(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】表示装置及び該表示装置を備えた加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 15/00 20060101AFI20241115BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F24C15/00 M
H05B6/12 312
(21)【出願番号】P 2021091698
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】永田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】徳山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃裕
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/016307(WO,A1)
【文献】特開2015-077793(JP,A)
【文献】特開2020-085353(JP,A)
【文献】特開2010-216745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-15/36
H05B 1/00-11/00
A47J 9/00-47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の上面に、加熱装置の運転状態を表示するための表示窓部を有するトッププレートと、
前記本体の内部に冷却用の吸排気口と、
冷却ファンと、
前記トッププレートの前記表示窓部の下方に設けられた表示シートと、
前記表示シートの下方に設けられ、前記表示シート及び前記表示窓部を介して発光表示させる発光表示装置と、
を備え、
前記表示シートの上面の外周または裏面の外周には、虫類の忌避剤を含有するインク層を設けており、前記表示シートは、前記トッププレートとの間に隙間を設けて配置され、前記隙間は、前記吸排気口と前記冷却ファンとで構成された風路の一部である、表示装置。
【請求項2】
前記インク層は、UV硬化インクからなる、請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記インク層は、前記表示窓部の直下の外周に配置される、請求項
1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記インク層は、前記表示窓部から視認できないエリアに設けられる、請求項1から
3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記インク層が設けられた前記表示シートの前記上面は、前記裏面より凹凸が大きい、請求項1から
4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記本体の側面又は裏面は、忌避剤を付着させた忌避鋼板ではない、請求項1から
5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の表示装置と、
前記本体の内部に設けられ、前記トッププレート上に載置される被加熱物を加熱する加熱装置と、
を備えた、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示窓部を有する表示装置に関する。また、該表示装置を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱調理器では、加熱装置やその制御回路部などを有している。これらの部品の冷却のために本体には、通常、吸排気口が設けられている。そのため、外部から虫が入り込み、住み着く場合がある。虫が入り込むと、加熱装置やその制御回路部などに短絡等が発生するおそれがあった。
【0003】
また、トッププレートの表示窓部を介して加熱装置の運転状態を発光表示しているため、この表示窓部を介して虫が見えるなどの不快さをユーザに与えるおそれもあった。
【0004】
従来の誘導加熱調理器において、制御回路部とケーブルで接続される操作部は、操作スイッチ面をパネルシート部にて覆った構造の密閉箱体内に納め、操作回路部を納めた箱体のケーブル出口はパッキンまたはブッシングにより密閉構造としている(例えば、特許文献1参照。)。これによって、害虫および水等が制御回路部および操作回路部に侵入する事を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の誘導加熱調理器では、密閉箱体またはパッキン等の部品を設ける必要があり、構成部品点数が増加する課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、密閉構造を設けることなく、虫類の侵入を抑制した表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示装置は、本体の上面に、運転状態等を表示するための表示窓部を有するトッププレートと、トッププレートの表示窓部の下方に設けられた表示シートと、表示シートの下方に設けられ、表示シート及び表示窓部を介して発光表示させる発光表示装置と、を備え、表示シートの上面または裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層を設けている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る表示装置によれば、表示シートの上面または裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層を設けているので、密閉構造を設けることなく、虫類の侵入を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る表示装置の断面構成を示す概略断面図である。
【
図3A】実施の形態2に係る加熱調理器の概要を示す概略斜視図である。
【
図3B】実施の形態2に係る加熱調理器のトッププレートの上面から見た平面図である。
【
図4】
図3Aの加熱調理器のトッププレートの下面に備えられた各部材を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様に係る表示装置は、本体の上面に、運転状態等を表示するための表示窓部を有するトッププレートと、トッププレートの表示窓部の下方に設けられた表示シートと、表示シートの下方に設けられ、表示シート及び表示窓部を介して発光表示させる発光表示装置と、を備え、表示シートの上面または裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層を設けている。
【0012】
上記構成によれば、表示シートの上面または裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層を設けているので、密閉構造を設けることなく、虫類の侵入を抑制できる。
【0013】
第2の態様に係る表示装置は、上記第1の態様において、インク層は、UV硬化インクからなってもよい。
【0014】
上記構成によれば、加工スピードを向上させることができる。
【0015】
第3の態様に係る表示装置は、上記第1又は第2の態様において、インク層は、表示窓部の直下の外周に配置されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、表示窓部からの光を避けることができるので、忌避剤の劣化を抑制できると共に、虫が入り込む入口で忌避効果を奏することができる。
【0017】
第4の態様に係る表示装置は、上記第1から第3のいずれかの態様において、インク層は、表示窓部から視認できないエリアに設けられていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、視認できないエリアなので美観を気にせずに忌避剤を配合できる。
【0019】
第5の態様に係る表示装置は、上記第1から第4のいずれかの態様において、インク層は、発光表示装置の発光表示部と対向する領域の外周に配置されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、液晶部分の凹凸の発生を抑制できる。
【0021】
第6の態様に係る表示装置は、上記第1から第5のいずれかの態様において、インク層が設けられた表示シートの上面は、裏面より凹凸が大きくてもよい。
【0022】
上記構成によれば、上面の凹凸によって忌避剤の量が増えてもむらが分かりにくいという効果がある。
【0023】
第7の態様に係る表示装置は、上記第1から第6のいずれかの態様において、本体の内部に冷却用の吸排気口と、冷却ファンと、を備え、表示シートは、外周に吸排気口への風路を含んでもよい。
【0024】
上記構成によれば、発熱部品を冷却できる。
【0025】
第8の態様に係る表示装置は、上記第1から第7のいずれかの態様において、本体の側面又は裏面は、忌避剤を付着させた忌避鋼板ではなくてもよい。
【0026】
第9の態様に係る加熱調理器は、上記第1から第8のいずれかの態様に係る表示装置と、本体の内部に設けられ、トッププレート上に載置される被加熱物を加熱する加熱装置と、を備える。
【0027】
以下、実施の形態に係る表示装置及び該表示装置を備えた加熱調理器について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る表示装置20の断面構成を示す概略断面図である。
図2は、
図1の表示シート2の平面図である。
この表示装置20は、トッププレート10と、表示シート2と、発光表示装置4と、を備える。トッププレート10は、本体の上面に、運転状態等を表示するための表示窓部1を有する。表示シート2は、トッププレート10の表示窓部の下方に設けられており、表示シート2の上面または裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層3を設けている。発光表示装置4は、表示シート2の下方に設けられ、表示シート2及び表示窓部1を介して発光表示させる。
この表示装置20によれば、表示シート2の上面または裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層3を設けているので、密閉構造を設けることなく、虫類の侵入を抑制できる。
【0029】
以下に、この表示装置20を構成する各部材について説明する。
【0030】
<トッププレート>
トッププレート10は、ガラスプレート8を備える。ガラスプレート8は、透明であって、加熱に耐えられるように結晶化ガラスが用いられる。また、トッププレート10は、運転状態等を表示するための表示窓部1を有する。さらに、トッププレート10は、例えば、裏面に裏面印刷部5を設けて、表示窓部1を画成している。
【0031】
<表示シート>
表示シート2は、表示窓部1の下方に設けられている。一方、表示シート2は、発光表示装置の上方に配置されている。この表示シート2の上面又は裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層3を設けている。表示シート2の裏面には、黒色または所望の色調を有する色調層を設けている。表示シート2は、紙又は樹脂製であってもよい。また、表示シート2の上面又は裏面には凹凸を設けてもよい。忌避剤の付着むらがあっても凹凸を有する場合には目立ちにくくなる。また、凹凸にインク層3を設けることにより、インク層3の容積を増やすことができ、表示シート2に付着させる忌避剤の量を増やすことができる。インク層3が設けられた表示シート2の上面は、裏面より凹凸が大きくてもよい。
表示シート2は、例えば、
図2に示すように、表示窓部1に対応する開口部6を設けていてもよい。なお、開口部6は、表示シート2に貫通孔を設けた実際の開口部であってもよく、あるいは、裏面側の不透明な印刷層によって画成される透明部分としての開口部であってもよい。後者の場合には、開口部6は透明部分であって、その上面又は裏面にインク層3を設けてもよい。また、開口部6の周囲には、例えば、印刷等を設けてもよい。開口部6の周囲にインク層3を設けてもよい。
【0032】
<インク層>
インク層3は、表示シート2の上面又は裏面に設けられ、虫類の忌避剤を含有する。上面又は裏面にはインク層3は、例えば、UV硬化樹脂に忌避剤を含有させたUV硬化型インクを塗布した後、UV光を照射してUV硬化させて形成されている。UV硬化型であるので、通常の溶剤を含むインクを用いた場合と比較すると、溶剤蒸発にかかる時間に対してUV硬化は短時間で行うことができ、表面加工の速度を向上させることができる。
【0033】
インク層3の形成は、例えば、UV印刷によって行うことができる。あるいは、艶消しインクに忌避剤を混ぜ込んで、表示シート2の上面又は裏面に塗布してもよい。また、忌避剤を含むテープを表示シート2の上面又は裏面に貼ってもよい。
【0034】
インク層3は、表示窓部1の直下の外周に配置してもよい。これにより、表示窓部1からの光を避けることができるので、忌避剤の劣化を抑制できると共に、虫が入り込む入口で忌避効果を奏することができる。また、
図1及び
図2に示すように、インク層3は、表示シート2の上面に設けてもよい。表示シート2の上面は表示窓部1から視認される領域を有するため、上面にインク層3を設けることにより、上面に虫が入り込むことをより効率よく回避できる。さらに、インク層3は、発光表示装置4の発光表示部と対向する領域の外周に配置されてもよい。これにより、表示シート2の、発光表示部(例えば、液晶部分)と対向する領域において、凹凸の発生を抑制できる。同様に、インク層3は、表示窓部1の直下を避けて、直下の外周に配置されてもよい。これにより、表示シート2の、発光窓部1と対向する領域において、凹凸の発生を抑制でき、表示の視認性が向上する。なお、インク層3は、裏面に設けてもよい。その場合は、表示窓部1から視認できないエリアにインク層3を設けることで、美観を気にせずに忌避剤を配合できる。
【0035】
また、忌避剤は、例えば、ゴキブリ、蚊等の虫類への忌避効果を有するものとして通常使用されるピレスロイド系の忌避剤を用いることができる。なお、忌避剤は、ピレスロイド系に限られず、対象となる虫類に忌避効果を有するものであれば使用できる。忌避剤による虫類への忌避効果は、忌避剤の揮発による場合に限られず、忌避剤への虫類の接触による忌避効果であってもよい。なお、忌避剤の多くはUV光によって劣化する場合があるが、劣化で失活する分量を考慮して多めに含有させておけばよい。忌避剤の含有量は、忌避剤以外のインク全体を100重量%とすると、例えば、5重量%~20重量%の範囲である。忌避剤の含有量が多すぎると、インク層の表面状態が悪くなる。忌避剤の含有量が少なすぎると虫類への十分な忌避効果が得られない。
【0036】
<発光表示装置>
発光表示装置4は、表示シート2の下方に設けられている。また、例えば、表示シート2の裏面に接触配置されていてもよい。発光表示装置4は、例えば、液晶表示装置である。発光表示装置4は、液晶表示装置に限定されず、例えば、無機EL表示装置、有機EL表示装置等であってもよい。
【0037】
(実施の形態2)
<加熱調理器>
図3Aは、実施の形態2に係る加熱調理器30の概要を示す概略斜視図である。
図3Bは、実施の形態2に係る加熱調理器30のトッププレート10の上面から見た平面図である。
図4は、
図3Aの加熱調理器30のトッププレート10の下面に備えられた各部材を示す分解斜視図である。
この加熱調理器30は、実施の形態1に係る表示装置20と、加熱装置14とを備える。なお、加熱装置14の他に、制御部16、本体ケース12、吸排気口(図示せず)、冷却ファン(図示せず)を備えてもよい。
【0038】
<加熱装置>
加熱調理器が誘導加熱調理器の場合には、加熱装置14は、誘導加熱のためのコイルであり、ガラスプレート8に面する箇所には断熱材または絶縁材等としてのマイカ層15が設けられている。コイルは、トッププレート10の上に載置する鍋、フライパン等の径に合わせた大きさを有する。例えば、
図2に示すように、加熱装置14は3つ設けられていてもよい。また、それぞれのコイルの径を異なる径としてもよい。具体的には、
図3Bの例では、奥のコイルが最も小さく、左側のコイルが中間の大きさであり、右側のコイルが最も大きい。また、下部にはヒータ等による加熱を行うグリル等を設けてもよい。
なお、本開示の加熱調理器は誘導加熱調理器に限られない。例えば、ヒータ等による加熱あるいはガス調理器の場合には、ガラスプレートの上面に加熱部が設けられる。
【0039】
<制御部>
加熱調理器が誘導加熱調理器の場合には、コイル等の加熱装置14を制御するための制御部16を有する。
【0040】
<吸排気口>
本体の内部に外気を供給及び排出する吸排気口(図示せず)を設けてもよい。吸排気口は一つでもよく、2つ以上であってもよい。また、2以上の場合には、吸排気口を吸気口及び排気口に分けてもよい。この場合、吸気口から排気口に向かって風路が形成される。
【0041】
<冷却ファン>
加熱装置14を冷却する冷却ファン(図示せず)を設けてもよい。冷却ファンによって、加熱装置14等の発熱部材を冷却できる。冷却ファンは、吸気口から排気口への風路を構成するように風を発生させてもよい。なお、冷却ファンは1つに限られず、複数設けてもよい。
【0042】
<本体ケース>
上記加熱装置14及び制御部16等は、本体ケース12の中に格納されている。本体ケース12の鋼板は、側面を構成する第1の鋼板12aと、前面であり、表示シート2の下方に配置された第2の鋼板12bとを含む。例えば、第1の鋼板12aは、忌避剤がコーティングされたいわゆる忌避鋼板であってもよい。第2の鋼板12bは、表示シート2に忌避剤を印刷しているため、忌避鋼板を用いなくてもよい。
なお、加熱調理器には、上記以外にも、例えば、電源部や、操作パネル等の操作部を備えてもよい。また、電源部、制御部等の冷却用の吸気及び排気を行う箇所を設けてもよい。なお、実施の形態2に係る加熱調理器では、
図1は、例えば、
図3BのA-A方向にみた断面構造を示す概略断面図となる。
【0043】
なお、ここでは表示装置に加えて加熱装置を備えた加熱調理器である場合について示したが、これに限られない。表示装置を含むものであればよく、例えば、電気加熱器、炊飯器、オーブントースター、オーブン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、テレビ、ビデオ等のいずれであってもよい。
【0044】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る表示装置によれば、表示シートの上面または裏面には、虫類の忌避剤を含有するインク層を設けているので、密閉構造を設けることなく、虫類の侵入を抑制できる。そこで、この表示装置は、加熱調理器、電気加熱器、炊飯器、オーブントースター、オーブン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、テレビ、ビデオ等の様々な電気製品に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 表示窓部
2 表示シート
3 インク層
4 発光表示装置
5 裏面印刷部
6 開口部
8 ガラスプレート
10 トッププレート
12 本体ケース
12a 第1の鋼板
12b 第2の鋼板
14 加熱装置
15 マイカ層
16 制御部
20 表示装置
30 加熱調理器