(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】熱成形装置及び断熱シート
(51)【国際特許分類】
B29C 51/26 20060101AFI20241115BHJP
B29C 51/42 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/42
(21)【出願番号】P 2024077345
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023184176
(32)【優先日】2023-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】723015295
【氏名又は名称】ニッショー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 和司
(72)【発明者】
【氏名】長田 毅
(72)【発明者】
【氏名】横井 広良
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利征
(72)【発明者】
【氏名】赤星 和生
(72)【発明者】
【氏名】安尾 清一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-96418(JP,A)
【文献】特開2012-164820(JP,A)
【文献】特開2013-31930(JP,A)
【文献】特開2015-57310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00-39/24
B29C 39/38-39/44
B29C 43/00-43/34
B29C 43/44-43/48
B29C 43/52-43/58
B29C 49/00-49/46
B29C 49/58-49/68
B29C 49/72-51/28
B29C 51/42
B29C 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製シートの加熱を上側から行う上側加熱手段と下側から行う下側加熱手段を有する加熱部と、前記樹脂製シートの成形を行う成形部と、前記樹脂製シートを搬送する搬送機構を備える熱成形装置において、
前記上側加熱手段および前記下側加熱手段の外側面に、断熱シートが脱着可能に固定されてなり、
前記断熱シートは、
断熱性を有する布製材料が縫製されて形成され、
前記搬送機構で搬送される前記樹脂製シートの搬送面で分割された上側に配置され、前記上側加熱手段の外側面に固定される上側断熱シートと、
前記加熱部の下側に配置され、前記下側加熱手段の外側面に固定される下側断熱シートを含み、
前記上側断熱シートと前記下側断熱シートは、前記加熱部の外面に接する加熱部ゾーンと、該加熱部ゾーンから前記搬送面側に延設される供給部ゾーンとを有し、
前記下側断熱シートには、一定間隔で平行に、かつ前記樹脂製シートの送り方向に対して直角に設けられた柱部が設けられて、該柱部には骨材が通されていること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱成形装置において、
前記上側断熱シートと前記下側断熱シートの固定手段として、耐熱性を有する磁石が用いられ、
前記加熱部に用いられる筐体の外側面に、強磁性を示す金属が用いられること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱成形装置において、
前記加熱部に設けられた遮蔽板には、内部に水路が形成され、該水路に接続する配管が設けられ、
前記加熱部に接続された電気配線が設けられ、
前記上側断熱シートまたは前記下側断熱シートには、前記配管や前記電気配線を避けるためのスリット部が設けられていること、
を特徴とする熱成形装置。
【請求項4】
樹脂製シートの加熱を行う加熱部を備える熱成形機の、前記加熱部の側面に取り付ける断熱シートにおいて、
前記樹脂製シートの搬送面で分割される前記加熱部の上側に配置される上側断熱シートと、前記加熱部の下側に配置される下側断熱シートを有し、
前記上側断熱シート及び前記下側断熱シートには、
外皮としてシリコーンコーティングされたガラスクロスが用いられ、内側断熱材としてグラスウールが用いられ、
前記熱成形機に接する加熱部ゾーンと、該加熱部ゾーンから延設される供給部ゾーンとを有し、
前記加熱部ゾーンと前記供給部ゾーンとは耐熱性を有する糸によって縫い合わされた縫製部によって仕切られ、
前記加熱部の突起に対応して切り込み部が設けられ、
前記下側断熱シートには、一定間隔で支柱を挿入する袋部分が設けられていること、
を特徴とする断熱シート。
【請求項5】
請求項4に記載の断熱シートにおいて、
前記上側断熱シート及び前記下側断熱シートは、前記熱成形機に対して耐熱性を有する磁石を用いて固定されること、
を特徴とする断熱シート。
【請求項6】
真空・圧空成形機に備えるヒーター熱板側面に取り付ける断熱シートにおいて、
厚み5mm~20mmで、熱板部ゾーンと供給部ゾーンを有し、
前記供給部ゾーンは前記真空・圧空成形機のレールの配線などの突起物の形状に合わせて形成され、
前記ヒーター熱板の下部に取り付ける下部断熱シートには支柱を入れこみ自立させる機能を有すること、
を特徴とする断熱シート。
【請求項7】
請求項6に記載の断熱シートにおいて、
ウォータジャケットが可動しても装着可能なようにスリットが設けられること、
を特徴とする断熱シート。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の断熱シートにおいて、
耐熱マグネットが設けられること、
を特徴とする断熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形装置の省エネ技術に関し、具体的には加熱部に断熱材を用いることでヒーター出力を低下させるものである。
【背景技術】
【0002】
熱成形装置は、樹脂製シートを加熱する加熱工程と、加熱された樹脂製シートを成形する成形工程を有する構成となっているものが多く、加熱工程と成形工程が別になっている熱成形装置の場合、成形工程にて樹脂製シートが適温となるように加熱工程は常に高温で樹脂製シートの加熱を行う必要がある。この加熱工程には樹脂製シートの上下からヒーターを用いて加熱を行い、ヒーターには大電力を必要とする。
【0003】
特許文献1には、射出または押し出し成形用断熱カバーに関する技術が開示されている。特許文献2には、熱板を用いた熱成形装置及び熱成形方法に関する技術が開示されている。このように特許文献1に示されるような断熱カバーは加熱バレルの外周に巻き付けるように設けることが可能であるため、断熱カバーを設けることが容易であるが、特許文献2に示す様なシート搬送機構を備えて長尺の樹脂製シートを巻き出して成形する熱成形機の場合には、加熱部分の上部または下部に断熱材を配置するような構成にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-314549号公報
【文献】特開2013-31930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、そうすると特許文献2に示す様に熱成形装置の加熱部分の側面部分の放熱を防ぐことが難しく、これまでは対策はなされてこなかった。これは熱成形装置の加熱部分には上下に配置されたヒーターを備え、その間に樹脂製シートを搬送しながら加熱する必要があるが、この際に樹脂製シートの両サイドから放熱してしまう。この部分はシート送り機構などが備えられるために、断熱材を設置することが困難である。この他、側面には可動式のウォータジャケットや配線、配管など繋ぐ必要があるために、突起部があって、これも断熱材の設置をしにくくしている原因でとなっている。
【0006】
だが、昨今の情勢から熱成形装置に対しても省エネ性能が求められるようになり、消費電力を抑えることが切望されるようになった。特に加熱部分は常時高温を出力するために、生産時に必要な電力が非常に大きく、エネルギーロスについての課題があった。
【0007】
そこで、本発明は加熱部における省エネを実現可能な熱成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による熱成形装置は、以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)樹脂製シートの加熱を上側から行う上側加熱手段と下側から行う下側加熱手段を有する加熱部と、前記樹脂製シートの成形を行う成形部と、前記樹脂製シートを搬送する搬送機構を備える熱成形装置において、
前記上側加熱手段および前記下側加熱手段の外側面に、断熱シートが脱着可能に固定されてなり、
前記断熱シートは、
断熱性を有する布製材料が縫製されて形成され、
前記搬送機構で搬送される前記樹脂製シートの搬送面で分割された上側に配置され、前記上側加熱手段の外側面に固定される上側断熱シートと、
前記加熱部の下側に配置され、前記下側加熱手段の外側面に固定される下側断熱シートを含み、
前記上側断熱シートと前記下側断熱シートは、前記加熱部の外面に接する加熱部ゾーンと、該加熱部ゾーンから前記搬送面側に延設される供給部ゾーンとを有し、
前記下側断熱シートには、一定間隔で平行に、かつ前記樹脂製シートの送り方向に対して直角に設けられた柱部が設けられて、該柱部には骨材が通されていること、
を特徴とする。
【0010】
上記(1)に記載の態様により、加熱部分からの熱放散を抑えて省エネ化が図れると共に、作業環境の改善が期待できる。これは、熱成形装置の加熱部の外面に断熱シートが設けられることで、加熱部側面からと樹脂製シートを搬送する部分からの熱の放散が抑えられ、加熱に使用する電力消費を減らすことが可能となるからである。断熱シートは、上側断熱シートと下側断熱シートよりなり、加熱部ゾーンと供給部ゾーンとから構成されている。したがって、加熱部ゾーンによって加熱部(上側加熱手段および下側加熱手段)の外面からの熱の放散を防ぎ、供給部ゾーンによって樹脂製シートを搬送する搬送機構を備えることで放散しやすい熱を可能な限り防ぐ。このような構成を採用することで、熱成形装置の省エネ化に貢献することができる。
【0011】
(2)(1)に記載の熱成形装置において、
前記上側断熱シートと前記下側断熱シートの固定手段として、耐熱性を有する磁石が用いられ、
前記加熱部に用いられる筐体の外側面に、強磁性を示す金属が用いられること、
が好ましい。
【0012】
上記(2)に記載の態様により、耐熱性を有する磁石が用いられることで、上側断熱シートと下側断熱シートの取り外しが容易となる。熱成形装置のメンテナンスを行うにあたって、断熱シートの取り外しが容易であることは望ましく、筐体に強磁性を示す金属が用いられ、上側断熱シートと下側断熱シートの取り付けに磁石を用いて、容易に取り外しできることはメンテナンス性を高める意味で効果が高い。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載の熱成形装置において、
前記加熱部に設けられた遮蔽板には、内部に水路が形成され、該水路に接続する配管が設けられ、
前記加熱部に接続された電気配線が設けられ、
前記上側断熱シートまたは前記下側断熱シートには、前記配管や前記電気配線を避けるためのスリット部が設けられていること、
が好ましい。
【0014】
上記(3)に記載の態様により、配管や電気配線を避けて上側断熱シート及び下側断シートの配置が可能となる。
【0015】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様による断熱シートは、以下のような特徴を有する。
【0016】
(4)樹脂製シートの加熱を行う加熱部を備える熱成形機の、前記加熱部の側面に取り付ける断熱シートにおいて、
前記樹脂製シートの搬送面で分割される前記加熱部の上側に配置される上側断熱シートと、前記加熱部の下側に配置される下側断熱シートを有し、
前記上側断熱シート及び前記下側断熱シートには、
外皮としてシリコーンコーティングされたガラスクロスが用いられ、内側断熱材としてグラスウールが用いられ、
前記熱成形機に接する加熱部ゾーンと、該加熱部ゾーンから延設される供給部ゾーンとを有し、
前記加熱部ゾーンと前記供給部ゾーンとは耐熱性を有する糸によって縫い合わされた縫製部によって仕切られ、
前記加熱部の突起に対応して切り込み部が設けられ、
前記下側断熱シートには、一定間隔で支柱を挿入する袋部分が設けられていること、
を特徴とする。
【0017】
上記(4)に記載の態様により、熱成形機の加熱部からの放熱を抑えることができ、結果的に消費電力を減らして省エネに貢献することができる。これは、搬送面で分割される上側断熱シートと下側断熱シートを用いるから、分割部分を最大限カバーする構成を選択することができ、結果的に放熱する面積を減らすことができる。
【0018】
(5)(4)に記載の断熱シートにおいて、
前記上側断熱シート及び前記下側断熱シートは、前記熱成形機に対して耐熱性を有する磁石を用いて固定されること、
が好ましい。
【0019】
上記(5)に記載の態様により、耐熱性を有する磁石を用いて断熱シートが固定されるため、熱成形装置に対して断熱シートを着脱容易に取り付けることが可能となる。熱成形装置のメンテナンス時に、容易に断熱シートの着脱ができることは、作業性を向上させることに繋がるために、有益である。
【0020】
(6)真空・圧空成形機に備えるヒーター熱板側面に取り付ける断熱シートにおいて、
厚み5mm~20mmで、熱板部ゾーンと供給部ゾーンを有し、
前記供給部ゾーンは前記真空・圧空成形機のレールの配線などの突起物の形状に合わせて形成され、
前記ヒーター熱板の下部に取り付ける下部断熱シートには支柱を入れこみ自立させる機能を有すること、
を特徴とする。
【0021】
上記(6)に記載の態様により、真空・圧空成形機(熱成形機)のヒーター熱板(加熱部)側面からの放熱を抑えることができ、結果的に真空・圧空成形機で使用する消費電力を減らして省エネに貢献することができる。これは、加熱部における開口部分を断熱シートによってできるだけ減らすことで、加熱部における加熱効率を高めることに貢献できるからである。
【0022】
(7)(6)に記載の断熱シートにおいて、
前記断熱シートにウォータジャケットが可動しても装着可能なようにスリットが設けられること、
が好ましい。
【0023】
上記(7)に記載の態様により、ウォータジャケットの動きを阻害することなく断熱シートを機能させることが可能となる。
【0024】
(8)(6)または(7)に記載の断熱シートにおいて、
前記断熱シートに耐熱マグネットが設けられること、
が好ましい。
【0025】
上記(8)に記載の態様により、断熱シートの脱着を容易に行うことができ、メンテナンス異性の改善が見込める。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】本実施形態の、熱成形装置の搬送機構部分を示す概略図である。
【
図4】本実施形態の、下部断熱シートの断面図である。
【
図6】本実施形態の、加熱部の
図5とは異なる部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明に係る第1の実施形態の熱成形装置100の構成の概略について説明をする。
図1に、本実施形態の熱成形装置100の概略図を示す。熱成形装置100は、巻出部110と加熱部150と成形部200と取出部250を含み、樹脂製シートSの成形を行っている。巻出部110には、原反ロール111がセットされて長尺の樹脂製シートSを巻き出す機能を備えている。また、熱成形装置100には図示しない真空発生装置を含む真空回路が設けられ、樹脂製シートSの真空・圧空成形を行うことができる。
【0028】
加熱部150には、上側加熱手段151と下側加熱手段152を備えて樹脂製シートSの加熱を行っている。成形部200には、金型となる上型201と下型202を備えて樹脂製シートSの熱成形をおこなっている。取出部250には、トリミング装置251を備えて樹脂製シートSのトリミングを行い、成形品Mの取り出しを可能としている。
【0029】
樹脂製シートSは、原反ロール111から巻き出される長尺のシート材であり、熱可塑性樹脂よりなるシート材を採用している。なお、JISの規格によればフィルムとは、厚さが250μm未満のプラスチックの膜状のものと定義され、それより厚いものをシート材と定義しているが、本実施形態では便宜上、シート材という言葉を用いており、必要に応じて本発明にフィルム材を用いることを妨げない。
【0030】
図2に、熱成形装置の搬送機構部分を表した概略図を示す。
図3に、加熱部150の断面図を示す。
図1のAA断面に相当する。搬送機構155は、第1プーリ155aと第2プーリ155bにかけられたベルト155c、及び
図3に示す把持部155dを有している。第1プーリ155aまたは第2プーリ155bには図示しないモータが接続されて、ベルト155cを駆動している。搬送機構155は樹脂製シートSの両側、すなわち熱成形装置100と平行に2条配置され、ベルト155cに複数固定された把持部155dは、
図3に示す様に樹脂製シートSの両端を把持して樹脂製シートSの搬送を行う。
【0031】
また、上側加熱手段151及び下側加熱手段152の間には、冷却手段157が設けられている。冷却手段157は可動式のウォータジャケットであり、図示しない配管によって冷却水を循環する構成となっている。そして、冷却手段157は樹脂製シートSの上と下にそれぞれ配置される。つまり、上側加熱手段151と樹脂製シートSの間、及び下側加熱手段152と樹脂製シートSの間に配置され、上側加熱手段151及び下側加熱手段152から樹脂製シートSへの熱を遮断するようにしている。冷却手段157は熱成形装置100の進行方向に向かって前後に移動が可能である。
【0032】
次に加熱部150の構成について説明を行う。加熱部150には、上側加熱手段151と下側加熱手段152として、それぞれ輻射式加熱を行うヒーター153が複数タイル状に配置されてなる。ヒーター153は、中赤外線クイックレスポンスヒーターが採用されており、被加熱体である樹脂製シートSを速やかに加熱することができる。ここで、
図2に示す様に成形部200に設けられた上型201及び下型202の幅xに合わせた樹脂製シートSの送り寸法とした場合に、ヒーター153の寸法yの倍数と合わないことがある。冷却手段157の位置調整を行うことで、ヒーター153からの熱を遮蔽し、樹脂製シートSの加熱具合を調整することができる。
【0033】
上側加熱手段151は上側に配置されて、搬送される樹脂製シートSに対して図示されない昇降機能によって上側から近接離間させることのできる構成となっている。下側加熱手段152も同様に樹脂製シートSに対して下側から図示されない昇降機能によって近接離間させることのできる構成となっている。なお、上側加熱手段151及び下側加熱手段152を移動させる昇降装置を駆動させる手段については特に限定しないが、任意の位置に停止できる駆動機構を用いることが好ましい。
【0034】
上側加熱手段151には、ヒーター153の並べられた上側ヒーター板151aと、上側筐体151bを有しており、金属製の上側筐体151bの外側には、上部断熱シート161が設けられている。下側加熱手段152には、ヒーター153の並べられた下側ヒーター板152aと、下側筐体152bを有しており、金属製の下側筐体152bの外側には、下部断熱シート171が設けられている。なお、上側筐体151b及び下側筐体152bは強磁性を示す金属(すなわち磁石がくっつく金属)である必要がある。
【0035】
上側加熱手段151と下側加熱手段152の間には、樹脂製シートSが搬送されるため、この樹脂製シートSの搬送される面で上部断熱シート161と下部断熱シート171に断熱部材が分かれている必要がある。また、後述するように上部断熱シート161と下部断熱シート171は樹脂製シートSの搬送や、上述した冷却手段157や、電気配線などと干渉しないように設けられる必要がある。
【0036】
図4に、下部断熱シート171の断面図を示す。
図5及び
図6に、加熱部150の斜視図を示す。下部断熱シート171の構成は、耐熱性を有する繊維に飛散しにくいシリコーン(登録商標)コーティングを施したシリコーンコーティング・ガラスクロスよりなる外皮172に、その内部に断熱性を向上させるためのグラスウールなどの断熱材を充填させた断熱素材173が包まれてなる。断熱材の厚みは、厚さ5~15mm程度としている。縫製箇所158は、テフロン(登録商標)加工されたガラスヤーンなどの耐熱性を持った糸で縫製されてなる。断熱素材173は外皮172に包まれて上下左右に設けられた縫製箇所158によって閉じられ、外部に飛散しないようになっている。
【0037】
下部断熱シート171は、保持具156によって下側筐体152bの側面に保持されている。
保持具156は、ボルト156aとナット156bと耐熱マグネット156cよりなり、複数の保持具156が下部断熱シート171に固定されている。耐熱マグネット156cは例えば高い耐熱性を示すサマリウムコバルト磁石やアルニコ磁石などを用いることが望ましい。これは加熱部150が高温になった場合にも減磁しないことが要求されるからである。
【0038】
保持具156は、境界縫製箇所158bを挟んで加熱部ゾーン171bと供給部ゾーン171aに分けられており、境界縫製箇所158bを目印にして位置決めすることが可能となっている。保持具156が設けられるのは加熱部ゾーン171bであり、供給部ゾーン171aは下部筐体152bから上側に向けて突出する部分となっている。この保持具156によって、上部断熱シート161は上側筐体151bの両外側面に貼り付けられ、下部断熱シート171は下側筐体152bの両外側面に貼り付けられる。なお、上側筐体151bの上面或いは下側筐体152bの下面にも図示しない断熱材が別途設けられていることが望ましい。
【0039】
そして下部断熱シート171には、
図5に示す様に一定間隔で袋状縫製部171cが設けられている。袋状縫製部171cは下部筐体152bの長手方向、すなわち樹脂製シートSの搬送方向に直交するように配置され、その内部に図示しない支柱となる骨材として金属製の平板が挿入されている。これにより、下部断熱シート171は自立することができ、供給部ゾーン171aが垂れ下がることなく保持される。なお、骨材に使う素材は耐熱性能と下部断熱シート171がずれないよう軽量な性質が求められ、鉄板を用いることが望ましく、その角は下部断熱シート171を傷つけないよう丸く削られていることが望ましい。もちろん、鉄以外の素材を用いることを妨げない。
【0040】
上部断熱シート161にも下部断熱シート171と同様にして、境界縫製箇所158aを挟んで供給部ゾーン161aと加熱部ゾーン161bとが設けられている。そして、加熱部ゾーン161bが上部筐体151bの側面に当接する部分となり、供給部ゾーン161aは上部筐体151bから下側に向けて突出する部分となっている。供給部ゾーン161a、171aの突出長さは、把持部155dや他の突起(冷却手段157など)、或いは搬送機構155と干渉しないように設定される。加熱部ゾーン161bには複数の保持具156が設けられていて、上部断熱シート161も下部断熱シート171と同様にして上部筐体151bに対して着脱容易に設けられている。
【0041】
また、上部断熱シート161及び下部断熱シート171には、
図6に示す様に、配線154や冷却手段157に必要な切り込みが設けられている。配線154は、下側加熱手段152に接続されて電力を供給している。なお、
図6には配線154を一カ所だけ設けている絵としているが、図示しない配線を複数設けることを妨げない。そして、上側断熱シート161には切り込み部161dが複数設けられ、下側断熱シート171にも切り込み部171dが複数設けられている。
【0042】
上側断熱シート161に設けられた切り込み部161dは、冷却手段157が移動した場合に支障がないように供給部ゾーン161aにスリットが設けられている。下側断熱シート171に設けられた切り込み部171dは、配線154を避けて下側断熱シート171が取り外し可能なように設けられている。このように、上側断熱シート161や下側断熱シート171には加熱部150に設けられた突起、すなわち上側筐体151bの側面から突出する形で設けられる部分を避けられるように切り込み部161d、171dが適宜設けられることが好ましい。こうした突起物の形状や箇所は熱成形装置100の構成によっても異なるので、突起物に対応した切り込み部161d、171d或いは切り欠き部が設けられることが必要となる。
【0043】
本実施形態の熱成形装置100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0044】
まず、熱成形装置で使用する消費電力を抑えることができ、省エネ化を図ることが可能になる。これは、樹脂製シートSの加熱を上側から行う上側加熱手段151と下側から行う下側加熱手段152を有する加熱部150と、樹脂製シートSの成形を行う成形部200と、樹脂製シートSを搬送する搬送機構155を備える熱成形装置100において、上側加熱手段151および下側加熱手段152の外側面に、断熱シート(上部断熱シート161および下部断熱シート171)が脱着可能に固定されてなる。
【0045】
そして、断熱シート(上部断熱シート161および下部断熱シート171)は、断熱性を有する布製材料が縫製されて形成され、搬送機構155で搬送される樹脂製シートSの搬送面で分割された上側に配置され、上側加熱手段151の外側面に固定される上側断熱シート161と、加熱部150の下側に配置され、下側加熱手段152の外側面に固定される下側断熱シート171を含む。そして、上側断熱シート161と下側断熱シート171は、加熱部150の外面に接する加熱部ゾーン161b、171bと、加熱部ゾーン161b、171bから搬送面側に延設される供給部ゾーン161a、171aとを有し、下側断熱シート171には、一定間隔で平行に、かつ樹脂製シートSの送り方向に対して直角に設けられた柱部(袋状縫製部171c)が設けられて、袋状縫製部171cには骨材が通されているからである。
【0046】
熱成形装置100の加熱部150には、上側加熱手段151と下側加熱手段152によって樹脂製シートSの上下から加熱する構成を採用している。このために従来は課題に示したように側面からの熱の放散が防げずにいたが、上側加熱手段151の両側面に上側断熱シート161を貼り、下側加熱手段152の両側面に下側断熱シート171を貼ることで、熱の放散を防ぐことができる。
【0047】
具体的には、上側加熱手段151が上側ヒーター板151aと上側筐体151bよりなり、上側筐体151bの側面に上側断熱シート161が保持されていることと、下側加熱手段152が下側ヒーター板152aと下側筐体152bよりなり、下側筐体152bの側面に下側断熱シート171が保持されていることで、側面からの放熱を抑えることに貢献している。また、上側断熱シート161および下側断熱シート171に供給部ゾーン161a、171aを備えていることで、樹脂製シートS搬送部分の開口面積を小さくすることが可能である。
【0048】
原反ロール111から長尺の樹脂製シートSを巻き出すタイプの熱成形装置100は、搬送機構155が巻出部110から加熱部150を通過して成形部200へと樹脂製シートSを搬送する。このため、
図2に示す様に樹脂製シートSの幅方向端部に搬送機構155が配置され、樹脂製シートSの端部を把持して搬送する構造となっている。したがって、
図3に示す側面開口部A1と、
図1に示す搬出側開口部A2、搬入側開口部A3の何れもが解放されることになる。こうした構造から、従来は断熱材を設けることが困難で、効果は限定的だろうとされてきた。
【0049】
しかし、上側断熱シート161および下側断熱シート171を用い、上側断熱シート161および下側断熱シート171に供給部ゾーン161a、171aを備えていることで、出願人の調査によれば従来比5~10%の省エネ効果が見込めることがわかった。電力量の比較は、熱成形装置100を上側断熱シート161および下側断熱シート171を取り付けた場合と外した場合で運転し、電力量が安定したところで一定時間の平均電力量を求めて算出している。この結果、同じ条件設定でも電流値、電力量共に下げられることを確認している。また、副次的効果として側面からの放熱を抑えることで環境温度を抑えて作業性能改善を見込める。このことは、工場内の温度上昇を抑えることに繋がり、結果的にこちらも省エネ効果がある。
【0050】
側面開口部A1の解放面積をできるだけ小さくする為の工夫として、下側断熱シート171の供給部ゾーン171aは自立可能なように骨材となる金属板を挿入できる袋状縫製部171cを複数設け、結果的に自立できるような構成となっている。このために樹脂製シートSや搬送機構155と干渉しない位置であって、できる限り側面開口部A1が狭くなるような調整が可能である。
【0051】
また、上側断熱シート161と下側断熱シート171の固定手段として、耐熱性を有する磁石を用い、上側筐体151bと下側筐体152bの外側面に、強磁性を示す金属が用いられることで、上側断熱シート161と下側断熱シート171の着脱を容易にしてメンテナンス性を高めている。上側断熱シート161と下側断熱シート171の固定手段として用いられる保持具156には、耐熱マグネット156cを用いていて、一方の上側筐体151bと下側筐体152bは、強磁性を示す金属、すなわち鋼板を用いているために、着脱が容易である。このために加熱部150のメンテナンスの際には、上側断熱シート161と下側断熱シート171の取り外しを容易にしている。
【0052】
また、上側断熱シート161の供給部ゾーン161aと加熱部ゾーン161bは、境界縫製箇所158aを挟んで設けられている。下側断熱シート171の供給部ゾーン171aと加熱部ゾーン171bは、境界縫製箇所158aを挟んで設けられている。したがって、上側断熱シート161と下側断熱シート171を上側筐体151bと下側筐体152bに貼り付ける際にも、境界縫製箇所158aと境界縫製箇所158aを目印として位置決めができるために施工しやすい。このような構成もメンテナンス性の向上に貢献している。
【0053】
また、
図6に示す様に上側断熱シート161に設けられた切り込み部161dは、冷却手段157が移動した場合に対応するように供給部ゾーン161aに切り欠き部やスリットが複数設けられている。下側断熱シート171に設けられた切り込み部171dは、配線154を避けて下側断熱シート171が取り外し可能なように設けられている。こうした切り込み部161d、切り込み部171dが適宜設けられることで、上側断熱シート161及び下側断熱シート171の取り外しが容易に行えるように工夫されている。そして、
図3に示す側面開口部A1の開口面積が最小限になるよう配慮されているので、熱成形装置100の運用を妨げることがない。
【0054】
以上、本発明に係る熱成形装置100に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態の熱成形装置100には、輻射式加熱を行うヒーター153が用いられていると説明しているが、必要に応じて熱板を用いた加熱方式にすることを妨げない。
【符号の説明】
【0055】
S 樹脂製シート
100 熱成形装置
150 加熱部
151 上側加熱手段
152 下側加熱手段
155 搬送機構
161 上部断熱シート
161a 供給部ゾーン
161b 加熱部ゾーン
171 下部断熱シート
171a 供給部ゾーン
171b 加熱部ゾーン
171c 袋状縫製部
200 成形部
【要約】
【課題】本発明は加熱部における省エネを実現可能な熱成形装置の提供。
【解決手段】樹脂製シートSの加熱を上側から行う上側加熱手段151と下側から行う下側加熱手段152を有する加熱部150と、樹脂製シートSの成形を行う成形部200と、樹脂製シートSを搬送する搬送機構155を備える熱成形装置100において、上側加熱手段151および下側加熱手段152の外側面に、断熱シート(上部断熱シート161および下部断熱シート171)が脱着可能に固定されること。
【選択図】
図2