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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】施錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/10 20060101AFI20241115BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20241115BHJP
   A47G 29/122 20060101ALI20241115BHJP
   A47G 29/30 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
E05B65/10 K
E05B65/00 D
A47G29/122 Z
A47G29/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022077133
(22)【出願日】2022-05-09
(65)【公開番号】P2023166225
(43)【公開日】2023-11-21
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000152169
【氏名又は名称】株式会社栃木屋
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】弁理士法人白浜国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺山 裕二
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-218702(JP,A)
【文献】特開2010-189978(JP,A)
【文献】実開昭63-008360(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
A47G 29/122
A47G 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室の開口部を開閉する扉の施錠装置であって、
前記室または前記扉に設けられた取付部と、
該取付部に対して接離可能に設けられたカバーと、
該カバーに対し先端部が突没可能に設けられ、突出状態で前記扉を閉状態に保持可能かつ没入状態で前記扉を開閉可能にする施錠ラッチと、
該施錠ラッチを前記先端部が没入する方向へ付勢する第1付勢手段と、前記カバーを前記取付部から離間する方向へ付勢する第2付勢手段とを備え、
前記カバーは、
前記取付部から離間した状態で前記施錠ラッチの前記先端部が没入する方向への移動を規制するとともに、前記取付部に接近した状態で前記施錠ラッチの前記先端部が没入する方向への移動を可能とする第1規制部を有する構成とし
前記施錠ラッチは、前記第2付勢手段の付勢力に抗して前記カバーの離間を規制する第2規制部を備えたことを特徴とする施錠装置。
【請求項2】
前記第2規制部は、前記施錠ラッチの前記先端部が没入する方向への移動に伴って前記カバーを前記取付部に向けて前進させるように案内する第1ガイド部を備えたことを特徴とする請求項に記載の施錠装置。
【請求項3】
該施錠ラッチの突没方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに前記第1付勢手段により前記施錠ラッチの前記先端部が没入する方向へ付勢される補助部材と、
前記施錠ラッチと前記補助部材とを反対方向へ付勢する第3付勢手段と、
を備え、
前記補助部材は、前記カバーの前記第1規制部に衝止して前記施錠ラッチの前記先端部が没入する方向への移動を規制する衝止部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の施錠装置。
【請求項4】
前記扉の外側から前記第1規制部による規制を解除する解除手段を備えたことを特徴とする請求項に記載の施錠装置。
【請求項5】
前記解除手段は、
前記扉の外側からの鍵操作によって回動される鍵操作部と、
前記扉の内側に設けられ、前記鍵操作部の回動に連動して前記カバーを前記取付部に向けて前進させるための規制解除部材と、
を備えたことを特徴とする請求項に記載の施錠装置。
【請求項6】
前記規制解除部材は、前記鍵操作部の回動に連動して前記施錠ラッチを前記先端部が没入する方向へ移動させるためのカム部材を備えたことを特徴とする請求項に記載の施錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば宅配ボックスなどに用いられる施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の施錠装置としては、宅配ボックスの内側から容易に解錠して扉を開放できるように構成したものが提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1には、扉が閉じた状態で荷物室側に突出する解錠部材を備えた宅配ボックスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ワイヤーを宅配ボックスの施錠装置に連結し、押圧部材を押すと、ワイヤーが引き寄せられて施錠装置の施錠を解除するようにした解錠装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-62327号公報
【文献】特開2020-186609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の宅配ボックスでは、解錠部材が小さいため、分かり難い。
【0007】
しかも、一定方向へ回動して解錠する構成であるため、解錠操作が分からない虞がある。
【0008】
また、後者の解錠装置では、施錠装置と押圧部材とが離れているため、押圧部材で解錠する事が分かり難い。
【0009】
しかも、ワイヤーが荷物の収納に邪魔になる虞がある。
【0010】
本発明は、上記事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、室の内側から容易に解錠して扉を開放することができるようにした施錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、室の開口部を開閉する扉の施錠装置であって、室または扉に設けられた取付部と、取付部に対して接離可能に設けられたカバーと、カバーに対し先端部が突没可能に設けられ、突出状態で扉を閉状態に保持可能かつ没入状態で扉を開閉可能にする施錠ラッチと、施錠ラッチを先端部が没入する方向へ付勢する第1付勢手段と、前記カバーを前記取付部から離間する方向へ付勢する第2付勢手段とを備え、カバーは、取付部から離間した状態で施錠ラッチの先端部が没入する方向への移動を規制するとともに、取付部に接近した状態で施錠ラッチの先端部が没入する方向への移動を可能とする第1規制部を有する構成とし、前記施錠ラッチは、前記第2付勢手段の付勢力に抗して前記カバーの離間を規制する第2規制部を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室の内側から容易に解錠して扉を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本発明の第1実施形態に係る施錠装置を備えた宅配ボックスを示す斜視図。
図2】同施錠装置を背面側から示す斜視図。
図3】同施錠装置を示す分解斜視図。
図4】同施錠装置を背面側から示す分解斜視図。
図5】同施錠装置のカバー上部を示す平断面図。
図6】同施錠装置のカバー下部を示す平断面図。
図7】同施錠装置を一部省略して示す分解斜視図。
図8】同施錠装置を一部省略して背面側から示す分解斜視図。
図9】同施錠装置の施錠ラッチおよびホールドラッチを示す分解斜視図。
図10】同施錠装置のホールドラッチの動作を説明するための断面図。
図11】同施錠装置のホールドラッチの動作を説明するための断面図。
図12】同施錠装置のホールドラッチの動作を説明するための断面図。
図13】同施錠装置の施錠ラッチの施錠動作を説明するための断面図。
図14】同施錠装置の施錠ラッチの施錠動作を説明するための断面図。
図15】同施錠装置の施錠ラッチの施錠動作を説明するための断面図。
図16】同施錠装置の施錠ラッチの施錠動作を説明するための断面図。
図17】同施錠装置の施錠ラッチの解錠動作を説明するための斜視図。
図18】同施錠装置の施錠ラッチの解錠動作を説明するための断面図。
図19】同施錠装置の施錠ラッチの解錠動作を説明するための斜視図。
図20】同施錠装置の施錠ラッチの解錠動作を説明するための断面図。
図21】同施錠装置の施錠ラッチの解錠動作を説明するための斜視図。
図22】同施錠装置の施錠ラッチの解錠動作を説明するための断面図。
図23】同施錠装置の施錠ラッチの非常解錠動作を説明するための断面図。
図24】同施錠装置の施錠ラッチの非常解錠動作を説明するための断面図。
図25】本発明の第2実施形態に係る施錠装置を示す斜視図。
図26】同施錠装置を示す分解斜視図。
図27】同施錠装置を示す他の分解斜視図。
図28】同施錠装置の動作を説明するための斜視図。
図29】同施錠装置の動作を説明するための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1中、符号1は、本発明に係る施錠装置2を備えた宅配ボックスを示している。
【0016】
この宅配ボックス1は、前面に開口部3を有する筐体(室)4と、この筐体4の開口部3を開閉する扉5を備えている。
【0017】
扉5は、たとえば右側縁6が筐体4に図示しないヒンジによって回動自在に枢支されている。
【0018】
また、この扉5の自由端である左側縁7の近傍には施錠装置2が取付けられている。
【0019】
この施錠装置2は、扉5の表側(前面側)に設けられた把手部8と、図2にも示すように、扉5の内側(後面側)に設けられた本体9とを有している。
【0020】
本体9は、施錠ラッチ10を備えていて、この施錠ラッチ10の先端部10aが筐体4の開口部3周縁に設けられた筐体係合部11に係合することにより、扉5を閉状態に施錠することができるようになっている。
【0021】
すなわち、図3および図4に示すように、本体9は、扉5の内側に取付けられたベース(取付部)12を有している。
【0022】
このベース12には、ベース12側を除き本体9の略外周を区画形成する箱状のカバー13がベース12に対して接離可能に支持されている。
【0023】
すなわち、図5および図6にも示すように、ベース12には、一対のガイド孔12a,12aが前後方向に貫通して設けられている。
【0024】
一方、カバー13の内側(ベース12側)上部には、ガイド孔12a,12aに前後方向にスライド自在に内嵌するガイドピン13a,13aが突設されれている。
【0025】
これらガイドピン13a,13aは、ガイド孔12a,12aに挿通した状態で、先端に螺子14,14が螺合され、この螺子14,14によりガイド孔12a,12aからの抜け止めがなされるようになっている。
【0026】
また、カバー13の下部両側には、ベース12に向けて延出する一対の内側ガイド片13b,13bが設けられ、これら内側ガイド片13b,13bの先端には外側に突出する外側ストッパ13c,13cが形成されている。
【0027】
一方、ベース12の下部両側には、内側ガイド片13b,13bがスライド可能に内嵌する外側ガイド片12b,12bが設けられ、これら外側ガイド片12b,12bの先端には内側に突出する内側ストッパ12c,12cが形成されている。
【0028】
そして、外側ストッパ13c,13cと内側ストッパ12c,12cとにより内側ガイド片13b,13bの外側ガイド片12b,12bからの抜け止めがなされるようになっている。
【0029】
これにより、カバー13がベース12に対して前後方向に接離することができるようになっている。
【0030】
また、図3および図4に戻り、カバー13の左側壁には、施錠ラッチ10の先端部10aが突没可能な開口13dが形成され、カバー13の右側壁には、施錠ラッチ10の後端部10bが突没可能な開口13eが形成されている。
【0031】
また、このカバー13の内側には、ベース12に取付けられた枠状のフレーム16が設けられている。
【0032】
このフレーム16は、扉5と平行で垂直方向に設けられる垂直板部16aと、この垂直板部16aの上縁から前方に水平に設けられる上水平部16bと、垂直板部16aの下縁から前方に水平に設けられる下水平部16cと、上水平板部16bの前縁から上方に延びベース12に固定される上固定部16dと、下水平板部16cの前縁から下方に延びベース12に固定される下固定部16eとを有している。
【0033】
このフレーム16の垂直板部16aのカバー13側には、たとえば円錐状の第1圧縮コイルばね(第2付勢手段)17が前後方向に伸縮可能に固定されている。
【0034】
この第1圧縮コイルばね17の頂部である先端には、カバー13が固定され、これによりカバー13はベース12から離間する方向へ付勢されるようになっている。
【0035】
さらに、ベース12とフレーム16との間には上述の施錠ラッチ10が設けられている。
【0036】
この施錠ラッチ10は、下面がベース12に設けられたガイド板12d,12dによって、上面と後面がフレーム16によって、それぞれ水平方向にスライド自在にガイドされるようになっている。
【0037】
そして、先端部10aがカバー13の開口13dに対し突没可能、後端部10bがカバー13の開口13eに対し突没可能とされている。
【0038】
また、施錠ラッチ10は、図7図9にも示すように、先端部10aが二股に分かれ、この二股部10c,10cの間に門型の隙間10dが形成されている。
【0039】
また、この施錠ラッチ10のベース12側には、隙間10dに連通する凹部10eが施錠ラッチ10の長さ方向(左右方向)に沿って設けられている。
【0040】
この施錠ラッチ10の凹部10eには、ホールドラッチ23がスライド可能に嵌合されていて、その頭部23aが施錠ラッチ10の隙間10dから突没でき、しかも、施錠ラッチ10の動作に関係なくカバー13の開口13dから突没できるようになっている。
【0041】
このホールドラッチ23は、一端がホールドラッチ23に取付けられ、他端がベース12に取り付けられた第1引張りコイルばね24によって、カバー13の開口13aから突出する方向に付勢されている。
【0042】
また、ホールドラッチ23の頭部23aは、前面側傾斜面23bと後面側傾斜面23cとを有する山型状に形成されていて、扉5を開くときには前面側傾斜面23bが筐体係合部11に係合することにより第1引張りコイルばね24の付勢力に抗して没入し、扉5を閉めるときには後面側傾斜面23cが筐体係合部11に係合することにより第1引張りコイルばね24の付勢力に抗して没入するようになっている。
【0043】
さらに、このホールドラッチ23には、ガイドレール23d,23dがホールドラッチ23の長さ方向(左右方向)に沿って設けられている。
【0044】
このホールドラッチ23のガイドレール23d,23dおよび施錠ラッチ10の凹部10eには、補助部材26がスライド可能に嵌合されている。
【0045】
この補助部材26は、ガイドレール23d,23dおよび凹部10eに嵌合する第1補助部材27と、この第1補助部材27に固定される第2補助部材28とを有している。
【0046】
また、施錠ラッチ10の凹部10eには、一端が施錠ラッチ10に取付けられ、他端が第1補助部材27に取付けられた第2圧縮コイルばね(第3付勢手段)29が設けられていて、施錠ラッチ10と第1補助部材27とを反対方向へ付勢するようになっている。
【0047】
さらに、この第2圧縮コイルばね29によって反対方向へ付勢される施錠ラッチ10および第1補助部材27は、第1補助部材27に設けられた第1当接部27aが施錠ラッチ10に設けられた衝止部10fに当接するようになっていて、これにより施錠ラッチ10の第1補助部材27に対する突出方向への移動が規制されるようになっている。
【0048】
さらに、第1補助部材27と第2補助部材28との間には、一端が第2補助部材28に取付けられ、他端がベース12に固定された第2引張りコイルばね(第1付勢手段)30が設けられ、第2補助部材28を施錠ラッチ10の先端部10aが没入する方向へ付勢するようになっている。
【0049】
さらに、この第2補助部材28にはベース12に設けられた衝止部12eに当接する第2当接部28aが設けられ、第2補助部材28の移動を規制するようになっている。
【0050】
さらに、施錠ラッチ10のベース12側には、カバー13の開口13eのベース12側に設けられた係合部13fに係合する第1ガイド部10gが設けられている。
【0051】
この第1ガイド部10gは、施錠ラッチ10の突没方向に平行な第1平行部10hと第2平行部10iを有している。
【0052】
第2平行部10iは、第1平行部10hよりベース12側かつ施錠ラッチ10の先端部10a側に設けられている。
【0053】
また、第1平行部10hと第2平行部10iとの間には傾斜部10jが第1平行部10hおよび第2平行部10iに連続して設けられている。
【0054】
第1補助部材27のベース12側には、カバー13の係合部13fに係合する第2ガイド部27bが設けられている。
【0055】
この第1補助部材27の第2ガイド部27bは、施錠ラッチ10の第2平行部10iと面一に設けられている。
【0056】
したがって、施錠ラッチ10に設けられた衝止部10fと第1補助部材27の第1当接部27aとは、施錠ラッチ10の第1平行部10hと第2平行部10iとの間隔だけ段差部31(図5および図6に示す。)が生じ、この段差部31により施錠ラッチ10の第1平行部10hおよび傾斜部10jと第1補助部材27の第1当接部27aとが施錠ラッチ10の移動に伴ってカバー13の係合部13fに同時に係合できるようになっている。
【0057】
すなわち、施錠ラッチ10の第2平行部10iにカバー13の係合部13fが係合すると、第1補助部材27の第1当接部27aとカバー13の係合部13fとの係合は解除され、施錠ラッチ10、第1補助部材27および第2補助部材28は、第2引張りコイルばね30の付勢力により施錠ラッチ10の先端部10aが没入する方向へ移動するようになっている。
【0058】
また、把手部8は、把手41、錠(解除手段)42、およびインジケーター43を備えている。
【0059】
インジケーター43は、把手41の背面に突設された軸44に回動可能に軸支され、把手41から露出したり把手41の背面側に退避したりできるようになっている。
【0060】
また、インジケーター43は、第3引張りコイルばね45によって把手41から露出する方向に付勢されている。
【0061】
さらに、このインジケーター43の回動先端部43aは第2補助部材28に係合するようになっている。
【0062】
そして、施錠ラッチ10の先端部10aの突状態で把手41から露出し、施錠ラッチ10の先端部10aの没状態で把手41の背面側に退避するようになっている。
【0063】
さらに、錠42は、把手41の上部の穴41a、扉5の穴5a、ベース12の穴12f、フレーム16の穴16fを挿通して筐体4内の固定部材46により固定されている。
【0064】
この錠42は、鍵Pによって回動操作される鍵操作部48と、この鍵操作部48の回動に伴って回動するカム部材(規制解除部材)47を有している。
このカム部材47は、施錠ラッチ10に係合し、鍵Pの解錠方向への回動操作により施錠ラッチ10を第2圧縮コイルばね29の付勢力に抗して先端部10aが没入する方向へ移動させるようになっている。
【0065】
以上の構成において、先ず、宅配ボックス1の未使用状態では、図10図12に示すように、扉5は解錠状態にあり、施錠ラッチ10の先端部10aはカバー13に対して没入状態にある。
【0066】
このとき、カバー13の係合部13fは、第1補助部材27の第2ガイド部27bに係合し、カバー13は、ベース12に対して接近した状態になっている。
【0067】
この施錠ラッチ10の解錠状態において、図10に示すように、扉5の閉状態では、ホールドラッチ23は、第1引張りコイルばね24の付勢力によりカバー13から突出し、ホールドラッチ23の後面側傾斜部23cが筐体係合部11に接触しているため、扉5は閉状態に保持される。
【0068】
次いで、図11に示すように、把手部8を引くと、ホールドラッチ23の前面側傾斜部23bが筐体係合部11に係合しつつ第1引張りコイルばね24の付勢力に抗してカバー13内方向へ没入する。
【0069】
次いで、図12に示すように、さらに把手部8を引くと、ホールドラッチ23の頭部23aが筐体係合部11を乗り越え、開扉する。
【0070】
このとき、ホールドラッチ23は、第1引張りコイルばね24の付勢力によりカバー13から突出し、元の状態に復帰する。
【0071】
扉5を閉じるときは、ホールドラッチ23は、逆の動作が行われる。
【0072】
したがって、施錠ラッチ10の解錠状態においては、扉5の開閉が自由に行える、しかも、扉5は、閉状態または開状態に保持することができる。
【0073】
次いで、施錠する場合は、先ず、図13に示すように、施錠ラッチ10の後端部10bを第2引張りコイルばね30の付勢力に抗して押す。
【0074】
次いで、図14に示すように、施錠ラッチ10の後端部10bをカバー13内まで押込むと、カバー13の係合部13fは、第1補助部材27の第2ガイド部27bとの係合が解除され、施錠ラッチ10の第1ガイド部10gの第1平行部10hに係合するとともに第1補助部材27の第1当接部27aに係合し、カバー13はベース12に対して離間した状態となる。
【0075】
これにより施錠ラッチ10が施錠状態となる。
【0076】
この状態では、施錠ラッチ10の先端部10aは、第2圧縮コイルばね29の付勢力によりカバー13に対して突出状態になるが、施錠ラッチ10の後端部10bはカバー13の係合部13fに係合していないため、第2圧縮コイルばね29の付勢力に抗してカバー13内に没入可能である。
【0077】
すなわち、施錠ラッチ10の先端部10aは、カバー13に対して突没可能な状態になる。
【0078】
このとき、ホールドラッチ23もカバー13に対して突没可能な状態である。
【0079】
次いで、図15に示すように、把手部8を押して扉5を閉めると、施錠ラッチ10の先端部10aおよびホールドラッチ23の頭部23aが筐体係合部11に係合し、カバー13の内側方向へ没入する。
【0080】
次いで、図16に示すように、さらに把手部8を押して扉5の左側縁7が筐体係合部11に係合すると、施錠ラッチ10の先端部10aおよびホールドラッチ23の頭部23aが筐体係合部11に筐体4の内側から係合する。
【0081】
これにより、扉5の施錠が完了する。
【0082】
次に、解錠する場合は、図17および図18に示すように、錠42の鍵操作部48に鍵Pを差し込んで回すと、カム部材47が回動し、施錠ラッチ10を第2圧縮コイルばね29の付勢力に抗して先端部10aが没入する方向へ移動させる。
【0083】
すると、施錠ラッチ10は、図19および図20に示すように、先端部10aがカバー13に対して没入する方向へ移動する。
【0084】
この移動に伴って、カバー13の係合部13fは、施錠ラッチ10の第1平行部10hおよび傾斜部10jと係合する。
【0085】
このとき、第1補助部材27の第1当接部27aはカバー13の係合部13fに係合している。
【0086】
また、カバー13は、ベース12に徐々に接近する。
【0087】
さらに、鍵Pを回すと、図21および図22に示すように、カバー13の係合部13fが施錠ラッチ10の第2平行部10iに係合する。
【0088】
すると、カバー13の係合部13fと第1補助部材27の第1当接部27aとの係合が解除され、カバー13の係合部13fは、第1補助部材27の第2ガイド部27bに係合する。
【0089】
このとき、カバー13は、ベース12に接近した状態となる。
【0090】
これにより、施錠ラッチ10が第1補助部材27とともに、第2引張りコイルばね30の付勢力によりカバー13の開口13dから没入する方向へ移動し、
扉5の解錠が完了する。
【0091】
次に、筐体4の内部から解錠する場合は、図23に示すように、カバー13をベース12方向(扉5方向)へ押すと、カバー13は、ベース12に接近した状態となる。
【0092】
すると、図24に示すように、カバー13の係合部13fと第1補助部材27の第1当接部27aとの係合が解除され、カバー13の係合部13fは、施錠ラッチ10の第2平行部10iおよび第1補助部材27の第2ガイド部27bに係合すると同時に、施錠ラッチ10は第1補助部材27とともに、第2引張りコイルばね30の付勢力により、一気に後退する。
【0093】
すなわち、施錠ラッチ10は、先端部10aが開口13dから没入する方向へ移動し、扉5の解錠が完了する。
【0094】
したがって、児童などが筐体4内に閉じ込められた場合、手足でカバー13を押すことにより筐体4内から脱出することができる。
【0095】
以上の構成によれば、非常時に筐体4の内側から容易に解錠して扉5を開放することができる。
【0096】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0097】
図25および図26中、符号71は、上述の第1実施形態に係る施錠装置2に設けられた押印機構部を示している。
【0098】
この押印機構部71は、施錠ラッチ10の下方に設けられ、カバー13に設けられた窓13gおよびフレーム16に設けられた穴16fを通して操作できるようになっている。
【0099】
すなわち、押印機構部71は、図27にも示すように、印鑑Qを保持するホルダ72を有している。
【0100】
このホルダ72は、ベース12に設けられた一対のガイド部材81,81に上下方向にスライド可能にガイドされるようになっている。
【0101】
また、このホルダ72は、一端がベース12に固定され、他端がホルダ72に固定された第4引張りコイルばね73,73によって上方へ付勢されている。
【0102】
さらに、このホルダ72には、印鑑Qの周囲を弾性的に保持する保持部材74と、印鑑Qの頭部を押えて印鑑Qの上方への移動を規制する押え部材75を有している。
【0103】
さらに、ホルダ72の後面部には、操作部材76が着脱可能に取付けられている。
【0104】
この操作部材76は、後面がフレーム16の垂直板部16aの前面にスライド可能にガイドされるようになっていてる。
【0105】
また、操作部材76は、後面に、フレーム16の窓16fに嵌合する突条部77を有している。
【0106】
この突条部77は、下方に凸となるように屈曲した矢印形状を呈し、両端がフレーム16の窓16fの両サイドにガイドされるようになっている。
【0107】
そして、カバー13の窓13gから指を差込み、ホルダ72を第4引張りコイルばね73の付勢力に抗して下方へスライド操作させることができるようになっている。
【0108】
なお、カバー13に設けられた窓13gおよびフレーム16に設けられた窓16fは、この突条部77の形状に合わせて下方に凸となるような形状となっていて、押印機構部71の操作方向を示すように構成されている。
【0109】
以上の構成において、宅配ボックス1に納品して納品書に押印する場合、図28に示すように、上方に位置しているホルダ72を、カバー13の窓13gから指を差込み、突条部77を下方へ操作するすることにより、図29に示すように、印鑑Qがカバー13から下方へ突出し、これにより納品書への押印が行える。
【0110】
なお、上記実施形態では、カバー13を付勢する第2付勢手段(第1圧縮コイルばね)17を設けたが、本発明はこれに限定されることはなく、カバー13を
手動で復帰させてもよい。
【0111】
すなわち、施錠ラッチ10の後端部10bをカバー13内に押込んで先端部10aをカバー13から突出させた状態でカバー13を手動でベース12から離間させることにより、施錠ラッチ10の後端部10bをカバー13の係合部13fに係合させるようにして施錠を完了してもよい。
【0112】
開錠は、上記実施例同様に、カバー13をベース12に接近するように押込む操作を行えばよい。
【0113】
また、上述の実施形態では、ベース(取付部)12を扉5に設けたが、本発明は扉5に限定されることは無く、筐体(室)4に設けても良いことは勿論である。
【0114】
また、上述の実施形態では、施錠装置2を宅配ボックス1に適用したが、本発明は宅配ボックス1に限定されることは無く、たとえばトイレ、トラック荷台、冷蔵庫、コンテナなどに適用しても良いことは勿論である。
【0115】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
【0116】
すなわち、本発明は、室の開口部を開閉する扉の施錠装置であって、室または扉に設けられた取付部と、取付部に対して接離可能に設けられたカバーと、カバーに対し先端部が突没可能に設けられ、突出状態で扉を閉状態に保持可能かつ没入状態で扉を開閉可能にする施錠ラッチと、施錠ラッチを先端部が没入する方向へ付勢する第1付勢手段と、前記カバーを前記取付部から離間する方向へ付勢する第2付勢手段とを備え、カバーは、取付部から離間した状態で施錠ラッチの先端部が没入する方向への移動を規制するとともに、取付部に接近した状態で施錠ラッチの先端部が没入する方向への移動を可能とする第1規制部を有する構成とし、前記施錠ラッチは、前記第2付勢手段の付勢力に抗して前記カバーの離間を規制する第2規制部を備えたことを特徴とするものである。
【0117】
上記発明は、少なくとも下記実施形態を含むことができる。該実施形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
【0119】
)第2規制部は、施錠ラッチの先端部が没入する方向への移動に伴ってカバーを取付部に向けて前進させるように案内する第1ガイド部を備える。
【0120】
)施錠ラッチの突没方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに第1付勢手段により施錠ラッチの先端部が没入する方向へ付勢される補助部材と、施錠ラッチと補助部材とを反対方向へ付勢する第3付勢手段とを備え、補助部材は、カバーの第1規制部に衝止して施錠ラッチの先端部が没入する方向への移動を規制する衝止部を備える。
【0121】
)扉の外側から第1規制部による規制を解除する解除手段を備える。
【0122】
)解除手段は、扉の外側からの鍵操作によって回動される鍵操作部と、扉の内側に設けられ、鍵操作部の回動に連動してカバーを取付部に向けて前進させるための規制解除部材とを備える。
【0123】
)規制解除部材は、鍵操作部の回動に連動して施錠ラッチを先端部が没入する方向へ移動させるためのカム部材を備える。
【符号の説明】
【0124】
2 施錠装置
3 開口部
4 室
5 扉
10 施錠ラッチ
10a 先端部
10g 第2規制部(第1ガイド部)
12 取付部(ベース)
12e 衝止部
13 カバー
13f 第1規制部(係合部)
17 第2付勢手段(第1圧縮コイルばね)
26 補助部材
29 第3付勢手段(第2圧縮コイルばね)
30 第1付勢手段(第2引張りコイルばね)
42 解除手段(錠)
47 規制解除部材(カム部材)
48 鍵操作部
図1
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