(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】Y型弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/32 20060101AFI20241115BHJP
F16K 31/44 20060101ALI20241115BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F16K1/32 C
F16K31/44 F
F16K31/04 A
(21)【出願番号】P 2020196962
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】八幡 聡太
(72)【発明者】
【氏名】堀河 裕生
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-129256(JP,A)
【文献】米国特許第04421298(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/32
F16K 31/44
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に接続される管状部と、当該管状部に対して斜め方向に延設された枝管部を備え略Y状を呈したボディと、当該ボディの内部に形成された弁座と当接離間して開閉を行う弁体を先端に備えるステムを駆動させるアクチュエータを有するY型弁であって、
前記弁体には前記ステムの先端部が挿入される凹所が形成され、前記ステムの先端部には環状溝が形成され、前記弁体には前記ステムと弁体を連結するためのピンが挿入される孔が形成され、当該ピンは前記環状溝に係合されており、
前記ステム先端の端面と前記凹所の底面との間には、前記ステムと前記弁体とを常に離間させる方向に付勢する付勢部材が介在していることを特徴とするY型弁。
【請求項2】
前記付勢部材が皿ばねであることを特徴とする請求項1に記載のY型弁。
【請求項3】
前記ピンがスプリングピンであることを特徴とする請求項1または2に記載のY型弁。
【請求項4】
前記アクチュエータが手動回転ハンドルまたは電動モータであり、弁を閉状態にする際に、前記弁体が前記弁座に回転しながら着座することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のY型弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開閉弁に関し、特に流路に形成した弁座に対し、弁体が斜め方向から当接する所謂、Y型弁に関する。
【背景技術】
【0002】
配管内の液体や蒸気といった流体の配管中の流れを開閉するため、或いは当該配管中の流体の流れの量(流量)を調整するためにY型弁が一般に用いられている。
【0003】
図5に示す特許文献1に記載のY型弁のバルブ本体108は、突設部111aを有し、流路口112が形成された弁本体111と、エア供給口117を備えるシリンダ115内のピストン116でステム122を駆動させるアクチュエータ115と、を有している。ステム122の先端には、弁本体111に形成された弁座119と当接離間して弁の開閉等を行う弁体123が取り付けられている。ステム122と弁体123とは、ステム122の先端に形成されたステム先端雄ねじ140と弁体123の凹所113に形成された弁体雌ねじ141との螺合により連結されている。
図5は、全開状態を示しており、ステム122が左下方向に移動して弁体123が弁座弁座119に着座すると流体の流れは遮断される。
【0004】
図6に示す特許文献2に記載のY型弁201は、管状部201Pに対して斜め方向に延設された枝管部201bを有する弁本体と、エアが供給される入口INを備えるケーシング内のピストンPでステムSTを駆動させるアクチュエータACと、を有している。ステムSTの先端には、弁本体に形成された弁座201Sと当接離間して弁の開閉等を行うシール202Sが取り付けられた弁体202が取り付けられている。ステムSTと弁体202とは、打ち込みピン220によって連結されている。
図6は、全閉状態を示しており、ステムSTが右上方向に移動すると開状態となって流体が流れる。
【0005】
図7に示すY型弁300は、管状部310に対して斜め方向に延設された枝管部311を有する弁本体と、ステム321を回転移動させる電動モータを内在するアクチュエータ320と、を有している。ステム321の先端には、弁本体に形成された弁座312と当接離間して弁の開閉等を行うシール333が取り付けられた弁体330が取り付けられている。ステム321と弁体330は、中実ピン351によって連結している。中実ピン351は、弁体330にあけられた弁体孔332に、弁体330の凹所331に挿入されたステム321の先端部に環状に形成された溝部322に沿って打ち込まれている。流体は左方向から流れ込み開口部313を通過して右方向に流れていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-71251号公報
【文献】特開2017-129256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5~7に示す従来のY型弁において、開状態の場合、流体は常に弁体に接して管内を流れていく。流体が弁体に接しながら流れていくので、流体からの力を受けて弁体とステムとの間の連結部は影響を受ける。
【0008】
特許文献1の
図5に示す従来のY型弁においては、ステム先端雄ねじ140と弁体雌ねじ141のねじの螺合で弁体123とステム122とは連結しているので、弁開状態で、弁体123は流体から常に力を受けている。この力によって弁体123は常に揺動させられて、ねじの螺合が緩む可能性がある。
【0009】
特許文献2の
図6に示す従来のY型弁においては、打ち込みピン220を弁体202の挿通口に嵌入し、ステムSTの先端周面に形成した溝部に係合させるようしており、弁体209は、ステムSTに対して回動可能な状態となっている。そのため、弁開状態で、弁体202は、流体が表面に接触することで回転が始まり、長時間弁開状態が続くと、打ち込みピン201とステムSTとは摩擦し、両者の摩耗は進んでいく。打ち込みピン201とステムSTとは金属で作られているので摩耗が進むと、特に、打ち込みピン220は減肉し、打ち込みピン220とステムSTの溝部との係合が保てなくなり、弁体202がステムSTから脱落する可能性がある。
【0010】
図7に示す従来のY型弁においては、
図6の打ち込みピン方式と同じであるので、中実ピン351は減肉し、弁体330とステム321との連結ができなくなり、弁体202が脱落する可能性がある。
図6の従来のY型弁との違いは、
図6のY型弁では、ステムSTは回転しない軸動によって直線的に動くが、
図7のY型弁300では、ステム321は回転しながら動くので、弁体330が弁座312に着座する際には、弁座313からのステム軸方向の反力以外に回転方向の反力を中実ピン351は受けて折損の可能性が上がる。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、Y型弁の開状態で弁体が受ける流体からの影響によって弁体が回動すること抑制し、弁体の脱落が生じることのないY型弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(1)は、配管に接続される管状部と、当該管状部に対して斜め方向に延設された枝管部を備え略Y状を呈したボディと、当該ボディの内部に形成された弁座と当接離間して開閉を行う弁体を先端に備えるステムを駆動させるアクチュエータを有するY型弁であって、前記弁体には前記ステムの先端部が挿入される凹所が形成され、前記ステムの先端部には環状溝が形成され、前記弁体には前記ステムと弁体を連結するためのピンが挿入される孔が形成され、当該ピンは前記環状溝に係合されており、前記ステム先端の端面と前記凹所の底面との間には、前記ステムと前記弁体とを常に離間させる方向に付勢する付勢部材が介在していることを特徴とするY型弁である。
【0013】
本発明のバルブ(1)の弁体にはステムの先端部が挿入される凹所が形成され、ステムの先端部には環状溝が形成され、弁体にはステムと弁体を連結するためのピンが挿入される孔が形成され、このピンは環状溝に嵌められており、ステム先端の端面と凹所の底面との間には、ステムと弁体とを常に離間させる方向に付勢する付勢部材が介在しているので、ステムの溝部をピンに押し当て、流体の流れによる力によって生じる弁体の回転が抑制されて、ピンの摩耗減肉等が抑えられるので、ピンのステム溝部に対する係合が維持され、弁体がステムから脱落することを防止する。
【0014】
本発明(2)は、前記付勢部材が皿ばねであることを特徴とする本発明(1)のY型弁である。付勢部材が皿ばねであるので、安価に安定した連結機構を実現することができる。
【0015】
本発明(3)は、前記ピンがスプリングピンであることを特徴とする本発明(1)または(2)Y型弁である。ピンがスプリングピンであるので、弁体が弁座に着座するときに着座からの反力によりピンが受ける力は分散されるのでピンの折損の可能性が下がる。
【0016】
本発明(4)は、前記アクチュエータが手動回転ハンドルまたは電動モータであり、弁を閉状態にする際に、前記弁体が前記弁座に回転しながら着座することを特徴とする本発明(1)~(3)のいずれかのY型弁である。
【0017】
本発明(4)のY型弁では、弁体が弁座に着座するときに着座からの反力はステム軸方向の反力と回転方向に受ける反力の合力の複雑な力となる。ピンがスプリングピンであることによって、ピンがステムの溝部に対して拡開し、ピンがステム溝部に対し押圧力をもって接し係合するから、流体の流れによる力によって生じる弁体の回転を抑制し、弁体がステムから脱落することを防止する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弁体が流体から受ける影響が緩和されて弁体がステムから脱落する可能性の低いY型弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るY型弁の開状態を示す一部縦断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るY型弁の閉状態を示す一部縦断面図である。
【
図3】ピンが中実ピンである場合に、弁体が弁座に着座時に中実ピンが受ける力を模式的に示す図である。
【
図4】ピンがスプリングピンである場合に、弁体が弁座に着座時にスプリングピンが受ける力を模式的に示す図である。
【
図5】特許文献1に記載の従来のY型弁の開状態を示す一部縦断面図である。
【
図6】特許文献2に記載の従来のY型弁の閉状態を示す一部縦断面図である。
【
図7】電動モータでステムが回転しながら動く従来のY型弁の開状態を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
【0022】
図1のY型弁1は、配管に接続される管状部11と、管状部11に対して斜め方向に延設された枝管部12を備え略Y状を呈したボディ10と、ボディ10の内部に形成された弁座13と当接離間して開閉を行う弁体30を先端に備えるステム21を駆動させるアクチュエータ20を有している。弁体30にはステム21の先端部が挿入される凹所31が形成され、ステム21の先端部には溝部(環状溝)22が形成され、弁体30にはステム21と弁体30を連結するためのピン(スプリングピン)50が挿入される孔(弁体孔)32が形成され、スプリングピン50は環状溝22に嵌められている。ステム21の先端の端面と凹所31の底面との間には、ステム21と30弁体とを常に離間させる方向に付勢する付勢部材(皿ばね)40が介在している。弁体30には、弁座13と当接する環状のシール33が取り付けられている。
【0023】
図1の矢印は流体の流れを示している。流体は、左から配管を通って左側の管状部11を通過し、開口部14を通り斜め上方向に流れを変えて、その後右側の管状部11を通過して右側の配管に流れ出る。開口部14を通過した流体は、弁体30に当たって弁体を回転させる力となる。長時間この力を受けると弁体30の回転によりピン(
図1の場合はスプリングピン50)とステム21とは摩擦され、何も対策を講じていないとピン50とステム21の溝部(環状溝)22には摩耗が発生するが、付勢部材(皿ばね)40があることによって、ピン50と溝部22とは強固に係合され、弁体30の回転が止められてピン50とステム21の溝部(環状溝)22の摩耗が抑制されて、ピン50の減肉を抑制し弁体30がステム21から脱落すること有効に防止している。
【0024】
図2は、
図1のY型弁が全閉になった状態を示している。アクチュエータ20の電動モータによってステム21は矢印方向に回転しながら弁座13に着座して電動モータの回転は停止する。このときには、弁体30には弁座13から右上方向のステム21の軸に沿った反力を受け、さらに着座の際に回転方向と反対方向に摩擦による反力を若干受ける。しかし、ピン50は、溝部22に係合しているだけであるから、弁体30は停止した状態でステム21のみ若干回転した後、アクチュエータ20は停止する。
【0025】
図3は、ピンが中実ピン51の場合に、中実ピン51に加わる力を示している。皿ばね40を介してステム21に矢印Fとして加わる。この力Fは、中実ピン51と環状溝22の接点Pの近傍に矢印f
1として加わる。環状溝22から中実ピン51に伝達される力を受ける面積が小さいために中実ピン51に加わる力f
1は比較的大きく、中実ピン51と溝部22とは強固に係合される。
【0026】
図4は、ピンがスプリングピン50の場合、環状溝22に向かう拡開力f
2を示している。ピンがスプリングピン50であることによって、スプリングピン50が拡開し、環状溝22の表面とは密着するので、スプリングピン50の外周半径と環状溝22の曲率半径とは略同一になるように設計されている。スプリングピン50の拡開力によって、スプリングピン50と溝部22とは強固に係合される。
【0027】
皿バネ40によって生じる力f1とスプリングピン50の拡開力f2とによって、さらにピンと溝部22とは強固に係合され全開時における流体の流れによる力による弁体の回転を確実に防止する。また、これらの力は、弁体30が弁座13に着座したとき、ステム21の溝部22がピンに対してスリップし、ステム21のみが回転し、シール33の摩耗を抑えることができる程度に調整されている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明のY型弁は、従来のY型弁に比べて、弁体の脱落の可能性が下がり、ステムと弁体を連結するピンの破損の可能性も下がる。
【符号の説明】
【0029】
1 :Y型弁
10:ボディ
11:管状部
12:枝管部
13:弁座
14:開口部
20:アクチュエータ
21:ステム
22:溝部(環状溝)
30:弁体
31:凹所
32:弁体孔
33:シール
40:付勢部材(皿ばね)
50:スプリングピン
51:中実ピン