(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20241115BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B65D51/22 120
B65D33/38
(21)【出願番号】P 2021014683
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2020031097
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武尚
(72)【発明者】
【氏名】森 淳生
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-037983(JP,A)
【文献】特開2019-194099(JP,A)
【文献】特開昭58-082860(JP,A)
【文献】特開2005-289389(JP,A)
【文献】特表2004-509024(JP,A)
【文献】特開2017-210297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けられ注出筒を有するキャップ本体と、前記キャップ本体に対して開閉自在に取り付けられる上蓋と、を有するキャップであって、
前記上蓋は、前記上蓋を閉じた際に前記注出筒と当接可能に設けられるインナーリングを有し、
前記注出筒は、
前記インナーリングの先端面と当接可能に形成されるシール部を有し、
前記シール部が前記インナーリングの先端面及び先端側面と当接可能であり、
上記上蓋を閉じた際に前記注出筒の内部を閉塞するガスバリア性フィルムが前記シール部に設けられ、
前記ガスバリア性フィルムは、
前記上蓋を閉じた際に、前記シール部と前記インナーリングの先端面と間で挟まれた状態で保持され、
前記上蓋を開いた際に、前記インナーリングの先端面に付着して前記シール部から剥離すること
を特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記ガスバリア性フィルムは、
ガスバリア層とイージーピール層とを含む積層フィルムによって構成され、
前記上蓋を閉じた際に、前記ガスバリア層が前記インナーリングの先端側に配置されるとともに前記イージーピール層が前記シール部側に配置されること
を特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記ガスバリア層が、電磁誘導加熱によって前記インナーリングの先端面に溶着可能な金属を含む層によって構成されること
を特徴とする請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記シール部が前記注出筒の内部に段差状に形成されること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記シール部は、前記ガスバリア性フィルムを保持する部分の大きさが、前記ガスバリ
ア性フィルムの剥離強度に応じて設定されること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取り付けられるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャップとしては、例えば、特許文献1に示すようなキャップが挙げられる。特許文献1に示すキャップは、キャップ本体の周壁の一側にヒンジを介して上蓋が開閉可能に接続し、キャップ本体の封鎖板をプルリングで開口するものである。特許文献1に示すキャップには、キャップ本体の注出筒の内側の封鎖板の開口予定位置に、上面より環状切込みが設けられ、下面に環状薄肉脆弱線が形成されている。そして、この環状薄肉脆弱線を形成する下面にバリア性積層フィルムがインサート射出成形法によって熱融着されている。特許文献1に示すキャップでは、注出筒の内側の封鎖板によって、未開封状態のキャップを装着した容器の密封性が保持されている。
【0003】
また、この種のキャップとしては、例えば、特許文献2に示すようなキャップが挙げられる。特許文献2に示すキャップは、中栓に回転可能に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設される上蓋とからなるものである。特許文献2に示すキャップでは、注出筒に薄肉弱化部を介して連結され周面に第1歯部を有する栓体が中栓に設けられ、上蓋の頂壁裏面から垂設され第1歯部に係合可能な第2歯部を有する筒部が上蓋に設けられている。そして、このキャップを所定の開封方向に回転することによって、第1歯部と第2歯部が係合して薄肉弱化部が破断される。特許文献2に示すキャップでは、注出筒の内側の栓体によって、未開封状態のキャップを装着した容器の密封性が保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-362608号
【文献】特開2015-221690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すキャップを初期開封する場合には、上蓋をキャップ本体に対して開封し、さらに、プルリングを引き上げて封鎖板をキャップ本体に対して開封するため、キャップを初期開封するために2つの動作(上蓋の開封動作及び封鎖板の開封動作)を行う必要があり、キャップの開封動作が面倒であった。
【0006】
また、特許文献2に示すキャップを初期開封する場合には、キャップを所定の開封方向に回転して薄肉弱化部を破断し、さらに、上蓋をキャップ本体に対して開封するため、特許文献1に示すキャップと同様に、キャップを初期開封するために2つの動作(薄肉弱化部の破断動作、上蓋の開封動作)を行う必要があり、キャップの開封動作が面倒であった。
【0007】
そこで、本発明は、未開封状態のキャップを装着した容器の密封性を保持しつつ、キャップの初期開封を1つの動作で容易に行うことが可能なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は容器に取り付けられ注出筒を有するキャップ本体と、前記キャップ本体に対して開閉自在に取り付けられる上蓋と、を有するキャップであって、前記上蓋は、前記上蓋を閉じた際に前記注出筒と当接可能に設けられるインナーリングを有し、前記注出筒は、前記インナーリングの先端面と当接可能に形成されるシール部を有し、前記シール部が前記インナーリングの先端面及び先端側面と当接可能であり、上記上蓋を閉じた際に前記注出筒の内部を閉塞するガスバリア性フィルムが前記シール部に設けられ、前記ガスバリア性フィルムは、前記上蓋を閉じた際に、前記シール部と前記インナーリングの先端面と間で挟まれた状態で保持され、前記上蓋を開いた際に、前記インナーリングの先端面に付着して前記シール部から剥離するものである。
【0009】
これによると、上蓋を閉じた際にはガスバリア性フィルムによって注出筒の内部が閉塞されるとともに、上蓋をキャップ本体に対して開く動作のみで注出筒の内部が開放される。
【0010】
本発明におけるキャップは、前記ガスバリア性フィルムが、ガスバリア層とイージーピール層とを含む積層フィルムによって構成され、前記上蓋を閉じた際に、前記ガスバリア層が前記インナーリングの先端側に配置されるとともに前記イージーピール層が前記シール部側に配置されるものである。
【0011】
これによると、ガスバリア層によって容器の密封性が確実に保持されるとともに、イージーピール層によってガスバリア性フィルムがシール部から剥がれ易い状態となる。
【0012】
本発明におけるキャップは、前記ガスバリア層が、電磁誘導加熱によって前記インナーリングの先端面に溶着可能な金属を含む層によって構成されるものである。
【0013】
これによると、ガスバリア性フィルムが電磁誘導加熱によって確実にインナーリングの先端面に接着される。
【0014】
本発明におけるキャップは、前記シール部が前記注出筒の内部に段差状に形成されるものである。
【0015】
これによると、ガスバリア性フィルムを確実にシール部に設けることができる。
【0017】
これによると、シール部とインナーリングの先端面とが当接する部分と、シール部とインナーリングの先端側面とが当接する部分と、によって容器の密封性が保持される。
【0018】
本発明におけるキャップは、前記シール部において前記ガスバリア性フィルムを保持する部分の大きさが、前記ガスバリア性フィルムの剥離強度に応じて設定されるものである。
【0019】
これによると、上蓋に過度な力を加えることなく、上蓋を開くことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によると、上蓋を閉じた際にはガスバリア性フィルムによって注出筒の内部が閉塞されるとともに、上蓋をキャップ本体に対して開く動作のみで注出筒の内部が開放されることから、未開封状態のキャップを装着した容器の密封性がガスバリア性フィルムによって充分に保持されるとともに、1つの動作(上蓋の開封)のみでキャップの初期開封を容易に行うことができる。また、上蓋を開いた際にガスバリア性フィルムがシール部から剥離することで、その剥がれる感覚や剥がれる音等が使用者に伝わるため、上蓋を開いたキャップが初期開封されたものか否かを使用者が容易に判別することができる。さらに、ガスバリア性フィルムがインナーリングの先端面に付着しているため、初期開封後のキャップにおいても、上蓋を閉じることで容器の密封性をガスバリア性フィルムによって保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態における未開封状態のキャップの断面図である。
【
図2】(a)は、同キャップの開蓋状態を示す平面図であり、(b)は、
図2(a)のA-A断面図である。
【
図3】本発明の別実施の形態における未開封状態のキャップの部分切欠正面断面図である。
【
図4】(a)は、同キャップの開蓋状態の上蓋の底面図であり、(b)は、同キャップの開蓋状態のスパウトの平面図である。
【
図5】(a)は、同キャップの開蓋状態の上蓋の部分切欠正面断面図であり、(b)は、同キャップの開蓋状態のスパウトの部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るキャップ10は、容器90の口部91に装着されるキャップ本体20と、キャップ本体20に対して開閉自在に取り付けられる上蓋30と、を備えている。キャップ10は、キャップ本体20と上蓋30とが変形自在なヒンジ部11によって接続されている。
【0023】
図1に示すように、キャップ本体20は、プラスチック等の樹脂を射出成形したものである。キャップ本体20は、注出口(注出通路)21が形成されている注出筒22と、注出筒22が上方に突出して設けられている平面視略円形の天面部23と、天面部23の外周から上方に筒状に延びて容器90の口部91の内周面に密接して装着される内周筒状部24と、内周筒状部24の外周から外周側(径方向外側)に延びる上壁部25と、上壁部25の外周から下方に筒状に延びて容器90の口部91の外周面に密接して装着される外周筒状部26と、上壁部25の外周寄り箇所から上方に筒状(円環状)に延びて上蓋30の下縁部内周面に密接可能な突片部27と、が一体に形成されている。
【0024】
注出筒22は、その上部(上蓋30の頂板部32側端部)に、容器90内の内容物を注ぎ出すための注出口21が形成されている。注出筒22は、その内部に段差状のシール部28が形成されている。
【0025】
シール部28は、後述するインナーリング31の先端面31a及び先端側面31bと当接可能に構成される。シール部28は、インナーリング31の先端面31aと当接する第1当接面28a(後述するガスバリア性フィルム40を保持する部分)が、注出筒22の内周に沿って環状に、且つ平坦に形成されている。シール部28は、インナーリング31の先端側面31bと当接する第2当接面28bが、注出筒22の内周に沿って筒状に形成されている。シール部28は、第1当接面28aを境に、下側(容器90側)の内径が、上側(閉じられた上蓋30の頂板部32側)の内径より小さく形成されている。すなわち、シール部28の第1当接面28aは、その内径が注出口21の内径より小さく形成されている。さらに、シール部28の第1当接面28aの外径(ガスバリア性フィルム40を保持する部分の大きさ)は、シール部28の第1当接面28aからガスバリア性フィルム40を剥がす強度(ガスバリア性フィルム40の剥離強度)及び上蓋30の開封強度が高くなり過ぎない程度の外径で小さく設定される。具体的には、シール部28の第1当接面28aの外径は、ガスバリア性フィルム40の剥離強度と上蓋30の開封強度との合計が所定の強度を超えない程度で設定される。なお、ガスバリア性フィルム40の剥離強度は、シール部28の第1当接面28aの外径が小さいほど弱くなる。
【0026】
また、シール部28の第2当接面28bは、その内径が第1当接面28a側から注出筒22の先端側(閉じられた上蓋30の頂板部32側)に向けて徐々に大きくなるよう形成されている。
【0027】
図1に示すように、上蓋30は、プラスチック等の樹脂を射出成形したものである。上蓋30の内部には、上蓋30を閉じた際に注出筒22内の注出口21内に突入されて注出口21を閉鎖可能なインナーリング31が形成されている。
【0028】
インナーリング31は、その先端面31a及び先端側面31bが注出筒22のシール部28に当接及び離間自在な円筒状の部材であり、頂板部32から垂下されている。インナーリング31は、先端面31aがシール部28の第1当接面28aと全周にわたり当接し、且つ先端側面31bがシール部28の第2当接面28bと全周にわたり当接することによって、注出筒22と上蓋30との間をシールする。
【0029】
上蓋30の内部には、注出筒22の外周を取り囲む円筒部33が形成されている。円筒部33は、頂板部32から垂下される円筒状の部材である。
【0030】
図1に示すように、上蓋30を閉じた際の注出筒22のシール部28の第1当接面28aとインナーリング31の先端面31aとの間には、円形のガスバリア性フィルム40が接着されている。ガスバリア性フィルム40は、シール部28の第1当接面28a及び注出筒22の下側(容器90側)の内部(シール部28の下方)を覆うように設けられている。ガスバリア性フィルム40がシール部28の第1当接面28aとインナーリング31の先端面31aとの間で接着されることで、インナーリング31によって容器90の密封性が保持されることに加えて、ガスバリア性フィルム40によっても容器90の密封性が保持される。
【0031】
ガスバリア性フィルム40は、金属層と、当該金属層の両面に設けられる樹脂層と、によって構成されるフィルム状の部材である。例えば、ガスバリア性フィルム40は、金属層であるアルミニウム層と、樹脂層であるポリエチレン層と、から構成され、アルミニウム層の両面にポリエチレン層が形成されている。ガスバリア性フィルム40は、ガスバリア層とイージーピール層とを含む積層フィルムである。ガスバリア性フィルム40は、上記金属層と、当該金属層の一方の面に設けられる樹脂層と、によってガスバリア層が構成されている。ガスバリア性フィルム40のガスバリア層は、電磁誘導加熱によって上記金属層が加熱されて上記樹脂層が溶けることで、インナーリング31の先端面31aに溶着可能となる。すなわち、ガスバリア性フィルム40のガスバリア層は、電磁誘導加熱によってインナーリング31の先端面31aに溶着可能な金属を含む層によって構成されている。また、ガスバリア性フィルム40は、上記金属層の他方の面に設けられる樹脂層を、イージーピール性を有する樹脂層によって構成することで、注出筒22のシール部28の第1当接面28aに対して剥がれ易いイージーピール層(剥離強度の低い層)が形成されている。
【0032】
次に、ガスバリア性フィルム40をキャップ10に接着する方法について説明する。上蓋30を開いた状態で、注出筒22のシール部28の第1当接面28aにガスバリア性フィルム40を載置する。この時、ガスバリア性フィルム40は、イージーピール層がシール部28側に(シール部28の第1当接面28aに当接するように)配置され、ガスバリア層がインナーリング31の先端(先端面31a)側に配置される。ガスバリア性フィルム40をシール部28の第1当接面28aに載置した後、上蓋30を閉じる。これにより、ガスバリア性フィルム40がシール部28の第1当接面28aとインナーリング31の先端面31aと間で挟まれた状態で保持される。
【0033】
さらに、上蓋30を閉じた状態のキャップ10に対して、電磁誘導ウエルダー(図示せず)を用いた電磁誘導加熱を行う。これにより、ガスバリア性フィルム40のガスバリア層を構成する金属層が加熱されて、金属層の一方の面に設けられる樹脂層が溶けることで、ガスバリア性フィルム40のガスバリア層側がインナーリング31の先端面31aに溶着される。
【0034】
以下、上記構成における作用を説明する。
ガスバリア性フィルム40が溶着されたキャップ10を容器90の口部91に取り付けた後、未開封状態のキャップ10の上蓋30を開くことによって、注出筒22のシール部28に当接していたインナーリング31が注出筒22から離間する。ここで、ガスバリア性フィルム40は、イージーピール層がシール部28側に配置され、ガスバリア層が電磁誘導加熱によってインナーリング31の先端面31aに溶着されている。そのため、インナーリング31が注出筒22から離間することで、インナーリング31の先端面31aに溶着されているガスバリア層がインナーリング31によって引き上げられ、それに伴って、剥離強度の弱いイージーピール層がシール部28から剥離する。それゆえに、
図2に示すように、ガスバリア性フィルム40がインナーリング31の先端面31aに付着した状態でシール部28から剥離する。
【0035】
この時、ガスバリア性フィルム40がシール部28の第1当接面28aから剥がれる感覚や剥がれる音等が使用者に伝わるため、未開封状態のキャップ10が初期開封されたことを、使用者が容易に認識することができる。また、ガスバリア性フィルム40のシール部28側に剥離強度の弱いイージーピール層が配置され、さらに、シール部28の第1当接面28aの外径が、ガスバリア性フィルム40の剥離強度及び上蓋30の開封強度が高くなり過ぎない程度の外径で小さく設定されていることから、上蓋30に過度な力を加えることなく、上蓋30を開くことができる。
【0036】
ガスバリア性フィルム40がインナーリング31の先端面31aに付着した状態でシール部28から剥離することで、注出筒22の内部が開放し、容器90内から内容物を注ぎ出すことが可能となる。
【0037】
一方、開封状態のキャップ10の上蓋30を閉じることで、インナーリング31が注出筒22の内部に挿入される。そして、ガスバリア性フィルム40が付着したインナーリング31の先端面31aが注出筒22のシール部28の第1当接面28aに当接するとともに、インナーリング31の先端側面31bが注出筒22のシール部28の第2当接面28bに当接する。これにより、ガスバリア性フィルム40がシール部28の第1当接面28aとインナーリング31の先端面31aと間で挟まれた状態で保持される。このため、初期開封後のキャップ10においても、上蓋30を閉じることで、インナーリング31(先端面31a及び先端側面31b)及びガスバリア性フィルム40によって容器90の密封性を保持することができる。
【0038】
以上のように、本実施の形態によると、上蓋30を閉じた際にはガスバリア性フィルム40によって注出筒22の内部が閉塞されるとともに、上蓋30をキャップ本体20に対して開く動作のみで注出筒22の内部が開放されることから、未開封状態のキャップ10を装着した容器90の密封性がガスバリア性フィルム40によって充分に保持されるとともに、1つの動作(上蓋30の開封)のみでキャップ10の初期開封を容易に行うことができる。また、上蓋30を開いた際にガスバリア性フィルム40がシール部28から剥離することで、その剥がれる感覚や剥がれる音等が使用者に伝わるため、上蓋30を開いたキャップ10が初期開封されたものか否かを使用者が容易に判別することができる。さらに、ガスバリア性フィルム40がインナーリング31の先端面31aに付着しているため、初期開封後のキャップ10においても、上蓋30を閉じることで容器90の密封性をガスバリア性フィルム40によって保持することができる。
【0039】
なお、本実施の形態においては、ガスバリア性フィルム40を、注出筒22の内部のシール部28に設けているが、これに限定されるものではなく、注出筒22の内部にシール部28を形成せずに、注出筒22の頂部(注出口21)にガスバリア性フィルム40を設けても構わない。この場合、注出筒22の頂部(注出口21)の内径は、ガスバリア性フィルム40の剥離強度及び上蓋30の開封強度が高くなり過ぎない程度の内径で小さく設定される。
【0040】
本実施の形態においては、ガスバリア性フィルム40が付着したインナーリング31の先端面31aが注出筒22のシール部28の第1当接面28aに当接するとともに、インナーリング31の先端側面31bがシール部28の第2当接面28bに当接することによって容器90の密封性を保持しているが、これに限定されるものではなく、ガスバリア性フィルム40が付着したインナーリング31の先端面31aがシール部28の第1当接面28aに当接することのみによって容器90の密封性を保持しても構わない。
【0041】
本実施の形態においては、キャップ10がキャップ本体20と上蓋30とをヒンジ部11によって接続したものであるが、これに限定されるものではなく、上蓋30のインナーリング31の先端面31aがキャップ本体20の注出筒22に当接して注出筒22と上蓋30との間がシールされる構成であれば、以下の別の実施の形態に示すように、ヒンジ部11を有さないキャップ50であっても構わない。
【0042】
以下に、本発明における別の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図3に示すように、本発明の別の実施の形態に係るキャップ50は、注出筒53を有するスパウト51(「キャップ本体」の一例)と、スパウト51に被せられてスパウト51の注出口55を開閉する回転自在な上蓋52と、を備えている。キャップ50は、スパウト51の基部54において、袋95(「容器」の一例)の対向する正背面をなす包装フィルムの間に挟まれて熱接着によって固定されることで、袋95の上部の縁部96に取り付けられる。スパウト51と上蓋52とは、それぞれ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂によって射出成形されたものである。
【0043】
図3、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、スパウト51は、注出筒53と、基部54と、を備えている。
【0044】
注出筒53は、略円筒形状に形成される。注出筒53には、その先端に設けられる注出口55から基部54の底面56までを貫通する注出孔57が形成されている。注出筒53の外周面には、上蓋52を螺着するための雄ネジ部58が形成されている。注出筒53の内周面(注出孔57)には、注出筒53の軸心方向に突出した段差状のシール部59が形成されている。
【0045】
シール部59は、後述するインナーリング64の先端面64a及び先端側面64bと当接可能に構成される。シール部59は、その上面の周縁部(注出筒53の内周壁側部分)が段差状に形成されている。シール部59の上面には、上記段差状に形成される部分において一段下がった部分に、インナーリング64の先端面64aと当接する第1当接面59a(ガスバリア性フィルム40を保持する部分)が、注出筒53の内周に沿って環状に、且つ平坦に形成されている。第1当接面59aは、後述するガスバリア性フィルム40の周縁部が載置可能な程度の幅で形成されている。シール部59の上記段差状に形成される部分の上方であって、注出筒53の内周面(注出孔57)には、後述するインナーリング64の先端側面64bと当接する第2当接面59bが注出筒53の内周に沿って筒状に形成されている。
【0046】
注出口55の内径及びシール部59の第1当接面59aの外径(ガスバリア性フィルム40を保持する部分の大きさ)は、スパウト51に対する上蓋52の開封トルクが高くなり過ぎない程度の径で小さく設定されている。ここで、スパウト51に対する上蓋52の開封トルクは、シール部59の第1当接面59aからガスバリア性フィルム40を剥がす強度(ガスバリア性フィルム40の剥離強度)及び上蓋52の開封強度に影響される。そのため、注出口55の内径及びシール部59の第1当接面59aの外径は、ガスバリア性フィルム40の剥離強度及び上蓋52の開封強度が高くなり過ぎない程度の径で小さく設定される。具体的には、注出口55の内径及びシール部59の第1当接面59aの外径は、スパウト51に対する上蓋52の開封トルク(ガスバリア性フィルム40の剥離強度と上蓋52の開封強度との合計)が所定の値を超えない程度で設定される。なお、ガスバリア性フィルム40の剥離強度は、注出口55の内径及びシール部59の第1当接面59aの外径が小さいほど弱くなる。
【0047】
基部54は、注出筒53の基端と連続するように略舟形に形成されている。基部54の外面54aには、外面54aを袋95に溶着するための複数のフランジ54bが形成されている。
【0048】
図3、
図4(a)及び
図5(b)に示すように、上蓋52は、円形の頂板部60と、頂板部60の外周縁から垂下する円筒状のスカート部61と、スカート部61に弱化部を介して離脱可能に設けられた改竄防止用の封印帯62と、を有する。
【0049】
スカート部61の内周には、スパウト51の注出筒53に形成される雄ネジ部58に螺合する雌ネジ部63が形成されている。上蓋52の内部には、上蓋52を閉じた際に注出筒53の注出孔57を閉鎖するインナーリング64が形成されている。
【0050】
インナーリング64は、円筒状の部材であり、頂板部60から垂下されている。インナーリング64は、その先端の径がその基端(頂板部60側の部分)の径より短く形成されている。インナーリング64は、先端から基端部に向けて徐々に拡径し、所定長さまで拡径した部分(先端側面64b)を境に、基端(頂板部60側の部分)の径と同一の径となるように基端部に向けて徐々に縮径するように形成されている。インナーリング64は、その先端面64aが注出筒53のシール部59の第1当接面59aに当接及び離間自在である。また、インナーリング64は、その先端側面64bが注出筒53の内周面(注出孔57)の一部である第2当接面59bに当接及び離間自在である。インナーリング64は、その先端面64aがシール部59の第1当接面59aと全周にわたり当接し、且つその先端側面64bが注出筒53(注出孔57)の第2当接面59bと全周にわたり当接することによって、注出筒53(注出孔57)と上蓋52との間をシールする。
【0051】
封印帯62は、円環状のバンドである。封印帯62は、ブリッジを介してスカート部61の下端に接続される。封印帯62は、その内周部の複数のラチェットが所定間隔で複数形成されている。上蓋52においては、スカート部61と封印帯62との間の弱化部が破断される際の上蓋52の旋回角度(ブリッジブレイク角度)が、袋95の密封性が解除される際の上蓋52の旋回角度(リークブレイク角度)より小さくなるように、上蓋52の旋回角度(ブリッジブレイク角度)が所定の角度以内(例えば、10°以内)に設定されている。
【0052】
図3に示すように、上蓋52を閉じた際の注出筒53のシール部59とインナーリング64の先端面64aとの間には、円形のガスバリア性フィルム40が接着されている。ガスバリア性フィルム40は、シール部59の第1当接面59a及び注出筒53の下側(袋95側)の内部(シール部59の下方)を覆うように設けられている。ガスバリア性フィルム40がシール部59とインナーリング64の先端面64aとの間で接着されることで、インナーリング64によって袋95の密封性が保持されることに加えて、ガスバリア性フィルム40によっても袋95の密封性が保持される。ガスバリア性フィルム40は、上述のガスバリア性フィルム40と同様に、金属層と、当該金属層の両面に設けられる樹脂層と、によって構成されるフィルム状の部材あり、ガスバリア層とイージーピール層とを含む積層フィルムによって構成されている。ガスバリア性フィルム40のガスバリア層は、電磁誘導加熱によってインナーリング64の先端面64aに溶着可能な金属を含む層(金属層+樹脂層)によって構成され、例えば、アルミニウム層と、当該アルミニウム層の一方の面に設けられるポリエチレン層と、によって構成される。すなわち、ガスバリア性フィルム40のガスバリア層は、凝集接着が可能な程度に溶着性の強い層によって構成されている。ガスバリア性フィルム40のイージーピール層は、注出筒53のシール部59に対して剥がれ易い層(剥離強度の低い層)によって構成され、例えば、イージーピール性を有したポリエチレン層によって構成される。なお、当該イージーピール性を有したポリエチレン層は、上記アルミニウム層の他方の面に設けられている。
【0053】
次に、ガスバリア性フィルム40をキャップ50に接着する方法について説明する。上蓋52をスパウト51に螺着する前に、注出筒53のシール部59の第1当接面59aにガスバリア性フィルム40を載置する。この時、ガスバリア性フィルム40は、イージーピール層がシール部59側に(シール部59の第1当接面59aに当接するように)配置され、ガスバリア層がインナーリング31の先端(先端面64a)側に配置される。周縁部が段差状であるシール部59の上面に形成され第1当接面59aにガスバリア性フィルム40を載置することで、ガスバリア性フィルム40がシール部59の上面でズレることなく保持される。
【0054】
ガスバリア性フィルム40をシール部59の第1当接面59aに載置した後、上蓋52を閉じる。これにより、ガスバリア性フィルム40がシール部59の第1当接面59aとインナーリング64の先端面64aと間で挟まれた状態で保持される。さらに、上蓋52を閉じた状態のキャップ50に対して、電磁誘導ウエルダー(図示せず)を用いた電磁誘導加熱を行う。これにより、ガスバリア性フィルム40のガスバリア層を構成する金属層が加熱されて、金属層の一方の面に設けられる樹脂層が溶けることで、ガスバリア性フィルム40のガスバリア層側がインナーリング64の先端面64aに溶着される。
【0055】
以下、上記構成における作用を説明する。
図4及び
図5に示すように、ガスバリア性フィルム40が溶着されたキャップ50を袋95の上部の縁部96に取り付けた後、未開封状態のキャップ50の上蓋52を開くことによって、注出筒53のシール部59に当接していたインナーリング64が注出筒53から離間する。インナーリング64が注出筒53から離間することで、インナーリング64の先端面64aに溶着されているガスバリア層がインナーリング64によって引き上げられ、それに伴って、剥離強度の弱いイージーピール層がシール部59から剥離する。それゆえに、
図5(a)に示すように、ガスバリア性フィルム40がインナーリング64の先端面64aに付着した状態でシール部59から剥離する。
【0056】
この時、ガスバリア性フィルム40のシール部59側に剥離強度の弱いイージーピール層が配置され、さらに、スパウト51に対する上蓋52の開封トルクが高くなり過ぎない程度の内径(孔径)で、注出口55の内径(注出孔57の孔径)が設定されていることから、上蓋52に過度な力を加えることなく、上蓋52を開くことができる。
図5に示すように、ガスバリア性フィルム40がインナーリング64の先端面64aに付着した状態でシール部59から剥離することで、注出筒53の内部が開放し、袋95内から内容物を注ぎ出すことが可能となる。
【0057】
一方、開封状態のキャップ50の上蓋52を閉じることで、インナーリング64が注出筒53の内部に挿入される。そして、ガスバリア性フィルム40が付着したインナーリング64の先端面64aが注出筒53のシール部59の第1当接面59aに当接するとともに、インナーリング64の先端側面64bが注出筒53のシール部59の第2当接面59bに当接する。これにより、ガスバリア性フィルム40がシール部59の第1当接面59aとインナーリング64の先端面64aと間で挟まれた状態で保持される。このため、初期開封後のキャップ50においても、上蓋52を閉じることで、インナーリング64及びガスバリア性フィルム40によって袋95の密封性を保持することができる。
【0058】
なお、本実施の形態においては、ガスバリア性フィルム40を、注出筒53の内部のシール部59に設けているが、これに限定されるものではなく、注出筒53の内部にシール部59を形成せずに、注出筒53の頂部(注出口55)にガスバリア性フィルム40を設けても構わない。この場合、注出筒53の頂部(注出口55)の内径は、ガスバリア性フィルム40の剥離強度及び上蓋52の開封強度が高くなり過ぎない程度の内径で小さく設定される。
【0059】
本実施の形態においては、ガスバリア性フィルム40が付着したインナーリング64の先端面64aが注出筒53のシール部59の第1当接面59aに当接するとともに、インナーリング64の先端側面64bがシール部59の第2当接面59bに当接することによって袋95の密封性を保持しているが、これに限定されるものではなく、ガスバリア性フィルム40が付着したインナーリング64の先端面64aがシール部59の第1当接面59aに当接することのみによって袋95の密封性を保持しても構わない。
【符号の説明】
【0060】
10 キャップ
20 キャップ本体
22 注出筒
28 シール部
30 上蓋
31 インナーリング
31a インナーリングの先端面
31b インナーリングの先端側面
40 ガスバリア性フィルム
90 容器