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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20241115BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241115BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01N21/78 Z
G01N37/00 101
G01N35/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021551361
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037112
(87)【国際公開番号】W WO2021065996
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019183033
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507106847
【氏名又は名称】NSマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】草場 大市
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-517019(JP,A)
【文献】特開2011-59095(JP,A)
【文献】特開2017-96677(JP,A)
【文献】特開2014-94122(JP,A)
【文献】特表2012-519311(JP,A)
【文献】特開2011-141270(JP,A)
【文献】特表平3-502726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0319378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 37/00
G01N 21/00-21/958
G02B 6/00
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬との呈色反応を生じさせるための反応室が複数設けられている分析用チップを用いて上記試料を分析する分析装置であって、
光源と、
導光板と、
上記複数の反応室を含む範囲を撮影するイメージセンサと、を備えており、
上記導光板は、
上記光源からの光が当該導光板に入射される側に位置する第1面、
上記第1面の反対側に位置しており、前記第1面から入射されて当該導光板の内部を進行する光を反射する第2面、ならびに、
上記第1面および上記第2面と交差しており、上記イメージセンサにより撮影される第3面を有しており、
上記第3面に、上記反応室に面して当該導光板の内部の光を出射する出射領域が設けられている分析装置。
【請求項2】
上記第2面は、内部反射する光を集光するように湾曲している請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
複数の上記光源が上記第1面に対して並列されており、上記第1面は、長手方向の中央部が外側に突出するように湾曲している請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
上記導光板は、上記第1面から上記第2面に向けて幅が次第に小さくなっている請求項1から3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
上記出射領域が複数の出射部から構成されている請求項1から4のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
上記第2面は、上記第3面と直交する方向において異なる位置となる複数の部位を有し、
上記複数の部位のそれぞれは、対応する前記出射部に応じて内部反射する光を集光するように湾曲している請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
試料と試薬との呈色反応を生じさせるための反応室が複数設けられている分析用チップを用いて上記試料を分析する分析装置であって、
光源と、
導光板と、
上記複数の反応室を含む範囲を撮影するイメージセンサと、を備えており、
上記導光板は、
上記光源と対向する入射部と、
上記入射部から入射した光を反射する内面と、
上記入射部と上記光源とが対向する第1方向と交差する第2方向を向く出射部と、
上記出射部と第2方向に対向する拡散板と、を有しており、
上記反応室は上記出射部と第2方向に対向する分析装置。
【請求項8】
複数の上記光源が上記入射部に対して並列する請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
上記内面は、上記入射部から上記出射部に向けて、上記第1方向及び上記第2方向と交差する第3方向に対向する一対の面の最短距離が次第に小さくなっている請求項7又は8に記載の分析装置。
【請求項10】
上記導光板は箱形状であり、
上記入射部及び上記出射部は、開口である請求項7から9のいずれかに記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサを用いて試料を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や体液などの試料と試薬とを呈色反応させて、呈色の程度によって試料中の成分を分析する分析方法が知られている。特許文献1には、複数の反応室を備えた分析用チップに光が照射され、呈色反応を生じた試料をイメージセンサで撮影する分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-044049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された分析装置は、光源からの光を光散乱板を介して拡散してから分析用チップの複数の反応室に照射している。そのため、光散乱板の大きさによっては反応室以外に照射される光が多くなり、光源からの光の利用率が低下する。
【0005】
また、特許文献1に開示された分析装置では、平板からなる分析用チップが水平に配置され、光源はその下方に位置する。そのため、光源、光散乱板および分析用チップは上下方向に配置される必要があり、分析装置の上下方向の寸法が比較的大きくなる。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型で、かつ、分析用チップの複数の反応室に効率的に光を照射できる分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る分析装置は、試料と試薬との呈色反応を生じさせるための反応室が複数設けられている分析用チップを用いて上記試料を分析するための装置である。上記分析装置は、光源と、導光板と、上記複数の反応室を含む範囲を撮影するイメージセンサと、を備えている。上記導光板は、上記光源からの光が当該導光板に入射される側に位置する第1面、上記第1面の反対側に位置しており、前記第1面から入射されて当該導光板の内部を進行する光を反射する第2面、ならびに、上記第1面および上記第2面と交差しており、上記イメージセンサにより撮影される第3面を有している。上記第3面に、上記反応室に面して当該導光板の内部の光を出射する出射領域が設けられている。
【0008】
上記構成によれば、導光板の第3面に、反応室に面して導光板の内部の光を出射する出射領域が設けられているため、出射領域を反応室に対応させれば、出射光のほとんどが反応室のみを照射することができる。そのため、光源からの光の利用率が向上する。また、導光板において、光源からの光が導光板に入射される側に位置する第1面と、イメージセンサにより撮影される第3面とは交差しているため、光源とイメージセンサを直線上ではなく互いの中心軸が直交するように配置することができる。これにより、分析装置の小型化が実現される。
【0009】
(2) 好ましくは、上記第2面は、内部反射する光を集光するように湾曲している。これによれば、内部反射した光が集光されることで、その集光される箇所での光量が大きくなる。そのため、集光される箇所の付近の第3面に出射領域が設けられていれば、出射領域を介して明るい光が反応室に照射される。
【0010】
(3) 好ましくは、複数の上記光源が上記第1面に対して並列されており、上記第1面は、長手方向の中央部が外側に突出するように湾曲している。これによれば、複数の光源の光軸は平行ではなく導光板内で交差する。したがって、導光板内における光は集光されやすい。
【0011】
(4) 好ましくは、上記導光板は、上記第1面から上記第2面に向けて幅が次第に小さくなっている。これによれば、第1面および第2面と交差する2つの側面の間隔が第1面から第2面にかけて次第に小さくなっている。これら側面で反射した光は、側面同士の間隔が一定である場合に比べて反射角が小さい。したがって、導光板において第1面と第2面を結ぶ長さを小さくしても、第2面付近で強度が均一な光が得られる。
【0012】
(5) 好ましくは、上記出射領域が複数の出射部から構成されている。これによれば、複数の出射部の寸法形状および配置をそれぞれ対応する反応室に合致させれば、光源からの光の利用率がさらに向上する。
【0013】
(6) 好ましくは、上記第2面は、上記第3面と直交する方向において異なる位置となる複数の部位を有する。上記複数の部位のそれぞれは、対応する前記出射部に応じて内部反射する光を集光するように湾曲している。そのため、集光される各箇所の付近の第3面に各出射部が設けられていれば、各出射部を介して明るい光が各反応室に照射される。
【0014】
(7) 本発明に係る分析装置は、試料と試薬との呈色反応を生じさせるための反応室が複数設けられている分析用チップを用いて上記試料を分析する装置である。本分析装置は、光源と、導光板と、上記複数の反応室を含む範囲を撮影するイメージセンサと、を備える。上記導光板は、上記光源と対向する入射部と、上記入射部から入射した光を反射する内面と、上記入射部と上記光源とが対向する第1方向と交差する第2方向を向く出射部と、上記出射部と第2方向に対向する拡散板と、を有する。上記反応室は上記出射部と第2方向に対向する。
【0015】
上記構成によれば、光源から導光板の入射部に入射された光は、内面によって反射されつつ出射部から出射する。出射部から出射した光は拡散板により拡散されて複数の反応室へ入射する。これにより、光源からの光の利用率が向上する。また、導光板において、入射部と光源とが対向する第1方向と交差する第2方向へ光が出射されるので、光源とイメージセンサとを直線上に配置しなくてもよい。これにより、分析装置の小型化が実現される。
【0016】
(8) 好ましくは、複数の上記光源が上記入射部に対して並列する。
【0017】
(9) 好ましくは、上記内面は、上記入射部から上記出射部に向けて、上記第1方向及び上記第2方向と交差する第3方向に対向する一対の面の最短距離が次第に小さくなっている。
【0018】
(10) 好ましくは、上記導光板は箱形状であり、上記入射部及び上記出射部は開口である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型で、かつ、分析用チップの複数の反応室に効率的に光を照射できる分析装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)は、本発明の実施形態に係る分析装置10の斜視図であり、(b)は概略側面図である。
図2図2(a)は、図1の分析装置10で用いられる分析用チップ20の上面図であり、(b)はII(b)-II(b)線に沿った側断面図である。
図3図3は、図1の分析装置10の導光板50および光源40の上面図である。
図4図4(a)および(b)は導光板50の上面説明図であり、(a)は比較例、(b)は本発明の例を示す図である。
図5図5は、変形例の分析装置10の導光板50Aの斜視図である。
図6図6は、図5の導光板50Aの上面説明図である。
図7図7は、変形例に係る導光板70を示す斜視図である。
図8図8は、本体71を示す斜視図である。
図9図9は、本体71における光の反射を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、本実施形態は、本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更できることは言うまでもない。
【0022】
[分析装置10]
図1(a)および(b)に示されるように、本実施形態に係る分析装置10は、分析用チップ20を用いて試料を分析する装置であり、支持構造体30と、光源40と、導光板50と、イメージセンサ60とを備える。
【0023】
[分析用チップ20]
図2(a)および(b)に示されるように、分析用チップ20は、略平板状の基部21と、この基部21の一部から上方に突設した突設部22とを有する。分析用チップ20は透明樹脂からなる。突設部22には、試料が注入される、すり鉢状の注入部23が画定されている。基部21の内部には、複数(図示の例では7つ)の反応室24が画定されている。反応室24は、そのうちの1つの反応室24を中心として、水平方向に略円弧状に他の反応室24が配置されている。これら反応室24は、注入部23に流路25を介して連結されており、注入部23に注入された試料が導かれる。複数の反応室24は互いに同一寸法の円柱形状からなる。試料は、例えば希釈された血清であるが、これに限定されるものではない。複数の反応室24には、試料に呈色反応を生じさせる試薬が予め分配されている。これら試薬はそれぞれ異なる種類の試薬である。そのため、試料が注入部23に注入されて各反応室24に到達すると、複数の反応室24でそれぞれ異なる呈色反応が生じる。これにより、反応室24の数だけの項目の検査を一度に実施することができる。
【0024】
[支持構造体30]
図1(a)および(b)に示されるように、支持構造体30は、基部31と、この基部31上に構成されたチップ受入部32と、イメージセンサ60の鏡筒61の下部を水平方向に位置決めする鏡筒下部位置決め部33と、当該支持構造体30の支柱である2つの支柱部34,34と、鏡筒61の上部を水平方向に位置決めする鏡筒上部位置決め部35と、イメージセンサ60を支持するイメージセンサ支持部36と、頂部37とを備える。この支持構造体30によって、分析装置10はアセンブリ化されている。
【0025】
[光源40]
図3に示されるように、本実施形態における光源40は、複数のLED(発光ダイオード)光源40a~40f(総称して「光源40」と称する。)からなる。LED光源40a~40fは、いずれも短波長LEDからなり、光の中心波長が互いに異なる。LED光源40は、反応室24において呈色反応が生じた部分の呈色濃度とのコントラストが大きくなる色光となるような波長を有するものである。LED光源40a~40fは図示しない制御装置に接続されている。この制御装置の制御によって、LED光源の作動と停止が切り替えられる。これら複数のLED光源40a~40fは、同時に作動されるわけではない。複数のLED光源40a~40fが切り替えられることで、複数の反応室24の1つまたはいくつかにおける呈色反応に適した波長のLED光源40が逐次採用される。そして、結果として全ての反応室24における呈色反応に適した色光となるような波長が採用されることになる。
【0026】
[導光板50]
図1(a)および(b)ならびに図3に示されるように、導光板50は平板状である。導光板50の寸法は、例えば、幅方向Wの最大寸法が約35mm~約40mm、長手方向の寸法が約50mm~約60mm、厚み方向の寸法が約5mmである。なお、本明細書において「導光板」とは、端面から入射した光を拡散させて、一主面から光を出射すると一般的に理解されているものである。
【0027】
この導光板50の一部は支持構造体30内に嵌まり込んでいる。導光板50は、2つの端面51,52と、これら2つの端面51,52を接続する2つの主面53,54と、2つの端面51,52および2つの主面53,54を接続する2つの側面55,56とを有する。2つの端面51,52のうち、入射端面(第1面)51は、光源40a~40fからの光が導光板50に入射される側に位置する。
【0028】
入射端面51は、好ましくはその長手方向の中央部51aaが外側に突出するように湾曲している。詳細には、入射端面51は上面視で円弧状であってもよい。本実施形態では、入射端面51に複数の切欠51a~51fが形成されて、それぞれに光源40a~40fが設けられている。なお、入射端面51は切欠のない平面であってもよい。その場合、入射端面51の外側(つまり、導光板50の外部)に光源40a~40fが並列される。LED光源40a~40fの光軸La~Lfは導光板50内で交差する。これにより、導光板50内における光は集光されやすく、導光板50の幅方向Wの中央部分の光量が大きくなる。
【0029】
反対側端面(第2面)52は入射端面51の反対側に位置しており、光源40から照射されて導光板50の内部を進行する光を反射する。2つの主面53,54のうち、上側の主面である被撮影面(第3面)53は、入射端面51および反対側端面52と交差し、イメージセンサ60により撮影される。本実施形態では導光板50の上側の主面53が被撮影面であるが、下側の主面54が被撮影面であってもよい。その場合、イメージセンサ60は、導光板50の下方に配置される。
【0030】
導光板50の各面51~56は、被撮影面53の一部を除いて、導光板50に入射した光が全反射するものである。導光板50は、例えば、ガラスまたはアクリルからなる。導光板50は、この他に、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、または塩化ビニルであってもよい。なお、被撮影面53の上記一部を除いて、導光板50の各面51~56には反射シートが貼付されていてもよい。
【0031】
導光板50は、また、入射端面51から反対側端面52にかけて幅(幅方向Wの寸法)が次第に小さくなっている。すなわち、側面55と側面56の間隔が入射端面51から反対側端面52にかけて次第に小さくなっている。これによれば、側面55,56で反射した光は、側面55と側面56の間隔が一定の場合に比べて反射角が小さい。つまり、側面55,56で反射した光は入射端面51の近くに反射される。したがって、導光板50の長手方向Lの長さを小さくしても反対側端面52付近で強度が均一な光が得られる。
【0032】
反対側端面52は、導光板50内で反射する光を集光するように湾曲している。例えば、反対側端面52は半円筒周面である。これによれば、反対側端面52で内部反射した光は半円筒周面の中心軸近傍に集光されやすい。したがって、この中心軸上の被撮影面53に出射領域53aが設けられていれば、出射領域53aを介して明るい光が反応室24(図2(a))に照射される。ただし、被撮影面53の出射領域53aは、中心軸上になくてもよい。反対側端面52は、半円筒よりも小さい円弧の円筒周面であってもよい。この場合も、好ましくは、円筒周面の中心軸上の被撮影面53に出射領域53aが設けられる。また、円筒周面は 正円筒周面に限らず、例えば楕円筒周面であってもよい。楕円筒周面の場合、好ましくは、2つの焦点軸の中間部分の軸上の被撮影面53に出射領域53aが設けられる。反対側端面52は、また、例えば、複数の円筒弧の接面をつなぎ合わせた多角面を滑らかにした曲面であってもよい。この他に、反対側端面52は、微細な多角面からなってもよい。いかなる形状の反射側端面52であっても、内部反射した光が最も多く集光される箇所の軸上の被撮影面53に出射領域53aが設けられるのが好ましい。
【0033】
ところで、LED光源から照射される光は拡がりを有する。そのため、図4(a)に示されるように、反対側端面52が湾曲せずに平坦である場合、LED光源40から照射された光は反対側端面52付近AAの導光板50内で強度は均一ではあるがその拡がりのために光量は少ない。その一方、導光板50内の入射端面51付近ABで、LED光源40から照射された光は光量は十分であるが強度は不均一である。これに対して、図4(b)に示されるように、反対側端面52が湾曲していると、導光板50内の反対側端面52付近Bで、LED光源40から照射された光は内部反射によって光量が十分となる。これより、反対側端面52付近Bでは、光の強度が均一である上に光量が十分となる。なお、図4(a)および(b)は、説明を目的としているため、簡略化されており、他の図面と整合するものではない。
【0034】
図3に示されるように、被撮影面53は、導光板50の内部の光を出射する出射領域53aを有する。出射領域53aは、被撮影面53のうちの反対側端面52寄りに位置する。具体的には、導光板50の長手方向Lにおける中央よりも反対側端面52側に位置する。ここで、図4(a)および(b)に関連して説明したように、図3の導光板50では、光源40a~40fからの光が導光板50に入射される側に位置する入射端面51よりも、その反対側に位置する反対側端面52付近の方が光の強度は均一である。そのため、このように出射領域53aが入射端面51よりも反対側端面52の近くに位置することで、強度が均一な光が反応室24(図2(a))に照射される。
【0035】
出射領域53aは、複数の出射部53aaから構成されている。出射部53aaは、被撮影面53に凹凸加工のような表面加工を施すことによって実現されている。すなわち、導光板を面発光させるための公知の技法が採用されている。各出射部53aaは同一寸法の円形状である。この円の直径は、例えば、約1.5mm~約2mmである。本実施形態において、各出射部53aaの形状は、分析用チップ20の円柱状の各反応室24の底面の円形状と合致する。また、出射部53aaの数は分析用チップ20の反応室24の数と同一(図示の例では7つ)であり、配置も対応している。反対側端面52が半円筒周面の場合、円弧状に配置された複数の出射部53aaの中心が、この半円筒周面の中心軸上に位置してもよい。これによれば、反対側端面52の内部反射によって集光される箇所に出射領域53aが設けられているため、出射領域53aを介して明るい光が反応室24に照射される。
【0036】
[チップ受入部32]
図1(b)に示される支持構造体30のチップ受入部32には、図2(b)に示される分析用チップ20の基部21のうち、突設部22の外側で延出する延出部26を受け入れるための空間が画定されている。分析用チップ20の延出部26が挿入されると、突設部22がチップ受入部32に当接して係止される。これにより、分析用チップ20はチップ受入部32に対して位置決めされる。
【0037】
分析用チップ20がチップ受入部32に対して位置決めされると、複数の出射部53aaのそれぞれの直上に対応する反応室24の底面が位置する。そのため、各出射部53aaから出射された光のほとんど全てが、対応する反応室24を下側から照射することになる。したがって、反応室24以外を照射する光はほとんどなく、光源40からの光の利用率が向上する。
【0038】
なお、出射領域53aは、1つの出射部53aaから構成されてもよい。この場合、この1つの出射部53aaの大きさを、全ての反応室24を囲む領域とほぼ同一の大きさにすれば、反応室以外に照射される光の量を抑えることができる。その一方、出射部35aaは1つだけであるため、導光板の表面加工が容易である。
【0039】
[イメージセンサ60]
図1(b)に示されるように、イメージセンサ60はチップ受入部32の上方に配置されており、分析用チップ20の全ての反応室24を含む範囲を撮影する。イメージセンサ60は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサであるが、2次元画像が取得できるものであればいかなるイメージセンサであってもよい。分析用チップ20の全ての反応室24に照射された光は、まず、鏡筒61で絞り込まれる。次に、カラーフィルタを有するレンズ62を介してイメージセンサ60に取り込まれる。これにより、イメージセンサ60に取り込まれる画像は、各画素の色情報が付加されている。そのため、分析用チップ20の全ての反応室24を含む範囲のカラー画像が得られる。
【0040】
イメージセンサ60には図示しない処理装置が接続されている。この処理装置によって、公知の手法により、撮影された画像から各反応室24における呈色反応を判定することができる。
【0041】
[分析装置10の使用方法]
以下に、分析装置10の使用方法が説明される。
【0042】
図1に示されるように、各反応室24において呈色反応が生じている分析用チップ20の延出部26が、チップ受入部32の空間に挿入される。延出部26がこの空間に係合したことを契機として、または、オペレータが図示しないボタンを操作することを契機として、光源40が作動する。具体的には、図示しない制御装置が光源40のうちの一つ(例えばLED光源40a)のみを作動して、そのLED光源40aが光を照射する。LED光源40aから照射された光は導光板50に入射し、導光板50の内部を進行する。反対側端面52を含む様々な面で内部反射された光は、出射部53aaを透過して外部に出射される。ここで、反対側端面52は導光板50内で反射する光を集光するように湾曲し、出射領域53aは被撮影面53のうちの反対側端面52寄りに位置するため、出射領域53aを透過する光は、強度が均一である上に光量が十分である。
【0043】
各出射部53aaを透過して外部に出射された光は、対応する反応室24を下側から照射する。これら反応室24のうち、LED光源40aの波長の光に対応した反応室における呈色した部分が、イメージセンサ60によって撮影される画像に明確に現れる。このように撮影された画像は図示しない記憶領域に保存される。
【0044】
光源40の制御装置とイメージセンサ60に接続された制御装置とは、互いに連動しているか、または同一の装置によって実現されている。そのため、最初のLED光源40aが作動中に画像が撮影されたことを確認した後に、制御装置は、LED光源40aを停止して別のLED光源(例えばLED光源40b)を作動する。これにより、これら反応室24のうち、LED光源40bの波長の光に対応した反応室における呈色した部分が、イメージセンサ60によって撮影される画像に明確に現れる。このように撮影された画像は図示しない記憶領域に保存される。
【0045】
以上の処理が、全てのLED光源40a~40fに対して順番に繰り返される。その結果、LED光源40a~40fの数だけ画像が得られる。イメージセンサ60に接続された図示しない処理装置は、これらの画像それぞれについて呈色反応を判定することができる。なお、オペレータの介入は、分析用チップ20をチップ受入部32の空間に挿入することのみか、または、それに加えて分析の契機となるボタン操作のみである。そのため、ほぼ自動で、複数の試薬に対して試料の分析が可能である。
【0046】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、導光板の第3面53に、反応室24に面して導光板50の内部の光を出射する出射領域53aが設けられているため、出射領域53aを反応室24に対応させれば、出射光のほとんどが反応室24のみを照射するものとすることができる。そのため、光源40からの光の利用率が向上する。また、導光板50において、光源40からの光が導光板50に入射される側に位置する第1面51と、イメージセンサ60により撮影される第3面53とは交差しているため、光源40とイメージセンサ60を直線上ではなく互いの中心軸が直交するように配置することができる。これにより、分析装置10の小型化が実現される。
【0047】
また、本実施形態によれば、第2面52で内部反射した光が集光されることで、その集光される箇所での光量が大きくなる。そのため、集光される箇所の付近の第3面53に出射領域53aが設けられていれば、出射領域53aを介して明るい光が反応室24に照射される。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、複数の上記光源40a~40fが上記第1面51に対して並列されており、上記第1面51は、長手方向の中央部51aaが外側に突出するように湾曲しているため、複数の光源40a~40fの光軸La~Lfは平行ではなく導光板50内で交差する。したがって、導光板50内における光は集光されやすい。
【0049】
さらに、上記導光板50は、上記第1面51から上記第2面52に向けて幅が次第に小さくなっているため、第1面51および第2面52と交差する2つの側面55,56の間隔が第1面51から第2面52にかけて次第に小さくなっている。これら側面55,56で反射した光は、側面55,56同士の間隔が一定である場合に比べて反射角が小さい。したがって、導光板において第1面と第2面を結ぶ長さを小さくしても、第2面52付近で強度が均一な光が得られる。
【0050】
さらに、上記出射領域53aが複数の出射部53aaから構成されているため、複数の出射部53aaの寸法形状および配置をそれぞれ対応する反応室24に合致させれば、光源40からの光の利用率がさらに向上する。
【0051】
[変形例]
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。上記実施形態に係る分析装置10の各構成要素に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が行われてもよい。また、分析装置10の各構成要素の形状及び大きさも、実施の形態に応じて、適宜、設定されてよい。例えば、以下の変更が可能である。
【0052】
図5に示されるように、導光板50Aの反対側端面(第2面)52Aは、被撮影面と直交する方向、つまり導光板50Aの厚み方向Dにおいて異なる位置となる複数の部位52Aa~52Agを有する。これらは、それぞれ、図6に示されるように、異なる位置Pa~Pfに内部反射した光を集光する。そのため、これらの上方に各出射部53aa(図3)が設けられていれば、各出射部53aaを介して明るい光が各反応室24に照射される。
【0053】
これら複数の部位52Aa~52Agはそれぞれ半円筒周面である。これによれば、各部位52Aa~52Agで内部反射した光はその半円筒周面の中心軸近傍に集光されやすい。したがって、これら中心軸上の被撮影面53に各出射部53aaが設けられていれば、各出射部53aaを介してさらに明るい光が反応室24(図2(a))に照射される。
【0054】
上記実施形態では、出射部53aaは7つ設けられていたが、いくつ設けられてもよい。好ましくは、分析用チップ20の反応室24に対応している。すなわち、分析装置10は、特定の分析用チップ20に特化したものであってもよい。
【0055】
上記実施形態では、光源40a~40fは入射端面51から導光板50の内方に入り込むものとして説明したが、入射端面51の外側に光源40a~40fが配置されていてもよい。すなわち、「上記光源からの光が当該導光板に入射される側に位置する第1面」には、第1面51の内側に光源が配置されている形態のみならず、第1面51の外側に光源が配置されている形態も含まれる。
【0056】
上記実施形態では、光源は複数設けられていたが、光源40は1つであってもよい。また、光源は短波長のLED光源として説明したが、長波長のLED光源の波長を切り替えて使用してもよい。さらに、光源はLED光源として説明したが、導光板50出射領域53aから所望の波長の光を出射できるのであれば、いかなる光源が用いられてもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、導光板50に代えて、後述される導光板70が用いられてもよい。
【0058】
図7に示されるように、導光板70は、本体71と拡散板72とを有する。図7及び図8に示されるように、本体71は、箱形状である。本体71は、例えば、前述された導光板50と同等の寸法である。すなわち、本体71の寸法は、例えば、幅方向W(第3方向の一例)の最大寸法が約35mm~約40mm、長手方向L(第1方向の一例)の寸法が約50mm~約60mm、厚み方向D(第2方向の一例)の寸法が約5mmである。
【0059】
本体71は、端面73と、側面74,75と、主面76,77と、を有する箱形状である。端面73は、側面74,75を接続する。主面76は、側面74,75を接続する。主面77は、端面73及び側面74,75を接続する。本体71は、長手方向Lの一方であって端面73と反対側に開口78を有する。開口78は、本体71の長手方向Lの一方端のすべてを開放する。開口78は、入射部の一例である。本体71は、長手方向Lの他方、すなわち端面73側であって主面76が位置する上向きに開口79を有する。開口79は、主面76の一部を開放する。開口79が出射部の一例である。
【0060】
図7に示されるように、5つの光源80a~80eが幅方向Wに一列に並んでいる。光源80a~80eは、LED光源である。光源80a~80eは、開口78と長手方向Lにおいて対向している。開口78は、光源80a~80eの全てと対向する幅を有する。光源80a~80eから出射された光は、開口78を通じて本体71の内部空間へ進入する。
【0061】
図7に示されるように、開口79と拡散板72とは厚み方向Dにおいて対向している。開口79は、主面76の端面73側の一部であり、その開口面積は、分析用チップ20の全ての反応室24を含む領域よりも大きい。したがって、分析用チップ20が分析装置10に装着されると、全ての反応室24が開口79の投影領域内に位置する。なお、開口79は、主面77に位置してもよい。その場合、イメージセンサ60は、導光板50の下方に配置される。
【0062】
本体71のすべての内面は、光を全反射する。本体71は、例えば、白いアクリルやABSなどの反射率が比較的高い材料や、鏡面加工やメッキされた金属板からなる。また、本体71の内面に反射シートが貼付されていてもよい。
【0063】
本体71は、開口78から端面73に向かって幅(幅方向Wの寸法)が次第に小さくなっている。すなわち、側面74,75の最短距離が開口78から端面73に向かって次第に小さくなっている。これにより、側面74,75に対応する内面で反射した光の反射角は、側面74,75の最短距離が一定の場合の反射角よりも小さい。したがって、本体71の長手方向Lの長さを小さくしても端面73付近で強度が均一な光が得られやすい。
【0064】
端面73は、本体71内で反射する光を集光するように湾曲している。例えば、端面73は半円筒周面である。これによれば、端面73の内面で反射した光は半円筒周面の中心軸近傍に集光されやすい。
【0065】
拡散板72は、開口79の開口面積よりも充分に大きな面積の主面を有する平板である。拡散板72は、例えばガラスやアクリルの主面に微細な凹凸加工が施されたものである。拡散板72は、厚み方向Dに光を透過する。拡散板72を透過する光は、拡散板72の各主面においてランダムに屈折して拡散する。
【0066】
図9に示されるように、例えば、光源80a~80eの一つから、例えば光源80bから照射された光は、本体71の開口78を通じて本体71の内部空間に進入する。光源80bから拡散した光は、端面73へ向かって直進したり、また、本体71の内部空間の各内面において反射しつつ端面73へ向かって進行したりする。端面53付近において反射した光が集まるが、必ずしも、開口79の全領域において光は均一な状態ではない。開口79を通じて本体71から出射した光は、拡散板72を透過するときに拡散されて均一な明るさとなり、各反応室24を照射する。
【0067】
上記変形例においても、光源80a~80efは、本体71の外側に位置していても、一部が本体71の内部空間に位置していてもよい。また、光源の個数は限定されず、例えば1つであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10・・・分析装置
20・・・分析用チップ
24・・・反応室
40・・・光源
50(50A)・・・導光板
51・・・第1面
52(52A)・・・第2面
52Aa~52Af・・・部位
53・・・第3面
53a・・・出射領域
53aa・・・出射部
60・・・イメージセンサ
70・・・導光板
71・・・拡散板
78・・・開口(入射部)
79・・・開口(出射部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9