示するための生成命令として生成すればよい。
【0133】
また例えば、条項不足に関する指示文としては、「上記のドラフトには、以下の論点が不足しています。以下の条件に基づいて、記載例を参考に、不足する論点に関する案文を作成してください。」、「上記のドラフトに対して、レビューの結果以下の指摘がなされました。指摘を踏まえ、下記の記載例を参考に、不足する論点を追加した条項の案文を作成してください。」等の文を予め支援装置1の記憶部に格納しておくことができる。また更に一部不足と全部不足でそれぞれ異なる指示文を用意しておくことが好ましい。そして、記載例(項目情報)と、対象文書情報と、指示文と、背景情報や評価情報に基づく言葉と、を組み合わせた文章を、文章生成モデルに対して不足条項に関する案文の生成を指示するための生成命令として生成すればよい。
【0134】
生成命令が生成されると、ステップS512に進み、生成命令を生成部14が生成装置3に送信する。なお指摘事項ごと、条項ごと又は条項のグループごとの生成命令は、それぞれ複数回に分けて送信されてもよい。例えば、まず生成命令のうち指示文の部分を送信し、続けて指摘事項や要望に応じた言葉を送信するように構成することもできる。また、生成命令の文字数に応じて、一度に送信するか複数回に分けて送信するかを決定する構成としてもよい。
【0135】
生成装置3は、生成命令を受け取ると、当該生成命令を文章生成モデルに入力する。これにより文章生成モデルが対象文書の条項の修正案又は不足項目に関する案文を出力する(ステップS513)。なお生成部14が、ステップS511においてひとつの指摘事項に対して複数の修正案又は不足項目に関する案文を提案するよう命令する生成命令を生成してもよい。
【0136】
さらに、評価情報に基づいて修正理由も生成するように生成命令を送信し、修正案又は案文に加えて修正理由を取得してもよい。さらに、修正理由は自社向けの修正理由(または自身のクライアント向けの修正理由)と、相手向けの修正理由と、を生成させ、取得するようにしてもよい。契約交渉では自社と相手でお互いに修正を繰り返すが、このとき社内に説明するための修正理由と、社外に説明するための修正理由の少なくともどちらかを記載することが多い。修正理由の記載には高い専門性が必要であるが、上記構成により、専門的な知識がないユーザであっても修正理由を記載することができるよう支援することができる。
【0137】
ステップS514では、生成装置3により生成された修正案又は案文を、生成部14が取得する。そして提案部15が、修正案又は案文に基づいて提案情報を生成し、ステップS515において、提案情報をユーザ端末2に送信する。ユーザ端末2においては、提案情報に基づく提案画面が表示される。
【0138】
(4)再評価処理
図5においては省略したが、本実施形態では、上述のステップS508における評価情報の取得処理と、ステップS511~ステップS514の修正処理を繰り返すことによって、より提案の質を高めることができる。
【0139】
本実施形態の評価部12は、生成命令に対する文章生成モデルの出力として、対象文書の修正案又は案文を生成装置3から受信する。そして、修正案又は案文を反映した場合の対象文書全体の評価を示す評価情報を取得して、その評価が事前に設定された基準を満たすか否かを判断する。なお本実施形態では、評価部12が再評価を実行し、その結果として評価情報を生成するが、外部の評価装置に修正後の対象文書の内容を送信して、その評価結果として当該評価装置から評価情報を取得してもよい。
【0140】
評価部12は、評価が基準を満たす場合には、提案部15に、提案情報を送信させる。一方評価が基準を満たさない場合には、生成部14が、修正案又は案文の内容を示す情報、評価情報、背景情報、及び記載案に基づいて、修正案又は案文の修正を行うことを指示する生成命令を生成する。そして生成部14が生成命令を文章生成モデルに送信することで、修正案又は案文に対する修正案が更に文章生成モデルにより生成される。
【0141】
本実施形態の評価部12は、修正案の評価が所定の基準を満たすか、又は終了条件を満たすまで、修正案の取得と評価を繰り返すよう構成される。所定の基準としては、例えば、評価情報に含まれる後述の指摘事項ごとのリスクレベルが所定のリスクレベル以下となることを設定することができる。また終了条件としては、例えば繰り返し回数の上限や、修正により変更された文字数の下限を設定すること等が想定される。以下、評価情報の取得及び修正の繰り返しに係る処理について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0142】
まず文章生成モデルの出力である修正案又は案文を支援装置1が受信すると、評価部12は、ステップS701でこの修正案又は案文を取得する。
【0143】
そしてステップS702において再評価を実行する。具体的には、修正案に対して上述の評価処理と同様の手順で再評価を行う。そして修正案の評価を示す評価情報が、ステップS508と同様にして生成される。ここで再評価においては、対象文書全体ではなく、先の指摘事項に関する部分のみを対象としてもよい。具体的には、修正案が示す条項又は条項のグループを再評価の対象として評価を行い、その他の部分については再評価を省略することができる。これにより、処理速度の向上効果が期待される。
【0144】
次に、ステップS703で修正案の評価が事前に設定された基準を満たすか否かを判断する。本実施形態では評価情報における指摘事項のリスクレベルを確認し、全ての指摘事項のリスクレベルが所定のリスクレベル以下である場合に基準を満たすと判断する。
【0145】
基準を満たさない場合にはステップS705に進み、ループの回数(修正回数)が上限に達したか否かを確認する。上限に達していない場合(ステップS705で「Y」)は、ステップS706に進み、評価部12が生成部14に再度生成命令を生成及び送信させ、ループ回数のカウンタを加算してステップS701に戻る。
【0146】
ステップS703で基準を満たす場合、又はステップS705で修正回数が上限に達した場合は、ステップS704に進み、評価部12が提案部15に提案情報を生成させる。そして提案部15がユーザ端末2に提案情報を送信(
図5のステップS515に相当)して処理を終了する。なお上記の処理手順は一例であり、例えばステップS703とステップS705の判断順序を入れ替える等、任意に変更してよい。
【0147】
原則として事前に設定された基準を満たすまでループ処理を行うが、極端に繰り返し回数が多くなったり、ループを抜けられなくなったりすると処理負荷の増大が懸念される。したがって本実施形態では、終了条件としてループ処理の上限回数を定め、再評価が基準を満たさない場合でも、終了条件を満たした場合には再評価の繰り返しを終了しループ処理を抜けてステップS515に進む。また終了条件としては、この他にも、例えば修正前後の文書を比較して変更された文字数が一定以下になること等を設定してもよい。これにより、わずかな修正のみが発生する状況を繰り返すことを防ぐことができる。
【0148】
(5)提案画面
次に
図8を用いて、提案情報の表示処理結果としてユーザ端末2において表示される、提案画面について説明する。
図8は、本実施形態における提案画面の表示例である。本実施形態の提案画面W8は、先に示した評価画面W6と似た構成で表示され、指摘マークW81及びリスクフィルタ操作部W82については評価画面W6における指摘マークW61及びリスクフィルタ操作部W62と同様であるため説明を省略する。
【0149】
評価画面W6と異なるのは主に画面右側の表示内容であり、特に「修正提案」に係る部分である。提案画面W8においては、提案情報に含まれる修正案又は不足条項に関する案文に基づく表示として、指摘事項ごとに修正提案W83が含まれる。修正提案W83は、上述の修正案を表示するとともに、そのテキストをコピーできるよう表示する。また本発明の支援プログラムが、文書編集ソフトウェアにおいてアドオン(アドイン、プラグイン)されるプログラムとして提供される場合には、コピーボタンの代わりに修正ボタンを配置してもよい。この場合、ユーザが修正ボタンを操作すると、文書編集ソフトウェア上で、直接修正案による修正が行われる。
【0150】
またドラフトからの変更点についてハイライト等で強調表示することによりユーザが認識しやすいようにすることが好ましい。これにより、ユーザは指摘事項ごとにその内容と修正案又は不足項目に関する案文を得ることができ、法律知識に詳しくないユーザであっても自力で法律文書の修正を行うことができる。
【0151】
なお指摘事項に対して複数の修正案又は案文を取得した場合、これらの提案情報において当該指摘事項について複数の修正案又は案文が含まれるため、提案画面W8においても、当該指摘事項に対して修正提案W83を複数表示してユーザが選択できるようにすることが好ましい。
【0152】
なお提案情報の出力方法としては上記の提案画面W8の表示に限られず、例えば少なくとも一部の指摘事項に対して修正案を適用した対象文書全体について文書形式のファイルを、提案部15がユーザ端末2に送信してもよい。また提案画面W8において表示された修正提案について反映するか否か、又は何れの修正提案を反映するかをユーザに選択させ、その結果に基づいてドラフト全体を修正した文書形式のファイルを提案部15が更にユーザ端末2に送信してもよい。
【0153】
以上のように、本実施形態の支援システムによれば、契約書等の法律文書のドラフトについて、専門的な知識がないユーザであっても修正を行うことができるよう支援することができる。また不足項目についても、記載案をもとに適切な案文を作成することができる。更に修正案又は案文の再評価及びその結果に応じた再度の修正案作成の命令により、対象文書修正の質を向上させることができる。
【0154】
また自然言語の文章による命令を生成することにより、文章を入力として回答となる文章を生成する会話型の文章生成モデルを利用した修正案又は案文の作成が可能となる。これにより、契約の背景や要望等の種々の条件を考慮した修正案又は案文をモデルに生成させることができ、よりユーザの状況や希望に沿った対象文書の修正案又は案文を提供することができる。
【0155】
さらに、文章生成モデルに評価情報に基づいて修正理由も生成するように生成命令を送信し、修正理由を提案情報に含めるようにしてもよい。さらに、修正理由は自社向けの修正理由(または自身のクライアント向けの修正理由)と、相手向けの修正理由と、を生成するようにしてもよい。契約交渉では自社と相手でお互いに修正を繰り返すが、このとき社内に説明するための修正理由と、社外に説明するための修正理由の少なくともどちらかを記載することが多い。修正理由の記載には高い専門性が必要であるが、上記構成により、専門的な知識がないユーザであっても修正理由を記載することができるよう支援することができる。
【符号の説明】
【0156】
0 :支援システム
1 :支援装置
11 :取得部
12 :評価部
13 :特定部
14 :生成部
15 :提案部
2 :ユーザ端末
3 :生成装置
10 :情報処理装置
101 :制御部
102 :記憶部
103 :通信部
90 :端末装置
901 :制御部
902 :記憶部
903 :通信部
904 :入力部
905 :出力部
NW :ネットワーク
W6 :評価画面
W61 :指摘マーク
W62 :リスクフィルタ操作部
W63 :一括修正ボタン
W64 :個別修正ボタン
W8 :提案画面
W81 :指摘マーク
W82 :リスクフィルタ操作部
W83 :修正提案
【要約】 (修正有)
【課題】法律文書の作成又は修正を支援する支援プログラム、支援システムおよび支援方法を提供する。
【解決手段】作成又は修正の対象となる法律文書である対象文書の作成又は修正を支援するための支援プログラムであって、コンピュータを、取得部と、生成部と、提案部と、として機能する支援装置として動作させる。取得部は、対象文書において不足する、不足項目に対応する記載内容に関する項目情報と、対象文書に関する対象文書に応じた提案を行うための補助情報と、を取得し、生成部は、項目情報及び補助情報を文章生成モデルに入力し、提案部は、文章生成モデルの出力に基づいて、対象文書における不足項目の作成を支援するための提案情報を出力する。
【選択図】
図3