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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20241115BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241115BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F110:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020218609
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103770
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭人
(72)【発明者】
【氏名】小林 純哉
(72)【発明者】
【氏名】永田 亮介
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-175233(JP,A)
【文献】特開平04-036535(JP,A)
【文献】特開2020-169808(JP,A)
【文献】特開2020-169813(JP,A)
【文献】米国特許第05701750(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被空調空間へ空調空気を供給する空調ユニットと、
前記空調ユニットの外郭を形成するユニット本体と、
前記ユニット本体に取り込んだ空気の空調を行う空気調和機と、
前記空気調和機で空調された空気を前記ユニット本体外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機と、
前記空気調和機と前記送風機の送風を制御するコントローラと、
を備え、
前記空調ユニットは、前記複数の被空調空間とは独立した設置スペースに設置され、
前記コントローラは、前記送風機を第一風量で制御している場合に、前記空気調和機で空調された空気が前記空気調和機へショートサーキットしていると判定すると、前記送風機を前記第一風量よりも大きい第二風量に切り替えて制御し、
前記コントローラは、複数の前記空間のうち少なくとも一つの空間における空気の温度である空間温度と、前記空気調和機に取り込んだ空気の吸込温度とに関する情報を取得し、前記空間温度と前記吸込温度との間の温度差が第一基準値以上である場合に、前記ショートサーキットが発生していると判定することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第二風量が、前記空気調和機が吹き出す空気調和機風量よりも大きくなるように制御することを特徴とする請求項に記載の空調システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第二風量と前記空気調和機風量との間の風量差が、基準風量以下となるように制御することを特徴とする請求項に記載の空調システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記吸込温度の時間変化量が第二基準値以上である場合に、前記ショートサーキットが発生していると判定することを特徴とする請求項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記空間温度は、複数の前記空間におけるそれぞれの前記空間温度のうち、暖房運転時における最も高い温度、あるいは、冷房運転時における最も低い温度であることを特徴とする請求項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の複数の部屋を1つの空気調和機で空調することを可能にする空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空調システムとして、住宅の一部の専用スペースにエアーコンディショナ(空気調和機)を設置し、エアーコンディショナによって専用スペース内に温調した空気(冷風もしくは温風)を吹き出し、この温調された空気を送風機によりダクトを介して各居室に送風し、各居室の空調を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の空調システムでは、エアーコンディショナの吹出空気は、各居室の室温と空調システムの設定温度等を用いて住宅全体の空調要求量を判断し、それに基づいてエアーコンディショナの風量及び吹出温度を調節するようにしている。一方、空調機から各居室に供給する風量は、各居室の室温と空調システムの設定温度との差分を用いて制御し、各居室への供給熱量を調節するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-257399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の空調システムにおいては、汎用品である空気調和機が全館空調として利用可能であるという利点を有する。しかしながら、一般的には、空気調和機は、空調能力に見合った広さの居室に利用されるのであるが、全館空調で利用する場合には、居室より狭い空間である空調ユニット内に隠蔽されて利用される。それゆえ、空気調和機から吐出した空調空気がすぐさま空気調和機に再流入してしまう現象、いわゆるショートサーキットが生じることがある。これにより、従来の空調システムでは、空気調和機が設定温度に到達したと誤検知し、居室が設定温度に空調される前に空気調和機の空調動作が停止してしまうという課題を有していた。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、空調ユニット内に設置された空気調和機の誤検知による空調停止を抑制することが可能な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る空調システムは、複数の被空調空間へ空調空気を供給する空調ユニットと、空調ユニットの外郭を形成するユニット本体と、ユニット本体に取り込んだ空気の空調を行う空気調和機と、空気調和機で空調された空気をユニット本体外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機と、空気調和機と送風機の送風を制御するコントローラと、を備える。そして、コントローラは、送風機を第一風量で制御している場合に、空気調和機で空調された空気が空気調和機へショートサーキットしていると判定すると、送風機を第一風量よりも大きい第二風量に切り替えて制御する。そして、空調ユニットは、複数の被空調空間とは独立した設置スペースに設置され、コントローラは、複数の空間のうち少なくとも一つの空間における空気の温度である空間温度と、空気調和機に取り込んだ空気の吸込温度とに関する情報を取得し、空間温度と吸込温度との間の温度差が第一基準値以上である場合に、ショートサーキットが発生していると判定することを特徴としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空調ユニット内に設置された空気調和機の誤検知による空調停止を抑制することが可能な空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システムの構成図である。
図2図2は、空調システムにおける空調ユニットの正面模式図である。
図3図3は、通常運転時における空気の流れを示す空調ユニットの側断面図である。
図4図4は、ショートサーキット発生時における空気の流れを示す空調ユニットの側断面図である。
図5図5は、空調システムにおけるコントローラの機能ブロック図である。
図6図6は、コントローラの基本処理動作を示すフローチャート図である。
図7図7は、ショートサーキット発生時のコントローラの処理動作を示すフローチャート図である。
図8図8は、ショートサーキットの判定処理を示すフローチャート図である。
図9図9は、ショートサーキットの別の判定処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る空調システムは、複数の被空調空間へ空調空気を供給する空調ユニットと、空調ユニットの外郭を形成するユニット本体と、ユニット本体に取り込んだ空気の空調を行う空気調和機と、空気調和機で空調された空気をユニット本体外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機と、空気調和機と送風機の送風を制御するコントローラと、を備える。そして、コントローラは、送風機を第一風量で制御している場合に、空気調和機で空調された空気が空気調和機へショートサーキットしていると判定すると、送風機を第一風量よりも大きい第二風量に切り替えて制御する。
【0011】
こうした構成によれば、ショートサーキットが検知されると、送風機の風量が第一風量から第二風量へと大きくなるので、空調システムでは、ショートサーキットが抑制され、空気調和機が吸い込む空気の温度を誤検知することがなくなり、空気調和機が運転停止してしまう誤動作が抑制される。
【0012】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、空間における空気の空間温度と、空気調和機に取り込んだ空気の吸込温度とに関する情報を取得し、空間温度と吸込温度との間の温度差が第一基準値以上である場合に、ショートサーキットが発生していると判定することが好ましい。これにより、空気調和機に取り込まれる空気の温度情報をもとにショートサーキットの有無を判定するため、ショートサーキットの検知精度が向上し、空気調和機の誤動作を確実に抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、第二風量が、空気調和機が吹き出す空気調和機風量よりも大きくなるように制御することが好ましい。これにより、ショートサーキットをより確実に抑制できるので、空気調和機の誤動作の抑制効果をさらに高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、第二風量と空気調和機風量との間の風量差が、基準風量以下となるように制御することが好ましい。これにより、空調システムでは、送風機の消費電力を抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る空調システムでは、コントローラは、吸込温度の時間変化量が第二基準値以上である場合に、ショートサーキットが発生していると判定してもよい。このようにすることで、ショートサーキット発生時の急激な吸込温度の変化をもとにショートサーキットの有無を判定するため、ショートサーキットの検知精度が向上し、空気調和機の誤動作をより確実に抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る空調システムでは、空間温度は、複数の空間におけるそれぞれの空間温度のうち、暖房運転時における最も高い温度、あるいは、冷房運転時における最も低い温度であるようにしてもよい。このようにすることで、最も厳しい基準でショートサーキットを判定するためより正確にショートサーキットを検知できるため、空気調和機の誤動作抑制の効果をさらに高めることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る空調システム101の概略について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システム101の構成図である。
【0019】
空調システム101は、建物内の複数の空間を1つの空気調和機で空調するためのシステムである。空調システム101は、図1に示すように、空調ユニット1と、複数のダクト11(ダクト11a、11b)と、複数の分岐チャンバ12(分岐チャンバ12a、12b)と、ダンパ13(ダンパ13a~13d)と、室内温度センサ14(室内温度センサ14a~14d)と、給気口15(給気口15a~15d)と、コントローラ30と、を備えて構成される。そして、空調システム101は、空調ユニット1において温調した空気を用いて後述する被空調空間16の空調を行う。
【0020】
具体的には、空調システム101は、建物の一例である住宅100に設置される。住宅100は、例えば、居間、寝室、食堂、書斎等の居室に相当する被空調空間16(被空調空間16a~16d)と、廊下、階段、吹き抜けなどに相当する共用スペース17(共用スペース17a、17b)と、被空調空間16及び共用スペース17とは独立して空調ユニット1が設置される専用設置スペース20とを有している。
【0021】
被空調空間16は、空調システム101において空調の対象となる空間である。被空調空間16は、住宅100の二階に位置する被空調空間16a、16bと、住宅100の一階に位置する被空調空間16c、16dと、を含む。被空調空間16a~16dには、後述する空調ユニット1から温調された空気がそれぞれ給気される。
【0022】
共用スペース17は、空調システム101において空調の対象となっていない空間である。共用スペース17は、住宅100の二階に位置する共用スペース17aと、住宅100の一階に位置する共用スペース17bと、を含む。また、共用スペース17aと共用スペース17bとは、図示しない階段等を介して互いにつながっている。なお、共用スペース17に対して、被空調空間16と同様、後述する空調ユニット1から温調された空気が給気されるようにしてもよい。
【0023】
専用設置スペース20は、空調ユニット1が収納・設置される空間である。また、専用設置スペース20には、扉(図示せず)が設けられており、扉は、例えば、共用スペース17に面している。これにより、専用設置スペース20内の空調ユニット1のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0024】
空調ユニット1は、専用設置スペース20内に設置され、住宅100内の空気を内部に吸い込み、吸い込んだ空気を温調(冷却または昇温)して送出するユニットである。詳細は後述する。
【0025】
ダクト11は、屋根裏18あるいは天井裏19の壁内空間等に設けられ、空調ユニット1と被空調空間16との間を連通接続する部材である。ダクト11は、例えば、その内壁面または外壁面にグラスウールなどで断熱加工が施されている。そして、ダクト11には、ダクト11の空調ユニット1側に分岐チャンバ12が設けられ、ダクト11の被空調空間16側にダンパ13及び給気口15が設けられている。より詳細には、ダクト11は、二階の屋根裏18に設けられたダクト11aと、一階の天井裏19に設けられたダクト11bと、を含む。そして、ダクト11aには、ダクト11aの空調ユニット1側に分岐チャンバ12aが設けられ、ダクト11aの被空調空間16側にダンパ13a、13b及び給気口15a、15bがそれぞれ設けられている。また、ダクト11bには、ダクト11bの空調ユニット1側に分岐チャンバ12bが設けられ、ダクト11bの被空調空間16側にダンパ13c、13d及び給気口15c、15dがそれぞれ設けられている。
【0026】
分岐チャンバ12は、ダクト11の空調ユニット1側に設置され、空調ユニット1から送出される空気(温調された空気)を複数の被空調空間16に分岐するチャンバである。分岐チャンバ12は、ダクト11aに設けられた分岐チャンバ12aと、ダクト11bに設けられた分岐チャンバ12bと、を含む。そして、分岐チャンバ12aは、空調ユニット1から送出される空気を被空調空間16a及び被空調空間16bの2系統に分岐する。分岐チャンバ12bは、空調ユニット1から送出される空気を被空調空間16c及び被空調空間16dの2系統に分岐する。
【0027】
ダンパ13は、ダクト11の被空調空間16側に設置され、モータ等によって全開から全閉まで開度を変更することで、給気口15を通過する空気の風量を調整する部材である。ダンパ13は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、コントローラ30からの制御信号によってダンパ13の開度が制御される。より詳細には、ダンパ13は、分岐チャンバ12aによって分岐された2系統のダクト11aのうち、一方のダクト11aに設けられたダンパ13a及び他方のダクト11aに設けられたダンパ13bと、分岐チャンバ12bによって分岐された2系統のダクト11bのうち、一方のダクト11bに設けられたダンパ13c及び他方のダクト11bに設けられたダンパ13dと、を含む。そして、ダンパ13aは、一方のダクト11aの被空調空間16a側に設置され、給気口15aを通過する空気の風量を調整する。ダンパ13bは、他方のダクト11aの被空調空間16b側に設置され、給気口15bを通過する空気の風量を調整する。また、ダンパ13cは、一方のダクト11bの被空調空間16c側に設置され、給気口15cを通過する空気の風量を調整する。ダンパ13dは、他方のダクト11bの被空調空間16d側に設置され、給気口15dを通過する空気の風量を調整する。
【0028】
給気口15は、被空調空間16の床または壁または天井に設置され、空調ユニット1からの空気(空調空気)を、ダクト11を介して被空調空間16に吹き出す開口である。より詳細には、給気口15は、被空調空間16aに設置される給気口15aと、被空調空間16bに設置される給気口15bと、被空調空間16cに設置される給気口15cと、被空調空間16dに設置される給気口15dと、を含む。そして、給気口15a及び給気口15bは、空調ユニット1からの空気を、ダクト11aを介して被空調空間16a及び被空調空間16bにそれぞれ吹き出す。また、給気口15c及び給気口15dは、空調ユニット1からの空気を、ダクト11bを介して被空調空間16c及び被空調空間16dにそれぞれ吹き出す。
【0029】
また、室内温度センサ14は、被空調空間16内に設置され、被空調空間16の空気の温度(室内温度)を検出する。室内温度センサ14は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、検出した室内温度に関する情報をコントローラ30に出力する。より詳細には、室内温度センサ14は、被空調空間16aに設置される室内温度センサ14aと、被空調空間16bに設置される室内温度センサ14bと、被空調空間16cに設置される室内温度センサ14cと、被空調空間16dに設置される室内温度センサ14dと、を含む。そして、室内温度センサ14aは、被空調空間16aの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。室内温度センサ14bは、被空調空間16bの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。室内温度センサ14cは、被空調空間16cの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。室内温度センサ14dは、被空調空間16dの室内温度を検出してコントローラ30に出力する。なお、被空調空間16の空気の温度(室内温度)は、請求項の「空間温度」に相当する。
【0030】
コントローラ30は、リビング等の生活の主となる居室(例えば、被空調空間16b)内の壁面に設置され、利用者が入力設定した設定情報に基づいた空調システム101の制御として、空調ユニット1の動作及びダンパ13の開度をそれぞれ制御する。詳細は後述する。
【0031】
次に、図2を参照して、空調ユニット1の構成について説明する。図2は、空調システム101の空調ユニット1の正面模式図である。
【0032】
空調ユニット1は、上述した通り、専用設置スペース20内に設置され、住宅100内の空気を内部に吸い込み、吸い込んだ空気を温調(冷却または昇温)して送出するユニットである。
【0033】
具体的には、空調ユニット1は、図2に示すように、ユニット本体2と、エアーコンディショナ3と、送風機4と、吸込口5と、空調機設置空間6と、送風機設置空間7と、吹出口8(図3参照)と、フィルタ9と、吸込温度センサ40と、を有している。
【0034】
ユニット本体2は、空調ユニット1の外郭を形成する筐体である。ユニット本体2は、その上面側に吸込口5が形成され、その背面側に吹出口8(図3参照)が形成されている。そして、ユニット本体2は、その内部にエアーコンディショナ3、送風機4、及びフィルタ9が設置されている。
【0035】
エアーコンディショナ3は、ユニット本体2の上部側に位置する空調機設置空間6に設置され、吸込口5を介して内部に吸い込んだ空気の空調を行う機器である。エアーコンディショナ3は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、コントローラ30からの制御信号によって空調動作(暖房運転動作または冷房運転動作)が制御される。そして、エアーコンディショナ3は、暖房運転の際には、吸い込んだ空気を昇温させて吹き出し、冷房運転の際には、吸い込んだ空気を冷却して吹き出す。また、エアーコンディショナ3は、その内部に吸い込んだ空気の温度を検出する吸込温度センサ40を備える。
【0036】
送風機4は、ユニット本体2の下部側に位置する送風機設置空間7に設置され、エアーコンディショナ3によって温調した空気を、吹出口8から送出するための機器である。送風機4は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、コントローラ30からの制御信号によって送風動作が制御される。そして、送風機4が動作することによって、空調ユニット1による空気の一連の流れが形成される。つまり、住宅100内の空気は、送風機4、吹出口8、ダクト11(分岐チャンバ12及びダンパ13を含む)、給気口15、被空調空間16、共用スペース17、専用設置スペース20、吸込口5、空調機設置空間6(エアーコンディショナ3)、フィルタ9、送風機設置空間7の順に流れるようになる(図1図3を参照)。より詳細には、送風機4は、二階の被空調空間16(被空調空間16a、16b)に空気を送出する送風機4aと、一階の被空調空間16(被空調空間16c、16d)に空気を送出する送風機4bと、を含む。送風機4aは、ユニット本体2の背面側に設けられた吹出口8aと連通し、エアーコンディショナ3によって温調された空気を、吹出口8a及びダクト11aを介して給気口15a、15bから被空調空間16a、16bに送出する。送風機4bは、ユニット本体2の背面側に設けられた吹出口8bと連通し、エアーコンディショナ3によって温調された空気を、吹出口8b及びダクト11bを介して給気口15c、15dから被空調空間16c、16dに送出する。
【0037】
吸込口5は、ユニット本体2の上面に設けられた矩形形状の開口である。吸込口5の矩形幅は、ユニット本体2の幅と同等である。そして、吸込口5は、送風機4が動作することで、専用設置スペース20内の空気を吸い込む。なお、吸込口5が設けられるのは、上面に限らず、エアーコンディショナ3の空気吸込口近傍であればよい。
【0038】
空調機設置空間6は、ユニット本体2の内部の上部側において、エアーコンディショナ3が設置される空間である。
【0039】
送風機設置空間7は、ユニット本体2の内部の下部側において、送風機4が設置される空間である。
【0040】
吹出口8は、後述する図3に示すように、ユニット本体2の背面側に設けられ、ユニット本体2の内部で温調された空気が吹き出す開口である。吹出口8は、ダクト11と連通接続されている。より詳細には、吹出口8は、ダクト11aと連通接続される吹出口8aと、ダクト11bと連通接続される吹出口8bと、を含む。また、吹出口8aは、ユニット本体2の上方に向けて開口され、吹出口8bは、ユニット本体の下方に向けて開口されている。
【0041】
フィルタ9は、空調機設置空間6と送風機設置空間7との間に設置され、通過する空気内のゴミ及び塵埃などの微粒子を取り除き、吹出口8からダクト11を通じて被空調空間16へ供給される空気の浄化を行う部材である。フィルタ9は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタなどのエアフィルタである。フィルタ9は、ユニット本体2の内部において集塵面積を確保するため、所定の厚さのHEPAフィルタをM字状に配置している。
【0042】
吸込温度センサ40は、エアーコンディショナ3の吸込口内部に設置され、エアーコンディショナ3が吸い込む空気の温度(以下、「吸込温度」ともいう)を検出する。吸込温度センサ40は、コントローラ30と無線または有線によって通信可能に接続され、検出した吸込温度に関する情報をコントローラ30に出力する。
【0043】
以上のように、空調ユニット1は、各部材によって構成され、吸込口5から吸い込んだ空気を温調して吹出口8から送出する。
【0044】
次に、図3及び図4を用いて、空調ユニット1による通常運転時とショートサーキット発生時の空気の流れについて説明する。図3は、通常運転時における空気の流れを示す空調ユニット1の側断面図である。図4は、ショートサーキット発生時における空気の流れを示す空調ユニット1の側断面図である。
【0045】
<通常運転時>
通常運転時には、空調ユニット1は、図3に示すように、被空調空間16からの空気Q1を吸込口5から内部に取り入れる。そして、取り入れた空気Q1は、エアーコンディショナ3に吸い込まれ、内部で温調(冷却または昇温)されて空気Q2として空調機設置空間6に吹き出される。吹き出された空気Q2は、フィルタ9を流通して送風機設置空間7に流れ込む。そして、空気Q2は、送風機4を介して吹出口8から空気Q3として送出される。より詳細には、空気Q2は、コントローラ30によって制御されるそれぞれの送風量にて、送風機4aを介して吹出口8aから空気Q3aとして送出され、送風機4bを介して吹出口8bから空気Q3bとして送出される。
【0046】
そして、送出された空気Q3は、ダクト11を介して被空調空間16のそれぞれに分岐して供給される(図1参照)。なお、送風機4の送風量がエアーコンディショナ3から吹き出される風量(吹出風量)よりも多い場合には、吸込口5から空調ユニット1の内部に取り入れた空気Q1の一部は、エアーコンディショナ3を流通することなく、空調機設置空間6に流れ込んでいる。
【0047】
<ショートサーキット発生時>
ショートサーキットは、外乱等の影響によりエアーコンディショナ3から吹き出される風量(吹出風量)と送風機4の送風量との間のバランスが一時的にくずれ、エアーコンディショナ3からの吹出風量が、送風機4の送風量よりも多くなった場合に生じる。そして、ショートサーキット発生時には、空調ユニット1は、図4に示すように、空気Q1とともに、エアーコンディショナ3から吹き出された空気Q2の一部(空気Q4)がすぐさまエアーコンディショナ3に再流入するようになる。エアーコンディショナ3から吹き出された空気Q2の残りは、フィルタ9を流通して送風機設置空間7に流れ込み、送風機4のそれぞれを介して吹出口8から空気Q3として送出される。ここで、従来の空調システムでは、空気調和機(エアーコンディショナ3に相当)が設定温度に到達したと誤検知し、居室が設定温度に空調される前に空気調和機の空調動作が停止してしまっていた。詳細は後述するが、本実施の形態に係る空調システム101では、こうしたショートサーキットが検知されると、送風機4の送風量を増加させてショートサーキットを抑制するように制御している。
【0048】
次に、図5を参照して、空調システム101におけるコントローラ30について説明する。図5は、空調システム101におけるコントローラ30の機能ブロック図である。
【0049】
コントローラ30は、住宅100のリビング等の生活の主となる居室内の壁面に設置され、空調ユニット1(エアーコンディショナ3、送風機4、ダンパ13)の動作を制御する。また、コントローラ30は、利用者による操作を容易にするため、居室の床から人間の顔程度の高さに設置される。コントローラ30は、矩形形状を有し、本体の正面中央領域に表示パネル30j及び表示パネル30jの右側領域に操作パネル30aを備えている。
【0050】
表示パネル30jは、液晶モニタ等であり、表示画面に空調ユニット1の動作状況、設定温度、設定風量、被空調空間16の現在の室内温度、等を表示する。
【0051】
操作パネル30aは、利用者が被空調空間16に対する設定温度(以下、「空間設定温度」ともいう)及び設定風量等を入力するためのボタンスイッチ等である。
【0052】
そして、コントローラ30は、本体の内部にコンピュータのCPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を有する制御ユニットが収納されている。
【0053】
具体的には、コントローラ30の制御ユニットは、入力部30bと、処理部30cと、記憶部30dと、計時部30eと、ダンパ開度決定部30fと、風量決定部30gと、設定温度決定部30hと、出力部30iと、を備える。
【0054】
入力部30bは、室内温度センサ14からの被空調空間16の室内温度に関する情報(第一情報)と、吸込温度センサ40からのエアーコンディショナ3の吸込温度に関する情報(第二情報)と、操作パネル30aからの利用者の入力設定に関する情報(第三情報)とを受け付ける。入力部30bは、受け付けた第一情報~第三情報を処理部30cに出力する。
【0055】
記憶部30dは、処理部30cにより参照または更新されるデータを記憶する。例えば、記憶部30dは、エアーコンディショナ3及び送風機4の動作態様を決定するアルゴリズムを記憶している。また、記憶部30dは、入力部30bが受け付けた第一情報~第三情報を時系列に記憶している。そして、記憶部30dは、記憶したデータ(記憶データ)を、処理部30cからの要求に応じて処理部30cに出力する。
【0056】
計時部30eは、処理部30cが実行するプログラムの中で、必要に応じて時間の測定に使用される。そして、計時部30eは、現在時刻を示すデータ(時刻データ)を処理部30cに出力する。
【0057】
処理部30cは、入力部30bからの第一情報~第三情報と、記憶部30dからの記憶データと、計時部30eからの時刻データとを受け付ける。処理部30cは、受け付けた各情報を用いて、一定時間(例えば5分)ごとに、被空調空間16に必要とされる空調要求量を特定する。より詳細には、処理部30cは、計時部30eから取得する時刻データに基づいて一定時間ごとに、記憶部30dに記憶された空間設定温度と、被空調空間16a~16dに設置された室内温度センサ14a~14dで検知される室内温度との間の温度差に基づいて、被空調空間16a~16dごとに個別に必要とされる空調要求量を特定する。また、処理部30cは、表示パネル30jに表示される情報の変化に応じて、出力部30iを介して表示パネル30jの表示を更新する。
【0058】
ダンパ開度決定部30fは、処理部30cから空調要求量に関する情報を取得し、被空調空間16a~16dごとの空調要求量の比率に基づいてダンパ13a~13dの開度を決定する。そして、ダンパ開度決定部30fは、決定したダンパ13a~13dの開度に関する情報(開度情報)を処理部30cに出力する。
【0059】
風量決定部30gは、処理部30cから空調要求量に関する情報を取得し、空調要求量の平均値または合計値に基づいてエアーコンディショナ3の吹出風量を決定する。また、風量決定部30gは、一階と二階のそれぞれの空調要求量の平均値または合計値に基づいて送風機4(送風機4a、送風機4b)の送風量を決定する。そして、風量決定部30gは、決定したエアーコンディショナ3の吹出風量に関する情報(吹出風量情報)と、決定した送風機4の送風量に関する情報(送風量情報)を処理部30cに出力する。なお、エアーコンディショナ3の吹出風量は、請求項の「空気調和機風量」に相当する。
【0060】
設定温度決定部30hは、処理部30cから空調要求量に関する情報を取得し、空調要求量の平均値または合計値に基づいてエアーコンディショナ3の設定温度を決定する。そして、設定温度決定部30hは、決定したエアーコンディショナ3の設定温度に関する情報(空調機設定温度情報)を処理部30cに出力する。
【0061】
処理部30cは、ダンパ開度決定部30fからの開度情報と、風量決定部30gからの吹出風量情報及び送風量情報と、設定温度決定部30hからの空調機設定温度情報とを受け付ける。処理部30cは、受け付けた各情報を用いて、エアーコンディショナ3、送風機4(送風機4a、送風機4b)、及びダンパ13(ダンパ13a~13d)の各動作に関する制御情報を特定する。そして、処理部30cは、特定した制御情報を出力部30iに出力する。
【0062】
出力部30iは、処理部30cから受け付けた制御情報を、エアーコンディショナ3、送風機4(送風機4a、送風機4b)、及びダンパ13(ダンパ13a~13d)にそれぞれ出力する。
【0063】
そして、エアーコンディショナ3は、出力部30iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいた空調設定温度及び吹出風量にて空調動作を実行する。また、送風機4(送風機4a、送風機4b)は、出力部30iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいたそれぞれの送風量にて送風動作を実行する。また、ダンパ13(ダンパ13a~13d)は、出力部30iから出力された制御情報に応じて、制御情報に基づいたそれぞれの開度にて風量調整動作を実行する。
【0064】
以上のようにして、コントローラ30は、空調ユニット1の機器の各動作を実行させる。
【0065】
次に、図6を参照して、コントローラ30の基本動作について説明する。図6は、コントローラ30の基本処理動作を示すフローチャート図である。
【0066】
<通常運転時>
まず、コントローラ30は、空調システム101の終了判定を実施する(ステップS01)。その結果、空調システム101の電源がオフ(または操作パネル30aからの空調システム101の動作停止指示の入力)の場合(ステップS01のYES)、空調システム101の動作を終了する。一方、空調システム101の電源オンの場合(ステップS01のNO)、時間経過の判定を実施する(ステップS02)。その結果、コントローラ30は、前回の処理から一定時間(例えば10分)が経過していない場合(ステップS02のNO)、ステップS01へ戻る。一方、前回の処理から一定時間が経過した場合(ステップS02のYES)、ステップS03へ進み、ダンパ13、エアーコンディショナ3、及び送風機4の出力決定処理を行う。
【0067】
まず、コントローラ30は、被空調空間16の数分のループを開始する(ステップS03)。そして、コントローラ30は、被空調空間16a~16dのそれぞれに対する空調要求量を算出する(ステップS04)。また、コントローラ30は、被空調空間16a~16dのそれぞれに対応するダンパ13a~13dの開度決定を実施する(ステップS05)。そして、コントローラ30は、すべての被空調空間16の空調要求量の算出とダンパ13の開度決定が完了したらループを終了する(ステップS06)。
【0068】
ステップS03~S06のループ内の処理について、被空調空間16aを例としてより詳細に説明する。
【0069】
ステップS04では、コントローラ30は、被空調空間16aの空調要求量を、室内温度センサ14aから取得した室内温度と、被空調空間16aに設定された空間設定温度との間の温度差分として特定する。より詳細には、空調要求量は、暖房運転時には、空間設定温度から室内温度を引いた値に基づいて特定され、冷房運転時には、室内温度から空間設定温度を引いた値に基づいて特定される。これは、空調要求量が正の値で大きいほど、被空調空間16aに空調が必要とされていることを意味する。
【0070】
ステップS05では、被空調空間16aに対応するダンパ13aの開度を、被空調空間16aの空調要求量に応じて決定する。本実施の形態では、空調要求量が2℃以上の場合は開度「100%」とし、1℃以上2℃未満の場合は開度「60%」とし、0℃以上1℃未満の場合は開度「45%」とし、-1℃以上0℃未満の場合は開度「30%」、-1℃未満の場合は開度「10%」としている。このように設定することで、ダンパ13a~13dの開度は、被空調空間16a~16dの空調要求量の比に応じた開度設定となり、空調要求量が高い居室(被空調空間16)へより空調空気が送風されるようになり、被空調空間16ごとの温度制御が可能となる。
【0071】
次に、コントローラ30は、被空調空間16のそれぞれの空調要求量をもとに、住宅100の全体の空調要求量を算出する(ステップS07)。本実施の形態では、住宅100の空調要求量は、被空調空間16のそれぞれの空調要求量の平均値に基づいて算出している。
【0072】
続いて、コントローラ30は、算出した住宅100の空調要求量に応じてエアーコンディショナ3の設定温度及び吹出風量を決定する(ステップS08)。より詳細には、コントローラ30は、暖房運転時には、空調要求量が高いほど設定温度を高く、冷房運転時には、空調要求量が高いほど設定温度を低くしている。例えば、コントローラ30は、空調要求量が0℃未満の場合は、設定温度を被空調空間16の空間設定温度と同じ値とし、空調要求量が0℃以上1℃未満の場合は、設定温度を被空調空間16の空間設定温度よりも暖房運転時は1度高く、冷房運転時は1度低くする。また、コントローラ30は、空調要求量が1℃以上の場合は、設定温度を被空調空間16の空間設定温度よりも暖房運転時は2度高く、冷房運転時は2度低くする。これにより、空調要求量が高いほどエアーコンディショナ3は高い出力で運転することになり、より早く被空調空間16の室内温度が空間設定温度に制御される。
【0073】
また、コントローラ30は、エアーコンディショナ3の吹出風量を空調要求量が高いほど大きく制御する。本実施の形態では、空調要求量が0℃未満の場合は、吹出風量を500m/hとし、空調要求量が0℃以上1℃未満の場合は、吹出風量を700m/hとし、空調要求量が2℃以上の場合は、吹出風量を1200m/h、としている。
【0074】
続いて、コントローラ30は、送風機4の合計送風量を、エアーコンディショナ3の吹出風量と等しいか、吹出風量よりもわずかに多くなるように決定する(ステップS09)。言い換えれば、コントローラ30は、送風機4の合計送風量(後述する第一風量)とエアーコンディショナ3の吹出風量との間の風量差が基準風量以下となるように決定する。これにより、コントローラ30は、送風機4の消費電力を抑制している。
【0075】
次に、コントローラ30は、一階と二階のそれぞれの空調要求量を算出する(ステップS10)。本実施の形態では、一階と二階のそれぞれの被空調空間16の空調要求量の平均値をその階の空調要求量としている。
【0076】
続いて、ステップS10で算出した空調要求量に基づいて、送風機4の送風量を決定する(ステップS11)。コントローラ30は、空調要求量の比に応じた風量比をつけるように一階と二階のそれぞれの送風機4の送風量を決定する。具体的には、コントローラ30は、二階の空調要求量が1℃で、一階の空調要求量が2℃であり、ステップS09で決定した送風機4の合計送風量が1200m/hの場合、送風機4間の風量比が1:2となるように、二階の送風機4aの送風量は400m/h、一階の送風機4bの風量は800m/hと決定する。これにより、一階と二階とで空調要求量に差がある場合でも、送風機4の送風量に差をつけることで、搬送される熱量に差がつき、一階と二階ともに空調要求量に見合った熱量を搬送することができる。
【0077】
<ショートサーキット発生時>
次に、図7を参照して、ショートサーキット発生時のコントローラ30の処理動作を説明する。図7は、ショートサーキット発生時のコントローラ30の処理動作を示すフローチャート図である。なお、ショートサーキットとは、エアーコンディショナ3から吹き出した吹出空気(空調空気)がすぐさまエアーコンディショナ3に再流入してしまう現象をいう。
【0078】
コントローラ30は、通常運転として、送風機4が第一風量となる送風量で運転している場合に(ステップS21のYES)、ショートサーキット判定を実施する(ステップS22)。一方、送風機4が第一風量で運転していない場合は(ステップS21のNO)、ショートサーキット判定を行わずに処理動作を終了する。ここで、第一風量は、図6で示した基本動作において決定した送風機4の合計送風量である。
【0079】
そして、ショートサーキット判定の結果、ショートサーキット発生なしと判定した場合(ステップS22のNO)、コントローラ30は、処理動作を終了する。一方、ショートサーキット発生ありと判定した場合(ステップS22のYES)、コントローラ30は、送風機4の送風量を第一風量から第二風量に増加させる制御を行う(ステップS24)。これにより、風量を増加させた送風機4がエアーコンディショナ3の吹出空気(空気Q2)をより吸い込むようになり、図4に示した空気Q4の流れが抑制される結果、発生していたショートサーキットが解消される。この際、送風機4の第二風量をエアーコンディショナ3の吹出風量よりも大きくなるように制御することで、空気Q4の流れを確実に抑制することができ、ショートサーキットをより効果的に解消させることができる。
【0080】
次に、図8を参照して、コントローラ30におけるショートサーキットの判定処理について詳細に説明する。図8は、ショートサーキットの判定処理を示すフローチャート図である。
【0081】
まず、コントローラ30は、室内温度センサ14a~14dからの室内温度(以下、「室温」ともいう)と、吸込温度センサ40からのエアーコンディショナ3の吸込温度とを取得する(ステップS31)。
【0082】
続いて、エアーコンディショナ3が冷房運転の場合(ステップS32のYES)、被空調空間16a~16dの室温のうち、最も低い室温を特定する(ステップS33)。
【0083】
そして、特定した室温からエアーコンディショナ3の吸込温度を引いた数値が第一基準値(例えば3℃)以上か否かを判定する(ステップS34)。その結果、算出した数値が第一基準値以上である場合(ステップS34のYES)、コントローラ30は、ショートサーキット発生ありと判定する(ステップS35)。一方、算出した数値が第一基準値未満である場合(ステップS34のNO)、コントローラ30は、ショートサーキット発生なしと判定する(ステップS36)。
【0084】
一方、エアーコンディショナ3が冷房運転でない場合(ステップS32のNO)、つまり暖房運転である場合(ステップS37のYES)、コントローラ30は、被空調空間16a~16dの室温のうち、最も高い室温を特定する(ステップS38)。
【0085】
そして、エアーコンディショナ3の吸込温度から取得した室温を引いた数値が第一基準値(例えば3℃)以上か否かを判定する(ステップS39)。その結果、算出した数値が第一基準値以上である場合(ステップS39のYES)、コントローラ30は、ショートサーキット発生ありと判定する(ステップS35)。一方、算出した数値が第一基準値未満である場合(ステップS39のNO)、コントローラ30は、ショートサーキット発生なしと判定する(ステップS36)。
【0086】
そして、コントローラ30は、ショートサーキット判定を終了する。
【0087】
以上のようにして、コントローラ30は、エアーコンディショナ3におけるショートサーキットの発生有無の判定を行う。
【0088】
次に、図9を参照して、コントローラ30におけるショートサーキットの別の判定処理について説明する。図9は、ショートサーキットの別の判定処理を示すフローチャート図である。
【0089】
まず、コントローラ30は、吸込温度センサ40からのエアーコンディショナ3の第一吸込温度を取得する(ステップS41)。そして、コントローラ30は、一定時間(例えば5分)後に、吸込温度センサ40からのエアーコンディショナ3の第二吸込温度を新たに取得する(ステップS42)。つまり、コントローラ30は、時系列に二つの吸込温度(第一吸込温度、第二吸込温度)を取得する。
【0090】
そして、コントローラ30は、第一吸込温度と第二吸込温度との間の差分(温度差)の絶対値が第二基準値(例えば3℃)以上か否かを判定する(ステップS43)。この判定は、吸込温度の時間変化量が第二基準値以上か否かに相当する。その結果、算出した温度差の絶対値が第二基準値以上である場合(ステップS43のYES)、コントローラ30は、ショートサーキット発生ありと判定する(ステップS44)。一方、算出した温度差の絶対値が第二基準値未満である場合(ステップS43のNO)、コントローラ30は、ショートサーキット発生なしと判定する(ステップS45)。
【0091】
そして、コントローラ30は、ショートサーキット判定を終了する。
【0092】
以上のようにして、コントローラ30は、エアーコンディショナ3におけるショートサーキットの発生有無の判定を行ってもよい。
【0093】
以上、本実施の形態1に係る空調システム101によれば、以下の効果を享受することができる。
【0094】
(1)空調システム101は、複数の被空調空間16へ空調空気を供給する空調ユニット1と、空調ユニット1の外郭を形成するユニット本体2と、ユニット本体2に取り込んだ空気の空調を行うエアーコンディショナ3と、エアーコンディショナ3で空調された空気(空調空気)をユニット本体2外へ送風する少なくとも1つ以上の送風機4(送風機4a、送風機4b)と、エアーコンディショナ3と送風機4の送風を制御するコントローラ30とを備える。そして、コントローラ30は、送風機4を第一風量となる送風量で制御している場合に、エアーコンディショナ3で空調された空気がエアーコンディショナ3へショートサーキットしていると判定すると、送風機4の送風量を第一風量よりも大きい第二風量に切り替えて制御するようにした。
【0095】
このようにすることで、ショートサーキットが検知されると、送風機4の送風量が第一風量から第二風量へと大きくなるので、空調システム101では、ショートサーキットが抑制または解消され、エアーコンディショナ3が吸い込む空気の温度を誤検知することがなくなり、エアーコンディショナ3が運転停止してしまう誤動作が抑制される。
【0096】
(2)空調システム101では、コントローラ30は、被空調空間16における空気の室内温度と、エアーコンディショナ3に取り込んだ空気の吸込温度とに関する情報を取得し、室内温度と吸込温度との間の温度差が第一基準値以上である場合に、ショートサーキットが発生していると判定するようにした。これにより、エアーコンディショナ3に取り込まれる空気の温度情報をもとにショートサーキットの有無を判定するため、ショートサーキットの検知精度が向上し、エアーコンディショナ3の誤動作を確実に抑制することができる。
【0097】
(3)空調システム101では、コントローラ30は、第二風量が、エアーコンディショナ3が吹き出す吹出風量よりも大きくなるように制御するようにした。これにより、ショートサーキットをより確実に抑制できるので、エアーコンディショナ3の誤動作の抑制効果をさらに高めることができる。
【0098】
(4)空調システム101では、コントローラ30は、第二風量と吹出風量との間の風量差が、基準風量以下となるように制御するようにした。これにより、空調システム101では、送風機4の消費電力を抑制することができる。
【0099】
(5)空調システム101では、コントローラは、吸込温度の時間変化量(時系列に取得した第一吸込温度と第二吸込温度の差分の絶対値)が第二基準値以上である場合に、ショートサーキットが発生していると判定するようにした。このようにすることで、ショートサーキット発生時の急激な吸込温度の変化をもとにショートサーキットの有無を判定するため、ショートサーキットの検知精度が向上し、エアーコンディショナ3の誤動作をより確実に抑制することができる。
【0100】
(6)空調システム101では、室内温度は、複数の被空調空間16におけるそれぞれの室内温度のうち、暖房運転時における最も高い温度、あるいは、冷房運転時における最も低い温度であるようにした。このようにすることで、最も厳しい基準でショートサーキットを判定するためより正確にショートサーキットを検知できるため、エアーコンディショナ3の誤動作抑制の効果をさらに高めることができる。
【0101】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る空調ユニットは、空気調和機(エアーコンディショナ)が設定温度に到達したという誤検知を防ぎ、空気調和機の空調動作が停止することを抑制するものであり、住宅の複数の部屋を1つの空気調和機で空調することを可能にする空調ユニット及びこれを用いた空調システム等として有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 空調ユニット
2 ユニット本体
3 エアーコンディショナ
4、4a、4b 送風機
5 吸込口
6 空調機設置空間
7 送風機設置空間
8、8a、8b 吹出口
9 フィルタ
11、11a、11b ダクト
12、12a、12b 分岐チャンバ
13、13a~13d ダンパ
14、14a~14d 室温センサ
15、15a~15d 給気口
16、16a~16d 被空調空間
17、17a、17b 共用スペース
18 屋根裏
19 天井裏
20 専用設置スペース
30 コントローラ
30a 操作パネル
30b 入力部
30c 処理部
30d 記憶部
30e 計時部
30f ダンパ開度決定部
30g 風量決定部
30h 設定温度決定部
30i 出力部
30j 表示パネル
40 吸込温度センサ
100 住宅
101 空調システム
Q1~Q4、Q3a、Q3b 空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9