(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/20 20060101AFI20241115BHJP
D06F 33/48 20200101ALI20241115BHJP
D06F 33/76 20200101ALI20241115BHJP
【FI】
D06F37/20
D06F33/48
D06F33/76
(21)【出願番号】P 2021162463
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】高木 政志
(72)【発明者】
【氏名】山川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 稔樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓也
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137091(JP,A)
【文献】特開2007-111159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/20
D06F 33/48
D06F 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内に設けられる水槽ユニットと、を備え、
前記水槽ユニットは、
水を溜める受筒と、
前記受筒内に回転可能に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽と、
前記洗濯兼脱水槽を回転駆動するモータと、
を含み、
さらに、前記受筒に接続され、前記受筒の振動を減衰させる防振ダンパと、
前記筐体の下面を構成して底面に設置脚が設けられ、前記防振ダンパを保持する台枠と、少なくとも前記モータを制御する制御部を有する制御装置と、
前記台枠における鉛直方向の振動を検知する第1の振動検知部と、
を備え
る、
洗濯機。
【請求項2】
前記第1の振動検知部は、前記台枠の上に取り付けられた前記制御装置に設けられる、または、前記台枠に直接取り付けられる、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、前記洗濯兼脱水槽の回転によって生じる遠心力により洗濯物を脱水する脱水動作を実行し、
前記脱水動作において、前記第1の振動検知部により検知された振幅値に基づいて、洗濯兼脱水槽の回転数を変更する、
請求項1
または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御部は、前記振幅値に基づいて前記脱水動作における前記洗濯兼脱水槽の最高回転数を制御し、
前記最高回転数は、前記振幅値が大きくなるに連れて小さく設定される、
請求項
3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記制御装置は、電子部品が実装される制御基板を有し、
前記第1の振動検知部は、振動を検知する第1のセンサを含み、
前記第1のセンサは、前記制御基板と異なる第1の基板に実装されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記制御部は、電子部品が実装される制御基板を有し、
前記第1の振動検知部は、振動を検知する第1のセンサを含み、
前記第1のセンサは、前記制御基板に実装されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記受筒の振動を検知する第2の振動検知部と、
前記第1の振動検知部および前記第2の振動検知部に電気的に接続され、電気信号を出力する制御用直流電源と、
前記第1の振動検知部および前記第2の振動検知部に前記電気信号を出力するか否かを切り替える電源切替手段と、
を備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記制御装置は、基板を内包するケースを含み、
前記ケースは、少なくとも正面側が板金により形成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記制御部は、床振動検知ステップを行い、前記脱水動作における前記最高回転数の設定を低い回転数から段階的に制御する、
請求項4に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記制御部は、第1の回転数において、検知した前記振幅値が第1の振幅値以上であれば前記第1の回転数に近い第1の最高回転数で前記脱水動作を継続し、第1の振幅値未満であれば、前記第1の回転数より高回転の第2の回転数まで上昇させ、
前記第2の回転数において、検知した前記振幅値が第2の振幅値以上であれば前記第2の回転数に近い第2の最高回転数で運転を継続し、所定の振幅値未満であれば、前記第2の回転数より高回転の第3の回転数まで上昇させるように構成され、
前記所定の回転数において検知した前記振幅値が比較される前記所定の振幅値は、前記所定の回転数が低いほど大きい、
請求項9に記載の洗濯機。
【請求項11】
前記制御部は、前記洗濯兼脱水槽の回転数が前記所定の最高回転数で前記脱水動作を継続しているとき、継続中の最高回転数より低い前記所定の最高回転数で比較される前記所定の振幅値より大きな振幅値を検知した場合、前記洗濯兼脱水槽の回転数を前記低い前記所定の最高回転数に低下させる、
請求項10に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、加速度検知手段を備えるドラム式洗濯機を開示する。このドラム式洗濯機は、回転ドラムと、回転ドラムを内包する水槽と、回転ドラムを駆動するドラム駆動モータと、水槽または洗濯機本体に取り付けられた加速度検知手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、床の振動を安定して取得できる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における洗濯機は、筐体と、筐体内に設けられる水槽ユニットと、を備え、水槽ユニットは、水を溜める受筒と、受筒内に回転可能に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽と、洗濯兼脱水槽を回転駆動するモータと、を含み、さらに、受筒に接続され、受筒の振動を減衰させる防振ダンパと、筐体の下面を構成して底面に設置脚が設けられ、防
振ダンパを保持する台枠と、少なくともモータを制御する制御部を有する制御装置と、台枠における鉛直方向の振動を検知する第1の振動検知部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示における洗濯機は、床の振動を安定して取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施の形態1における洗濯機の前面パネルを取り除いた状態の前面図
【
図3】実施の形態1における洗濯機の台枠および制御装置の斜視図
【
図4】実施の形態1における洗濯機の制御装置の模式図
【
図5】実施の形態1における洗濯機の制御装置のブロック図
【
図6】実施の形態1における洗濯機の脱水行程のフローチャート
【
図7】実施の形態1における洗濯機の床振動検知ステップのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0009】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0010】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図7を用いて、実施の形態1を説明する。
【0011】
[1-1.構成]
[1-1-1.洗濯機の構成]
以下、
図1~
図3を用いて、洗濯機100の構成を説明する。本実施の形態において、「左側」および「右側」は、洗濯機100を前方から見た時の左側および右側を示す。また、本実施の形態において、洗濯機100の左右方向をX軸方向(右方向をX軸の正の向きとする)、洗濯機100の上下方向をY軸方向(上方向をY軸の正の向きとする)、洗濯機100の前後方向をZ軸方向(後方向をZ軸の正の向きとする)と定義する。
【0012】
洗濯機100は、筐体101と、水槽ユニット10と、を備える。水槽ユニット10は、受筒102と、洗濯兼脱水槽103と、モータ111と、を含む。
【0013】
受筒102および洗濯兼脱水槽103は、有底円筒状に形成されている。受筒102は、筐体101内において、洗濯水を貯水可能に設けられている。洗濯兼脱水槽103は、受筒102に内包されている。洗濯兼脱水槽103は、モータ111によって回転自在に設けられている。モータ111には、回転数検知手段(図示せず)が設けられている。回転数検知手段は、モータ111の回転数を検知することで、洗濯兼脱水槽103の回転数を検知している。
【0014】
洗濯兼脱水槽103は、周面に多数の通水孔103aが設けられている。通水孔103aは、受筒102と洗濯兼脱水槽103とを通水可能に連通している。また、洗濯兼脱水槽103の内壁には、衣類を撹拌するための突起板103bが複数設けられている。
【0015】
筐体101の前面には、洗濯兼脱水槽103の内部に洗濯物を投入するための開口である筐体開口部101aが設けられている。筐体101の前面には、蓋体104が設けられている。蓋体104は、筐体開口部101aを開閉自在に覆う。
【0016】
筐体101の下部には、台枠120が設けられている。台枠120は、筐体101の下面を構成している。台枠120の底面の四隅には、設置脚121が設けられている。設置脚121は、台枠120を、洗濯機100が設置される床面または防水パンに接地させる。台枠120は、防振ダンパ112を保持している。防振ダンパ112は、受筒102の下部と接続され、水槽ユニット10の振動を抑制している。
【0017】
筐体101の内方上部には、給水弁131、給水経路132、および洗剤ケース135が設けられている。給水弁131は、開閉自在に設けられている。給水経路132は、給水弁131と受筒102とを接続している。洗剤ケース135は、給水経路132上に設けられている。給水弁131が開かれて、筐体101内に導入された洗濯水は、洗剤ケース135に収容された剤を溶解しながら、給水経路132を通過し、受筒102内に注水される。
【0018】
筐体101の内方下部には、排水経路(図示せず)および排水弁(図示せず)が設けられている。排水経路は、受筒102と、筐体101の外部とを接続している。排水弁は、排水経路上に、開閉可能に設けられている。排水弁が開放されると、受筒102内の洗濯水が、排水経路を経由して筐体101の外部へと排出される。排水経路上には、排水フィルタ部141が取り外し可能に設けられている。排水フィルタ部141は、排水経路を流下する排水に含まれる糸くずやリントなどの異物を捕集する。
【0019】
筐体101の内方下部には、制御装置200が設けられている。制御装置200は、複数の電子部品が搭載された制御基板201(
図4に図示)と、制御基板201を内包する
制御ケース202と、を有する。
図1および
図3に示すように、制御ケース202は、台枠120の上に取り付けられている。制御ケース202は、洗濯機100に取り付けられた状態で、鉛直方向に立つように設けられている。これにより、制御装置200は、制御装置200が水平方向に設けられる場合よりも、制御ケース202内に洗濯水が侵入することを抑制できる。制御ケース202は、前面側が板金203によって構成されている。制御装置200の前面側が板金203で構成されていることにより、制御装置200に搭載された電子部品および後述する第1の振動検知部310が、洗濯機100の外部からの放射磁界の影響を受けることを抑制できる。
【0020】
筐体101の前面下部には、取り外し可能な前面パネル151が設けられている。排水フィルタ部141および制御装置200は、前面パネル151の後方に位置している。前面パネル151を取り外すと、排水フィルタ部141および制御装置200が露出する。使用者は、前面パネル151を取り外し、排水フィルタ部141を排水経路から取り外すことで、排水フィルタ部141のメンテナンスを実施することができる。
【0021】
筐体101の内方下部において、制御装置200の右側には、排水フィルタ部141を配置するための空間Pが設けられている。
【0022】
筐体101の前面上部には、操作表示部160が設けられている。操作表示部160は、使用者から運転内容に関する設定を受け付ける。また、操作表示部160は、洗濯機100の設定内容および運転状況などを表示する。
【0023】
[1-1-2.第1の振動検知部および第2の振動検知部]
図1、
図3、
図4に示すように、筐体101の内部には、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320が設けられている。
【0024】
図4に示すように、第1の振動検知部310は、制御装置200の一部に含まれており、第1の振動検知部310は、振動の振幅の大きさを検知する第1のセンサ311と、第1のセンサ311が搭載された第1の基板312と、を含む。第1の基板312は、制御基板201と異なる基板として設けられ、リード線204によって制御基板201と電気的に接続されている。第1の振動検知部310においては、第1の基板312上の抵抗値が歪むことをホイートストーンブリッジ回路で検出している。そのため、第1の基板312には、振動検知に適した、固い素材の基板が用いられている。
【0025】
図3および
図4に示すように、第1の振動検知部310は、制御ケース202の右側外壁面から外方に向かって突出して設けられている。
図2に示すように、制御装置200が洗濯機100に取り付けられた状態で、第1の振動検知部310は、制御装置200の右側に設けられた空間Pに突出している。第1のセンサ311は筐体101の下部に位置しており、台枠120における振動のY軸方向の振幅の大きさを検知している。
【0026】
第1の振動検知部310は、制御ケース202の外壁面に取り付けられている。このとき、第1の基板312と制御基板201とは、隣接するように位置している。これにより、第1の基板312と制御基板201とを接続するリード線204の長さを短くできるので、電気的なノイズ成分の影響を低減できる。また、第1の振動検知部310が取り付けられた制御ケース202は、台枠120に取り付けられている。これにより、第1の振動検知部310は、洗濯機100が設置された床面または防水パンに近い位置に配設される。そのため、第1のセンサ311は、洗濯機100が床面または防水パンに与える振動のY軸方向の振幅の大きさを効果的に検知できる。
【0027】
図1に示すように、第2の振動検知部320は、受筒102の前部の外壁面に設けられ
ている。第2の振動検知部320は、振動の振幅の大きさを検知する第2のセンサ(図示せず)と、第2のセンサが搭載された第2の基板(図示せず)を含む。第2の基板は、ロード線(図示せず)によって、制御基板201と電気的に接続されている。第2の振動検知部320は、水槽ユニット10における振動の、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の3方向の振幅の大きさを検知している。
【0028】
図示はしないが、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320は、共通の制御用直流電源(図示せず)を動作用の電源として用いている。制御用直流電源は、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320と接続され、電気信号を出力している。
【0029】
[1-1-3.制御装置]
図5に示すように、制御装置200は、制御部210と、記憶部220と、を有する。
【0030】
制御部210は、モータ111の回転駆動、および、給水弁131および排水弁の開閉などを制御し、洗濯運転の一連の動作を制御する。また、制御部210は、洗濯運転において回転数検知手段で検知された洗濯兼脱水槽103の回転数、および、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320が検知した振動の振幅の大きさを含む情報を取得する。
【0031】
制御部210は、制御用直流電源から、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320に、電気信号を出力するか否かを切り替える、電源切替手段(図示せず)を制御する。
【0032】
制御部210は、内部に情報切替部215を有する。情報切替部215は、第1の振動検知部310と第2の振動検知部320とのどちらから情報を取得するかを切り替える。制御部210は、第1の振動検知部310または第2の振動検知部320から、ノイズ等により発生した異常値を取得した場合、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320に電気信号が出力されないように電源切替手段を制御することで、第1のセンサ311および第2のセンサを電気的にリセットする。制御部210は、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320を一つの制御用直流電源および電源切替手段で制御している。これにより、ノイズ等により第1の振動検知部310または第2の振動検知部が異常値を出力した場合に、第1のセンサ311および第2のセンサを電気リセットすること、および、再び第1のセンサ311および第2のセンサに通電させ、検知を再開させる制御が容易になる。
【0033】
記憶部220は、洗濯運転に関する各種パラメータなどを記憶する。
【0034】
なお、情報切替部215は、制御部210内に設けられてもよいし、制御部210とは別に設けられてもよい。
【0035】
[1-2.動作]
以上のように構成された洗濯機100について、その動作を以下説明する。
【0036】
[1-2-1.洗濯運転の動作]
洗濯運転が開始されると、まず、洗い行程が実行される。洗い行程では、受筒102内に給水する給水動作が実行された後、洗濯兼脱水槽103が正転、停止、逆転、停止を繰り返す撹拌動作が所定時間実行される。撹拌動作では、洗濯兼脱水槽103に収容された衣類は、突起板103bによって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた高さから落下される。これにより、洗濯兼脱水槽103に収容された衣類には、たたき洗いの作用が働く。
【0037】
その後、すすぎ行程が実行される。すすぎ行程では、洗い行程と同様、受筒102内に給水する給水動作が実行された後、洗濯兼脱水槽103が正転、停止、逆転、停止を繰り返す攪拌動作が所定時間実行される。これにより、衣類に含まれた洗剤成分が希釈され、すすがれる。すすぎ行程が終了すると、脱水行程が開始する。
【0038】
脱水行程では、洗濯兼脱水槽103の回転によって生じる遠心力により洗濯兼脱水槽103内の洗濯物を脱水する脱水動作が実行される。脱水行程の動作については、後述する。
【0039】
脱水行程が終了すると、洗濯運転が終了する。なお、使用者によって洗濯乾燥運転が選択されていた場合、脱水行程の終了後に、乾燥行程が実行されてもよい。洗濯乾燥運転が選択されていた場合、乾燥行程が終了すると、洗濯乾燥運転が終了する。
【0040】
[1-2-2.脱水行程の動作]
以下、
図6を用いて脱水行程の動作について説明する。
【0041】
脱水行程が開始する(S101)と、制御部210は、モータ111の駆動を開始し、洗濯兼脱水槽103を回転させる(S102)。S102で洗濯兼脱水槽103の回転が開始すると、制御部210は、回転数検知手段から洗濯兼脱水槽103の回転数Nを取得する(S103)。次いで、制御部210は、後述する床振動検知ステップを実行する(S104)。S104の床振動検知ステップにおいて、制御部210は、回転数検知手段が検知した洗濯兼脱水槽103の回転数Nと、第1のセンサ311が検知した振動のY軸方向の振幅値A1を取得し、脱水行程における洗濯兼脱水槽103の最高回転数N1を決定する。脱水行程開始直後においては、最高回転数N1は、運転内容に基づく所定最高回転数Nmaxで設定されている。なお、所定最高回転数Nmaxは、運転内容によって異なる。例えば、今回の運転内容が洗濯運転である場合、所定最高回転数Nmaxは1200rpmであり、今回の運転内容が洗濯乾燥運転である場合、所定最高回転数Nmaxは1600rpmである。
【0042】
S104の床振動検知ステップが終了すると、制御部210は、現在の洗濯兼脱水槽103の回転数Nが、最高回転数N1に到達したか否かを判定する(S105)。回転数Nが最高回転数N1に到達した場合(S105でYESの場合)、制御部210は、洗濯兼脱水槽103の回転数上昇を止め、洗濯兼脱水槽103を最高回転数N1で定常回転させる(S106)。S105において、回転数Nが最高回転数N1に到達していない場合(S105でNOの場合)、再びS104の床振動検知ステップが実行される(以下、このループをループL1とする)。S105において洗濯兼脱水槽103の回転数Nが最高回転数N1に到達するまでの間、洗濯兼脱水槽の回転数Nは上昇し続ける。本実施の形態において、ループL1は、所定時間(例えば、数msec)の間隔で実行されているが、ループL1は、回転数Nが所定値(例えば、10rpm)上昇するごとに実行されてもよい。
【0043】
制御部210は、脱水行程が開始されてから所定時間経過すると、モータ111の駆動を停止し、洗濯兼脱水槽103の回転を停止する(S107)。洗濯兼脱水槽103の回転が停止すると、脱水行程が終了する(S108)。
【0044】
なお、制御部210は、洗濯兼脱水槽103の回転数Nが所定回転数の範囲内(例えば、420rpm以上、1190rpm以下)である場合に、S104の床振動検知ステップを実行してもよいし、洗濯兼脱水槽103が回転している間、常に床振動検知ステップを実行してもよい。
【0045】
[1-2-3.脱水行程において発生する振動]
洗濯運転の脱水行程において、洗濯兼脱水槽103の回転数Nが上昇すると、洗濯兼脱水槽103内の洗濯物が洗濯兼脱水槽103の内壁に張り付き、偏荷重が発生する。偏荷重は、加震源となって、洗濯兼脱水槽103を振動させる。洗濯兼脱水槽103で発生した振動は、防振ダンパ112を介して、筐体101や台枠120に伝達され、設置脚121より、洗濯機100が設置された床面または防水パンに伝達される。
【0046】
回転数Nが約100~160rpmに到達すると、水槽ユニット10の一次共振が発生する。水槽ユニット10の一次共振においては、水槽ユニット10の前後振動および左右振動が発生する。
【0047】
回転数Nが約160~300rpmに到達すると、水槽ユニット10の二次共振が発生する。水槽ユニット10の二次共振においては、水槽ユニット10の上下振動および回転振動が発生する。水槽ユニット10の二次共振においては、水槽ユニット10が筐体101に衝突する等の不具合が発生する虞がある。
【0048】
回転数Nが約500~700rpmに到達すると、筐体101の固有振動数と対応し、筐体101の共振が発生する。筐体101の共振においては、筐体101の前後振動および左右振動が発生することで、筐体101が大きく揺れ、異音が発生する等の不具合が発生する虞がある。
【0049】
回転数Nが約1000rpm~1600rpm(高速回転域)に達すると、洗濯機100の設置床の共振が発生する。高速回転域においては、水槽ユニット10の振動の振幅の大きさは小さい一方で、洗濯機100が設置されている床面または防水パンが振動することで、筐体101が振動して揺れる不具合が発生する虞がある。洗濯機100において、防振ダンパ112の減衰力は主に水平方向に働くため、洗濯兼脱水槽103の回転に起因する振動の鉛直方向の成分が、洗濯機100が設置された床面または防水パンに対して伝搬される。洗濯機100が設置される環境は、使用者によって異なる。洗濯機100が設置された床面または防水パンの強度が強い場合では、洗濯兼脱水槽103が高速回転しても、筐体101の揺れは小さい。一方で、洗濯機100が設置された床面または防水パンの強度が弱い場合では、洗濯兼脱水槽103が高速回転すると、床面または防水パンの共振が発生し、筐体101が大きく揺れる虞がある。
【0050】
そこで、本実施の形態の洗濯機100は、脱水行程におけるS104の床振動検知ステップにおいて、洗濯兼脱水槽103の回転数Nと、第1の振動検知部310が検知した振動のY軸方向の振幅値A1に基づいて、脱水行程における最高回転数N1を段階的に制御する。
【0051】
[1-2-4.床振動検知の動作]
以下、
図7を用いて、S104の床振動検知ステップの動作について説明する。
【0052】
S104の床振動検知ステップが開始すると(S201)、制御部210は、第1のセンサ311が検知した振動のY軸方向の振幅値A1と、を取得する(S202)。
【0053】
S203以降において、制御部210は、S103で取得した回転数NおよびS202で取得した振幅値A1から、脱水行程における洗濯兼脱水槽103の最高回転数N1を判定する。
【0054】
回転数Nが880~890rpmのときに、検知された振幅値A1が0.6mm以上で
ある場合(S203でYESの場合)、制御部210は、最高回転数N1を900rpmで決定する(S204)。
【0055】
S203でNOであり、回転数Nが980~990rpmのときに、検知された振幅値A1が0.5mm以上である場合(S205でYESの場合)、制御部210は、最高回転数N1を1000rpmで決定する(S206)。
【0056】
S205でNOであり、回転数Nが1080~1090rpmのときに、検知された振幅値A1が0.4mm以上である場合(S207でYESの場合)、制御部210は、最高回転数N1を1100rpmで決定する(S208)。
【0057】
S207でNOであり、回転数Nが1180~1190rpmのときに、検知された振幅値A1が0.3mm以上である場合(S209でYESの場合)、制御部210は、最高回転数N1を1200rpmで決定する(S210)。
【0058】
S209でNOの場合、制御部210は、最高回転数N1を、所定最高回転数Nmaxで設定する(S212)。なお、前述の通り、回転数が880rpm未満である場合も、S209でNOである場合に含まれ、最高回転数N1が所定最高回転数Nmaxで設定される。
【0059】
S203~S212が終了すると、床振動検知ステップが終了する(S213)。
【0060】
S104の床振動検知ステップにおいて、制御部210は、第1の振動検知部310が検知した振幅値A1が大きくなるに連れて、脱水行程における洗濯兼脱水槽103の最高回転数N1が段階的に小さくなるように設定する。言い換えると、制御部210は、第1の振動検知部310が検知した振幅値A1によって、脱水行程における洗濯兼脱水槽103の最高回転数N1を急激に下げないようにしている。これにより、制御部210は、振幅値A1に基づく洗濯機100の脱水性能の損失を低減させながら、洗濯機100が発する振動および騒音を低減させることができる。
【0061】
[1-2-5.受筒振動検知の動作]
脱水行程において洗濯兼脱水槽103が回転している間、制御部210は、洗濯兼脱水槽103の回転数Nと、第2の振動検知部320が検知した水槽ユニット10における振動の振幅値A2と、に基づいて、洗濯兼脱水槽103内における洗濯物の位置の偏りを検知する受筒振動検知ステップを実行する。以下、受筒振動検知ステップの動作に関して説明する。
【0062】
受筒振動検知ステップにおいて、制御部210は、回転数検知手段が検知した洗濯兼脱水槽103の回転数Nと、第2の振動検知部320が検知した水槽ユニット10の振動の振幅値A2と、を取得する。水槽ユニット10の振動の振幅値A2は、X軸方向の振幅値A21と、Y軸方向の振幅値A22と、Z軸方向の振幅値A23と、を含む。次に、制御部210は、記憶部220に格納されたパラメータにおいて、現在の洗濯兼脱水槽103の回転数Nの範囲において、水槽ユニット10の振幅値A2が閾値を超えているか否かを判定する。
【0063】
水槽ユニット10の振幅値A2が閾値を超えている場合、制御部210は、洗濯兼脱水槽103内で洗濯物が大きく偏るアンバランス異常が発生していると判定し、モータ111の駆動を停止する。制御部210は、モータ111の駆動を停止した後、洗濯兼脱水槽103内の洗濯物の偏りを解消するシーケンスを実行してもよいし、通常の運転に戻るシーケンスを実行してもよい。脱水行程において、所定回数(例えば、3回)連続でアンバ
ランス異常の発生が判定された場合、制御部210は、脱水行程の動作を中止し、操作表示部160にアンバランス異常が発生した旨を報知してもよい。
【0064】
水槽ユニット10の振幅値A2が閾値を超えていない場合、制御部210は、アンバランス異常が発生していないと判定し、現在の脱水行程を継続する。
【0065】
なお、受筒振動検知ステップにおいて用いられる、洗濯兼脱水槽103の回転数Nに対する水槽ユニット10の振幅値A2の閾値に関するパラメータは、全ての回転数Nにおいて同様の振幅値A2を用いてもよいし、回転数Nの範囲に応じて振幅値A2の閾値を変化させてもよい。また、X軸方向の振幅値A21、Y軸方向の振幅値A22、Z軸方向の振幅値A23に関してそれぞれ閾値が定められてもよいし、共通の閾値が定められてもよいし、回転数Nに応じて軸方向ごとに別々の閾値を用いるか共通の閾値を用いるかを変化させてもよい。
【0066】
情報切替部215は、振幅値を含む情報を取得する先を、第1の振動検知部310と第2の振動検知部320とで一定間隔で切り替えている。これにより、脱水行程中において、制御部210は、第1の振動検知部310が検知した台枠120の振幅値A1と、第2の振動検知部320が検知した水槽ユニット10の振幅値A2と、を、交互に取得している。これにより、制御部210は、台枠120の振幅値A1および水槽ユニット10の振幅値A2に基づいて、脱水行程における洗濯兼脱水槽103の回転を制御できる。
【0067】
[1-3.効果]
以上のように、本実施の形態において、洗濯機100は、水を溜める受筒102と、受筒102内に回転可能に設けられ、洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽103と、洗濯兼脱水槽103を回転駆動するモータ111と、受筒102に接続され、受筒102の振動を減衰させる防振ダンパ112と、受筒102の下方に配置され、防振ダンパ112を保持する台枠120と、少なくともモータ111を制御する制御部210を有する制御装置200と、振動を検知する第1の振動検知部310と、を備える。制御装置200は、台枠120の上に取り付けられている。第1の振動検知部310は、制御装置200に設けられている。
【0068】
これにより、第1の振動検知部310は、床面または防水パンと接する台枠120の振動を検知し、床面または防止パンの振動を検知することができる。
【0069】
そのため、床面の振動を安定して取得することができる。
【0070】
本実施の形態のように、制御部210は、洗濯兼脱水槽103の回転によって生じる遠心力により洗濯物を脱水する脱水動作を実行し、脱水動作において、第1の振動検知部310により検知された振幅値A1に基づいて、洗濯兼脱水槽103の回転数Nを変更してもよい。
【0071】
これにより、制御部210は、第1の振動検知部310が検知した台枠120の振幅値A1に応じて、洗濯兼脱水槽103の回転数Nを制御することができる。
【0072】
そのため、脱水動作において発生する騒音および振動を低減できる。
【0073】
本実施の形態のように、制御部210は、振幅値A1に基づいて脱水動作における洗濯兼脱水槽103の最高回転数N1を制御し、最高回転数N1は、振幅値A1が大きくなるに連れて小さく設定されてもよい。
【0074】
これにより、制御部210は、台枠120における振幅値A1に応じて、脱水動作における洗濯兼脱水槽103の最高回転数N1を段階的に下げている。
【0075】
そのため、制御部210は、振幅値A1の大きさによる洗濯機100の脱水性能の損失を低減させながら、脱水動作において振動および騒音を低減させることができる。
【0076】
本実施の形態のように、振幅値A1は、鉛直方向(Y軸方向)の振幅値であってもよい。
【0077】
これにより、制御部210は、床面または防水パンに伝達されやすい鉛直方向(Y軸方向)の振幅値A1に基づいて、洗濯兼脱水槽103の回転数Nを制御できる。
【0078】
そのため、容易な判定フローによって床面に伝わる振動を低減させることができる。
【0079】
本実施の形態のように、制御装置200は、電子部品が実装される制御基板201を有し、第1の振動検知部310は、振動を検知する第1のセンサ311を含み、第1のセンサ311は、制御基板201と異なる第1の基板312に実装されていてもよい。
【0080】
これにより、第1のセンサ311を、制御基板201とは異なる第1の基板312に実装できる。
【0081】
そのため、第1のセンサ311を、振動の検知に適した基板に搭載することができるので、制御基板201を安価に形成することができる。
【0082】
本実施の形態のように、洗濯機100は、受筒102の振動を検知する第2の振動検知部320と、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320に電気的に接続され、電気信号を出力する制御用直流電源(図示せず)と、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320に電気信号を出力するか否かを切り替える電源切替手段(図示せず)と、を備えてもよい。
【0083】
これにより、制御部210は、第1の振動検知部310と第2の振動検知部320とを、一つの制御用直流電源および電源切替手段で制御することができる。
【0084】
そのため、制御部210による第1の振動検知部310および第2の振動検知部320の制御が容易になり、かつ、第1の振動検知部310および第2の振動検知部320を制御するために必要な部品点数を削減できる。
【0085】
本実施の形態のように、制御装置200は、制御基板201を内包する制御ケース202を含み、制御ケース202は、少なくとも正面側が板金203によって形成されてもよい。
【0086】
これにより、洗濯機100の外部から放射される放射磁界の影響を軽減できる。
【0087】
そのため、ノイズによる第1のセンサ311の誤検知を抑制することができる。
【0088】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0089】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0090】
実施の形態1では、洗濯機の一例として、ドラム式洗濯機である洗濯機100を説明した。洗濯機は、筐体下部に振動検知部を有するものであればよいので、ドラム式洗濯機に限定されない。洗濯機は、縦型洗濯機、縦型洗濯乾燥機、ドラム式洗濯乾燥機、または、二層式洗濯機でもよい。
【0091】
実施の形態1では、第1の振動検知部の一例として、制御ケース202に取り付けられた第1の振動検知部310を説明した。第1の振動検知部は、台枠の振動を検知すればよいので、第1の振動検知部310に限定されない。第1の振動検知部は、台枠に直接取り付けられてもよい。
【0092】
実施の形態1では、第1のセンサの一例として、制御基板201とは異なる第1の基板312に実装された第1のセンサ311を説明した。第1のセンサは、台枠の振動を検知すればよいので、第1のセンサ311に限定されない。第1のセンサは、電子部品が搭載される制御基板に実装されてもよい。これにより、第1のセンサ制御部との接続距離を短くできる。そのため、第1のセンサと制御部との接続において発生するノイズを低減でき、また、第1のセンサと制御基板とを接続する接続部品を削減することができる。
【0093】
実施の形態1では、脱水動作の一例として、洗い行程およびすすぎ行程の終了後に実行される脱水行程における脱水動作を説明した。脱水動作は、洗濯兼脱水槽の回転による遠心力で洗濯物を脱水すればよいので、脱水行程における脱水動作に限定されない。脱水動作は、すすぎ行程時に行われる中間脱水動作を含んでもよい。
【0094】
実施の形態1では、床振動検知ステップの一例として、制御部210が、洗濯兼脱水槽103の回転数Nが所定範囲のときに第1の振動検知部310が検知した振幅値A1から、脱水行程における洗濯兼脱水槽103の最高回転数N1を判定する床振動検知ステップ(S104)を説明した。床振動検知ステップにおいて、制御部は、台枠に設けられた第1の振動検知部が検知した振幅値から洗濯兼脱水槽の回転数を制御すればよいので、S104の床振動検知ステップに限定されない。床振動検知ステップは、台枠に設けられた第1の振動検知部が脱水行程中に検知した振幅値から、脱水行程における洗濯兼脱水槽の回転数および/または最高回転数を制御してもよい。たとえば、脱水行程中に第1の振動検知部が一度でも所定の振幅値(例えば、0.6mm)を検知したら、脱水行程中における洗濯兼脱水槽の最高回転数を所定回転数(例えば、900rpm)となるように設定してもよい。
【0095】
実施の形態1では、制御ケースの一例として、正面側が板金203で構成された制御ケース202を説明した。制御ケースは、板金を少なくとも正面側に設けていればよいので、制御ケース202に限定されない。制御ケースは、側面および/または背面を板金で構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示は、振動を検知する振動検知部を備える洗濯機に適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 水槽ユニット
100 洗濯機
101 筐体
102 受筒
103 洗濯兼脱水槽
104 蓋体
111 モータ
112 防振ダンパ
120 台枠
121 設置脚
131 給水弁
132 給水経路
135 洗剤ケース
200 制御装置
201 制御基板
202 制御ケース
210 制御部
215 情報切替部
220 記憶部
310 第1の振動検知部
311 第1のセンサ
312 第1の基板
320 第2の振動検知部