(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】検体採取装置、判定システム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20241115BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20241115BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01N1/04 H
G01N33/48 S
G01N1/02 W
(21)【出願番号】P 2020204220
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】成畑 晃希
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0246151(US,A1)
【文献】特開平03-191733(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220168(JP,U)
【文献】特開2019-129824(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197431(JP,U)
【文献】特開2005-006543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部と、
前記所定の場所にいる前記野生動物から検体を採取するための検体採取部とを備え、
前記野生動物は、野鳥を含み、
前記検体は、前記野鳥の糞を含み、
前記誘引部は、止まり木を有し、
前記検体採取部は、前記止まり木の下方に設置されて前記野鳥の糞を受ける糞受け部を有する、
検体採取装置。
【請求項2】
野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部と、
前記所定の場所にいる前記野生動物から検体を採取するための検体採取部とを備え、
前記検体は、前記野生動物の糞を含み、
前記検体採取部は、採取した前記野生動物の糞を液体と混合する、
検体採取装置。
【請求項3】
野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部と、
前記所定の場所にいる前記野生動物から検体を採取するための検体採取部とを備え、
前記検体採取部は、前記野生動物の水浴用の液体を貯留する水槽部を有する、
検体採取装置。
【請求項4】
野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部と、
前記所定の場所にいる前記野生動物から検体を採取するための検体採取部とを備え、
前記検体採取部は、前記野生動物の呼気を取得する呼気取得部を有する、
検体採取装置。
【請求項5】
前記誘引部は、前記野生動物の餌と、前記餌が載置される餌台とを有する、
請求項1
から4のいずれか1項に記載の検体採取装置。
【請求項6】
さらに、前記検体採取部によって採取された前記検体について病原体検査を行うための検査部を備える、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の検体採取装置。
【請求項7】
さらに、前記所定の場所にいる前記野生動物を撮影する撮影部と、前記検体採取部によって採取された前記検体を保存するための検体保存部と、前記撮影部による撮影情報と前記検体保存部によって保存されている前記検体の検体情報とを対応付けて記憶する記憶部とを備える、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の検体採取装置。
【請求項8】
野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部、前記所定の場所にいる前記野生動物から検体を採取するための検体採取部、および前記検体採取部によって採取された前記検体について病原体検査を行うための検査部を備える検体採取装置と、前記検体採取装置と通信ネットワークを介して接続される情報処理装置とを備え、
前記検体採取装置は、さらに、前記検査部によって検査された前記検体についての検査結果情報を前記情報処理装置に送信する送信部を有し、
前記情報処理装置は、前記検査結果情報と前記検体採取装置の設置場所情報とに基づき、所定の範囲について所定区域への指定の要否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を出力する出力部とを有する、
判定システム。
【請求項9】
野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部、前記所定の場所にいる前記野生動物から検体を採取するための検体採取部、および前記検体採取部によって採取された前記検体について病原体検査を行うための検査部を備える検体採取装置と、前記検体採取装置と通信ネットワークを介して接続される情報処理装置とを備える判定システムの制御方法であって、
前記検体採取装置が、前記検査部によって検査された前記検体についての検査結果情報を前記情報処理装置に送信し、
前記情報処理装置が、前記検査結果情報と前記検体採取装置の設置場所情報とに基づき、所定の範囲について所定区域への指定の要否を判定し、判定結果を出力する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動物由来の検体を採取する検体採取装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野鳥の状態を観察するシステムや、ペットの糞便によりペットの体調を観察するシステムが知られている(たとえば、特許文献1、および特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-191733号公報
【文献】特開2019-129824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、野生動物が持つ病原体が家畜等に感染することを抑制するための対策が行われている。たとえば、家禽の高病原性鳥インフルエンザへの感染防止のために様々な対策が講じられている。そのひとつとして、鳥インフルエンザをもった野鳥の早期発見がある。家禽への感染経路は野鳥由来とされており、高病原性へと変異する可能性のある鳥インフルエンザを持つ野鳥を早期発見することで、鳥インフルエンザの家禽への感染を未然に防ぐ対策を行える。このために、環境省等で早期発見のために実施されていることとして、野鳥の糞便採取調査と死亡野鳥調査とがある。これらの調査は、実際に調査員が、野鳥の生息エリアへと赴き行うものである。このように、従来、現地へと調査員が赴いて野生動物由来の検体を採取している。
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、現地へと調査員が赴いて検体を採取しなければならないため手間がかかり、野生動物由来の検体を採取することが容易ではない。
【0006】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、野生動物由来の検体を容易に採取可能な検体採取装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る検体採取装置は、野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部と、前記所定の場所にいる前記野生動物から検体を採取するための検体採取部とを備える。
【0008】
また、本開示の一態様に係る判定システムは、上記の検体採取装置と、前記検体採取装置と通信ネットワークを介して接続される情報処理装置とを備え、前記検体採取装置は、さらに、前記検査部によって検査された前記検体についての検査結果情報を前記情報処理装置に送信する送信部を有し、前記情報処理装置は、前記検査結果情報と前記検体採取装置の設置場所情報とに基づき、所定の範囲について所定区域への指定の要否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を出力する出力部とを有する。
【0009】
また、本開示の一態様に係る制御方法は、上記の検体採取装置と、前記検体採取装置と通信ネットワークを介して接続される情報処理装置とを備える判定システムの制御方法であって、前記検体採取装置が、前記検査部によって検査された前記検体についての検査結果情報を前記情報処理装置に送信し、前記情報処理装置が、前記検査結果情報と前記検体採取装置の設置場所情報とに基づき、所定の範囲について所定区域への指定の要否を判定し、判定結果を出力する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る検体採取装置等によれば、野生動物由来の検体を容易に採取可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る検体採取装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る検体採取装置の内観を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る検体採取装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態2に係る検体採取装置の内観を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態3に係る判定システムの検体採取装置の内観を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態3に係る判定システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施の形態3に係る判定システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【
図8】
図8は、実施の形態3に係る判定システムを用いた、鳥インフルエンザウイルス早期対策モニタリングシステムのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
ただし、本開示に係る検体採取装置、判定システム、および制御方法は、以下に説明する実施の形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、それらと同等な構成も含む。
【0014】
以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0015】
また、以下において、平行および垂直等の要素間の関係性を示す用語、および、円筒形状等の要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、たとえば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0016】
以下の各図において、X軸およびY軸は、水平面上で互いに直交する軸である。Z軸は、水平面に垂直な軸である。Z軸において、正の向きは鉛直上向きを表し、負の向きは鉛直下向きを表す。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る検体採取装置10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る検体採取装置10の内観を示す断面図である。
図1および
図2を参照して、検体採取装置10について説明する。
【0018】
図1および
図2に示すように、検体採取装置10は、野生動物由来の検体を採取する装置である。また、検体採取装置10は、野生動物由来の検体に含まれているウイルスをサンプリングするウイルスサンプリング装置でもある。たとえば、野生動物は、野鳥1および野獣等を含んでいる。たとえば、野獣は、野性の猪等を含んでいる。また、たとえば、検体は、野性動物の糞、野性動物の身体に付着している物体、および野性動物の呼気等を含んでいる。検体採取装置10は、主に、野鳥1から検体を採取する。検体採取装置10は、野鳥1を誘引するための誘引部12と、野鳥1の糞2を採取する検体採取部14と、野鳥1の糞2を保存する検体保存部16と、野鳥1を撮影するカメラ18とを備えている。
【0019】
誘引部12は、野鳥1を所定の場所に誘引するための誘引部である。誘引部12は、野鳥1の餌20と、餌20が載置される餌台21と、止まり木22とを有している。餌20は、糞受け部24の上方に配置され、野鳥1を糞受け部24の上方に誘引する。餌台21は、止まり木22に設置されている。止まり木22は、野鳥1が止まることができる木であり、糞受け部24の上方に配置され、野鳥1を糞受け部24の上方に誘引する。なお、たとえば、誘引部12は、餌20および止まり木22のうちの一方のみを有していてもよい。また、たとえば、餌20は、糞受け部24の天面38に載置されていてもよい。
【0020】
検体採取部14は、所定の場所にいる野鳥1から検体を採取するための検体採取部である。検体採取部14は、誘引部12によって糞受け部24の上方へと誘引された野鳥1が糞受け部24上に排出した糞2を採取する。このように、検体採取部14は、糞受け部24の上方にいる野鳥1から検体を採取する。検体採取部14は、糞受け部24と、回収液供給部26と、回収液27と、回収口28と、粗大夾雑物除去部30と、夾雑物タンク32と、ろ過部34と、ポンプ36とを有している。
【0021】
糞受け部24は、止まり木22の下方に設置されて野鳥1の糞2を受ける。糞受け部24は、略円柱状であり、天面38を有している。天面38は、水平方向に対して傾斜している傾斜部40と、水平方向と平行でありかつ傾斜部40の下端部に接続されている水平部42とを有している。
【0022】
回収液供給部26は、傾斜部40の上端部の近傍に配置されている。回収液供給部26は、回収液27を貯留する回収液タンク44と、回収液タンク44に貯留されている回収液27を回収液タンク44の外部に吐出するためのポンプ(図示せず)とを有している。回収液27は、天面38上にある糞2を回収するための液体である。回収液供給部26は、傾斜部40の上端部から下端部に向かう方向Aに回収液27が流れるように傾斜部40上に回収液27を供給する。
【0023】
回収口28は、水平部42において開口している。天面38上に排出された糞2は、鮮度が損なわれない程度で一定時間経過後、回収液供給部26より供給された回収液27と混合されて回収口28へと回収される。このように、検体採取部14は、採取した糞2を液体と混合する。たとえば、回収液27は、糞2に含まれているウイルスを保存するためのリン酸緩衝液、または効率よく天面38の洗浄を行うための界面活性剤等であってもよく、ユーザーの目的に応じて変更可能である。また、回収液27を供給するタイミングは、カメラ18によって天面38上に糞2があることが確認されたことを示す信号を回収液供給部26が受信したことを契機として供給する等であってもよい。回収液27とともに回収された糞2は、回収液27中で溶解されながら、ポンプ36によって吸引され、粗大夾雑物除去部30へと搬送される。
【0024】
粗大夾雑物除去部30は、回収口28から回収された回収液27に含まれている粗大夾雑物を除去する。粗大夾雑物除去部30は、遠心力による分離等を行う遠心分離機(図示せず)等を有しており、回収液27に溶解されている糞2に含まれているウイルスとその他の不要な粗大夾雑物とを分離する。なお、たとえば、粗大夾雑物除去部30による夾雑物の分離方法は、遠心式に限らない。
【0025】
夾雑物タンク32は、粗大夾雑物除去部30によって分離された粗大夾雑物を蓄積し、ユーザーの任意のタイミングもしくは自動で、蓄積している粗大夾雑物を廃棄する。粗大な夾雑物が除去されて糞2中のウイルスを含む回収液27は、ろ過部34へと搬送される。
【0026】
ろ過部34は、粗大夾雑物除去部30で除去できなかった夾雑物をろ過するフィルタ(図示せず)等を有し、粗大夾雑物除去部30で除去できなかった夾雑物を除去し、夾雑物が除去されかつウイルスを含んだ回収液27を精製する。
【0027】
検体保存部16は、検体採取部14によって採取された検体を保存するための検体保存部である。検体保存部16は、検体採取部14によって採取されて回収液27と混合された糞2を保存する保存庫46と、保存庫46を冷却する冷却部48とを有している。なお、たとえば、保存庫46は、液体と混合されていない検体を保存してもよい。ろ過部34によって精製された糞2中のウイルスを含む回収液27は、冷却部48によって任意の温度に調整された保存庫46へと搬送される。ここでは、時間および体積等のユーザーの任意の区画によって、得られた回収液27を分画可能である。分画されたウイルスを含む回収液27は、冷蔵保存され、ユーザーは、任意のタイミングでウイルスを含む回収液27を回収し、鮮度を保った状態でウイルスの検査を行うことができる。これによって、ウイルスの感染力を精度よく検査することが可能であり、必要なサンプル数も多く確保できる。検体保存部16は、カメラ18によって、糞2を排出した野鳥1の種類と照合して、検体を保存してもよい。
【0028】
カメラ18は、所定の場所にいる野鳥1を撮影する撮影部である。具体的には、カメラ18は、止まり木に止まっている野鳥1、つまり糞受け部24の上方にいる野鳥1を撮影する。なお、たとえば、カメラ18は、天面38を撮影してもよい。
【0029】
図3は、実施の形態1に係る検体採取装置10の機能構成を示すブロック図である。
図3を参照して、検体採取装置10の機能構成について説明する。
【0030】
図3に示すように、検体採取装置10は、制御部49と、記憶部50とをさらに備えている。
【0031】
制御部49は、カメラ18による撮影情報に基づいて、回収液供給部26等を制御する。たとえば、制御部49は、カメラ18による撮影情報に基づいて野鳥1が糞2をしたことを認識し、野鳥1が糞2をした後に回収液供給部26、粗大夾雑物除去部30、およびポンプ36等を駆動させる。なお、たとえば、制御部49は、カメラ18以外のセンサ等の検知結果に基づいて野鳥1が糞2をしたことを認識し、野鳥1が糞2をした後に回収液供給部26等を駆動させてもよい。また、たとえば、制御部49は、所定期間が経過する毎に、回収液供給部26等を駆動させてもよい。これによって、常時的に検体を採取して保存できる。たとえば、制御部49は、プロセッサ等によって実現される。
【0032】
記憶部50は、カメラ18による撮影情報と検体保存部16によって保存されている検体の検体情報とを対応付けて記憶する。たとえば、撮影情報は、カメラ18によって撮影された野鳥1の種類を示す情報、および/または撮影された時間を示す情報等を含んでいる。たとえば、記憶部50は、メモリ等によって実現される。
【0033】
上述したように、検体採取装置10は、野鳥1を餌20等の誘引物質によって所定の場所に誘引し、所定の場所にいる野鳥1から糞2を採取し、採取した糞2を冷蔵または冷凍保存する。検体採取装置10によって、野鳥1由来の検体の採取を常時的に行えるとともに、鮮度を保持したまま検体を保存することができる。
【0034】
以上、検体採取装置10について説明した。
【0035】
検体採取装置10は、野鳥1を所定の場所に誘引するための誘引部12と、所定の場所にいる野鳥1から検体を採取するための検体採取部14とを備える。
【0036】
これによれば、誘引部12によって野鳥1を所定の場所に誘引できるとともに、検体採取部14によって所定の場所にいる野鳥1から検体を採取できる。したがって、人が現地に赴くことなく野鳥1から検体を採取できるので、野鳥1由来の検体を容易に採取可能である。また、人が現地に赴く必要がないので、野鳥1由来の検体に含まれているウイルスが人に感染することを抑制できる。
【0037】
また、誘引部12は、野鳥1の餌20と、餌20が載置される餌台21とを有する。
【0038】
これによれば、野鳥1を容易に誘引できるので、野鳥1由来の検体をさらに容易に採取可能である。
【0039】
また、野生動物は、野鳥1を含み、検体は、野鳥1の糞2を含み、誘引部12は、止まり木22を有し、検体採取部14は、止まり木22の下方に設置されて野鳥1の糞を受ける糞受け部24を有する。
【0040】
これによれば、止まり木22によって糞受け部24の上方に野鳥1を誘引できるので、野鳥1の糞2を容易に採取可能である。
【0041】
また、検体は、野鳥1の糞2を含み、検体採取部14は、採取した野鳥1の糞2を液体と混合する。
【0042】
これによれば、糞2に含まれているウイルスを鮮度よく保存可能である。
【0043】
また、検体採取装置10は、さらに、所定の場所にいる野鳥1を撮影するカメラ18と、検体採取部14によって採取された検体を保存するための検体保存部16と、カメラ18による撮影情報と検体保存部16によって保存されている検体の検体情報とを対応付けて記憶する記憶部50とを備える。
【0044】
これによれば、カメラ18による撮影情報と検体保存部16によって保存されている検体の検体情報とを対応付けて記憶できるので、たとえば、野鳥1の種類と当該野鳥1から採取されて保存されている検体の検体情報とを対応付けて記憶でき、保存されている検体がどの種類の野鳥1から採取されたものであるかを容易に判別できる。
【0045】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る検体採取装置10aの内観図を示す断面図である。
図4を参照して、検体採取装置10aについて説明する。検体採取装置10aは、野性動物の水浴用の液体を貯留している水槽部53を備えている点、および野性動物の呼気を取得するための呼気取得部52を備えている点において、検体採取装置10と主に異なっている。以下の説明では、検体採取装置10との相違点を中心に説明する。
【0046】
検体採取装置10aは、実施の形態1に係る検体採取装置10と同様に、野生動物由来の検体を採取する装置である。検体採取装置10aは、野生動物を誘引するための誘引部12aと、野生動物から検体を採取する検体採取部14aと、検体を保存する検体保存部16と、野性動物を撮影するカメラ18とを備えている。
【0047】
誘引部12aは、野生動物を所定の場所に誘引するための誘引部である。誘引部12aは、野生動物の餌20aを有している。餌20aは、検体採取部14aの水槽部53内に貯留されている回収液27に入れられ、野生動物を水槽部53内に誘引する。
【0048】
検体採取部14aは、壁部51と、呼気取得部52とをさらに有している点において、検体採取部14と主に異なっている。
【0049】
壁部51は、天面38の縁部に沿って設けられており、天面38の縁部から上方に突出している。天面38上における壁部51で囲まれた部分には、野生動物の水浴用の液体である回収液27が貯留されている。つまり、検体採取部14aは、糞受け部24と壁部51とによって構成されかつ野生動物の水浴用の液体を貯留する水槽部53を有している。野生動物が水槽部53内に貯留されている回収液27に浸かることによって、野生動物に付着している物体等の検体が回収液27中に採取される。
【0050】
呼気取得部52は、所定の場所にいる野生動物の呼気を取得する。呼気取得部52は、水槽部53内に貯留されている回収液27の上方に配置されており、水槽部53内にいる野生動物の呼気を取得する。呼気取得部52は、空気吸引部54と、気中微粒子集塵部55とを有している。
【0051】
空気吸引部54は、空気を吸引する。たとえば、空気吸引部54は、ファン(図示せず)と、ファンを回転させるモータ(図示せず)とを有しており、ファンを回転させることによって、野生動物の呼気を検体採取装置10aの内部に吸引する。このようにして、呼気取得部52は、野生動物の呼気を取得する。
【0052】
気中微粒子集塵部55は、気体中の微粒子を集めて液体中に捕集する。たとえば、気中微粒子集塵部55は、空気吸引部54によって吸引された野生動物の呼気中の微粒子をろ過するフィルタ(図示せず)を有しており、当該フィルタを液体中に浸漬させて当該フィルタに付着している微粒子を液体中に捕集する。
【0053】
検体採取装置10aは、餌20aによって、野生動物を水槽部53内へと誘引し、水槽部53内にプールした水浴用の回収液27へと野生動物を浸漬させる。野生動物をこの水浴用の回収液27へと浸漬させることで、野性動物の糞便、野性動物の口腔内に付着している物体、および/または野生動物の身体に付着している物体等の検体を回収液27中へと採取する。
【0054】
また、検体採取装置10aは、野生動物より発された飛沫および/または飛沫核等の検体を空気吸引部54によって気中微粒子集塵部55中へと吸引して採取し、これらを気中微粒子集塵部55内で液体中へと回収する。
【0055】
水浴用の回収液27中へと採取された検体は、実施の形態1と同様に夾雑物が除去されて、冷蔵保存される。また、気中微粒子集塵部55によって液体中へと採取された検体についても、冷蔵保存される。
【0056】
上述したように、検体採取装置10aは、野生動物を餌20a等の誘引物質によって所定の場所に誘引し、所定の場所にいる野生動物から糞、身体に付着している物体、および/または呼気等を採取し、採取した糞等を冷蔵または冷凍保存する。検体採取装置10aによって、野生動物由来の検体の採取を常時的に行えるとともに、鮮度を保持したまま検体を保存することができる。
【0057】
以上、検体採取装置10aについて説明した。
【0058】
検体採取部14aは、野生動物の水浴用の液体を貯留する水槽部53を有する。
【0059】
これによれば、野生動物が当該液体に浸かることによって、野生動物の身体に付着している物体等の検体を容易に採取可能である。
【0060】
また、検体採取部14aは、野生動物の呼気を取得する呼気取得部52を有する。
【0061】
これによれば、野生動物の呼気を容易に採取可能である。
【0062】
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3に係る判定システム100の検体採取装置10bの内観図を示す断面図である。
図6は、実施の形態3に係る判定システム100の機能構成を示すブロック図である。
図5および
図6を参照して、判定システム100について説明する。
【0063】
図5および
図6に示すように、たとえば、判定システム100は、家禽へと感染し大きな被害をうむ高病原性の鳥インフルエンザウイルスを早期発見するために、常時的に鮮度よく野鳥由来のウイルスをサンプリングすることを目的とする鳥インフルエンザウイルス早期対策モニタリングシステムを実現するために用いられる。判定システム100は、検体採取装置10bと、情報処理装置56とを備えている。
【0064】
検体採取装置10bは、実施の形態2に係る検体採取装置10aと同様に、野生動物由来の検体を採取する装置である。検体採取装置10bは、検査部58と、送信部60とをさらに備えている点において、検体採取装置10aと主に異なっている。
【0065】
検査部58は、検体採取部14aによって採取された検体について病原体検査を行うための検査部である。検体採取装置10bは、実施の形態2と同様に、回収液27中へと検体を採取し、検体中のウイルスを夾雑物から分離する。得られたウイルスを含む回収液27は、一部が検査部58へと搬送され、残りが保存庫46へと搬送される。たとえば、検査部58は、検体に含まれているウイルスと抗原抗体反応を起こす物質を有しており、抗原抗体反応を用いた検出方式を用いて、送液されるウイルスを含んでいる回収液27を連続的に検査する。このように、検査部58は、検体に含まれているウイルスを検査することによって、当該検体について病原体検査を行う。
【0066】
送信部60は、検査部58によって検査された検体についての検査結果情報を、検体採取装置10bと通信ネットワークを介して接続された情報処理装置56へと送信する。たとえば、検査結果情報は、検査部58によって検査された検体にどのようなウイルスが含まれていたかを示す情報等を含んでいる。
【0067】
情報処理装置56は、受信部62と、記憶部64と、判定部66と、出力部68とを有している。たとえば、情報処理装置56は、プロセッサおよびメモリ等によって実現される。
【0068】
受信部62は、送信部60から送信される検査結果情報を受信する。記憶部64は、検体採取装置10bの設置場所を示す設置場所情報を記憶している。判定部66は、検査結果情報と設置場所情報とに基づき、所定の範囲について所定区域への指定の要否を判定する。出力部68は、判定部66の判定結果を出力する。
【0069】
図7は、実施の形態3に係る判定システム100の動作の一例を示すシーケンス図である。
図8は、実施の形態3に係る判定システム100を用いた、鳥インフルエンザウイルス早期対策モニタリングシステムのイメージ図である。
図7および
図8を参照して、判定システム100の動作の一例について説明する。
【0070】
図7に示すように、検体採取装置10bは、野生動物から検体を採取し(ステップS1)、採取した検体について病原体検査を行う(ステップS2)。
【0071】
検体採取装置10bは、採取した検体について病原体検査を行った後、検査した検体についての検査結果情報を情報処理装置56に送信する(ステップS3)。
【0072】
情報処理装置56は、検査結果情報と設置場所情報とに基づき、所定の範囲について所定区域への指定の要否を判定する(ステップS4)。たとえば、
図8に示すように、複数の湖畔4のそれぞれの周辺に、検体採取装置10bが設置されている。情報処理装置56は、複数の検体採取装置10bのそれぞれから検査結果情報を取得し、複数の検体採取装置10bのうち所定のウイルスを含む検体を採取した検体採取装置10bがあるか否かを判定する。たとえば、所定のウイルスは、鳥インフルエンザウイルス等である。情報処理装置56は、所定のウイルスを含む検体を採取した検体採取装置10b(
図8の黒丸参照)があれば、所定の範囲について所定区域への指定を要すると判定する。たとえば、所定の範囲は、当該検体採取装置10bが設置されている場所近傍の湖畔4の中心から所定距離の範囲Bであり、所定区域は、野鳥監視重点区域等である。一方、情報処理装置56は、所定のウイルスを含む検体を採取した検体採取装置10bがなければ、所定区域への指定を要しないと判定する。
【0073】
情報処理装置56は、所定区域への指定の要否を判定した後、判定結果を出力する(ステップS5)。たとえば、情報処理装置56は、
図8に示すように、所定区域に指定した範囲B内に存在している畜舎5に対して、所定区域に指定した旨を通知する。
【0074】
つまり、情報処理装置56は、得られた検査結果情報と検体採取装置10bの設置場所情報とに基づき、検体採取装置10bが設置された湖畔4の周辺数キロの範囲を野鳥監視重点区域として指定する旨の情報を、当該範囲内にある畜産業者および/または自治体に発信する。なお、たとえば、情報処理装置56は、カメラ18によって得られる野鳥1の種類、および/または野鳥1の健康状態等の情報をもとに総合的に野鳥監視重点区域への指定の要否を判定してもよい。
【0075】
上述した通り、上記の判定システム100によって、調査員が頻繁に現地へと赴いて糞便等の検体を採取する手間および検体に含まれているウイルスをサンプリングする手間を減らすことができ、常時的かつ網羅的に、より精度よく鳥インフルエンザウイルスの存在を検知することが可能である。したがって、上記の判定システム100による鳥インフルエンザウイルスの早期発見によって、より重点的に周辺域の家禽への鳥インフルエンザウイルスの感染防止策を講じることができ、鳥インフルエンザウイルスによる被害を最小限にすることができる。
【0076】
以上、判定システム100について説明した。
【0077】
検体採取装置10bは、さらに、検体採取部14aによって採取された検体について病原体検査を行うための検査部58を備える。
【0078】
これによれば、検体に病原体が含まれているか否かを検査できる。これによって、野生動物の病原体への感染状況をモニタリングできる。また、検体を採取する度に病原体検査を行うことによって、野生動物の病原体への感染状況をリアルタイムにモニタリングできる。
【0079】
また、判定システム100は、上記の検体採取装置10bと、検体採取装置10bと通信ネットワークを介して接続される情報処理装置56とを備え、検体採取装置10bは、さらに、検査部58によって検査された検体についての検査結果情報を情報処理装置56に送信する送信部60を有し、情報処理装置56は、検査結果情報と検体採取装置10bの設置場所情報とに基づき、所定の範囲について所定区域への指定の要否を判定する判定部66と、判定部66の判定結果を出力する出力部68とを有する。
【0080】
これによれば、所定の範囲について所定区域への指定が必要であると判定した場合に、その旨を出力できる。たとえば、所定の範囲について野鳥監視重点区域への指定が必要であると判定した場合、その旨を出力できる。これによって、所定の範囲において、家畜等が鳥インフルエンザウイルス等の病原体に感染することを抑制するための水際対策を迅速かつ的確に行うことができる。
【0081】
(他の実施の形態等)
上述した実施の形態では、誘引部12が、餌20と、止まり木22とを有している場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、誘引部は、疑似餌、野生動物を誘引する匂いを発する物質、野生動物を誘引する音を発するスピーカ、野生動物を誘引する光を発する光源等を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、野生動物由来の検体を採取する装置等として広く展開可能である。
【符号の説明】
【0083】
10,10a,10b 検体採取装置
12,12a 誘引部
14,14a 検体採取部
16 検体保存部
18 カメラ
20,20a 餌
21 餌台
22 止まり木
24 糞受け部
26 回収液供給部
27 回収液
28 回収口
30 粗大夾雑物除去部
32 夾雑物タンク
34 ろ過部
36 ポンプ
38 天面
40 傾斜部
42 水平部
44 回収液タンク
46 保存庫
48 冷却部
49 制御部
50,64 記憶部
51 壁部
52 呼気取得部
53 水槽部
54 空気吸引部
55 気中微粒子集塵部
56 情報処理装置
58 検査部
60 送信部
62 受信部
66 判定部
68 出力部
100 判定システム