(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】磁気吸着解除具、及び、それを装着した磁気吸着可能な器材又はキット
(51)【国際特許分類】
A47G 29/00 20060101AFI20241115BHJP
G09F 7/18 20060101ALI20241115BHJP
A47B 96/02 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
A47G29/00 J
G09F7/18 J
A47B96/02 D
(21)【出願番号】P 2021065027
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020069318
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和 2年11月11~13日に開催されたJapanHome&BuildingShow2020に出品。 令和 3年 3月 9~12日に開催されたJAPAN SHOP 2021に出品。
(73)【特許権者】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 義幸
(72)【発明者】
【氏名】東江 楡人
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-277581(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143389(JP,U)
【文献】特開昭61-074908(JP,A)
【文献】特開平06-336139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/00
G09F 7/18
A47B 96/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気吸着力を備えた板状部材に装着して使用する磁気吸着解除具であって、
上記磁気吸着力を備えた板状部材形成された貫通孔の下端周囲に当接する
と共に、その下端を上記磁気吸着力を備えた板状部材の下端と同一あるいは略同一とした鍔部を有するユニット本体と、
上記ユニット本体の下方に出没可能に収納される突き出しコマと、
上記ユニット本体の上方に設けた上記突き出しコマの操作部とでなる解除具ユニットと、
上記ユニット本体の側面に設けた上記磁気吸着力のある板状部材への取り付け手段とで構成することを特徴とする磁気吸着解除具。
【請求項2】
ユニット本体には、下方に出没可能に突き出しコマを収納し、上部には上記突き出しコマの操作部としての押し出しレバーを上面開放面を覆いつつ回動自在に取り付けることにより、
上記押し出しレバーを直立状態とした際、その下端により、上記突き出しコマが、その下部を上記ユニット本体の下方に略移動不動な状態に突出させて保持させることを特徴とする請求項1に記載の磁気吸着解除具。
【請求項3】
押し出しレバーの下端には強磁性体製の吸着ピンが固定され、突き出しコマは磁気吸着力を有するものとし、さらに、上記ユニット本体の上記突き出しコマの下移動を受け止める部位は強磁性体製とすることにより、
常時、上記突き出しコマは、上記ユニット本体の下方に磁気吸着されて下部が突出状態となると共に、その上面に上記押し出しレバーの下端に固定された吸着ピンを磁気吸着することにより、上記押し出しレバーを直立状態に保持することができることを特徴とする請求項2に記載の磁気吸着解除具。
【請求項4】
ユニット本体の内面にねじ部を形成し、突き出しコマは、そこに螺合してユニット本体の下方に下端部が出没可能に収納されると共に、上端部に突き出しコマの操作部を形成することを特徴とする請求項1に記載の磁気吸着解除具。
【請求項5】
ユニット本体内面と突き出しコマとの螺合は、いずれか一方を突出ピンとし、他方をそれの移動が可能な上下方向に傾斜させた篏合溝で代用することを特徴とする請求項4に記載の磁気吸着解除具。
【請求項6】
篏合溝の下端は、略水平状として、突出ピンの上下動を規制することを可能としたことを特徴とする請求項5に記載の磁気吸着解除具。
【請求項7】
磁気吸着力のある板状部材への取り付け手段は、内面がユニット本体の上方の側面に形成した溝部に篏合し、側面が上記ユニット本体の上方の側面から突出するように取り付けられる板状の止め輪で行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気吸着解除具。
【請求項8】
磁気吸着解除具には、下部が突き出しコマの操作部の外面を覆うように形成されその上方に操作腕部が設けられた作動用治具をも備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気吸着解除具。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の磁気吸着解除具と、それらの磁気吸着解除具を下方から挿入でき、磁気吸着解除具のユニット本体に形成された鍔部で挿入が止まる挿入孔を少なくとも1個形成した板状部を有し、かつ、磁気吸着力を備えた器材とで構成することを特徴とする磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気吸着させた器材の磁気吸着力の解除に使用する部材、及び、それを装着したマグネット付き等の磁気吸着可能な器材やキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板を使用した冷蔵庫や家具あるいは壁面に磁気吸着させて使用する小型の製品は広く知られており、その磁気吸着力を解除させる技術も、例えば特許文献1に開示されるもの等が存在している。
一方で、建造物の壁面等の大きな面に対して比較的大きなパネルや棚等の器材を磁気吸着力で取り付ける事例は意外と少ないのが実情であり、その原因としては、それを実施するには大きな磁気吸着力必要となるが、現状ではそれを簡単に解除する技術がないため、取り外すのに困難が伴い敬遠されてきたものと推測される。
具体的に、このような場合に磁気吸着力を解除するには、壁面と器材の間に先細のドライバー等の先端を叩き込む等して差し込むことが行われているが、なかなか上手くいかず、さらに器材や壁面を傷つけるという不都合をも伴うものであった。
なお、壁面に取り付ける各種の器材は視覚的に目立つため、その取り付けに際しては美観を損なわないような配慮が必要となり、その観点からも、適した技術が想到され得なかったものとも考えられる。
ただ、各種器材をマグネットで取り付けること自体は構造が簡単で、かつ、配置の自由度や装飾性等の美観の点で優れていることは自明であり、課題となる磁気吸着力を簡単に解除できる技術が、潜在的に求められていることは疑う余地のない状況にあるものと思われる。
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、比較的大きな磁気吸着力を必要とする大きなパネルや棚等でも簡単に磁気吸着力を解除させて取り外すことができ、しかも、美観を損なうことのない、磁気吸着解除具および磁気吸着解除具を装着したマグネット付き器材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討したところ、磁気吸着している板状パネルや器材は比較的大きな器材であっても、一部分で確実に磁気吸着を外すことができれば全体の磁気吸着を解除できることが究明できた。
具体的には、本発明は、磁気吸着力を備えた板状部材に形成された貫通孔の下端周囲に当接する鍔部を有するユニット本体と、ユニット本体の下方に出没可能に収納される突き出しコマと、ユニット本体の上方に設けた突き出しコマの操作部とでなる解除具ユニットと、ユニット本体の側面に設けた磁気吸着力のある板状部材への取り付け手段とで構成する磁気吸着解除具を使用することで実現できる。
【0006】
このような構成とすると構造が簡単で、小型化することができ、操作も簡単にできる利点がある。
【0007】
なお、磁気吸着解除具は、ユニット本体には、下方に出没可能に突き出しコマを収納し、上部には突き出しコマの操作部としての押し出しレバーを上面開放面を覆いつつ回動自在に取り付けることにより、押し出しレバーを直立状態とした際、その下端により、突き出しコマが、その下部をユニット本体の下方に略移動不動な状態に突出させて保持させる構成として実現することができる。
【0008】
この構成によれば、押し出しレバーの回動だけで突き出しコマが下方に移動して、ユニット本体の下方から突出し、磁気吸着を解除することができるので、簡単な操作で実現することができる。
【0009】
この構成においては、押し出しレバーの下端には強磁性体製の吸着ピンが固定され、突き出しコマは磁気吸着力を有するものとし、さらに、ユニット本体の突き出しコマの下移動を受け止める部位は強磁性体製とすることにより、常時、突き出しコマは、ユニット本体の下方に磁気吸着されて下部が突出状態となると共に、その上面に押し出しレバーの下端に固定された吸着ピンを磁気吸着することにより、押し出しレバーを直立状態に保持することができること構成を付加するのが好ましい対応となる。
【0010】
この場合には、押し出しレバーと突き出しコマの作動が磁気吸着解除具内で磁気吸着によって連動して行われれるので、作動の確実性が目視にて判断ができる利点がある。
【0011】
なお、磁気吸着解除具は、ユニット本体の内面にねじ部を形成し、突き出しコマは、そこに螺合してユニット本体の下方に下端部が出没可能に収納されると共に、上端部に突き出しコマの操作部を形成する構成としても実現できる。
【0012】
この構成であれば、構造はさらに簡単にして実現可能である。
このように、突き出しコマを作動させる構成は、単純なねじ構造でも実現可能であり、本発明を実施させる構成は、これらに限定されるものではないことを示唆している。
【0013】
さらに、このねじ構造については、ユニット本体内面と突き出しコマとの螺合は、いずれか一方を突出ピンとし、他方をそれの移動が可能な上下方向に傾斜させた篏合溝で代用させることもでき、さらに構造を簡素化させることもできる。
【0014】
しかも、この構成においては、篏合溝の下端は、略水平状として、突出ピンの上下動を規制することを可能とする利点があるので、突き出しコマの押し込み状態を維持することができ、磁気解除作業において好適に使用することができる。
【0015】
また、磁気吸着解除具における吸着力のある板状部材への取り付け手段は、内面が本体の上方の側面に形成した溝部に篏合し、側面が上記ユニット本体の上方の側面から突出するように取り付けられる板状の止め輪で行うようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、吸着力のある板状部材への取り付け手段は、簡単、かつ、確実に行うことができるので好適である。
【0017】
なお、磁気吸着解除具には、下部が突き出しコマの操作部の外面を覆うように形成されその上方に操作腕部が設けられた作動用治具をも備えるのが好ましい対応となる。
【0018】
作動用治具を用いると、操作時に操作腕部に回転モーメントが働くので、操作力を低減させることができ、操作性が優れたものとなる。
【0019】
さらに、本発明は、上述した各磁気吸着解除具と、それらの磁気吸着解除具を下方から挿入でき、磁気吸着解除具のユニット本体に形成された鍔部で挿入が止まる挿入孔を少なくとも1個形成した板状部を有し、かつ、磁気吸着力を備えた器材とで構成する磁気吸着解除具装着の磁気吸着力を備えた器材又はキットとして実施することができる。
【0020】
この磁気吸着解除部材を装着したマグネット付き器材は、比較的大型な器材となっても、磁気吸着力を簡単に解除できるので、強磁性体製の壁に強固に磁気吸着で取り付けることができるという利点がある。
また、磁気吸着解除具が小型のため装飾性を損なうこともない利点もある。
【発明の効果】
【0021】
本発明による磁気吸着解除具は、簡単な構成でありながら、簡単な操作で確実に磁気吸着力を解除させることができる。
従って、小型の形態で実施できるので、製造が簡単にでき、低コストで実現できるという効果がある。
さらに、小型で実施できる特徴から、それを使用するパネルや棚等の器材の美観を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る実施例1の構成を表わしものであり、(a)は分解斜視図、(b)は取り付け部材挿入図、(c)は取り付け状態の斜視図を示す。
【
図2】本発明に係る実施例1の解除具ユニットを表したものであり、(a)は分解斜視図、(b)は組み立て状態の断面図、(c)は組み立て状態の別の断面図を示す。
【
図3】本発明に係る実施例1の磁気吸着解除具を磁気吸着力を備えた板状部材に取り付けた状態の断面図を示す。
【
図4】本発明に係る実施例1の磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材を表したものであり、(a)は表面側から見た斜視図、(b)は裏面側から見た斜視図を示す。
【
図5】本発明に係る実施例1の他の磁気吸着力を備えた器材を表したものであり、(a)は棚付きの器材の斜視図、(b)はボックス状の器材の部分切断の斜視図を示す。
【
図6】本発明に係る実施例1の磁気吸着解除具の操作手順を表した断面図であり、(a)は磁気吸着前状態、(b)は磁気吸着状態、(c)は磁気吸着解除状態を示す。
【
図7】本発明に係る実施例1の作動用治具使用による押し出しレバーの操作を表わした斜視図であり、(a)は作動用治具を上から見た斜視図、(b)は作動用治具を下から見た斜視図、(c)は磁気吸着解除具を装着した状態の部分斜視図を表している。
【
図8】本発明に係る実施例1の作動用治具装着状態を表したものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は拡大断面図を示している。
【
図9】本発明に係る実施例1の作動用治具の使用状態を表したものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図を示している。
【
図10】本発明に係る実施例1の第1の変形例を表したものであり、(a)は斜視図、(b)は部分断面図を示している。
【
図11】本発明に係る実施例1の第2の変形例を表したものであり、(a)は斜視図、(b)は部分断面図を示している。
【
図12】本発明に係る実施例1の第3の変形例を表したものであり、(a)は斜視図、(b)は部分断面図を示している。
【
図13】本発明に係る実施例2の磁気吸着解除具を表したものであり、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態の斜視図、(c)は磁気吸着力を備えた板状部材取付状態の断面図を示す。
【
図14】本発明に係る実施例3の磁気吸着解除具を表したものであり、(a)は解除具ユニットの分解斜視図、(b)は組立状態の斜視図、(c)は解除具ユニットの組立状態の断面図を示す。
【
図15】本発明に係る実施例3の磁気吸着解除具の取り付け状態を表したものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図に示す。
【
図16】本発明に係る実施例3の作動用治具の装着を表した斜視図であり、(a)は装着前、(b)は装着状態を示す。
【
図17】本発明に係る実施例3における磁気吸着力を解除させる作用を表した断面図であり、(a)は磁気吸着状態、(b)は磁気吸着解除状態を示す。
【
図18】本発明に係る実施例4の磁気吸着解除具の概要を表したものであり、(a)は分解斜視図、(b)は板状の止め輪の取付構成、(c)は板状部材へのねじ止め構成を示している。
【
図19】本発明に係る実施例4のユニット本体の内面に形成される篏合溝を表わしたものであり、(a)は全体の展開図、(b)はA矢視状態の展開図、(c)はB矢視状態の展開図を示している。
【
図20】本発明に係る実施例4の磁気吸着解除具の突出ピンが回転する前の状態を表わしたものであり、(a)は斜視図、(b)はC-D断面図を示している。
【
図21】本発明に係る実施例4の磁気吸着解除具の突出ピンが最後まで回転したの状態を表わしたものであり、(a)は斜視図、(b)はE-F断面図を示している。
【
図22】本発明に係る実施例4における磁気吸着力を解除させる作用を表した断面図であり、(a)は磁気吸着前の状態、(b)は磁気吸着状態、(c)は磁気吸着解除状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、強磁性体製の壁等に磁気吸着で取り付けられるマグネット付きのパネルや棚に取り付けて使用するところの、簡単に磁気吸着力を解除できる磁気吸着解除具、及び、その磁気吸着解除具と磁気吸着力を備えた器材とで構成する磁気吸着解除具を装着したマグネット付き器材又はキットに関するものであり、以下実施例に沿って詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1~
図3は、本発明の実施例1の構成を表したものであり、
図1は構成の概要を示す斜視図、
図2は構成の主体をなす解除具ユニットの構成を表す分解斜視図及び組み立て状態の断面図、
図3は構成の全体を表す組み立て状態の断面図を示している。
【0025】
実施例1の磁気吸着解除具1は、
図1(a)~(c)の斜視図に示すように、おおよそ解除具ユニット3と取り付け手段としての板状の止め輪4とで構成されており、磁気吸着力を備えた板状部材2に取り付けて使用する。
なお、5は、解除具ユニット3のユニット本体であり、具体的内容は後述するが、その部材の下端には鍔部5g、上方には溝部5eが形成されている。
【0026】
磁気吸着力を備えた板状部材2は、木製・合合成材料等の適宜の材料でなる板状部材Paとマグネットシートでなる磁気吸着部材Pbで構成され、そこには上記解除具ユニット3が下方から差し込め、ユニット本体5の鍔部5gを受け止めることができる大きさの貫通穴Pcが開けられたものを使用する。
【0027】
但し、磁気吸着部材Pbはこのマグネットシートに限らず他の磁石でもよく、形状も限定されないものであり、さらには板状部材Pa自体に磁気吸着性能を持たせて省略してもよく、要は磁気吸着力を備えた板状部材2として仕上がればよいものである。
【0028】
板状の止め輪4は、解除具ユニット3を磁気吸着力を備えた板状部材2から外れないように使用するであり、本実施例ではステンレス製のクリセント形止め輪(CE型リング)を2枚使用しているが、形状はE形止め輪(Eリング)等でもよく、枚数も状況に応じて選択すればよい。
【0029】
磁気吸着解除具1を磁気吸着力を備えた板状部材2に取り付ける手順は、
図1(a)の分解斜視図に示すように、先ず、磁気吸着解除具1の解除具ユニット3を、磁気吸着力を備えた板状部材2に形成された貫通穴Pcの下方から矢印に示すように差し込む。
すると、解除具ユニット3のユニット本体5の鍔部5gが磁気吸着力を備えた板状部材2の下面に当接するので、この状態で、
図1(b)の取り付け部材挿入図に示すように、板状の止め輪4を矢印のように解除具ユニット3のユニット本体5の溝部5eに差し込むと、
図1(c)の取り付け状態の斜視図ように、磁気吸着解除具1は磁気吸着力を備えた板状部材2に、抜け止めしない状態に取り付けられる。
【0030】
図2は、上記の解除具ユニット3を表したものであり、
図2(a)は分解斜視図、
図2(b)は
図1で示す組み立て状態のA-B線の断面図、
図2(c)は
図1で示す組み立て状態のC-D線の断面図を示している。
【0031】
解除具ユニット3は外形が約20mm程度の小型でコンパクトに作製できるもので、凡そ、ユニット本体5、突き出しコマ6、突き出しコマ6を操作する押し出しレバー7、突き出しコマ6の受け部材13、操作レバー7を軸支する回転軸14とからなっている。
【0032】
押し出しレバー7は、突き出しコマ6の操作部となるものであり、レバー本体8はナイロン等の樹脂製で、後端8aには孔部8bが形成され、後部上面には位置決め凹部8c、中央側面には上記回転軸14が回転在に差し込まれる貫通孔8d、前よりの上部側面には左右に突出部8g、前端には引掻け部8e、位置決め用切り欠き8fが夫々設けられる。
そして、上記後端8aに形成された孔部8bに、強磁性体製の金属でなる吸着ピン9が圧入されたり接着する等の適宜の手段で取り付けられる。
【0033】
突き出しコマ6は、ナイロン等の樹脂製でなる突き出しコマ本体10の側面部10aに設けられた穴部10bからネオジム等の磁石11が差し込まれ、さらに下方から設けられたピン孔10cから金属製等の適宜の材料でなる固定ピン12を差し込み固定することで磁石11が移動不能にとりつけられ、磁気吸着性を有するものとなっている。
そして、上面には、上記押し出しレバー7の後端8aが入り込む凹部10d、下部には球状部10eが形成され、この球状部10eと側面部10aの下端に段部10fが形成される。
【0034】
なお、本部材の磁気吸着性をもたせる構成は、上記構成に限らず適宜に選択して実施でき、さらに、押し出しコマ本体10自体に磁気吸着性をもたせて、別の磁石部材を使用しないようにしてもよい。
【0035】
ユニット本体5はナイロン等の樹脂製となっており、上面は、上記押し出しレバー7が回動できるようなレバー挿入部5aを形成することによって解放され、側面から下面にかけては、上記押し出しコマ6が挿入し移動できるように下面が解放された筒状部5bとなっている。
そして、上記レバー挿入部15aには、軸支孔5cが
図2(c)の断面図に示すように一端が封鎖されるように形成されている。
但しこの封鎖は、必ずしも必要ではなく、解放しても構わない。
【0036】
また、上面には、上記押し出しレバー7の突出部8gが篏合する凹部5dが設けられ、側面上方には、上述した板状の止め輪4が挿入する溝部5eが形成される。
さらに、側面には上下2か所の楔部5fが全周で4か所設けられ、下端には側方に突出する形態の鍔部5gが形成される。
また、内面の下方には
図2(b)、
図2(c)の断面図に示すように全周に溝部5hが設けられる。
【0037】
なお、図中13は、突き出しコマ6の受け部材であり、材料は磁石が磁気吸着する強磁性体製の金属で、中間が除去された形態の板状の止め輪が使用される。
また、図中14は、回転軸で、上記押し出しレバー7を5上記ユニット本体5に回転可能に取り付けるために使用するものだが、後述するように大きな力がかかるため、これらの条件を満たす適宜の材料を使用することになる。
従って通常は金属製の丸棒が好ましいが、条件を満たせば、波型ロールピン等を使用しても問題ない。
【0038】
以上のような部材からなる解除具ユニット3は、次のように組み立てられる。
先ず、ユニット本体5の下方から、突き出しコマ6を挿入すると、上面がユニット本体5に形成されたレバー挿入部5aの下面に当接するように収納される。
そして、その状態から、さらに受け部材13を挿入して、ユニット本体5の内面の下方に設けられた溝部5hに取り付けると、突き出しコマ6は、その突き出しコマ本体10に形成された段部10fが、この受け部材13に当接するまでユニット本体5内を移動可能に、言い換えれば、突き出しコマ6の下部の球状部10eがユニット本体5の下方から出没可能に収納される。
【0039】
但し、通常は、強磁性体製の受け部材13に対し、磁気吸着力のある突き出しコマ6が磁気吸着するため、突き出しコマ6の下部の球状部10eがユニット本体5の下方から突出した状態で収納されることになる。
【0040】
次に、ユニット本体5の上方に形成されたレバー挿入部5aに、押し出しレバー7を挿入し、ユニット本体5の軸支孔5cと、レバー本体8に設けられた貫通孔8dに、上記の回転軸14を差し込んで適宜の方法で固定すると、押し出しレバー7はユニット本体5に回転自在に取り付けられる。
【0041】
但し、この場合も、通常は、
図3(b)および
図3(c)に示すように、気吸着力のある突き出しコマ6の上面に対して、押し出しレバー7の後部に取り付けられている強磁性体製の吸着ピン9が磁気吸着するため、押し出しレバー7は先端の引掻け部8eが上方に位置するように保持されることになる。
【0042】
図3は、
図1(c)に表わす解除具ユニット3を磁気吸着力を備えた板状部材2に取り付けた状態の断面図を示したものである。
即ち、解除具ユニット3は、磁気吸着力を備えた板状部材2の貫通穴Pcの下方から差し込んだ状態で露出する、ユニット本体5の溝部5eに板状の止め輪4を差し込まれることにより、磁気吸着力を備えた板状部材2に取り付けられる状態を表している。
この時、ユニット本体5に設けられた楔部5fは、磁気吸着力を備えた板状部材2の貫通穴Pcに楔状に食い込んで外れにくいよう作用する。
【0043】
また、ユニット本体5の鍔部5gの下端は、磁気吸着力を備えた板状部材2の下端と同一あるいは若干引っ込んだ状態に位置するのが好ましい対応となる。
但し、磁気吸着力を備えた板状部材2を、後述するように、強磁性体製の壁面等に磁気吸着させた際、確実に磁気吸着できていれば、若干突出しても支障はない。
【0044】
これまで説明してきた磁気吸着力を備えた板状部材2は、各種の磁気吸着力を備えた器材として展開することが可能であり、また、この磁気吸着力を備えた器材に、磁気吸着解除具1を取り付けたところの、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材として実施することもできる。
【0045】
図4は、磁気吸着解除具1を取り付けた磁気吸着力を備えた器材21とからなる、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材25を表したものであり、
図4(a)は表面側から見た斜視図、
図4(b)は裏面側から見た斜視図を示したものである。
これらの図に示すように、磁気吸着解除具1を装着した磁気吸着力を備えた器材21としての板状のパネル21aは、横長で、4隅に貫通穴Pcが設けられ、裏面には、帯状の磁気吸着部材Pb1が3本取り付けた形態が示されている点が、上述した磁気吸着力を備えた板状部材2にはなかったことになるので詳しく説明し、それ以外の内容は重複することになるので説明を割愛する。
【0046】
なお、以下に示すところの、磁気吸着解除具を取り付けた磁気吸着力を備えた器材は、一体化する以外に、それぞれの部材を組み立てて仕上げることのできるキットとして応用してもよい。
【0047】
本発明においては、後述する磁気吸着解除の原理から、貫通穴Pcをパネル21aのできる限り隅に設けるのが効果的である。具体的には、磁気吸着解除具1の外形が20mmのものを通す孔の場合、
図4(a)で示すY,Zの寸法はそれぞれ20mm程度の小さい寸法とするのが好ましい対応となる。
【0048】
また、その貫通孔の数は、図では4個を示しているが、これはどの隅でも対応できることを表したものであって、後述する磁気吸着解除の原理から、1か所でも確実に磁気吸着力を解除できれば良いので、基本的には1個で対応することが可能である。
【0049】
但し、上述した作業性の観点や、パネル21a剛性の程度や、強磁性体製の壁面等との磁気吸着力の強さの度合い等によっては解除性能が低下する可能性があるため、それを補うことができるように磁気吸着解除具1を複数設置できるようにする観点等から、孔の数や位置は使用条件によって適宜に選択し実施することができる。
【0050】
なお、パネルの形状は、横長に限らず、正方形、多角形等任意の形状で実施できる。
また、磁気吸着部材の形状も、上記した帯状の磁気吸着部材Pb1に限らず、自由に選択し実施できることは言うまでもなく、さらに、前述した磁気吸着力を備えた板状部材2でも示したように、磁気吸着力を備えた板状部材2とすることができればどのような構成であっても構わないものである。
【0051】
従って、このように構成されたパネル21aに、磁気吸着解除具1を取り付ければ、磁気吸着解除具装着の磁気吸着力を備えた器材25として実施することが可能である。
なお、磁気吸着解除具1を装着した磁気吸着力を備えた器材の形態は、パネル状以外で実施することもできる。
【0052】
図5は、他の磁気吸着力を備えた器材の形態を表したものであり、
図5(a)は棚付きの器材22の斜視図、
図5(b)はボックス状の器材23の部分切断の斜視図を示している。
棚付きの器材22は、
図5(a)に示すように、長方形の板状部22aの下端に棚部22bを設けたものであり、板状部22aの4隅には貫通穴Pcが夫々設けられ、裏面には図示しない磁気吸着部材が取り付けられた形態となっている。
ボックス状の器材23は、
図5(b)に示すように、長方形の板状部23aと、その周囲を覆うように前方に突出して設けられる壁面部23bとでボックス状に形成されたものであり、板状部23aの4隅には貫通穴Pcが夫々設けられ、裏面には図示しない磁気吸着部材が取り付けられた形態となっている。
【0053】
これらが示すように、磁気吸着力を備えた器材の形態は、パネル以外でも自由な形態で実施することが可能である。
そして、これらの各種の磁気吸着力を備えた器材に、磁気吸着解除具1を取り付ければ、各種形態の、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材として実施することもできる。
【0054】
図6は、
図4(a)に示す、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材25における磁気吸着解除具1の操作手順を表した断面図であり、
図6(a)は強磁性体製でなる壁等の被着体Wへの装着の前状態即ち磁気吸着の前状態、
図6(b)は磁気吸着状態、
図6(c)は磁気吸着の解除状態を示している。
【0055】
具体的には、先ず
図6(a)のように磁気吸着解除具1のレバー本体8における引掻け部8eを指Fで前方向に押さえる。すると、突き出しコマ6は、上面が解放された状態で突き出しコマ本体10の下方に形成された球状部10eが磁気吸着力を備えた板状部材2の下方から突出した状態でユニット本体5内に位置することになる。
この状態で、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材25の下面を強磁性体製の被着体Wに近づけると、
図6(b)に示すように板状部材Paに取り付けられた磁気吸着部材Pbが磁気吸着することにより、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材25は強磁性体製の被着体Wに磁気吸着で装着する。なお、この時、突き出しコマ6は上方が解放しているため、ユニット本体5内部にすべてが収納されて維持されることになる。
【0056】
そして、この磁気吸着状態を解除させるには、先ず、
図6(b)に示したレバー本体8における引掻け部8eを指で上方に持ち上げる。すると、レバー本体8はユニット本体5に軸支している回転軸14を起点に、レバー本体8における引掻け部8eは矢印の方向に回転を始める。
【0057】
さらに、レバー本体8を直立状態まで回転させると、
図6(c)に示すように、レバー本体8の後端8aは、突き出しコマ本体10の上面を下方に押し込み、最終的には突き出しコマ本体10の上面に形成した凹部10dに入り込む。
この時、レバー本体8の後端8aに設けられている吸着ピン9と、突き出しコマ本体10に収納されている磁石11とが磁気吸着するため、突き出しコマ6は安定した状態で最大限下方に押し込まれることになる。
【0058】
すると、同時に、突き出しコマ本体10の下方に形成された球状部10eは、磁気吸着力を備えた板状部材2の下面から突出するため、磁気吸着力を備えた板状部材2は、その端部Pdを起点に反対側の端部Peは矢印の方向に持ち上がる。
その結果、磁気吸着力を備えた板状部材2の下面に取り付けられた磁気吸着部材Pbは、強磁性体製の被着体Wと離間することになって、磁気吸着状態は解除され、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着可能な器材25全体が簡単に取り外せることになる。
【0059】
このように、本願発明は、力のモーメントを利用したものであり、その特徴を生かすには、突き出しコマ本体10の下方に形成された球状部10eと強磁性体製の付着体Wとの接触点T~磁気吸着力を備えた板状部材2の端部Pdとの距離Lを最大限に取ると、レバー本体8における引掻け部8eを回転させる操作力が最小となるので効果的である。
【0060】
それは、磁気吸着力を備えた板状部材2の反対側の端部Pe~突き出しコマ本体10の下方に形成された球状部10eと強磁性体製の付着体Wとの接触点Tとの距離を最小にすることにつながるものであり、前述した
図4(a)におけるYの寸法を最小とすると説明した所以である。
【0061】
以上の通り、本発明における磁気吸着解除の手段は、磁気吸着解除具単独で行うものではなく、それを取り付ける器材の端部を利用するものである。
従って、磁気吸着解除具自体は簡単な構成で可能となるため小型で済む利点があり、さらに、このような小型であっても、原理的に大きな器材でも利用できるという利点も備えることになる。
【0062】
本実施例における、押し出しレバーの操作は、作動用治具を使うとしやすくなるので、
図7~
図9を用いて説明する
図7は使用前の斜視図、
図7(a)は作動用治具を上から見た斜視図、
図7(b)は作動用治具を下から見た斜視図、
図7(c)は磁気吸着解除具を装着した磁気吸着力を備えた器材25を強磁性体製の被着体Wに磁気吸着させた状態の部分斜視図を表している。
作動用治具15は剛性の高い合成樹脂或いは金属製でなり、おおよそ、操作腕部15a、操作摘み部15b、操作レバー覆い部15cから構成されている。
そして、操作レバー覆い部15cにおける、後部15dの内面に差し込み溝15eが形成され、その中央には位置決め凸部15fが設けられ、さらに、前部15gの裏側にも位置決め凸部15hが形成されていて、
図7(c)に表される磁気吸着解除具1の上部に備えられている押し出しレバー7に取り付けられることになる。
【0063】
図8は、その取り付け状態を表したものであり、
図8(a)は斜視図、
図8(b)は断面図、
図8(c)は拡大断面図を示している。
具体的には、
図8(c)のように、押し出しレバー7におけるレバー本体8の引掻け部8eには、作動用治具15の差し込み溝15eが、レバー本体8の位置決め用切り欠き8fには作動用治具15の位置決め凸部15fが、レバー本体8の位置決め凹部8cには作動用治具15の位置決め凸部15hが、それぞれ取り付けられる。
そしてこの状態から、
図8(b)における矢印のように作動用治具15を倒して使用することになる。
【0064】
図9は、その作動用治具の使用状態を表したものであり、
図9(a)は斜視図、
図9(b)は断面図を示している。
これらの図に示すように、押し出しレバー7は、作動用治具15によって確実に操作ができることがわかる。
作動用治具15は操作椀部15aの長さを大きくとれることにより、これも力のモーメント関係で、操作力を少なくすることができるので、磁気吸着力が強い場合や、指による操作がしにくい狭い箇所にも適しており、広く活用することができる。
なお、それ以外の作用等は、前述した作動用治具15を使わない場合と同様となるので、符号を付して説明は割愛する。
【0065】
本実施例は各種に変形して実施することが可能である。
図10は第1の変形例をあらわしたものであり、
図10(a)は斜視図、
図10(b)は部分断面図を示している。
この変形例は、前述した板状の止め輪4を別の態様で実施したものである。
本実施例における板状の止め輪4は、磁気吸着解除具1における解除具ユニット3が、磁気吸着力を備えた板状部材2から外れないように作用させるものであり、その用途を満たせれば、それ以上の大きな保持力は必要とされない。
従って他の態様に置き換えることは可能であり、この第1の変形例では、解除具ユニット3のユニット本体5の上部に取り付け爪部5jを設け、磁気吸着力を備えた板状部材2の貫通穴Pcの下方から差し込んだ時一旦後退した後、差し込み完了時に復元して、磁気吸着力を備えた板状部材2の上面に引っ掛かるようにしたものである。
このような構造でも、磁気吸着解除具1を磁気吸着力を備えた板状部材2に取り付けることは可能である。
なお、取り付け爪部5jの作動をしやすくするために、その両側面に切り欠き部5kを設ける等の構成を追加してもよい。
【0066】
板状の止め輪4の用途を、他の構成で行うことは、変形例1以外でも可能であり、変形例2として、
図11に示す。
図11(a)は斜視図、
図11(b)は部分断面図であり、この変形例では板状の止め輪4に換え、取り付けナット16を使用する。
即ち、解除具ユニット3のユニット本体5の上部にねじ部5mを設け、そこに取り付けナット16のねじ部16aを螺合させることによって、磁気吸着解除具1を磁気吸着力を備えた板状部材2に取り付けることも可能である。
【0067】
なお、実施例1では、磁気吸着解除具1の上部が磁気吸着力を備えた板状部材2の上面から露出する態様を開示しているが、必要に応じてその露出を避けるように構成してもよい。
図12は第3の変形例を表わしたものであり、
図12(a)は斜視図、
図12(b)は部分断面図を示している。
これらの図に示すように、磁気吸着力を備えた板状部材2における板状部材Paにえぐり部Pyを設け、そこに磁気吸着解除具1の上部が収まるようにすると、磁気吸着解除具1の磁気吸着力を備えた板状部材2からの上面からの突出を防止することも可能である。
【0068】
なお、本実施例で使用している、押し出しレバー7に取り付けた吸着ピン9、及び、突き出しコマ6に取り付けた磁石11や固定ピン12を省略して実施してもよい。
この場合、押し出しレバー7の作動が磁気吸着作用により自動的に回動する作用はなくなるが、前述した磁気吸着解除具1を装着した磁気吸着力を備えた器材25と強磁性体製の被着体W間の磁気吸着力を解除する作用自体は、変わらずに機能させることができる。
【実施例2】
【0069】
実施例2は、本発明による磁気吸着解除具を最少部材で構成したものである。
具体的には、
図13(a)の分解斜視図、
図13(b)の組立状態の斜視図、
図13(c)の磁気吸着力を備えた板状部材取付状態の断面図、に示すように、磁気吸着解除具31は実施例1で表した解除具ユニットを兼ねたものとなっており、おおよそ、ユニット本体35、突き出しコマ36、押し出しレバー37、回転軸34で構成されている。
なおこれらの構成は、実施例1の部材を省略することを基本としたもので材料等は共通しているので、それらの説明は省略し、変更されている点を主体に説明することとする。
【0070】
組み立ての手順は、
図13(a)の分解斜視図の矢印で表すように、先ず、ユニット本体35に対して、上部から突き出しコマ36を挿入し、さらにその上から押し出しレバー37を挿入する。
この状態で、ユニット本体35に設けられた軸支孔35cと、押し出しレバー37に設けられた貫通孔38dとを一致させた状態で、スプリングピン等でなる回転軸34を差し込むと、
図13(b)のように組立が完了する。
なお、この回転軸は、図に示すように板状部材を巻いたスプリングピンの他に丸棒等適宜のものでよく、要は押し出しレバーが自由に回動でき、外れないように取り付けられればよい。
【0071】
また、
図13(c)の磁気吸着力を備えた板状部材取付状態の断面図に示すように、突き出しコマ36の側面には実施例1と同様に段部30fが設けられており、ユニット本体35の下部内面に一体的に設けられた受け部35mによって抜け止めされて支持される。
そして、押し出しレバー37は手操作で回動でき、図のように直立させたときは突き出しコマ36を下方に押し込み、直立を解除すると突き出しコマ36の上方向の移動が自由となる。
【0072】
本実施例における磁気吸着解除具31の磁気吸着力を備えた板状部材2への取り付けは、磁気吸着力を備えた板状部材2に設けられた貫通穴Pcに差し込んだ際、ユニット本体35に設けられた複数の楔部35fが、同穴部周囲に食い込むことで行われる。
磁気吸着解除具31の磁気吸着力を備えた板状部材2への取り付け手段は、前述したように、自然に外れなければよい程度の保持力があればよいので、それさえ確保できれば、
このような構成で実施しても問題ない。
【実施例3】
【0073】
本発明における、磁気吸着解除具は、これまで述べた押し出しレバーの回動操作によるもの以外の構成でも実施することが可能である。
実施例3はその一例を表わしたものであり、具体的には、
図14(a)の解除具ユニットの分解斜視図、
図14(b)の組立状態の斜視図、
図14(c)の解除具ユニットの組立状態の断面図に示すように、磁気吸着解除具41は、おおよそ、側面にねじ部が形成された突き出しコマ本体42とその下端に壁面押し板42eを装着した突き出しコマ46と、ユニット本体45とからなる解除具ユニット43と、実施例1でも使用した板状の止め輪44とからなっている。
【0074】
突き出しコマ本体42は、ナイロン等の樹脂製で、中央部の側面に雄ねじ部42aが形成され、その上部に鍔部42b及びは摘み部42cが設けられ、下部には球状部42dが設けられている。
ユニット本体45もナイロン等の樹脂製で、内面には貫通状に雌ねじ部45aが設けられると共に下端には収納凹部45bが設けられている。そして外面には、実施例1と同様に、下部に鍔部45g、中央部には楔部45f、上部には溝部45eが設けられる。
壁面押し板42eもナイロン等の樹脂製であり、中央上面には球状部挿入凹部42fが設けられている。
【0075】
そして、ユニット本体45の雌ねじ部45aに、突き出しコマ46における突き出しコマ本体42の雄ねじ部42aを一杯までねじ込み、突き出しコマ本体42の球状部42dに壁面押し板42eの球状部挿入凹部42fを強制的にはめ込むと、壁面押し板42eは突き出しコマ42の下端で搖動自在に取り付けられることになる。
【0076】
但し、この壁面押し板42eは、後述する押出ねじ部材42の押し込み操作に支障がなければ省略しても構わない。
【0077】
そして、
図15(a)の斜視図及び
図15(b)の断面図に示すように、前述した実施例1と同様に、板状部材Paと磁気吸着部材Pbとからなる磁気吸着力を備えた板状部材2の貫通穴Pcの下方から解除具ユニット43を差し込み、ユニット本体45の溝部45eに板状の止め輪44を取り付けると、磁気吸着解除具41が完成し、同時に、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着力を備えた器材47も出来上がる。
【0078】
なお、本実施例におけるねじ操作は、突き出しコマ46における突き出しコマ本体42の摘み部42cを回転方向にねじって行うが、回転を補助するために作動用治具を使って行ってもよい。
図16は、その説明用の斜視図であり、
図16(a)の作動用治具装着前の斜視図、
図16(b)の作動用治具装着状態の斜視図に示すように、剛性の高い樹脂或いは金属製でなる回転補助具48を使用する。
そして作動用治具48は、突き出しコマ46における突き出しコマ本体42の摘み部42cに差し込み可能な穴部48aを有する枠部48bと、操作腕部48cで構成されており、突き出しコマ本体42の摘み部42cに枠部48bを差し込んだ状態で、操作腕部48cを矢印の方向に回転させれば突き出しコマ本体42の締め込み又は緩める操作が可能となる。
【0079】
図17は、本実施例における磁気吸着力を解除させる作用を表した断面図であり、
図17(a)は磁気吸着状態、
図17(b)は磁気吸着解除状態を示している。
これらの図に示すように、本実施例においては、
図17(a)のように強磁性体製の被着体Wに対して磁気吸着状態となっている、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着力を備えた器材47における、突き出しコマ46の突き出しコマ本体42に形成された摘み部42cをねじ込むことにより行われる。
突き出しコマ本体42に形成された摘み部42cをねじ込むと、それと螺合しているユニット本体45は上方に移動する作用が生じるため、それに伴って、磁気吸着解除具を装着した磁気吸着力を備えた器材47は、強磁性体製の被着体Wから離間してゆき、磁気吸着力は解除されることになる。
なお、その他、具体的な作用等は実施例1と同様なため、符号のみ付して説明は割愛する。
【実施例4】
【0080】
なお、本発明においては、実施例3にて採用したねじ構造についても、簡素化して実施することができるので、実施例4として表わすこととする。
本実施例は、
図18~
図20に示すように、ねじ篏合を、片方を突出ピンとし、他方をそれの移動が可能な上下方向に傾斜させた篏合溝で代用することを特徴とするものであり、以下具体的に説明する。
【0081】
図18は、構成部材の概要を表わしたものであり、(a)は分解斜視図、(b)は板状の止め輪の取付構成、(c)は板状部材へのねじ止め構成を示している。
【0082】
本実施例における磁気吸着解除具51は、おおよそ、側面に突出ピン54を装着した突き出しコマ本体52とその下端に壁面押し板52eを取付ビス52fで揺動自在に固定した突き出しコマ56と、ユニット本体55とからなる解除具ユニット53と、実施例1でも使用した板状の止め輪44とからなっている。
但し、本実施例では、磁気吸着力を備えた板状部材2に直接取り付ける手段として、取り付けねじ44a,44aも使用可能な構成となっている。
【0083】
突き出しコマ本体52は、ナイロンやPA12BG(3Dプリント用ナイロン・ガラスビーズ強化材)等の樹脂製で、上面に六角形の穴部52aが形成され、側面に突出ピンを挿入するための穴部52b、下方に壁面押し板52eを挿入するための筒部52cが形成されている。
【0084】
突出ピン54は、ステンレス製であり、突き出しコマ本体52に先端が突出するよう取り付けられる、但し、強度上可能であれば省略し、突き出しコマ本体52に一体的に形成するようしてもよい。
【0085】
壁面押し板52eは、ナイロンやPA12BG(3Dプリント用ナイロン・ガラスビーズ強化材)等の樹脂製で、後述するユニット本体55に上記突き出しコマ本体52を挿入した後、突き出しコマ本体52に対し、自由に揺動する状態で差し込まれる。
【0086】
取付ビス52fは、ステンレス製等でなり、突き出しコマ本体52の下端にねじ込んで固定する部材であり、そこに取り付けることにより、壁面押し板52eは突き出しコマ本体52に対し、自由に揺動する状態で取り付けられることになる。
従って、実使用時に突き出しコマ本体52の先端には、摩擦力や直接的な負荷がかからないので好適なものとなる。
但し、使用状況によっては、この部材を省略した構成で実施してもよい。
【0087】
そして、突き出しコマ本体52、突出ピン54、取付ビス52f、取付ビス52f、をこのように組み上げることにより、突き出しコマ56が完成する。
【0088】
ユニット本体55は、ナイロンやPA12BG(3Dプリント用ナイロン・ガラスビーズ強化材)等の樹脂製で、中央に上記突き出しコマ本体52が収納する貫通穴55aが設けられ、下方に壁面押し板52eが収納する収納凹部55bが形成され、外面の上部には、板状の止め輪44を装着するための溝部55cが設けられ、下方には取り付けねじ44a,44aを取り付けるための座繰り55d,55dが設けられた鍔部55eが形成されている。
【0089】
そして、貫通穴52aの内面には、
図18(a)の分解斜視図において、点線を入れた状態の帯状で示すところの、突き出しコマ本体52に取り付けられた突出ピン54の先端が挿入する、篏合溝56が形成されている。
この篏合溝56は、
図18(a)にA矢視状態で示す方向から全体を展開状態で示した
図19(a)のように、最初に縦篏合溝56aが形成され、次に中間部に傾斜溝56bが形成され、最後に突出ピン54の上下方向の移動を防ぐ水平状の規制溝56cが形成される。
【0090】
なお、図中の一点鎖線は、本実施例における回転角度90度毎の位置を示したものであり、そこで表される通り、本実施例では、突出ピン54の移動する回転角度は450度(1回転1/4)となっており、具体的には
図18(b)のA矢視状態の展開図、
図18(c)のB矢視状態の展開図に示す溝形状のようになる。
但し、この回転角度は、これに限らず適宜に選択して実施してもよい。
【0091】
図20は、突出ピン54を回転する前を表わしたもので、(a)は斜視図、(b)はC-D断面図を示している。
この状態では、突出ピン54は、縦篏合溝56aの下端に位置している。
そして、突き出しコマ本体52の六角形の穴部52aに、六角レンチを差し込んで回転させると、突き出しコマ本体52の突出ピン54は篏合溝56に沿って下方に移動していくことになる。
【0092】
図21は、突出ピン54を最後まで回転させた状態を表わしたもので、(a)は斜視図、(b)はE-F断面図を示している。
この状態では、突出ピン54は、規制溝56cに上下移動しない状態で収納されることになり、移動終了位置を確実に保持できるので好適ある。
【0093】
図22は、本実施例における磁気吸着力を解除させる作用を表した断面図であり、
図22(a)は磁気吸着前の状態、
図22(b)は磁気吸着状態、
図22(c)は磁気吸着解除状態を示している。
なお、この図においては、磁気吸着力を備えた板状部材2に対し、板状の止め輪44及び取り付けねじ44a,44aの双方を使用した状態を示しているが、いずれか片方の使用でももちろん問題なく、状況によって選択すればよい。
なお、その他、具体的な作用等は実施例1と同様なため、符号のみ付して説明は割愛する。
【0094】
本発明は、趣旨を逸脱しない範囲で、種々に変形して実施することができる。
例えば、実施例4の突き出しコマ本体の上面には六角形の穴部52aを設けて、六角レンチで回転させるようにしているが、四角形等他の形状で対応してもよく、さらに実施例3における摘み部42cを設ける構成に置き換えてもよい。
また、実施例4における突出ピン54と篏合溝56とによる構成は、一対で構成されているが、複数対で実施することも可能である。
さらに、本発明は磁気吸着力を解除する際に、各構成部材に集中的に負荷がかかる場合があり、その際の変形や破損を防ぐために、樹脂製で表現している部材を金属製にしたり、部分的に金属部材を埋め込むような構成にすることも、もちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、磁気吸着力を確実に解除することができるため、強磁性体製の壁面等に、比較的大型のパネル、棚等の器材を取り付けることができる。
さらに、簡単な構造で済むため小型化することができ取り付ける各種機材の美観を損なうこともない。
従って、壁装飾の自由度を増すことになるので、今後広範囲で活用することが期待できる。
【符号の説明】
【0096】
W 強磁性体製の被着体
Pa 板状部材
Pb、Pb1 磁気吸着部材
Pc 貫通穴
Pd 端部
Pe 反対の端部
Py えぐり部
T 接触点
F 指
X、Y 寸法
1、31 磁気吸着解除具
2 磁気吸着力を備えた板状部材
3、33 解除具ユニット
4 板状の止め輪
5、35 ユニット本体
5a レバー挿入部
5b 筒状部
5c、35c 軸支孔
5d 凹部
5e 溝部
5f、35f 楔部
5g、35g 鍔部
5h 溝部
5j 取り付け爪部
5k 切り欠き部
6、36 突き出しコマ
7、37 押し出しレバー
8 レバー本体
8a 後端
8b 穴部
8c 位置決め凹部
8d、38d貫通孔
8g 突出部
8e 引掻け部
8f 位置決め用切り欠き
9 吸着ピン
10突き出しコマ本体
10a 側面部
10b 穴部
10c ピン孔
10d 凹部
10e、42d 球状部
10f、30f 段部
11 磁石
12 固定ピン
13 受け部材
14、34 回転軸
15 作動用治具
15a 操作腕部
15b 操作摘み部
15c 操作レバー覆い部
15d 後部
15e 差し込み溝
15f 凸部
15g 前部
15h 位置決め凸部
16 取り付けナット
16a ねじ部
21 磁気吸着力を備えた器材
21a パネル
22 棚付きの器材
22a 板状部
22b 棚部
23 ボックス状の器材
23a 板状部
23b 壁面部
25、47 磁気吸着解除具を装着した磁気吸着力を備えた器材
35m 受け部
41、51 磁気吸着解除具
42、52 突き出しコマ本体
42a 雄ねじ部
42b 鍔部
42c 摘み部
42d 球状部
42e、52e 壁面押し板
42f 球状部挿入凹部
43 解除具ユニット
44 板状の止め輪
44a 取り付けねじ
45、55 ユニット本体
45a 雌ねじ部
45b 収納凹部
45c、55c 溝部
45g 鍔部
45f 楔部
45e 溝部
46、56 突き出しコマ
48 作動用治具
48a 穴部
48b 枠部
48c 操作腕部
54 突出ピン
52a (六角形の)穴部
52b 穴部
52c 筒部
52f 取付ビス
55a 貫通穴
55b 収納凹部
55d 座繰り
55e 鍔部
56 篏合溝
56a 縦篏合溝
56b 傾斜溝
56c 規制溝