(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】通話装置およびその通話制御方法
(51)【国際特許分類】
H04M 1/00 20060101AFI20241115BHJP
H04M 1/58 20060101ALI20241115BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20241115BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20241115BHJP
H04R 1/10 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
H04M1/00 H
H04M1/58 Z
H04R1/00 327A
H04R3/00 310
H04R3/00 320
H04R1/10 104Z
(21)【出願番号】P 2023188386
(22)【出願日】2023-11-02
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 進也
(72)【発明者】
【氏名】田方 健志
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002461(JP,A)
【文献】特開2010-041521(JP,A)
【文献】特開2009-171315(JP,A)
【文献】特開2010-252375(JP,A)
【文献】特開平07-240782(JP,A)
【文献】特開平02-243045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
H04M 1/58
H04R 1/00
H04R 3/00
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の発声を収音して送話信号を生成する骨導マイクと、
相手装置から受信した受話信号に基づき音を再生するレシーバと、
前記骨導マイクからの前記送話信号を前記相手装置に向けて伝送する送話用伝送路と、
前記受話信号を前記レシーバに向けて伝送する受話用伝送路と、
前記送話用伝送路及び前記受話用伝送路の間に設けられ、前記送話信号を処理することにより生成された側音信号を前記受話信号に合成するためのループバック回路と、を備え、
前記ループバック回路は
、前記側音信号に基づき前記レシーバによって再生される側音のオンオフおよび前記側音のレベルの少なくとも一方を
、前記骨導マイクによって収音された音のレベルに基づき制御する、通話装置。
【請求項2】
予め準備された複数の動作モードの何れかに基づき動作し、
前記複数の動作モードには、小声適応モードが含まれ、
前記小声適応モードでは、
前記収音された音のレベルが第1閾値以下である場合にのみ、前記側音が無効化される、請求項1に記載の通話装置。
【請求項3】
前記複数の動作モードには、大声抑制モードが含まれ、
前記大声抑制モードでは、
前記収音された音のレベルが前記第1閾値よりも大きな第2閾値以上である場合に、前記側音のレベルを増大させる、請求項2に記載の通話装置。
【請求項4】
前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号に基づき、
前記収音された音のレベルを検出するマイク音検出器を備える、請求項3に記載の通話装置。
【請求項5】
前記利用者が入力操作を行うための入力装置を更に備え、
前記入力装置における前記利用者の入力操作に基づき、前記複数の動作モードが個別にオンオフされる、請求項3に記載の通話装置。
【請求項6】
前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号に対するゲインを調整するゲイン調整部を含む、請求項1に記載の通話装置。
【請求項7】
前記送話用伝送路からの前記送話信号に基づき、前記骨導マイクによって収音された前記利用者の発声を除く周囲音のレベルを検出する周囲音検出器を更に備え、
前記ゲイン調整部は、前記周囲音のレベルに基づき、前記送話用伝送路からの前記送話信号に対する前記ゲインを調整する、請求項6に記載の通話装置。
【請求項8】
前記受話用伝送路に設けられ、前記受話信号に基づき前記レシーバによって再生される前記受話信号に基づく音の音量を調整する音量調整部を更に備え、
前記ゲイン調整部は、前記音量調整部による前記音量の調整度合いに基づき前記ゲインを設定する、請求項7に記載の通話装置。
【請求項9】
前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号に基づき、前記利用者の発声の有無を検出する発声検出器を更に備え、前記発声検出器の検出結果に基づき、前記骨導マイクによって収音された音に前記利用者の所定レベル以上の発声が含まれないと判定した場合に前記小声適応モードを実行する、請求項2に記載の通話装置。
【請求項10】
前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号から前記利用者の発声に基づく音声信号を抽出する音声抽出部を含み、前記音声信号に基づき前記側音信号を生成する、請求項3に記載の通話装置。
【請求項11】
前記ループバック回路は、前記大声抑制モードにおいて前記音声信号を所定の遅延時間に基づき遅延させる遅延処理部を含み、その遅延させた前記音声信号に基づき前記側音信号を生成する、請求項10に記載の通話装置。
【請求項12】
前記送話用伝送路にそれぞれ設けられ、前記ループバック回路の処理の対象となる前記送話信号のノイズ成分を除去または低減するノイズキャンセラと、前記ループバック回路の処理対象となる前記送話信号に含まれるエコー成分を除去または低減するエコーキャンセラと、を更に備えた、請求項3に記載の通話装置。
【請求項13】
前記ループバック回路は、前記側音信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張部を含む、請求項12に記載の通話装置。
【請求項14】
通話装置の通話制御方法であって、
前記通話装置は、
利用者の発声を収音して送話信号を生成する骨導マイクと、
相手装置から受信した受話信号に基づき音を再生するレシーバと、
前記骨導マイクからの前記送話信号を前記相手装置に向けて伝送する送話用伝送路と、
前記受話信号を前記レシーバに向けて伝送する受話用伝送路と、を備え、
前記送話信号を処理することにより生成された側音信号を前記受話信号に合成可能であり、
前記側音信号に基づき前記レシーバによって再生される側音のオンオフおよび前記側音のレベルの少なくとも一方を
、前記骨導マイクによって収音された音のレベルに基づき制御する、通話制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨導マイクとレシーバとを備え、利用者の耳や頭部などに装着される通話装置およびその通話制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話機では、通話品質を向上させるために、送話器によって収音された利用者の発声を側音として受話器から出力する技術が普及している。利用者は、通話相手と通話を行う際に、受話器から出力される側音を聞くことにより、自身が発する音声の品質や明瞭さを調整しやすくなる。
【0003】
そのような側音の利用に関し、例えば、送話器から送り込まれた音声電気信号を位相変換して位相変換出力信号を出力する位相変換回路と、その位相変換出力信号を、相手側の音声電気信号と側音電気信号とが合成されている音声信号に合成することにより、側音電気信号だけを除去して相手側の音声電気信号だけを抽出する信号合成回路と、位相変換出力信号を信号合成回路に入力するかしないかを選択する選択スイッチとを有する電話機が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、利用者の発声を収音する骨導マイクと、受信した通話相手の音声を再生する気導レシーバとが収容された筐体を備え、利用者の耳に挿入して使用される通話装置が開発されている。通話装置に用いられる骨導マイクは、気導マイクと比べて周囲音の影響を受けにくいため、比較的小さい声に対する収音性能に優れている。
【0006】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、そのような骨導マイクを備えた通話装置において、利用者の発声状況(すなわち、骨導マイクによって収音される音)に応じて側音の有無や側音のレベルを制御することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができることを見出した。そのような側音の制御により、利用者に発声の不足(すなわち、発声のレベルが小さすぎること)や、過度の発声(すなわち、発声のレベルが大きすぎること)を認識させることができる。
【0007】
これに対し、上記特許文献1に記載された従来技術では、選択スイッチによって側音のオンオフを切り替えることができるが、利用者の発声に応じて側音を制御することについては全く考慮されていない。
【0008】
そこで、本開示は、利用者の発声状況に応じて側音の有無や側音のレベルを制御することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる通話装置およびその通話制御方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の通話装置は、利用者の発声を収音して送話信号を生成する骨導マイクと、相手装置から受信した受話信号に基づき音を再生するレシーバと、前記骨導マイクからの前記送話信号を前記相手装置に向けて伝送する送話用伝送路と、前記受話信号を前記レシーバに向けて伝送する受話用伝送路と、前記送話用伝送路及び前記受話用伝送路の間に設けられ、前記送話信号を処理することにより生成された側音信号を前記受話信号に合成するためのループバック回路と、を備え、前記ループバック回路は、前記側音信号に基づき前記レシーバによって再生される側音のオンオフおよび前記側音のレベルの少なくとも一方を、前記骨導マイクによって収音された音のレベルに基づき制御する構成とする。
【0010】
本開示の通話制御方法は、通話装置の通話制御方法であって、前記通話装置は、利用者の発声を収音して送話信号を生成する骨導マイクと、相手装置から受信した受話信号に基づき音を再生するレシーバと、前記骨導マイクからの前記送話信号を前記相手装置に向けて伝送する送話用伝送路と、前記受話信号を前記レシーバに向けて伝送する受話用伝送路と、を備え、前記送話信号を処理することにより生成された側音信号を前記受話信号に合成可能であり、前記側音信号に基づき前記レシーバによって再生される側音のオンオフおよび前記側音のレベルの少なくとも一方を、前記骨導マイクによって収音された音のレベルに基づき制御する構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、通話装置の利用者の発声状況に応じて側音の有無や側音のレベルを制御することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る通話装置の使用状態を示す斜視図
【
図3】第1実施形態に係る通話装置の構成を示す機能ブロック図
【
図4】第1実施形態に係る通話装置の各動作モード((A)小声適応モード、(B)大声抑制モード、(C)ミックスモード)における側音の出力特性を示す説明図
【
図5】第1実施形態に係る通話装置の動作モードの設定画面の一例を示す説明図
【
図6】
図3に示した通話装置の構成の第1変形例を示す機能ブロック図
【
図7】
図3に示した通話装置の構成の第2変形例を示す機能ブロック図
【
図8】第2実施形態に係る通話装置の構成を示す機能ブロック図
【
図9】第2実施形態に係る通話装置の各動作モード((A)小声適応モード、(B)大声抑制モード、(C)ミックスモード)における側音の特性を示す説明図
【
図10】
図8に示した通話装置の構成の第1変形例を示す機能ブロック図
【
図11】側音遅延量と側音再生音量との関係における快適領域および不快領域を示す説明図
【
図12】
図8に示した通話装置の構成の第2変形例を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、通話装置の通話制御方法であって、前記通話装置は、利用者の発声を収音して送話信号を生成する骨導マイクと、相手装置から受信した受話信号に基づき音を再生するレシーバと、前記骨導マイクからの前記送話信号を前記相手装置に向けて伝送する送話用伝送路と、前記受話信号を前記レシーバに向けて伝送する受話用伝送路と、を備え、前記送話信号を処理することにより生成された側音信号を前記受話信号に合成可能であり、前記側音信号に基づき前記レシーバによって再生される側音のオンオフおよび前記側音のレベルの少なくとも一方を、前記骨導マイクによって収音された音のレベルに基づき制御する構成とする。
【0014】
これによると、複数の動作モードを用いて利用者の発声状況に応じて側音の有無(すなわち、オンオフ)や側音のレベルを制御することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる。
【0015】
また、第2の発明は、予め準備された複数の動作モードの何れかに基づき動作し、前記複数の動作モードには、小声適応モードが含まれ、前記小声適応モードでは、前記収音された音のレベルが第1閾値以下である場合にのみ、前記側音が無効化される構成とする。
【0016】
これによると、骨導マイクによって収音された音のレベルが第1閾値以下である(すなわち、利用者の発声音量が不足している)場合に、側音を無効化して(すなわち、側音をオフまたは側音のレベルを実質的にゼロにして)利用者に発声音量が不足していることを通知することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる。
【0017】
また、第3の発明は、前記複数の動作モードには、大声抑制モードが含まれ、前記大声抑制モードでは、前記収音された音のレベルが前記第1閾値よりも大きな第2閾値以上である場合に、前記側音のレベルを増大させる構成とする。
【0018】
これによると、骨導マイクによって収音された音のレベルが第2閾値以上である(すなわち、利用者の発声音量が過度である)場合に、側音のレベルを増大させて利用者の発声を阻害することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる。
【0019】
また、第4の発明は、前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号に基づき、前記収音された音のレベルを検出するマイク音検出器を備える構成とする。
【0020】
これによると、骨導マイクによって収音された音のレベルに基づき、複数の動作モードを適切に実行することができる。
【0021】
また、第5の発明は、前記利用者が入力操作を行うための入力装置を更に備え、前記入力装置における前記利用者の入力操作に基づき、前記複数の動作モードが個別にオンオフされる構成とする。
【0022】
これによると、ユーザは所望の動作モードを容易に選択し、それを通話装置に実行させることが可能となる。
【0023】
また、第6の発明は、前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号に対するゲインを調整するゲイン調整部を含む構成とする。
【0024】
これによると、送話信号に対する処理として送話信号に対するゲインを適切に調整することにより、生成された側音信号に基づく側音をレシーバによって適切に再生することができる。
【0025】
また、第7の発明は、前記送話用伝送路からの前記送話信号に基づき、前記骨導マイクによって収音された前記利用者の発声を除く周囲音のレベルを検出する周囲音検出器を更に備え、前記ゲイン調整部は、前記周囲音のレベルに基づき、前記送話用伝送路からの前記送話信号に対する前記ゲインを調整する構成とする。
【0026】
これによると、骨導マイクによって収音された周囲音(利用者の発声を除く)のレベルに基づき、送話信号に対するゲインを適切に調整することにより、側音をレシーバによって適切に再生することができる。
【0027】
また、第8の発明は、前記受話用伝送路に設けられ、前記受話信号に基づき前記レシーバによって再生される前記受話信号に基づく音の音量を調整する音量調整部を更に備え、前記ゲイン調整部は、前記音量調整部による前記音量の調整度合いに基づき前記ゲインを設定する構成とする。
【0028】
これによると、音量調整部による音量の調整度合いに基づき、送話信号に対するゲインを適切に設定することにより、側音をレシーバによって適切に再生することができる。
【0029】
また、第9の発明は、前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号に基づき、前記利用者の発声の有無を検出する発声検出器を更に備え、前記発声検出器の検出結果に基づき、前記骨導マイクによって収音された音に前記利用者の所定レベル以上の発声が含まれないと判定した場合に前記小声適応モードを実行する構成とする。
【0030】
これによると、骨導マイクによって収音された音に利用者の所定レベルの発声が含まれない場合(すなわち、利用者が発声してもその音量が不足している場合)に小声適応モードを適切に実行することができる。
【0031】
また、第10の発明は、前記ループバック回路は、前記送話用伝送路からの前記送話信号から前記利用者の発声に基づく音声信号を抽出する音声抽出部を含み、前記音声信号に基づき前記側音信号を生成する構成とする。
【0032】
これによると、送話信号から抽出された音声信号に基づき、側音信号を適切に生成する(すなわち、レシーバによって再生される側音の品質を向上させる)ことができる。
【0033】
また、第11の発明は、前記ループバック回路は、前記大声抑制モードにおいて前記音声信号を所定の遅延時間に基づき遅延させる遅延処理部を含み、その遅延させた前記音声信号に基づき前記側音信号を生成する構成とする。
【0034】
これによると、遅延させた音声信号に基づき生成された側音信号によってレシーバによって再生される側音の再生タイミングを遅らせる(すなわち、利用者に違和感を与えて大きな発声を阻害する)ことにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる。
【0035】
また、第12の発明は、前記送話用伝送路にそれぞれ設けられ、前記ループバック回路の処理の対象となる前記送話信号のノイズ成分を除去または低減するノイズキャンセラと、前記ループバック回路の処理対象となる前記送話信号に含まれるエコー成分を除去または低減するエコーキャンセラと、を更に備えた構成とする。
【0036】
これによると、送話信号からノイズ成分およびエコー成分が除去されることにより、側音信号を適切に生成する(すなわち、レシーバによって再生される側音の品質を向上させる)ことができる。
【0037】
また、第13の発明は、前記ループバック回路は、前記側音信号の周波数帯域を拡張する帯域拡張部を含む構成とする。
【0038】
これによると、音声信号の帯域拡張により、側音信号を適切に生成する(すなわち、レシーバによって再生される側音の品質を向上させる)ことができる。
【0039】
また、第14の発明は、通話装置の通話制御方法であって、前記通話装置は、利用者の発声を収音して送話信号を生成する骨導マイクと、相手装置から受信した受話信号に基づき音を再生するレシーバと、前記骨導マイクからの前記送話信号を前記相手装置に向けて伝送する送話用伝送路と、前記受話信号を前記レシーバに向けて伝送する受話用伝送路と、を備え、前記送話信号を処理することにより生成された側音信号を前記受話信号に合成可能であり、予め準備された複数の動作モードの何れかに基づき、前記側音信号に基づき前記レシーバによって再生される側音のオンオフおよび前記側音のレベルの少なくとも一方を制御する構成とする。
【0040】
これによると、複数の動作モードを用いて利用者の発声状況に応じて側音の有無(すなわち、オンオフ)や側音のレベルを制御することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる。
【0041】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0042】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る通話装置1の使用状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたイヤホン2の分解斜視図である。
【0043】
図1に示すように、通話装置1は、通話装置本体をなすイヤホン2と、通話に必要な信号処理を行う信号処理装置3とを含む。ここでは、イヤホン2が利用者の右側の耳5に挿入される場合の例が示されている。ただし、イヤホン2は利用者の左側の耳に挿入されて使用されてもよい。また、通話装置1は、左右一対のイヤホン2を備えていてもよい。
【0044】
通話装置1では、信号処理装置3は、信号線4を介してイヤホン2に接続されている。ただし、イヤホン2と信号処理装置3とは、Wifi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等に基づく無線信号を介して互いに通信可能に接続されてもよい。
【0045】
また、イヤホン2は、信号処理装置3と同様の機能を更に備えてもよい。つまり、通話装置1では、信号処理装置3がイヤホン2の筐体内部に一体化された構成であってもよい。
【0046】
図2に示すように、イヤホン2は、外装筐体9と、外装筐体9に収容された骨導マイク11と、気導レシーバ12と、内部筐体13と、マイクラバー15とを備える。
【0047】
外装筐体9は、イヤホン2の外殻を構成する。外装筐体9は、利用者の耳の内側部分(奥側部分)を構成するケース9Aと、利用者の耳の外側部分を構成するカバー9Bとを備えている。ケース9Aにカバー9Bが外側から重ね合わされることによって、外装筐体9が構成されている。外装筐体9には、信号線4を外部に導くためのケーブルキャップ10が設けられている。
【0048】
骨導マイク(骨伝導マイク)11は、主に声帯振動伝達部位に伝達する声帯振動を収音できるように、利用者の耳に設けられるデバイスであって、利用者の発声と、利用者の周囲で発生する周囲音とを収音する。骨導マイク11は、音声振動を電気信号(送話信号の一例)に変換するための素子(例えば、振動検出素子)を備えている。つまり、骨導マイク11は、利用者の発声等の音を収音して電気信号を生成することができる。骨導マイク11によって生成された電気信号は、信号線4を介して信号処理装置3に入力される。骨導マイク11は、利用者の体内を伝搬する声帯振動を収音するため、利用者の発声以外の周囲音の影響を受け難いという性質を有する。
【0049】
気導レシーバ12は、信号処理装置3から信号線4を介して入力された電気信号(受話信号の一例)を、通話相手の発声等の音に変換して出力する。気導レシーバ12は、公知のスピーカによって構成されていてもよい。また、気導レシーバ12の代わりに骨導レシーバ(骨伝導レシーバ)が用いられてもよい。例えば、信号処理装置3が利用者の通話相手の発声に対応する電気信号を出力したとき、気導レシーバ12はその通話相手の発声に対応する音を出力する。なお、気導レシーバ12で出力される音は、通話相手の発声に限定されず、例えば周囲音や保留音などが含まれ得る。
【0050】
内部筐体13は、気導レシーバ12の再生音を外耳道に導くための部材であり、気導レシーバ12の再生音を外耳道に導く通路13Aを備えている。気導レシーバ12は、内部筐体13の通路13Aの一端側に配置される。
【0051】
通路13Aの他端側には、外装筐体9(詳細には、ケース9A)に設けられた開口9Cを介して、外装筐体9の外部にまで延びる筒状の筒部13Bが設けられている。本実施形態では、筒部13Bの延出端に、利用者の外耳道に全周に渡って当接する先端ラバー16が設けられている。先端ラバー16が外耳道に全周に渡って当接することによって、外耳道の気密性が確保されて、気導レシーバ12からの再生音が効果的に利用者に伝えられる。
【0052】
マイクラバー15は、骨導マイク11を弾性的に保持する。マイクラバー15は、耳5の近傍の骨を介して声帯振動が伝わる部位(以下、声帯振動伝達部位という。)と骨導マイク11とを接続する。これにより、声帯振動伝達部位に伝わる声帯振動が骨導マイク11に伝わり、骨導マイク11は、マイクラバー15を介して耳周辺の骨及び皮膚に伝搬する声帯振動を検出することによって収音する。
【0053】
信号処理装置3は、図示しない通話相手の通話装置(相手装置の一例)にて出力するべき信号を生成する。信号処理装置3は、骨導マイク11の特性に基づき、周囲音の影響を抑えつつ、利用者の発声の明瞭性を高め、それを、通話相手の通話装置に届けることができる。
【0054】
なお、通話相手の通話装置は、特に限定されないが、通話装置1と同様の構成を有してもよい。例えば、通話相手の通話装置では、利用者の通話装置1から受信した信号(すなわち、信号処理装置3によって生成された信号)に基づき、イヤホンに内蔵された気導レシーバや各種のスピーカ等から利用者の発声が出力される。
【0055】
信号処理装置3は、CPU等のプロセッサ、RAM・ROM等のメモリ、SSDやHDD等のストレージ、タッチパネル等のディスプレイ、ネットワークインタフェース、及び音声入出力端子などを備えた端末(例えば、スマートフォン)によって構成されている。ただし、信号処理装置3の構成は、この態様には限定されず、例えば、音声入出力端子を備えたタブレットや各種コンピュータによっても構成され得る。さらに、信号処理装置3は、ロジックデバイスと、各種アナログデバイスとの組み合わせ等によっても実現され得る。
【0056】
以下で説明するように、通話装置1は、利用者が通話相手と通話する際に、気導レシーバ12から側音(すなわち、利用者の発声)を出力することができる。通話装置1は、利用者の発声状況に応じて側音の有無(すなわち、オンオフ)や側音のレベル(音圧レベル)を制御することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる。
【0057】
図3は、第1実施形態に係る通話装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図4は、通話装置1の各動作モード((A)小声適応モード、(B)大声抑制モード、(C)ミックスモード)における側音の出力特性を示す説明図である。
図5は、通話装置1の動作モードの設定画面の一例を示す説明図である。
【0058】
図3に示すように、通話装置1において、信号処理装置3には骨導マイク11で生成された電気信号(以下、「送話信号」という。)が信号線4を介して入力される。また、信号処理装置3は、相手装置から受信した電気信号(以下、「受話信号」という。)を、気導レシーバ12に対して信号線4を介して出力する。なお、図示は省略するが、信号処理装置3は、骨導マイク11から入力される送話信号をデジタル信号に変換するADコンバータと、気導レシーバ12に出力される受話信号をアナログ信号に関するDAコンバータとを備え得る。
【0059】
信号処理装置3は、骨導マイク11からの送話信号を送信部21に向けて(すなわち、相手装置に向けて)伝送する送話用伝送路22を有する。また、信号処理装置3は、受信部23からの(すなわち、相手装置からの)受話信号を、気導レシーバ12に向けて伝送する受話用伝送路24を有する。また、信号処理装置3は、送話用伝送路22および受話用伝送路24の間に設けられたループバック回路25を有する。ループバック回路25は、送話用伝送路22からの送話信号を処理することにより側音信号を生成する。側音信号は、送話用伝送路22と受話用伝送路24とを接続する側音用伝送路27を介して伝送され、受話用伝送路24の受話信号に合成される。
【0060】
送信部21および受信部23は、相手装置との無線通信を行うためのアンテナや通信回路によって構成され得る。送信部21は、送話用伝送路22によって伝送された骨導マイク11からの送話信号を相手装置に向けて送信する。受信部23は、相手装置から送信された受話信号を受信する。受信された受話信号は、受話用伝送路24によって気導レシーバ12に向けて伝送される。
【0061】
信号処理装置3において、送話用伝送路22には、送話信号を増幅する増幅部31が設けられている。また、受話用伝送路24には、ループバック回路25からの側音信号を受信部23からの受話信号に合成(または重畳)する合成部33と、側音信号が合成された受話信号を増幅する増幅部35とが設けられている。増幅部31、35や合成部33は、それぞれ電子素子や回路によって構成され得る。
【0062】
ループバック回路25は、ゲイン調整部36、スイッチ部37、第1音検出器38、及びコントローラ39を有する。
【0063】
ゲイン調整部36は、側音用伝送路27に設けられ、送話用伝送路22からの送話信号に適用するゲインを調整すること(送話信号の処理の一例)により側音信号を生成する。このとき、送話信号に適用されるゲインによって側音信号に基づく側音のレベル(すなわち、気導レシーバ12によって再生される側音のレベル)が調整される。なお、ゲイン調整部36は、後述する通話装置1で実行される動作モードに従って異なる態様のゲイン調整を実行することができる。
【0064】
スイッチ部37は、側音用伝送路27に設けられ、ゲイン調整部36からの側音信号のオンオフを切り替え可能なスイッチを含む。スイッチ部37が側音信号をオンした場合、側音信号が合成部33に入力される。合成部33に入力された側音信号は、受信部23からの受話信号に合成され、増幅部35で増幅された後、気導レシーバ12によって再生される。一方、スイッチ部37が側音をオフした場合、合成部33に入力される側音信号が遮断させる。これにより、気導レシーバ12では、側音は再生されず、相手装置側の音(通話相手の発声や周囲音)のみが再生される。
【0065】
第1音検出器38(マイク音検出器の一例)は、送話用伝送路22を伝送される送話信号を取得し、その送話信号に基づき、骨導マイク11によって収音された音のレベル(dB)を検出することができる。
【0066】
コントローラ39は、第1音検出器38から検出結果を取得し、その検出結果に基づきスイッチ部37のオンオフの動作を制御する。例えば、コントローラ39は、第1音検出器38によって検出された音のレベルを、予め設定された1以上の閾値と比較し、その比較結果に基づきスイッチ部37のオンオフを制御することができる。なお、コントローラ39は、後述する通話装置1で実行される動作モードに従って異なる態様の制御を実行することができる。
【0067】
なお、第1音検出器38(発声検出器の一例)は、骨導マイク11によって収音された音のレベルを検出する代わりに、送話信号に基づき利用者の発声の有無(すなわち、有音および無音)を検出してもよい。そのような利用者の所定レベルの発声の有無の検出は、例えば、音声信号の強度を検出し、所定の閾値(第1閾値の一例)と比較することにより実行することができる。また、コントローラ39は、例えば、第1音検出器38の検出結果に基づき、所定レベルの利用者の発声が検出されたか否かを判定し、利用者の発声が検出された場合、側音信号をオンするようにスイッチ部37を制御することができる。一方、コントローラ39は、所定レベルの利用者の発声が検出されない場合、側音信号をオフするようにスイッチ部37を制御することができる。
【0068】
このようなループバック回路25の各構成要素を構成するためのハードウェアとしては、それぞれ公知のプロセッサや電子回路を用いることができる。
【0069】
次に、通話装置1において予め準備された複数の動作モード(小声適応モード、大声抑制モード、及びミックスモードを含む)について説明する。通話装置1は、それらの動作モードの何れかに基づき、気導レシーバ12で再生される側音オンオフおよび側音のレベルの少なくとも一方を制御することができる。
【0070】
小声適応モードでは、通話装置1は、骨導マイク11で収音された利用者の発声が不足している場合(すなわち、発声のレベルが比較的低い場合)に、気導レシーバ12で再生される側音を実質的に無効化する(すなわち、側音をオフまたは側音のレベルを実質的にゼロにする)。これにより、通話装置1は、側音を聞き取れなくなった利用者に発声音量が不足していることを通知することで、利用者に適切な音量での発声を促す(すなわち、より大きな発声を促す)ことができる。
【0071】
小声適応モードにおいて、コントローラ39は、第1音検出器38の検出結果に基づき、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVa1(dB)(第1閾値の一例)以下である場合にのみ、側音をオフにする(側音を無効化する一例)ようにスイッチ部37の動作を制御する。これにより、
図4(A)に示すように、骨導マイク11で収音された音のレベル(横軸参照)がVa1(dB)以下である場合、気導レシーバ12から出力される側音のレベル(縦軸参照)が実質的にゼロ(すなわち、ゼロまたは微少な値)に設定される。
【0072】
一方、コントローラ39は、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVa1(dB)を超えた場合、側音をオンにするようにスイッチ部37の動作を制御する。これにより、
図4(A)に示すように、気導レシーバ12からは、所定のレベルの側音が出力される。
【0073】
ここで、
図4(A)では、破線Lにより、ゲイン調整部36によって実行される標準的なゲイン調整に基づく側音の標準的な出力特性が示されている(
図4(B)、(C)についても同様)。小声適応モードにおいて、ゲイン調整部36は、骨導マイク11で収音された音のレベルがVa2(dB)以下である場合、側音信号を減衰させるようにゲイン調整を実行する。これにより、気導レシーバ12から出力される側音のレベルが標準的な出力レベル(破線Lを参照)から一定量低下する。一方、ゲイン調整部36は、骨導マイク11で収音された音のレベルがVa2(dB)を超えた場合、音のレベルVa2における側音のレベルをそのまま維持する(すなわち、側音の出力を一定とする)ように、ゲイン調整を実行する。
【0074】
例えば、小声適応モードによれば、周囲に他人が存在する場所(例えば、列車内などの交通機関)などの小声で通話することが好ましい通話環境において、利用者はどの程度の発声が適切であるのかを把握できる。また、小声適応モードによれば、周囲音が大きな通話環境(利用者自身の声を認識し難い状況)において、利用者はどの程度の発声が適切であるのかを把握できる。
【0075】
大声抑制モードでは、通話装置1は、骨導マイク11で収音された利用者の発声が過大である場合(すなわち、発声音量のレベルが比較的高い場合)に、気導レシーバ12で再生される側音のレベルを増大させる(すなわち、標準よりも大きな側音を出力する)。これにより、通話装置1は、側音によって利用者の発声を阻害して、利用者に適切な音量での発声を促す(すなわち、発声音量の抑制を促す)ことができる。
【0076】
大声抑制モードにおいて、コントローラ39は、第1音検出器38の検出結果に基づき、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVb1(dB)(第2閾値の一例)以下である場合にのみ、側音をオフにするようにスイッチ部37の動作を制御する。これにより、
図4(B)に示すように、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1(dB)以下である場合、気導レシーバ12から出力される側音のレベルが実質的にゼロ(すなわち、ゼロまたは微少な値)に設定される。
【0077】
一方、コントローラ39は、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVb1(dB)を超えた場合、側音をオンにするようにスイッチ部37の動作を制御する。これにより、
図4(B)に示すように、気導レシーバ12からは、所定のレベルの側音が出力される。
【0078】
大声抑制モードでは、ゲイン調整部36は、側音信号を増幅させるようにゲイン調整を実行し、気導レシーバ12から出力される側音のレベルを標準的な出力レベル(破線Lを参照)から一定量上昇させる。これにより、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1(dB)以上である場合、気導レシーバ12から標準よりも高いレベルの側音が出力される。
【0079】
ミックスモードでは、通話装置1は、利用者の発声状況(すなわち、発声音量のレベル)に応じて、小声適応モードおよび大声抑制モードを選択的に実行(すなわち、併用)する。ミックスモードでは、通話装置1は、
図4(C)に示すように、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1(dB)未満である場合、小声適応モードを実行する。また、ミックスモードでは、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1(dB)以上である場合、大声抑制モードを実行する。
【0080】
通話装置1の利用者は、通話相手との通話を開始する際に、所望の動作モードを選択することができる。例えば
図5に示すように、利用者は、信号処理装置3のタッチパネル40(入力装置の一例)に表示された動作モードの設定画面41において、所望の動作モード(ここでは、小声適応モード)を選択する操作を行うことができる。なお、利用者は、動作モードをオフする(すなわち、何れの動作モードも実行しない)ように選択することも可能である。また、通話装置1では、利用者の選択によらず、自動で動作モードが選択されてもよい。
【0081】
このように、通話装置1では、複数の動作モードを用いて利用者の発声状況に応じて側音の有無(すなわち、オンオフ)や側音のレベルを制御(すなわち、ゲインを調整)することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことができる。なお、例えば
図5に示したように、通話装置1では、各動作モードを選択する目的を利用者が理解可能なように、各動作モードに関する説明をディスプレイ等に表示するとよい。
【0082】
なお、通話装置1における各動作モードの選択方法は、
図5に示した動作モードの設定画面41の例には限定されない。例えば、設定画面41の変形例として、小声適応モードおよび大声自制モードの2つの項目のみが表示され、それら2つの項目を利用者がそれぞれ個別にオンオフできる構成であってもよい。その場合、利用者は、小声適応モードおよび大声自制モードを共にオンする操作を行うことにより、
図5に示した「ミックスモード」を実質的に選択したことになる。また、利用者は、小声適応モードおよび大声自制モードを共にオフする操作を行うことにより、
図5に示した「オフ」を実質的に選択したことになる。また、利用者による各動作モードの選択は、タッチパネル40の操作に限らず、ユーザが他の公知の入力装置(操作ボタンやキーボード等)を操作することによって行われてもよい。
【0083】
図6は、
図3に示した通話装置1の構成の第1変形例を示す機能ブロック図である。
図6に示した第1変形例では、
図3に示した通話装置1と同様の構成要素については、同一の符号が付されている。また、第1変形例に関し、以下で特に言及しない事項については、上述の第1実施形態に係る通話装置1と同様である。
【0084】
図6に示すように、第1変形例では、信号処理装置3のループバック回路25は、第2音検出器48(周囲音検出器の一例)を更に有する。第2音検出器48は、送話用伝送路22から送話信号を取得し、その送話信号に基づき、骨導マイク11によって収音された利用者の発声を除く周囲音のレベル(dB)を検出することができる。
【0085】
ゲイン調整部36は、第2音検出器48から検出結果を取得し、その検出結果に基づき送話用伝送路22からの送話信号に適用するゲインを微調整(すなわち、補正)することができる。例えば、ゲイン調整部36は、第2音検出器48によって検出された周囲音のレベルを所定の閾値と比較し、その周囲音のレベルが閾値を超えている場合、ゲインを初期値から増大させることができる。
【0086】
図7は、
図3に示した通話装置1の構成の第2変形例を示す機能ブロック図である。
図7に示した第2変形例では、
図3及び
図6にそれぞれ示した通話装置1と同様の構成要素については、同一の符号が付されている。また、第2変形例に関し、以下で特に言及しない事項については、上述の第1実施形態に係る通話装置1またはその第1変形例と同様である。
【0087】
図7に示すように、第2変形例では、受話用伝送路24における合成部33の上流側に音量調整部51が設けられる。音量調整部51は、受信部23からの受話信号に適用するゲインを調整することにより、受話信号に基づく音に関する音量を調整することができる。
【0088】
ゲイン調整部36は、音量調整部51から受話信号に適用されたゲイン(音量の調整度合いの一例)の情報を取得する。ゲイン調整部36は、上述のように第2音検出器48によって検出された周囲音のレベルによって微調整されたゲインを、音量調整部51からのゲインの情報に基づき、更に微調整(すなわち、補正)することができる。例えば、ゲイン調整部36は、受話信号に適用するゲインの調整(すなわち、受話信号の増幅または減衰)と連動させるように、送話用伝送路22からの送話信号に適用するゲインを調整することができる。これにより、例えば、気導レシーバ12で再生される通話相手の発声等の音(すなわち、側音以外の音)のレベルが大きくなると、その音のレベルに対応するように側音のレベルが大きくなる。なお、ゲイン調整部36は、第2音検出器48から検出結果または音量調整部51からのゲインの情報の一方に基づき、送話信号に適用するゲインを微調整してもよい。
【0089】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る通話装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図9は、第2実施形態に係る通話装置1の各動作モード((A)小声適応モード、(B)大声抑制モード、(C)ミックスモード)における側音の出力特性を示す説明図である。
図8に示した通話装置1では、上述の第1実施形態に係る通話装置1(第1変形例、第2変形例を含む)と同様の構成要素については、同一の符号が付されている。また、第2実施形態に係る通話装置1に関し、以下で特に言及しない事項については、上述の第1実施形態に係る通話装置1と同様である。
【0090】
図8に示すように、第2実施形態に係る通話装置1では、ループバック回路25は、ゲイン調整部36およびオートゲインコントローラ(以下、「AGC」という。)55を有する。AGC55は、第1実施形態に係る通話装置1のスイッチ部37、第1音検出器38、及びコントローラ39と同様に機能し得る。AGC55は、側音信号に適用するゲインを制御することにより、気導レシーバ12で再生される側音のレベルを制御することができる。例えば、AGC55は、ゲイン調整部36からの側音信号に適用するゲインを制御することにより、合成部33に入力される側音信号を実質的に遮断する(すなわち、実質的に側音をオフする)ことができる(側音を無効化する一例)。AGC55による側音信号に適用するゲイン制御は、骨導マイク11によって収音された音のレベルに応じて実行することができる。
【0091】
小声適応モードにおいて、AGC55は、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVa1'(dB)(第1閾値の一例)以下である場合にのみ、側音をオフにするように(すなわち、側音信号を減衰させるように)、側音信号にゲインを付加する。これにより、
図9(A)に示すように、骨導マイク11で収音された音のレベルがVa1'(dB)以下である場合、気導レシーバ12から出力される側音のレベルが実質的にゼロに設定される。
【0092】
AGC55は、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVa1'(dB)を超え、かつVa1(dB)以下である場合、側音信号の減衰を徐々に抑制する(すなわち、標準的な出力レベルに近づける)ように、側音信号に適用するゲインを制御する。また、AGC55は、音のレベルがVa1(dB)を超え、かつVa2(dB)以下である場合、ゲインの制御を停止する。さらに、AGC55は、骨導マイク11で収音された音のレベルがVa2(dB)を超えた場合、音のレベルVa2における側音のレベルをそのまま維持するように、ゲインを制御する。
【0093】
大声抑制モードにおいて、AGC55は、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVb1'(dB)(第2閾値の一例)以下である場合にのみ、側音をオフにするように(すなわち、側音信号を減衰させるように)、側音信号にゲインを付加する。これにより、
図9(B)に示すように、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1'(dB)以下である場合、気導レシーバ12から出力される側音のレベルが実質的にゼロに設定される。
【0094】
AGC55は、骨導マイク11によって収音された音のレベルがVb1'(dB)を超え、かつVb1(dB)以下である場合、側音信号の減衰を徐々に抑制する(すなわち、標準的な出力レベルに近づける)ように、側音信号に適用するゲインを制御する。また、AGC55は、音のレベルがVb1(dB)を超えた場合、ゲインの制御を停止する。
【0095】
大声抑制モードでは、ゲイン調整部36は、側音信号を増幅させるようにゲイン調整を実行し、気導レシーバ12から出力される側音のレベルを標準的な出力レベル(破線Lを参照)から一定量上昇させる。これにより、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1(dB)以上である場合、気導レシーバ12から標準よりも高いレベルの側音が出力される。
【0096】
ミックスモードでは、通話装置1は、利用者の発声状況に応じて、小声適応モードおよび大声抑制モードを選択的に実行する。ミックスモードでは、通話装置1は、
図9(C)に示すように、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1'(dB)未満である場合、小声適応モードを実行する。また、ミックスモードでは、骨導マイク11で収音された音のレベルがVb1'(dB)以上である場合、大声抑制モードを実行する。
【0097】
図10は、
図8に示した通話装置1の構成の第1変形例を示す機能ブロック図である。
図11は、側音遅延量と側音再生音量との関係における快適領域および不快領域を示す説明図である。
図10に示した第1変形例では、
図8に示した通話装置1と同様の構成要素については、同一の符号が付されている。また、第1変形例に関し、以下で特に言及しない事項については、上述の第2実施形態に係る通話装置1と同様である。
【0098】
図10に示すように、第1変形例では、信号処理装置3のループバック回路25は、音声抽出部61および遅延処理部62を更に有する。
【0099】
音声抽出部61は、送話用伝送路22からの送話信号から利用者の発声に関する音声信号を抽出する(すなわち、周囲音やエコー成分を排除する)ためのローパスフィルタを含む。音声抽出部61によって抽出された音声信号はゲイン調整部36に入力される。ゲイン調整部36は、音声抽出部61からの音声信号に適用するゲインを調整すること(送話信号の処理の一例)により側音信号を生成する。
【0100】
遅延処理部62は、大声抑制モードにおいて、AGC55からの側音信号に対して遅延処理を実行する。気導レシーバ12では、そのような遅延処理がなされた側音信号に基づく側音は、通常の側音(すなわち、遅延処理なしの側音)に比べて所定時間(例えば、200ms以上)遅れて再生される。気導レシーバ12における側音の遅延量と側音の再生音量との間には、
図11に示すような関係がある。通話装置1において利用者に適切な音量での発声を促す(例えば、発声の抑制を促す)必要がある場合、遅延処理部62は、側音の遅延量と側音の再生音量との組み合わせを、骨導マイクによって収音された音のレベルに示す不快領域に位置させるように遅延処理を実行するとよい。ただし、通話装置1において、遅延処理部62は省略されてもよい。
【0101】
図12は、
図8に示した通話装置1の構成の第2変形例を示す機能ブロック図である。
図12に示した第2変形例では、
図8及び
図10にそれぞれ示した通話装置1と同様の構成要素については、同一の符号が付されている。また、第2変形例に関し、以下で特に言及しない事項については、上述の第2実施形態に係る通話装置1またはその第1変形例と同様である。
【0102】
図12に示すように、第2変形例では、送話用伝送路22には、エコーキャンセル・ノイズキャンセル部71(エコーキャンセラ、ノイズキャンセラの一例)が設けられている。また、信号処理装置3のループバック回路25は、帯域拡張部72を更に有する。
【0103】
エコーキャンセル・ノイズキャンセル部71は、送話信号のエコー成分を除去または低減するエコーキャンセル処理と、ノイズ成分を除去または低減するノイズキャンセル処理とをそれぞれ実行する。ゲイン調整部36は、エコー成分およびノイズ成分がそれぞれ除去または低減された送話信号に適用するゲインを調整すること(送話信号の処理の一例)により側音信号を生成する。
【0104】
帯域拡張部72は、AGC55からの側音信号に対して帯域拡張処理(すなわち、側音の帯域拡張を行うための信号処理)を実行する。帯域拡張部72によって帯域拡張処理がなされた側音信号は合成部33に入力される。この帯域拡張処理により、気導レシーバ12で再生される側音がより自然な音声になる。ただし、通話装置1において、帯域拡張部72は省略されてもよい。
【0105】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示に係る通話装置は、利用者の発声状況に応じて側音の有無や側音のレベルを制御することにより、利用者に適切な音量での発声を促すことを可能とし、骨導マイクとレシーバとを備え、利用者の耳や頭部などに装着される通話装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0107】
1 :通話装置
2 :イヤホン
3 :信号処理装置
4 :信号線
5 :耳
9 :外装筐体
9A :ケース
9B :カバー
9C :開口
10 :ケーブルキャップ
11 :骨導マイク
12 :気導レシーバ
13 :内部筐体
13A:通路
13B:筒部
15 :マイクラバー
16 :先端ラバー
21 :送信部
22 :送話用伝送路
23 :受信部
24 :受話用伝送路
25 :ループバック回路
27 :側音用伝送路
31 :増幅部
33 :合成部
35 :増幅部
36 :ゲイン調整部
37 :スイッチ部
38 :第1音検出器
39 :コントローラ
41 :設定画面
48 :第2音検出器
51 :音量調整部
55 :AGC
61 :音声抽出部
62 :遅延処理部
71 :エコーキャンセル・ノイズキャンセル部
72 :帯域拡張部
【要約】
【課題】通話装置の利用者に適切な音量での発声を促す。
【解決手段】
通話装置1は、利用者の発声を収音して送話信号を生成する骨導マイク11と、相手装置から受信した受話信号に基づき音を再生するレシーバ12と、骨導マイク11からの送話信号を相手装置に向けて伝送する送話用伝送路22と、受話信号をレシーバ12に向けて伝送する受話用伝送路24と、送話用伝送路22及び受話用伝送路24の間に設けられ、送話信号を処理することにより生成された側音信号を受話信号に合成するためのループバック回路25と、を備え、ループバック回路25が、予め準備された複数の動作モードの何れかに基づき動作することにより、側音信号に基づきレシーバ12によって再生される側音のオンオフおよび側音のレベルの少なくとも一方を制御する。
【選択図】
図3