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特許7588427半減期が延長した薬物およびそのライブラリー、ならびに製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】半減期が延長した薬物およびそのライブラリー、ならびに製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C40B 40/10 20060101AFI20241115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241115BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241115BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241115BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20241115BHJP
   C07K 14/76 20060101ALN20241115BHJP
   C07K 14/755 20060101ALN20241115BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
C40B40/10 ZNA
A61K45/00
A61K47/68
A61K31/7088
A61K39/395
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/76
C07K14/755
C12N15/11 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022526044
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2020123685
(87)【国際公開番号】W WO2021083077
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】201911038880.0
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519401664
【氏名又は名称】アッセンブリー メディシン,エルエルシー.
【氏名又は名称原語表記】ASSEMBLY MEDICINE,LLC.
【住所又は居所原語表記】2-3F,Bldg.1,No.88 Da‘erwen Road.China(Shanghai) Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ジェイムス ジェイウェン
(72)【発明者】
【氏名】パン,リーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ルン,チャンキン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,リウジュアン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/205755(WO,A1)
【文献】Molecular Therapy: Nucleic Acids,2017年,Vol.9,p.284-293
【文献】ACS Chem, Biol.,Vol.10,2015年,p.2158-2165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C40B 40/10
A61K 45/00
A61K 47/68
A61K 31/7088
A61K 39/395
C07K 19/00
C07K 16/00
C07K 14/76
C07K 14/755
C12N 15/11
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物ライブラリーであって、(a)薬物ユニット、および(b)n個の半減期延長ユニットを含み、
ここで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含み、
前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含み、
そして、前記薬物ユニットの一つの前記第一核酸エレメント部分と少なくとも一つの半減期延長ユニットの第二核酸エレメント部分は相補的塩基の対合構造を形成することで、「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体を構成することができ、
ここで、nは≧1の正整数であり
記薬物ユニットは式IIで表される構造を有し、
【化1】
前記半減期延長ユニットは式IIIで表される構造を有すること特徴とする、前記薬物ライブラリー。
【化2】
(式中において、
Tは薬物エレメント部分である。
Aは半減期延長エレメント部分である。
X1、X2はそれぞれ独立になしか、または重複ペプチドである。
L1、L2はそれぞれ独立にリンカー分子である。
Y1、Y2およびZ1、Z2はそれぞれ独立になしか、または重複核酸である。
W1、W2はそれぞれ独立に、L-核酸、ロックド核酸、チオ修飾核酸、2'-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つの核酸配列である。
「─」は共役結合である。
ここで、薬物ユニットの核酸W1は少なくとも一つの相補的対合領域を有し、半減期延長エレメントの核酸W2は少なくとも一つの相補的対合領域を有し、両者の一部または全部が相補的である。)
【請求項2】
前記薬物エレメント部分は、抗体、受容体またはタンパク質を活性化または抑制するリガンド、生物活性酵素、核酸薬物、小分子薬物、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれること特徴とする請求項1に記載の薬物ライブラリー。
【請求項3】
前記半減期延長エレメント部分は、天然アルブミン(Albumin)、組み換えアルブミン、抗アルブミン抗体(ナノ抗体、一本鎖抗体、Fab、モノクローナル抗体を含む)、特異的にアルブミンと結合する核酸アプタマー(aptamer)、直接FcRnと結合するタンパク質および核酸アプタマー(aptamer)、任意の半減期が長いタンパク質、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれること特徴とする請求項1に記載の薬物ライブラリー。
【請求項4】
前記リンカー分子L1、L2は、それぞれ独立して二重機能ヘッドを有し、核酸W1、W2またはY1、Y2の修飾基を有する修飾末端およびTまたはAまたはX1、X2の特異的結合部位にカップリングすることができること特徴とする請求項1に記載の薬物ライブラリー。
【請求項5】
半減期が延長した薬物(たとえばタンパク質薬物)を組み立てる方法であって、以下の:
(a) 製薬情報に基づき、請求項1に記載の薬物ライブラリーから薬物ユニットおよび半減期延長ユニットを選択する工程;ならびに
(b) 前記薬物ユニットと少なくとも1種類の半減期延長ユニットを混合することにより、半減期が延長した薬物に組み立てる工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項6】
半減期が延長した薬物であって、薬物ユニットとn種類の半減期延長ユニットが核酸の相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成してなる半減期が延長した薬物で、ここで、nは≧1の正整数で、
ここで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含み、前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期延長エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含み、かつ一つの前記薬物ユニット量体の前記核酸エレメント部分は少なくとも一つの半減期延長ユニットの核酸エレメント部分と相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成し
記薬物ユニットは式IIで表される構造を有し、
【化3】
前記半減期延長ユニットは式IIIで表される構造を有することを特徴とする、前記半減期が延長した薬物。
【化4】
(式中において、
Tは薬物エレメント部分である。
Aは半減期延長エレメント部分である。
X1、X2はそれぞれ独立になしか、または重複ペプチドである。
L1、L2はそれぞれ独立にリンカー分子である。
Y1、Y2およびZ1、Z2はそれぞれ独立になしか、または重複核酸である。
W1、W2はそれぞれ独立に、L-核酸、ロックド核酸、チオ修飾核酸、2'-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つの核酸配列である。
「─」は共役結合である。
ここで、薬物ユニットの核酸W1は少なくとも一つの相補的対合領域を有し、半減期延長エレメントの核酸W2は少なくとも一つの相補的対合領域を有し、両者の一部または全部が相補的である。)
【請求項7】
薬物組成物であって、
(i) 活性成分として請求項6に記載の半減期が延長した薬物と
(ii) 薬学的に許容される担体と
を含むことを特徴とする薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術薬物の分野に関する。具体的に、半減期が延長した薬物およびそのライブラリー、ならびに製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質またはタンパク質に基づいた薬物には、その半減期の延長が治療効果の向上および薬物の使用量の低下に有利である。
タンパク質またはポリペプチド系薬物の半減期を延長させるため、既存の方法は、それらをFc-融合タンパク質、HSA-融合タンパク質の形態にするもの、化学的カップリングによってFc-タンパク質/ポリペプチド複合体、HSA-タンパク質/ポリペプチド複合体にするもの、および上記融合タンパク質または複合体にけるHSAをHSAと結合可能なタンパク質またはポリペプチド(たとえば抗HSA抗体)、小分子、核酸(たとえばアプタマー)などに変えるもの、PEG、糖化、シアル酸などの化学的修飾法を含む。
【0003】
PEG修飾は化学的修飾によってタンパク質またはポリペプチド薬物の半減期を向上させる主な方法で、利点はPEGの生物的適応性が強く、薬物の溶解性と安定性を増加させることにあり、欠点はPEG修飾が大きく生物酵素などの活性タンパク質の活性に影響し、大分子量のPEGに免疫原性があり、PEG分子の低い均一性によってPEG化薬物の品質管理が困難といったことである。また、PEGなどの化学的修飾法によるタンパク質またはポリペプチドの半減期の向上は分子量の増加に依存するため、半減期の向上効果に限界がある。
【0004】
FcまたはHSA融合タンパク質は、半減期を延長させるが、FcまたはHSA融合タンパク質によって半減期を延長させる方法は目的のタンパク質またはポリペプチドと与Fc/HSAの融合部位に新たなエピトープができる。また、FcはC末端のみに、HSAは目的のタンパク質またはポリペプチドのN末端またはC末端のみに融合することができる。また、当該方法は天然のタンパク質またはポリペプチドに適しない。
【0005】
そのため、本分野では、タンパク質薬物は半減期が延長し、薬物動態学の性質が向上するように、簡単で、弾力的で、効率的で、モジュール化した連結手段であって、タンパク質薬物を半減期延長因子(HSA、HSA結合モジュールなどを指す)と特異的にヘテロカップリングさせる方法の開発が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡単で、弾力的で、効率的で、モジュール化した、タンパク質薬物を半減期延長因子と特異的にヘテロカップリングさせる方法およびそれによって製造されるカップリング薬物を提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、低コストで、モジュール化FcRn標的ユニットおよび前記モジュール化したFcRn標的ユニットで構成されたモジュールライブラリーであって、前記FcRn標的ユニットは半減期向上モジュールとして、弾力的にタンパク質薬物と連結することにより、顕著にタンパク質薬物の半減期を延長させることができるものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の側面では、薬物ライブラリーであって、(a)薬物ユニット、および(b)n個の半減期延長ユニットを含み、
ここで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含み、
前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含み、
そして、前記薬物ユニットの一つの前記第一核酸エレメント部分と少なくとも一つの半減期延長ユニットの第二核酸エレメント部分は相補的塩基の対合構造を形成することで、「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体を構成することができ、
ここで、nは≧1の正整数であるものを提供する。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記薬物ユニットと前記半減期延長ユニットは直接、または間接的に相補的塩基で連結することができる。
もう一つの好適な例において、前記「相補的塩基」は直接の相補的塩基および/または間接の相補的塩基を含む。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記「直接の相補的塩基」は前記第一核酸エレメント部分と第二核酸エレメント部分の間で直接相補的塩基になることを含む。
もう一つの好適な例において、前記「間接の相補的塩基」は前記第一核酸エレメント部分と第二核酸エレメント部分が、1個または複数個(たとえば2個、3個、4個、5個、6個)の補助相補核酸分子(すなわち、核酸F)の一本鎖相補配列を介して相補的塩基を形成することで、三重または三重以上の対合構造になることを含む。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記補助相補核酸分子は一本鎖の形態である。
もう一つの好適な例において、前記補助相補核酸分子は、独立した核酸分子、別の半減期延長ユニットの第二核酸エレメント部分、別の薬物ユニットの第一核酸エレメント部分、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記補助相補核酸分子はタンパク質薬物とカップリングしていない核酸である。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記補助相補核酸分子は、別の異なる薬物ユニットの第一核酸エレメント部分、および/または、別の異なる半減期延長ユニットの第二核酸エレメント部分である。
もう一つの好適な例において、前記第一核酸エレメント部分、第二核酸エレメント部分、および/または補助相補核酸分子はL-核酸、または修飾基によって修飾された核酸である。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記第一核酸エレメントは前記薬物ユニット部分のN末端(アミノ末端)に連結せず、および/または前記薬物ユニット部分のC末端(カルボキシ末端)に連結しない。
もう一つの好適な例において、前記第一核酸エレメントは前記薬物ユニット部分の非末端の(non-terminal)アミノ酸残基部分に連結している。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記第二核酸エレメントは前記半減期延長エレメント部分のN末端(アミノ末端)に連結せず、および/または前記半減期延長エレメント部分のC末端(カルボキシ末端)に連結しない。
もう一つの好適な例において、前記第二核酸エレメントは前記半減期延長エレメント部分の非末端の(non-terminal)アミノ酸残基部分に連結している。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記半減期延長ユニットにおける半減期延長エレメント部分はFcまたはその断片あるいは修飾されたFcまたはその断片(たとえば糖化されたFc、NH2で修飾されたFc)ではない。
もう一つの好適な例において、前記半減期延長ユニットにおける半減期延長エレメント部分はPEG(ポリエチレングリコール)ではない。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体は1種類の半減期延長ユニットを有する。
もう一つの好適な例において、前記「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体は2種類または複数種類の異なる半減期延長ユニットを有する。
もう一つの好適な例において、前記「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体では、半減期延長ユニットと薬物ユニットのモル比(A/D)が0.5-10、好ましくは1-8、より好ましくは2-5である。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体は1種類の薬物ユニットを有する。
もう一つの好適な例において、前記「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体は2種類または複数種類の異なる薬物ユニットを有する。
もう一つの好適な例において、前記「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体では、半減期延長ユニットと薬物ユニットのモル比(A/D)が0.5-10、好ましくは1-8、より好ましくは2-5である。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記薬物エレメント部分はタンパク質薬物である。
もう一つの好適な例において、前記薬物エレメント部分はポリペプチド薬物である。
もう一つの好適な例において、前記薬物エレメント部分は融合タンパク質薬物である。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体は式Iで表される構造を有する。
【化1】
(ただし、
T0は薬物エレメント部分である。
L0はT0とA0を連結するためのもので、かつ前記第一核酸エレメント部分と第二核酸エレメント部分の相補的塩基に基づいた対合構造を含有する核酸リンカー(linker)である。
A0はFcRn結合エレメント、またはFcRn結合タンパク質(たとえば血清アルブミン)と結合する結合エレメントである。
nは≧1の正整数である。)
【0020】
もう一つの好適な例において、前記薬物ユニットは式IIで表される構造を有し、
【化2】
前記半減期延長ユニットは式IIIで表される構造を有する。
【化3】
(式中において、
Tは薬物エレメント部分である。
Aは半減期延長エレメント部分である。
X1、X2はそれぞれ独立になしか、重複ペプチドである。
L1、L2はそれぞれ独立にリンカー分子である。
Y1、Y2およびZ1、Z2はそれぞれ独立になしか、重複核酸である。
W1、W2はそれぞれ独立に、L-核酸、ペプチド核酸、ロックド核酸、チオ修飾核酸、2'-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つの核酸配列である。
「─」は共役結合である。
ここで、薬物ユニットの核酸W1は少なくとも一つの相補的対合領域を有し、半減期延長エレメントの核酸W2は少なくとも一つの相補的対合領域を有し、両者の一部または全部が相補的である。)
【0021】
もう一つの好適な例において、前記薬物エレメント部分は、抗体、受容体、タンパク質を活性化または抑制するリガンド、生物活性酵素、核酸薬物、小分子薬物、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記半減期延長エレメント部分は、天然アルブミン(Albumin)、組み換えアルブミン、抗アルブミン抗体(ナノ抗体、一本鎖抗体、Fab、モノクローナル抗体を含む)、特異的にアルブミンと結合する核酸アプタマー(aptamer)、直接FcRnと結合するタンパク質および核酸アプタマー(aptamer)、任意の半減期が長いタンパク質、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0023】
もう一つの好適な例において、X1、X2はそれぞれ独立に0-30個のアミノ酸である。
もう一つの好適な例において、X1、X2はそれぞれ独立は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個のアミノ酸である。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記リンカー分子L1、L2はそれぞれ独立は二重機能ヘッドを有し、核酸W1、W2またはY1、Y2の修飾基を有する修飾末端およびTまたはAまたはX1、X2の特異的結合部位にカップリングすることができる。
もう一つの好適な例において、前記リンカー分子L1、L2の活性基は、それぞれ独立に、マレイミド、ハロアセチル基、チオピリジンから選ばれる。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記ハロアセチル基は、ヨードアセチル基、ブロモアセチル基から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記薬物エレメント部分Tはタンパク質系薬物エレメントである。
もう一つの好適な例において、前記タンパク質系薬物エレメントTは野生型または突然変異型である。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記突然変異は薬物の機能に影響がない。
もう一つの好適な例において、前記突然変異はタンパク質系薬物エレメントへの一つまたは複数のシステイン残基(Cys)の導入を含む。
もう一つの好適な例において、前記システイン残基は前記タンパク質系薬物エレメントの任意の位置(たとえばN末端、C末端、または中間の任意の位置)にある。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記突然変異はタンパク質系薬物エレメント(たとえば抗体)のカルボキシ末端(C末端)への一つまたは複数のシステイン残基の導入を含む。
もう一つの好適な例において、前記システイン残基はDNAに連結するためのものである。
もう一つの好適な例において、前記タンパク質系薬物エレメントはFVIIIである。
【0028】
もう一つの好適な例において、Y1、Y2はそれぞれ独立に0-30個のヌクレオチドである。
もう一つの好適な例において、前記Y1、Y2はそれぞれ独立はL-核酸である。
【0029】
もう一つの好適な例において、Y1、Y2はそれぞれ独立は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個のヌクレオチドである。
もう一つの好適な例において、前記Y1、Y2はそれぞれ独立はAAAA、AAAまたはAAである。
【0030】
もう一つの好適な例において、Z1、Z2はそれぞれ独立に0-30個のヌクレオチドである。
もう一つの好適な例において、前記Z1、Z2はそれぞれ独立はL-核酸である。
【0031】
もう一つの好適な例において、Z1、Z2はそれぞれ独立は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個のヌクレオチドである。
もう一つの好適な例において、前記Z1、Z2はそれぞれ独立はAAAA、AAAまたはAAである。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記核酸W1、W2はL-核酸である。
もう一つの好適な例において、前記核酸W1、W2は、DNA、RNAから選ばれる。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記修飾基は、NH2、アルキニル基、メルカプト基(SH)、カルボキシ基(COOH)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記修飾基はNH2である。
もう一つの好適な例において、前記修飾基の前記核酸W1、W2および/またはY1、Y2における位置は、5'末端、3'末端、中間の任意の部位から選ばれる。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記核酸W1、W2における任意の2つの相補的対合領域の間に長さが0-10ntの過渡領域がある。
もう一つの好適な例において、前記過渡領域はAAAA、AAAまたはAAである。
もう一つの好適な例において、前記相補的対合領域の長さは5~100nt、好ましくは8~50nt、より好ましくは10~30nt、さらに好ましくは12~25nt、最も好ましくは16~20ntである。
【0035】
本発明の第二の側面では、半減期が延長した薬物(たとえばタンパク質薬物)を組み立てる方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 製薬情報に基づき、本発明の第一の側面に記載の薬物ライブラリーから薬物ユニットおよび半減期延長ユニットを選択する;ならびに
(b) 前記薬物ユニットと少なくとも1種類の半減期延長ユニットを混合することにより、半減期が延長した薬物に組み立てる。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記組み立ては、前記核酸エレメント部分の相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成することである。
もう一つの好適な例において、前記半減期が延長した薬物では、各薬物ユニットの核酸エレメント部分と1種類または2種類または3種類の半減期延長ユニットの核酸エレメント部分が相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成している。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記組み立ては、前記核酸エレメント部分と補助相補核酸分子(すなわち、核酸F)の一本鎖相補配列の相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成することである。
もう一つの好適な例において、前記補助相補核酸分子は一本鎖の形態である。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記核酸Fはタンパク質薬物とカップリングしていない核酸である。
もう一つの好適な例において、前記核酸FはL-核酸、または修飾基によって修飾された核酸である。
もう一つの好適な例において、前記核酸Fの長さはすべての(b)における単量体の核酸の対合数の合計の1-1.5倍である。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記製薬情報は治療される対象の疾患の治療に必要なタンパク質薬物の情報で、タンパク質薬物の種類、投与手段、薬物動態学を含む。
もう一つの好適な例において、前記組み立ての条件は、5-50度(好ましくは25-40度)で、1-15分間(好ましくは5-10分間)反応させることである。
もう一つの好適な例において、前記組み立ての条件は、pH 6~8である。
【0040】
本発明の第三の側面では、半減期が延長した薬物であって、薬物ユニットとn種類の半減期延長ユニットが核酸の相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成してなる半減期が延長した薬物で、ここで、nは≧1の正整数で、
ここで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含み、前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期延長エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含み、かつ一つの前記薬物ユニット量体の前記核酸エレメント部分は少なくとも一つの半減期延長ユニットの核酸エレメント部分と相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成している薬物を提供する。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記核酸エレメント部分は、耐ヌクレアーゼ分解性のものである。
もう一つの好適な例において、前記薬物はタンパク質薬物で、前記タンパク質薬物は式Iで表される構造を有する。
【化4】
(ただし、
T0はタンパク質薬物である。
L0はT0とA0を連結するための核酸連結エレメントである。
A0はFcRn結合エレメント、またはFcRn結合タンパク質(たとえば血清アルブミン)と結合する結合エレメントである。
nは≧1の正整数である。)
【0042】
もう一つの好適な例において、前記核酸エレメント部分は、L-核酸、ペプチド核酸、ロックド核酸、チオ修飾核酸、2'-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記薬物ユニットと半減期延長ユニットは、本発明の第一の側面に記載の薬物ライブラリーからの薬物ユニットと半減期延長ユニットである。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記半減期が延長した薬物は多量体タンパク質薬物で、前記多量体タンパク質薬物はD種類のタンパク質薬物単量体が核酸の相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成してなる多量体で、ここで、Dは≧2の正整数である。
もう一つの好適な例において、Dは2-6の正整数で、好ましくはDは2、3、4または5である。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記半減期が延長した薬物は半減期が延長したタンパク質薬物である。
もう一つの好適な例において、前記半減期が延長したタンパク質薬物は、体内で分解する半減期H1が単独のタンパク質薬物エレメントの体内における半減期H2よりも大きい。
もう一つの好適な例において、H1/H2の比の値は1-100、好ましくは10-50、より好ましくは10-20である。
【0045】
本発明の第四の側面では、
(i) 活性成分として本発明の第三の側面に記載の半減期が延長した薬物と
(ii) 薬学的に許容される担体と
を含む薬物組成物を提供する。
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物の剤形は、注射剤、冷凍乾燥製剤からなる群から選ばれる。
【0046】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1は、本発明において核酸対合の形態によって薬物の半減期を延長させる機序の図を示す。
図2は、本発明の一つの実例における、タンパク質薬物とFcRn標的ユニットが連結した構造を示す。
図3は、4本の異なるL-DNA一本鎖が四量体テトラマー骨格になる前後のアガロースゲル電気泳動パターンを示す。
図4は、長時間作用血液凝固第VIII因子の血友病マウスモデルにおける半減期を示す。
図5は、HSAnbタンパク質の精製およびHSAnb-DNA連結のSDS-PAGE電気泳動パターンを示す。
図6は、長時間作用FVIIIの組み立ての結果のSDS-PAGE電気泳動パターンを示す。ここで、(a)は長時間作用FVIIIの組み立ての結果のSDS-PAGE電気泳動パターンである。レーン1:FVIIIで、FVIII粉末をddH2Oに入れて溶解させた後、脱塩によって緩衝液をPBS pH7.4に置換し、最終濃度が133 IU/mlで、10μl取ってSDS-PAGEに仕込んだ。レーン2:FVIII-L-DNA連結の結果で、最終濃度が133 IU/mlのFVIIIとL-DNA1-(PEG)2-MALを1:4の比率で連結し(25度で2h反応させ)、FVIII-DNA1サンプルを得た。10μl取ってSDS-PAGEに仕込んだ。レーン3:FVIII-HSAnbの組み立ての結果で、順にFVIII-DNA1サンプルにHSAnb-DNA4、L-DNA2およびL-DNA3を入れ、混合した。反応系におけるL-DNA1、L-DNA2、L-DNA3およびL-DNA4のモル比が1:1:1:1になるように、組み立てて長時間作用FVIIIを得た。10μl取ってSDS-PAGEに仕込んだ。レーン4:タンパク質分子量標準品である。(b)はFVIII-HSAnbの組み立て後の構造概略図である。
図7は、サンプルFVIII、FVIII-L-DNA1、FVIII-HSAnbの体外活性APTTの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
幅広く深く研究したところ、本発明者は、初めて、半減期が延長した薬物およびそのライブラリー、ならびに製造方法と使用を開発した。本発明の薬物ライブラリー、製造方法を使用すれば、必要により、快速に、効率的に、低コストで、高収率で半減期が延長した薬物を組み立てることができる。これに基づき、本発明を完成させた。
具体的に、本発明は、半減期が延長した薬物であって、(a)薬物ユニット、および(b)前記薬物ユニットと核酸の相補的塩基によってカップリングしたn個の半減期延長ユニットを含み、ここで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含み、前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期延長エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含み、かつ一つの前記薬物ユニット量体の前記核酸エレメント部分は少なくとも一つの半減期延長ユニットの核酸エレメント部分と相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成しており、ここで、nは≧1の正整数である薬物を提供する。本発明の半減期が延長した薬物は、快速の組み立て(たとえば1分間)のみで、安定した核酸の相補的塩基の対合構造(複雑なペプチド結合やほかの化学的修飾などではない)を形成する。実験では、本発明の薬物は、FcRn結合エレメント、またはFcRn結合タンパク質(たとえば血清アルブミン)と結合する結合エレメントを介してFcRnと特異的に結合することができる。意外なことに、本発明の薬物は、血液における造血細胞または血管内皮細胞によって飲作用で取り込まれた後、エンドソーム(endosome)に入ってその中のFcRnと結合することで、回収経路に入り、そして細胞内やエンドソームなどの多くの環境における分解に耐える。このように、本発明の薬物は有効に分解経路に入ってリソソーム(lysosome)によって分解されることを避けることができる。また、本発明の薬物は細胞表面に循環すると、中性の生理条件において(たとえば約pH 7.4)FcRnと離解し、血液に放出されることで、循環利用が実現する(図1を参照する)。
【0049】
用語
別途に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術と科学の用語はいずれも本発明が属する分野の当業者が通常理解する意味と同様である。本明細書で用いられるように、具体的に例示される数値で使用される場合、用語「約」とは当該値が例示される数値から1%以内で変わってもよい。たとえば、本明細書で用いられるように、「約100」という表示は99と101およびその間の全部の値(たとえば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0050】
本発明の実施またはテストにおいて本発明における記載と類似または等価の任意の方法と材料を使用することができるが、本明細書で好適な方法と材料が挙げられた。
【0051】
本明細書で用いられるように、用語「タンパク質薬物」、「ポリペプチド薬物」とは、アミノ酸を含有してペプチド結合を介してポリペプチド配列を形成した薬物で、入れ替えて使用することができ、前記薬物はアミノ酸配列のみで構成していてもよく、基本的にアミノ酸配列で構成していてもよい。また、当該用語は、さらに、未修飾または修飾の形態、たとえば、糖化されたタンパク質薬物、PEG化されたタンパク質薬物、ADC形態のタンパク質薬物を含む。
【0052】
本明細書で用いられるように、用語「半減期延長ユニット」、「半減期延長モジュール」、「半減期向上モジュール」とは、いずれも、半減期延長エレメント部分および前記半減期延長エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含有し、そして相補的塩基によって「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体を形成し、さらにタンパク質薬物複合体の半減期を延長させるエレメントまたはモジュールで、入れ替えて使用することができる。
【0053】
本明細書で用いられるように、用語「タンパク質薬物複合体」または「薬物ユニット-半減期延長ユニット複合体」とは、薬物ユニットと半減期延長ユニットが相補的塩基によって形成した薬物複合体で、入れ替えて使用することができる。
【0054】
薬物T
本発明においてで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含む。
ここで、前記薬物エレメント部分はタンパク質系薬物、ポリペプチド系薬物である。
【0055】
典型的に、前記タンパク質系薬物は、抗体、融合タンパク質、成長因子、ホルモン(たとえばインスリン、成長ホルモンなど)を含むが、これらに限定されない。
本発明の一つの好適な実施例において、前記タンパク質系薬物は血友病Aを治療する長時間作用因子VIII(FVIII)である。
【0056】
半減期延長ユニットA
本発明において、前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含む。
具体的に、本発明では、核酸対合を介する多重特異性抗体自己組織化技術(特許出願番号201710322583.3)を利用し、FcRnを標的とするタンパク質またはポリペプチド(半減期延長因子)および薬物をそれぞれ核酸エレメントと連結してFcRn標的ユニットを形成した後、核酸エレメントの相補的対合によって両者を一つにカップリングさせ、細胞によって回収される長時間作用薬物を形成する。
前記半減期延長エレメント部分(半減期延長因子)は以下の数種類に分かれる。
【0057】
2.1 HSAタンパク質
HSAタンパク質は血から抽出されるHSAでもよく、酵母などの低コストの発現系によって組み換え発現されるHSAでもよい。HSAは一つの遊離のCys34を有し、部位特異的カップリングによる活性化後の一本鎖の分解耐性核酸(たとえばリバース核酸)に有用である。もちろん、部位特異的カップリングが必要ではない場合、HSA表面のNH2も一本鎖の核酸のランダムカップリングに有用である。
【0058】
2.2 HSA結合タンパク質
HSA結合タンパク質の種類は、ナノ抗体、一本鎖抗体、Fabおよび全長IgG抗体を含む。本発明によれば、好適なHSA結合タンパク質はコストが低いナノ抗体、一本鎖抗体である。
【0059】
2.3 HSA結合ポリペプチドとドメイン
特定の配列のポリペプチド、たとえば、ポリペプチドSA21(アミノ酸配列:Ac-RLIEDICLPRWGCLWEDD-NH2、配列番号6)もHSAと結合することができ、その中のコア配列はDICLPRWGCLW(配列番号7)で、コア配列を含有するポリペプチドはいずれも異なる程度でHSAと結合し、本発明の特許の半減期向上因子になることが可能である。
ほかのタンパク質のドメイン、たとえば、Affibody、DARTなどの人工改変小断片抗体も、標的改変、進化などの手段により、HSA結合タンパク質ドメインになることが可能である。
【0060】
2.4 HSA結合核酸
一部の核酸アプタマー(aptamer)は特異的にHSAと結合することができ、たとえば、その一つのRNA型の核酸アプタマー配列は5'-GUGGACUAUACCGCGUAAUGCUGCCUCCAC-3'(配列番号8)である。本発明の好適なHSA結合核酸は、合成、製造の難易度から、核酸フレームワークの種類と一致することが好ましく、たとえば、同時にL-RNAまたはL-DNAにしてもよい。
【0061】
さらに、樹状アルキル鎖(dendritic alkyl chains)で修飾された核酸もHSAと結合することができ、たとえば、J. Am. Chem. Soc.2017.139.21.7355-7362では、高親和力でHSAと結合できる、樹状アルキル基で修飾されたDNA組み立てからなるDNAキューブ(DNA cube)が報告されている。
【0062】
タンパク質またはポリペプチド系の半減期延長因子について、活性化されたL-核酸と結合しやすいように、半減期延長因子に一つの特異性を有する部位(たとえば突然変異部位、Cys)を導入し、リンカーのカップリングに使用することがある。
核酸系の半減期延長因子について、その配列を組み立てのための同種類の核酸に組み込み、同時に合成することができる。
【0063】
薬物ライブラリー
本発明は、薬物ライブラリーであって、(a)薬物ユニット、および(b)n個の半減期延長ユニットを含み、
ここで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含み、
前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含み、
そして、前記薬物ユニットの一つの前記第一核酸エレメント部分と少なくとも一つの半減期延長ユニットの第二核酸エレメント部分は相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成することで、「薬物ユニット-半減期延長ユニット」複合体を構成することができ、
ここで、nは≧1の正整数であるものを提供する。
【0064】
本明細書で用いられるように、前記「相補」は前記相補によって対合すること、あるいは1個または複数個(たとえば2個、3個、4個、5個、6個)の補助相補核酸分子(すなわち、核酸F)の一本鎖相補配列を介して相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成することを含む。
【0065】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記補助相補核酸分子(すなわち、核酸F)は多量化補助分子(鎖)である。
本発明の一つの好適な実施形態において、前記薬部ユニットおよび半減期延長ユニットは前記多量化補助分子(鎖)の存在下で多量体を形成する。
典型的に、前記「相補」は直接相補によって対合することである。
【0066】
本発明の一つの好適なの実施形態において、前記「相補」は1個の補助相補核酸分子(すなわち、核酸F)の一本鎖相補配列を介して相補によって相補的塩基の対合構造を形成することである。
本発明のもう一つの好適な実施形態において、前記「相補」は2個の補助相補核酸分子(すなわち、核酸F)の一本鎖相補配列を介して相補によって相補的塩基の対合構造を形成することである(図2に示す)。
【0067】
本発明のライブラリーは少なくとも1種類の薬物ユニットおよび少なくとも1種類の半減期延長ユニットを含有し、前記薬物ユニットおよび半減期延長ユニットは組み立てによって薬物を形成しており、好適な薬物は上記式Iの構造を有する。
本発明のもう一つの好適な実施形態において、本発明のライブラリーは少なくとも1種類の薬物ユニットおよび少なくとも1種類(たとえば2種類、3種類、4種類)の半減期延長ユニットを含有する。
【0068】
典型的に、前記薬物ユニットは上記式IIの構造を有する。
典型的に、前記半減期延長ユニットは上記式IIIの構造を有する。
【0069】
本発明の薬物ユニットおよび半減期延長ユニットは特定の構造を有するため、快速に薬物に組み立てることができるのみならず、形成した薬物は予想外の延長した半減期を有し(体内における安定性が顕著に増加し)、長時間に体内に存在して活性を維持し、すぐに分解されることがない。
【0070】
たとえば、癌(またはほかの代謝疾患)の治療において、複数の標的および複数の経路に関わることが多く、そして患者はそれぞれ病因も異なり、体質、年齢も異なり、そして一人の患者に腫瘍の異質性または疾患の異なるサブタイプが存在することもあり、薬物動態学および代謝経路も異なることが多いため、複数の標的に対する半減期が異なる薬物を使用する必要がある場合が多い。個別化医療または精密医療技術の発展につれ、本分野では、快速に製造することができ、低コストで、標的性がよく、安定性が良く、半減期が制御(調節)可能なタンパク質薬物(たとえば多重特異性抗体)が切望されるようになってきた。本発明のライブラリーはこのような需要に満足する。
【0071】
もちろん、本発明の薬物ライブラリーは本発明の上記薬物ユニットおよび半減期延長ユニットを含有するか、主に含有するか、全部含有するが、当該薬物ライブラリーはさらにほかの治療剤、特にほかのタンパク質薬物を含有し、代表的な例は、抗体、化合物、融合タンパク質を含むが、これらに限定されない。たとえば、本発明のライブラリーは、余分に一つまたは複数の治療作用を有する通常の抗体、あるいは薬物の半減期を延長させる通常の薬物、あるいは通常の代謝調節剤を含有してもよい。
【0072】
もちろん、本発明のライブラリーにおける半減期延長ユニットの数は限定されないが、≧2の任意の正整数nでもよい。たとえば、nは3-100の任意の正整数で、好ましくは3-50、より好ましくは5-20、最も好ましくは5-8である。
また、本発明において、半減期延長ユニットにおける抗体エレメントが特に限定されず、代表的な例は、一本鎖抗体、ナノ抗体、Fab、モノクローナル抗体、またはその組み合わせからなる群から選ばれる。
【0073】
本発明のライブラリーには、様々な由来のタンパク質、ポリペプチドで薬物ユニットを製造することができる。
様々な由来の抗体で半減期延長ユニットを製造することができる。本発明の薬物ライブラリーの一つの突出した特徴は、原核系(たとえば大腸菌)または真核系(たとえば酵母、CHO細胞)によって発現される抗体断片を使用することで、大幅に生産コストを低下させることができることである。
【0074】
典型的に、使用時、必要により(たとえば、ある個体の病状および診断結果、タンパク質薬物の種類、投与手段、薬物動態学を含む治療される対象の疾患の治療に必要なタンパク質薬物の情報)、相応する薬物ユニットおよび半減期延長ユニットを選択し(種類および数を含む)、簡易に核酸相補フレームワークによって薬物の組み立てを完成させることができる。たとえば、応用時、患者の疾患の標的の状況、代謝状況によって、相応的に半減期延長ユニットの数または比率(たとえば2種類、3種類、4種類、または4種類以上)を決めた後、組み立てる。
【0075】
薬物を製造する場合、ライブラリーから相応する直接または間接的に相互に対合してカップリングすることができる薬物ユニットおよび半減期延長ユニットを選択し、そして必要な抗体比率で混合した後、1分間内で組み立ての過程を完成させることができる。
本発明のライブラリーにおいて、薬物ユニットの核酸エレメントおよび半減期延長ユニットの核酸エレメントは配列の設計によって二量体、三量体、四量体などの多量体のフレームワークにすることにより、従来の薬物半減期の設計・製造技術では実現しにくい、一つの薬物分子が3個、ひいては4個の半減期延長ユニットを持つ多量体の製造を完成することができる。
一旦多量体タンパク質薬物に組み立てると、治療の目的によって、相応する個体に使用することができる。
【0076】
L-核酸
L-核酸とは、自然界に存在するD-核酸に対し、鏡像的な存在で、L-DNAとL-RNAに分かれる。左旋(キラル中心)は主に核酸のデオキシリボースまたはリボースの部分に存在し、鏡像的に回転する。そのため、L-核酸は血漿のあらゆる所に存在するヌクレアーゼ(たとえばエキソリボヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ)によって分解される。
【0077】
本発明の半減期が延長した薬物
本発明の半減期が延長した薬物とは、薬物ユニット、およびn種類の半減期延長ユニットが核酸の相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成してなる半減期が延長した薬物で、ここで、nは≧1の正整数で、ここで、前記薬物ユニットは薬物エレメント部分および前記薬物エレメント部分と連結した第一核酸エレメント部分を含み、前記半減期延長ユニットは半減期延長エレメント部分および前記半減期延長エレメント部分と連結した第二核酸エレメント部分を含み、かつ一つの前記薬物ユニット量体の前記核酸エレメント部分は少なくとも一つの半減期延長ユニットの核酸エレメント部分と相補によって相補的塩基の対合構造(たとえば二本鎖対合構造)を形成している。
【0078】
もう一つの好適な例において、前記核酸エレメント部分は、耐ヌクレアーゼ分解性のものである。
もう一つの好適な例において、前記の核酸エレメント部分は、L-核酸、ペプチド核酸、ロックド核酸、チオ修飾核酸、2'-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0079】
本発明の薬物は、たとえば式IIで表される薬物ユニットおよび式IIIで表される半減期延長ユニットを組み立てることによって形成することができる。
典型的に、多量体の薬物とは一つの薬物ユニットと複数の半減期延長ユニットを組み立ててなる、たとえば二、三、四、五または六量体である。
【0080】
一つの好適な例において、本発明の薬物はL-核酸を使用して連結したものである。本発明の研究では、核酸は快速の特異的対合が可能な二本鎖分子であるため、半減期延長エレメント部分(たとえばHSA、一本鎖抗体、ナノ抗体、Fabなど)を核酸の一本鎖とカップリングさせ、薬物エレメント部分を核酸の一本鎖とカップリングさせると、核酸配列の設計により、二つまたはそれ以上の核酸の一本鎖が快速に対合するようにさせることで、薬物ユニットが一つまたは複数の半減期延長ユニットと快速に組み立て、半減期が延長した薬物の製造を完成させることができることが示された。
【0081】
本発明において、薬物の半減期を延長させる効果を実現するには、特定の構造の薬物ユニットおよび半減期延長ユニットを使用する必要がある。好適な例において、D-核酸(たとえばD-DNA、D-RNAなど)の代わりにL-核酸(たとえばL-DNA、L-RNAなど)を使用する形態により、顕著に薬物の半減期を向上させることができる。一つの原因は、L-核酸は人体に存在するエキソリボヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼなどによって分解されないため、L-核酸の自己組織化による薬物は体内で非常に安定である。
【0082】
製造方法
1.L-核酸鎖フレームワークの設計と製造
本発明によれば、L-核酸鎖フレームワークは2本およびそれ以上のL-核酸一本鎖が塩基対合によって形成する。各L-核酸一本鎖の5'または3'末端はいずれも後の修飾に供する基(たとえばNH2など)活性化させた後、リンカー(たとえばSMCC、SM(PEG)、SPDPなど)の一方の末端でL-核酸一本鎖における活性化基とカップリングさせる。リンカーを持つL-核酸は必要なL-核酸鎖フレームワークに組み立てることができる。リンカーを持つL-核酸がフレームワークに自己組織化することが可能と確認された後、リンカーを持つL-核酸一本鎖をそれぞれ抗体と連結させて後の組み立てを行う。
【0083】
本発明のL-核酸フレームワークは基本的に以下のような工程によって製造することができる。
1.1 快速に自己組織化可能なL-核酸一本鎖の設計
必要な半減期向上モジュールの数N(たとえば3個の半減期向上モジュール)を決め、半減期向上モジュールの数Nによって必要なL-核酸一本鎖の数M(M≧N+1)を決定し、相応する数のL-核酸一本鎖配列を設計し、塩基対合数を増減することによって目的核酸フレームワークの安定性を調整し、核酸鎖間の非特異的対合の可能性を減少させる。
【0084】
本発明の一つの好適な実施形態によれば、一つの四量体L-核酸フレームワーク(M=4)を設計するために、4本の一定の規則によって対合するL-核酸(図2に示す)を設計する。ここで、任意の1本のL-核酸一本鎖はほかの2本のL-核酸一本鎖と特異性相補的対合するが、4本目と対合しない。そして、特異性相補的対合のギブズエネルギー変化量ΔGの絶対値は非特異性対合よりも遥かに大きく、たとえば当該好適な実施形態において、各アームの特異性相補的対合のギブズエネルギー変化量ΔGの絶対値は約26キロカロリー/モル(kcal/mol)で、一方、非特異性対合はいずれも7キロカロリー/モル(kcal/mol)よりも小さく、これは四量体の組み立て方は非特異的な2つ同士の対合よりも生じやすく、四量体の形態は反応系で最も安定であることを示す。四量体のL-核酸フレームワークは1-3個の半減期向上因子を連結することができる。
【0085】
1.2 L-DNAまたはL-RNAの活性化
L-核酸の活性化はその5'末端または3'末端の活性基修飾および後のリンカーのカップリングを含む。活性基修飾は核酸合成会社によってオーダーメードで完成されてもよい。リンカーは通常二重機能基を有し、すなわち、一方の末端は核酸の活性基にカップリングすることができ、もう一方の末端は抗体における特異性部位(たとえばSH)に連結することができる。
【0086】
本発明の一つの好適な実施形態によれば、フレームワークになるすべてのL-核酸は5'末端にNH2修飾を添加した後、リンカー、すなわち、二重特異性異種官能基架橋試薬SMCC(4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸 N-スクシン特異ミジルナトリウム塩)でアミド結合を介して核酸におけるNH2にカップリングさせる。この時、リンカーのもう一方の末端のマレイミド基は遊離状態で、後の抗体におけるメルカプト基(SH)のカップリングに使用することができ、これでL-核酸の活性化が完了する。
【0087】
2.抗体-L-核酸複合体の製造方法
まず、L-核酸の5'または3'末端をNH2で修飾し、さらにリンカーによって、以下のいくつかの主な製造方法でもよいが、ここで、快速にL-核酸の一方の末端のNH2基にカップリングするように、リンカーの一方の末端の官能基はNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)またはSulfo-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム)である。二重特異性官能基を含むリンカーはいずれもまずL-核酸のNH2と反応し、次に抗体におけるメルカプト基を還元した後、もう一方の末端の基がさらにメルカプト基と反応して安定した化学結合を形成する。
【0088】
2.1 マレイミド(Maleimide)。リンカーの抗体におけるメルカプト基とカップリングするための基はマレイミドである。マレイミドは快速に抗体における遊離のメルカプト基と反応してスルフィド結合を形成する。通常のリンカーは、SMCC(4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸 N-スクシンイミジル)、SM(PEG)(ポリエチレングリコールで修飾された4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸 N-スクシンイミジル)などがある。
【0089】
2.2 ハロアセチル基(Haloacetyl)。リンカーの抗体におけるメルカプト基とカップリングするための基はハロアセチル基、たとえばヨードアセチル基、ブロモアセチル基である。ハロゲンイオンは抗体におけるメルカプト基と求核作用によって置換してスルフィド結合を形成することができる。通常のリンカーは、SBAP(N-マレイミドメチル[4-ブロモアセチル]アミノベンゾエート)、SIAB(N-マレイミドメチル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾエート)などがある。
【0090】
2.3 チオピリジン(Pyridyldithiol)。リンカーの抗体におけるメルカプト基とカップリングするための基はチオピリジンである。チオピリジンは遊離のメルカプト基と反応してジスルフィド結合を形成することができる。通常のリンカーは、SPDP(3-(2-ピリジンジチオ)プロピオン酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)などがある。
【0091】
薬物組成物
さらに、本発明は組成物を提供する。好適な例において、前記組成物は薬物組成物で、上記の抗体またはその活性断片あるいはその融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含有する。通常、これらの物質を無毒で不活性で薬学的に許容される水系担体で配合し、pH値は配合される物質の性質および治療しようとする疾患にもよるが、pH値は通常5~8程度、好ましくは6~8程度である。配合された薬物組成物は通常の経路で投与することができ、経口投与、気道、腫瘍内、腹膜内、静脈内、あるいは局部投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明の薬物組成物はそのまま治療(たとえば抗腫瘍治療)に使用することができるため、薬物の半減期の延長、またほかの治療剤の併用に有用である。
本発明の薬物組成物は、安全有効量(たとえば0.001~99wt%、好ましくは0.01~90wt%、より好ましくは0.1~80wt%)の本発明の上記のモノクローナル抗体(またはその複合体)と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む。このような担体は、食塩水、緩衝液、ブドウ糖、水、グリセリン、エタノール、およびこれらの組み合せを含むが、これらに限定されない。薬物の製剤は投与形態に相応する。本発明の薬物組成物は、注射剤としてもよく、たとえば生理食塩水またはブドウ糖およびほかの助剤を含有する水溶液で通常の方法によって製造することができる。薬物組成物は、注射剤、溶液の場合、無菌条件で製造する。活性成分の投与量は治療有効量、たとえば毎日約1μg/kg体重~約10mg/kg体重である。また、本発明のポリペプチドはほかの治療剤と併用することが出来る。
【0093】
薬物組成物の使用時、安全有効量の免疫抱合体を哺乳動物に施用するが、その安全有効量は、通常、少なくとも約10μg/kg体重で、かつ多くの場合、約50mg/kg体重未満で、好ましくは当該投与量が約10μg/kg体重~約1mg/kg体重である。勿論、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内である。
【0094】
本発明の主な利点は以下の通りである。
(1)本発明の半減期延長モジュールは、一分間内でL-核酸鎖を介して目的タンパク質との組み立てを完成させることができる。
(2)本発明の半減期向上モジュールにおける半減期延長因子は改造の余地が幅広く、HSAまたは任意の形態のHSA結合タンパク質、小分子およびポリペプチド(たとえばHSA一本鎖抗体、ナノ抗体、Fab)を選択することができる。
(3)本発明の半減期向上モジュールは、単独で保存して使用に備え、そして簡単な核酸の対合・組み立てによって各タンパク質またはポリペプチド薬物をカップリングすることができる。
(4)本発明の半減期延長モジュールは、必要によって弾力的に異なる数の半減期延長モジュールを含有する長半減期薬物を製造することで、弾力的に薬物動態学の性質を調整することができる。
(5)本発明の半減期延長モジュールは、その中の半減期延長因子がいずれも低コストで、製造しやすいタンパク質またはポリペプチドで、たとえば、大腸菌内において発現できる抗HSAナノ抗体、ヒト血液において濃度が50 g/Lと高いHSAタンパク質などであるため、当該モジュールに基づいて製造される長時間作用薬物は製造が簡単で、汎用性が高く、コストが低いといった利点がある。
(6)本発明は、弾力的に薬物をFcRn標的因子と連結する製造方法、およびFcRnを介する薬物回収経路による薬物の動物体内における半減期の延長におけるその使用を提供する。
【0095】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に断らない限り、%と部は、重量で計算された。本発明に係る実験材料は、特に説明しない限り、いずれも市販品として得られた。
【0096】
実施例1 四量体DNA構造のフレームワークの設計
4本の四角形の形状で対合するL-核酸(図2に示す)を設計した。ここで、任意の1本のL-核酸一本鎖はほかの2本のL-核酸一本鎖と特異性相補的対合するが、4本目と対合しない。そして、特異性相補的対合のギブズエネルギー変化量ΔGの絶対値は非特異性対合よりも遥かに大きく、各アームの特異性相補的対合のギブズエネルギー変化量ΔGの絶対値は25キロカロリー/モル(kcal/mol)よりも大きく、一方、非特異性対合はいずれも7キロカロリー/モル(kcal/mol)よりも小さく、これは四量体の組み立て方は非特異的な2つ同士の対合よりも生じやすく、四量体の形態は反応系で最も安定であることを示す。
【0097】
以上の原則に沿って設計された4本のL-DNA一本鎖の配列は以下の通りである(5'から3')。
鎖1(L-DNA1):配列番号1
5'-AAGAGGACGCAATCCTGAGCACGAGGTCT-3'
鎖2(L-DNA2):配列番号2
5'-AACTGCTGCCATAGTGGATTGCGTCCTCT-3'
鎖3(L-DNA3):配列番号3
5'-AATGAGTGCATTCGGACTATGGCAGCAGT-3'
鎖4(L-DNA4):配列番号4
5'-AAGACCTCGTGCTCACCGAATGCACTCAT-3'
【0098】
SMCCのNHSにカップリングするように、5'末端にNH2基で修飾してある。任意の一本鎖の塩基配列はそれぞれほかの2本の鎖と相補的に対合し、各部分の対合のギブズエネルギー変化量ΔGは約-34キロカロリー/モル(kcal/mol)である。
【0099】
実施例2 四量体DNAフレームワークの合成と検証
生物技術サービス会社(たとえばChemgene Inc.、Biosyn Inc.などの会社)によって5'末端がNH2で修飾されたL-DNA一本鎖が)合成されたが、4本の一本鎖の配列は実施例1に示す通りである。
【0100】
リン酸緩衝液(50 mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH 7.0)でL-DNA一本鎖を溶解させ、最終濃度が200 μMの母液に調製した。ジメチルスルホキシド(DMSO)でSMCC粉末を溶解させ、新しく250 mMのSMCC母液を調製した。L-DNA一本鎖母液に10~50倍モル量のSMCC母液を入れ、すぐに混合した後、室温で30min~2h反応させた。反応完了後、反応液の10%体積の1M Tris-HCl(pH 7.0)を入れ、混合後、室温で20分間インキュベートし、過剰量のSMCCが反応し続けるのを止めた。インキュベート終了後、反応液の2倍体積の100%無水エタノールを入れ、均一に混合した後、-20度の冷蔵庫に25分間置き、L-DNAを十分に沈殿させた。遠心(12000rpm、10min)で沈殿を取り、1mLの70%エタノールで洗浄し、12000rpmで1min遠心して上清を除去し、繰り返して5回洗浄し、過剰量のSMCCを十分に除去した。残った白色沈殿を空气中で5~10min自然乾燥した後、リン酸緩衝液で再懸濁、溶解させ、SMCC-L-DNA複合体(すなわちSMCC-L-DNA一本鎖)を得た。
【0101】
各SMCC-L-DNA一本鎖の濃度を測定した。適量の4本の反応に供するSMCC-L-DNA一本鎖を取って40度で5 min予備加熱した後、40度の条件で等モル量の4本のSMCC-L-DNA一本鎖を混合し、1 minインキュベートした。0.25 μlのSMCC-L-DNA一本鎖および反応産物を取って3%アガロースゲル電気泳動で分析した。
【0102】
結果は図3に示すよう、SMCC-L-DNA一本鎖の大きさは約25bp程度で、混合後形成した主なバンドは100bp程度で、これは4本の異なるSMCC-L-DNA一本鎖が四量体フレームワークになったことを示した。
【0103】
実施例3 半減期延長因子-抗HSAナノ抗体突然変異体の製造
抗HSAナノ抗体のカルボキシ末端にシステイン突然変異を導入した。ナノ抗体にジスルフィド結合が存在するが、その分子量が小さくて構造が以上に安定しているため、大腸菌の細胞質において発現することができる。
抗HSAナノ抗体の遺伝子配列を大腸菌に適するコドンに最適化した後、pET21bプラスミドにサブクローニングした。
【0104】
抗HSAナノ抗体のアミノ酸配列は配列番号5である。精製しやすいように、ナノ抗体のN末端にいずれもツインStrepタグを添加した。
配列番号5、抗HSAナノ抗体突然変異体のアミノ酸配列:
SAWSHPQFEKGGGSGGGSGGSAWSHPQFEKENLYFQSEVQLVESGGGLVQPGNSLRLSCAASGFTFSSFGMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSGSDTLYADSVKG RFTISRDNAKTTLYLQMNSLRPEDTAVYYCTIGGSLSRSSQGTLVTVSSGSC
【0105】
1 μlの構築された発現ベクターを取ってそれぞれ大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、形質転換されたBL21(DE3)の単一の集落を取ってLB培地(100 μg/mL アンピシリン含有)に接種し、37度でOD600=0.7になるまで培養し、最終濃度が1mMのIPTGを入れて発現を誘導し、37度で続いて3~4時間培養した。遠心で発現できた菌体を収集し、リン酸緩衝液(50 mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH 7.0)に再懸濁させ、プロテアーゼ阻害剤混合物(cocktail)(Sigma)(溶液に一錠のSIGMAFAST(商標)プロテアーゼ阻害剤錠剤を入れて十分に溶解させたもの)を入れ、超音波で破砕させた 。DNaseI加水分解酵素を入れて氷の上で1時間インキュベートした。インキュベート終了後、菌液を17000rpmで20分間遠心して上清を収集した。Strep親和カラムによって上清におけるナノ抗体を精製し、上清に0.25 ml/minの速度でカラムを通させた後、大量のTris緩衝液(50 mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH 7.4)で1 ml/minの流速で不純物のタンパク質が流れなくなるまで(AKTAタンパク質クロマトグラフィーシステムにおける紫外吸収から)カラムを洗浄し、Strep-Taction溶離緩衝液(50 mM Tris-HCl、150mM NaCl、2.5 mM デチオビオチン、pH 7.4)勾配でカラムに結合したナノ抗体を溶離させた。
結果:高純度の抗HSAナノ抗体突然変異体を得た。
【0106】
実施例4 ナノ抗体-L-DNAのカップリングと精製
精製後の一本鎖抗体を10~50倍モル比の過剰量の還元剤(たとえばTCEP、DTT、メルカプトエタノールなど)で室温で30minインキュベートした。インキュベート終了後、PD-10脱塩カラムで快速に反応系における還元剤を除去し、同時に緩衝液をリン酸緩衝液(50 mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH 7.0)に置換した。一本鎖抗体の濃度を測定した後、1~4倍モル比の過剰量のSMCC-L-DNA一本鎖(実施例2で製造された)を入れ、均一に混合した後、室温で1h反応させた。
【0107】
Strep親和カラムによって未反応および過剰のSMCC-L-DNA一本鎖を除去し、ナノ抗体およびナノ抗体-L-DNA混合物を収集した。その緩衝液をアニオン交換カラムの仕込み緩衝液に置換した。
【0108】
DNAなどの核酸は負の電荷を持つため、アニオン交換カラム(HiTrap Q HPカラム)でさらにナノ抗体-L-DNAを単離・精製し、未反応のナノ抗体を除去した。単離の過程は勾配溶離で実現し、仕込み緩衝液は50 mM Tris-HCl、pH8.5で、溶離緩衝液は50 mM Tris-HCl、1 M NaCl、pH 8.5で、0-100%の溶離緩衝液で勾配溶離を行い、未反応のナノ抗体およびナノ抗体-L-DNAは順にピークが現れた(図5、レーンD10)。ナノ抗体-L-DNAを収集し、濃縮後、PD-10脱塩カラムで緩衝液を50 mM NaH2PO4、150 mM NaCl、pH 7.4に置換した。
【0109】
実施例5 半減期向上モジュールと目的タンパク質薬物の自己組織化
以下、血友病Aを治療するための長時間作用因子VIII(FVIII)薬物の設計を例とし、半減期向上モジュールと目的タンパク質薬物の自己組織化の過程を説明する。本実施例は因子VIIIを目的タンパク質薬物とし、前記因子FVIIIはヒト血から抽出される血由来の因子VIIIでも、遺伝子工学の手段によって得られる組み換え因子VIIIでもよい。
【0110】
因子VIIIを10-50倍モル比の過剰量の還元剤(たとえばTCEP、DTT、メルカプトエタノールなど)と混合した後、室温で30minインキュベートした。インキュベート終了後、PD-10脱塩カラムで快速に反応系における還元剤を除去し、同時に緩衝液をリン酸緩衝液(50 mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH 7.0)に置換した。因子VIIIの濃度を測定した後、1~4倍モル比の過剰量のSMCC-L-DNA一本鎖(実施例2で製造された)を入れ、均一に混合した後、室温で1h反応させた。反応後の産物は、薬物ユニット:因子VIII-L-DNAである。図6aに示すように、反応後の薬物ユニットのバンドが上に移動した。
【0111】
それぞれ抗HSAナノ抗体-L-DNAおよび因子VIII-L-DNAの濃度を測定した。適量の上記成分を取って40度で5 min予備加熱した後、40度の条件において1:1のモル比でHSA名と抗体-L-DNAと因子VIII-L-DNAを混合し、1minインキュベートした。これで、半減期向上モジュールと因子VIII活性部分を含むFVIII-HSAnb、すなわち、長時間作用因子VIIIの組み立てが完成した。FVIII-HSAnbの組み立て後の構造概略図は図6bに示す。図6aに示すように、反応後の薬物ユニット(因子VIII-L-DNA)、長時間作用因子VIIIのバンドが上に移動した。
【0112】
APTTキット(Sun Biotechnology)によって等量のFVIIIタンパク質を含有するサンプルに対して活性測定を行った。結果は図7に示すように、FVIII-L-DNA1は活性が未反応の薬物ユニットに近かったが、長時間作用因子VIIIは活性が顕著に向上した(~50%)。
【0113】
6-8週齢のFVIII欠失型マウスでFVIII-HSAnbの体内における半減期延長効果を検証した。8匹のマウスをランダムに実験群と対照群に分け、それぞれ5 IU/匹の投与量でFVIII-HSAnbおよびFVIIIを静脈注射した。採血の時点は、投与前日、投与後5 min、30 h、48 h、60 h、72 hおよび96 hであった。採血後、すぐに血漿を分離し、-80度の冷蔵庫に凍結保存した。すべての血漿サンプルを得た後、APTT方法によってFVIIIの活性を検出した。
【0114】
計算から、FVIIIおよびFVIII-HSAnbは半減期がそれぞ5.6 hおよび22.7 hであった(図4に示す)。
そのため、本発明を利用して設計されたFVIII-HSAnbは普通のFVIIIよりも半減期を4倍程度延長させることができる。
【0115】
検討
IgG型モノクローナル抗体は免疫グロブリン系抗体のうち、半減期が最も長いもので、21日に達する。そんため、IgG型抗体は現在の治療性抗体の主なタイプである。
【0116】
IgG型モノクローナル抗体の長半減期および高血清濃度は、新生児受容体(FcRn)と結合してそれを介する代謝調節に入ることによって実現する。IgGのFc部分はFcRnと特異的なpH依存性結合ができる。IgG型モノクローナル抗体が血液における造血細胞または血管内皮細胞によって飲作用で取り込まれると、エンドソーム(endosome)に入ってその中のFcRnと結合することで、回収経路に入り、分解経路に入ってリソソーム(lysosome)によって分解されることが避けられることで、細胞表面に循環し、そして中性の生理条件において(pH 7.4)FcRnと離解し、血液に放出される。
【0117】
アルブミンはもう一つのFcRnと結合して半減期を延長させるタンパク質で、その半減期は19日に達する。ヒト血清アルブミンはI-IVの4つのドメインに分かれ、そのうち、ドメインIIIはFcRnと結合する部分で、ドメインIは一つの遊離のシステイン残基(Cysteine 34、Cys 34)を含有する。
長い半減期が求められるタンパク質またはポリペプチド系薬物、たとえば、サイトカイン薬物、血液凝固因子などには、FcとHSAなどのFcRn結合タンパク質が好適な選択である。
【0118】
FcまたはHSA融合タンパク質によって半減期を延長させる方法は目的のタンパク質またはポリペプチドと与Fc/HSAの融合部位に新たなエピトープができる。また、FcはC末端のみに、HSAは目的のタンパク質またはポリペプチドのN末端またはC末端のみに融合することができる。また、当該方法は天然のタンパク質またはポリペプチドに適しない。
【0119】
本発明では、初めて、化学分子またはリンカーを利用し、タンパク質またはポリペプチドをFcRn結合モジュール(HSAまたはHSA結合モジュールなど)と特異的に異種カップリングさせることにより、タンパク質薬物の半減期を延長させ、それらの薬物動態学の性質を向上させる化学的カップリング法が開発された。
【0120】
FcまたはHSA融合タンパク質と比べ、本発明の方法は弾力的なアプローチで、目的のタンパク質またはポリペプチドの様々な基(たとえばSH、NH2、非天然アミノ酸における活性基など)に対して部位特異的または非部位特異的修飾を行うことも、天然のタンパク質またはポリペプチドの修飾もできる。
また、本発明の方法では、新たなエピトープが導入されることはないか、基本的にない。
【0121】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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