(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】フレキシブルチューブの根元部分保持力を向上させた物品
(51)【国際特許分類】
F16M 11/40 20060101AFI20241115BHJP
F16M 11/00 20060101ALI20241115BHJP
B24C 1/06 20060101ALI20241115BHJP
B24C 1/04 20060101ALI20241115BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F16M11/40 A
F16M11/00 C
F16M11/00 Z
B24C1/06
B24C1/04 E
B24C3/32 Z
(21)【出願番号】P 2021163117
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591126231
【氏名又は名称】株式会社ダイフレックス
(72)【発明者】
【氏名】木内 健一
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-185236(JP,A)
【文献】実開昭58-114683(JP,U)
【文献】特開2012-7651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0092875(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/40
F16M 11/00
B24C 1/06
B24C 1/04
B24C 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
フレキシブルチューブの根元部分から先端部分にかけてサンドブラスト
による表面粗度を荒くする機械的処理でフレキシブルチューブのフレキシブルチューブ外側の下巻線と上巻線の屈曲時に接触する部分を含めた表面の面粗度を変化させる処理の処理条件を徐変させることにより、フレキシブルチューブ
のフレキシブルチューブ外側
の内巻線と外巻線の屈曲時に接触する部分の面粗度が根元部分を離れるにしたがって小さくなり、これに伴って、フレキシブルチューブの屈曲における
屈曲形状を保持する下巻線と上巻線の屈曲時に接触する部分の摩擦抵抗が根元から先端部にゆくにしたがって小さくなることにより、根元部分は
屈曲形状を保持する力が高く、サンドブラストによる表面粗度を荒くする機械的処理の影響の少なくなる
フレキシブルチューブ先端部のフレキシブルチューブ外側の下巻線と上巻線の屈曲時に接触する部分の表面の表面粗度は先端部にゆくに従ってフレキシブルチューブの素材本来の
面粗度となり、先端部の下巻線と上巻線の屈曲における屈曲形状を保持する事に寄与する摩擦抵抗力は素材本来の面粗度による屈曲形状を保持する力となる事を特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属屈曲管フレキシブルチューブの根元部分の保持力を高めることに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属屈曲管フレキシブルチューブは先端部に灯具又は音響機器等を搭載してこれを保持する機構を有しているが、使用上フレキシブルチューブの根元部分に応力が集中しやすくこの部分の屈曲保持力の補強が課題であった。[
図1]これまでの解決方法としては、
フレキシブルチューブの外径を太くしたもので解決する方法
フレキシブルチューブの根元内部に補強材を装着する方法
フレキシブルチューブの根元外周部に熱収縮チューブ他補強材を被覆する方法
根元部は太いフレキシブルチューブで中継金具を介して先端部は細いフレキシブルチューブに接続する方法
等の方法で対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-229292
これは先に挙げたフレキシブルチューブの根元外周部に補強材を施す従来技術の一例である。
【文献】特願平2-143956
【文献】特開平10-009488
これらは先に挙げたフレキシブルチューブの内部に補強材を装着してフレキシブルチューブの屈曲保持力を向上させた例である。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブルチューブの根元部分の強化の為に外径を太くしたフレキシブルチューブで対応すると根元部分の強化は得られるが同時にフレキシブルチューブ全体の保持力が高まってしまう為しなやかでスムーズな動きを求められるフレキシブルチューブの先端部分の屈曲の簡易操作性を低下させてしまう課題があった。[
図2]
これを解決するために、フレキシブルチューブの内部の根元部分により線等の補強材を装着する方法[
図3]があるが、フレキシブルチューブ内部の電気配線が困難になる問題があり用途が限定されている。また別の方法として、フレキシブルチューブの根元部分に熱収縮チューブ等の補強材を被覆させて根元部の保持力を向上する方法[
図4]があるが、フレキシブルチューブの外観上の問題、補強材の追加による重量増加の問題があった。
これとは別に根元部分は太いフレキシブルチューブで中継金具を介して先端部は細いフレキシブルチューブに接続してフレキシブルチューブの根元部と先端部で保持力の差を実現する解決策も従来採用されてきた方法であるが、2重構造となる事による製造上の組立性の煩雑化と部品点数の増加がありコストアップが問題となっていた。[
図5]
またいずれの方法でも補強されている部分とそれ以外の部分では極端な屈曲特性の差があり、根元部分の保持力の補強は実現できてもフレキシブルチューブ全体としてのしなやかでスムーズな屈曲特性を満たせない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
フレキシブルチューブについては[
図6]に示すように下巻線の密着コイルバネのスプリング材の表面と上巻線である三角線等との摩擦力によって屈曲形状が保持される機構となっている。このフレキシブルチューブの表面摩擦力とフレキシブルチューブの屈曲保持力の関係に着目した保持力アップの方法である。
従来金属部品にサンドブラスト処理を行うことは、メッキ外観を梨地調に仕上げる表面処理の方法として、もしくは金属表面のサビ、その他付着物の除去を目的とするクリーニング方法として用いられている。
そこでサンドブラストによる外観仕上げ、クリーニングの処理に伴って表面の面粗度が荒くなることを利用してフレキシブルチューブの根元部分に局所的にサンドブラストを行い、フレキシブルチューブの屈曲に伴う表面摩擦力を当該部分のみ高めて当該箇所のフレキシブルチューブの屈曲保持力向上を解決し、サンドブラストの影響が及ばないフレキシブルチューブ先端部分とその周辺は従来屈曲特性を維持して根元部と先端部で保持力の異なるフレキシブルチューブの製法を実現する。[
図7]
【0006】
根元部分を局所的にサンドブラストするだけでも当該箇所とその周辺部ではサンドブラストのブラスト圧力が中心から周辺部にゆくに従って徐々に弱くなりこれに伴ってサンドブラストによる面粗度の粗さも根元部分から先端部分にゆくに従って小さくなり、フレキシブルチューブの屈曲保持力特性も根元部分から先端部分にかけて徐々に低下するスムーズな屈曲特性を有するが、さらに根元部分から先端部分にゆくに従ってサンドブラストの条件を変えて根元部分から先端部分にゆくに伴いフレキシブルチューブの表面の面粗度を徐々に小さくしてゆくことによってフレキシブルチューブの屈曲に伴う表面摩擦力が徐変されることと相関してフレキシブルチューブの屈曲保持力が根元部から先端部にかけて徐々に小さくなることによるしなやかでより一層スムーズな屈曲特性を実現するとともにサンドブラストの影響が及ばない先端部分及びその周辺部の屈曲特性は素材本来の剛性によるの容易な屈曲特性を維持する。
このサンドブラストの条件を根元部分から徐々に変更させる方法としては、エアーサンドブラストのエアーガンとフレキシブルチューブの距離を根元部分から先端部分に向かうにしたがって徐々に大きくしてサンドブラストの処理の影響を根元部分から先端部分にゆくに従って徐々に小さくしてゆく方法[
図8]や、サンドブラストに使うブラスト粉(メディア)を根元部分と、これに近接する部分とで変更して数回に分けてサンドブラスト処理することにより同様の効果を得る方法[
図9]
等がある。
【発明の効果】
【0007】
従来技術のフレキシブルチューブの根元内部に補強材の装着、外部の補強素材の被覆等の方法ではなく、フレキシブルチューブの表面の面粗度を根元部と先端部で変化させるので、フレキシブルチューブの内部の配線構造への影響はない。併せて補強材等の装着がないので、近年全ての工業製品に求められる軽量化の追求に鑑みても課題解決に伴って製品の重量増加はないことと、元来のフレキブルチューブの外観を損ねない解決方法を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】フレキシブルチューブの根元内部の補強材装着構造である。
【
図4】フレキシブルチューブの根元外周部の補強材被覆構造である。
【
図5】フレキシブルチューブの中継金具を介した2重構造である。
【
図7】フレキシブルチューブの根元部サンドブラスト処理構造である。
【
図8】根元部から先端部にかけて距離を変えるサンドブラスト方法。
【
図9】根元部から先端部にかけてブラスト粉を変えるサンドブラスト方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図6はブラスト処理されたフレキシブルチューブを示す。フレキシブル根元部チューブの根元部分を中心にサンドブラストされたフレキシブルチューブはサンドブラスト処理の影響を強く受ける根元部分の表面が荒く、これによりフレキシブルチューブ屈曲時の表面摩擦力が根元部分は高く、且つ根元部分から先端部に行くにしたがってサンドブラストの影響が小さくなりこれに伴ってフレキシブルチューブの屈曲時の表面摩擦力が根元部分に対して小さくなってゆく。この屈曲時の表面摩擦力の差によりフレキシブルチューブの屈曲時の保持力が根元部分では高く、先端部にゆくにしたがって徐々に素材本来の剛性による屈曲保持力になる根元部分の屈曲保持力を大きくしたフレキシブルチューブで且つ先端部分は従来の屈曲簡易操作性を維持した物品となる。
【0010】
図7ないし
図8は本発明に係るサンドブラスト加工の処理例を示す。
図7はサンドブラスト処理におけるエアー圧力、ブラスト粉の種類及び量等の条件は一定の状態でフレキシブルチューブとサンドブラストのエアーガンとの距離をフレキシブルチューブの根元部分から先端部分に向かうにしたがって大きくして意図的に徐々にサンドブラストの影響をフレキシブルチューブの根元部分から先端部分にかけて徐々に小さくして行くサンドブラストの加工例である。
これによりフレキシブルチューブ表面の面粗度及び屈曲の表面摩擦力が、根元部から先端部に向かうにしたがって徐々に低下し、これに伴って、根元部分から先端部にかけて変化して行く屈曲保持力がより一層スムーズになるフレキシブルチューブである。
図8はサンドブラスト加工において、フレキシブルチューブとサンドブラストのエアーガンの距離は一定で他の条件(エアー圧、ブラスト粉等)の条件を変えて数回に分けて根元部から先端部に向けてサンドブラスト処理を行って、根元部分から先端部分にかけて徐々に小さくして行くサンドブラストの加工例である。これによりフレキシブルチューブ表面の面粗度及び屈曲の表面摩擦力が、根元部から先端部に向かうにしたがって徐々に低下し、これに伴って、根元部分から先端部にかけて変化して行く屈曲保持力がより一層スムーズになるフレキシブルチューブである。
【符号の説明】
【0011】
1フレキシブルチューブ
2灯具その他
3台座部
4太いフレキシブルチューブ
5補強材
6熱収縮チューブ等の補強材被覆
7中継金具
8サンドブラスト処理部
9エアーガン位置
10下巻線
11上巻線