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特許7588345酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法
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  • 特許-酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法 図1
  • 特許-酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 11/00 20060101AFI20241115BHJP
   C30B 29/16 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C30B11/00 Z
C30B29/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021013095
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116758
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】干川 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】太子 敏則
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓実
(72)【発明者】
【氏名】大塚 美雄
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-090403(JP,A)
【文献】特開平11-292681(JP,A)
【文献】特開平06-293599(JP,A)
【文献】特開2004-262742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 11/00
C30B 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直ブリッジマン法を適用した酸化ガリウム結晶の製造装置であって、
耐熱材により構成された炉本体と、
前記炉本体の底部を上下方向に貫通して前記炉本体内に延設されて、上下動自在に構成されたるつぼ受軸と、
前記るつぼ受軸上に配置されて、酸化ガリウム結晶の原料を収容するるつぼと、
前記るつぼの周囲に配設されて、前記るつぼを加熱する本体ヒータと、を備え、
酸化ガリウム結晶を製造するための前記炉本体の下方には酸化ガリウム結晶を徐冷するための徐冷室が設けられ、
前記徐冷室は、前記炉本体とは別室の、該炉本体の炉内空間よりも容量の小さい空間として、該炉内空間に連通可能に設けられていること
を特徴とする酸化ガリウム結晶の製造装置。
【請求項2】
前記徐冷室には、前記るつぼを徐冷する徐冷ヒータが配設されていること
を特徴とする請求項1記載の酸化ガリウム結晶の製造装置。
【請求項3】
前記徐冷ヒータは、1500℃~1700℃の耐熱性を有する材質により構成された抵抗加熱ヒータであること
を特徴とする請求項2記載の酸化ガリウム結晶の製造装置。
【請求項4】
前記本体ヒータは、1800℃~1900℃の耐熱性を有する材質により構成された抵抗加熱ヒータであること
を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化ガリウム結晶の製造装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の酸化ガリウム結晶の製造装置を用いた酸化ガリウム結晶の製造方法であって、
酸化ガリウム結晶の原料を収容した前記るつぼを前記本体ヒータにより1795℃を超える温度で加熱して酸化ガリウム結晶の原料を融解させて、次いで前記るつぼ受軸を介して前記るつぼを下降させて原料融液から酸化ガリウムの単結晶を育成した後、
前記炉内空間の温度を1000℃~1200℃まで低下させ、
次いで前記るつぼ受軸を介して前記るつぼを下降させて前記るつぼを1000℃~1200℃に保持した前記徐冷室内に搬入し、
次いで前記るつぼを前記徐冷室内で徐冷すること
を特徴とする酸化ガリウム結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ガリウム結晶の製造装置および酸化ガリウム結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイス用ワイドギャップ半導体等として注目される酸化ガリウムの単結晶(以下、「酸化ガリウム結晶」と表記する場合がある)を製造する装置として、VB法(垂直ブリッジマン法)を適用した酸化ガリウム結晶の製造装置が知られている(特許文献1:特開2017-193466号公報)。
【0003】
VB法では、垂直方向の温度勾配を利用する。具体的に、特許文献1記載の酸化ガリウム結晶の製造装置の場合、炉本体の炉内空間には酸化ガリウム結晶の原料(結晶原料)を収容したるつぼが上下動自在に構成されたるつぼ受軸上に配置されている。また、るつぼの周囲には鉛直方向に延設されたヒータが複数配設されている。これによれば、炉内空間のるつぼ周辺に、上側の温度が高く、下側の温度が低くなるような垂直方向の温度勾配が形成される。ヒータによりるつぼが加熱されると、結晶原料が融解する。次いでるつぼ受軸を介してるつぼを下降させることで原料融液を下側から結晶化させて酸化ガリウム結晶を得ることができる。
【0004】
上記のヒータとして抵抗加熱ヒータを使用することができる。抵抗加熱ヒータは、同一またはほぼ同一である材料で構成された発熱部と導電部とが溶接等により接着されたもので、導電部よりも発熱部の径が細く形成されることによって導電部よりも発熱部の電気抵抗値が高くなるように構成されている。したがって、外部電源に接続された導電部を介して発熱部に通電することによって発熱部を高温に発熱させてるつぼを加熱することができる。こうした抵抗加熱ヒータの材料として、例えば導電性が良好で融点が高く、且つ耐酸化性を有する二珪化モリブデン(MoSi)等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-193466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MoSiからなる抵抗加熱ヒータは、一旦1800[℃]付近まで発熱させると、表面に形成されたSiO被膜とMoSiとの熱膨張差によってヒータのひび割れや破損が生じ易くなるため、室温まで降温できないことがある。そのため、上記ヒータを降温しても約1100[℃]までとしており、約1100[℃]の炉本体内からるつぼ(酸化ガリウム結晶)を取出すことを行っている。このとき、従来は、るつぼをこれを支持するるつぼ受軸ごと炉本体の底部から引出すことによって、炉本体内からるつぼ(酸化ガリウム結晶)を取出すことを行っていた。
【0007】
しかしながら、上記の場合、酸化ガリウム結晶が1000[℃]~1500[℃]の炉内温度下から25[℃]程度の室温下に直に曝されることになり、急冷による熱的なダメージを受けて結晶にひび割れや破損が生じるおそれがある。また、るつぼ(結晶)の上下方向の温度差を少なくするためにるつぼ(結晶)を下方へ引出す速度を早くすることにより、尚更るつぼ(結晶)が急冷され易くなり、更に結晶品質が低下するおそれが生じ易くなる。特に、今後、生成される結晶サイズが大型化した場合に結晶品質に大きな影響が表れると考えられることから、炉内空間を所定温度に維持した状態で生成した結晶を安定的に装置外へ取出すことができる構成が強く望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、垂直ブリッジマン法を適用した結晶製造装置であって、炉内空間を所定温度に維持して、るつぼの急冷による結晶品質の低下を防止して酸化ガリウム結晶を安定的に装置外へ取出すことができる酸化ガリウム結晶の製造装置、および当該装置を用いた酸化ガリウム結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明に係る酸化ガリウム結晶の製造装置は、垂直ブリッジマン法を適用した酸化ガリウム結晶の製造装置であって、耐熱材により構成された炉本体と、前記炉本体の底部を上下方向に貫通して前記炉本体内に延設されて、上下動自在に構成されたるつぼ受軸と、前記るつぼ受軸上に配置されて、酸化ガリウム結晶の原料を収容するるつぼと、前記るつぼの周囲に配設されて、前記るつぼを加熱する本体ヒータと、を備え、酸化ガリウム結晶を製造するための前記炉本体の下方には酸化ガリウム結晶を徐冷するための徐冷室が設けられ、前記徐冷室は、前記炉本体とは別室の、該炉本体の炉内空間よりも容量の小さい空間として、該炉内空間に連通可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、炉内空間を所定温度に維持した状態でるつぼ受軸を介してるつぼを下降させて炉内空間の下方に連通する徐冷室へ搬入し、るつぼ(酸化ガリウム結晶)を徐冷したうえで装置外へ取出すことができる。したがって、るつぼの急冷による結晶のひび割れや破損を防止できる。
【0012】
また、前記徐冷室には、前記るつぼを徐冷する徐冷ヒータが配設されていることが好ましい。これによれば、炉内空間と徐冷室との温度差を少なくしてるつぼが徐冷室に搬入された際の急冷を防止できると共に、徐冷室にてるつぼ(酸化ガリウム結晶)を所望の速度でより安定的に徐冷することができる。
【0013】
また、前記徐冷ヒータは、1500[℃]~1700[℃]の耐熱性を有する材質により構成された抵抗加熱ヒータとすることができる。また、前記本体ヒータは、1800[℃]~1900[℃]の耐熱性を有する材質により構成された抵抗加熱ヒータとすることができる。
【0016】
そして、本発明に係る酸化ガリウム結晶の製造方法は、上記の装置を用いた方法であって、以下の通りである。すなわち、酸化ガリウム結晶の原料を収容した前記るつぼを前記本体ヒータにより1795[℃]を超える温度で加熱して酸化ガリウム結晶の原料を融解させて、次いで前記るつぼ受軸を介して前記るつぼを下降させて原料融液から酸化ガリウムの単結晶を育成した後、前記炉内空間の温度を1000[℃]~1200[℃]まで低下させ、次いで前記るつぼ受軸を介して前記るつぼを下降させて前記るつぼを1000[℃]~1200[℃]に保持した前記徐冷室内に搬入し、次いで前記るつぼを前記徐冷室内で徐冷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炉内空間を所定温度に維持して、ヒータを破損することがなく、また、るつぼの急冷による結晶品質の低下を防止して酸化ガリウム結晶を安定的に装置外へ取出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置の例を示す概略図(垂直断面図)である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置の例を示す概略図(垂直断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10の例を示す概略図(垂直断面図)である。図2は、本発明の第2の実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10の例を示す概略図(垂直断面図)である。各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10(以下、単に「装置10」と表記する場合がある)は、垂直ブリッジマン法を適用した酸化ガリウム結晶の製造装置10であって、本体ヒータ34によりるつぼ22(炉本体14内)を加熱して酸化ガリウム結晶の原料を融解させ、原料融液が冷却することによる固化現象を利用して結晶成長させる酸化ガリウム結晶(単結晶)の製造装置である。以下、詳細に説明する。
【0021】
図1に示す酸化ガリウム結晶の製造装置10は、基体12上に炉本体14を備えている。炉本体14は、耐熱材14aにより構成された所要高さを有するリング部材が鉛直方向に複数層に積層されて筒状をなすことによって内部に炉内空間15が形成されている(リング部材の積層構造は不図示)。リング部材は所定高さ位置で取外し可能に構成されており、上側を開閉蓋として炉本体14が開閉可能に構成されている(不図示)。
【0022】
また、炉内空間15は、相対的に内径が大きい上部15aと相対的に内径が小さい下部15bとを有し、上部15aの下端部と下部15bの上端部とが連通している。なお、下部15bは、炉本体14の鉛直方向の中心軸に沿って設けられている。
【0023】
また、炉本体14の鉛直方向の中心軸に沿って基体12および炉本体14の底部を貫通すると共に炉内空間15の下部15bを経て上部15aの中央高さ付近まで上下方向に延設されるるつぼ受軸16が設けられている。るつぼ受軸16は、図示しない駆動機構により上下動自在且つ軸回転自在に構成されている(図1の矢印参照)。また、るつぼ受軸16内には、熱電対18が配設され、るつぼ22の温度が計測可能となっている。るつぼ受軸16もまた耐熱材により構成されている。
【0024】
また、るつぼ受軸16上(るつぼ受軸16の上端)には、るつぼ22を支持するアダプタ20が設けられており、アダプタ20上にるつぼ22が配置される。β-Ga結晶を育成するるつぼ22には、ロジウム(Rh)含有量が10[wt%]~30[wt%]の白金(Pt)-ロジウム(Rh)合金等の白金系合金を好適に使用できる。アダプタ20もまた耐熱材により構成されている。
【0025】
また、炉内空間15の下部15bの下端部から中央高さ付近までるつぼ受軸16の周囲は耐熱材14aにより構成されたリング部材で囲まれており、炉本体14の下部が断熱されている。炉本体14におけるるつぼ22の出し入れには、通常は前述の開閉蓋が使用されるが、炉本体14内(炉内空間15)が所定の温度を超える条件下では、このリング部材を取外して炉本体14の底部を開放したうえで、るつぼ22をるつぼ受軸16ごと炉本体14の底部から引出す(または押込む)ことにより行われる。
【0026】
また、炉本体14の底部には吸気管24が設けられて炉本体14内外を連通している。また、炉本体14の上部には排気管26が設けられて炉本体14内外を連通している。これによって、炉本体14内が大気雰囲気に構成されているが、吸気管24から積極的に所定のガスを導入して酸化雰囲気にしてもよい。
【0027】
また、炉本体14内には、るつぼ22およびるつぼ受軸16を囲む炉心管28、および炉心管28を囲む炉内管30が設けられている。そして、炉心管28と炉内管30との間には、本体ヒータ34が設けられている。
【0028】
炉心管28は、炉内空間15(下部15b)の下端部から炉内空間15(上部15a)の上端部まで延設される管と、炉内空間15(上部15a)の上端面に沿って設けられた天板28aとからなる。これによって、るつぼ22およびるつぼ受軸16の側方および上方を覆う構成となっている(ただし、前述の排気管26が天板28aを貫通している)。炉心管28によれば、るつぼ22と本体ヒータ34とを隔離することができる。したがって、仮に本体ヒータ34の一部が高温により熔解した場合でも、るつぼ22内(すなわち、生成される酸化ガリウム結晶)への不純物が混入することを防止できる。
【0029】
また、炉内管30は、炉内空間15の上部15aの下端部から上端部まで壁面に沿って延設される管であり、炉心管28の中央高さ付近から最上部までの側方を覆う構成となっている。また、炉内空間15の上部15aの下端面にはリング状の支持部材32が設けられて、炉内管30を支持している。炉内管30によれば、本体ヒータ34と、炉内空間15の上部15aの外壁を構成する耐熱材14aとの間を遮断して、耐熱材14aの熱による焼結や変形やひび割れを防止できる。また、本体ヒータ34の熱を炉心管28側へ反射して炉内空間15(上部15a)内を加熱でき、無駄なく熱を利用できる。炉心管28および炉内管30もまた耐熱材により構成されている。
【0030】
また、炉心管28と炉内管30との間に設けられる本体ヒータ34は、発熱部34aと導電部34bとを有する抵抗加熱ヒータであって、導電部34bを介して発熱部34aが通電されることにより発熱部34aが高温の熱を発する構成となっている。本体ヒータ34は、高温下(β-Gaの融点は約1795[℃])、大気雰囲気下乃至酸化雰囲気下で使用されることから、例えば導電性が良好で融点が高く、且つ耐酸化性を有する二珪化モリブデン(MoSi)を好適に使用できる。また、材質は1800[℃]~1900[℃]の耐熱性を有する材質が好ましく、発熱部34aと導電部34bとを同一の材質で構成してもよいが、異なる材質(例えば、発熱部34aを1900[℃]の耐熱性を有する材質、導電部34bを1800[℃]の耐熱性を有する材質とする)で構成してもよい。
【0031】
図1に示すように、本体ヒータ34(発熱部34aおよび導電部34b)は、炉本体14内に設けられると共に、導電部34bの一部が炉本体14(耐熱材14a)を貫通して炉本体14外で外部電源に接続されている(外部電源は不図示)。より詳しくは、導電部34bが炉本体14の側部を貫通して炉本体14内で鉛直方向に屈曲して設けられ、発熱部34aが炉本体14内で導電部34bの先端に鉛直方向に延設されて、側面視L字状に形成されている。なお、図1には本体ヒータ34を左右対称に2本示したが、通常は炉本体14内の鉛直方向の中心軸上を上下動するるつぼ22の周囲を円形に囲むようにして複数配設されている(ただし、本体ヒータ34の数は特に限定されない)。このように本体ヒータ34を配設することにより、発熱部34aをるつぼ22の周囲に鉛直方向に延設することができるため、炉内空間15のるつぼ22周辺に、上側の温度が高く、下側の温度が低くなるような垂直方向の温度勾配を形成することが可能になる。
【0032】
なお、るつぼ22を加熱する本体ヒータ34として、高周波誘導加熱ヒータを使用してもよい。この場合、例えば炉本体14外の周囲に高周波コイル(不図示)を配設し、この高周波コイルに高周波を印加することによって炉本体14内に配設した発熱体(不図示)が熱を発する構成とすればよい。
【0033】
ここで、本実施形態に係る特徴的な構成として、炉本体14の下方に炉本体14の炉内空間15に連通する徐冷室36が設けられている。これによれば、炉内空間15を所定温度に維持した状態でるつぼ受軸16を介してるつぼ22を下降させて炉内空間15の下方に連通する徐冷室36へ搬入し、るつぼ22(酸化ガリウム結晶)を徐冷(徐々に冷却)したうえで装置10外へ取出すことができる。したがって、るつぼ22の急冷による結晶のひび割れや破損を防止できる。また、加えてアダプタ20やるつぼ受軸16等の急冷も防止できるため、ヒートショックによるひび割れや破損を防止できる。
【0034】
また、徐冷室36には徐冷ヒータ38が配設されており、徐冷室36内の温度が制御可能に構成されている。これによれば、炉内空間15と徐冷室36との温度差を少なくしてるつぼ22が徐冷室36に搬入された際の急冷を防止できると共に、徐冷室36にてるつぼ(酸化ガリウム結晶)を所望の速度でより安定的に徐冷することができる。
【0035】
なお、図1に示すように、本実施形態に係る徐冷ヒータ38は、発熱部38aと導電部38bとを有する抵抗加熱ヒータとして構成されている。また、導電部38bが徐冷室36の側部を貫通して徐冷室36内で鉛直方向に屈曲して設けられ、発熱部38aが徐冷室36内で導電部38bの先端に鉛直方向に延設されて、側面視L字状に形成されている。また、図1には徐冷ヒータ38を左右対称に2本示したが、通常は炉本体14内の鉛直方向の中心軸上を上下動するるつぼ22の周囲を円形に囲むようにして複数配設されている。このように、徐冷ヒータ38は本体ヒータ34と同様の構成を有しているが、徐冷ヒータ38の種類、材料、材質、および数は特に限定されず、炉本体14のサイズや本体ヒータ34の下限温度等に応じて適宜設定することができる。
【0036】
本実施形態に係る徐冷ヒータ38の場合、本体ヒータ34と同様に例えば二珪化モリブデン(MoSi)を使用できるが、本体ヒータ34程高温に発熱させないため、1500[℃]~1700[℃]の耐熱性を有する材質を使用できる。これによれば、表面に形成されるSiO被膜はそれ程厚くならず、加熱(発熱)後に降温させてもひび割れや破損が生じ難いことから、室温まで自在に降温させることができる。したがって、るつぼ22(酸化ガリウム結晶)の徐冷に使用できる。また、二珪化モリブデン(MoSi)よりも低融点の材料を使用したり、より低い耐熱性を有する材質を使用してもよい。
【0037】
また、本実施形態に係る徐冷室36は、内部が大気雰囲気乃至酸化雰囲気になるように構成されているが、応用例として、徐冷室36内の雰囲気を変化させて、生成した酸化ガリウム結晶に対して目的に応じたアニール等を施すことも可能である。
【0038】
(酸化ガリウム結晶の製造方法)
ここで、以上説明した本実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10を用いた本実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造方法について説明する。
【0039】
先ず、公知の垂直ブリッジマン法を用いて炉本体14内で酸化ガリウム結晶を製造する。すなわち、β-Gaの焼結体等の酸化ガリウム結晶の原料(結晶原料)および任意で種子結晶を収容したるつぼ22を本体ヒータ34により酸化ガリウムの融点(β-Gaで約1795[℃])を超える温度で加熱して結晶原料を融解させる。次いで、るつぼ受軸16を介してるつぼ22を下降させて原料融液の下部(種子結晶側)から結晶化させて酸化ガリウムの単結晶を育成する。
【0040】
次いで、るつぼ22(育成した酸化ガリウム結晶)を、本体ヒータ34を所定温度(ここでは、約1100[℃]以上)に保持した状態で、以下のようにして装置10外へ取出す。すなわち、本体ヒータ34を制御して、炉内空間15を本体ヒータ34の下限温度(約1100[℃])または下限温度をやや上回るか下回る温度(1000[℃]~1200[℃])に降温させる。これによれば、予め炉内空間15の温度を可能な限り低下させてるつぼ22(酸化ガリウム結晶)の温度を低下させることによって、この後のるつぼ22(酸化ガリウム結晶)の徐冷時間を短縮させることができる。また、徐冷室36内の温度を炉内空間15の温度に近付け易くすることができる。なお、炉内空間15の温度が本体ヒータ34の下限温度をやや下回っても、本体ヒータ34自体は炉内空間15よりも高温で下限温度以上に保持されるため、問題はない。次いで、るつぼ受軸16を介してるつぼ22を下降させて、るつぼ22を炉内空間15と同一またはこれに近い温度(1000[℃]~1200[℃])に保持した徐冷室36に搬入する。これによれば、炉内空間15と徐冷室36との温度差を可能な限り少なくして、るつぼ22が徐冷室36に搬入された際の急冷を防止できる。次いで、るつぼ22(酸化ガリウム結晶)を徐冷室36内で所望の速度で所望の温度(例えば、室温乃至室温付近)まで徐冷した後、るつぼ22を徐冷室36から取出す。
【0041】
以上の方法によれば、炉内空間15を所定温度に維持して、本体ヒータ34を破損することがなく、また、るつぼ22の急冷による結晶品質の低下を防止して酸化ガリウム結晶を安定的に装置10外へ取出すことができる。その結果、安定した品質を有する酸化ガリウム結晶を得ることができる。なお、この方法は、後述する第2の実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10に対しても当然に適用可能である。
【0042】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10について、前述の第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態に係る酸化ガリウム結晶の製造装置10は、垂直ブリッジマン法を適用した酸化ガリウム結晶の製造装置10であって、耐熱材により構成された炉本体14と、炉本体14の底部を上下方向に貫通して炉本体14内に延設されて、上下動自在に構成されたるつぼ受軸16と、るつぼ受軸16上に配置されて、酸化ガリウム結晶の原料を収容するるつぼ22と、るつぼ22の周囲に配設されて、るつぼ22を加熱する本体ヒータ34と、炉本体14の炉内空間15の下部15bに設けられて、るつぼ22が徐冷される徐冷室36と、を備え、徐冷室36には、るつぼ22を徐冷する徐冷ヒータ38が配設されていることを特徴とする。
【0043】
第1の実施形態では、図1に示すように、徐冷室36が炉本体14の下方に炉本体14の炉内空間15に連通して設けられていた。これに対して、本実施形態では、図2に示すように、徐冷室36が炉本体14の炉内空間15の下部15bに設けられている。本実施形態に係る構成も、第1の実施形態と同様に炉内空間15(ただし、徐冷室36を除く領域)を所定温度に維持した状態でるつぼ受軸16を介してるつぼ22を下降させて炉内空間15の下部15bに位置する徐冷室36へ搬入し、るつぼ22(酸化ガリウム結晶)を徐冷したうえで装置10外へ取出すことができる。したがって、るつぼ22の急冷による結晶のひび割れや破損を防止できる。また、加えてアダプタ20やるつぼ受軸16等の急冷も防止できるため、ヒートショックによるひび割れや破損を防止できる。
【0044】
また、図2に示すように、本実施形態に係る徐冷室36には徐冷ヒータ38が配設されており、徐冷室36内の温度が制御可能に構成されている。これによれば、炉内空間15(ただし、徐冷室36を除く領域)を所定温度に維持したまま、徐冷室36にてるつぼ22(酸化ガリウム結晶)を所望の速度でより安定的に徐冷することができる。
【0045】
以上説明した通り、本発明に係る酸化ガリウム結晶の製造装置によれば、炉内空間を所定温度に維持して、ヒータを破損することがなく、また、るつぼの急冷による結晶品質の低下を防止して酸化ガリウム結晶を安定的に装置外へ取出すことができる。また、当該装置を用いた本発明に係る酸化ガリウム結晶の製造方法によれば、上記の結果、安定した品質を有する酸化ガリウム結晶を得ることができる。
【0046】
なお、本発明は、以上説明した実施形態および実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 製造装置、12 基体、14 炉本体、15 炉内空間、16 るつぼ受軸、18 熱電対、20 アダプタ、22 るつぼ、24 吸気管、26 排気管、28 炉心管、30 炉内管、34 本体ヒータ、36 徐冷室、38 徐冷ヒータ
図1
図2