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特許7588415分子種の光学検知のための分光デバイス、システム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】分子種の光学検知のための分光デバイス、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20241115BHJP
【FI】
G01N21/3504
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021549259
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 US2020019239
(87)【国際公開番号】W WO2020172541
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】62/809,249
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003552
【氏名又は名称】ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾンドロ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】タオ、レイ
(72)【発明者】
【氏名】パン、ダ
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ、ジョシュ
(72)【発明者】
【氏名】ギギジアン、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ベル、ハワード、ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、アリス、マーガレット ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】キローフ、パトリック、ミンター
(72)【発明者】
【氏名】ゲールトスフイス、ベルナルダス、マリア
(72)【発明者】
【氏名】ソト、ヘリエ、ハビエル
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0091418(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0299084(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0049777(US,A1)
【文献】特開2014-206541(JP,A)
【文献】特開昭50-023876(JP,A)
【文献】特開2012-215567(JP,A)
【文献】特開2009-014661(JP,A)
【文献】国際公開第2004/015401(WO,A1)
【文献】特開2014-219294(JP,A)
【文献】米国特許第05801384(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102013201459(DE,A1)
【文献】KLEIN, KleinAlexander et al.,Rapid, Time-Division Multilexed, Direct Absorption- and Wavelength Modulation-Spectroscopy,Sensors,2014年,Vol.14,p.21497-21513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01J 3/00- G01J 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス・サンプル中の対象の1つ又は複数のガス種を検出するための分光デバイスであって、
検知ユニットであって、
光源モジュールと、
検出器モジュールと、
前記光源モジュールと前記検出器モジュールとの間のサンプル・セルとを備える、検知ユニットを備え、
前記光源モジュールは、光源モジュール・ハウジングと、前記検出器モジュールに向けられた光路に沿って問い合わせ光ビームを伝送するように構成された光源とを備え、
前記検出器モジュールは、検出器モジュール・ハウジングと、検出器と、基準ガスとを備え、前記検出器は、前記検出器モジュール・ハウジング内にあり、
前記検出器は、前記光路が前記光源から前記サンプル・セル及び前記基準ガスを通って前記検出器に向かって延びるように、前記光路内に位置決めされる、分光デバイス。
【請求項2】
前記検出器が、前記基準ガスを保持する検出器キャップを備える、請求項に記載の分光デバイス。
【請求項3】
前記検知ユニットが、前記基準ガスを保持する基準セルをさらに備える、請求項1に記載の分光デバイス。
【請求項4】
前記基準ガスが、検出される対象の1つ又は2つ以上のガス種を含み、任意選択により、前記基準ガスは、大気圧を下回る圧力を有する、請求項1に記載の分光デバイス。
【請求項5】
前記基準ガスが、検出される対象の1つ又は2つ以上のガス種及び少なくとも1つのスペクトル的に不活性なガス種、任意選択により窒素から本質的になる、請求項に記載の分光デバイス。
【請求項6】
前記サンプル・セルが、前記基準ガス中の検出される対象の少なくとも1つのガス種を含む、請求項に記載の分光デバイス。
【請求項7】
前記サンプル・セルが、水素ガスと、前記基準ガス中の検出される対象の少なくとも1つのガス種とを含む、請求項に記載の分光デバイス。
【請求項8】
検出される対象の前記1つ又は2つ以上のガス種が、硫化水素(HS)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)及びアンモニア(NH)の少なくとも1つを含む、請求項に記載の分光デバイス。
【請求項9】
前記サンプル・セルが、多重パス光学セルを含む、請求項1に記載の分光デバイス。
【請求項10】
前記サンプル・セルが、単一パス光学セルを含む、請求項1に記載の分光デバイス。
【請求項11】
第1の送光窓をさらに備え、前記第1の送光窓を通って前記光路は、前記光源から前記サンプル・セルまで進行する、請求項1に記載の分光デバイス。
【請求項12】
前記第1の窓が、1mmから30mmの範囲内の面積を有する、請求項11に記載の分光デバイス。
【請求項13】
前記第1及び第2の窓が、0.5mmから10mmの範囲内の厚さを有する、請求項11に記載の分光デバイス。
【請求項14】
前記サンプル・セルが、サンプル・ガスの流れを前記サンプル・セルに導入することを可能にするためにサンプル・ガス入力ポート及びサンプル・ガス出力ポートをさらに備える、請求項1に記載の分光デバイス。
【請求項15】
前記サンプル・ガス入力ポート及び前記サンプル・ガス出力ポートが、互いに約180度で位置決めされる、請求項14に記載の分光デバイス。
【請求項16】
プロセッサであって、基準セル及び前記サンプル・セルを通過した後の前記光ビームの強度に基づいて、前記基準セルからの直接吸収分光(DAS)信号及び前記サンプル・セルからの波長変調分光(WMS)信号を分離し、前記直接吸収分光(DAS)信号を前記波長変調分光(WMS)信号に対する一定の基準信号として設定することによって較正情報を生成するように構成される、プロセッサをさらに備える、請求項1に記載の分光デバイス。
【請求項17】
前記波長変調分光(WMS)信号が、前記基準セル及びサンプル・セルを通過した後、前記光ビームの強度の第二次又はさらに高次の高調波を含む、請求項16に記載の分光デバイス。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記サンプル・セルからの較正された前記波長変調分光(WMS)信号に基づいて、前記サンプル・セル内の対象の前記1つ又は2つ以上のガス種の濃度を決定するように構成される、請求項16に記載の分光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全体的に本明細書に組み込まれている、2019年2月22日出願の米国特許仮出願第62/809,249号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、ガス、液体、又は固体サンプル中の対象の1つ又は複数の分子種の濃度情報を測定するための分光デバイス、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガス、液体、又は固体サンプル中の対象の分子種の濃度を決定するために、分光デバイス、方法、及びシステムが使用されている。対象の分子種は、地球大気量の1%体積未満を構成するガスであるトレースガスであってもよく、このガスは、窒素(78.1%)及び酸素(20.9%)を除くすべてのガスを含む。長期間にわたって正確な濃度測定を維持するために、光学デバイス及びシステムは、システムのドリフト、精度、及びノイズを把握するために定期的に較正されなければならない。典型的には、システム較正は、別個の基準セルを使用するか、又は較正するために測定を妨げることによって行われることがあり、このいずれも、そのような光学システムの使用をさらに複雑にしている。参照により全体的に本明細書に組み込まれている、米国特許第8,970,842号は、レーザベースの光学センサのためのインライン較正システムを提供することによってこれらの問題に対処している。しかし、米国特許第8,970,842号は、開示されるレーザベースの光学検知方法を実施するための実験的セットアップを提供しており、センサ・デバイスの具体的な配置及び構成詳細に関しては記載していない。さらに、米国特許第8,970,842号は、較正の適切なやり方を提供できているが、ガス・サンプル中の検出される対象のガス種とは異なる基準ガス種を使用するなど、特定の制限を依然として有している。さらに、米国特許第8,970,842号は、対象の複数の種を含有するガス・サンプルを光学的に検知することに関しても記載していない。したがって、既存のシステム及び方法のこれら及び他の欠点に対処するシステム及び方法を提供することが、望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,970,842号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ガス、液体、又は固体サンプル中の対象の1つ又は複数の分子種の濃度を測定するための(デバイスと称されてもよい)分光デバイスの特徴を提供し、デバイスは、可搬式であってよく、市販用に製造されてもよく、並びに/又は既存のシステムに適合されて及び/又は新しいシステムに統合されてそのようなシステムに光学ガス検知を提供してもよい。本開示はまた、ガス・サンプルのそのような光学検知が望ましい(システムと称されてもよい)システムの特徴と、本明細書に説明する分光デバイスをどのようにしてそのようなシステムの一部にすることができるかのオプションとを提供する。本開示は、さらに、ガス、液体、又は固体サンプル中の対象の1つ又は複数の分子種の濃度を測定するための分光方法の特徴を提供し、方法は、好ましくは、本明細書に説明する分光デバイス又はシステムによって採用されてもよい。開示するデバイス、方法、及びシステムは、光学センサを使用して、ガス・サンプル中の1つ又は複数のガス種のより正確な測定を可能にしてもよい。開示するデバイス、方法、及びシステムは、それだけに限定されないが、環境監視、工業検知、生体医療検知、防衛検知、食品飲料検知、並びに農業技術、動物診断、認証、及び薬剤識別における検知用途を含む幅広い産業において適用される。特有の用途は、グルコースについての血液検査、疾患又は口臭についての呼気分析を含む。特定の用途は、長距離経路若しくは統合測定などの開放経路測定、フェンス・ライン監視を必要とするガス種、又は制御された環境内では容易にサンプリングできないガス種の濃度を測定することを(暗に検出することを含んで)含む。開示する方法及びシステムは、吸収特徴が広がり、互いに重複する周囲条件下での開放経路構成又は閉鎖経路構成で使用することができる。他の用途は、サンプルと接触するために減衰全反射(Attenuated Total Reflection)セル(ATR)を必要とする、液体又は固体サンプル中の特異的分子の濃度を(暗に検出することを含んで)測定することを含む。
【0006】
開示するデバイス、システム、及び方法は、特定のガス、好ましくは水素ガスの純度を、水素ガスが設定された濃度限界を上回って対象の特定のガス種を含有しているかどうかを決定することを含んで、監視することに特に有用であることができる。多くの用途は、(99%以上などの)高純度の水素ガスを使用する。そのような特定の用途は、燃料セル車両(FCVとしても知られている)、又は電気モータに給電するために水素ガスを使用する燃料セル電気車両(FCEV)にある。ガソリン又はディーゼルで走り、一酸化炭素及び二酸化炭素の排気を生み出す従来の車又はトラックとは異なり、FCEVは、水素及び酸素に反応して電気を生み出し、この電気は電気モータに給電し、反応の生成物として水を生成する。FCEVは、燃料セル・スタックを有し、燃料セル・スタックは、FCEV搭載の貯蔵されている水素ガスを取得し、これを空気からの酸素と反応させる。典型的には、高純度の水素ガスがFCEVでの使用に好まれており、その理由は、燃料セルは、燃料セルを汚染し、その効率性及び電力出力を低下させる可能性がある低濃度の特定のガス種に敏感になり得るためである。燃料セルを汚染し得るガス種は、硫化水素(HS)などの含硫化合物、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)、及びアンモニア(NH)である。したがって、開示するデバイス、システム、及び方法を実施して、ガス・サンプル中の、特に、水素燃料補給ステーションにあるなどの貯蔵タンクからFCEVに定量供給される、及び/又は他の用途で使用するための水素ガスなど、高純度で存在するガス・サンプル中の対象濃度の1つの又はガス種の存在及び濃度を監視することができる。
【0007】
米国特許第8,970,842号は、その図1bにおいて、実験的セットアップを提供しており、この実験的セットアップは、化学プラント、鉱業、現場オペレーション、水処理プラント、ゴミ処理場(wasteland)、レストランなどの産業プラントにおける使用から、FCEVにおける使用又は病院などの生体医療用途までの、実験的セッティング外のさまざまな用途にこの文献の教示を適合させるにあたりさまざまな課題を生じさせる。
【0008】
これとは対照的に、本開示は、上記で指摘した用途及び産業を含む、さまざまな用途に商業的に適合され得る分光デバイスを提供する。特に、分光デバイスは、所望の検知用途、特に水素燃料セルを提供するためにさまざまなシステムに接続することを可能にする可搬特徴を含むことができる。本明細書に説明する分光デバイスは、大量生産方法に適し得る。本明細書に説明する分光デバイスには、分光デバイスによって生成されたデータを分析し、解釈するために、(分光信号処理ソフトウェアを実行するコンピュータ又はハードウェアなどの)それ自体の分光信号プロセッサが設けられてもよい。追加的又は代替的には、本明細書に説明する分光デバイスは、当業者に知られているように改変されてもよく、それによって分光デバイスによって生成されたデータを分析し、解釈するために使用することができる他の既存の分光信号プロセッサと使用するように、別個に提供されてもよい。
【0009】
デバイス、システム、及び方法は、較正を実行して、別個の光学基準経路を有する別個の基準セル又はオフライン較正などの従来の較正方法に関連する欠点を有することなく、対象の1つ又は複数のガス種の正確な濃度測定を提供することができる。較正は、ガス・サンプル中の対象の1つ又は複数のガス種の少なくとも1つと同じである基準ガス種を用いて行うことができる。ガス・サンプル中のものと同じである基準ガス種を使用することにより、より正確な測定が可能になり得る。たとえば、対象のガス種がガス・サンプル中に存在しないときの時間が長い光学検知シナリオでは、経時的なセンサ環境の条件における変化(電流、圧力、及び/又は温度など)が、対象のガス種の選択された吸収特徴が位置するスペクトル領域から離れるように光源をドリフトさせる可能性があり、その結果センサは、ガス・サンプル中の対象のガス種の存在を完全に見落とすか、又は吸光度、そして相関関係として、ガス・サンプル中の対象のガス種の濃度についての不正確な情報を生成し得る。基準ガスは、一定の吸収信号を提供して光源のセッティングを選択されたスペクトル領域上に維持し、そのような検出間にかかる時間の長さに関係なく、選択された吸収特徴が発生するときはいつでもこれを検出する。
【0010】
これとは対照的に、米国特許第8,970,842号(「‘842号特許」)は、ガス・サンプル(ガスB)中の対象のガス種とは異なる基準ガス種(ガスA)を採用し、この場合、ガスAは、ガスB中の対象の分光特性も調べながら観察することもできる吸収特徴を有する。特に、米国特許第8,970,842号は、基準ガス種としてエチレン及びガス・サンプル中の対象のガス種としてアンモニアを開示している。しかし、そのような手法は、プロセスをより複雑にする可能性がある。たとえば、所望の吸収特徴を有する適切な基準ガス種の選択が、必要とされる。さらに、(温度変化など)環境の条件が変わるときの基準ガス種とサンプル中の対象のガス種との間のスペクトル特性の変化の関係を理解することが、これらの相違を把握する正確な光学検知測定を提供するために必要とされる。たとえば、正確な光学検知測定は、理想的には、基準ガス種が、日中の高温時に対象のガス種と比較して、夜間の低温時のそれらのガス種の挙動に対してスペクトル的にどのように挙動するかを把握する。さらに、対象のガス種自体に関する条件を変更する際に基準種のスペクトル特性における変化を把握することが潜在的に必要となることにより、そのような相違を完璧に把握できることは難しいため、不正確な場面がもたらされる。本開示に説明するように基準ガス及びガス・サンプルに同じガス種の1つ又は複数を使用することにより、基準ガス種の変化はガス・サンプル中の対象のガス種と同じ変化になるため、この潜在的なスペクトル挙動の変動を把握する必要性が排除され、それによって複雑性並びに不正確な機会がもたらされることを低減する。システムのそのような較正は、FCEVに特に有用であり、この場合、燃料セル・スタックに提供された水素ガスは、高純度(>99.9%)を有することが予想され、そのため任意の他のガスは存在できず、並びに/又は水素ガス中の任意の他のガス種のスペクトル吸収は、長期間にわたって検出限界値を下回る。たとえば、ISO標準14687-2:2012は、高分子電解質膜(PEM)燃料セルを備えた車両に供給された水素の汚染物質の許容レベルを設定している。それにもかかわらず、対象のガス種の正確な濃度測定が、特定の濃度限界値にあるそれらのガスの存在に対して敏感である用途、たとえば、水素燃料セルに定量供給される水素、並びに人、動物、機械、及び地形環境(setting)などのさまざまな供給源から放出されるガスなどにおいて望まれる。
【0011】
さらに、‘842号特許は、ガス・サンプル中の複数のガス種の検出に対処していない。ガス・サンプル中の2つ以上のガス種の濃度を検出し測定するオプションを有することはまた、水素が一連の異なる供給チェーンから提供され得るなどの場合に複数の潜在的に有害なガス種が水素ガス中に存在し得る、高純度の水素を必要とする任意の用途で特に有用である。
【0012】
したがって、本開示は、光源モジュールと、検出器モジュールと、光源モジュールと検出器モジュールとの間のサンプル・セルとを備える検知ユニットを備える、分光デバイスを提供する。光源モジュールは、光源モジュール・ハウジングと、検出器モジュールに向けられた光路に沿って問い合わせ光ビームを伝送するように構成された光源とを備える。検出器モジュールは、検出器モジュール・ハウジングと、基準ガスと、検出器とを備え、基準ガス及び検出器の両方は、検出器モジュール・ハウジング内にある。代替的には、検出器モジュールの代わりに、光源モジュールが基準ガスを含んでもよい。検出器は、光路内に位置決めされ、基準ガスは、光路が光源からサンプル・セル及び基準ガスを通って検出器に向かって延びるように提供される。
【0013】
任意選択により、光源モジュールは、光源モジュールからの光路がサンプル・セルまで続くことを可能にするために第1の送光窓を備えることができ、検出器モジュールは、サンプル・セルからの光路が検出器モジュールまで続くことを可能にするために第2の送光窓を備えることができる。サンプル・セルは、サンプル・ガスをサンプル・セルに導入することを可能にするため、また任意選択により、該当する場合にガス・サンプルの混合を確実にするために、サンプル・ガス入力ポート及びサンプル・ガス出力ポートを備えることができる。たとえば、サンプル・ガス入力ポート及びサンプル・ガス出力ポートは、互いに0度から約180度の範囲内の角度で位置決めすることができる。サンプル・ガス入力ポートは、検出器モジュールよりも光源モジュールの近くに位置決めすることができ、サンプル・ガス出力ポートは、光源モジュールよりも検出器モジュールの近くに位置決めすることができる。
【0014】
別の態様によれば、光源と検出器との間にサンプル・セルを有する代わりに、本明細書に説明する分光デバイスは、光源及び検出器の両方を備える組み合わせられたモジュールを有することができ、これは、光源及び検出器モジュールと称されてもよい。そのような場合、サンプル・セルは、光源及び検出器モジュールと、1つ又は複数の鏡との間にあってもよく、この鏡は、光路を、サンプル・セルを通り光源及び検出器モジュールに向かって戻るように向けるように構成され、この場合、サンプル・セルは、任意選択により、好都合には「鏡」と称されてもよい1つ又は複数の反射表面を含んでもよく、この反射表面は、光路が光源及び検出器モジュール内の検出器の方に向けられる前に、内部の光路内に複数の反射を作り出す。したがって、本開示はまた、光源及び検出器モジュールと、サンプル・セルとを備える分光デバイスを提供し、この場合、光源及び検出器モジュールは、光源及び検出器モジュール・ハウジングと、基準ガスと、検出器と、基準ガスを通り、サンプル・セルを1回又は複数回通って検出器に向かうように進行する光路に沿って問い合わせ光ビームを伝送するように構成された光源とを備え、光源、基準ガス、及び検出器は、光源及び検出器モジュール・ハウジング内にある。
【0015】
任意選択により、光源及び検出器モジュールは、光源及び検出器モジュールからの光路がサンプル・セルまで続くことを可能にするための第1の送光窓と、サンプル・セルからの光路が光源及び検出器に戻ることを可能にするための第2の送光窓とを備えることができる。第1の送光窓及び第2の送光窓は、同じ窓又は異なる窓であることができる。
【0016】
別個の検出器モジュールが存在する場合と同様に、サンプル・セルは、任意選択により、サンプル・ガスをサンプル・セルに導入することを可能にするためにサンプル・ガス入力ポート及びサンプル・ガス出力ポートを備えることができる。サンプル・ガス入力ポートは、任意選択により、サンプル・ガス源とサンプル・セルの動作圧力との間の圧力の変化、たとえば700bargから1000bargの範囲内の圧力から、周囲圧力(約1bar)の最低で30%下から周囲圧力の30%超まで、たとえば少なくとも3bargなどの範囲内の動作圧力までの変化に対応するように構成することができる。サンプル・ガス入力ポート及びサンプル・ガス出力ポートは、互いに0度から約180度の範囲内の角度で位置決めすることができる。サンプル・ガス入力ポートは、鏡よりも光源及び検出器モジュール・ハウジングの近くに位置決めすることができ、サンプル・ガス出力ポートは、光源及び検出器モジュール・ハウジングよりも鏡近くに位置決めすることができる。
【0017】
任意選択の特徴に関する以下の説明は、分光デバイスが別個の光源モジュール及び検出器モジュールを有するか、又は組み合わせられた光源及び検出器モジュールを有するかに関係なく、本明細書に説明する分光デバイスに適用可能である。問い合わせ光ビームの光路が基準ガスとサンプル・セルとの間を進行する順路は重要ではなく、特に経路は、サンプル・セルの前に基準ガスを通っても、又はその逆の形であってもよいことが、理解される。任意選択により、第2の送光窓は、検出器の送光窓であることができる。第1及び/又は第2の送光窓は、少なくとも0.5mmから30mmまでの範囲内の面積を有することができ、及び/又は少なくとも0.01mmから10mmまでの範囲内の厚さを有する。第1及び/又は第2の送光窓は、少なくとも1度から45度までの範囲内の角度を有するくさび型窓であることができる。第1及び/又は第2の送光窓は、サファイア、フッ化カルシウム(CaF)、シリカ(好ましくはUV溶融型)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化バリウム(BaF)、N-BK7(RoHS適合ホウケイ酸クラウン・ガラス)、セレン化亜鉛(ZnSe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、KRS-5(臭化タリウム)の少なくとも1つ、及びその任意の組み合わせを含む材料から作製することができる。
【0018】
光源は、コヒーレント光源であることができ、コヒーレント光源は、量子カスケード・レーザ、インターバンド・カスケード・レーザ、垂直共振レーザ、半導体レーザ、垂直共振インターバンド・カスケード・レーザ、垂直共振量子カスケード・レーザ、及び分布帰還型(DFB)レーザの少なくとも1つを含むことができる。コヒーレント光源はまた、発光ダイオードなどのインコヒーレント光源、又は黒体光源であることもできる。
【0019】
サンプル・セルは、対象の1つ又は複数のガス種を含むサンプル・ガスを含むことができ、この場合、サンプル・セル内の対象の少なくとも1つのガス種は、基準ガス中の対象の1つのガス種と同じである。サンプル・セルは、対象の2つ以上のガス種を含むサンプル・ガスを含むことができ、この場合、サンプル・セル内の対象の少なくとも1つのガス種は、基準ガス中の対象の1つのガス種と同じである。サンプル・セル内のサンプル・ガスは、対象の前記1つ又は2つ以上のガス種を含有する水素ガスを含むことができる。水素ガスは、少なくとも99%の純度を有することができる。サンプル・セル及び/又は基準ガス中の対象の1つ又は2つ以上のガス種は、硫化水素(HS)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)及びアンモニア(NH)の少なくとも1つを含むことができる。
【0020】
サンプル・セルは、多重パス光学セルを含むことができる。多重パス光学セルの光路長は、10mから200mの範囲内であることができ、これは、好ましくは、選択された積分時間に依存し、この場合通常、所望の特定の信号強度について、積分時間が長くなるにつれ、光路長が短くなることが可能になり得る。サンプル・セルは、単一パス光学セルを含むことができ、この場合、任意選択により、基準セルは、知られている濃度の一酸化炭素及び/又は水を対象のガス種として含むことができ、また任意選択により、光源は、700nmから25000nmまでの範囲内の波長において吸収特徴について調べるように構成される。単一パス光学セルの光路長は、0.1mから1000m、好ましくは0.1mから100mの範囲内であることができる。分光デバイスは、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鋼、ガラスコーティングされたプラスチック、及び/又はそれだけに限定されないが、ニッケル-コバルト鉄合金を含む合金などの材料の組み合わせであるハイブリッド材料、又はたとえば他の材料用のコーティングとするシリコン含有材料を含む、当業者に知られている任意の適切な材料から作製することができる。当業者は、ランベルトベールの法則(Beer-Lambert Law)及び以下でさらに説明するような対象のガス種の光学特性を使用して、所望の光路長を選択することができる。
【0021】
基準ガスは、別個の基準セル、任意選択によりインライン基準セル内にあってもよい。代替的には、検出器は、基準ガスを保持する検出器キャップを備えて、別個の基準セルの排除を可能にしてもよい。すなわち、分光デバイスは、任意選択により、別個の基準セルを備えなくてもよい。任意選択により、基準ガスは、検出される対象の1つ又は2つ以上のガス種を含んでもよい。すなわち、サンプル・セルは、基準ガス中にもある少なくとも1つのガス種を含むことができる。基準ガスは、検出される対象の1つ又は2つ以上のガス種及び少なくとも1つのスペクトル的に不活性であるガス種から本質的になることができ、この不活性ガス種は、サンプル・セル及び基準ガスの予想される吸収の100倍以内では対象のスペクトル領域において光を吸収せず、任意選択により窒素又はアルゴンであることができる。基準ガス中の対象の1つ又は2つ以上のガス種の濃度は、知られている濃度であることができ、この濃度は、任意選択により、サンプル・ガスがそれに対して分析される1つ又は複数の限界値近く又はこれを上回る吸収に匹敵する吸収を結果として生じさせることができる。基準ガスは、大気圧を下回る圧力を有することができ、この圧力は、任意選択により、0.01から100Torr、又は約1.3Pascalから約13kiloPascalの範囲内であることができる。
【0022】
分光デバイスは、(i)デバイスに電力を供給するために、(ii)分光データを収集、分析、解釈するために、及び/又は(iii)デバイスの電子構成要素を制御するために電気制御ユニット(ECU)をさらに備えることができる。ECUは、検知ユニットとは別個に位置してもよく、この場合ECUは、ECU及び検知ユニット上の電気ポートを介して検知ユニットに電子的に接続することができる。ECUは、センサ及び光源と通信するように構成されたデータ取得要素を備えることができ、この場合、データ取得要素は、プロセッサに結合されて、基準ガス及びサンプル・セルを通過してプロセッサに至る光ビームの吸収信号を提供し、この場合、プロセッサは、そのような吸収信号から、基準ガスからの基準吸収信号及びサンプル・セルからのサンプル吸収信号を分離し、基準吸収信号及びサンプル吸収信号を使用して、サンプル・セル内の対象の1つ又は2つ以上のガス種の較正情報及び濃度情報を生成するように構成される。基準吸収信号及びサンプル吸収信号のそれぞれは、直接吸収分光(DAS)スペクトル又は波長変調分光(WMS)スペクトルであることができる。波長変調分光(WMS)信号は、サンプル吸収信号の第二次又はさらに高次の高調波を含むことができる。
【0023】
また、本開示は、ガス・サンプル中の対象の1つ又は複数のガス種を検出するための分光方法を提供する。方法は、問い合わせ光ビームを光源から、知られている濃度で対象の1つ又は複数のガス種を含む基準ガスと、対象の同じガス種の少なくとも1つを含むサンプル・セルとを通るように伝送することであって、基準ガスの圧力は、低減された圧力(すなわち大気圧未満)にある、伝送することと、光ビームが基準ガス及びサンプル・セルを通過した後で光ビームの強度を検出することと、基準ガスからの基準吸収信号及びサンプル・セルからのサンプル吸収信号を分離することと、基準吸収信号及びサンプル吸収信号を使用して較正情報を生成することと、基準吸収信号及びサンプル吸収信号を使用してサンプル・セル内の対象の1つ又は2つ以上のガス種の濃度情報を生成することとを含む。
【0024】
較正情報を生成することは、直接吸収分光(DAS)信号又は波長変調分光(WMS)信号を基準吸収信号として生成することと、サンプル吸収信号用のDAS信号又はWMS信号を生成することと、DAS又はWMSそれぞれの基準吸収信号を波長変調分光(WMS)信号用の一定の基準信号として設定することとを含むことができる。波長変調分光(WMS)信号は、サンプル吸収信号の第二次又はさらに高次の高調波を含むことができる。
【0025】
方法は、サンプル・ガスがサンプル・セルを通って連続的に導入されている間に較正情報を生成すること及び/又は濃度情報を生成することをさらに含むことができる。代替的には、方法は、サンプル・セル内の離散的な量のサンプル・ガスの較正情報を生成すること及び/又は濃度情報を生成することをさらに含むことができる。サンプル・セル内のサンプル・ガスは、対象の2つ以上のガス種を含むことができる。サンプル・ガスは、対象の1つ又は2つ以上のガス種を含有する水素ガスを含むことができ、この場合、任意選択により、水素ガスは、少なくとも99%の純度を有することができる。対象の1つ又は2つ以上のガス種は、硫化水素(HS)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)及びアンモニア(NH)の少なくとも1つを含むことができる。
【0026】
ガス・サンプル又は液体サンプルをサンプル・セルに離散的な量で又は連続的に導入することは、サンプル・ガス入力ポート及びサンプル・ガス出力ポートを介してサンプル・ガスをサンプル・セルに提供することを含むことができる。分光方法は、硫化水素(HS)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)、アンモニア(NH)、及び任意のその組み合わせからなる群から選択された1つ又は複数のガス種について、一波長において又は波長の範囲内で吸収特徴について調べるように光源を調整することをさらに含むことができる。たとえば、任意選択により、サンプル内の対象の1つの種に関する情報が望まれる場合、光源は、メタンを検出するために約3300nmの波長、又はアンモニアを検出するために約10300nmの波長に調整されてもよい。対象のそのような他の種に適した波長又は分光特性は、1つ又は複数の公表されているデータベースによって利用可能である。
【0027】
追加的又は代替的には、分光方法は、第1の波長において対象の第1のガス種の吸収特徴について調べるように光源を調整することと、第1の持続時間の間第1の波長において対象の第1のガス種の吸収特徴について調べることと、第2の波長において対象の第2の第1のガス種の吸収特徴について調べるように光源を調整することと、第2の持続時間の間第2の波長において対象の第2のガス種の吸収特徴について調べることとをさらに含むことができる。調整し調べるステップを繰り返すことによって、対象の第3、第4、第5、又はそれ以上のガス種を検出することができる。対象の2つ以上のガス種が検出されている場合、調整するステップは、検出される対象の他のガス種と比較して最高波長において吸収特徴を有する対象のガス種で開始することができる。任意選択により、サンプル中の対象の2つ以上の種についての情報が望まれる場合、選択される波長は、1つの種の検出とは異なり、それによって1つの適切な光源の使用を可能にしてもよく、この場合、選択される波長は互いに近くてもよいが、デバイスは、類似の分光信号を達成するために複数の光源を備えることができることが、理解される。たとえば、アンモニア(NH)は、対象の少なくとも1つの他の種と共に検出されているが、吸収特徴が調べられる波長は、8211nmであることができ、持続時間は少なくとも50秒であることができる。水蒸気(HO)もまた検出されている場合、吸収特徴が調べられる波長は、8207nmであることができ、持続時間は、1~10秒の範囲内であることができる。メタン(CH)もアンモニア及び/又は水と共に検出されている場合、吸収特徴が調べられる波長は、8206nmであることができ、持続時間は、1~10秒の範囲内であることができる。硫化水素(HS)もアンモニア、水、及び/又はメタンと共に検出されている場合、吸収特徴が調べられる波長は、8202nmであることができ、持続時間(又は積分時間)は、少なくとも50秒であることができる。任意選択により、アンモニア、水、メタン、硫化水素、又はその任意の組み合わせを調べるために約8000nmの波長を選択することにより、この分光領域内の波長において調べるように構成された1つの光源を使用することが可能になる。
【0028】
液体又は固体サンプルを検出する場合、減衰全反射(ATR)セルが、サンプルと接触するために使用されてもよい。ATRセルは、ダイヤモンド、ZnSe、ZnS、シリコン、ゲルマニウム、又はKRS-5クリスタルから作製されてもよい。液体又は固体のサンプルは、吸収測定のためにATRの上部に置かれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】光源モジュールと検出器モジュールとの間に単一パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの例示的な検知ユニットの図である。
図1B】光源モジュールと検出器モジュールとの間に単一パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの例示的な検知ユニットの別の図である。
図1C】光源モジュールと検出器モジュールとの間に単一パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの例示的な検知ユニットの別の図である。
図2A】光源モジュールと検出器モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの図である。
図2B】光源モジュールと検出器モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの別の図である。
図2C】光源モジュールと検出器モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの別の図である。
図2D図2A~2Cのデバイス内に使用されてもよい例示的な多重パス・セルの図である。
図3A】光源及び検出器モジュールとフランジ・モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの図である。
図3B】光源及び検出器モジュールとフランジ・モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの別の図である。
図3C】光源及び検出器モジュールとフランジ・モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの別の図である。
図3D図3A~3Cのデバイス内に使用されてもよい例示的な多重パス・セルの図である。
図4A】光源及び検出器モジュールとフランジ・モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの図である。
図4B】光源及び検出器モジュールとフランジ・モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの別の図である。
図4C】光源及び検出器モジュールとフランジ・モジュールとの間に多重パス・サンプル・セルを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの別の例示的な検知ユニットの別の図である。
図5A】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な送光鏡の図である。
図5B】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な送光鏡の別の図である。
図5C】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な送光鏡の別の図である。
図6】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な光源の図である。
図7】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい、光ファイバを備える別の例示的な光源の図である。
図8A】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な検出器の図である。
図8B】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な検出器の別の図である。
図8C】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な検出器の別の図である。
図9A】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な電子制御ユニット(ECU)の図である。
図9B】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な電子制御ユニット(ECU)の別の図である。
図9C】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的な電子制御ユニット(ECU)の別の図である。
図9D】ECU内の特定の構成要素の例示的な情報の流れを示す図である。
図9E】本明細書に説明するような分光デバイス内で使用されてもよい例示的なECUハウジングの図である。
図10】本明細書に説明するような分光デバイスを採用する例示的なシステムの図である。
図11】本明細書に説明するような、水素貯蔵タンク及びFCVに関連して本明細書において説明するような分光ユニット又は分光デバイスの1つの例示的な配置の図である。
図12】本明細書に説明するような分光デバイス内のさまざまな構成要素の1つの例示的なブロック図である。
図13】本明細書に説明するような分光デバイスによって生成及び/又は受信された例示的な代表的な分光信号の図である。
図14】本明細書に説明するような分光デバイス内のさまざまな構成要素の1つの例示的なブロック図である。
図15】液体又は固体サンプル測定のためにATRを用いるシステムの図である。
図16A】本明細書に説明するような分光デバイス内のさまざまな構成要素の例示的な配置の図である。
図16B】本明細書に説明するような分光デバイス内のさまざまな構成要素の例示的な配置の別の図である。
図16C】本明細書に説明するような分光デバイス内のさまざまな構成要素の例示的な配置の別の図である。
図17】窒素中の100万分の0.2体積(ppmv)の一酸化炭素について、周囲条件(298k、1気圧)、20cm光路長に関するHITRANスペクトル・データベースからの算出されたスペクトルを用いた、分光検出領域の少なくとも一部分のグラフである。
図18A】40Torr及び298K、100m光路長に対する、HSの直接吸収スペクトルのグラフである。
図18B】HS(1803)、NH(1804)、CH(1802)、及びHO(1801)すべてが、40Torr及び298Kにおいて100m経路長に対して適度な強さの吸収特徴を有する領域の少なくとも一部分についての、算出されたHITRAN直接吸収スペクトルのグラフである。
図19A】追加のガス基準セルを含むレーザ源の1つの実施例の図である。
図19B】追加のガス基準セルを含むレーザ源の1つの実施例の別の図である。
図19C】追加のガス基準セルを含むレーザ源の1つの実施例の別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記で留意したように、1つの態様によれば、本開示は、光源モジュールと、検出器モジュールと、光源モジュールと検出器モジュールとの間のサンプル・セルとを備える検知ユニットを備える分光デバイスを提供する。光源モジュールは、光源モジュール・ハウジングと、検出器モジュールに向けられた光路に沿って問い合わせ光ビームを伝送するように構成された光源とを備える。検出器モジュールは、検出器モジュール・ハウジングと、検出器と、基準ガスとを備え、この場合、検出器及び基準ガスは、検出器モジュール・ハウジング内にあり、基準ガス及び検出器は、光路が光源からサンプル・セル及び基準ガスを通って検出器内に延びるように光路内に位置決めされる。代替的には、光源モジュールは、検出器モジュールの代わりに基準ガスを含んでもよい。問い合わせ光ビームの光路が基準ガスとサンプル・セルとの間を進行する順路は重要でないこと、特に経路が、サンプル・セルの前に基準ガスを通っても、又はその逆の形であってもよいことが、理解される。
【0031】
次に、本開示によって提供するような分光デバイス、システム、及び方法のさまざまな例示的な特徴が、図を参照してさらに説明される。同様の要素が1つ又は複数の図で使用される場合、同一の参照番号が各図において使用される。本明細書において提供する要素の詳細な説明は、通常、必ずしも最初に出てきたものではなく、すべての場合の要素に適用可能であり、そのような適用が明示的に留意されるか否かに係わらない。本明細書に説明する分光デバイス、システム、及び方法のいくつかの特徴は、明確にするために特定の図示する構成において省略されてもよい。さらに、それだけに限定されないが、電気配線、光ファイバ、流れ構成要素(弁、継手、及びポートなど)、光コーティング、コネクタなどの特定の特徴は、必ずしも図には示されていないが、その存在及び機能は、当業者によって理解されるであろう。「たとえば(for example)」、「たとえば(for instance)」、「など」、及び「含む」のような用語は、例示的で非限定的であり、別途示されない限り「それだけに限定されないが」という語句を暗に含むことも理解される。本発明は特徴及び対策の1つ又は複数の特有の組み合わせを参照しながら示されているが、これらの特徴及び対策の多くが、他の特徴及び対策から機能的に独立しているため、これらを同様に又は同じようにして、他の実施例又は組み合わせにおいて独立的に適用できることを、当業者は容易に理解するであろう。
【0032】
次に図1Aを参照し、図1Aは、光源モジュール102と、検出器モジュール106と、光源モジュール102と検出器モジュール106との間のサンプル・セル104とを備える、本明細書に説明するような分光デバイスの分光検知ユニット100を示す。光源モジュール102は、光源モジュール・ハウジング108を備える。検出器モジュール106は、検出器モジュール・ハウジング110を備える。
【0033】
光源モジュール・ハウジング108が取り外されて前記光源モジュール・ハウジング108内の構成要素を露出させた状態で検知ユニット100を示す図1Bを参照する。光源モジュール102は、光源112をさらに備え、この光源は、ハウジング108が検知ユニット100から取り外されないときは光源モジュール・ハウジング108内にある。光源112は、問い合わせ光ビームを光路114に沿って検出器モジュール106に向けて伝送するように構成される。
【0034】
1つ又は複数の鏡116及び118が、光源モジュール102から検出器モジュール106に向かう光路114を作り出すために使用されてもよい。問い合わせ光ビームは、光源112及び/又は検知ユニット100がオンではない場合は存在しないため、図2には示されていない。光路114は、所望に応じて光源112からサンプル・セル104、最終的に検出器モジュール106に至るように構成することができ、光源112並びに任意の鏡116及び118などの関連する構成要素は、それにしたがって位置決めされて、光源112が問い合わせ光ビームを伝送するときに問い合わせビームが光路114に沿って進行することを可能にすることができる。
【0035】
次に図1Cを参照し、図1Cは、検出器モジュール・ハウジング110が取り外されて検出器モジュール・ハウジング110内の構成要素を露出させた状態で、検知ユニット100を示す。検出器モジュール106は、任意選択によりインライン基準セルであってもよい別個の基準セル120と、検出器122とをさらに備え、これらのいずれも、ハウジング110が検知ユニット100から取り外されないときには検出器モジュール・ハウジング110内にある。基準セル120及び検出器122は、サンプル・セル104から基準セル120を通って検出器122に向かって延びる光路114内に位置決めされる。光源モジュール102と同様に、鏡124は、サンプル・セル104から基準セル120を通って検出器122に向かって延びる光路114内に基準セル120及び検出器122があることを可能にする1つのオプションであることができる。図示しないが、検出器122の代わりに、光源モジュール102が基準セル120を備えることができ、この場合光路114はサンプル・セル102に入る前に基準セル120を最初に通って進行することが、理解される。当業者は、光源モジュール及び検出器モジュールが、適切な材料の任意の1つ又は組み合わせでそれぞれ作製されてもよいことを理解するであろう。適切な材料の非限定的な例は、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鋼、ガラスコーティングされたプラスチック、及び/又はそれだけに限定されないがニッケル-コバルト鉄合金を含む合金などの材料の組み合わせであるハイブリッド材料、又はたとえば他の材料用のコーティングとするシリコン含有材料を含む。
【0036】
図1Bに示すように、鏡116は、光路114を光源112に平行な同じ平面内で直角に方向転換することを可能にするタイプの鏡である。図1B及び1Cに示すように、鏡118及び124は、光路114がさまざまな平面間を横断する、たとえば光源112に平行な平面から図1Bに示すような垂直平面に、又は図1Cに示すようにその逆の形で進むことを可能にする異なるタイプの鏡である。問い合わせ光ビームをサンプル・セルに向けて伝送するように光源を位置決めするための他のやり方を当業者が知っていることが、理解される。たとえば、当業者は、光ビームをサンプル・セル内に直接伝送するように光源を位置決めすることができる。代替的には、当業者は、サンプル・セルに向かう光路を作り出すために1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の鏡又はその等価物を使用するようにして光源を位置決めすることができる。当業者は、光路を所望に応じて所望の数及びタイプの角度で構成するように鏡の数、タイプ、及び角度を選択することを知っているであろう。
【0037】
図1Aを参照すれば、サンプル・セル104は、サンプル・ガスをサンプル・セル104に導入することを可能にするためにサンプル・ガス入力ポート130及びサンプル・ガス出力ポート132を備えることができる。サンプル・ガス入力ポート130及びサンプル・ガス出力ポート132は、好ましくは、所望の流量、たとえば当業者によっていつもの手段を通して決定されてもよい特定のサンプル・セルのサイズに最適な流量を達成するように互いに対して配置される。たとえば、任意選択により、サンプル・ガス入力ポート130及びサンプル・ガス出力ポート132は、互いから約180度に位置決めすることができ、又はこれらは、図5に示すように互いから約0度に、又はその間の任意の角度に位置決めされてもよい。図示するように、サンプル・ガス入力ポート130は、検出器モジュール・ハウジング110よりも光源モジュール・ハウジング108の近くに位置決めすることができ、サンプル・ガス出力ポート132は、光源モジュール・ハウジング108よりも検出器モジュール・ハウジング110の近くに位置決めすることができる。任意選択により、サンプル・ガス入力ポート130及びサンプル・ガス出力ポート132は、水素が貯蔵され大気圧を少し超えたところから1、200barまでの範囲の圧力でFCEVに送出される水素燃料補給ステーション内などの高圧下のシステムから、ガス・サンプルを導入することを可能にするように構成される。
【0038】
分光デバイスが動作しているとき、サンプル・セルは、対象の1つ又は複数のガス種を含んでもよいサンプル・ガスを含むことができ、この場合、サンプル・セル内の対象の少なくとも1つのガス種は、基準ガス中の対象の1つのガス種と同じである。サンプル・セルは、対象の2つ以上のガス種を含んでもよいサンプル・ガスを含むことができ、この場合、サンプル・セル内にあってもよい対象の少なくとも1つのガス種は、基準ガス中の対象の1つのガス種と同じである。サンプル・セル内のサンプル・ガスは、場合によっては、本明細書の説明する分光デバイスによって決定されてもよい濃度の、対象の1つ又は2つ以上のガス種を含有することができる水素ガスであってもよい。基準ガスは、サンプル・セル内の対象の1つ又は複数のガス種の限界値近く、又はそれを超える濃度によって生成される吸収を表す基準吸収を生成するために、特定の光路長下で対象の同じガス種の少なくともいくらかの知られている濃度を含むように構成することができる。水素ガスは、少なくとも99%の純度を有することができる。サンプル・セル及び/又は基準ガス内の対象の1つ又は2つ以上のガス種は、それだけに限定されないが、硫化水素(HS)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、エタン(C)、エチレン(C)、アセチレン(C)、ホルムアルデヒド(CHO)、メタン(CH)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、二酸化硫黄(SO)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)及びアンモニア(NH)の任意の1つ又は任意の組み合わせを含んでもよい。対象の種はまた、さまざまな要素の特異的同位体を含んでもよい。たとえば、CO又はCO中の13C/12C比を知ることが望ましくなり得る。
【0039】
対象の異なる種は、可視範囲から長いIR範囲までに位置する異なる吸収帯域を有するため、レーザの波長及び可用性の選択に応じて、異なる関連コストで異なる感度を得ることができる。特定の実施例では、下側検出限界値(LDL)は、波長、経路長、及び関連する平均時間である。以下に示すのは、1つの実施例についてのさまざまな種のLDLの表である。
【表1】
【0040】
分光デバイスが使用されていないとき(たとえば、1つの場所から別の場所への移送されている、システムに接続されていない、動作中ではないなど)、サンプル・セルは、任意選択により周囲条件にあることができる。動作中、分光デバイスは、約-30℃から約+40℃までの範囲内の動作温度、及び/又はレーザ走査範囲によって吸収スペクトル幅を十分に捕捉することができる動作圧力を有することができる。たとえば、分光デバイスの動作圧力は、周囲圧力(約1bar)の最低で30%下から周囲圧力の30%超までの範囲内にあることができる。ガス・サンプルは、ポート130及び132などを介してサンプル・セルを通して、サンプル・ガス・ストリームとして連続的に、又は離散的な量で非連続的に提供されてもよい。
【0041】
図1A~1Cに示すように、検知ユニット100のサンプル・セル104は、単一パス・サンプル・セルであり、この場合、光路長は、サンプル・セル104の空洞長と同様である。任意選択により、図2A~2Cに示すように、本明細書に説明する分光デバイスは、多重パス・サンプル・セル、サンプル・セル204を備えることができ、この場合、光路は、サンプル・セルを複数回通って進行し、その結果、光路長も同様にサンプル・セルの空洞長より数倍長くなる。通常、経路長の選択は、少なくともガス種のスペクトル特性に依存する。特に、ガス種は、典型的には、特定の波長において調べ、検出することができる吸収特徴を有し、この吸収特徴を使用してその濃度を決定することができる。たとえば、水素又は窒素を含有するガス・サンプル中の一酸化炭素(CO)などのガス種の濃度を決定することができ、その理由は、一酸化炭素が特定の波長の問い合わせ光ビームを吸収し、水素又は窒素は吸収せず、また、ガス・サンプル中に存在する一酸化炭素の濃度は、二酸化炭素によって吸収される波長(たとえば吸収信号)においてサンプル・セルを通る光ビームの伝送を測定することによって選択的に測定できるためである。
【0042】
通常、経路長は、光挙動と化合物の濃度との間の関係を説明するランベルトベールの法則を使用して選択することができる。サンプル・セルについての経路長を算出する1つの方法は、ランベルトベールの法則を適合して、システム特有の最小の検出可能な吸光度、吸収断面、サンプル・ガス中の対象のガス種の検出される濃度範囲、及び下記の式内の測定の平均時間を考慮に入れることである。
【0043】
L=Amin/(Nσ(tavg)^0.5
【0044】
式中、Lは、サンプル・セルの経路長であり、Aminは、特定の分光検出システムによる最小の検出可能な吸収であり、Nは、対象のガス種の検出される分子濃度であり、σは、分子吸収断面であり、tavgは、吸収特徴がそれにわたって調べられる平均時間である。分光検出システムは、ガス・サンプル中の対象のガス種の濃度をそこから計算することができる、基準ガス種の知られている濃度を用いて較正されるため、分光検出システムは、サンプル・ガス中の対象のガス種の検出される濃度範囲(上記の式ではN)の推定値が存在する場合により正確な読み取り値を提供しやすい。別の場合、サンプル・ガス中の対象のガス種の濃度のこの推定値からの逸脱が、高くても低くても大きすぎる場合、基準ガス種と吸収信号の相関付けは、不正確になり得る。分子吸収断面、σは、各ガス種特有である。たとえば、HITRAN(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)及びGEISA(Gestion et Etude des Informations Spectroscopiques Atmospheriques)スペクトル・データベースは、分子吸収断面情報を含み、分子吸収断面情報は、異なる波長におけるさまざまなガス種の強度及び形状(広帯域か、狭帯域か)を含む。このタイプの光源は、調べられる分子断面を決定することが多い。たとえば、選択される光源が、波長4300nmにおいて調べるように構成される場合、4300nmにおける対象のガス種の分子吸収断面が、使用される。典型的には、最強の吸収特徴、したがって調べられる最も感度の高い吸収特徴を含む分子吸収断面が、選択される。そうではあるが、光源の可用性、所与のスペクトル領域内の他のガス種の吸収からの干渉、1つの光源によって複数の吸収特徴を調べる能力、及び/又は光源及び検出器のコストなどの他の要因により、より弱い線強度の吸収線が、使用される場合がある。
【0045】
一酸化炭素又は水蒸気のようなガス種について、少なくとも10cm、任意選択により10~50cmの範囲内のサンプル・セル経路長が、特にガス・サンプル中のガス種の予想される濃度及び強い吸収線強度により、サンプル・セル内の対象のガス種の濃度の検出及び算出のために適切な強度の吸収信号を生成するのに適することができる。たとえば、ユニット100などの本明細書に説明するような単一パス・サンプル・セルを用いる分光デバイスは、主に、任意選択により99%以上の純度で水素を含有するガス・サンプル中の一酸化炭素(CO)及び水蒸気(HO)の少なくとも1つの濃度を測定するのに使用するのに特に適しており、この場合、サンプル・セル104は、少なくとも10cm、任意選択により、10~50cmの範囲内の空洞長を有してもよい。任意選択により、CO及びHOを検出するように構成された単一パス・サンプル・セルを用いるそのような分光デバイスは、1000nmから8000nmの範囲内の波長において吸収特徴について調べるように構成された光源を有することができる。単一パス・サンプル・セルは、CO及びHO以外の対象の他のガス種を測定するように構成することができ、この場合、単一パス光学セルの光路長は、0.1mから1000mの範囲内、好ましくは0.1mから5mの範囲内にあることができることが、理解される。そのような比較的短い経路長の場合、サンプル・セルは、光源から検出器に行く単一パス光学セルであることができる。
【0046】
ガス・サンプルが、一酸化炭素(CO)の代わりに、又はこれに加えて硫化水素(HS)を含有する場合、国際標準化機構(International Organization for Standardization)によって課されるものなどの特定の濃度限界値と比較して硫化水素(HS)の濃度を分析するために強い吸収信号を生成するために、サンプル・セルに対してより長い光路長(たとえば、少なくとも1メートルから200mまで)が、必要とされ得る。
【0047】
上記で留意したように、単一パス光学セルの光空洞の長さは、有効的には、そのセルを通る光路の長さである。比較的短い経路長の場合、単一パス光学セルが、その設計、位置合わせ手順、及び製造上の簡易性により好まれることが多い。しかし、より長い経路長の場合、空洞長が増大し、したがってセルのサイズが増大することにより、単一パス光学セルが与える簡易性の価値は無くなることがあり、そのようなシナリオでは、多重パス光学セルが好まれることが多い。多重パス・セルは、光路を、光学セルの空洞を複数回通ってから出るように向け、それによって、光路長を光空洞の物理的長さを超えて延ばす。したがって、多重パス光学セルの断面積は、通常、単一パス光学セルのものより大きい。多重パス光学セルは、設計、位置合わせ、及び製造がより複雑になり、より込み入った、複雑な、そしてコストがかかる光学構成要素を伴うことがあるが、その省スペース能力は、特定のシナリオではその複雑性に勝ることができ、デバイス又はシステムの所望の設計根拠に基づいて単一パス光学セルと多重パス光学セルとの間で選択することは、当業者の知識の範囲内である。
【0048】
したがって、別の態様によれば、光源と検出器との間にサンプル・セルを有する代わりに、本明細書に説明する分光デバイスは、光源及び検出器の両方を備える組み合わせられたモジュールを有することができ、これは、光源及び検出器モジュールと称されてもよい。そのような場合、サンプル・セルは、光源及び検出器モジュールと、1つ又は複数の鏡との間にあってもよく、鏡は、光路を、サンプル・セルを通って光源及び検出器モジュールに向かって戻るように向けるよう構成され、この場合、サンプル・セルは、任意選択により、光路が光源及び検出器モジュール内の検出器の方に向けられる前に、その内部(たとえば多重パス光学セル内)の光路内に複数の反射を作り出す1つ又は複数の鏡を備えてもよい。したがって、本開示はまた、光源及び検出器モジュールと、サンプル・セルとを備える分光デバイスを提供し、この場合、光源及び検出器モジュールは、光源及び検出器モジュール・ハウジングと、基準ガスと、検出器と、基準ガスを通り、サンプル・セルを1回又は複数回通って検出器に向かうように進行する光路に沿って問い合わせ光ビームを伝送するように構成された光源とを備え、光源、基準ガス、及び検出器は、光源及び検出器モジュール・ハウジング内にある。
【0049】
図2A~2Cを参照すれば、検知ユニット200は、多重パス光学セルであることができるサンプル・セル204を備える。図2A~2Cの他の構成要素は、図1A~1Cのものと同じとすることができるため、これらは、同じ番号参照を有し、図1A~1Cにあるものを含む本明細書に提供するこれらの番号に関連する説明は、図2A~2Cに適用可能であり、繰り返される必要はない。多重パス光学セルは、当業者に知られており、球面鏡の対、空洞強化方法、積分球、又は非点収差セルの使用を含むことができる。所望の光路長を達成するように多重パス光学セルを設計及び/又は選択することは、当業者の知識の範囲内である。
【0050】
特に、図2Dは、多重パス光学セル204に使用することができる1つのオプションを示し、この場合サンプル・セル204の空洞240を通る光路114の経路長を延ばすために、球面鏡の対236及び238が使用される。図2Dでは、光路114は、光源モジュール102からサンプル・セル204の空洞240に入り、出るまで所定の時間の間鏡236と238との間を行ったり来たりし、検出器モジュール106に入る。また、図2Dは、サンプル入力ポート130及びサンプル出力ポート132が互いに180度離間して位置決めされないオプションを示す。多重パス光学セルの他のタイプをサンプル・セル204として使用することができ、そのような選択を行うことは当業者の知識の範囲内であることが、理解される。
【0051】
任意選択により、二重パス光学セルを含む多重パス光学セルの使用は、光源、基準ガス、及び検出器がサンプル・セルの同じ側に位置することを可能にすることができる。図3Aを参照すれば、検知ユニット300は、光源及び検出器モジュール302と、フランジ・モジュール306と、光源及び検出器モジュール302とフランジ・モジュール306との間のサンプル・セル204とを備える。光源及び検出器モジュール302は、光源及び検出器モジュール・ハウジング308と、フランジ・モジュール306とを備える。サンプル・ガス入力ポート130は、フランジ・モジュール306よりも光源及び検出器モジュール・ハウジング308の近くに位置決めすることができ、サンプル・ガス出力ポート132は、光源及び検出器モジュール・ハウジング308よりもフランジ・モジュール・ハウジング310の近くに位置決めすることができる。
【0052】
次に図3Bを参照し、図3Bは、光源及び検出器モジュール・ハウジング308が取り外されて光源及び検出器モジュール・ハウジング308内の構成要素を露出させた状態で、検知ユニット300を示す。図示するように、光源及び検出器モジュール302は、光源112と、基準ガス(図示せず)と、検出器122とをさらに備える。光源112は、基準ガスを通り、サンプル・セル204を1回又は複数回通って検出器122に向かうように進行する光路(図示せず)に沿って問い合わせ光ビームを伝送するように構成される。図3Bは、問い合わせ光ビームを、直接光源112からサンプル・セル204までの光路に沿ってサンプル・セル204の方に向けることを可能にする1つのオプションを示す。図2Bに示すように、光源112とサンプル・セル204との間に光路を構成するために鏡は使用されず、これは、鏡116、118、及び128の使用を示す図1B~1C及び2B~2Cとは対照的である。したがって、光路は明示的に示されていないが、光源112からサンプル・セル204まで存在することが、理解される。図3Cは、ここでは前置増幅器134を有することを除き、図3Bのもののような検知ユニット300の同様の図を示し、前置増幅器の詳細は、以下にさらに提供される。任意選択により、検出器及び/又は基準セルなどの特定の構成要素は、締結具346又は任意の他の適切な締結具若しくは結合器によって所定の場所に保持されてもよい。
【0053】
図3Aを参照すれば、サンプル・セル204に選択された光学セルのタイプに応じて、フランジ・モジュール306は、任意選択により、支持するために及び/又はシステムの他の部分との統合又は締結を容易にするために、エンド・プレートなどの支持構成要素310を備えることができる。特に、図3A~3Bのサンプル・セル204は、図2Dに示す多重パス・セルであることができ、この場合、光路114は、光源及び検出器モジュール(図示せず)から空洞240に入り、空洞から出るまで鏡236と238との間をバウンドして行ったり来たりして、光源及び検出器モジュール内の検出器(図示せず)に戻る。基準ガス(図示せず)及び検出器122は、サンプル・セル204及び基準ガス(図示せず)を通り検出器122に向かって戻ってくる光路内に位置決めされる。図3Bは、サンプル・セル204を通って戻ってくる光路内に基準ガス及び検出器222を位置決めする1つのオプションを示し、この光路は、直接サンプル・セル204から基準ガスを通り検出器122に向かうものである。図示するように、サンプル・セル204と検出器222との間に光路を構成するために、鏡は使用されない。したがって、光路は明示的に示されていないが、光源112からサンプル・セル204まで存在することが、理解される。所望の場合、検知ユニット300に図1B~1C及び2B~2Cに示すものなどの1つ又は複数の鏡の使用を実施することができるが、図3Bに示す構成を採用することが好ましく、その理由は、鏡などのそれぞれの追加の構成要素がスペースをとり、それによってハウジング308を所望より大きくし得るためである。特定の光源又は鏡などの構成要素のコスト及び装置サイズの好ましい範囲は、鏡が使用されるかどうか、及び/又は光路の構成に影響し得る当業者に知られているさまざまな要因のうちの2つであることができる。
【0054】
任意選択により、検知ユニット300のサンプル・セルは、特定のタイプの多重パス・セル、二重パス光学セルであることができ、この場合、光路は、サンプル・セルを、1回を上回って、具体的には2回通り抜ける。たとえば、図2Dに示す多重パス光学セルは、鏡238を有さずに鏡2361つだけを有するように構成することができ、この場合、光路114は、空洞240に入り、鏡236からバウンドして光源及び検出器モジュール302に戻る。二重パス光学セルを用いる分光デバイスの別のオプションが、図4A~4Cに示されており、この場合、検知ユニット400は、サンプル・セル404を備えることを除き、図3A~3Cに示す検知ユニット300と同様であり、光路を光源及び検出器モジュール302に戻るように向けるための鏡を含まない。その代わりに、フランジ・モジュール306が1つ又は複数の鏡442を備えることができ、この鏡は、サンプル・セル404に結合され、光路を光源及び検出器モジュール302に戻るように向けるように構成される。したがって、サンプル・セル404は、図1Aに示すものなどの単一パス・セルと同様であることができるが、わずかに長い経路長の利点を有する。特に図4Aに示すものなどの二重パス光学セルの使用は、(i)光源、基準ガス、及び検出器が一方の側に一緒に位置することを可能にし、それによって設置面積がより小さく、したがってよりコスト効果の高いデバイスを実現できるため、そして(ii)単一パス光学セルより長い経路長を提供しながら、依然として単一パス光学セルに関連する上記で述べた簡易性を享受するため、好ましくなり得る。ユニット100又は400などの単一パス・サンプル・セル又は二重パス・サンプル・セルを備える分光デバイスは、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、又はメタンなどの対象の1つのガス種を含有するガス・サンプルの光学検知に使用するのに特に適している。ユニット200又は300などの多重パス・サンプル・セルを備える分光デバイスは、対象の2つ以上のガス種を含有するガス・サンプルを測定するのに特に適しており、たとえば、サンプル・セルにより長い経路長を必要とし得る複数のガス種を調べることに関連する複雑性が増大することにより、一酸化炭素及び水蒸気を含む2つ以上のガスについて調べるように構成された1つの光源を使用するなどの場合である。任意選択により、基準ガス・サンプルは、2つ以上の基準ガス種を含むことができる。
【0055】
代替的な又は追加の任意選択の省スペース及び省コスト特徴として、基準セルは、検出器122の一部であることができ、この場合、検出器122は、基準セルのように機能する検出器キャップを備える。本明細書に説明する分光デバイスのこの任意選択の特徴に関するさらなる詳細は、以下の項に提供される。基準ガスは図3Bに明示的に示されていないが、検出器122の一部とするか、又は他の類似の構成内に別個であるかに関係なく存在することが、理解される。
【0056】
図1A、2A、3A、及び4Aを参照すれば、必ずしも必要ではないが、光源モジュール・ハウジング108、検出器モジュール・ハウジング110、及び/又は光源及び検出器モジュール・ハウジング308は、光路114に沿って進行する問い合わせ光ビームの吸光度読み取り値に影響を与え得る汚れ又は他のガスなどの環境からの汚染物質を防止するために、気密的に、又は局所的にパージされるか、若しくは加圧された環境を可能にする他のシール機構でシールされることが、好ましい。追加的又は代替的には、存在する場合、サンプル・セル104内のサンプル・ガスが、特にそのサンプル・ガスが、反応性が高くなり得る水素ガスである場合、光源モジュール・ハウジング108及び/又は検出器モジュール・ハウジング110に同様の理由で入らないことも好ましい。図1B~1C及び2B~2Cに示すように、シールされた環境を達成し、光路114が継続して光源モジュール・ハウジング108からサンプル・セル104を通り、検出器モジュール・ハウジング110に入ることを依然として可能にする1つのオプションは、1つ又は複数の送光窓を用いることである。特に、光源モジュール102は、光源モジュール102からの光路114がサンプル・セル104まで続くことを可能にするために第1の送光窓126を備えることができ、検出器モジュール104は、サンプル・セル104からの光路114が検出器モジュール106まで続くことを可能にするために第2の送光窓128を備えることができる。
【0057】
同様に、図3Bを参照すれば、光源及び検出器モジュール302は、光源及び検出器モジュール302からの光路がサンプル・セル404まで延びることを可能にするための第1の送光窓(図示せず)と、サンプル・セル404から光源及び検出器302モジュールに戻る光路を可能にするための第2の送光窓(図示せず)とを備えることができる。任意選択により、光源は、図7に関して以下でさらに説明するようにファイバ式でもよく、この場合、カルミネータ(culminator)(又はカルミネート・レンズ(culminating lens))が、ファイバからの光を問い合わせビームと組み合わせ、問い合わせビームは、送光窓を使用せずにサンプル・セル内に直接進むことができるが、所望の場合、そのような窓が使用されてもよい。たとえば、図3Bに示すように、光源112は、(図7に関して以下でさらに説明する)サンプル・セル204内に直接挿入されてもよいファイバ66から問い合わせ光ビームを伝送することができ、又は問い合わせ光ビームは、第1の送光窓を通って進行してもよい。検出器122は、別個の第2の送光窓上に位置決めすることができ(それによって窓を覆っているため、窓は図3Bには示されない)、この送光窓を通ってサンプル・セル404から戻ってきた光路は、検出器122まで延びる。追加的又は代替的には、送光窓が使用される場合、第1の送光窓及び第2の送光窓は、同じ窓であることができる。
【0058】
別の代替的又は追加的な任意選択の省スペース及び省コスト特徴として、図1B~1C及び2B~2Cに示すようにそれぞれの窓が別個の構成要素である代わりに、第1の送光窓の少なくとも1つは光源の一部であることができ、第2の送光窓は検出器122の一部であることができる。本明細書に説明する分光デバイスのこの任意選択の特徴に関するさらなる詳細が、以下の項で提供される。
【0059】
任意選択の特徴に関する以下の説明及び本開示の他所の他の関連する説明は、それだけに限定されないが、検知ユニット100、200、300、及び400を含む本明細書に説明するような分光デバイスに適用可能である。
【0060】
本明細書に説明する分光デバイスの第1及び/又は第2の窓は、当業者に知られている任意の適切な送光窓を含むことができ、これらの窓は、典型的には、縞パターン及び/又は内部反射を最小限にするように構成される。縞パターン及び/又は内部反射を最小限にする1つのオプションは、窓に反射防止コーティングを使用することである。追加的又は代替的には、くさび型窓と称されてもよい、くさび型の側部を有する送光窓を使用することができる。まとめると、適切な送光窓は、両側が平坦であるか、又は一方の側がくさび形であり、他方の側が平坦である窓の任意の組み合わせであることができ、この場合側部は、必ずしもそうではないが、反射防止コーティングを有することもできる。特定の送光窓の可用性、コスト、及び/又は性能は、窓のタイプ(くさび形か、平坦か、及び/又は反射防止コーティング)を選択する際に考えられる1つ又は複数の要因であることができる。図5A~5Cは、本明細書に説明する分光デバイスの第1及び/又は第2の窓として使用することができる例示的なくさび型窓のさまざまな図を示す。特に、図5Aは、くさび型窓の横向きの斜視図であり、図5Bは、くさび型窓の平坦表面を下にした斜視図であり、図5Cは、平坦表面506に対するくさび型表面504の角度502を示すくさび型窓の側部断面図である。角度502は、くさび型表面504について、1度から45度まで、好ましくは2度から15度までの範囲の任意の適切な角度であることができる。窓が平坦である場合、この角度は0度であると理解される。利用可能な送光窓のコスト、性能、及び仕様(サイズ、厚さなど)などのさまざまな要因を考慮に入れてもよい適切な角度で窓を選択することは、当業者の知識の範囲内である。第1及び/又は第2の窓は、任意の適切な形状を有することができるが、丸形又は円形は通常市販の送光窓の形状であるために好ましいことが、理解される。
【0061】
第1及び/又は第2の送光窓に適切な材料を選択することは、当業者の知識の範囲内であり、これらの材料は、サファイア、フッ化カルシウム(CaF)、シリカ(好ましくはUV溶融型)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化バリウム(BaF)、N-BK7(RoHS適合ホウケイ酸クラウン・ガラス)、セレン化亜鉛(ZnSe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、KRS-5(臭化タリウム)、及びその任意の組み合わせなどの利用可能な材料を含むことができる。同様に、第1及び/又は第2の送光窓について適切なサイズ(表面積及び厚さ)を選択することは、当業者の知識の範囲内であり、この場合表面積は、少なくとも0.5mmから30mmまでの範囲内であることができ、及び/又は厚さは、少なくとも0.01mmから10mmまでの範囲内であることができる。サイズ選択に影響を与え得る要因は、光源(したがって問い合わせビーム)のタイプ、窓材料の伝送係数、ビーム視準、鏡焦点距離、ビームサイズ、及び特にサンプル・ガスを含むときのサンプル・セルの圧力を含む。
【0062】
本明細書に説明する分光デバイスの光源は、励起波長を有する問い合わせ光ビームを生み出すことができる。特に、光源は、スペクトルの所望の範囲にわたって、好ましくは赤外線(IR)領域内に調整されてもよいコヒーレント光源であることができる。好ましくは、光源は、700nmから25000nmの範囲内の波長において吸収特徴について調べるように構成される。当業者が、測定される対象の特定のガス種の相対的なスペクトル特性に少なくとも基づいて、光源に適した1つ又は複数の波長を選択できることが、理解される。たとえば、アンモニアは、少なくとも8500nmから10500nmの範囲内の波長において吸収特徴を有し、メタンは、少なくとも1600nmから1700nmの範囲内、又は3200nmから約3400の範囲内、又は約2300nmの波長において吸収特徴を有し、一酸化炭素は、少なくとも2200nmから2400nmの範囲内、又は4000nmから5000nmの範囲内の波長において吸収特徴を有し、HSは、2000nmから3000nm及び7000nmから9500nmなどの少なくとも近赤外線又は中赤外線領域内の波長において吸収特徴を有し、水蒸気は、少なくとも約1400nm、1850nm、2600nm、2700nm、及び5000nmから7000nmの波長において吸収特徴を有する。
【0063】
コヒーレント光源は、量子カスケード・レーザ、インターバンド・カスケード・レーザ、垂直共振レーザ、及び半導体レーザ、垂直共振インターバンド・カスケード・レーザ、垂直共振量子カスケード・レーザ、及び分布帰還型(DFB)レーザ、発光ダイオードの少なくとも1つを含むことができる。測定される対象の特定のガス種のスペクトル特性に少なくとも基づいて、当業者が光源に適切な1つ又は複数の波長を選択できることが、理解される。
【0064】
図6は、図1B及び2Bに示す光源112を含む、本開示の分光デバイスの光源の1つのオプションを示す。図7は、図3Bに示す光源112を含む、光源の別のオプションを示す。図6の光源がユニット300又は400に使用されてもよく、図7の光源がユニット100又は200に使用されてもよく、それと共に本明細書に説明するような任意の他の適切な光源が使用されてもよいことが、理解される。図6は、例示的なコヒーレント光源、詳細には量子カスケード・レーザ(QCL)を示す。図6に示すように、光源112は、本体602を有することができ、この本体は、1つのオプションにおいて、光源112が問い合わせビームを光路114に沿って伝送することを可能にし、この光路は、1つ又は複数の鏡からバウンドしてサンプル・セルに入るのではなく、サンプル・セル104などのサンプル・セル内に直接延びる。サンプル・セル104が示されているが、図6のサンプル・セルは、サンプル・セル204又は404を含む任意の他の適切なサンプル・セルであることができる。図示するように、サンプル・セル104は、光路114が入ることを可能にする開口部604を有する。開口部604は、光源モジュール・ハウジング及び/又は光源及び検出器モジュール・ハウジング並びにサンプル・セル104内にシールを維持しながら、光路114がサンプル・セル104に入ることを可能にするために、上記で説明したような第1の送光窓を備えることができる。代替的又は追加的には、サンプル・セル104に面する本体602の側部は、第1の送光窓を備えることができ、したがって光源112は、第1の送光窓を備えることができる。装着アセンブリ606により、光源112を光源モジュールの所定の場所に締結することが可能になる。
【0065】
図7は、例示的なファイバ式コヒーレント光源、特に分布帰還型レーザを示す。図7に示すように、光源112は、視準光学系702と、ファイバ・カップリング704と、単一モード(SM)又は多重モード(MM)ファイバ706とを備えることができる。図7の光源112は、光源モジュール又は図3Bに示すような光源及び検出器モジュールに装着することができる。ファイバ706の端部は、サンプル・セル内に延び、光を送出する、ファイバ・コリメータ・デバイスを備えることができる。コリメータ・デバイスとサンプル・セルとの間の界接面は、溶接、ガスケット、又はOリングなどによってシールすることができる。本明細書に説明するような光源が、ファイバ式コヒーレント光源を含む場合、本開示の検知ユニットは、光源の一部ではない伝送窓を備えることができる。図は分光デバイス内の1つの光源の使用を示しているが、特にガス・サンプル中の対象の2つ以上のガス種の濃度を測定するために、本明細書に説明する分光デバイスに2つ以上の光源を装備できることが理解され、この場合、1つの光源は、対象の1つのガス種に特異的なスペクトル領域内で走査するように構成することができ、別の光源は、別のガス種の有効スペクトル領域を走査するように構成される。任意選択により、1つの光源は、2つ以上のガス種の2つ以上のスペクトル領域も同様に走査するように構成することができる。
【0066】
基準ガスは、別個の基準セル内にあるかないかにかかわらず、対象の1つ又は複数のガス種を含むことができ、このガス種は、任意選択により、硫化水素(HS)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)及びアンモニア(NH)の任意の1つ又は任意の組み合わせを含むことができる。基準ガスは、検出される対象の2つ以上のガス種を含むことができる。好ましくは、基準ガスは、ガス・サンプル中の対象のガス種とする一酸化炭素及び/又は水蒸気について検出する際に対象の基準ガス種として一酸化炭素を含有し、これは、一酸化炭素のスペクトル特徴が水蒸気のものと比べて強く、特に4782から4785nmの範囲内の波長辺りであるためである。メタン及び水蒸気が、少なくとも、ガス・サンプル中に検出され測定される対象のガス種の場合、メタンが基準ガス中の対象の基準ガス種として使用されることが好ましく、その理由は、メタンが水蒸気に比べて強いスペクトル特徴、特に3270から3272nmの範囲内の波長辺りを有するためである。硫化水素、メタン、又はアンモニアが、少なくともガス・サンプル中の測定される対象のガス種である場合、対象の種は、8000~8200nmの範囲内のアンモニア又はメタンであってもよい。
【0067】
基準ガス種の吸光度(「基準吸光度」)、基準セルの経路長、及び基準ガス種の濃度の間には、ランベルトベールの法則に基づいて一般的相関付けが存在するため、サンプル・セル内の対象のガス種の吸光度と基準吸光度を比較することによって、ガス・サンプル中の対象のガス種の濃度を算出することができる。したがって、基準セル(検出器の別個のセルとするか、又は検出器若しくは他の構成要素の一部であるかどうかに関係なく)は、基準セルの所与の経路長について知られている濃度の対象の基準ガス種を含む。基準セルについて約2cmの範囲の経路長を想定すると、基準セル内の対象の1つ又は2つ以上のガス種の濃度は、知られている濃度であることができ、これは、任意選択により、少なくとも0.1%から5%であることができる。通常、ガス種のスペクトル特性は、周囲圧力より低い低減された圧力と比較すると周囲圧力では異なって挙動し、特に吸収特徴の線幅は、圧力幅の低減によって狭くなる。サンプル吸収特徴より狭い基準吸収特徴を生成するために、周囲圧力の少なくとも10分の1の合計圧力を有する基準セルと、周囲圧力又は周囲圧力超のサンプル・セルとを有することが望ましい。基準ガス中の対象のガス種の濃度は、典型的には、100万分の100からパーセントレベルの範囲内である。正確な濃度は、基準セル信号の吸収が、ISO限界値においてサンプル・セルの吸収の約10~100倍であることが目標とされる。この量未満の濃度は、結果として基準セルからのよりノイズの多い較正を生じさせることがあり、一方でISO限界値の100倍以上の濃度は、結果としてサンプル吸収信号上に追加的なノイズを生じさせることがある。基準セルは、大気圧以下の圧力を有することができ、これは、任意選択により、0.01から100Torr、又は約1.3Pascalから約13kiloPascalの範囲内であることができる。基準ガス中の対象のガス種の圧力、又は部分的圧力は、約0.01から約0.5大気圧(又は約1.01kPascalから50.66kPascal)、約0.03から約0.3大気圧(又は約3.04kPascalから約30.4kPascal)、又は約0.05から0.15大気圧(又は約5.07kPascalから約15.2kPascal)の範囲内であってもよく、又は約0.1大気圧(又は約10.13kPascal)以下であってもよい。
【0068】
任意選択により、基準ガスは、所望の量の対象の基準ガス種を含有し、残りの部分は、対象のガス種の所望の圧力及び濃度を達成するために、窒素又はアルゴンなどの1つ又は複数のスペクトル的に不活性なガス種を含む。スペクトル的に不活性なガス種は、問い合わせ光ビームを最小限吸収するものであり、したがって、強い吸収特徴、たとえば少なくとも対象のスペクトル領域内でサンプル・セル内の対象の吸収の100倍未満のピーク吸収を有するものを生成しない。
【0069】
本明細書に説明する分光デバイスの検出器は、検出器に到達する光の量に応答し、その量に比例する電圧又は電流信号を生成する。吸収信号は、サンプル及び基準セル内の吸収無しに検出器上に入射する光によって正規化することによって算出され、吸収信号は、サンプル・セル及び基準セルを通過した後に検出器に到達する問い合わせ光ビームの量に比例する。正規化は、直接吸収分光法(DAS)に対して対象の有意の吸収特徴が存在しない領域内で光の量を特定することによって、又は波長変調分光法(WMS)の第一次高調波によって正規化することによって行うことができる。図8A~8Cは、検出器122などの本明細書に説明する分光デバイス内で使用され得る検出器のさまざまな例示的な特徴を示す。特に、図7A~7Cは、サンプル・セル104から開口部804を通って検出器122に入る光路114を示す。サンプル・セル104が示されているが、図8Aのサンプル・セルは、サンプル・セル204、404を含む任意の他の適切なサンプル・セルであることができる。開口部804は、検出器モジュール・ハウジング及び/又は光源及び検出器モジュール・ハウジング、並びにサンプル・セル104内にシールを維持しながら、光路114が検出器122に入ることを可能にするために、上記で説明した第2の送光窓を備えることができる。追加的又は代替的には、図8A~8Cを参照すれば、検出器122は、検出器キャップ808を備えることができ、検出器キャップは、第2の送光窓120を備えることができ、したがって検出器122は、第2の送光窓120を備えることができる。本明細書に提供する窓120を含む送光窓に関する説明は、これが検出器122の別個のものであっても一部であっても適用可能であり、繰り返されない。追加的又は代替的には、図8Cを参照すれば、検出器キャップ808は、気密にシールされ、所望の圧力まで基準ガスで埋め戻され、それによって基準セル124が検出器122の一部であることを可能にし、別個の基準セルの必要性を排除し、それによってスペース、コスト、位置合わせ問題、及び光縞が低減される。基準セルが図1C及び2Cに示すように別個のユニットであるとき、問い合わせ光ビームは、2つの伝送光学系(すなわち、基準セル上の2つの窓)を横断し、この場合、伝送光学系の結果、光路に沿った逆反射、又はエタロン、又は光干渉縞が生じる。これらの縞は、さまざまな伝送光学系の互いの間及び光源との間のスペースに応じて、位相、周波数、及び振幅において変動する。光縞は、サンプル及び基準信号の対象の吸収信号に類似する幅及び大きさのものである可能性があるため、光縞を対象の吸収特徴から差別化することは難しくなり得る。基準セルが検出器の一部であるとき、ビーム横断は、これら2つの伝送光学系要素を横断せず、それによって、光が伝送光学系を通過するときに必ず光縞が形成されるため、潜在的に性能を向上させることができる。本明細書に提供する、セル124を含む基準セルに関する説明は、これが検出器122の別個のものであっても一部であっても適用可能であり、繰り返されない。
【0070】
図8Cに示すように、検出器122は、検知構成要素810を備えることができ、この検知構成要素は、光路114に沿って進行する問い合わせ光ビームを実際に受信し、それにしたがって吸収信号を生成する。任意選択により、検出器122は、熱電冷却器812をさらに備えることができ、熱電冷却器は、検出器122の温度を特定の所望の範囲内に維持するように制御可能である。検出器122は、ファイバ806をさらに備えることができ、ファイバは、検知構成要素810によって生成された吸収信号を、本明細書に説明するようなさらなる分析又は処理のために別の構成要素に伝送する。図8Aを参照すれば、検出器122は、任意選択により、ファイバ26及び他の内部構成要素を保護するのを助けることができるフランジ要素802をさらに備えることができる。任意選択により、図1C、2C、3Cに示すように、検出器を前置増幅器回路134に結合することができ、前置増幅器回路は、信号対ノイズ比を強化するために検出器出力を増幅するように構成される。たとえば、前置増幅器回路134は、検出器122からの信号を1000倍増大させることができる。
【0071】
分光デバイスは、(i)デバイスに電力を供給するために、(ii)分光データを収集、分析、解釈するために、及び/又は(iii)デバイスの電子構成要素を制御するために電気制御ユニット(ECU)をさらに備えることができる。ECUは、検知ユニットとは別個に位置してもよく、この場合ECUは、ECU及び検知ユニット上の電気ポートを介して検知ユニットに電子的に接続することができる。たとえば、本開示の分光デバイスは、分光デバイスの機能を制御し、分光デバイスに電力を提供することができる、図9A~9Cに示すECU900などのECUと分光デバイスを接続するために、図1A、2A、3A、4Aに示すコネクタ144及び146などの電気コネクタをさらに備えることができる。図9A~9Cは、この分光デバイスのECUのための1つのオプションを示す。図9Aは、上部無しのECU900の上面図であり、ECU900が、データ取得要素901と、光源ドライバ902と、光源温度コントローラ903と、検出器温度コントローラ904と、シングル・ボード・コンピュータ又は類似の処理能力を有する他の計算要素であることができるプロセッサ/コンピュータ905と、ACDC電源906と、ECUハウジング907と、さまざまなサイズのバルク・ヘッド・コネクタ908、909、及び910と、AC入口電力スイッチ911とを備えることができることを示す。図9Bは、ECU900の前部パネルを見た側面図であり、さまざまなサイズのバルク・ヘッド・コネクタ908、909、910と、スイッチ912と、プロセッサ/コンピュータ905のさまざまなポートにアクセスするための切欠部914とを示しており、さまざまなポートは、ECU900にさまざまなデバイス(本明細書に説明するような検知ユニット、マウス、キーボード、モニタ、マイクロホン、スピーカなど)を接続するために使用することができ、USBポートなどのI/O(入力/出力)ポートを含んで、必要又は所望に応じてさまざまなポートを含む。図9Cは、ECU900のバック・パネルを見た側面図であり、AC入口電力スイッチ911を示す。ECU800は、バルク・ヘッド・コネクタ908、909、及び910並びに電気コネクタ144、146、及び/又は148を介してユニット100、200、300、400などの分光デバイスに電気的に接続することができる。電気構成要素がサンプル・セルの両側に配設される検知ユニット100又は200の1つのオプションとして、分光デバイスは、信号内のノイズを低減することを助けることができる3つの電気コネクタ144、146、及び148を有し、この場合、ECU900のバルク・ヘッド・コネクタ908は、電気コネクタ144に電気的に接続することができ、バルク・ヘッド・コネクタ909及び910は、電気コネクタ146及び148に電気的に接続することができる。任意選択により、電気構成要素がサンプル・セルの一方の側に位置する検知ユニット300、400の場合、分光デバイスは、2つの電気コネクタ144及び146を有することができる。
【0072】
図9Dは、ECU900の電子構成要素がどのようにして互いに通信するかの1つのオプションを示す。図示するように、DAQ要素901は、プロセッサ/コンピュータ905と少なくとも検出器及び光源からのさまざまな信号との間のインターフェースとして作用するハードウェアである。DAQ要素901は、プロセッサ/コンピュータ905が解釈できるように、入ってきたアナログ吸収信号をデジタル化するように構成することができる。DAQ要素901は、測定要素及びプロセスを自動化するための機能を有して構成することができる。DAQ要素901は、光源と、当業者に知られているデバイス・ドライバ又はハードウェア・ドライバである光源ドライバ902を通信させることができる。光源ドライバ902は、矢印915として示すように、光源の(電流などのような)作動データをデータ取得要素901に送信し、データ取得要素は、さらに、そのような情報に基づいて、特定の制御コマンドを光源ドライバ902に伝えて(矢印916として示す)実行させる。DAQ要素901はまた、オン/オフ信号を送信して(矢印917として示す)、必要に応じて光源を起動/停止させることができる。光源温度コントローラ903は、光源の温度データをデータ取得要素901に送信する(矢印918)ことができ、データ取得要素は、さらに、矢印919として示すようにコマンドを送信して、提供された情報に基づいて所望に応じて光源の温度を調節することができる。図3Dに示すように、検知デバイスは、前置増幅器134を採用し、前置増幅器134は、検出器からの吸収信号を増幅する。前置増幅器134は、矢印919として示すように、この吸収信号をデジタル信号への変換のためにデータ取得要素901に伝え、このデジタル信号は、さらなる分析のためにプロセッサ/コンピュータ905に送信される(矢印921)。DAQ要素901は、これがプロセッサ/コンピュータ905と接続することを可能にするためにコンピュータバス(図示せず)を備えることができる。コンピュータバスは、命令及び測定されたデータを渡すために、DAQ要素901とプロセッサ/コンピュータ905との間の通信インターフェースとして働く。一般的に知られているコンピュータバスは、USB、PCI、PCIエキスプレス、及びイーサネット(登録商標)などの有線通信、又は無線通信用のWi-Fi及びブルートゥース(登録商標)などの無線通信を含む。
【0073】
プロセッサ/コンピュータ905は、吸収信号921から、基準セルから来る基準吸収信号及びサンプル・セルから来るサンプル吸収信号を分離し、基準吸収信号及びサンプル吸収信号を使用してサンプル・セル内の対象の1つ又は2つ以上のガス種の較正情報及び濃度情報を生成するように構成することができる。基準吸収信号は、直接吸収分光(DAS)信号であることができ、サンプル吸収信号は、波長変調分光(WMS)信号であることができる。波長変調分光(WMS)信号は、サンプル吸収信号の第二次又はさらに高次の高調波を含むことができる。
【0074】
プロセッサ/コンピュータ905には、分光デバイスの自立動作を可能にする産業用制御ソフトウェアをインストールすることができる。オーディオ/ビジュアル・アラーム、アラーム・リセット、アラーム・テスト、ガス濃度のリアル・タイム表示、及びシステム診断(該当する場合、光源電力、検出器較正、バッテリレベル/電力消費、無線周波数(RF)信号、及び/又はデバイスの性能に影響を与える他の条件など)の任意の1つなどの他の産業用制御構成を含むこともできる。任意選択により、分光デバイスが、水素燃料補給ステーションにおいてFCEVに定量供給される水素を含む、貯蔵タンク内に貯蔵されるか、又は貯蔵タンクから提供される水素の純度を監視するために使用される場合、ステーションに統合された外部パネルを介してデバイス制御を実行することができ、この場合、システム診断は、ステーションにおいて局所的に、及び/又は異常ガスレベルに関する最新データを有する自動化されたEメール/テキスト・アラート、及び/又は専用のウエブページを介して、制御ステーションにおいて中央で行うことができる。
【0075】
したがってこれまで本明細書に説明したように、本開示は、分光デバイスを提供し、分光デバイスは、商業的規模で製造することができ、さまざまなガス検知用途のためのさまざまな場所に発送することができ、水素燃料補給ステーションなどの水素が貯蔵される及び/又は配設される場所における使用のためなどのさまざまな環境において採用して、特定の量を超えて存在する場合に燃料セルに有害となり得る1つ又は複数の望ましくないトレースガス種を検出することができる。デバイスは、対象の1つ又は複数の特定のガス種について調べるように構成されることを含んで、サイズ、用途、特徴などのさまざまなニーズを満たすためにさまざまな選択肢で提供することができ、この場合、デバイスは、そのガス種に合わせて構成された特定の光源、対象のガス種と同じである基準ガス種で事前充填された基準セル、並びに/又は対象のガス種に適切な経路長及び/又は検知環境に適した他の仕様(温度及び/又は圧力許容など)を有して構成されたサンプル・セルを有してもよい。
【0076】
水素定量供給用途に関して、国際標準化機構(ISO)によって設定されるものなどの標準が存在し、この標準は、水素燃料補給ステーションにおいて、特にFCEVに定量供給される水素ガス中に存在し得る特定のガス種の最大量を規定している。たとえば、ISO標準14687-2:2012は、高分子電界質膜(PEM)燃料セルを装備した車両に供給される水素についての汚染物質の許容レベルを設定している。本明細書に説明する分光デバイスの仕様は、そのような標準の準拠を確実にすることができる。たとえば、水素燃料補給ステーションは、本明細書に説明するような1つの分光デバイスを採用して、ISOによって規定されたものなどの対象のガス種すべてについて調べることができる。代替的又は追加的には、水素燃料補給ステーションは、本明細書に説明するような複数の分光デバイスを使用することができ、この場合そのそれぞれは、対象のガス種のサブセットについて調べるように構成される。代替的又は追加的には、水素燃料補給ステーションは、本明細書において説明するような複数の分光デバイスを使用することができ、この場合、そのそれぞれは、対象の1つのガス種について調べるように構成される。上記で留意したように、ユニット100若しくは400などの単一パス又は二重パスのサンプル・セルを備える分光デバイスは、対象の1つのガス種を検知するのに特に適しており、その一方でユニット200、300などの多重パス・サンプル・セルを備えるデバイスは、対象の複数のガス種を検知するのに特に適しているが、対象の1つの種を検知するのにも適している。
【0077】
図10は、(図9に示すような)検知ユニット100、200、300、及び/又は400を備える本明細書に説明するデバイスなどの、本明細書に説明するような分光デバイスを水素燃料補給ステーションと関連付けて採用して、定量供給されている水素の純度を監視する1つのオプションを示す。便宜上、ユニット100が参照されるが、ユニット200、300、又は400を含む、説明する他のユニットが図10において適切に採用されてもよく、ユニット100に関する説明は、適宜、ユニット200、300、又は400などの他のユニットにも当てはまることが、理解される。図示するように、システム1000は、検知ユニット100に電気的に結合されたバックアップ・バッテリ1002と、検知ユニット100に流体的に結合された水素貯蔵タンク1004と、ソレノイド弁1006と、水素貯蔵タンク1004と検知ユニット100との間に配設された圧力/流れコントローラ1008とを備える。図示するように、バックアップ・バッテリ1002は、(図10に示すような)ユニット100、200、300、又は400などの、本明細書に説明するような分光デバイスを初期化するために電力を供給するように構成される。検知ユニット100がオンにされた後、燃料セル1010は、検知ユニット100に給電し、バックアップ・バッテリ1002を充電する。起動された後、検知ユニット100は、ソレノイド弁1006をオンにし、貯蔵タンク1004から検知ユニット100までのガスの流れを圧力/流れコントローラ1008によって制御することができる。水素ガスは、好ましくは、サンプル・ガス入力ポート130を介して検知ユニット100のサンプル・セルに入り、サンプル・ガス出力ポート132を介してサンプル・セルを出る。動作において、ユニット100の光源は、問い合わせ光ビームをサンプル・セル及び基準セルを通して検出器内に送信する。ECU内のプロセッサ/コンピュータは、吸収信号を分析して、水素ガスが濃度限界値を超える量の対象の1つ又は複数のガス種を含有するかどうかを決定する。水素ガスが濃度限界値を超える量の対象の1つ又は複数のガス種を含有しないと決定された場合、線1012を介して燃料セル1010に前進することができる。水素ガスが濃度限界値を超える量の対象の1つ又は複数のガス種を含有すると決定された場合、水素ガスは、線1016を介して燃料セル1010に入る前に不純物スクラバ1014に前進することができる。
【0078】
追加的又は代替的には、図11は、水素定量供給ステーション内で本明細書に説明するような分光デバイスを採用して、定量供給されている水素の純度を監視する1つのオプションを示す。特に、水素貯蔵タンク1004からFCV1010までの水素供給物からのスリップ・ストリームが、図10に示すようにFCV1010に到達する前に、分光デバイス100を流れ抜ける水素供給物の代わりに対象の特定の種が所定の濃度を上回っているかを検出するために、図11に示すユニット100、又はユニット200、300、若しくは400などの本明細書に説明する分光デバイスに転向されてもよい。
【0079】
以下の項は、分光デバイスを較正し、そのような較正後のガス・サンプルの濃度を測定するプロセスに関する追加の詳細を提供する。本明細書に説明するプロセスは、ガス・サンプル中の対象のガス種と同じ基準ガス種を使用すること、並びに吸収信号を分析するのに直接吸収分光法及び波長変調分光法の組み合わせを使用することを可能にする。図12Aは、本明細書に説明する分光デバイスが起動される(電源入力される)ときのプロセス・フロー1200を示し、ここでは、当業者に知られている問い合わせ光ビームを方向付ける及び/又は強化するために使用することができる任意選択の鏡及びレンズは、簡単にするために省略されている。動作において、光源112は、問い合わせ光ビームを光路114に沿ってサンプル・セル104に向けて送信する。プロセス・フロー内のサンプル・セルは、サンプル・セル204又は404を含む、単一パス、二重パス、又は多重パスなどの本明細書に説明するような他のタイプのサンプル・セルであることができることが、理解される。サンプル・セル104は、調べられる対象のガス種、好ましくは硫化水素(HS)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)及びアンモニア(NH)の少なくとも1つを有しても有さなくてもよいガス・サンプルを含む。サンプル・セル104は、離散的なサンプルであってもよく、この場合、ガスは、特定の圧力(0.01~1大気圧)まで真空化されたセル内に流れ、次いで弁が閉じ、サンプルはシステムによって調べられる。代替的に、サンプル・セル104は、連続的な流れであってもよく、この場合、ガス・サンプルは、好ましくは少なくとも図1A、2A、3A、及び4Aに示すようなサンプル・ガス入力ポート130及びサンプル・ガス出力ポート132を介して、サンプル・セル104を連続的に流れ抜ける。
【0080】
サンプル・ガス入力ポートは、任意選択により、サンプル・ガス源とサンプル・セルの動作圧力との間の圧力変化、たとえば700bargから1000bargの範囲の圧力から、周囲圧力(約1bar)の最低で30%下から周囲圧力の30%超まで、たとえば少なくとも3bargの範囲の動作圧力までの圧力変化に対応するように構成することができる。サンプル・ガス入力ポート及びサンプル・ガス出力ポートは、互いに0度から約180度の範囲内の角度で位置決めすることができる。サンプル・ガス入力ポート130及びサンプル・ガス出力ポート132は、好ましくは、所望の流量、たとえば当業者によっていつもの手段を通して決定されてもよい特定のサンプル・セルのサイズに最適な流量を達成するように互いに対して配置される。たとえば、任意選択により、サンプル・ガス入力ポート130及びサンプル・ガス出力ポート132は、互いに約180度で位置決めすることができ、又はこれらは、図5に示すように互いに約0度、若しくはその間の任意の角度で位置決めされてもよい。サンプル・セル104を通過した後、問い合わせ光ビームは、光路114上を続行して基準セル120を通って検出器122に入る。基準セル120は、図1C及び2Cに示すように別個の基準セルであることができ、又はこれは、図3B及び8A~8Cに示すように検出器122の一部であることができる。基準セル120は、サンプル・セル104に提供されるガス・サンプル中の調べられる対象のガス種の1つと同じ基準ガス種を含み、好ましくはこの場合、対象の種は、任意選択により、少なくとも一酸化炭素又はメタンを含む。基準セル120の圧力は、大気圧を下回る。基準セルは、大気圧を下回る圧力、任意選択により、0.01から100Torr、又は約1.3Pascalから約13kiloPascalの範囲内であることができる圧力を有することができる。基準ガス中の対象のガス種の圧力、又は部分的圧力は、約0.01から約0.5大気圧(又は約1.01kPascalから50.66kPascal)、約0.03から約0.3大気圧(又は約3.04kPascalから約30.4kPascal)、又は約0.05から0.15大気圧(又は約5.07kPascalから約15.2kPascal)の範囲内であることができ、又は約0.1大気圧(又は約10.13kPascal)以下であってもよい。図12は、光路114内で基準セル120の前に位置決めされたサンプル・セル104を示すが、この順路を変えることもでき、この場合、基準セル120は光路114内でサンプル・セル104の前に位置決めされることが、理解される。
【0081】
検出器122は、サンプル・セル104及び基準セル120を通過した後に検出器に到達する問い合わせ光ビームの量に比例する吸収信号を生成し、これは、直接吸収分光(DAS)信号である。検出器122は、(DAQ要素及び上記で説明したようなプロセッサ/コンピュータ905などを介して)処理し、対応するデータ出力を生成するために、このDAS信号を矢印920に示すようにECU900に送信する。ECU900に送信されたDAS信号920は、(i)基準DAS信号と称されてもよい、基準セル120からのDAS信号と、(ii)サンプルDAS信号と称されてもよい、サンプル・セル104からのDAS信号とを含む。ECU900内のプロセッサ/コンピュータは、吸収信号920から基準DAS信号及びサンプルDAS信号を分離し、該当する場合、DAS信号920に基づいて較正及び濃度情報を生成するように構成することができる。基準DAS信号は、部分的には基準セル120の圧力が大気圧より低いことによってサンプルDAS信号から分離されてもよく、それによって、周囲条件におけるセル又はサンプル・セル104内のものなどの周囲条件より高いものから来る信号内の吸収特徴より狭い吸収特徴を含む基準DAS信号が、生み出される。図13は、直接吸収スペクトル(DAS)に基づいて較正情報を生成する1つのオプションを示す。より狭い基準DAS信号1302をより広いサンプルDAS信号1304と組み合わせて、較正されたDAS信号1306を生成することができ、この場合、より狭い基準DAS信号1302によって画定されるスペクトル部分は、デルタ・シンボルによって示されるより広いサンプルDAS信号1304から差し引かれ、基準信号は、後でサンプル吸収信号、したがって濃度の参照として働くことができる、知られている吸収信号に関連している。
【0082】
任意選択により、多重調和波長変調分光法(WMS)を使用して較正データを生成することができる。WMSは、吸収スペクトルの導関数として考えることができ、その結果、直接吸収スペクトルの導関数様の形状が生じ、この場合、吸収プロファイルの第二次導関数は、第二次高調波信号(スペクトル)となる。プロセッサ/コンピュータは、(高次導関数様の)より高い高調波信号を基準WMS信号にフィットするように構成することができ、それによって基準WMS信号を生成する。検出器122からの第二次高調波WMS吸収信号は、組み合わせられた基準及びサンプル吸収スペクトルの第二次導関数様の形状の仮定である。対照的に、四次、六次、又は八次高調波などのより高次の高調波(導関数)を検討する際、サンプル信号が広くゆっくりと変化した結果、狭くシャープな基準信号が優勢でありながら平坦なベース線が生じる。ランベルトベールの法則及び波長変調分光法の分光原理によって、基準信号から導出されたより高次の高調波信号をより低次の高調波サンプル優勢信号に関連付けることにより、サンプル信号を較正することができる。
【0083】
図12を参照すれば、前置増幅器回路134は、任意選択であり、好ましくは、多重高調波波長変調分光法(WMS)と併用して採用される。通常、WMSは、高周波数(たとえば10~100kHx)の正弦波振動を吸収特徴にわたってより低い周波数(たとえば、およそ0.1~1kHz)の光源電流ランプ上に重ねる。高周波数変調は、検出器122によって生成された直接吸収分光(DAS)信号内に増幅変調を誘発する。前置増幅器回路134は、検出器122からのDAS信号を、変調周波数Nfの異なる高調波において基準DAS信号からの正弦波信号と掛け合わせる。検出帯域をより高い周波数にシフトさせることにより、1/fレーザの過剰ノイズが解消され、通常、直接吸収分光法より高い感度(約10~100倍)が、達成される。また、Nfスペクトルは吸収信号のN次導関数に定性的に類似しているため、近くの吸収体の徐々に傾く末端部が排除されるという点で、名目上「ゼロベースライン」技術である。
【0084】
WMSを使用して較正データを生成する別のオプションは、ランベルトベール吸収線と一致する、知られている線形方程式を使用して基準DAS信号及びサンプルDAS信号の両方をフィットさせるようにECUのプロセッサ/コンピュータを構成することを含むことができる。サンプル・スペクトルは、狭い基準信号が存在する以外のすべての領域に適合される。サンプル及び基準セルの合計圧力に応じて、各信号に対してフォークト(Voigt)、ローレンツ(Lorentzian)、ガウシアン(Gaussian)の線形方程式を使用することができる。ガウシアン線形は、主に非常に低い圧力(<10Torr)に使用され、一方でフォークト線形は、より高い圧力(ガウシアン及びローレンツの線形の組み合わせ)に使用される。
【0085】
調べられる対象のガス種の濃度に信号振幅を比例的に相関付けることができるため、サンプル及び基準セルの線形をスペクトル的に分離することにより、知られている基準セル吸収をサンプル・セルに関連付ける能力がもたらされる。これは、上記で説明したような直接吸収分光法(DAS)又は多重高調波波長変調分光法(WMS)を使用して行うことができる。WMSは、感度がより高く、その調整においてより狭いスペクトル範囲を必要とする。DASは、感度がより低く、より広いスペクトル調整を必要とするが、吸収特徴を走査している間レーザの追加の高速の変調(>10kHz)は必要としないため、実施するのが容易である。
【0086】
したがって、ガス・サンプル中の対象の1つ又は複数のガス種を検出するための分光法もまた、本明細書において提供される。方法は、問い合わせ光ビームをコヒーレント光源から、検出される対象の1つ又は複数のガス種を含むサンプル・セルを通るように伝送することを含む。問い合わせ光ビームはまた、大気圧を下回る圧力で基準ガスを通過し、この場合、基準ガスは、サンプル・セル内の検出される対象の1つ又は複数のガス種の少なくとも1つを含む。特定の実施例では、基準ガスは、対象の単一の種を含む。特定の実施例では、基準ガスは、インライン基準セル内に存在する。方法はまた、基準ガス及びサンプル・セルを通過した後に光ビームの強度を検出すること、次いで、検出された光強度に基づいて、直接吸収分光(DAS)信号及び波長変調分光(WMS)信号の両方を生成することを含む。較正情報は、直接吸収分光(DAS)信号を、波長変調分光(WMS)信号に対する一定の基準信号として設定することによって生成されてもよい。分光法はまた、波長変調分光(WMS)信号に基づいて、サンプル・セル内の対象の1つ又は2つ以上のガス種の濃度を決定することを含んでもよい。特定の実施例では、波長変調分光(WMS)信号は、検出された光強度の、強度の第二次又はさらに高次の高調波を含む。
【0087】
本開示の分光デバイスは、ガス・サンプル中の対象の1つ又は2つ以上のガス種の濃度を測定することができ、この場合、分光デバイスは、さまざまな図に示すような1つの光源112を備えてもよい。対象の2つ以上のガス種が検知されており、分光デバイスが1つの光源を有するとき、光源は、対象の特定のガス種の分子吸収断面に関連する個々の波長においてスペクトル特徴について連続的に調べるように構成することができる。好ましくは、対象のガス種は、5~20nm内などの、互いに近い波長において吸収スペクトル特徴を示す。たとえば、メタン及び水蒸気について検知されるか、又は調べられ、ここで水蒸気がメタンのものより高い波長において吸収スペクトル特徴を有するガス・サンプルにおいて、光源は、最初に水、次いでメタンのスペクトル特徴について調べるか、又はその逆の形で調べるように構成されてもよい。
【0088】
代替的には、図14を参照すれば、本明細書において説明するような分光デバイスは、第2の光源1412をさらに備えることができ、第2の光源は、本明細書に説明するような光源112に類似するが、第1の光源112が対象の第1のガス種の分子吸収断面に関連する1つの波長においてスペクトル特徴について調べるように構成され、第2の光源1412が対象の第2のガス種の分子吸収断面に関連する別の波長においてスペクトル特徴について調べるように構成されることを除く。光源112及び光源1412は、本明細書に説明するように光路114を辿り処理されるそれぞれの問い合わせビームを連続的に代わる代わる伝送する。第2の光源が存在する場合、そのような分光デバイスのECUが、該当する場合に第2の光源の動作及び制御を可能にするために第2の温度コントローラ及び他の接続を含むこともできることが、理解される。
【0089】
アンモニア(NH)が検出されている場合、吸収特徴が調べられる波長は、8211nmであることができ、持続時間は、少なくとも50秒であることができる。水蒸気(HO)が検出されている場合、吸収特徴が調べられる波長は、8207nmであることができ、持続時間は、1~10秒の範囲内であることができる。メタン(CH)が検出されている場合、吸収特徴が調べられる波長は、8206nmであることができ、持続時間は、1~10秒の範囲内であることができる。硫化水素(HS)が検出されている場合、吸収特徴が調べられる波長は、8202nmであることができ、持続時間は、少なくとも50秒であることができる。
【0090】
図15は、本明細書に説明するような分光デバイスの実施例の図を示す。検知ユニット1500が、さまざまな構成要素の内部配置を示すために切断部を有して示される。図3A~3C及び4A~4Cを含む、他の図の特定の構成要素は、図15のものと同じであることができるため、これらは、他の適用可能な図からを含んで、同じ番号参照及びこの参照に関連する説明を有し、したがってそのような説明は繰り返される必要はない。図15で分かり得るように、鏡442は、フランジ・モジュール306などのフランジ・モジュールの使用を伴わないやり方でサンプル・セルに結合することができる。光源及び検出器モジュール・ハウジング308のすべての説明は、光源及び検出器モジュール・ハウジング1508に適用可能である。加えて、ハウジング1508は、たとえば、検知ユニット1500をECU900に接続することを可能にするために気密にシールされたコネクタ1512及び1514をさらに備える。検知ユニット1500は、固有の熱電冷却で独立的に安定化されたレーザ1520と、固有の熱電冷却で独立的に安定化された検出器1522と、二次熱電冷却1524と、レーザ1520及び検出器1522からの熱の除去を助けるように構成された、二次熱電冷却1524に接続されたヒート・ストラップ1526と、1つ又は複数の基準ガスを含む検出器キャップ1530と、内部に溶接されたサファイア窓1540とをさらに備える。検知ユニット1500は、任意選択により、アルゴンによって埋め戻される。任意選択により、(二次熱電冷却1524、ヒート・ストラップ1526、検出器キャップ1530、及びサファイア窓1540を含む)すべての部分は、ベイク・アウトされ、不活性雰囲気下で組み立てられる。実施例のいずれにおいても、0.1ppm未満の水分、好ましくは0.01ppm未満の水分が、任意選択により、システム内に存在することができる。本明細書に説明する検知ユニットの実施例は、任意選択により、-40℃から50℃の範囲の温度で作動するように構成される。特定の実施例では、分光計が、気密性/耐水性シールによって電子装置ハウジングに差し込まれる。特定の実施例では、検知ユニットは、二次熱電冷却器1524無しで15W以下、好ましくは12W以下、より好ましくは10W以下の電力、また、4つの冷却器すべてが作動している厳しい条件において60W以下、好ましくは50W以下の電力を利用する。
【0091】
次に図16A~16Cを参照すれば、検知ユニットの別の実施例が提供され、ここでは、多重パス・サンプル・セル(他所で説明するサンプル・セル204など)又は他のサンプル・セル(サンプル・セル104及び404など)が、減衰全反射セル(ATR)と置き換えられる。図16Aでは、検知ユニット1600は、光源112を含む。検知ユニット1600は検知ユニット100、200、300、400、及び1500と同様のやり方で説明されていない場合があるが、図3A~3C、4A~4C及び15を含む他の図の特定の構成要素は図16A~16Cのものと同じであることができるため、これらは、他の適用可能な図からを含めて、同じ番号参照及びこの参照に関連する説明を有し、したがって、そのような説明は繰り返される必要はない。同様に、構成要素の動作及び配置などの、当業者によって理解されるような他の検知ユニットの動作に関する他の関連する説明は、検知ユニット1600にも同様に適用可能であり、繰り返される必要はない。たとえば、光源112及び検出器122は、少なくとも図示するように、また少なくとも図1A~2Cに示す配置と同様に、ATRセル1602の両側に配置されてもよい。任意選択により、図示していないが、光源112及び検出器122は、少なくとも図3A~4Cに説明し、示すように鏡を用いてATRセル1602の同じ側になるように配置されてもよい。光源112は、それだけに限定されないが、調整可能なレーザ(たとえば量子・カスケード・レーザ(QCL)又はインターバンド・カスケード・レーザ(ICL)など)又は広帯域光源(たとえばLED、黒体など)を含んでもよい。
【0092】
液体又は固体サンプル1604が、ATRセル1602上に置かれる。ATRセル組成は、それだけに限定されないが、ダイヤモンド、ZnSe、ZnS、シリコン、ゲルマニウム、又はKRS-5結晶を含んでもよい。
【0093】
サンプルが置かれた後、光源112は、次いで、サンプル1604と接触する内面1603から少なくとも1回反射するように減衰全反射(ATR)セル1602内に光を向けてもよい。反射の回数は、入射角度を変更することによって変えてもよい。ビームは、次いで、ATRセルを出た後に検出器122によって収集される。
【0094】
図16A~16Cで分かるように、システムのATR検出後の部分は、さまざまなオプションを含むことができる。たとえば、図16Aに示す実施例は、光が単にATRセルから検出器122(たとえばIR検出器)に直接進む場合を示す。図16Bに示す別の実施例は、光がATRセルから、フィルタ1606(たとえば、フィルタ・ホイール又はmemsフィルタ)を通り、その後検出器122内に進む場合を示す。図16Bはさらに、別の実施例を示しており、この場合、光はATRセルからビーム・スプリッタ1608まで進み、ここで光の一部はビーム・スプリッタ1608を通過し、第1のフィルタ1606を通り抜けて検出器に入り、一方で別の部分は反射され、異なるフィルタ1607を通り抜けて追加の検出器に入る。図16Cに示す別の実施例は、光がATRセルから、回析光学系1609を通り抜け、たとえば線形IR検出器アレイなどの検出器122まで進む場合を示す。
【0095】
レーザ源112として調整可能なレーザを使用することにより、システム1600は、直接吸収分光法(DAS)及び波長変調分光法(WMS)の両方を実行することができる。
【0096】
次に図19A~19Cを参照すれば、特定の実施例では、レーザ源112は、レーザ空洞1902を画定する本体1901を有する。特定の実施例では、追加の基準セル1920が、レーザ空洞1902内に組み込まれてもよい。レーザ1905はレーザ1908を出力し、このレーザは、角度付けされたビーム・タップ1910を通過する。レーザ出力1908の一部1911は、これまで説明したように提供される。しかし、部分1912は、反射されてガス基準セル1920を通って戻り、検出器1930上に至る。レーザ源はまた、光学マイクロ・ベンチ1940を含んでもよく、光学マイクロ・ベンチは、たとえば電気ルーティングと、熱電冷却器とを含んでもよい。
【0097】
これらの実施例は、システム全体を較正するための代替の手法を提供し、レーザ及び検出器の性能についての情報は、レーザ源内の基準ガス及び検出器ヘッド内の基準ガスによって検証することができる。レーザ源内の別の検出器1930及び基準ガス1920は、対象のガスの経路内に存在しておらず、また、濃度が知られており、信号変化がシステム障害によるものか、又は検出器ヘッド内の対象のガスの存在によるものかの検証を可能にするため、検出された値を定量化することを助けるために使用されてもよい。図19Bに示すように、レーザ源112は、任意選択により、気密にシールされたバタフライ・パッケージ1903として提供されてもよい。
【0098】
本明細書に説明するデバイス、システム、及び方法のより良好な理解を容易にするために、以下の実例が与えられる。以下の実例を、本明細書に説明するデバイス、システム、及び方法の範囲を限定する、又は定義するように読み取ってはならない。
【0099】
「実例1」
一酸化炭素を基準ガス種として使用して、水素ガス・サンプル中の対象のガス種として一酸化炭素(CO)を検出する
【0100】
実例1は、図の光源112などのコヒーレント光源として量子カスケード・レーザ(QCL)及び図の検出器122などのHgCdTe(テルル化カドミウム水銀又はMCT)検出器を使用して、一酸化炭素周囲条件を検出するための例証的な分光デバイス及び方法を提供する。HITRANスペクトル・データベースからの情報を使用することにより、約4600nmのスペクトル領域内で約20cmの比較的短い経路長を有するサンプル・セルを使用して、周囲圧力及び温度下で一酸化炭素を理論的に検出できることが決定された。特に、図17は、窒素中の100万分の0.2体積(ppmv)の一酸化炭素について、周囲条件(298K、1大気圧)、20cm光路長に関するHITRANスペクトル・データベースからの算出されたスペクトルを用いて、分光検出領域の少なくとも一部分を示す。この情報を使用して、08540 ニュージャージー州、プリンストン、ワシントンロード201のSRIによって製造された(+30℃で動作する)ファイバ結合式のQCL4680、HHLパッケージとする実例1の分光デバイスの光源を選択した。このQCL光源は、4600~4700nm近くのスペクトル領域を調べるように構成された問い合わせ光ビームを伝送するように設計される。このHITRAN情報はまた、HgCdTe(MCT)検出器とする実例1の分光デバイスの検出器を選択するために使用される。HgCdTe(MCT)光検出器が、当業者に知られており、ソーラボ(Thor Lab)などの製造者から商業的に入手可能となり得る。実例1のHgCdTe(MCT)光検出器は、08540 ニュージャージー州、プリンストン、ワシントンロード201のSRIによって作製された。実例1で使用されるHgCdTe(MCT)光検出器は、3~30ミクロンの中IR(赤外)波長範囲内で調べることができる。HgCdTe(MCT)光検出器は、検出器、特に検知構成要素の温度を特定の所望の範囲内に維持するように制御され得る熱電冷却器を備えることができる。
【0101】
レーザは、特別発注の単一パス光学セルに嵌合された、(+30℃で動作する)ファイバ結合式のQCL4680、HHLパッケージ(SRI、08540 ニュージャージー州、プリンストン、ワシントンロード201)であった。レーザ視準化されたレーザ光は、単一パス光学セル内に伝播して0.5メートルの経路長を作り出す。光は、単一パス光学セルを通過した後、検出器キャップに入る。検出器(BV6.4、Intelligent Material Solutions、Inc)は、ZnSE ARコーティングされた窓の他方の側に気密にシールされる。この例の検出器は、250ミクロン×250ミクロンである。これは、-50℃で動作する熱電冷却器(Melcor冷却器)上に位置付けられる。冷却器は、TO-8ヘッダ(Sinclair Manufacturing)上に装着される。検出器のキャップは、気密にシールされ、低圧(13hPa)下で基準ガスとしてN2及びCO(N2中0.5%)によって埋め戻されてリアル・タイムの較正を提供する。
【0102】
「予言的実例2」
この予言的実例は、水素ガス・サンプル中の次のガス種、HS、CH、HO及びNHの任意の組み合わせの2つ以上の仮想的検出であり、ここでは、基準種はメタンである。
【0103】
図18Aは、40Torr及び298Kにおける100mの経路長に対するHSの直接吸収スペクトルを示す。HSの最強の吸収線は、2.6ミクロン及び8ミクロンスペクトル領域内の広帯域内に広く分布される。HOの基本的な(最強の)吸収帯域及びCOの強い倍音帯それぞれにより、2.6及び2.7ミクロン領域内で大きな干渉が観察される。同様に、7.8ミクロン近くのCHの強い倍音吸収帯域もまた、中赤外線HS帯域に干渉する。HS吸収線上の周辺の強いピークの影響を最小限にするために、線幅が狭くなるように光(多重パス・サンプル)セル内の圧力を低減することが必要である。線幅が狭くなっている場合でも、HSの弱い吸収線は、必要な検出限界値及び精度を達成するために極めて長い光路長及び長い積分時間を必要とする。
【0104】
HITRAN及びGEISAスペクトル・データベースを分析して、HSの最強の最も分離された吸収線を特定した。図18Bは、HS(1803)、NH(1804)、CH(1802)、及びHO(1801)すべてが適度に強い吸収特徴を有する領域に対して算出されたHITRANスペクトルを示す。4つすべてのガスが、100m経路長、40Torr圧力、及び298Kについて、これらのISO仕様にプロットされる(すなわちHSは5ppbv、COは0.2ppmv、COは2ppmv、NHは0.1ppmv、HOは5ppmv)。吸光率(y軸)が対数目盛り上にプロットされることに留意されたい。いくつかの分離された線は、多重種検出を可能にする。スペクトル範囲(2.5cm-1)は、ほとんどの量子カスケード・レーザ(5cm-1)内の電流調整レート未満であるため、単一レーザが、これらの吸収特徴のすべてを調べることができる。
【0105】
この波長における検出は、個々の線を調べるようにレーザ電流を調整することに基づく。実例2の検出スキームは、8211nmにおいてNH線(1804)が最初に100秒の時間にわたって調べられるようにする。2x10-5の吸光度により、測定精度は20:1となる。次に、レーザは、測定の数秒間、8207nmにおいて強いHO線(1801)に調整される。同様の形で、8206nmにおいてさらにより強いCH線(1802)もまた、数秒間だけ調べられる。残りの測定期間で、8202nmにおいて分離されたHS吸収ピーク(1803)が、調べられる。最も弱い吸収線であることにより、測定期間のほとんどは、この特徴の信号平均化専用となる。少なくとも10:1の信号対ノイズ比が、5ppbvにおいて予想される。4つすべてのガスは、そのISO仕様(すなわちHSは5ppbv、COは0.2ppmv、COは2ppmv、NHは0.1ppmv、HOは5ppmv)を下回って測定される。
【0106】
当業者は、いつもの実験法を使用するだけで、本明細書に説明する本発明の特有の実施例の数多くの等価物を認識し、確実にすることができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるように意図される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【図 】
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C