IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人山口大学の特許一覧 ▶ 地方独立行政法人山口県産業技術センターの特許一覧

<>
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図1
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図2
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図3
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図4
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図5
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図6
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図7
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図8
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図9
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図10
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図11
  • 特許-鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/02 20060101AFI20241115BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20241115BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C01G49/02 Z
C09K3/00 104Z
A61K8/02
A61K8/19
A61Q17/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020053314
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151941
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「酸化物半導体ナノ粒子を用いたゴム・樹脂の劣化を検知するマイクロカプセルの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 鈴子
(72)【発明者】
【氏名】前 英雄
(72)【発明者】
【氏名】猪野 陽佳
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-077503(JP,A)
【文献】特開昭61-289012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/02
C09K 3/00
A61K 8/02
A61K 8/19
A61Q 17/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中で鉄塩を加水分解し、前記加水分解後の溶液を透析する工程を含む紫外線吸収能を有する鉄イオン含有ゾルの製造方法。
【請求項2】
鉄塩が鉄の硝酸塩、塩化物又は硫酸塩である請求項1記載の鉄イオン含有ゾルの製造方法。
【請求項3】
水溶液中に炭酸水素ナトリウム又は水酸化ナトリウムを添加して鉄塩の加水分解を行う請求項1又は2記載の鉄イオン含有ゾルの製造方法。
【請求項4】
紫外線吸収能が、Fe 3+ イオン濃度を(0.0731/2)Mとしたときの波長546nm以下における光の吸光度が2以上であり、かつFe 3+ イオン濃度を(0.0731/16)Mとしたときの波長426nm超における光の吸光度が2未満である請求項1~3のいずれかに記載の鉄イオン含有ゾルの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法により鉄イオン含有ゾルを製造し、製造した前記鉄イオン含有ゾルを乾燥する紫外線吸収剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法により鉄イオン含有ゾルを製造し、製造した前記鉄イオン含有ゾルと水溶性バインダーとを含む被覆液を調製して、前記被覆液により発光機能を有する粒子を被覆する、又は製造した前記鉄イオン含有ゾルを乾燥させて乾燥物を得て、前記乾燥物と水溶性バインダーとを含む被覆液を調製して、前記被覆液により発光機能を有する粒子を被覆する、
被覆粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法により鉄イオン含有ゾルを製造し、製造した前記鉄イオン含有ゾルと化粧水とを混合する化粧品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法により鉄イオン含有ゾルを製造し、製造した前記鉄イオン含有ゾルとバインダーとを混合する紫外線吸収塗料の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の製造方法により紫外線吸収塗料を製造し、製造した前記紫外線吸収塗料を乾燥する紫外線吸収膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収能を有する鉄イオン含有ゾル、前記鉄イオン含有ゾル又はその乾燥物を含む紫外線吸収剤、前記紫外線吸収剤を含む化粧品、前記鉄イオン含有ゾルを含む紫外線吸収塗料、前記鉄イオン含有ゾルの乾燥物を含む紫外線吸収膜、前記鉄イオン含有ゾルの乾燥物の被覆層を有する被覆粒子及び前記鉄イオン含有ゾルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球に届く紫外線の大部分はUVA波(320~400nm)であり、肌の真皮層に達し、シワやたるみを生じさせる光老化の原因として知られており、有効な紫外線吸収剤の開発が求められている。また、様々な材料を紫外線による劣化から守る目的でも、紫外線吸収剤が開発されている。有機系紫外線吸収剤は、それ自身が紫外線によって変化し経年とともに着色する問題がある。無機系紫外線吸収剤は有機物に比べて化学的安定性が高く、酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物粒子が利用されているが、高分子材料への相溶性の問題がある。また、酸化チタンや酸化亜鉛の場合、400nm近傍の近紫外線を100%吸収することはできないので、UVA波を100%吸収する紫外線吸収剤の開発が望まれている。さらに、生化学や分析化学の分野では、蛍光性色素を用いた多くの研究が行われており、新規色素の開発も盛んである。蛍光標識に用いる色素の多くは、可視光(特に青色部分)で励起し、発光する。例えば、蛍光分析用試薬であるローダミンBの励起波長は555nmであり、様々なイメージングに用いられているBODIPY色素の励起波長も500~600nmである。これらの物質を遮光保存して退光を防ぐためには、可視光領域も遮蔽できる物質の開発が必要である。しかし、これらの特性を満たす紫外線吸収剤は開発されていなかった。例えば、特許文献1では、種々の酸化チタンの分光曲線が示されているが(図1)、いずれも400nm近傍では吸収率が低下しており、さらに400nm以上の可視光領域で吸収を示すものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-221411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、紫外線、特にUVAを吸収でき、各種用途に使用できる紫外線吸収材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、UVAの吸収に優れる材料の開発を開始した。開発に際して、安全性の点から無機系の材料と水をベースとした材料の調製に取り組んだところ、鉄イオンを含む水溶液を加水分解後透析して調製したゾルが、UVAをほぼ100%吸収することを見いだした。しかも、このゾルは濃度によって吸収できる可視光領域が大きく異なるものであり、濃度を変えることで600nmまでの光を吸収できるものであった。このゾルは、安全性の高い鉄系の材料と水をベースとしたものであるので、化粧品や日焼け止めに使用でき、また600nmまでの光を吸収できるので、多くの蛍光色素を励起光から保護して光退色を防止できるものであった。さらに、このゾルは水溶性のバインダーと均一に混合できるので、発光物質(特に蓄光物質)にコーティングすると発光を防止できるが、水に触れるとゾルが溶出して発光物質が露出することにより、発光を目視で確認できるので、水漏れによるコンクリートやプラスチック材料などの構造物や部品の劣化検出に応用できるものであった。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)溶媒が水であり、前記溶媒中に酸化鉄前駆体が分散している、紫外線吸収能を有する鉄イオン含有ゾル。
(2)鉄塩の水溶液中で前記鉄塩を加水分解し、加水分解後の溶液を透析することにより得られることを特徴とする上記(1)記載の鉄イオン含有ゾル。
(3)上記(1)若しくは(2)記載の鉄イオン含有ゾル、又は上記(1)若しくは(2)記載の鉄イオン含有ゾルの乾燥物を含む紫外線吸収剤。
(4)上記(3)記載の紫外線吸収剤を含む化粧品。
(5)上記(1)又は(2)記載の鉄イオン含有ゾル及びバインダーを含む紫外線吸収塗料。
(6)上記(1)又は(2)記載の鉄イオン含有ゾルの乾燥物及びバインダーを含む紫外線吸収膜。
(7)上記(1)又は(2)記載の鉄イオン含有ゾルの乾燥物を含む被覆層を表面に有する被覆粒子。
(8)鉄イオン含有ゾルの乾燥物及び水溶性バインダーを含む被覆層が発光機能を有する粒子表面に形成されたことを特徴とする上記(7)記載の被覆粒子。
(9)水溶液中で鉄塩を加水分解し、前記加水分解後の溶液を透析する工程を含む紫外線吸収能を有する鉄イオン含有ゾルの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の鉄イオン含有ゾルは、紫外線、特にUVAの吸収効果に優れ、濃度により吸収波長領域を変えることができ、可視光領域の光も吸収することができる。本発明の鉄イオン含有ゾルを利用した紫外線吸収剤、化粧品、紫外線吸収塗料及び紫外線吸収膜は、紫外線、特にUVAの吸収効果に優れる。本発明の鉄イオン含有ゾルを利用した被覆粒子は、紫外線による劣化を抑制することができ、発光粒子を被覆した場合は、発光が必要なときに発光させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1で測定された吸光スペクトルを示す図である。
図2図2は、比較例1で測定された吸光スペクトルを示す図である。
図3図3は、実施例1で得られたゾル中の粒子のTEM像である。
図4図4は、実施例1で得られたゾル中の粒子の粒度分布を示す図である。
図5図5は、実施例2で得られたゾルを乾燥させたもののX線回折パターンである。
図6図6は、実施例2で得られたゾルを乾燥し焼成させたもののX線回折パターンである。
図7図7は、実施例3で作製した複合膜の写真である。図7(a)は室内灯照射下の状態を示す写真であり、図7(b)は紫外線照射下の状態を示す写真である。
図8図8は、比較例2で作製した複合膜の写真である。図8(a)は室内灯照射下の状態を示す写真であり、図8(b)は紫外線照射下の状態を示す写真である。
図9図9は、実施例4で使用したα-Vega粒子の光学顕微鏡像である。図9(a)は室内灯照射下の状態を示す像であり、図9(b)は紫外線照射下の状態を示す像である。
図10図10は、実施例4で作製した被覆粒子の光学顕微鏡像である。図10(a)は室内灯照射下の状態を示す像であり、図10(b)は紫外線照射下の状態を示す像である。
図11図11は、実施例4で作製した被覆粒子の光学顕微鏡像である。
図12図12(a)~(d)は、実施例4で作製した被覆粒子を水と接触させたときの時間経過による変化を示す光学顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の鉄イオン含有ゾルは、溶媒が水であり、前記溶媒中に酸化鉄前駆体が分散している紫外線吸収能を有するゾルである。本発明の鉄イオン含有ゾルは、鉄塩の水溶液中で前記鉄塩を加水分解し、加水分解後の溶液を透析することにより得ることができる。本発明における鉄塩としては、水に溶解して水溶液中で加水分解されるものであれば特に制限されないが、例えば、鉄の硝酸塩、塩化物、硫酸塩等を挙げることができる。2価の鉄イオンは、特定の条件下の場合を除き、水溶液中での加水分解及び透析の過程で3価の鉄イオンに変わるため、鉄塩としては2価の鉄塩でも3価の鉄塩でもよい。本発明の鉄イオン含有ゾルでは、3価の鉄によりゾルが形成されているので、始めから3価の鉄塩を原料として使用することが好ましい。具体的化合物としては、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、これらの水和物等を挙げることができる。これらの鉄塩を水に溶解させて鉄塩の水溶液を調製する。調製した水溶液に水溶液中の水素イオン濃度を下げて加水分解を促進するために塩基を添加する。添加する塩基としては特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。塩基の添加は、沈殿が生じない程度に少量ずつ添加することが好ましい。また、塩基の添加は、沈殿が生じるのを抑制するために撹拌しながら行うのが好ましい。急激なpH変化を抑制するためには、強塩基よりも強塩基と弱酸の塩を使用することができる。次に、添加後の溶液を透析する。透析方法は特に制限されず、例えば一般の透析方法を使用できる。添加後の溶液を入れた半透膜の袋を透析水中に浸漬させる方法でもよい。透析水としては水が好ましく、例えば、純水、超純水等を挙げることができる。また、純水、超純水等に酸等を加えてpHを調整した水を使用してもよい。透析水に硝酸等の酸を加えてpHを調整し(例えばpH約3.5等)、透析水のpHと前記塩基添加後の溶液のpHとの差を小さくしてもよいが、中性の水を使用しても本発明の鉄イオン含有ゾルを得ることができる。半透膜の袋を浸漬させる透析水は、必要に応じて透析中に交換してもよい。透析を行うことにより半透膜を通して添加後の溶液中に含まれる水素イオンや酸由来の陰イオンが除去される。透析に使用する半透膜は特に制限されないが、例えば、分画分子量が3500程度の半透膜でも十分に本発明の鉄イオン含有ゾルを得ることができる。鉄イオンの水溶液は、強酸性下で加水分解すると、ヒドロキシ錯体のようなOHを含んだ構造から、酸化物に近い構造へと変化し、ナノ粒子になる。強酸性下では、粒子表面に水素イオンが吸着しているので、各粒子の表面間で反発が働き高分散状態になる。これを透析膜に入れて、放置し、時々透析水を替えてやる方法等で透析すると、粒子表面の水素イオンが透析膜外へ放出され、ナノ粒子が会合していく。こうして本発明の鉄イオン含有ゾルが得られる。ゾル中の鉄イオンは、[Fe(HO)3+、[Fe(OH)(HO)52+、[Fe(OH)(HO)の形態で存在していると考えられる。得られた鉄イオン含有ゾルは、乾燥させて加熱すると酸化鉄となる。本発明において、溶媒中に分散している酸化鉄前駆体とは、加熱すると酸化鉄となる分散粒子のことである。ここで、酸化鉄には組成や結晶構造が異なるものがあるが、本発明における酸化鉄前駆体は、加熱条件を調整することにより安定なα-Feとなるものが好ましい。本発明の鉄イオン含有ゾルにおける鉄イオンの含有量は、必要とする光の吸収波長領域に応じて適宜選択できゾル状態を維持できる含有量であれば特に制限されないが、例えば、溶媒を含めたゾル全体量に対して1~30質量%を例示できる。
【0010】
本発明の鉄イオン含有ゾルは、紫外線吸収能を有し、320~400nmの波長の紫外線(UVA)を吸収することができる。さらに、ゾル中の酸化鉄前駆体濃度を変えることにより吸収波長領域を変えることができ、UVAの波長領域から600nmの波長までの光を吸収することができる。そのため、紫外線吸収剤の用途に好適に用いることができる。本発明の紫外線吸収剤は、本発明の鉄イオン含有ゾルを含む。ここで含むとは、紫外線吸収剤が鉄イオン含有ゾルのみからなる場合、及び紫外線吸収剤が鉄イオン含有ゾルに加えて他の成分を含有する場合の両方を意味する。本発明の鉄イオン含有ゾル及び紫外線吸収剤は、UVAの吸収効果に優れるので、UVAの吸収やUVAの遮光が必要な用途に使用することができ、例えば、日焼け止め、化粧品、紫外線遮光包装等の用途を挙げることができる。本発明の鉄イオン含有ゾルは、水をベースの溶媒としているので、化粧品の場合、例えば化粧水に容易に混ぜることができ、エマルジョンにして使用することもできる。また、本発明の鉄イオン含有ゾルは酸化鉄前駆体を含有するが、酸化鉄は化粧品としての使用が許されている化学物質であり、さらに水をベースとしており、加えて透析により酸成分が除去されているので安全である。紫外線遮光包装は、薬剤等の紫外線による内容物の劣化が問題となる場合の包装などに使用できる。さらに、本発明の鉄イオン含有ゾルは、紫外線を吸収できるだけでなく600nm程度の波長までの可視光を吸収できるため、可視光で退光する物質の保存用の包装、容器等の用途にも使用できる。例えば、蛍光標識に用いる蛍光性色素の多くは、可視光(特に青色部分)で励起し、発光する。蛍光分析用試薬であるローダミンBの励起波長は555nmであり、様々なイメージングに用いられているBODIPY色素の励起波長は500~600nmである。本発明の鉄イオン含有ゾルを含む紫外線吸収剤は、このような色素の退光を防ぐために使用することができる。また、本発明の鉄イオン含有ゾルを乾燥させた乾燥物を含む紫外線吸収剤も同様の用途に使用することができる。本発明における鉄イオン含有ゾルの乾燥物とは、本発明の鉄イオン含有ゾルの溶媒を除去して、固形分である酸化鉄前駆体を分離したものであり、分離された固形分はアモルファス構造のものである。本発明の鉄イオン含有ゾル及びその乾燥物は、紫外線遮光包装紙、容器等あるいは蛍光性色素の包装紙、容器等に塗布したり、混ぜ込むことにより使用することができる。
【0011】
本発明の鉄イオン含有ゾルは水を溶媒としているため、バインダーとなる任意の水溶性高分子と均一に混ぜることができる。そのため、本発明の鉄イオン含有ゾルは、バインダーと混合することにより紫外線吸収塗料として用いることができる。本発明の塗料は、本発明の鉄イオン含有ゾルとバインダー以外の成分を含んでもよい。塗料中の鉄イオン含有ゾルの含有量は、目的とする光の吸収波長に応じて適宜選択でき特に制限されないが、例えば、塗料の全体量に対して0.1~3質量%を例示することができる。また、本発明の鉄イオン含有ゾルとバインダーとを混合して乾燥させることにより膜を形成することができる。すなわち、本発明の紫外線吸収膜は、本発明の鉄イオン含有ゾルの乾燥物及びバインダーを含む。ここで、紫外線吸収膜とは、基材の表面に塗布して基材に密着して形成され基材と共に取り扱われる膜、及び膜単体として取り扱うことのできるいわゆるフィルム状の膜を含む。本発明の紫外線吸収膜は、本発明の鉄イオン含有ゾルとバインダー以外の成分を含んでもよい。前記バインダーとしては、本発明の鉄イオン含有ゾルと混合できるものであれば特に制限されないが、均一に混合する観点から水溶性高分子が好ましく、水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。紫外線吸収膜を作製するときの乾燥温度はバインダーの種類等に応じて適宜選択でき、膜を形成できる温度であれば特に制限されないが、例えば、40~120℃を例示することができる。水溶性高分子は水に溶解するが、例えばメチルセルロースのように溶解させるには水を加温しなければならないものがある。このような水溶性高分子をバインダーとして使用すれば、常温で水と接するような用途においても本発明の複合膜は劣化せずに紫外線吸収膜として、対象物を保護する観点からは紫外線遮蔽膜として使用できる。本発明の紫外線吸収塗料における鉄イオン含有ゾルとバインダーとの混合比は特に制限されないが、例えば、質量比でゾル中の鉄イオン:バインダーが1:8~1:100を例示することができる。本発明の紫外線吸収膜における鉄イオン含有ゾルの乾燥物とバインダーとの混合比は特に制限されないが、例えば、質量比でゾルの乾燥物:バインダーが1:3~1:10を例示することができる。本発明の紫外線吸収塗料及び紫外線吸収膜は、例えば、紫外線及び/又は可視光遮蔽容器等に塗布する、膜で覆う等の用途に使用することができる。本発明の紫外線吸収膜は、他の膜と複合化して使用することもできる。また、本発明の紫外線吸収膜は、色素や発光粒子等の他の機能性粒子を含有してもよい。機能性粒子を含有する膜を鉄イオン含有ゾルとバインダーで形成した膜の上に形成してもよく、この場合機能性粒子に対する複合化された膜の上面及び下面からの保護力が向上する。
【0012】
本発明の鉄イオン含有ゾルは微細なナノ粒子が分散したゾルであるため、粒子のような細かな材料の被覆に好適に使用することができる。本発明の鉄イオン含有ゾルとバインダーを混合した混合液(被覆液)に、被覆対象となる各種粒子を浸漬して乾燥することにより粒子の表面に鉄イオン含有ゾルの乾燥物を含む被覆層を形成することができる。前記被覆層を形成することにより各種粒子の紫外線や可視光による劣化を防ぐことができる。被覆液に使用するバインダーとしては、上記紫外線吸収塗料や紫外線吸収膜の場合と同様のバインダーを使用することができる。バインダー成分を析出させるために、アルコールを添加してもよく、アルコールとしては、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)等を挙げることができる。さらにゾル中の粒子同士の凝集を防止するための離型剤として金属石鹸を添加してもよく、金属石鹸としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等を挙げることができる。被覆される各種粒子としては特に制限されないが、例えば、蛍光性色素、蓄光顔料、無機酸化物等を挙げることができる。被覆液には、鉄イオン含有ゾルの凝集を抑えるために、アニオン性界面活性剤を添加してもよく、アニオン性界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム等を挙げることができる。被覆液における各種成分の混合量(混合割合)は、鉄イオン含有ゾル100質量部に対して、バインダーは1~5質量部、バインダーを析出させるためのアルコールは10~100質量部、金属石鹸は1~20質量部、アニオン性界面活性剤は1~5質量部を例示することができる。
【0013】
本発明の鉄イオン含有ゾルと、常温近くの温度の水に溶けやすい水溶性バインダーとを使用して被覆液を調製し、この被覆液により粒子を被覆すると、被覆粒子が水に接触するまでは被覆内部の粒子に紫外線や紫外線近くの可視光が届かない。しかし、被覆粒子が水に接触すると被覆層中のバインダーが水に溶けだし、そのため固定されなくなった鉄イオン含有ゾルの乾燥物も水中に分散していく。そのため、被覆内部の粒子に紫外線や紫外線近くの可視光が届くようになる。この性質を利用すると、本発明の被覆粒子はコンクリート、プラスチック材料等の構造物や部品の劣化検出材料として使用できる。蛍光物質、蓄光物質等の発光物質の粒子(発光機能を有する粒子)を前記被覆液で被覆する。こうして得た被覆粒子をコンクリート、プラスチック材料等に予め混ぜ込んで構造物や部品を作製する。経年劣化あるいは水の浸食による劣化により構造物や部品に割れ目ができると、この割れ目に入り込む水と構造物や部品内部の被覆粒子が接触し被覆層が剥がれることにより発光粒子が発光するようになる。これにより割れ目の発生を検出することができる。すなわち、本発明の被覆粒子は、構造物劣化検出用の被覆粒子として使用できる。また、被覆粒子を構造物や部品の表面に塗布する又は表面近くに埋め込むことにより、構造物や部品の表面に水が接触すると被覆粒子の被覆層が剥がれ発光粒子が発光するようになる。これにより被覆粒子を塗布又は埋め込んだ構造物や部品の近くで水漏れが発生し、この水が被覆粒子のある部分に垂れたり流れたりしてきたことが分かり、水漏れの検出ができる。すなわち、本発明の被覆粒子は、漏水検出用の被覆粒子として使用できる。本発明の被覆粒子は、このように構造物等の劣化検出や老朽化した構造物等からの水漏れ検出の用途に好適に使用できる。発光機能を有する粒子としては、本発明における鉄イオン含有ゾルの乾燥物の吸収波長領域内に励起光があるものであれば特に制限されず、例えば励起波長が、紫外線領域内、紫外線領域から450nmの範囲内、紫外線領域から500nmの範囲内、紫外線領域から550nmの範囲内、紫外線領域から600nmの範囲内等にあるものを挙げることができる。また、発光機能を有する粒子としては、蓄光機能を有する粒子が好ましい。蓄光機能を有する粒子であれば、被覆が剥がれ光にさらされた後、光が当たらなくなっても発光が持続できる。構造物劣化検出用の被覆粒子及び漏水検出用の被覆粒子において使用する水溶性バインダーとしては、常温近くの温度の水に溶けやすい水溶性バインダーだけでなく、使用環境に応じて接触が想定される水の温度により溶解するバインダーを用いてもよい。構造物劣化検出用の被覆粒子及び漏水検出用の被覆粒子は、例えば、本発明の鉄イオン含有ゾルとバインダーを混合した混合液(被覆液)に、発光粒子を浸漬させることにより調製することができる。混合液には必要に応じて、上記のアルコール、金属石鹸及び/又はアニオン性界面活性剤を添加することができる。また、本発明の鉄イオン含有ゾルと水溶性バインダーで形成した膜中に発光粒子を分散させても、膜の表面が水との接触により剥がれていくことにより前記被覆粒子の場合と同様の働きをさせることができる。
【0014】
[実施例1]
Fe(NO・9HO(4.04g)を水に溶かして、50mLメスフラスコで定容して0.2M Fe(NO水溶液を調製した。また、NaHCO(1.008g)を水に溶かして、50mLメスフラスコで定容して0.24M NaHCO水溶液を調製した。Fe(NO水溶液を三角フラスコに移し、500rpmでスタラーにより攪拌しながらNaHCO水溶液を3mL/minの速さで滴下した。12cmにカットした半透膜(分画分子量3500、幅45mm)の袋を4袋用意し、滴下後の液をそれぞれ25mLずつ入れ、1Lの超純水(メルクミリポリアMilli-Q Integral MTで製造)入りのビーカーに5時間漬けて透析した。透析水(超純水)は1時間ごとに交換した。こうして本発明のゾルを調製した。調製したゾルを水で100倍に希釈し、ICP(誘導結合プラズマ発光分光分析装置:Agilent Technologies 5110 ICP-OES)で濃度を測定した。その結果、調製したゾルのFe3+イオン濃度は0.0731Mであり、pHは2.7であった。調製したゾルと、調製したゾルを2倍、4倍、8倍、16倍、32倍にそれぞれ水で希釈した水溶液の吸収スペクトルを測定した(紫外可視分光光度計:島津製作所製、UV-1800)。測定された吸収スペクトルを図1に示す。図1に示されるように、希釈によって吸収端のシフトが観察された。図1の吸収スペクトルは、600nmにおける吸光度の高い方から順に調製したゾル(希釈前)、2倍希釈、4倍希釈、8倍希釈、16倍希釈、32倍希釈である。200~350nmでは、いずれの濃度においても吸光度は3以上であった。2倍、4倍、32倍に希釈した際のゾルのpHは、それぞれ2.9、3.1、4.0であった。
【0015】
[比較例1]
Fe(NO・9HO(0.59g)を20mLの水に溶かして、0.0731M硝酸鉄水溶液を調製した。調製した水溶液と、調製した水溶液を実施例1と同様に2倍、4倍、8倍、16倍、32倍にそれぞれ水で希釈した水溶液の吸収スペクトルを測定した。測定された吸収スペクトルを図2に示す。図2の吸収スペクトルは、450nmにおける吸光度の高い方から順に希釈前、2倍希釈、4倍希釈、8倍希釈、16倍希釈、32倍希釈である。
【0016】
図1図2の比較から、実施例1で得られた本発明のゾルでは光の吸収能力が増大していることがわかる。すなわち、実施例1で得られたゾルの場合には、希釈なしでは、750nmから吸収が立ち上がり、575nmでは吸光度2(99%光を吸収。透過光は1%)を示す。[表1]に各希釈割合の場合において吸光度2となる波長を示す。比較例1の硝酸鉄水溶液の場合、希釈なしでは吸光度2になるのは397nmである。これは実施例1で得られたゾルを32倍に希釈した場合とほぼ同程度の吸収特性であり、このことからも、実施例1で得られたゾルはより低濃度でも高い吸収特性を示すことがわかる。通常イオン種による光吸収は濃度に比例する。図2をみると、450nm付近のショルダーピークの吸光度は濃度におよそ比例して変化している。一方、図1では、濃度により吸収の立ち上がりの位置が異なっており、本発明のゾルは濃度によって吸収できる光の波長領域を変化させることができる。実施例1で得られたゾルを水で希釈してFe3+イオン濃度で2mMとして、カーボン支持膜付き銅メッシュ上で乾燥後の透過型電子顕微鏡画像(日本電子社製、JEM-210)を図3に示す。数ナノメートルサイズの微粒子の凝集体が観察された。また、実施例1で得られたゾルの粒度分布をレーザー回折粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製)で測定した結果を図4に示す。平均粒子径は20nmと算出できた。
【0017】
【表1】
【0018】
[実施例2]
Fe(NO・9HO(7.57g)を水に溶かして、0.0937M Fe(NO水溶液100mLを調製した。NaHCO(2.016g)を水に溶かして、0.24M NaHCO水溶液100mLを調製した。また、60%HNO(0.76mL)を水で100mLに希釈して、pH1のHNOを調製した。0.0937M Fe(NO水溶液100mLを250rpmでスタラーにより攪拌しながら、0.24M NaHCO水溶液100mLを滴下漏斗により3mL/minの速さで滴下した。滴下により、橙色から赤黒色に変化した。滴下後、そのままの攪拌速度で2時間攪拌した。実施例1と同様の半透膜の袋を8袋用意し、滴下後の液をそれぞれ25mLずつ入れ、1Lの透析水入りのビーカーに2時間漬けて透析した。透析水としては、pH1のHNOに水を加え、pHを3.5にしたものを使用し、透析水は1時間ごとに交換した。こうして本発明のゾルを調製した。得られたゾルのFe3+イオン濃度はICP測定により0.069Mであった。得られたゾルを乾燥させて得た粉末のX線回折パターン(Rigaku MiniFlex 600)を図5に示す。明確なピークはなくアモルファス構造であった。乾燥により得られた粉末0.36gを、24分かけて400℃まで昇温し、400℃で11時間36分保持し、その後、1時間かけて600℃まで昇温後、600℃を12時間保持することにより焼成した。得られた粉末のX線回折パターンを図6に示す。焼成によりα-Feが生成することが分かった。従って、本発明のゾルは、α-Feの前駆体ゾルである。
【0019】
[実施例3]
(紫外線吸収膜の作製)
実施例1と同様の手順で、0.04M鉄イオン含有ゾルを調製した。このゾル20mLにメチルセルロース(MC400)を0.4g(鉄イオン含有ゾルに対して2質量%)加え、湯浴で55℃まで加熱して分散させた後、超音波にかけて氷浴中で攪拌してメチルセルロースを溶かした。こうして調製したゾルとメチルセルロースの均一な混合液を作製した。この混合液にα-Vega(0.2g)を加え、攪拌して分散させた。得られた分散液を疎水化処理したシャーレ(直径:約9cm)にキャストして40℃で乾燥させた。得られたフィルムを1cm×3cmに切った。その様子を図7に示す。図7(a)は室内灯照射下の状態であり、図7(b)は紫外線照射(ペン型UVライト:Mos-Cure(登録商標) mini 365)下の状態である。α-Vega(株式会社エルティーアイ社製、品番GDK13100EP、耐水性、粒径:100μm)は市販されている蓄光顔料であり、アルミン酸ストロンチウム、ユウロピウム及びジスプロシウムからなる希土類系蓄光顔料である。α-Vegaは、250~480nmの光で励起され、530nmに発光極大波長を有する緑色の発光を示す。
【0020】
[比較例2]
鉄イオン含有ゾルの代わりに水を使用して実施例3と同様にして、メチルセルロースとα-Vegaの複合フィルムを作製した。その様子を図8に示す。図8(a)は室内灯照射下の状態であり、図8(b)は実施例3と同様の紫外線照射下の状態である。
【0021】
図8(b)から分かるように、メチルセルロースとα-Vegaの複合フィルムは、紫外線を照射すると緑色に発光した。一方、図7(b)に示されるように、メチルセルロースとα-Vegaに本発明の鉄イオン含有ゾルを加えて作製した膜では、紫外線を照射しても発光しなかった。これは、膜中に均一に分散した鉄イオン含有ゾルの乾燥物が250~480nmの光を吸収し、α-Vegaに励起光が届かなかったためと考えられ、本発明の鉄イオン含有ゾルとメチルセルロースとで形成される膜が、紫外線吸収膜として、対象物を保護する観点からは紫外線遮蔽膜として優れた吸収性能及び遮蔽性能を有することが示され、さらに、紫外線領域だけでなく可視光領域の光も吸収することが示されている。
【0022】
[実施例4]
(鉄イオン含有ゾルを用いた蓄光顔料の被覆)
ドデシル硫酸ナトリウムのエタノール溶液(0.05g/10ml)にα-Vega(株式会社エルティーアイ社製、品番GDK13060WP、耐水性、粒径:30μm)(1g)を加え攪拌した。実施例1で調製した本発明のゾル(2mL)を追加して攪拌した。攪拌しながら100℃で乾燥し、その後室温まで冷却して5%PVA溶液(1g)を加えて撹拌し、さらにIPA溶液(10mL)を加えて撹拌し、次に離型剤であるステアリン酸鉛(0.2g)を加えて撹拌した。その後、撹拌しながら100℃まで加熱して乾固して、α-Vegaを本発明のゾルを使用して被覆した粒子を得た。図9に使用したα-Vegaの光学顕微鏡による観察像を、図10に実施例4の処理により得られた粒子の光学顕微鏡による観察像を示す。図9(a)及び図10(a)は室内灯照射下の状態であり、図9(b)及び図10(b)は紫外線照射下の状態である。図11及び図12は、実施例4の処理により得られた被覆粒子が水に触れたときの変化を示す光学顕微鏡による観察像である。図11は水に触れる前の様子を示している。図12(a)~(d)は、スライドガラスの上に水滴を置き、その上に被覆粒子を落として時間の経過による変化を示す光学顕微鏡による観察像である。図9(b)から分かるように、処理前のα-Vegaは紫外線照射下で緑色に発光した。一方、図10(b)から分かるように、本発明のゾルを使用して被覆した被覆粒子は、紫外線照射下で発光しなかった。これは、α-Vega粒子の表面を本発明のゾルの乾燥物が被覆し、この被覆層が250~480nmの光を吸収し、α-Vega粒子に励起光が届かなかったためと考えられる。このように、本発明のゾルを使用した被覆層は優れた紫外線吸収性能を有し、被覆物(被覆される対象物)を保護する観点からは優れた紫外線遮蔽性能を有する。図12から分かるように、(a)から(d)へと時間が経過するに伴い、緑色の発光が強くなっている。これは、被覆層のバインダーであるPVAが水に溶けだし、それに伴いゾル乾燥物も水中に分散していくことによって、被覆層が剥がれたためと考えられる。このように本発明の被覆粒子はバインダーとして水に溶けだしやすいものを使用すると、水に接触するまでは被覆物を紫外線から保護し、水に接触すると被覆物の特性を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ゾル、塗料、基材上の膜、フィルム、粒子への被覆といった様々な形態でUVAの吸収やUVAの遮光が必要な用途に好適に使用することができ、またUVAのみでなく600nm程度の光の吸収も可能とできるので、例えば、日焼け止め、化粧品、遮光包装、劣化検出材、水漏れ検出材等の用途に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12