IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオスワン ラボラトリーズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7588413抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用
<>
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図1
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図2
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図3
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図4
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図5
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図6
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図7
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図8
  • 特許-抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】抗CD19抗体のモノクローナル抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/42 20060101AFI20241115BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241115BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20241115BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
C07K16/42 ZNA
G01N33/53 N
G01N33/577 B
C12N15/13
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021536403
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2019126087
(87)【国際公開番号】W WO2020125653
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】201811565418.1
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521271635
【氏名又は名称】バイオスワン ラボラトリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダ リャン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/023100(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/064205(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108490174(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108508200(CN,A)
【文献】Proc Natl Acad Sci USA,1995年,Vol.92,pp.4937-4941
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/13
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)以下の3つの相補性決定領域CDRを含む重鎖可変領域、
配列番号3で示されるCDR1、
配列番号4で示されるCDR2、および
配列番号5で示されるCDR3、
および
(2)以下の3つの相補性決定領域CDRを含む軽鎖可変領域
配列番号6で示されるCDR1'、
配列番号7で示されるCDR2'、および
配列番号8で示されるCDR3'
を有する抗体であって、
前記抗体は、抗CD19抗体に特異的に結合する抗体であり、前記抗CD19抗体はマウスモノクローナル抗体FMC63またはFMC63 scFvである、抗体。
【請求項2】
前記重鎖可変領域は、配列番号9で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域は、配列番号10で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
抗CD19抗体に特異的に結合する前記抗体は、一本鎖抗体(scFv)、Fabまたは(Fab')2断片、二本鎖抗体、またはモノクローナル抗体を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
抗CD19抗体に特異的に結合する前記抗体は、ウサギ由来抗体を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
免疫複合体であって、
(a)請求項1から5のいずれか1項に記載の抗体と、
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、磁気ビーズ、またはアガロースからなる群から選ばれる複合部分と
を含有する免疫複合体。
【請求項7】
CD19 CAR陽性細胞を検出するための検出試薬であって、
請求項1から5のいずれか1項に記載の抗体である第一検出試薬を含む検出試薬。
【請求項8】
CD19 CAR検出キットであって、
(t1)請求項1から5のいずれか1項に記載の抗体であって、特異的にCD19 CARの細胞外の抗原結合領域に結合する抗体を含有する、第一容器、
および任意に、(t0)説明書
を含む検出キット。
【請求項9】
請求項7に記載の検出試薬の使用であって、CD19 CAR陽性細胞を検出する試薬またはキットの製造における使用。
【請求項10】
CD19 CAR陽性細胞を検出するin vitroの方法であって、
(I) 請求項7に記載の検出試薬を提供する工程と、
(II)前記検出試薬で被験の細胞群を検出することにより、CD19 CAR陽性細胞の定性または定量の検出結果を得る工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、生物技術および医学の分野に属し、具体的に、抗CD19抗体のモノクローナル抗体およびその使用に関する。
【0002】
背景技術
腫瘍の免疫治療の発展につれ、抗体と免疫細胞の優勢を合わせたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)-T細胞による免疫治療は非常に注目されている。CARは、主に、細胞膜外抗原結合領域および細胞内シグナル伝達領域からヒンジ領域および膜貫通領域を介して構成されている。膜外抗原結合領域は、標的細胞の表面抗原を特異的に認識して結合する機能を有し、その構成がモノクローナル抗体の一本鎖可変領域ドメイン(Single Chain Variable Fragment、scFv)由来のもので、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)からなる。細胞内シグナル伝達領域は、主に、共刺激シグナルおよびT細胞受容体(TCR)のCD3ζ鎖からなる。CARを発現するT(CAR-T)細胞は、scFvを介して標的細胞の抗原と結合すると、細胞内シグナル伝達領域によってシグナルがT細胞内に伝達することで、T細胞が活性化され、パーフォリン、グランザイムおよびサイトカインなどを分泌し、殺傷作用を発揮する。現在、FDAによって市販を許可された二つのCAR-T細胞薬物は、それぞれノバルティスファーム(Novartis)のキムリヤ(Kymriah)、およびギリアド社(Gilead)のイエスカルタ(Yescarta)である。二つの薬物はいずれもCD19陽性B細胞の腫瘍に対するもので、同様の抗原結合領域、すなわち、マウスモノクローナル抗体FMC63由来のscFvを使用する。
【0003】
CAR-T細胞を構築するには、CAR遺伝子をウイルスまたは非ウイルスシステムによって形質移入してT細胞のゲノムに組み込む必要がある。当該遺伝子が正常に発現し、細胞膜に膜貫通のCAR構造が形成することなしには、CAR-T細胞は標的細胞を認識して殺傷する活性を有さない。そのため、CARを発現する陽性T細胞の正確な検出はCAR-T薬物の品質管理の肝心な工程で、臨床における患者の治療投与量のコントロール、経過のモニタリングおよび補助診断の重要な一環でもある。通常の検出方法には、CAR遺伝子陽性T細胞を検出する方法とCARタンパク質陽性T細胞を検出する方法の2種類がある。
【0004】
CAR遺伝子陽性T細胞を検出する方法:定量ポリメラーゼ連鎖反応(Quantitative Real Time PCR、qPCR)はCAR遺伝子陽性T細胞を検出する主な方法である。qPCRによって細胞のゲノムに組み込まれたCAR遺伝子、およびCAR遺伝子のコピー数を検出することができる。しかし、当該方法では、CAR遺伝子が組み込まれたT細胞の一部が正常にCARを発現せず(Jennifer N. Brudnoら, Journal of Clinical Oncology, 2016)、これらのT細胞による偽陽性率によってqPCR方法の使用の正確性が低下するため、CARを発現する陽性T細胞を正確に反映することができない。より深刻なのは、qPCR方法はCAR陽性T細胞とCAR陽性B細胞を区別することができないことで、CAR陽性B細胞による治療と再発のリスクが発見しにくい(Marco Ruellaら, Nature Medicine, 2018)。また、qPCR方法はT細胞の複数の表面マーカー(CD3、CD4、CD8など)を同時に検出する需要に満足することができず、これによってqPCR方法の応用がさらに制限される。
【0005】
CARタンパク質陽性T細胞を検出する方法:既存の検出試薬は、抗マウスIgG (Fab’)2(Jackson ImmunoResearch社)、Protein L(Zhili Zhengら, Journal of Translational Medicine, 2012)、CD19/Fc(Satiro N De Oliveiraら, Journal of Translational Medicine, 2013)、GFP-CD19(特許出願番号201610354642.0)、マウスモノクローナル抗体136.20.1(PCT/US2014/039365; Bipulendu Jenaら, PLoS One, 2013)を含む。中では、抗マウスIgG (Fab’)2およびProtein Lは、CD19 CARを検出する感度が低く、そしてマウス由来の異なるscFvで構築される異なるCAR(たとえばCD22 CAR、BCMA CARなど)を区別することができない。CD19/FcおよびGFP-CD19はいずれもCD19タンパク質とCD19 CARにおけるFMC63 scFvの結合に依存し、当該scFvとCD19の親和力が顕著に完全な抗体FMC63とCD19の親和力(IAN C. Nicholsonら, Molecular Immunology, 1997)よりも低いため、CD19/FcおよびGFP-CD19はCD19 CARを検出する感度が低い。マウスモノクローナル抗体136.20.1はCD19 CARを検出し、当該抗体のCD19 CARにおけるFMC63 scFvに対する結合に依存し、検出感度が1:1000に近く、すなわち、1000個の細胞のうち、1個の陽性細胞が検出され、体内におけるCD19 CAR陽性細胞の検出に応用される場合、依然として感度が高くないという欠陥が存在する。以上のすべての試薬は、それぞれの克服しにくい原因により、その応用範囲が小さい。
【0006】
そのため、本分野では、CAR-T薬物の品質管理、臨床治療および補助診断の需要に満足するように、感度が高く、正確性が高いCAR陽性細胞の検出試薬および検出方法の開発が切望されている。
【0007】
発明の概要
本発明の目的は、感度が高く、正確性が高いCAR陽性細胞の検出試薬およびその使用を提供することである。
【0008】
本発明の第一の側面では、抗体の重鎖可変領域であって、以下の3つの相補性決定領域CDR:
配列番号3で示されるCDR1:GIDFRNYG (配列番号3);
配列番号4で示されるCDR2:FSSSGST (配列番号4);および
配列番号5で示されるCDR3:ARHPGPTNGWKL (配列番号5)
を含む重鎖可変領域を提供する。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記重鎖可変領域は配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する。
QSLEESGGRLVTPGTPLTLTCTVSGIDFRNYGVSWVRQAPGKGLEWIGIFSSSGSTYYATWAKGRFTISKASSTTVDLKMTSLTTEDTATYFCARHPGPTNGWKLWGPGTLVTVSS (配列番号9)
本発明の第二の側面では、抗体の重鎖であって、本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域および重鎖定常領域を有する重鎖を提供する。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記の重鎖定常領域は、ウサギ由来のもの、マウス由来のものまたはヒト由来のものである。
本発明の第三の側面では、抗体の軽鎖可変領域であって、以下の群から選ばれる相補性決定領域CDR:
配列番号6で示されるCDR1':QSVSGY (配列番号6);
配列番号7で示されるCDR2':RAS (配列番号7);および
配列番号8で示されるCDR3':QSNYNSGSSSSAAA (配列番号8)
を有する軽鎖可変領域を提供する。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記軽鎖可変領域は配列番号10で示されるアミノ酸配列を有する。
DVVMTQTPASVEAPVGGTVTIKCQASQSVSGYCSWYQQKPGQPPKLLIYRASTLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISDLECADAATYYCQSNYNSGSSSSAAAFGGGTEVVVK (配列番号10)
本発明の第四の側面では、抗体の軽鎖であって、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を有する軽鎖を提供する。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記軽鎖の定常領域は、ウサギ由来のものまたはマウス由来のものまたはヒト由来のものである。
本発明の第五の側面では、
(1)本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域
を有する抗体を提供する。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記抗体は、本発明の第二の側面に記載の重鎖、および/または本発明の第四の側面に記載の軽鎖を有する。
もう一つの好適な例において、前記の抗体は特異的抗CD19抗体の抗体である。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記の抗体は、一本鎖抗体(scFv)、Fabまたは(Fab')2断片、二本鎖抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体(たとえばヒトウサギキメラ抗体、ウサギマウスキメラ抗体)、ウサギ由来抗体、マウス由来抗体、またはヒト化抗体を含む。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記抗体のCD19抗体のscFvとの解離平衡定数はKD≦1 nMで、好ましくはKD≦100 pMで、最も好ましくはKD≦50 pMである。
もう一つの好適な例において、前記CD19抗体はマウスモノクローナル抗体FMC63である。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記CD19抗体のscFvはCARの形態でCAR-T細胞の細胞膜に存在する。
もう一つの好適な例において、前記CAR-T細胞の商品名はキムリヤ(Kymriah)およびイエスカルタ(Yescarta)である。
【0017】
本発明の第六の側面では、
(i)本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明の第二の側面に記載の重鎖、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明の第四の側面に記載の軽鎖、または本発明の第五の側面に記載の抗体と、
(ii)任意の発現および/または精製を補助するタグ配列と
を有する組み換えタンパク質を提供する。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記のタグ配列は分泌ペプチドタグを含む。
もう一つの好適な例において、前記のタグ配列は6Hisタグおよび/またはFcタグを含む。
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質は特異的抗CD19抗体である。
【0019】
本発明の第七の側面では、以下の群から選ばれるポリペプチド:
(1)本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明の第二の側面に記載の重鎖、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明の第四の側面に記載の軽鎖、または本発明の第五の側面に記載の抗体、あるいは
(2)本発明の第六の側面に記載の組み換えタンパク質
をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0020】
本発明の第八の側面では、本発明の第七の側面に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
もう一つの好適な例において、前記のベクターは、細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳動物細胞ウイルス(たとえばアデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスなど)、トランスポゾンまたはほかのベクターを含む。
【0021】
本発明の第九の側面では、遺伝子工学化された宿主細胞であって、本発明の第八の側面に記載のベクターを含むか、あるいはゲノムに本発明の第七の側面に記載のポリヌクレオチドが組み込まれた宿主細胞を提供する。
【0022】
本発明の第十の側面では、
(a)本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明の第二の側面に記載の重鎖、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明の第四の側面に記載の軽鎖、または本発明の第五の側面に記載の抗体と、
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、磁気ビーズ、アガロースなどからなる群から選ばれる複合部分と
を含有する免疫複合体を提供する。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記複合部分は、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像)またはCT(コンピューターX線断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成させる酵素、放射性核種、生物毒素、金ナノ粒子/ナノロッド、任意の様態のナノ粒子、またはほかのサイズの任意の様態の顆粒(たとえば磁気ビーズ、アガロース顆粒)などから選ばれる。
【0024】
本発明の第十一の側面では、CD19 CAR陽性細胞を検出するための検出試薬であって、
本発明の第五の側面に記載の第一抗体である第一検出試薬を含む検出試薬を提供する。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記検出試薬は、さらに、特異的に第一抗体または第一抗体に複合したマーカーに結合する第二検出試薬を含む。
もう一つの好適な例において、前記の第一抗体は蛍光または発光マーカーが複合したモノクローナル抗体である。
【0026】
そして、前記検出試薬は、検出感度が≧1個のCD19 CAR陽性細胞/1000個の細胞である。
もう一つの好適な例において、前記の第一抗体は未修飾のモノクローナル抗体である。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記の第二検出試薬は特異的に前記第一抗体に対する第二抗体である。
もう一つの好適な例において、前記の第一抗体はビオチン化されたモノクローナル抗体で、かつ前記の第二検出試薬は検出可能なマーカーを持つストレプトアビジンである。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記検出試薬は、検出感度が≧1個のCD19 CAR陽性細胞/1000個の細胞、好ましくは≧5個のCD19 CAR陽性細胞/1000個の細胞、より好ましくは≧1個のCD19 CAR陽性細胞/10000個の細胞、さらに好ましくは≧2個のCD19 CAR陽性細胞/100000個の細胞である。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記のモノクローナル抗体はウサギ由来モノクローナル抗体である。
もう一つの好適な例において、前記第一抗体と第二抗体は異なる哺乳動物の種由来のものである。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記の第一抗体はウサギ由来のもので、第二抗体はロバまたはヤギ由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記のCAR陽性細胞は、CAR免疫細胞およびCAR非免疫細胞を含む。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記のCAR陽性細胞は、T細胞、NK細胞、CIK細胞、NKT細胞、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記のCAR陽性細胞は、HEK-293T細胞、Jurkat細胞、またはこれらの組み合わせを含む。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記のモノクローナル抗体は、さらに、以下の一つまたは複数の特徴を有する:
(i)CD19 CAR scFv組み換えタンパク質との結合のEC50が0.3~3 nM、好ましくは0.3~1 nMである;
(ii)CD19 CAR scFv組み換えタンパク質との結合の有効濃度が0.02~0.2 μg/mL、好ましくは0.02~0.1 μg/mLである;
(iii)CD19 CAR scFv組み換えタンパク質との結合の解離平衡定数が10-10~10-12Mである。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記のモノクローナル抗体は抗CD19モノクローナル抗体FMC63のscFvに基づいて構築されるCD19 CARを特異的に認識して結合する。
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CARの細胞外の抗原結合領域は、配列番号1で示されるアミノ配列を有する。
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号1)
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質はCD19 CAR scFv-Hisタグの構造を有する。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、配列番号2で示されるアミノ配列を有する。
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSHHHHHH (配列番号2)
【0035】
もう一つの好適な例において、前記のモノクローナル抗体は、以下の方法によって製造される:
(a)CD19 CAR scFv組み換えタンパク質を提供する;ならびに
(b)前記の組み換えタンパク質でウサギを免疫させることにより、前記CD19 CAR scFv組み換えタンパク質に対する抗血清を得る;ならびに
(c)免疫ウサギの末梢血B細胞でモノクローナル培養を行い、陽性B細胞の単一クローンをスクリーニングすることにより、前記CD19 CAR scFv組み換えタンパク質に対するウサギB細胞の単一クローンを得る;ならびに
(d)前記の陽性ウサギB細胞の単一クローンをシークエンシングし、モノクローナル抗体の軽/重鎖の遺伝子配列を得る;ならびに
(e)前記モノクローナル抗体の軽/重鎖の遺伝子配列で発現プラスミドを構築し、真核宿主細胞に形質移入させることにより、形質移入された真核宿主細胞を得る;ならびに
(f)発現に適切な条件において、前記形質移入された真核宿主細胞を培養することにより、前記モノクローナル抗体を発現させる;ならびに
(g)前記培養系から前記のモノクローナル抗体を分離および/または精製する。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記の発現は分泌型発現(すなわち、細胞培養液に分泌するもの)を含む。
もう一つの好適な例において、前記の真核宿主細胞は、HEK-293T細胞、CHO細胞、COS-1細胞、COS-7細胞からなる群から選ばれる。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、配列番号1または2に記載のアミノ配列を有する。
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、真核発現または原核発現による組み換えタンパク質を含む。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、大腸菌によって発現される組み換えタンパク質である。
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、再生処理されたものである。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、真核発現によるものである。
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、以下の方法によって製造される:
(a)CD19 CAR scFv組み換えタンパク質の発現カセットを含有する発現プラスミドを提供する;
(b)前記発現プラスミドで真核宿主細胞に形質移入させることにより、形質移入された真核宿主細胞を得る;
(c)発現に適切な条件において、前記形質移入された真核宿主細胞を培養することにより、前記組み換えタンパク質を発現させる;ならびに
(d)前記培養系から前記の組み換えタンパク質を分離および/または精製する。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記の発現は分泌型発現(すなわち、細胞培養液に分泌するもの)を含む。
もう一つの好適な例において、前記の真核宿主細胞は、HEK-293T細胞、CHO細胞、COS-1細胞、COS-7細胞からなる群から選ばれる。
【0041】
本発明の第十二の側面では、特異的にCD19 CARの細胞外の抗原結合領域に結合するモノクローナル抗体である、第一抗体を製造する方法であって、
以下の工程を含む方法を提供する:
(a)CD19 CAR scFv組み換えタンパク質を提供する;ならびに
(b)前記の組み換えタンパク質でウサギを免疫させることにより、前記CD19 CAR scFv組み換えタンパク質に対する抗血清を得る;ならびに
(c)免疫ウサギの末梢血B細胞でモノクローナル培養を行い、陽性B細胞の単一クローンをスクリーニングすることにより、前記CD19 CAR scFv組み換えタンパク質に対するウサギB細胞の単一クローンを得る;ならびに
(d)前記の陽性ウサギB細胞の単一クローンをシークエンシングし、モノクローナル抗体の軽/重鎖の遺伝子配列を得る;ならびに
(e)前記モノクローナル抗体の軽/重鎖の遺伝子配列で発現プラスミドを構築し、真核宿主細胞に形質移入させることにより、形質移入された真核宿主細胞を得る;ならびに
(f)発現に適切な条件において、前記形質移入された真核宿主細胞を培養することにより、前記モノクローナル抗体を発現させる;ならびに
(g)前記培養系から前記のモノクローナル抗体を分離および/または精製する。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記の発現は分泌型発現(すなわち、細胞培養液に分泌するもの)を含む。
もう一つの好適な例において、前記の真核宿主細胞は、HEK-293T細胞、CHO細胞、COS-1細胞、COS-7細胞からなる群から選ばれる。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記のCD19 CAR scFv組み換えタンパク質は、配列番号1または2で示されるアミノ配列を有する。
もう一つの好適な例において、前記方法は、さらに、任意に、以下の工程を含む:
(h)任意に前記分離および/または精製されたモノクローナル抗体に対して性能測定を行う。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記の性能測定は、以下の群から選ばれる一つまたは複数の検出を含む:
(i)特異性の検出、
(ii)力価の検出、
(iii)感度の検出、
(vi)中和の遮断の検出、
(v)結合動態学の検出。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記第一抗体は、本発明の第五の側面に記載の抗体である。
本発明の第十三の側面では、CD19 CAR検出キットであって、
(t1)本発明の第五の側面に記載のモノクローナル抗体で、かつ特異的にCD19 CARの細胞外の抗原結合領域に結合するものを含有する、第一容器、
および任意に、(t0)説明書
を含む検出キットを提供する。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記モノクローナル抗体は、検出可能なマーカーを持つものである。
もう一つの好適な例において、前記の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカーを含む。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記のモノクローナル抗体は、蛍光マーカーを持つモノクローナル抗体である。
もう一つの好適な例において、前記検出キットは、さらに、(t2)特異的に前記モノクローナル抗体に対する第二抗体を含有する第二容器を含む。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記第一容器および第二容器は、一体化したものでも、別々なものでもよい。
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、抗ウサギIgGの抗体である。
【0049】
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、ロバ抗ウサギIgGの抗体、ヤギ抗ウサギIgGの抗体からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、検出可能なマーカーを持つものである。
【0050】
もう一つの好適な例において、前記の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカーを含む。
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、蛍光マーカーを持つ二次抗体である。
【0051】
もう一つの好適な例において、前記検出キットは、さらに、以下の群から選ばれる一つまたは複数の別の検出試薬を含む:
(t3)第三容器、および前記第三容器内にあるブロッキング剤;ならびに
(t4)第四容器、および前記第四容器内にある陽性対照(たとえばCD19 CAR scFv組み換えタンパク質);ならびに
(t5)第五容器、および前記第五容器内にある陰性対照試薬。
【0052】
もう一つの好適な例において、前記の別の検出試薬は、同一の容器か、異なる容器に位置する。
もう一つの好適な例において、前記の説明書にCD19 CAR陽性細胞を検出する方法が記載されている。
【0053】
本発明の第十四の側面では、本発明の第十一の側面に記載の検出試薬の使用であって、CD19 CAR陽性細胞を検出する試薬またはキットの製造における使用を提供する。
もう一つの好適な例において、前記のCAR陽性細胞は、CAR免疫細胞およびCAR非免疫細胞を含む。
【0054】
もう一つの好適な例において、前記のCAR陽性細胞は、T細胞、NK細胞、CIK細胞、NKT細胞、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記のCAR陽性細胞は、HEK-293T細胞、Jurkat細胞、またはこれらの組み合わせを含む。
【0055】
本発明の第十五の側面では、CD19 CAR陽性細胞を検出する方法であって、
(I)本発明の第十一の側面に記載の検出試薬を提供する工程と、
(II)前記の検出試薬で被験の細胞群を検出することにより、CD19 CAR陽性細胞の定性または定量の検出結果を得る工程と
を含む方法を提供する。
【0056】
もう一つの好適な例において、前記の方法は、
(1)1×105~1×106の被験細胞を取り、ブロッキング剤を含む緩衝液(たとえば、1%ブロッキング剤含有PBS)で1~3回洗浄する工程、
(2)50~200μLのブロッキング剤および検出可能なマーカーを持つモノクローナル抗体を含む緩衝液(たとえば1%ブロッキング剤、および1~100ngの前記モノクローナル抗体を含有するPBS)で細胞を再懸濁させ、そして2~15℃(好ましくは4±2℃)で一定の時間T1(たとえば10~60分間、好ましくは約15~45分間)置く工程、
(3)緩衝液(たとえばPBS)で細胞を1~3回洗浄する工程、
(4)一定の量(たとえば100~500μL)の緩衝液(たとえばPBS)で細胞を再懸濁させ、そしてフローサイトメーターにセットしで検出する工程
を含む。
【0057】
もう一つの好適な例において、前記の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカーを含む。
もう一つの好適な例において、前記のモノクローナル抗体は、蛍光マーカーを持つモノクローナル抗体である。
【0058】
もう一つの好適な例において、前記の方法は、
(1)1×105~1×106の被験細胞を取り、ブロッキング剤を含む緩衝液(たとえば、1%ブロッキング剤含有PBS)で1~3回洗浄する工程、
(2)50~200μLのブロッキング剤および第一抗体(モノクローナル抗体)を含む緩衝液(たとえば1%ブロッキング剤、および1~100ngの前記モノクローナル抗体、たとえばR19mabを含有するPBS)で細胞を再懸濁させ、そして2~15℃(好ましくは4±2℃)で一定の時間T1(たとえば10~60分間、好ましくは約15~45分間)置く工程、
(3)緩衝液(たとえばPBS)で細胞を1~3回洗浄する工程、
(4)50~200μLの検出可能なマーカー(たとえば蛍光基)を持つ第二抗体を含む緩衝液(100~500ngの二次抗体を含有するPBS)で細胞を再懸濁させ、そして2~15℃(好ましくは4±2℃)で一定の時間T2(たとえば10~60分間、好ましくは約15~30分間)置く工程、
(5)緩衝液(たとえばPBS)で細胞を1~3回洗浄する工程、
(6)一定の量(たとえば100~500μL)の緩衝液(たとえばPBS)で細胞を再懸濁させ、そしてフローサイトメーターにセットしで検出する工程
を含む。
【0059】
もう一つの好適な例において、前記方法は、体外の検出方法である。
もう一つの好適な例において、前記方法は、非診断的で非治療的な方法である。
もう一つの好適な例において、前記方法は、品質管理の方法である。
【0060】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好ましい技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明のウサギ抗血清でCD19 CAR陽性細胞を検出した力価の結果を示す。
図2図2は、ウサギB細胞のモノクローナル培養上清でCD19 CAR陽性細胞を検出した結果を示す。
図3図3は、本発明のウサギモノクローナル抗体R19mabのFMC63 scFvおよびFMC63との結合のELISAによる実験結果を示すが、ここで、マウスモノクローナル抗体136.20.1のデータと比較した。
図4図4は、本発明のウサギモノクローナル抗体R19mabで異なる標的のCAR-T(CD19 CAR-TおよびBCMA CAR-T)細胞を検出する結果を示す。
図5図5は、FMC63 scFvによるR19mabのCD19 CAR-Tへの結合に対する遮断の結果を示す。図5Aは異なる濃度のFMC63 scFvの遮断作用を、図5BはFMC63 scFvの遮断作用のIC50の測定結果を示す。
図6図6は、R19mabの細胞表面におけるCD19 CAR scFvへの結合のEC50の測定結果を示す。
図7図7は、R19mabのCD19 CAR陽性細胞への結合の感度の測定結果を示すが、ここで、マウスモノクローナル抗体136.20.1のデータおよびCD19/Fcのデータと比較した。
図8図8は、R19mabの細胞表面におけるCD19 CAR scFvへの結合の免疫蛍光検出の結果を示す。
図9図9は、R19mabのFMC63 scFvへの結合の動態学的分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
具体的な実施形態
本発明者は幅広く深く研究し、大量のスクリーニングを行ったところ、意外に、抗19抗体のモノクローナル抗体R19mabを得たが、実験結果から、当該CD19抗体に対するモノクローナル抗体は、特異性が高く、親和力が強いことが示された。また、本発明は、CAR-T細胞に対する検出感度が高く、正確性が良くかつ特異性が優れた検出試薬、本発明の検出試薬に基づいた検出方法を提供するが、直接CAR-T細胞における細胞外抗原結合領域を標的とするのみならず、検出感度が既存の様々な検出試薬よりも遥かに高い。また、本発明の検出試薬は、陽性CAR-T細胞と陰性CAR-T細胞に対する区別度が非常に高く、検出結果がより正確である。これに基づき、本発明を完成させた。
【0063】
用語
本明細書で用いられるように、用語「抗体」または「免疫グロブリン」は同様な構造特徴を持つ、約150000ダルトンのヘテロテトラマーの糖タンパク質で、2つの同じ軽鎖(L)と2つの同じ重鎖(H)からなるものである。各軽鎖は、重鎖に1つの共有ジスルフィド結合によって結合しているが、重鎖間のジスルフィド結合の数は、免疫グロブリンのアイソタイプによるものである。各重鎖および軽鎖も、それぞれ一定の間隔の鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、1つの末端に可変領域(VH)を有し、その先に多数の定常領域を有する。各軽鎖は、一方の末端に可変領域(VL)を有し、他方の末端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の一つ目の定常領域と、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と対向している。特殊なアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変領域の間に界面を形成している。
【0064】
本明細書で用いられるように、用語の「可変」とは、抗体において可変領域のある部分が配列で異なっており、これによって各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性が構成されることを指す。しかし、可変性は、均一に抗体の可変領域全体に分布しているわけではない。軽鎖と重鎖の可変領域における相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つの断片に集中している。可変領域において、比較的に保存的な部分は、フレームワーク領域(FR)FRと呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変領域に、それぞれ、基本的にβシート構造となっており、連結ループを形成する3つのCDRで連結され、場合によって部分βシート構造となる4つのFR領域が含まれる。各鎖におけるCDRは、FR領域で密接し、かつ他方の鎖のCDRと一緒に抗体の抗原結合部位(Kabatら、NIH Publ. No. 91-3242, 卷I,647-669頁(1991)を参照する)を形成している。定常領域は、抗体と抗原との結合には直接関与しないが、たとえば抗体の抗体依存細胞毒性に参与するなどの異なるエフェクター機能を示す。
【0065】
本明細書で用いられるように、用語「モノクローナル抗体」とは、一類のほぼ均一なコロニーから得られた抗体で、すなわち、少数のあり得る自然発生の突然変異以外、このコロニーに含まれる単独の抗体が同様である。モノクローナル抗体は、高度特異的に単一の抗原部位に対するものである。そして、通常のポリクローナル抗体製剤(通常は異なる抗原決定基に対する異なる抗体である)と違い、各モノクローナル抗体は、抗原における単一の抗原決定基にたいするものである。それらの特異性以外、モノクローナル抗体の利点は、真核細胞による組み換え発現によって合成することができ、ほかの免疫グロブリンに汚染される恐れがないことにある。修飾語の「モノクローナル」は、抗体の特性を表し、ほぼ均一な抗体コロニーから得られることで、何らかの特殊な方法で抗体を生産する必要があると理解されるべきではない。
【0066】
本発明は、完全のモノクローナル抗体だけではなく、免疫活性を有する抗体断片、たとえば一本鎖抗体、Fabまたは(Fab')2断片、抗体の重鎖、抗体の軽鎖も含む。
本明細書で用いられるように、用語「重鎖可変領域」と「VH」は入れ替えて使用することができる。
【0067】
本明細書で用いられるように、用語「可変領域」と「相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)」は入れ替えて使用することができる。
本発明の一つの好適な実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域は以下の3つの相補性決定領域を含む:
CDR1、アミノ酸配列:GIDFRNYG(配列番号3);
CDR2、アミノ酸配列:FSSSGST(配列番号4);
CDR3、アミノ酸配列:ARHPGPTNGWKL(配列番号5)。
【0068】
もう一つの好適な例において、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、
QSLEESGGRLVTPGTPLTLTCTVSGIDFRNYGVSWVRQAPGKGLEWIGIFSSSGSTYYATWAKGRFTISKASSTTVDLKMTSLTTEDTATYFCARHPGPTNGWKLWGPGTLVTVSS (配列番号9)である。
【0069】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記抗体の重鎖は上記重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み、前記重鎖定常領域はウサギ由来のもの、ネズミ由来のものまたはヒト由来のものでもよい。
【0070】
本明細書で用いられるように、用語「軽鎖可変領域」と「VL」は入れ替えて使用することができる。
本発明の一つの好適な実施形態において、本発明による抗体の軽鎖可変領域は、以下の群から選ばれる相補性決定領域CDRを含む:
CDR1'、アミノ酸配列:QSVSGY(配列番号6);
CDR2'、アミノ酸配列:RAS(配列番号7);
CDR3'、アミノ酸配列:QSNYNSGSSSSAAA(配列番号8)。
【0071】
もう一つの好適な例において、前記の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、
DVVMTQTPASVEAPVGGTVTIKCQASQSVSGYCSWYQQKPGQPPKLLIYRASTLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISDLECADAATYYCQSNYNSGSSSSAAAFGGGTEVVVK (配列番号10)である。
【0072】
また、本発明は、本発明の抗体のほかのタンパク質あるいは融合発現産物を提供する。具体的に、可変領域を含有する重鎖および軽鎖を有する任意のタンパク質またはタンパク質抱合体と融合発現産物(すなわち免疫抱合体と融合発現産物)は、その可変領域が本発明の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域と同様であるか、あるいは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の相同性を持つものであれば、本発明に含まれる。
【0073】
本明細書で用いられるように、用語「CAR」とはキメラ抗原受容体で、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、標的特異的結合エレメント(抗原結合ドメインとも呼ばれる)を含む。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域およびζ鎖部分を含む。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインの一部を含む。共刺激分子は、リンパ球の抗原に対する有効な応答に必要な細胞表面分子である。
【0074】
キット
また、本発明は、CD19 CARを検出するための検出キットであって、
(t1)第一容器、および前記第一容器内にある検出可能なマーカーを持つモノクローナル抗体で、かつ特異的にCD19 CARの細胞外の抗原結合領域に結合するものと
(t0)説明書と
を含む検出キット(直接標識法)を提供する。
【0075】
もう一つの好適な例において、前記の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカーを含む。
もう一つの好適な例において、前記のモノクローナル抗体は、蛍光マーカーを持つモノクローナル抗体である。
【0076】
もう一つの好適な例において、前記検出キット(二次抗体法)は、
(t1)第一容器、および前記第一容器内にあるモノクローナル抗体で、かつ特異的にCD19 CARの細胞外の抗原結合領域に結合するものである、第一抗体と
(t2)第二容器、および前記第二容器にある特異的に前記モノクローナル抗体に対する第二抗体と、
(t0)説明書と
を含む。
【0077】
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、抗ウサギIgGの抗体である。
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、ロバ抗ウサギIgGの抗体、ヤギ抗ウサギIgGの抗体からなる群から選ばれる。
【0078】
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、検出可能なマーカーを持つものである。
もう一つの好適な例において、前記の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカーを含む。
【0079】
もう一つの好適な例において、前記の第二抗体は、蛍光マーカーを持つ二次抗体である。
もう一つの好適な例において、前記検出キットは、さらに、以下の群から選ばれる一つまたは複数の別の検出試薬を含む:
(t3)第三容器、および前記第三容器内にあるブロッキング剤;ならびに
(t4)第四容器、および前記第四容器内にある陽性対照(たとえばCD19 CAR scFv組み換えタンパク質);ならびに
(t5)第五容器、および前記第五容器内にある陰性対照試薬。
【0080】
もう一つの好適な例において、前記の別の検出試薬は、同一の容器か、異なる容器に位置する。
もう一つの好適な例において、前記の説明書にCD19 CAR陽性細胞を検出する方法が記載されている。
【0081】
検出方法
また、本発明は、本発明のモノクローナル抗体に基づき、CAR陽性細胞を検出する方法を提供する。本発明のモノクローナル抗体は、マッチまたは相応するCARの抗原結合領域に対して高親和力および高特異性を有するため、効率的で、感度が良くかつ正確なCAR陽性細胞の検出に有用である。
【0082】
本発明の方法によって検出可能なCAR陽性細胞は、代表的な例として、T細胞、NK細胞、NKT細胞、CIK細胞などの様々な細胞を含むが、これらに限定されない。たとえば、本発明のFMC63 scFvに対するウサギモノクローナル抗体(R19 mab)を例とし、相応するCD19 CAR陽性細胞の検出に有用である(T細胞、NK細胞、NKT細胞またはCIK細胞を含む)。
【0083】
本発明の検出方法は、科学研究、細胞薬品の研究・開発、細胞薬品の品質管理、細胞薬品の臨床治療のモニタリング、臨床患者の補助診断などに有用である。
本発明の主な利点は以下の通りである。
【0084】
(a)本発明のウサギモノクローナル抗体R19mabのFMC63 scFvとの結合の解離平衡定数KD値が43 pMに達し、フローサイトメトリーによって測定されたR19mabの検出感度が1:10000に達するため、本発明のモノクローナル抗体に基づいて開発されるCAR陽性細胞の検出キットは、検出感度が高く、特異性が良い。
【0085】
(b)本発明の検出試薬および方法は、CAR陽性細胞とCAR陰性細胞の区別度が非常に高く、検出結果がより正確である。
(c)本発明のウサギモノクローナル抗体は、マウス由来FMC63に対して高い親和力を有する(マウスモノクローナル抗体のマウス由来FMC63に対する親和力よりも顕著に優れた)。
【0086】
(d)本発明のウサギモノクローナル抗体は、抗マウスIgG (Fab’)2、プロテインL、CD19/Fc、GFP-CD19、マウスモノクローナル抗体136.20.1などの既存の検出試薬と比べ、より特異的に、いい感度で、正確にCD19 CAR陽性細胞を検出し、CAR-T薬物の生産の品質管理、および臨床治療のモニタリング、補助診断の需要を満足させることができる。
【0087】
(e)本発明のウサギモノクローナル抗体およびキットは、生産コストが顕著に低下したため、CAR-T薬物の品質管理ならびに臨床治療のモニタリングおよび補助診断への応用においてより優勢がある。
【0088】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0089】
共通の方法
1.T細胞の活性化およびCD19 CARレンチウイルスの感染
(1)0.5×106のT細胞(0.5×106/mL)を取り、24ウェルプレートに置く;
(2)説明書の指導に従って抗CD3/CD28でコーティングされた磁気ビーズをR10培養液で3回洗浄する;
(3)磁気ビーズを3:1(磁気ビーズ:細胞)の比率でT細胞に入れ、37℃、5%C02インキュベーターに置いて一晩培養する;
(4)T細胞を12~24時間活性化させた後、24ウェルプレートを遠心し、800μLの上清培養液を除く;
(5)室温においてレンチウイルス粒子を溶解させ、軽く均一に混合し、1mLのレンチウイルス粒子を0.5×106のT細胞(200μL)に入れ、最終濃度が8μg/mLになるようにポリブレンを入れ、遠心機にセットして2500回転/分、1.5時間で遠心した後、37℃、5%C02インキュベーターに置いて一晩培養する;
(6)一晩培養した24ウェルプレートを遠心し、レンチウイルス粒子を含む上清培養液の大半を除去し、新鮮なR10培養液を入れ、T細胞を増幅させる;
(7)2日おきにT細胞を計数し、IL-2を50IU/mL入れ、T細胞を0.5~1×106/mLに維持する;
(8)3~5日後、2×105の細胞を取り、フローサイトメーターによってCD19 CAR-T細胞を検出する。
【0090】
2.フローサイトメーターによるCD19 CAR-T細胞の検出(二次抗体法)
(1)2×105のCD19 CAR-T細胞を取り、PBSで2回洗浄し、100μLのPBSで細胞を再懸濁させる;
(2)相応する希釈比率の検出抗体(またはほかの検出試薬)を入れ、4℃で45分間置く;
(3)PBSで2回洗浄する;
(4)蛍光二次抗体を入れ、4℃で光を避けて30分間置く;
(5)PBSで2回洗浄する;
(6)200μLのPBSで再懸濁させ、フローサイトメーターにセットして検出する。
【0091】
3.フローサイトメーターによるCD19 CAR-T細胞の検出(直接標識法)
(1)2×105のCD19 CAR-T細胞を取り、PBSで2回洗浄し、100μLのPBSで細胞を再懸濁させる;
(2)相応する希釈比率の蛍光標識検出抗体(またはほかの検出試薬)を入れ、4℃で45分間置く;
(3)PBSで2回洗浄する;
(4)200μLのPBSで再懸濁させ、フローサイトメーターにセットして検出する。
【0092】
実施例1.抗FMC63 scFvのウサギモノクローナル抗体(R19mab)の製造方法
(1)組み換え抗原の製造と精製
FMC63 scFv-Hisタグ組み換え抗原配列(アミノ酸配列は配列番号2で示される)を含む発現プラスミドを構築した。293T細胞を10 cm培養シャーレで付着培養し、リポフェクタミン(lipofectamine)の説明書に従い、FMC63 scFv-Hisタグ組み換え抗原配列を含む発現プラスミドを293T細胞に形質移入させた。形質移入後の6日目に、培養液を収穫し、遠心で細胞を除去し、上清液を得た。QIAGEN社のNi-NTA Superflowの説明書に従い、上清液における組み換え抗原を精製した。
【0093】
結果:精製後、抗原の濃度は0.5~4 mg/mLであった。
(2)組み換え抗原によるウサギの免疫
精製された組み換えタンパク質を抗原として使用し、ウサギを免疫させた。つまり、0.5 mLのフロイント完全アジュバントを0.5 mLの抗原(200 μg)と十分に均一に混合した。各ウサギに対して4つの部位で(背部および大腿付け根部はいずれでもよい)、各部位にそれぞれ0.25 mLで免疫させた。免疫周期は20日で、免疫完了後7~10日で採血して抗血清の力価を検出し、計4~5回免疫した。
【0094】
(3)ウサギ抗血清のCD19 CAR陽性細胞を検出する力価の測定
FMC63 scFv CD19 CAR配列を含むレンチウイルスプラスミドおよびBCMA CAR配列を含むレンチウイルスプラスミドをそれぞれ三つのパッケージングプラスミドVSVg、gag/pol、revと混合し、リポフェクタミン試薬で293T細胞に形質移入させた。形質移入後24および48時間で、それぞれ細胞上清を収集し、ろ過および超遠心により、精製されたCD19 CARレンチウイルスおよびBCMA CARレンチウイルスを得たが、-80℃で保存した。CD19 CARレンチウイルスで293T細胞に感染させ、CD19 CAR-293T細胞を得た。ウサギ抗血清を冷やされたFACS緩衝液で勾配希釈した。2×105個のCD19 CAR-293T細胞を50 μLのFACS緩衝液に懸濁させた。その後、50 μLの抗血清希釈溶液を50 μLの細胞懸濁液に入れ、そして混合物を氷の上で30分間インキュベートした。その後、冷やされたFACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。ヤギ抗ウサギIgG(H+L)-Alexa Fluor 647二次抗体(表1)を入れ、そして混合物を氷の上で30分間インキュベートした後、冷やされたFACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。200 μLのFACS緩衝液で細胞を再懸濁させ、フローサイトメーターによって検出した。
【0095】
結果:
図1に示すように、ウサギ抗血清を1:16000で希釈して使用すると、正常にCD19 CAR陽性細胞を検出することができたことから、力価が少なくとも≧1:16000に達したことが示された。実施例1(1)で製造された組み換え抗原は、効率的にウサギにおいて特異性の抗FMC63 scFv抗体を生成することができる。
【0096】
(4)ウサギB細胞の単一クローンのスクリーニング
Stefan Seeberらの方法(Stefan Seeberら, PLoS ONE, 2014)で抗FMC63 scFv抗体を発現するウサギB細胞の単一クローンをスクリーニングした。つまり、抗FMC63 scFv抗体を生成する末梢血を取って末梢血の単核細胞を単離した。FMC63 scFv組み換えタンパク質で陽性B細胞の単一クローンを濃縮し、さらに96ウェルプレートにおいてB細胞の単一クローンを培養した。7日後、B細胞の培養上清を取り、実施例1(3)で説明された方案と同様の方案でフローサイトメトリー実験を行い、抗FMC63 scFv抗体を発現するウサギB細胞の陽性クローンを同定した。陽性クローンを分解させ、RT-PCRの方法によって重/軽鎖の遺伝子を得た。重/軽鎖の遺伝子の発現ベクターを構築し、293T細胞に形質移入して発現させた。7日後、細胞の培養上清を取り、実施例1(3)で説明された方案と同様の方案でフローサイトメトリー実験を行い、抗FMC63 scFvモノクローナル抗体を確認し、さらに得られた抗体の重/軽鎖の遺伝子配列をシークエンシングした。
【0097】
結果:
図2に示すように、B細胞の培養上清はフローサイトメトリーによって検出・スクリーニングしたところ、番号0231は抗FMC63 scFv抗体を発現するウサギB細胞の陽性クローンであることが確認された。得られた抗体の重/軽鎖の遺伝子配列をシークエンシングしたところ、当該抗体はR19mabであった。
【0098】
(5)ウサギモノクローナル抗体R19mabの精製
R19mabを発現する293T細胞の培養上清を約1 mL/minの流速でプロテインAクロマトグラフィーカラムに仕込み、20 mLの平衡化緩衝液(20 mM Na2HPO4、0.15 M NaCl、pH 7.0)で樹脂を洗浄し、流速が約2 mL/minになるように維持した。10 mLの溶離緩衝液(0.1 M グリシン、pH 3.0)で抗体を溶離させ、流速が約1 mL/minになるように維持し、溶離液を収集し、そしてすぐに溶離緩衝液の1/10体積の中和緩衝液(1 M Tris、pH 8.5)を入れ、pHが7.4になるように調整した。限外ろ過チューブで1~1.5 mLまで濃縮した後、分光光度計によって抗体の濃度を測定した。
【0099】
結果:精製後、R19mab抗体の濃度は0.5~4 mg/mLであった。
実施例2.R19mabの構造の特徴付け
R19mabは重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域の相補性決定領域はアミノ酸配列が配列番号3で示されるCDR1、アミノ酸配列が配列番号4で示されるCDR2およびアミノ酸配列が配列番号5で示されるCDR3を含み、軽鎖可変領域の相補性決定領域はアミノ酸配列が配列番号6で示されるCDR1’、アミノ酸配列が配列番号7で示されるCDR2’およびアミノ酸配列が配列番号8で示されるCDR3’を含む。
【0100】
実施例3.R19mabの結合特性の特徴付け
本実施例において、ELISAによってR19mabのFMC63、FMC63 scFvとの結合を検出した。フローサイトメトリーおよび免疫蛍光によってR19mabの細胞表面におけるCD19 CARとの結合を検出した。Fortebio OctetによってR19mabのFMC63 scFvに対する結合動態学を分析した。
【0101】
(1)ELISAによる分析
ELISA実験によってR19mabのそれぞれFMC63、FMC63 scFvとの結合の特異性を検出したが、方法は以下の通りである。
【0102】
1 μg/mLの精製されたFMC63 scFv組み換えタンパク質、FMC63抗体またはマウスIgGを含有するPBSで96ウェル滴定プレートを各ウェルに100 μL(100 ng)コーティングし、4℃で一晩インキュベートした。その後、5% BSA含有PBST(0.05% Tween20含有PBS)で300 μL/ウェルでブロッキングした。異なる濃度のR19mab(0.022~5.625 μg/mL)を各ウェルに入れ、そして環境温度で1時間インキュベートした。PBSTで当該プレートを洗浄し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)がカップリングされたヤギ抗ウサギIgGポリクローナル抗体で室温で30分間インキュベートした。洗浄後、ABTS基質で当該プレートを呈色させ、そして分光光度計によってOD 405で分析した。
【0103】
結果:
図3に示すように、ELISA実験の結果から、R19mabはFMC63 scFvおよびFMC63抗体と結合したが、マウスIgGと結合しなかったことが示され、R19mabは特異的にFMC63 scFvおよびFMC63抗体を認識し、ほかのマウス由来IgGとクロス反応がないことが示された。R19mabのFMC63 scFvとの結合のEC50は0.307 nMで、有効結合濃度は0.022 μg/mLで、飽和結合濃度は0.352 μg/mLであった。R19mabのFMC63との結合のEC50は0.253 nMで、有効結合濃度は0.002 μg/mLで、飽和結合濃度は0.25 μg/mLであった。Cooperらによって発現されたマウスモノクローナル抗体136.20.1のFMC63との結合の有効結合濃度は2 μg/mLで、飽和結合濃度は4 μg/mLである。R19mabは136.20.1と比べて顕著な優勢がある。
【0104】
そのため、同じような条件において、本発明の抗体の有効結合濃度は0.002 μg/mLと低く、一方、既存の抗体の有効結合濃度は2 μg/mLで、両者の差が約1000倍である。また、本発明の抗体の飽和結合濃度は0.25 μg/mLで、有効結合濃度の約125倍で、一方、既存の抗体の飽和結合濃度は有効結合濃度のわずか2倍であるため、本発明の抗体の検出範囲が広く、よってコスト削減が可能である。
【0105】
(2)フローサイトメトリーによる研究
(I)CD19 CAR-T細胞の結合
CD19 CARレンチウイルスまたはBCMA CARレンチウイルスでT細胞に感染させ、相応するCAR-T細胞を得た。R19mab、プロテインLおよび同じタイプの対照(ウサギIgG)抗体(表1)を50 μLの冷やしておいたFACS緩衝液に希釈した。2×105個の細胞を50 μLのFACS緩衝液に懸濁させた。その後、50 μLの抗体溶液を50 μLの細胞懸濁液に入れ、そして混合物を氷の上で30分間インキュベートした。その後、冷やされたFACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。相応する二次抗体(R19mab、ウサギIgG/ヤギ抗ウサギIgG(H+L)、Alexa Fluor 488;プロテインL/ストレプトアビジン、FITC。表1)を入れ、そして混合物を氷の上で30分間インキュベートした後、冷やされたFACS緩衝液で細胞を2回洗浄した。200 μLのFACS緩衝液で細胞を再懸濁させ、フローサイトメーターによって検出した。
【0106】
結果:
図4Aに示すように、R19mabは細胞表面におけるCD19 CAR構造を認識するが、BCMA CAR構造を認識せず、両者の違いはscFv部分のみである。そのため、R19mabは特異的にFMC63 scFv配列を含むCD19 CAR陽性細胞を認識する。それに対し、プロテインLはCD19 CARとBCMA CARを区別できず、検出に特異性がない。また、R19mabは明確にCD19 CAR陽性と陰性の細胞群を区別することができ、両者の信号ピークが重ならない。一方、プロテインLの検出結果は、陰性信号と陽性信号が部分的に重なり、明確に陽性と陰性の細胞群を区別することができず、検出の正確性が低い。
【0107】
図4Bに示すように、R19mabでCD19 CAR-T細胞を検出する場合、陽性信号(枠)は陰性信号と完全に分離している。Cooperらによって発現されたマウスモノクローナル抗体136.20.1でCD19 CAR-T細胞を検出する場合、CD4陽性でもCD8陽性CAR-T(枠)でも、陰性T細胞と完全に分離していない。
【0108】
そのため、検出の特異性と正確性からみると、本発明のウサギモノクローナル抗体R19mabはプロテインLおよびマウスモノクローナル抗体136.20.1よりも遥かに良い。
また、特異的にCD4および/またはCD8に対する検出方法と合わせると、本発明の方法はさらに有効にCAR陽性のCD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞の二つの亜群を区別することができる。
【0109】
R19mabは高い特異性と正確性を有し、かつ明確にCD19 CAR陽性と陰性の細胞群を区別することができるため、便利かつ正確にCD19 CAR陽性細胞を統計することができ、これはCD19 CAR-T薬物の生産の品質管理、および臨床治療の補助診断にとても重要である。
【0110】
(II)FMC63 scFvによるR19mabのCD19 CAR-Tへの結合に対する遮断
精製されたFMC63 scFv組み換えタンパク質を1×PBSで勾配希釈し、希釈液にR19mab(最終濃度0.1 μg/mL)を入れ、そして氷の上で共に30分間インキュベートした。2×105個のCD19 CAR-T細胞を100 μLのFACS緩衝液に懸濁させた。その後、FMC63 scFv/R19mab混合溶液を細胞懸濁液に入れ、実施例3(2)(I)で説明された方案と同様の方案でフローサイトメトリー実験を行い、FMC63 scFvによるR19mabのCD19 CAR-Tへの結合に対する遮断作用を分析した。
【0111】
結果:
図5に示すように、FMC63 scFvは有効にR19mabのCD19 CAR-Tへの結合を遮断し(図5A)、IC50が6.37 nM(0.955 μg/mL)であった(図5B)。R19mabは特異的にCD19 CARにおけるFMC63 scFv断片を認識することが示された。
【0112】
(III)CD19 CAR-293T細胞の結合
CD19 CARレンチウイルスで293T細胞に感染させ、CD19 CAR-293T細胞を得た。R19mabを冷やされたFACS緩衝液で勾配希釈した。2×105個のCD19 CAR-293T細胞を50 μLのFACS緩衝液に懸濁させた。その後、50 μLのR19mab抗体溶液を50 μLの細胞懸濁液に入れ、以上で説明された方案と同様の方案でフローサイトメトリー実験を行い、R19mabの結合作用を分析した。
【0113】
結果:
図6に示すように、R19mabは有効に細胞表面におけるCD 19 CAR scFvに結合し、EC50が1.58 nMであった。
【0114】
(IV) R19mabの検出感度の分析
CD19 CAR-T細胞を異なる数のPBMC細胞と、CAR-T:PBMC細胞の比率が1:10~1:10000になるように混合した。実施例1(3)で説明された方案と同様の方案でフローサイトメトリー実験を行い、R19mabでCD19 CAR陽性細胞を検出する感度を分析した。
【0115】
結果:
図7に示すように、R19mabで10万個の陰性細胞から2個のCD19 CAR陽性細胞を検出することができ、検出感度が0.002%に達した。Cooperらによって発明されたマウスモノクローナル抗体136.20.1は検出感度が0.1%に達し(Bipulendu Jenaら, PLoS One, 2013)、CD19/Fc(文中の番号はAF488-CD19sIg1-4)は検出感度が0.5%に達した(Satiro N De Oliveiraら, Journal of Translational Medicine, 2013)。そのため、検出感度からみると、R19mabはマウスモノクローナル抗体136.20.1およびCD19/Fcよりも遥かに良い。R19mabは高い感度を有するため、便利かつ正確に存在度の低いCD19 CAR陽性細胞を統計することができ、これは体内におけるCD19 CAR-T細胞の検出、臨床治療のモニタリングおよび補助診断にとても重要である。
【0116】
(3)免疫蛍光検出
CD19 CAR-T細胞を1×PBSで洗浄した後、4%パラホルムアルデヒドにおいて室温で20分間固定した。1×PBSで細胞を洗浄した後、ブロッキング液(10%ロバ血清含有PBS)で室温で30分間インキュベートした。1×PBSで細胞を洗浄した後、R19mabを入れて1時間インキュベートし、1×PBSで洗浄した後、ヤギ抗ウサギIgG(H+L)-Cy3二次抗体で30分間インキュベートした。細胞をスメアにした後、共焦点顕微鏡によって観察して撮影した。
【0117】
結果:
図8に示すように、R19mabは明確にCD19 CAR陽性T細胞を染色させることができ、膜における赤信号はCD19 CARの細胞膜における位置を表す。CD19 CAR陰性のT細胞は赤い蛍光信号がない。青い蛍光は細胞核を表す。
【0118】
(4) Fortebio Octetによる結合動態学の分析
Fortebio OctetによってR19mabのFMC63 scFvへの結合の動態学的分析を完成させた。つまり、バイオセンサーはPBS緩衝液においてオフラインで600秒平衡化した後、オンラインで60秒検出してベースラインを確立した。精製されたFMC63 scFv組み換えタンパク質をPBSで50 μg/mLになるように希釈した後、センサーにロードして60秒保持した。さらに、FMC63 scFvがロードされたセンサーをそれぞれ異なる濃度(15.6 nMから0.975 nM、5つの濃度)のR19mabに露出させて600秒作用させた後、センサーをPBSに移して900秒解離させて解離速度の測定に使用した。Data Analysis 6.2評価ソフトによってデータを分析し、1:1結合モデルで動態学的分析を行った。
【0119】
結果:
図9に示すように、R19mabのFMC63 scFvとの結合の解離平衡定数KD値が43 pMに達し、R19mabは高親和力でFMC63 scFvと結合することが示された。この結果は上記R19mabの感度の検出結果と一致する。
【0120】
実施例4.R19mabを用いるCD19 CAR陽性細胞のフローサイトメトリー検出キット
(1)以下の試薬を含むキットを製造した(直接標識法):
(a)第一容器および前記第一容器にある蛍光標識R19mab(ここで、蛍光はFITC、PE、Alexa Fluor647などの様々な蛍光が選べる);
(b)第二容器および前記第二容器にあるNC(陰性対照試薬)。
【0121】
キットの使用方法は以下の通りである。
(I)2×105の被験細胞を取り、PBS(1%ブロッキング剤含有)で2回洗浄する;
(II)100 μLのPBS(1 μL蛍光標識R19mab含有)で細胞を再懸濁させ、4℃で45分間置く;
(III)PBSで2回洗浄する;
(IV)200 μLのPBSで再懸濁させ、フローサイトメーターにセットして検出する。
【0122】
前記キットでCD19 CAR-T細胞を検出した結果、当該キットは感度が高く、特異性が良いという効果があることが示された。
(2)以下の試薬を含むキットを製造した(二次抗体法):
(a)第一容器および前記第一容器にあるR19mab;
(b)第二容器および前記第二容器にある蛍光二次抗体(ここで、蛍光はFITC、PE、Alexa Fluor647などの様々な蛍光が選べる);
(c)第三容器および前記第三容器にあるNC(陰性対照試薬);ならびに
(d)第四容器および前記第四容器内にあるブロッキング剤。
【0123】
キットの使用方法は以下の通りである。
(I)2×105の被験細胞を取り、PBS(1%ブロッキング剤含有)で2回洗浄する;
(II)100 μLのPBS(1%ブロッキング剤、1 μL R19mab含有)で細胞を再懸濁させ、4℃で45分間置く;
(3)PBSで2回洗浄する;
(4)100 μLのPBS(0.1 μL蛍光二次抗体含有)で細胞を再懸濁させ、4℃で光を避けて30分間置く;
(5)PBSで2回洗浄する;
(6)200 μLのPBSで再懸濁させ、フローサイトメーターにセットして検出する。
【0124】
前記キットでCD19 CAR-T細胞を検出した結果、当該キットは感度が高く、特異性が良いという効果があることが示された。
【0125】
【表1】
【0126】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
0007588413000001.app