(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】保守点検方法、及び保守点検システム
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
F25D23/00 301G
F25D23/00 301N
(21)【出願番号】P 2023173932
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2019028298の分割
【原出願日】2019-02-20
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大平 ゆうき
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036740(JP,A)
【文献】特開2002-162149(JP,A)
【文献】特開2017-133787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 11/00
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも庫内温度情報を含む計測情報を取得する第1のセンサを有する冷設機器と、前記冷設機器から関連情報を取得する第2のセンサを有する第2の端末装置と、にネットワークを介して接続され、コンピュータを用いて前記冷設機器の保守点検を行う保守点検方法あって、
前記冷設機器で発生した異常の原因を特定する原因特定処理に関し、
初回の前記原因特定処理では、前記ネットワークを介して前記冷設機器から受信した前記計測情報を学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから、前記異常の原因に関する一致度を取得し、
2回目以降の前記原因特定処理では、前記計測情報と、前記庫内温度情報とは異なる前記関連情報と
を学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから前記一致度を取得する保守点検方法。
【請求項2】
前記異常の原因が特定できない場合に、前記関連情報の取得を促す表示を、第1の端末装置に提供する請求項
1に記載の保守点検方法。
【請求項3】
前記学習済モデルは、複数の前記異常の原因の各々に対応して複数あり、
前記原因特定処理では、前記学習済モデルから前記一致度を取得し、前記一致度に基づいて対応する前記異常の原因を特定する、請求項1に記載の保守点検方法。
【請求項4】
特定した前記異常の原因に基づいて、一時的な原因を解消する作業を促す表示を第1の端末装置に提供する、又は、保守点検サービスを提供する業者に、前記ネットワークを介して前記異常への対処依頼を送る、請求項
3に記載の保守点検方法。
【請求項5】
特定した前記異常の原因に基づいて、経過観察期間の経過後に、再度、前記原因特定処理を行う、請求項
3又は
4に記載の保守点検方法。
【請求項6】
前記関連情報は、カメラによる撮像情報、マイクによる集音情報、加速度センサによる振動情報である、請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の保守点検方法。
【請求項7】
前記学習済モデルは、保守点検作業の記録を学習データとして強化学習が実行される、請求項1、
2、
3、
4、
5のいずれか1つに記載の保守点検方法。
【請求項8】
少なくとも庫内温度情報を含む計測情報を取得する第1のセンサを有する冷設機器と、前記冷設機器から関連情報を取得する第2のセンサを有する第2の端末装置と、にネットワークを介して接続され、コンピュータを用いて前記冷設機器の保守点検を行う保守点検システムあって、
前記冷設機器で発生した異常の原因を特定する原因特定処理に関し、
初回の前記原因特定処理では、前記ネットワークを介して前記冷設機器から受信した前記計測情報を学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから、前記異常の原因に関する一致度を取得し、
2回目以降の前記原因特定処理では、前記計測情報と、前記庫内温度情報とは異なる前記関連情報と
を学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから前記一致度を取得する保守点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守点検方法、保守点検システム、及び情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
冷設機器が故障した場合、専門の保守作業者(例えばサービスエンジニア)により修理が行われる。そのため、冷設機器の利用者(例えば店舗の従業員)は冷設機器に異常が疑われる場合、必要に応じて専門の保守作業者に該当の冷設機器における異常の原因調査を依頼する。専門の保守作業者は調査、機器の修理を行う。しかしながら、異常の原因は、冷設機器の故障ではなく、その運用の仕方により生じた一時的なもの(例えば、ショーケースの吸込口が、商品や広告用の紙、値札などで覆われている場合)も存在する。
また、冷設機器に異常(エラー)が発生した場合、タブレット端末を用いてメンテナンスに不慣れな従業員でも直ぐに当該エラーに対処できるようにした店舗メンテナンスシステムが特許文献1に示されている。
特許文献1には、「店舗メンテナンスシステムは、店舗に設けられた機器に発生したエラーに関する警報情報を受信するタブレット端末を備え、このタブレット端末は、機器に発生するエラーへの対処方法が含まれるメンテナンス情報を保有する記憶部と、表示部と、入力部を有し、警報情報を受信した場合、表示部にて所定の警報通知を行うと共に、発生したエラーへの対処方法を表示部に表示する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷設機器の利用者は、冷設機器の異常がどのような原因であるかを判断できない。そのため、修理不要な場合でも冷設機器の利用者は、保守作業者の調査を依頼する場合も生じる。この場合、冷設機器の利用者は調査依頼、調査費用の支払いなど本来不要であった作業と支出が発生する。また、保守作業者は、修理不要な出張に時間を取られるため、修理作業時間が減少する。従来のシステムでは異常の内容とメンテナンスに対処する人のミスマッチが生じ、異常発生時の対処が非効率になる場合があった。
【0005】
本発明は、異常発生時に異常の内容とメンテナンスに対処する人のミスマッチを防ぎ、異常への効率的な対処を行うことができる保守点検方法、保守点検システム、及び情報端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも庫内温度情報を含む計測情報を取得する第1のセンサを有する冷設機器と、前記冷設機器から関連情報を取得する第2のセンサを有する第2の端末装置と、にネットワークを介して接続され、コンピュータを用いて前記冷設機器の保守点検を行う保守点検方法あって、前記冷設機器で発生した異常の原因を特定する原因特定処理に関し、初回の前記原因特定処理では、前記ネットワークを介して前記冷設機器から受信した前記計測情報を学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから、前記異常の原因に関する一致度を取得し、2回目以降の前記原因特定処理では、前記計測情報と、前記庫内温度情報とは異なる前記関連情報とを学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから前記一致度を取得する保守点検方法である。
本発明は、少なくとも庫内温度情報を含む計測情報を取得する第1のセンサを有する冷設機器と、前記冷設機器から関連情報を取得する第2のセンサを有する第2の端末装置と、にネットワークを介して接続され、コンピュータを用いて前記冷設機器の保守点検を行う保守点検システムあって、前記冷設機器で発生した異常の原因を特定する原因特定処理に関し、初回の前記原因特定処理では、前記ネットワークを介して前記冷設機器から受信した前記計測情報を学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから、前記異常の原因に関する一致度を取得し、2回目以降の前記原因特定処理では、前記計測情報と、前記庫内温度情報とは異なる前記関連情報とを学習済モデルに入力して、前記学習済モデルから前記一致度を取得する保守点検システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異常発生時に異常の内容とメンテナンスに対処する人のミスマッチを防ぎ、異常への効率的な対処を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷設機器管理システムの構成を示す図
【
図4】関連情報取得装置の機能的構成を示すブロック図
【
図5】店舗ユーザ端末装置の機能的構成を示すブロック図
【
図6】エンジニア端末装置の機能的構成を示すブロック図
【
図8】管理サーバの蓄積部に蓄積される各種データの構成例を示す図であり、(a)は管理サーバが管理する店舗における店舗装置リストを示す図、(b)は店舗装置で管理する冷設機器と関連情報取得装置との対応関係のリストを示す図、(c)は冷設機器4から店舗装置を介してデータ取得部が取得する運転データの構成を示す図、(d)は冷設機器から店舗装置を介してデータ取得部が取得する警報データの構成を示す図、(e)は関連情報取得部が関連情報取得装置から取得する関連情報データの構成を示す図、(f)は作業結果取得部が店舗ユーザ端末装置から取得する作業報告データの構成を示す図
【
図9】冷設機器に異常が発生していない場合における冷設機器管理システムのシーケンス図
【
図10】冷設機器に異常が発生した場合における冷設機器管理システムのシーケンス図
【
図14】本発明の変形例に係る原因特定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、少なくとも庫内温度情報を含む計測情報を取得する第1のセンサを有する冷設機器と、前記冷設機器の情報を表示する第1の端末装置と、前記冷設機器から情報を取得する第2のセンサを有する第2の端末装置と、にネットワークを介して接続され、コンピュータを用いて前記冷設機器の保守点検を行う保守点検システムに用いられる保守点検方法であって、前記ネットワークを介して前記冷設機器から得られた前記冷設機器の庫内温度情報と、前記ネットワークを介して前記第2の端末装置から得られた、前記冷設機器の庫内温度情報とは異なる前記冷設機器に関する関連情報とに基づいて、前記冷設機器の異常が前記冷設機器の故障が原因か、一時的な原因か判定し、一時的な原因である場合に、前記ネットワークを介して、一時的な原因を解消する作業の画面表示を前記第1の端末装置に提供する保守点検方法である。
これにより、冷設機器の異常発生時には、異常の原因に対して適切な人による適切な作業を実施できるようになり、異常への効率的な対処を行うことができる。例えば、店舗の従業員などのユーザには、その原因への対処に、冷設機器についての専門的知識を要せずとも実施可能な作業だけが指示され、専門的知識を要する作業が指示されることがない。したがって、ユーザが、冷設機器についての専門的知識を有さず、またメンテナンスに不慣れであっても、異常の原因に対して適切な作業を実施できるようになる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記ネットワークを介して前記冷設機器から得られた前記冷設機器の庫内温度情報に基づいて、前記冷設機器の異常が前記冷設機器の故障が原因か、一時的な原因か特定できない場合に、前記関連情報の取得を促す画面表示を前記第1の端末装置に提供する保守点検方法である。
これにより、異常の原因の特定が容易になり、異常の原因に対して適切な人による適切な作業を実施できるようになり、異常への効率的な対処を行うことができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記冷設機器に異常が生じた場合に、前記冷設機器の庫内照明を消灯する保守点検方法である。
異常を生じている冷設機器の特定が容易になる。
【0012】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれか1つにおいて、前記冷設機器の庫内温度の上昇が前記冷設機器の故障が原因と判定された場合に、前記ネットワークを介して保守点検サービスを提供する業者に、前記異常への対処依頼を送る保守点検方法である。
これにより、冷設機器の異常の原因への対処に当該冷設機器についての専門的知識を要するときには、ユーザではなく、業者に適切な作業を行わせることができる。
【0013】
第5の発明は、第1の発明において、前記冷設機器は、前記冷設機器のID情報を前記第2の端末装置に前記ネットワークを介さずに伝達するID伝達部を有し、前記第2の端末装置が前記ID伝達部から取得したID情報と、前記ネットワークを介して前記冷設機器から得られたID情報と、を比較し、前記第2の端末装置が前記関連情報を取得した冷設機器が、異常を生じている冷設機器であるか判定する保守点検方法である。
これにより、関連情報を使った判定の際に、異常を生じていない冷設機器の関連情報が判定に用いられることを防止できる。
【0014】
第6の発明は、第5の発明において、前記ID伝達部は、QRコード、ビーコン、及び光IDの少なくともいずれか1つによって前記ID情報を伝達する保守点検方法である。
これにより、ネットワークを介した通信以外の手法でID情報を第2の端末装置に伝達できる。
【0015】
第7の発明は、第5または第6の発明において、前記第2の端末装置が前記ID伝達部から取得したID情報と、前記ネットワークを介して前記冷設機器から得られたID情報と、が一致しない場合、前記ネットワークを介して、前記第2の端末装置が前記関連情報を取得した冷設機器が、異常を生じている冷設機器ではない旨を前記第1の端末装置、又は前記第2の端末装置に送る保守点検方法である。
これにより、異常を生じていない冷設機器から第2の端末装置が関連情報を取得していることが知らされ、ユーザ又は当該第2の端末装置自身が再度、関連情報を取得し直すことができる。
【0016】
第8の発明は、第5ないし第7の発明のいずれか1つにおいて、前記第2の端末装置が前記ID伝達部から取得したID情報と、前記ネットワークを介して前記冷設機器から得られたID情報と、が一致しない場合、前記ネットワークを介して、異常を生じている前記冷設機器を特定する情報を前記第1の端末装置、又は前記第2の端末装置に送る保守点検方法である。
これにより、第2の端末装置によって、異常を生じている冷設機器から確実に関連情報を取得できる。
【0017】
第9の発明は、第1ないし第8の発明のいずれか1つにおいて、前記関連情報は、カメラによる前記冷設機器の冷気吹出口、冷気吸込口、蒸発器、ハニカム、フィルタ、または、これらの部位の少なくとも1つを含む周辺領域の撮像情報である保守点検方法である。
かかる関連情報が取得されることで、異常の原因が、その対処に、冷設機器についての専門的知識を要さない原因であるか否かを正確に特定できる。
【0018】
第10の発明は、第9の発明において、前記一時的な原因を解消する作業は、前記冷気吹出口、前記ハニカム、前記フィルタ、および、前記周辺領域の少なくとも1つの清掃、または、前記冷気吸込口、および、前記周辺領域の少なくとも1つの異物除去である保守点検方法である。
これにより、冷設機器についての専門的知識を有さず、またメンテナンスに不慣れなユーザに見合った作業だけを、当該ユーザに実施させることができる。
【0019】
第11の発明は、第1ないし第8の発明のいずれか1つにおいて、前記第2の端末装置から得られた前記関連情報は、マイクによる前記冷設機器のファンまたは圧縮機の集音情報である保守点検方法である。
かかる関連情報を取得することで、異常の原因が、その対処に、冷設機器についての専門的知識を要する原因でもある、ファンまたは圧縮機の異常か否かを正確に特定できる。
【0020】
第12の発明は、第1ないし第8の発明のいずれか1つにおいて、前記第2の端末装置から得られた前記関連情報は、加速度センサによる前記冷設機器の圧縮機の振動情報である保守点検方法である。
かかる関連情報を取得することで、異常の原因が、その対処に、冷設機器についての専門的知識を要する原因でもある、圧縮機の異常か否かを特定できる。
【0021】
第13の発明は、第1の発明において、前記冷設機器から得られた前記冷設機器の前記庫内温度情報と、前記第2の端末装置から得られた、カメラによる前記冷設機器の蒸発器の撮影画像とに基づいて、前記冷設機器の異常の原因が前記蒸発器の着霜によるものと判定された場合に、前記冷設機器に前記蒸発器の除霜を実行させる保守点検方法である。
これにより、着霜を原因とした庫内温度異常については、ユーザに作業を実施させることなく、冷設機器に除霜を実行させることで適切に対処できる。
【0022】
第14の発明は、第1ないし第13の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の端末装置は、可搬可能な携帯端末であり、前記第2の端末装置は、前記冷設機器が配置された店舗に、又は、前記冷設機器に設置された情報取得装置である保守点検方法である。
これにより、ユーザが何ら作業せずとも関連情報が取得可能となり、ユーザの作業回数を減らすことができる。また第1の端末装置が可搬可能な携帯端末なので、ユーザは作業対象の冷設機器の近くで第1の端末装置を操作しながら作業を実施できる。
【0023】
第15の発明は、第1ないし第12の発明のいずれか1つにおいて、前記第1の端末装置と前記第2の端末装置は、同一の可搬可能な携帯端末である保守点検方法である。
これにより、保守点検システムの装置コストが抑えられる。さらに、第1の端末装置が可搬可能な携帯端末である第1の端末装置が第2の端末装置を兼ねるので、各冷設機器の配置場所に影響を受けることなく、異常を生じている冷設機器までユーザが第1の端末装置を運び、その冷設機器から確実に関連情報を取得できる。
【0024】
第16の発明は、少なくとも庫内温度情報を含む計測情報を取得する第1のセンサを有する冷設機器と、前記冷設機器の情報を表示する第1の端末装置と、前記冷設機器から情報を取得する第2のセンサを有する第2の端末装置と、にネットワークを介して接続され、コンピュータを用いて前記冷設機器の保守点検を行う保守点検システムであって、前記ネットワークを介して前記冷設機器から得られた前記冷設機器の庫内温度情報と、前記ネットワークを介して前記第2の端末装置から得られた、前記冷設機器の庫内温度情報とは異なる前記冷設機器に関する関連情報とに基づいて、前記冷設機器の異常が前記冷設機器の故障が原因か、一時的な原因か判定し、一時的な原因である場合に、前記ネットワークを介して、一時的な原因を解消する作業の画面表示を前記第1の端末装置に提供する保守点検システムである。
本発明によれば、第1の発明と同様の効果を奏する。
【0025】
第17の発明は、第16の発明において、保守点検システムに用いられる情報端末である。
本発明によれば、第1の発明と同様の効果を奏する。
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る冷設機器管理システム1の構成を示す図である。
冷設機器管理システム1は、管理サーバ3を備え、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗2に設置された冷設機器4を、管理サーバ3によって管理するシステムである。
冷設機器4は、冷蔵機器、及び冷凍機器の総称である。本実施形態では、1又は複数台の冷凍・冷蔵ショーケースと、1又は複数台の冷蔵庫と、1又は複数台の冷凍庫とが冷設機器として店舗2に配置されている。これらの冷設機器4は、店舗2の室外に設置され、圧縮機を有する冷凍機から冷媒配管を介して冷媒の供給を受け、それぞれの庫内に収められている商品等の物品を冷却する。なお、冷凍機は店舗内の機械室に設置されてもよく、また冷設機器4には冷凍機を含んでもよい。
【0028】
また店舗2には、店のオーナや従業員等といった、冷設機器4のユーザとなる店舗ユーザUが各冷設機器4を管理するための店舗装置8が設置されており、各冷設機器4、及び管理サーバ3と通信可能にするためのネットワーク13に接続されている。店舗装置8は、運転状態に係る運転データD1(
図9参照)を各冷設機器4から取得し、それらを管理サーバ3に送信する。そして、管理サーバ3は、運転データD1を用いて冷設機器4の各種の管理を行う。
【0029】
ここで、本実施形態の冷設機器管理システム1は、冷設機器4の保守点検を管理する保守点検システムとしても機能する。すなわち、管理サーバ3は、冷設機器4の動作の異常を診断する機能と、異常発生時に必要に応じて、保守点検サービス提供業者15に、異常に対処するための保守点検サービスの依頼(以下、「保守点検依頼」と言う)を発信する機能と、を有する。
【0030】
保守点検サービス提供業者15は、冷設機器4の保守点検サービスを提供する業者である。ネットワーク13を介して保守点検依頼を管理サーバ3から受けるための業者端末装置12と、エンジニア端末装置11とが設けられている。
業者端末装置12は、ネットワーク13を介して管理サーバ3と通信可能に成された通信端末であり、当該管理サーバ3から保守点検依頼を受信する。
また、保守点検サービス提供業者15には、多数のサービスエンジニアEが所属している。サービスエンジニアEは、冷設機器4についての専門的知識を有し、当該冷設機器4の保守点検作業を行う作業者である。エンジニア端末装置11は、サービスエンジニアEが保守点検作業を行う際に用いる情報通信端末であり、保守点検作業を支援する各種のツールをサービスエンジニアEに提供する。
そして管理サーバ3から保守点検依頼が発信され、それを業者端末装置12が受信すると、サービスエンジニアEが店舗2に赴き、エンジニア端末装置11を用いて冷設機器4に対して保守点検作業を行い、当該冷設機器4に発生している異常を解消することとなる。
【0031】
ここで、異常を解消するための保守点検作業には、サービスエンジニアEではなく、専門知識を有しない店舗ユーザUでも適切に実施できるものがある。
詳述すると、冷設機器4の分解を伴う清掃作業(「分解清掃」)や、部品交換、修理などの保守点検作業は、冷設機器4についての専門的知識が必要となるため、その作業を店舗ユーザUではなくサービスエンジニアEが行うことが適切である。
これに対し、冷設機器4の分解や部品交換、修理を要しない保守点検作業については、その実施に冷設機器4についての専門的知識が不要であり、店舗ユーザUでも、その保守点検作業を適切に実施できる。
【0032】
以下では、その作業の実施に専門的知識を要する保守点検作業を「専門保守点検作業」と言い、専門的知識を要しない保守点検作業を「一般保守点検作業」と言う。
一般保守点検作業の具体例としては、次のような作業が挙げられる。すなわち、冷設機器4の庫内の冷気吹出口や冷気吸込口といった庫内各部を清掃する作業、冷設機器4の機器本体に収められたハニカムやフィルタを清掃する作業、庫内各部又はハニカムやフィルタを含む周辺領域を清掃する作業、冷気吸込口の通気を阻害する異物の除去作業、周辺領域に存在する異物の除去作業などである。
【0033】
また以下では、対処に専門保守点検作業を要する異常の元となる各種の原因を「第1種原因」と言い、一般保守点検作業で対処可能な異常の元となる各種の原因を「第2種原因」と言う。典型的には、「第1種原因」とは、冷設機器の故障が原因であり、「第2種原因」とは、冷設機器の異常が一時的な原因であることを意味するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0034】
本実施形態の冷設機器管理システム1は、冷設機器4で発生した異常の原因が第2種原因である場合、管理サーバ3が保守点検サービス提供業者15に保守点検依頼を発信するのではなく、店舗ユーザUに一般保守点検作業の実施を指示するようになっている。かかる動作のために、冷設機器管理システム1は、店舗2に設けられる機器として、店舗ユーザ端末装置(第1の端末装置)10と、関連情報取得装置(第2の端末装置)9と、を更に備えている。
【0035】
以下、冷設機器管理システム1が備える各部の構成について詳述する。
【0036】
図2は、冷設機器4の機能的構成を示すブロック図である。
冷設機器4は、冷設機器制御部16と、冷設機器センサ部17と、通信部18と、庫内照明部20と、インジケータ部19と、を備える。
冷設機器制御部16は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスとを有したコンピュータを備え、冷設機器4の各部を制御する。
冷設機器センサ部17は、1又は複数のセンサ(第1のセンサ)を有し、冷設機器4の運転状態の監視に供される各種情報を計測する。この種の情報には、少なくとも庫内温度情報が含まれる。以下、冷設機器センサ部17が計測する各種の情報を「計測情報」と言う。
通信部18は、ネットワーク13を介して店舗装置8に情報を送受するものであり、受信回路、及び送信回路を有した送受信機を備える。
インジケータ部19は、冷設機器4の動作状態を表示するものであり、冷設機器4の機器本体に設けられた各種のランプや表示パネル等を有する。
庫内照明部20は、冷設機器4の庫内を照らすものであり、複数の照明機器を有する。
【0037】
冷設機器制御部16は、メモリデバイスに記録されたプログラムをプロセッサが実行することで、記憶部21、計測情報取得部22、異常検出部23、インジケータ制御部24、庫内照明制御部25、及びデータ送信制御部26として機能する。
記憶部21は、各種の情報を記憶するものであり、少なくとも自身の冷設機器4を一意に特定する冷設機器ID情報を予め記憶している。
計測情報取得部22は、冷設機器センサ部17から計測情報を、適宜の周期で定期的に取得する。
異常検出部23は、計測情報に基づいて冷設機器4の動作の異常を検出する。具体的には、計測情報が示す物理量や物性、特性などには、異常と見做す条件(例えば閾値や数値範囲など)が予め異常判定情報として設定されている。異常検出部23は、計測情報が取得されるごとに、その計測情報と異常判定情報とに基づいて異常を検出する。なお、異常検出部23は、冷設機器4でなく、店舗装置8や管理サーバ3などの他の装置に設けられてもよい。
【0038】
インジケータ制御部24は、冷設機器4の状態を表示するように、インジケータ部19の表示を計測情報に基づいて制御する。また異常検出部23によって異常が検出された場合には、インジケータ部19に異常状態を表示し、店舗ユーザUが異常を認識可能にする。
【0039】
庫内照明制御部25は、庫内照明部20の各照明機器の点滅を制御するものであり、異常が検出されたときに、庫内照明部20を消灯させる。この消灯により、同種の冷設機器4が店舗2に複数台設置されていても、異常を生じている冷設機器4を店舗ユーザUが容易に特定できる。なお、庫内照明制御部25が管理サーバ3の指示にしたがって、庫内照明部20を消灯/点灯してもよい。
【0040】
データ送信制御部26は、計測情報取得部22によって取得された計測情報を店舗装置8に送信するに度に、冷設機器ID情報及びその他の適宜の情報を計測情報に付加し、それを運転データD1として通信部18を通じて店舗装置8に送信する。また異常検出部23によって異常が検出された場合、データ送信制御部26は、冷設機器ID情報及びその他の適宜の情報を異常の検出結果に付加し、それを警報データD2として通信部18を通じて店舗装置8に送信する。異常の検出結果には、少なくとも異常を示すエラーコードが含まれる。
【0041】
前掲
図1に示すように、冷設機器4のそれぞれには、ID伝達部14が設けられている。ID伝達部14は、冷設機器4の冷設機器ID情報をネットワーク13を介さずに、当該冷設機器4から直接的に関連情報取得装置9に伝達するための装置、又は物品である。このID伝達部14には、冷設機器ID情報をコード化して成るQRコード(登録商標)を表示することで冷設機器ID情報を伝達する表示装置、又は表示物、ビーコンによって冷設機器ID情報を伝達するビーコン発信器、及び、LED光源の点滅によって冷設機器ID情報を光IDとして伝達する光ID発信器の少なくともいずれか1つが用いられる。
【0042】
図3は、店舗装置8の機能的構成を示すブロック図である。
店舗装置8は、店舗装置制御部30と、通信部31と、蓄積部32と、表示部33と、を備える。
店舗装置制御部30は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスとを備えたコンピュータを有し、店舗装置8の各部を制御する。
通信部31は、ネットワーク13を介して、冷設機器4、及び管理サーバ3と通信するものであり、受信回路、及び送信回路を有した送受信機を備える。
蓄積部32は、例えばHDDやSSDなどのデータストレージ装置を備え、各種情報を蓄積する。
表示部33は、ディスプレイを備え、各種情報を表示する。
【0043】
また店舗装置制御部30は、メモリデバイスに記録されたプログラムをプロセッサが実行することで、データ取得部35と、蓄積制御部36と、データ送信制御部37と、表示制御部38として機能する。
データ取得部35は、それぞれの冷設機器4が送信する運転データD1、及び警報データD2を、ネットワーク13を介して取得する。
蓄積制御部36は、データ取得部35によって取得された運転データD1、及び警報データD2を蓄積部32に蓄積する。
データ送信制御部37は、蓄積部32に蓄積されていた運転データD1を適宜のタイミングで管理サーバ3に送信する。また警報データD2が蓄積部32に蓄積された場合には、蓄積のタイミングから速やかに遅滞なくデータ送信制御部37は、警報データD2を管理サーバ3に送信する。
表示制御部38は、表示部33の表示を制御する。また、警報データD2がデータ取得部35によって取得された場合には、表示制御部38は、警報データD2によって示される異常を表示部33に表示し、店舗ユーザUが異常を認識可能にする。
【0044】
図4は、関連情報取得装置9の機能的構成を示すブロック図である。
関連情報取得装置9は、店舗2において、冷設機器4の後述する関連情報を管理サーバ3の要求に応じて取得し、それをネットワーク13を介して管理サーバ3に送信する装置であり、情報取得装置制御部40と、関連情報検出部41と、蓄積部42と、通信部43と、を備える。
情報取得装置制御部40は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスとを備えたコンピュータを有し、関連情報取得装置9の各部を制御する。
関連情報検出部41は、冷設機器4の関連情報を検出するものであり、検出のための各種のセンサ(第2のセンサ)を備える。
関連情報は、冷設機器4に関連する情報であって、当該冷設機器4の上記計測情報以外の情報であり、冷設機器4の異常発生時に、冷設機器4の原因をつきとめる、或いは、予測された原因についての確証を得るために有用な情報である。
本実施形態では、この関連情報として、冷設機器4を撮像した撮像情報、冷設機器4の動作音を集音した集音情報、及び、冷媒を凝縮する圧縮機の振動情報が用いられている。これらの関連情報を検出するために、関連情報検出部41は、撮像情報を得るためのイメージングセンサを有したカメラ41Aと、集音情報を集音するマイク41Bと、振動情報を検出するための加速度センサ41Cと、を備える。
カメラ41A、及びマイク41Bを備えた関連情報取得装置9には、例えば店舗2に既設の情報取得装置が用いられ、本実施形態では、かかる情報取得装置として、店内を監視する監視装置が用いられる。
【0045】
冷設機器4から関連情報を取得する箇所は予め定められている。
カメラ41Aが撮像情報として撮像する箇所としては、庫内の冷気吹出口や冷気吸込口等の各部、或いは、冷設機器4の機器本体に収められた蒸発器やハニカムやフィルタ等の各部、又は、これら各部の少なくとも1つを含む冷設機器4の周辺領域が挙げられる。ハニカムやフィルタは冷設機器4に取り込まれる外気から塵埃物を除去する部材である。例えば、ハニカムは冷気の吐出口の部分に設けられ、フィルタはコンデンサに設けられる。
マイク41Bが集音情報を取得する箇所としては、冷設機器4に設けられた熱交換器のファンや圧縮機等が挙げられる。
加速度センサ41Cが振動情報を取得する箇所としては、圧縮機が挙げられる。
【0046】
蓄積部42は、例えばHDDやSSDなどのデータストレージ装置を備え、各種情報を蓄積する。
通信部43は、ネットワーク13を介して、管理サーバ3と通信するものであり、受信回路、及び送信回路を有した送受信機を備える。
【0047】
また情報取得装置制御部40は、メモリデバイスに記録されたプログラムをプロセッサが実行することで、関連情報取得部45、関連情報送信制御部46、及び冷設機器ID情報取得部47として機能する。
関連情報取得部45は、管理サーバ3から関連情報の取得を要求された場合に、関連情報検出部41を制御して上記関連情報を取得し、蓄積部42に蓄積する。
冷設機器ID情報取得部47は、冷設機器4のID伝達部14が伝達する冷設機器ID情報を取得するものである。すなわち、冷設機器ID情報取得部47は、ID伝達部14がQRコードを表示している場合は、カメラ41AでQRコードを読み取ることで冷設機器ID情報を取得する。またID伝達部14がビーコンを発信している場合は、関連情報取得装置9にはビーコン受信器が設けられ、当該ビーコン受信器でビーコンを受信することで冷設機器ID情報取得部47は冷設機器ID情報を取得する。またID伝達部14が光IDを発信している場合は、冷設機器ID情報取得部47は、カメラ41Aで光の点滅を撮像することで冷設機器ID情報を取得する。
関連情報送信制御部46は、関連情報取得部45によって取得された関連情報と、冷設機器ID情報取得部47によって取得された冷設機器ID情報とを含む関連情報データD3(
図10参照)を生成し、それを通信部43から管理サーバ3にネットワーク13を介して送信する。
【0048】
図5は、店舗ユーザ端末装置10の機能的構成を示すブロック図である。
店舗ユーザ端末装置10は、店舗ユーザUが操作する情報通信端末装置であり、例えばスマートフォンやタブレット型PCといった可搬可能な携帯端末が店舗ユーザ端末装置10に用いられる。
店舗ユーザ端末装置10は、管理サーバ3との通信によって冷設機器4に関する情報を取得し、その情報を表示する。この情報の1つとして、冷設機器4の異常発生時に、その異常を解消し得る一般保守点検作業を指示した作業指示が含まれる。一般保守点検作業は、上述の通り、冷設機器4について、メーカや保守点検業者等と同等な専門的な知識を有しない者であっても遂行できる程度の作業である。
【0049】
かかる店舗ユーザ端末装置10は、
図5に示すように、ユーザ端末制御部50と、通信部51と、蓄積部52と、表示部53と、作業結果検出部54と、を備える。
ユーザ端末制御部50は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスとを有したコンピュータを備え、店舗ユーザ端末装置10の各部を制御する。
通信部51は、ネットワーク13を介して、管理サーバ3と通信するものであり、受信回路、及び送信回路を有した送受信機を備える。
蓄積部52は、例えばHDDやSSDなどのデータストレージ装置を備え、各種情報を蓄積する。
表示部53は、ディスプレイを備え、管理サーバ3から取得した上記作業指示等の各種情報を表示する。
作業結果検出部54は、店舗ユーザUが一般保守点検作業を行った結果の冷設機器4の状態(「作業結果状態」という)を検出する。作業結果状態の検出データは、蓄積部52に蓄積される。本実施形態では、作業結果状態は、冷設機器4の外観の状態、特に一般保守点検作業が行われた箇所を含む外観の状態である。作業結果検出部54には、当該状態を検出するためのカメラ54Aが設けられており、カメラ54Aの撮像画像が蓄積部52に蓄積される。
【0050】
またユーザ端末制御部50は、メモリデバイスに記録されたプログラムをプロセッサが実行することで、作業実施制御部57として機能する。作業実施制御部57は、管理サーバ3からの作業指示の受信、当該作業指示の表示、作業結果状態の取得と蓄積、及び、管理サーバ3への作業報告データD4(
図10参照)の送信を制御する。作業報告データD4は、作業指示に対する結果を管理サーバ3に通知するデータである。作業実施制御部57は、作業結果状態が取得、蓄積された場合、作業結果状態を含む作業報告データD4を生成し、それを管理サーバ3に送信する。
【0051】
図6は、エンジニア端末装置11の機能的構成を示すブロック図である。
エンジニア端末装置11は、エンジニア端末制御部60と、通信部61と、表示部62とを備え、例えばノート型PCやタブレット型PCなどの可搬型の情報端末によって構成される。
エンジニア端末制御部60は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスとを備え、エンジニア端末装置11の各部を制御する。
通信部61は、ネットワーク13を介して、管理サーバ3と通信するものであり、受信回路、及び送信回路を有した送受信機を備える。
表示部62は、ディスプレイを備え、各種情報を表示する。
【0052】
またエンジニア端末制御部60は、メモリデバイスに記録されたプログラムをプロセッサが実行することで、保守点検支援部63として機能する。
保守点検支援部63は、サービスエンジニアEが行う保守点検作業を支援するための各種ツールを提供する。かかるツールには、保守点検作業対象の冷設機器4の異常に係る情報閲覧、当該冷設機器4の保守点検作業の履歴閲覧、当該冷設機器4のサービスマニュアル閲覧などが挙げられる。保守点検支援部63は、必要に応じて管理サーバ3と通信し、ツールの実行に必要な適宜のデータを管理サーバ3から取得する。
【0053】
図7は、管理サーバ3の機能的構成を示すブロック図である。
管理サーバ3は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、各種の周辺機器を接続するためのインターフェース回路と、ネットワーク13を介して他の通信機器と通信するための送受信装置とを備えたサーバコンピュータによって構成されている。かかる管理サーバ3は、プロセッサがストレージ装置に記憶されているプログラムを実行することで、
図7に示すように、サーバ制御部70、通信部71、及び蓄積部72として機能する。
サーバ制御部70は管理サーバ3の各部を制御し、通信部71は、ネットワーク13を介して、店舗装置8などの他の通信機器との間で情報を送受する。蓄積部72は各種情報を蓄積する。
【0054】
またサーバ制御部70は、上記プログラムを実行することで、データ取得部76、関連情報取得部77、学習データ収集部78、診断処理部79、及び作業結果取得部80として機能する。
データ取得部76は、店舗装置8が送信する運転データD1、及び警報データD2を、ネットワーク13を介して取得し、蓄積部72に蓄積する。
関連情報取得部77は、診断処理部79の診断において、関連情報取得装置9に対して関連情報の取得指示を必要に応じて送信し、当該関連情報取得装置9から関連情報データD3を取得し、蓄積部72に蓄積する。
学習データ収集部78は、学習済モデルを用いた判定用の学習データを収集するものであり、これについては後述する。
【0055】
診断処理部79は、冷設機器4で異常が発生した場合、その異常を解消するための診断処理を実行する。診断処理では、その異常の原因が特定される。そして、その原因が、その対処に上記専門保守点検作業を要する第1種原因であれば、診断処理部79は、保守点検サービス提供業者15に保守点検依頼を通信部71を通じて発信する。一方、原因が上記一般保守点検作業で対応可能な第2種原因であれば、診断処理部79は、店舗ユーザ端末装置10に、一般保守点検作業の実施を指示する作業依頼を通知する。
【0056】
作業結果取得部80は、店舗ユーザ端末装置10から送信される作業報告から作業結果状態を示す作業報告データD4を取得する。そして診断処理部79は、この作業報告データD4に基づいて、保守点検作業が適切に成されたか否かを判定する。
【0057】
図8は、管理サーバ3の蓄積部72に蓄積される各種データの構成例を示す図である。
図8(a)は、管理サーバ3が管理する店舗における店舗装置リストを示す図である。店舗装置リストは、店舗IDと店舗装置8の店舗装置IDを有する。この店舗装置リストに基づき、管理サーバ3は、各店舗における店舗装置8から取得する情報を管理する。この店舗装置リストは、予め管理サーバ3の蓄積部72に初期設定で予め蓄積されていてもよいし、更新で追加されてもよい。
図8(b)は、店舗装置8で管理する冷設機器4と関連情報取得装置9との対応関係のリストを示す図である。このリストは、店舗装置8の店舗装置IDと、冷設機器4の冷設機器IDと、関連情報取得装置9のID(
図8(b)では例えばカメラID)、関連情報取得装置9で取得した情報における冷設機器4の座表情報(
図8(b)では4つの座標)を有する。このリストに基づき、関連情報取得部77が関連情報取得装置9から取得した関連情報がどの冷設機器4に対応する情報で、関連情報のうちどの部分を用いるかが診断処理部79において決定される。例えば、関連情報検出部41がカメラである場合、カメラ画像のうち座標情報の4点で囲まれる範囲の画像情報が、特定の冷設機器に対応する関連情報として用いられる。
図8(c)は、冷設機器4から店舗装置8を介してデータ取得部76が取得する運転データD1の構成を示す図である。運転データD1は、店舗装置8の店舗装置IDと、店舗装置内の冷設機器4の冷設機器IDと、時刻情報と、計測情報とを有する。冷設機器4から自己の冷設機器IDに対応するデータが送信され、店舗装置8において
図8(c)で示されるデータに統合されている。なお、店舗装置IDは、店舗装置8において付加されてもよい。
図8(d)は、冷設機器4から店舗装置8を介してデータ取得部76が取得する警報データD2の構成を示す図である。運転データD1は、店舗装置8の店舗装置IDと、店舗装置内の冷設機器4の冷設機器IDと、時刻情報と、エラーコードとを有する。なお、店舗装置IDは、店舗装置8において付加されてもよい。
図8(e)は、関連情報取得部77が関連情報取得装置9から取得する関連情報データD3の構成を示す図である。関連情報データD3は、店舗IDと、関連情報取得装置9のID(
図8(e)では例えばカメラID)と、関連情報(
図8(e)では例えばカメラ撮影画像)とを有する。関連情報取得装置9からは、自装置のIDに対応するデータが送信され、管理サーバ3において
図8(e)で示されるデータに統合されている。
図8(f)は、作業結果取得部80が店舗ユーザ端末装置10から取得する作業報告データD4の構成を示す図である。作業報告データD4は、店舗装置8の店舗装置IDと、店舗装置内の冷設機器4の冷設機器IDと、保守点検の作業が行われた時刻情報と、保守点検の作業内容を示す作業情報とを有する。
【0058】
次いで冷設機器管理システム1の保守点検に係る動作を説明する。
【0059】
図9は、冷設機器4に異常が発生していない場合における冷設機器管理システム1のシーケンス図である。
冷設機器管理システム1にあっては、冷設機器4は、定期的に、その時点の計測情報を含む運転データD1を生成し、運転データD1の生成の都度、当該運転データD1を店舗装置8に送信する。店舗装置8は、運転データD1を受信すると、それを蓄積部32に蓄積する。そして、店舗装置8は、蓄積部32に蓄積されている運転データD1を、適宜のタイミングで、まとめて管理サーバ3に送信する。管理サーバ3は、運転データD1を店舗装置8から受信すると、それを蓄積部72に蓄積する。
【0060】
図10は、冷設機器4に異常が発生した場合における冷設機器管理システム1のシーケンス図である。
冷設機器4において、異常検出部23が異常を検出すると、冷設機器4は、当該異常の発生を示す警報データD2を店舗装置8に送信する。店舗装置8は、警報データD2を受信すると、それを速やかに管理サーバ3に送信する。管理サーバ3は、警報データD2を受信すると診断処理を実行する。
【0061】
図11は、診断処理のフローチャートである。
診断処理において、管理サーバ3は、原因特定処理を実行する(ステップSa1)。原因特定処理は、冷設機器4で発生した異常の原因を特定する処理である。異常が検出された最初の診断処理では、管理サーバ3は、当該冷設機器4の運転データD1(少なくとも計測情報)に基づいて原因の特定を試みる。例えば、警報データD2の店舗装置ID、冷設機器ID、時刻情報(
図8(c)、
図8(d)では2018/1/1 00:01)に対応する運転データD1の計測情報に基づいて原因の特定が行われる。なお、一致する時刻情報前後の所定の範囲(
図8(c)、
図8(d)では2018/1/1 00:00~00:02)の計測情報が用いられてもよい。原因が特定できなかった場合(ステップSa2:NO)、管理サーバ3は、関連情報取得処理を実行する(ステップSa8)。
【0062】
関連情報取得処理は、冷設機器4の異常の原因をつきとめる、或いは、原因についての確証を得るための関連情報を関連情報取得装置9から取得する処理である。この処理においては、前掲
図10に示すように、管理サーバ3は、関連情報取得装置9に対して、関連情報の送信を指示する関連情報取得指示を送信し、関連情報を含む関連情報データD3を当該関連情報取得装置9から受信する。この関連情報取得処理の詳細は後述する。
【0063】
管理サーバ3は、関連情報データD3から関連情報を取得すると、再度、原因特定処理を実行し(ステップSa1)、運転データD1と関連情報とに基づいて原因の特定を行う。この特定に際し、管理サーバ3では、
図8(a)、
図8(b)、及び
図8(e)を参照して、警報データD2のエラーコードに対応する店舗装置ID、冷設機器ID、時刻情報に一致する関連情報データD3を抽出し、対応する関連情報(
図8(e)ではカメラが撮影画像)を抽出している。
【0064】
原因特定処理では、特定処理の結果として、異常の原因が第1種原因に起因する蓋然性が高いこと、異常の原因が第2種原因に起因する蓋然性が高いこと、及び、要経過観察を要すること、のいずれかが特定される。
要経過観察は、異常に対して保守点検作業を実施せずに一定時間の経過を待ち、一定時間経過時点でも異常が検出され続けているかを確認する、という異常対処手法の一態様である。例えば、棚卸し等の物品の出し入れ作業に伴う庫内の長時間の開放が異常発生の原因である場合は、出し入れ作業が終了すれば異常が解消される。
このように、保守点検作業をせずとも時間の経過に伴って異常が解消される蓋然性が高い場合、原因特定処理では、特定処理の結果として、異常対処手法として保守点検作業ではなく要経過観察が特定される。
なお、かかる原因特定処理の詳細については後述する。
【0065】
管理サーバ3は、原因を特定できた場合(ステップSa2:YES)、その原因が第1種原因の蓋然性が高いときには(ステップSa3:YES)、保守点検サービス提供業者15に保守点検依頼を発信する(ステップSa4)。
これにより前掲
図10に示すように、保守点検依頼が業者端末装置12に受信される。その後、サービスエンジニアEが店舗2に赴き、専門保守点検作業を実施することで冷設機器4の異常を解消することとなる。専門保守点検作業実施後には、その旨を示す作業完了報告を業者端末装置12から管理サーバ3が受信することで、専門保守点検作業の完了を管理する。なお、サービスエンジニアEの作業を支援するために、管理サーバ3は、保守点検依頼を発信する際には、原因特定処理で特定された第1種原因の情報、及び、その第1種原因に対処するための専門保守点検作業の情報も送信する。
【0066】
一方、ステップSa2の判定において、原因が第2種原因である蓋然性が高いときは(ステップSa5:YES)、管理サーバ3は、店舗ユーザ端末装置10に、第2種原因を解消するための一般保守点検作業の実施を指示する作業依頼を送信する(ステップSa6)。この作業依頼の送信時には、管理サーバ3は、店舗ユーザUによる作業を支援する店舗ユーザ作業支援情報(例えば、一般保守点検作業の内容や作業手順など)も店舗ユーザ端末装置10に送信する。店舗ユーザUは、店舗ユーザ端末装置10の表示部53の表示画面に表示された店舗ユーザ作業支援情報を参照しながら、一般保守点検作業を実施する。その後、店舗ユーザUは、一般保守点検作業を終えると、前掲
図10に示すように、作業報告データD4を管理サーバ3に送信する。そして、管理サーバ3では、この作業報告データD4に基づいて、一般保守点検作業が適切に成されたか否かを判定する。管理サーバ3は、一般保守点検作業が適切に行われていないと判定された場合には、再度、作業依頼を送信して、店舗ユーザUに一般保守点検作業を実施させ、作業が適切に行われるようにする。
【0067】
またステップSa2の判定において、特定処理の結果が第1種原因、及び第2種原因のいずれでもない場合、すなわち要経過観察であった場合(ステップSa3、Sa5がいずれもNO)、管理サーバ3は、経過観察期間として予めされた一定の時間だけ待機する(ステップSa7)。その後、管理サーバ3は、警報データD2を店舗装置8から未だ受信する場合には、再度、診断処理を行う。
【0068】
なお、この診断処理において、適宜の回数に亘る原因特定処理の結果、未だに原因が特定できなかった場合は、管理サーバ3は、保守点検サービス提供業者15に保守点検依頼を発信する。
【0069】
図12は、上述した関連情報取得処理のフローチャートである。
関連情報取得処理では、管理サーバ3は、関連情報の取得、及び送信を関連情報取得装置9に指示する関連情報取得指示を、通信部71を通じて送信する(ステップSb1)。その後、管理サーバ3は、関連情報取得装置9が送信した関連情報データD3を受信する(ステップSb2)。
【0070】
ここで、店舗2には、同種の複数の冷設機器4が設けられていることから、異常を生じている冷設機器4ではない冷設機器4の関連情報を関連情報取得装置9が取得している蓋然性がある。そこで、管理サーバ3は、店舗装置8から取得した警報データD2に含まれている冷設機器ID情報と、関連情報取得装置9から取得した関連情報データD3に含まれている冷設機器ID情報とが一致するか否かを判定する(ステップSb3)。
【0071】
そして両者が一致していない場合には(ステップSb3:NO)、管理サーバ3は、再度の関連情報取得指示を関連情報取得装置9に送信する(ステップSb4)。このとき、管理サーバ3は、異常が発生している冷設機器4を関連情報取得装置9が特定可能にする冷設機器特定情報(例えば、警報データD2に含まれていた冷設機器ID情報など)も送信する。
再度の関連情報取得指示により、関連情報取得装置9に対して、関連情報を取得した冷設機器4が、異常を生じている冷設機器4でない旨が知らされる。そして、関連情報取得装置9が、冷設機器特定情報に対応する冷設機器4の関連情報を取得することで、異常を生じている冷設機器4の関連情報を確実に得られるようになる。これにより、管理サーバ3が関連情報を使って判定する際に、異常とは関係がない冷設機器4の関連情報が用いられることを防止できる。
【0072】
なお、冷設機器ID情報が一致しなかった場合(ステップSb3:NO)、管理サーバ3は、店舗装置8を通じて、或いは冷設機器4に直接指示を与えて、冷設機器4の庫内照明を消灯させてもよい。
これにより、消灯した冷設機器4を関連情報取得装置9が画像処理等で識別することで、関連情報を取得すべき冷設機器4を関連情報取得装置9が正確に特定できる。
また庫内照明が消灯することで庫内照明部20の発熱が抑えられるので、庫内温度の異常上昇の抑制に寄与できる。
【0073】
次いで、診断処理における原因特定処理について詳述する。
本実施形態では、異常の原因の特定に人工知能技術が用いられている。
具体的には、運転データD1、又は運転データD1及び関連情報が入力データとして入力された場合に、異常の原因が第1種原因に一致する一致度を出力する第1種原因判定用学習済モデルと、異常の原因が第2種原因に一致する一致度を出力する第2種原因判定用学習済モデルと、異常の原因が経過観察を要するものとの一致度を出力する要経過観察判定用学習済モデルと、のそれぞれの学習済モデル81が予め生成されており、これらが蓄積部72に格納されている。これらの学習済モデル81の生成には、人工知能の技術分野における適宜の手法を用いることができる。
【0074】
また
図7において、上述の学習データ収集部78は、学習済モデル81の強化学習に用いられる学習データを、外部のシステムや各種機器、保守点検サービス提供業者15によって行われた保守点検作業の記録などから収集するものである。そして、管理サーバ3は、新たな学習データが取得されると、適宜のタイミングで学習済モデル81の強化学習を実行する。これにより、学習済モデル81を使った判定の精度が高められる。例えば、この判定においては、機械学習や深層学習などのAI技術が用いられる。
【0075】
図13は、かかる学習済モデルを用いた判定を用いた原因特定処理のフローチャートである。
原因特定処理では、管理サーバ3は、初回の判定処理の場合は、運転データD1から入力データを作成し、2回目以降の判定処理の場合は、運転データD1と関連情報とから入力データを生成する(ステップSc1)。
次いで管理サーバ3は、第1種原因判定用、第2種原因判定用、及び要経過観察判定用の各々の学習済モデル81を蓄積部72から読み出す(ステップSc2)。そして管理サーバ3は、各学習済モデル81に入力データを入力し、それぞれから出力として一致度を取得する(ステップSc3)。
【0076】
そして、第1種原因判定用の学習済モデル81から得られた一致度が第1閾値以上である場合(ステップSc4:YES)、管理サーバ3は、異常の原因が第1種原因(専門保守点検作業による対処を要する原因)と特定する(ステップSc5)。
また第1種原因判定用の学習済モデル81から得られた一致度が第1閾値以下であって(ステップSc4:NO)、第2種原因判定用の学習済モデル81から得られた一致度が第2閾値以上の場合は(ステップSc6:YES)、管理サーバ3は、異常の原因が第2種原因(一般保守点検作業で対処可能な原因)と特定する(ステップSc7)。
さらにまた第2種原因判定用の学習済モデル81から得られた一致度が第2閾値以下であって(ステップSc6:NO)、要経過観察判定用の学習済モデル81から得られた一致度が第3閾値以上の場合は(ステップSc8:YES)、管理サーバ3は、特定結果を要経過観察とする(ステップSc9)。
そして、要経過観察判定用の学習済モデル81から得られた一致度が第3閾値以下の場合は(ステップSc8:NO)、管理サーバ3は、特定結果を原因特定不能とする(ステップSc10)。
【0077】
異常の原因の特定に学習済モデル81が用いられるため、学習済モデル81の強化学習を継続的に実施することで、原因が特定できないケースを減らすことができる。
【0078】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0079】
本実施形態では、管理サーバ3は、冷設機器4の運転データD1(計測情報)に基づいて、冷設機器4の異常の原因への対処に、当該冷設機器4についての専門的知識を要するか否かを判定し、専門的知識を要しない場合に、当該原因に対処するための一般保守点検作業を店舗ユーザ端末装置10に送信する。
これにより、冷設機器4の異常発生時には、店舗ユーザUには、専門的知識を要せずとも実施可能な一般保守点検作業だけが指示され、専門的知識を要する専門保守点検作業が指示されることがない。
したがって、店舗ユーザUが、冷設機器4についての専門的知識を有さず、またメンテナンスに不慣れであっても、異常の原因に対して適切な作業を実施できるようになる。
これに加え、店舗ユーザUは、一般保守点検作業で対処可能な異常については、保守点検サービス提供業者15に作業を依頼せずとも解決できるようになる。これにより、店舗2の側は、保守点検サービス提供業者15に支払うコストを抑えることができ、また保守点検サービス提供業者15にあっては、一般保守点検作業に時間を費やす必要がなくなり、専門的知識を要する高度な保守点検作業に専念できる。
【0080】
本実施形態では、管理サーバ3は、運転データD1と、関連情報データD3と、に基づいて、冷設機器4の異常の原因への対処に、当該冷設機器4についての専門的知識を要するか否かを判定するので、精度よく判定することができる。
【0081】
本実施形態では、管理サーバ3は、運転データD1に基づいて、冷設機器4の異常の原因への対処に、当該冷設機器4についての専門的知識を要するか否かを判定できない場合に、関連情報取得装置9から関連情報データD3を取得する。そして管理サーバ3は、運転データD1と関連情報データD3と、に基づいて、冷設機器4の異常の原因への対処に、当該冷設機器4についての専門的知識を要するか否かを判定する。
これにより、管理サーバ3が関連情報取得装置9に関連情報の取得を指示する回数を抑えることができる。
【0082】
本実施形態では、冷設機器4に異常が生じた場合に、冷設機器4の庫内照明が消灯するので、異常を生じている冷設機器4の特定が容易になる。
【0083】
本実施形態では、管理サーバ3は、冷設機器4の異常の原因への対処に、当該冷設機器4についての専門的知識を要すると判定された場合に、保守点検サービス提供業者15に保守点検依頼を送信する。
これにより、冷設機器4の異常の原因への対処に当該冷設機器4についての専門的知識を要するときには、店舗ユーザUではなく、保守点検サービス提供業者15のサービスエンジニアEに適切な作業を行わせることができる。
【0084】
本実施形態では、管理サーバ3は、関連情報取得装置9が冷設機器4に付設されたID伝達部14から取得した冷設機器ID情報と、冷設機器4からネットワーク13を介して得られた冷設機器ID情報と、を比較し、関連情報取得装置9が関連情報データD3を取得した冷設機器4が、異常を生じている冷設機器4であるか判定する。
これにより、管理サーバ3が関連情報を使って判定する際に、異常を生じていない冷設機器4の関連情報が判定に用いられることを防止できる。
【0085】
本実施形態では、ID伝達部14は、QRコード、ビーコン、及び光IDの少なくともいずれか1つによって冷設機器ID情報を伝達するので、ネットワーク13を介した通信以外の手法で冷設機器ID情報を関連情報取得装置9に伝達できる。
【0086】
本実施形態では、管理サーバ3は、関連情報取得装置9がID伝達部14から取得した冷設機器ID情報と、ネットワーク13を介して冷設機器4から得られた冷設機器ID情報とが一致しない場合、ネットワーク13を介して、関連情報取得装置9に対して、関連情報を取得した冷設機器4が、異常を生じている冷設機器4ではない旨を通知する。
これにより、関連情報取得装置9が誤った冷設機器4から関連情報を取得していた場合に、当該関連情報取得装置9が再度、関連情報を取得し直すことができる。
【0087】
本実施形態では、管理サーバ3は、管理サーバ3は、関連情報取得装置9がID伝達部14から取得した冷設機器ID情報と、ネットワーク13を介して冷設機器4から得られた冷設機器ID情報とが一致しない場合、異常を生じている冷設機器4を特定する冷設機器特定情報を関連情報取得装置9に送信する。
これにより、関連情報取得装置9は、異常を生じている冷設機器4から確実に関連情報を取得できる。
【0088】
本実施形態では、関連情報は、カメラ41Aによる冷設機器4の冷気吹出口、冷気吸込口、蒸発器、ハニカム、フィルタ、または、これらの部位の少なくとも1つを含む周辺領域の撮像情報とした。
かかる関連情報を取得することで、異常の原因が、その対処に、冷設機器4についての専門的知識を要さない原因であるか否かを正確に特定できる。
【0089】
本実施形態では、冷設機器4についての専門的知識を要しない原因に対処する作業(一般保守点検作業)を、冷気吹出口、ハニカム、フィルタ、および、周辺領域の少なくとも1つの清掃、または、冷気吸込口、および、周辺領域の少なくとも1つの異物除去とした。
これにより、冷設機器4についての専門的知識を有さず、またメンテナンスに不慣れな店舗ユーザUに見合った作業だけを、当該店舗ユーザUに実施させることができる。
【0090】
本実施形態では、関連情報は、マイク41Bによる冷設機器4のファンまたは圧縮機の集音情報とした。
かかる関連情報を取得することで、異常の原因が、その対処に、冷設機器4についての専門的知識を要する原因でもある、ファンまたは圧縮機の異常か否かを特定できる。
【0091】
本実施形態では、関連情報は、加速度センサ41Cによる冷設機器4の圧縮機の振動情報とした。
かかる関連情報を取得することで、異常の原因が、その対処に、冷設機器4についての専門的知識を要する原因でもある、圧縮機の異常か否かを特定できる。
【0092】
本実施形態では、関連情報取得装置9には、冷設機器4が配置された店舗2に設置された情報取得装置の一例である監視装置が用いられ、店舗ユーザ端末装置10には可搬可能な携帯端末が用いられる。
これにより、管理サーバ3は、店舗ユーザUが何ら作業せずとも関連情報を取得できるので、店舗ユーザUの作業回数を減らすことができる。また店舗ユーザ端末装置10が可搬可能な携帯端末なので、店舗ユーザUは作業対象の冷設機器4の近くで店舗ユーザ端末装置10を操作しながら一般保守点検作業を実施できる。
【0093】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0094】
(変形例1)
関連情報取得装置9は、店舗2に設ける構成に限らず、冷設機器4のそれぞれに設けられてもよい。これにより、各冷設機器4の関連情報を確実に取得できる。
【0095】
(変形例2)
店舗ユーザ端末装置10が関連情報取得装置9を兼ねてもよい。
すなわち店舗ユーザ端末装置10は、関連情報取得指示を管理サーバ3から取得し、それを表示部53に表示して店舗ユーザUに提示する。
この場合において、管理サーバ3は、関連情報を取得するための作業手順を関連情報取得指示とともに店舗ユーザ端末装置10に送ることで、店舗ユーザUによる関連情報の取得を支援する。また、冷設機器4に異常が発生した場合、その冷設機器4の庫内照明が当該冷設機器4、又は管理サーバ3によって消灯制御されるので、店舗ユーザUは、異常を生じている冷設機器4を容易に特定できる。
そして、店舗ユーザUが関連情報の取得作業を完了すると、店舗ユーザ端末装置10は関連情報データD3を管理サーバ3にネットワーク13を介して送信する。
【0096】
仮に店舗ユーザUが誤った冷設機器4の関連情報を管理サーバ3に送信してしまった場合、上記関連情報取得処理により、その旨が、冷設機器特定情報とともに店舗ユーザ端末装置10に送られる。この冷設機器特定情報には、例えば、異常を生じている冷設機器4のモデル名や型番、店舗2における配置位置などが用いられる。これにより、管理サーバ3は、異常を生じている冷設機器4の関連情報の取得を店舗ユーザUにやり直させ、必要な関連情報を確実に得ることができる。
【0097】
本変形例によれば、店舗ユーザ端末装置10が関連情報取得装置9を兼ねる構成とし、店舗ユーザ端末装置10と関連情報取得装置9とを同一の装置とすることで、冷設機器管理システム1の装置コストが抑えられる。
さらに店舗ユーザ端末装置10が可搬可能な携帯端末なので、各冷設機器4の配置場所に影響を受けることなく、異常を生じている冷設機器4まで店舗ユーザUが店舗ユーザ端末装置10を運び、その冷設機器4から確実に関連情報を取得できる。
【0098】
(変形例3)
店舗ユーザ端末装置10が関連情報取得装置9を兼ねる構成において、店舗ユーザ端末装置10は、管理サーバ3又は店舗装置8に蓄積されている運転データD1、或いは、運転データD1と関連情報とに基づいて、上述の原因特定処理を管理サーバ3に代えて実行してもよい。
そして、異常の原因の対処に専門的知識を要しない場合、店舗ユーザ端末装置10は、当該原因に対処するための一般保守点検作業を表示部53に表示する。これとは逆に、異常の原因の対処に専門的知識を要する場合、店舗ユーザ端末装置10は、保守点検サービス提供業者15に保守点検依頼を送信し、或いは、保守点検サービス提供業者15への保守点検依頼を店舗ユーザUに促す画面を表示部53に表示する。
このように、店舗ユーザ端末装置10が原因特定処理を実行することで、店舗ユーザUが冷設機器4の異常発生に気づいたときに速やかに原因を特定し適切な対処を実施できる。
【0099】
(変形例4)
上述した実施形態では、それぞれの冷設機器4が自身に発生した異常を検出したが、これに限らず、店舗装置8、又は管理サーバ3が運転データD1に基づいて異常を検出してもよい。この場合において、運転データD1に基づいて異常を検出する手法には、公知、又は周知の適宜の技術を用いることができる。
【0100】
(変形例5)
上述した実施形態において、管理サーバ3は、各冷設機器4の運転データD1を、店舗装置8から取得したが、これに限らず、各冷設機器4からネットワーク13を介して直接取得してもよい。
【0101】
(変形例6)
上述した実施形態において、ネットワーク13を介して冷設機器4の運転制御パラメータを管理サーバ3から遠隔操作可能に冷設機器管理システム1を構成し、冷設機器4の異常発生時には、管理サーバ3が、原因特定処理において、異常の原因が遠隔操作によって対処可能か否かを判定してもよい。
図14は、本変形例に係る原因特定処理のフローチャートである。なお、同図において、
図13と同一のステップについては同一の符号を付し、その説明を省略する。
本変形例では、管理サーバ3の上記学習済モデル81には、運転データD1、又は運転データD1及び関連情報が入力データとして入力された場合に、異常の原因が、遠隔操作によって対処可能な原因に一致する一致度を出力する遠隔対処可能原因判定用の学習済モデルが含まれる。
この種の異常の一例には、冷設機器4の蒸発器の着霜を原因とした庫内温度異常がある。この庫内温度異常は、計測情報に含まれる庫内温度情報と、冷設機器4の蒸発器を撮像した関連情報と、に基づいて正確に判定可能であり、また管理サーバ3がネットワーク13を介して、冷設機器4の運転制御パラメータを遠隔操作し、当該冷設機器4に除霜運転を実行させることで解消可能である。
【0102】
そして本変形例に係る原因特定処理では、
図14のステップSd1において、遠隔対処可能原因判定用の学習済モデルから取得した一致度が第4閾値以上であるか否かを判定し、第4閾値以上である場合(ステップSd1:YES)、管理サーバ3は、ネットワーク13を介して運転制御パラメータを遠隔操作し、異常を解消することとなる(ステップSd2)。
【0103】
本変形例によれば、冷設機器4の遠隔操作によって対処可能な原因による異常(例えば着霜を原因とした庫内温度異常)について、店舗ユーザU、及び保守点検サービス提供業者15に作業を実施させることなく、冷設機器4の遠隔操作(例えば除霜)により適切に対処することができる。
【0104】
(他の変形例)
図1から
図7に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0105】
図1から
図7における各制御部は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアにより実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
【0106】
管理サーバ3は、複数台のサーバコンピュータから成るコンピュータシステムで構成され、それぞれのサーバコンピュータが共同して
図7に示す各種の機能を実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明にかかる保守点検方法、保守点検システム、及び情報端末は、冷設機器の異常発生時にユーザによって不適切な対処が行われることを防止できるので、冷設機器の保守にかかる各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0108】
1 冷設機器管理システム(保守点検システム)
2 店舗
3 管理サーバ(コンピュータ)
4 冷設機器
8 店舗装置
9 関連情報取得装置(第2の端末装置)
10 店舗ユーザ端末装置(第1の端末装置)
13 ネットワーク
14 ID伝達部
15 保守点検サービス提供業者
17 冷却機器センサ部(第1のセンサ)
20 庫内照明部
23 異常検出部
41 関連情報検出部(第2のセンサ)
41A カメラ
41B マイク
41C 加速度センサ
54 作業結果検出部
79 診断処理部
D1 運転データ
D2 警報データ
D3 関連情報データ
D4 作業報告データ
U 店舗ユーザ(ユーザ)