(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】回転型ポテンショメータ
(51)【国際特許分類】
H01C 10/18 20060101AFI20241115BHJP
H01C 10/16 20060101ALI20241115BHJP
H01C 10/20 20060101ALI20241115BHJP
H01C 10/32 20060101ALI20241115BHJP
H01C 10/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01C10/18
H01C10/16 R
H01C10/20 A
H01C10/20 102
H01C10/32 D
H01C10/32 Z
H01C10/00 Q
(21)【出願番号】P 2023062542
(22)【出願日】2023-04-07
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000120489
【氏名又は名称】栄通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正二
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-190822(JP,A)
【文献】実開昭63-082901(JP,U)
【文献】実開昭51-017730(JP,U)
【文献】特開平11-111511(JP,A)
【文献】登録実用新案第3077940(JP,U)
【文献】特開平11-251117(JP,A)
【文献】実開昭58-72803(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 10/18
H01C 10/16
H01C 10/20
H01C 10/32
H01C 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の回転軸を中心に独立して回転する内シャフト及び外シャフトからなる二重シャフトと、
第1抵抗体、第1導体、第2抵抗体及び第2導体を有するエレメント基板と、
前記外シャフトに取り付けられるとともに、前記第1抵抗体及び前記第1導体に接触する第1摺動接点を有し、前記外シャフトの回転にしたがって前記第1摺動接点を前記第1抵抗体及び前記第1導体上で摺動させる第1移動子と、
前記内シャフトに取り付けられるとともに、前記第2抵抗体及び前記第2導体に接触する第2摺動接点を有し、前記内シャフトの回転にしたがって前記第2摺動接点を前記第2抵抗体及び前記第2導体上で摺動させる第2移動子と、
を備
え、
前記外シャフトは、当該外シャフトを中心軸方向に貫通する軸孔を有する中空のシャフトであり、
前記外シャフトの軸孔の一端及び他端に形成されたザグリ孔には、軸受が固定されており、
前記内シャフトは、前記外シャフトの軸孔に挿入されて、前記軸受に回転自在に支持されている
回転型ポテンショメータ。
【請求項2】
前記外シャフトの回転に負荷を与える第1負荷付与部材と、
前記内シャフトの回転に負荷を与える第2負荷付与部材と、
を備える請求項1に記載の回転型ポテンショメータ。
【請求項3】
前記第1抵抗体は、電気的出力の粗調整用抵抗体であり、
前記第1導体は、電気的出力の粗調整用導体であり、
前記第2抵抗体は、電気的出力の微調整用抵抗体であり、
前記第2導体は、電気的出力の微調整用導体であり、
前記粗調整用抵抗体から前記第1摺動接点及び前記粗調整用導体を介して取り出される電圧を入力電圧とし、前記入力電圧に所定の正電圧を加算した電圧と前記入力電圧に所定の負電圧を加算した電圧を出力電圧として生成する演算回路を備え、
前記演算回路が生成する前記出力電圧を前記微調整用抵抗体に印加してなる
請求項1に記載の回転型ポテンショメータ。
【請求項4】
前記演算回路を有する回路基板を備え、
前記演算回路に前記入力電圧を供給するための入力ラインと前記回路基板のGNDとの間に固定抵抗が挿入されている
請求項3に記載の回転型ポテンショメータ。
【請求項5】
前記内シャフトの回転角度範囲を制限するストッパ機構を備える
請求項1に記載の回転型ポテンショメータ。
【請求項6】
前記エレメント基板、前記第1移動子及び前記第2移動子を収納するケースと、
前記ケースに取り付けられる裏蓋と、を備え、
前記第2移動子は、前記内シャフトと一体に回転するブッシュを有し、
前記ストッパ機構は、前記裏蓋に設けられたストッパ用リブと、前記ブッシュに設けられたストッパ凸部とによって構成され、前記ストッパ凸部が前記ストッパ用リブに突き当たることにより、前記内シャフトの回転角度範囲を制限する
請求項5に記載の回転型ポテンショメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型ポテンショメータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトの回転角度の変位を電気的出力に変換する回転型ポテンショメータが知られている。回転型ポテンショメータでは、1つのシャフトの回転角度変位に対して1つの電気的出力、又は1つのシャフトの回転角度変位に対して複数の電気的出力が得られるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転型ポテンショメータにおいて、複数の電気的出力をそれぞれ独立した形で得ようとした場合は、複数のシャフト構造を有するポテンショメータが必要である。例えば、1つのシャフトが電気的出力の粗調整用に割り当てられ、もう1つのシャフトが電気的出力の微調整用に割り当てられたポテンショメータを考えた場合は、2つのポテンショメータを使って構成することになる。
【0005】
しかしながら、2つのポテンショメータを使って複数の独立した電気的出力を得る構成では、ポテンショメータ2個分の設置スペースが必要となる。また、特許文献1には、粗調整用の電気的出力と微調整用の電気的出力が得られるポテンショメータが記載されている。ただし、このポテンショメータは、直線摺動型ポテンショメータであり、回転型ポテンショメータには対応できない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、複数の独立した電気的出力を得ることができ、かつ、従来よりも狭いスペースに設置することができる回転型ポテンショメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転型ポテンショメータは、共通の回転軸を中心に独立して回転する内シャフト及び外シャフトからなる二重シャフトと、第1抵抗体、第1導体、第2抵抗体及び第2導体を有するエレメント基板と、外シャフトに取り付けられるとともに、第1抵抗体及び第1導体に接触する第1摺動接点を有し、外シャフトの回転にしたがって第1摺動接点を第1抵抗体及び第1導体上で摺動させる第1移動子と、内シャフトに取り付けられるとともに、第2抵抗体及び第2導体に接触する第2摺動接点を有し、内シャフトの回転にしたがって第2摺動接点を第2抵抗体及び第2導体上で摺動させる第2移動子と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の独立した電気的出力を得ることができ、かつ、従来よりも狭いスペースに設置することができる回転型ポテンショメータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの上面図である。
【
図3】
図2に示す回転型ポテンショメータのIII-III断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの分解斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータが備える二重シャフトユニットの上面図である。
【
図6】
図5に示す二重シャフトユニットのVI-VI断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータが備える二重シャフトユニットの分解斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、裏蓋を取り外した状態を示す上面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、裏蓋、第1移動子、第2移動子、エレメント基板を取り外した状態を示す上面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの電気的接続と処理関係を示すブロック図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの電気的出力特性の一例を示す図(その1)である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの電気的出力特性の一例を示す図(その2)である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータの縦断面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、ケースから裏蓋を取り外した状態を斜め上方から見た図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、ケースから裏蓋を取り外した状態を斜め下方から見た図である。
【
図16】内シャフトをCWW方向に回転させたときにストッパ機構が機能している状態を説明する図(その1)である。
【
図17】内シャフトをCWW方向に回転させたときにストッパ機構が機能している状態を説明する図(その2)である。
【
図18】内シャフトをCW方向に回転させたときにストッパ機構が機能している状態を説明する図(その1)である。
【
図19】内シャフトをCW方向に回転させたときにストッパ機構が機能している状態を説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの外観を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの上面図である。
図3は、
図2に示す回転型ポテンショメータのIII-III断面図である。なお、各図において、第1端子とエレメント基板、第2端子と回路基板、第3端子とエレメント基板を接続する各リード線、及び、エレメント基板と回路基板を接続するリード線は省略してある。この点は他の図についても同様である。
【0012】
図1~
図3に示すように、回転型ポテンショメータ10は、内シャフト11及び外シャフト12からなる二重シャフト13と、ケース14と、裏蓋15と、エレメント基板16と、第1移動子17と、第2移動子18と、を備えている。回転型ポテンショメータ10は、機械的回転角度が360度以下のポテンショメータ、すなわち一回転型ポテンショメータである。
【0013】
内シャフト11及び外シャフト12は、共通の回転軸19を中心にそれぞれ独立して回転する。外シャフト12は、外シャフト12を中心軸方向に貫通する軸孔を有する中空のシャフトである。内シャフト11は、外シャフト12の軸孔に挿入されている。外シャフト12の軸孔の内径寸法は、内シャフト11の外径寸法よりも大きく、これらの寸法差に応じて内シャフト11の外周面と外シャフト12の内周面の間に隙間が設けられている。
【0014】
内シャフト11は、それぞれ焼結軸受からなる軸受21,22によって回転自在に支持されている。軸受21は、外シャフト12の長さ方向の一端部に取り付けられ、軸受22は、外シャフト12の長さ方向の他端部に取り付けられている。また、軸受21は、外シャフト12の軸孔の一端に形成されたザグリ孔に圧入又は接着により固定され、軸受22は、外シャフト12の軸孔の他端に形成されたザグリ孔に圧入又は接着により固定されている。
【0015】
なお、本実施形態においては、内シャフト11を支持する軸受21,22に焼結軸受を使用しているが、例えば、焼結軸受に代えて玉軸受などを使用してもよく、軸受のタイプは限定されない。
【0016】
外シャフト12は、それぞれ玉軸受からなる軸受23,24によって回転自在に支持されている。軸受23,24は、外シャフト12の長さ方向に位置をずらしてケース14に取り付けられている。ケース14の中心部には貫通孔25が設けられ、外シャフト12は、この貫通孔25に挿入されている。軸受23は、貫通孔25の長さ方向(深さ方向)の一端部に取り付けられ、軸受24は、貫通孔25の長さ方向の他端部に取り付けられている。また、軸受23は、貫通孔25の一端に形成されたザグリ孔に圧入又は接着により固定され、軸受24は、貫通孔25の他端に形成されたザグリ孔に圧入又は接着により固定されている。
【0017】
なお、本実施形態においては、外シャフト12を支持する軸受23,24に玉軸受を使用しているが、例えば、玉軸受に代えて焼結軸受などを使用してもよく、軸受のタイプは限定されない。
【0018】
ケース14は、略円筒状に形成されている。ケース14の外周面には、第1端子26と第2端子27と第3端子28が取り付けられている。第1端子26、第2端子27及び第3端子28は、ケース14の円周方向に所定の間隔をあけて配置されている。また、第1端子26、第2端子27及び第3端子28は、それぞれケース14の外周面に圧入によって固定されている。第1端子26は、マイナスの電源電圧(以下、「-電源電圧」と記す)として0Vを供給するための端子であり、第3端子28は、プラスの電源電圧(以下、「+電源電圧」と記す)として+Vを供給するための端子である。また、第2端子27は、回転型ポテンショメータ10の電気的出力を取り出すための端子である。
【0019】
裏蓋15は、
図2に示すように円形に形成されている。裏蓋15は、ケース14の開口部に、この開口部を塞ぐように取り付けられている。裏蓋15は、複数(本形態例では4つ)の裏蓋固定ネジ29によりケース14に固定されている。ケース14の外周面には、各々の裏蓋固定ネジ29の取付位置に対応してネジ挿入孔14a(
図4)が設けられ、裏蓋15には、各々の裏蓋固定ネジ29の取付位置に対応してネジ孔15a(
図4)が設けられている。そして、各々の裏蓋固定ネジ29は、ケース14のネジ挿入孔14aを通して裏蓋15のネジ孔15aに噛み合っている。
【0020】
図3に示すように、ケース14にはOリング31が取り付けられ、裏蓋15にはOリング32が取り付けられている。Oリング31は、外シャフト12の回転に負荷を与える第1負荷付与部材の一例として設けられている。Oリング32は、内シャフト11の回転に負荷を付与する第2負荷付与部材の一例として設けられている。
【0021】
Oリング31は、ケース14の中央部に形成された周溝33に適度に圧縮した状態で取り付けられる。周溝33は、回転軸19と平行な方向において、軸受23と軸受24の間に形成されている。Oリング31の内周面は、外シャフト12の外周面に常に接触した状態に維持される。これにより、外シャフト12の回転は、Oリング31との摩擦による負荷を常に受けることになる。このため、外シャフト12は、Oリング31との摩擦による負荷以上の回転トルクが加わったときのみ回転することになる。また、外シャフト12が回転する場合は、外シャフト12の外周面がOリング31の内周面をスリップしながら回転することになるが、そのときに外シャフト12の回転を滑らかにするために、外シャフト12とOリング31との接触部分に適切なグリースを塗布しておくとよい。
【0022】
一方、Oリング32は、裏蓋15の中央部に形成された周溝34に適度に圧縮した状態で取り付けられる。Oリング32の内周面は、内シャフト11の外周面に常に接触した状態に維持される。これにより、内シャフト11の回転は、Oリング32との摩擦による負荷を常に受けることになる。このため、内シャフト11は、Oリング32との摩擦による負荷以上の回転トルクが加わったときのみ回転することになる。また、内シャフト11が回転する場合は、内シャフト11の外周面がOリング32の内周面をスリップしながら回転することになるが、そのときに内シャフト11の回転を滑らかにするために、内シャフト11とOリング32との接触部分に適切なグリースを塗布しておくとよい。
【0023】
図4は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの分解斜視図である。
図4に示すように、二重シャフト13は、第1移動子17及び第2移動子18と共に、二重シャフトユニット20を構成している。
【0024】
図5は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータが備える二重シャフトユニットの上面図であり、
図6は、
図5に示す二重シャフトユニットのVI-VI断面図である。また、
図7は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータが備える二重シャフトユニットの分解斜視図である。
【0025】
図5~
図7に示すように、第1移動子17は、樹脂製の第1ブッシュ41と、金属製の第1アーム42と、金属製の第1スライドレバー43と、を備えている。第1移動子17は、
図3に示すようにケース14に収納される。
【0026】
第1ブッシュ41は、外シャフト12の外周面に嵌合される円環状の部材である。第1ブッシュ41の中央部には貫通孔41aが形成されている。また、第1ブッシュ41には、接着剤充填用の凹部44と、回り止め用の凹溝45が形成されている。凹溝45は、第1ブッシュ41の円周方向の2箇所に設けられている。第1ブッシュ41は、第1ブッシュ41の貫通孔41aに外シャフト12を嵌合した状態で凹部44に接着剤35(
図3)を充填することにより、外シャフト12に固定される。これにより、第1ブッシュ41は、外シャフト12と一体に回転することになる。
【0027】
第1アーム42は、
図7に示すように、リング部421と、アーム部422とを一体に有する。リング部421は、第1ブッシュ41に嵌合される部分である。リング部421の内周部には回り止め用の凸部46が形成されている。凸部46は、リング部421の円周方向の2箇所に設けられている。凸部46は、第1ブッシュ41の凹溝45に嵌合される。アーム部422は、リング部421の接線方向に延びている。アーム部422には、2つのネジ孔47が設けられている。ネジ孔47は、第1アーム42に第1スライドレバー43をネジ止めによって固定するための孔である。
【0028】
第1アーム42は、第1ブッシュ41にリング部421を嵌合し、かつ、凹溝45に凸部46を嵌合した状態で、例えば接着により第1ブッシュ41に固定される。これにより、第1アーム42は、第1ブッシュ41と一体に回転することになる。
【0029】
第1スライドレバー43は、
図7に示すように、2つの第1摺動接点48,49を有する。第1スライドレバー43は、二股状に分かれた2つの舌片部を有し、一方の舌片部に第1摺動接点48が固定され、他方の舌片部に第1摺動接点49が固定されている。各々の第1摺動接点48,49は、第1スライドレバー43の舌片部の曲げによるバネ性により、それぞれに対応する第1抵抗体71及び第1導体72に適度な与圧で接触した状態に配置される。また、第1スライドレバー43には、2つのネジ挿入孔50が設けられている。第1スライドレバー43は、2つのスライドレバー固定ネジ51によって第1アーム42のアーム部422に固定される。各々のスライドレバー固定ネジ51は、第1スライドレバー43のネジ挿入孔50を通して第1アーム42のネジ孔47に螺合される。
【0030】
一方、第2移動子18は、樹脂製の第2ブッシュ52と、金属製の第2アーム53と、金属製の第2スライドレバー54と、を備えている。第2移動子18は、
図3に示すようにケース14に収納される。
【0031】
第2ブッシュ52は、内シャフト11の外周面に嵌合される円環状の部材である。第2ブッシュ52の中央部には貫通孔52aが形成されている。また、第2ブッシュ52には、接着剤充填用の凹部55と、回り止め用の凹溝56が形成されている。凹溝56は、第2ブッシュ52の円周方向の2箇所に設けられている。第2ブッシュ52は、第2ブッシュ52の貫通孔52aに内シャフト11を嵌合した状態で凹部55に接着剤36(
図3)を充填することにより、内シャフト11に固定される。これにより、第2ブッシュ52は、内シャフト11と一体に回転することになる。
【0032】
第2アーム53は、
図7に示すように、リング部531と、アーム部532と、折り曲げ部533とを一体に有する。リング部531の内周部には回り止め用の凸部57が形成されている。凸部57は、リング部531の円周方向の2箇所に設けられている。凸部57は、第2ブッシュ52の凹溝56に嵌合される。アーム部532は、リング部531の接線方向に延びている。折り曲げ部533は、アーム部532の長さ方向から見て略コ字形に曲げられている。折り曲げ部533の下端部には、2つのネジ孔58が設けられている。ネジ孔58は、第2アーム53に第2スライドレバー54をネジ止めによって固定するための孔である。
【0033】
第2アーム53は、第2ブッシュ52にリング部531を嵌合し、かつ、凹溝56に凸部57を嵌合した状態で、例えば接着により第2ブッシュ52に固定される。これにより、第2アーム53は、第2ブッシュ52と一体に回転することになる。
【0034】
第2スライドレバー54は、
図7に示すように、2つの第2摺動接点61,62を有する。第2スライドレバー54は、二股状に分かれた2つの舌片部を有し、一方の舌片部に第2摺動接点61が固定され、他方の舌片部に第2摺動接点62が固定されている。各々の第2摺動接点61,62は、第2スライドレバー54の舌片部の曲げによるバネ性により、それぞれに対応する第2抵抗体73及び第2導体74に適度な与圧で接触した状態に配置される。また、第2スライドレバー54には、2つのネジ挿入孔63が設けられている。第2スライドレバー54は、2つのスライドレバー固定ネジ64によって第2アーム53の折り曲げ部533に固定される。各々のスライドレバー固定ネジ64は、第2スライドレバー54のネジ挿入孔63を通して第2アーム53のネジ孔58に螺合される。
【0035】
また、
図7に示すように、内シャフト11の外周面には2つの溝11a,11bが形成され、外シャフト12の外周面にも2つの溝12a,12bが形成されている。2つの溝11a,11bは、内シャフト11の長さ方向に間隔をあけて形成され、2つの溝12a,12bは、外シャフト12の長さ方向に間隔をあけて形成されている。
【0036】
内シャフト11に設けられた2つの溝11a,11bのうち、一方の溝11aには止め輪65aが取り付けられ、他方の溝11bには止め輪65bが取り付けられる。止め輪65a,65bは、内シャフト11の中心軸方向で2つの軸受21,22を挟むように配置される。また、止め輪65aと軸受21の間には調整ワッシャ66aが挿入され、止め輪65bと軸受22の間には調整ワッシャ66bが挿入される。調整ワッシャ66a,66bは、内シャフト11の中心軸方向のガタツキを抑制するための部材である。
【0037】
一方、外シャフト12に設けられた2つの溝12a,12bのうち、一方の溝12aには止め輪67a(
図4)が取り付けられ、他方の溝12bには止め輪67b(
図4)が取り付けられる。止め輪67a,67bは、外シャフト12の中心軸方向で2つの軸受23,24を挟むように配置される。また、
図4に示すように、止め輪67aと軸受23の間には調整ワッシャ68aが挿入され、止め輪67bと軸受24の間には調整ワッシャ68bが挿入される。調整ワッシャ68a,68bは、外シャフト12の中心軸方向のガタツキを抑制するための部材である。
【0038】
図8は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、裏蓋を取り外した状態を示す上面図である。
図8に示すように、エレメント基板16は、絶縁性基材をベースに構成される円形の基板である。エレメント基板16は、印刷成形で形成されるコンダクティブプラスチックタイプの基板である。エレメント基板16は、
図3に示すようにケース14に収納される。エレメント基板16の中央部には、
図4に示すように、円形の孔16aが形成され、エレメント基板16の上面には、第1抵抗体71、第1導体72、第2抵抗体73及び第2導体74が形成されている。孔16aは、ケース14にエレメント基板16と二重シャフトユニット20を取り付ける場合に、二重シャフトユニット20との干渉を避けるための孔である。
【0039】
第1抵抗体71、第1導体72、第2抵抗体73及び第2導体74は、それぞれ円弧状(本発明形態例では、ほぼ円形)に形成されている。また、第1抵抗体71、第1導体72、第2抵抗体73及び第2導体74は、エレメント基板16の径方向に位置をずらして同心円状に形成されている。
【0040】
第2抵抗体73及び第2導体74は、第1抵抗体71及び第1導体72よりもエレメント基板16の外周側に配置されている。また、第2抵抗体73は、第2導体74よりもエレメント基板16の外周側に配置され、第1抵抗体71は、第1導体72よりもエレメント基板16の外周側に配置されている。
【0041】
エレメント基板16の円周方向において、第1抵抗体71の長さ方向の一端部には電極75が設けられ、第1抵抗体71の長さ方向の他端部には電極76が設けられ、第1導体72の長さ方向の中間部には電極77が設けられている。また、エレメント基板16の円周方向において、第2抵抗体73の長さ方向の一端部には電極78が設けられ、第2抵抗体73の長さ方向の他端部には電極79が設けられ、第2導体74の長さ方向の中間部には電極80が設けられている。各々の電極75,76,77,78,79,80には、図示しないリード線を取り付けるための孔(以下、「リード線取付孔」という。)が2つずつ隣り合わせに並んで設けられている。
【0042】
エレメント基板16は、ケース14内側の所定の位置に接着によって固定される。また、エレメント基板16をケース14に取り付ける場合は、それに先立って、第1端子26と電極75の間、第3端子28と電極76の間、電極77と回路基板81(
図9)の間、電極78と回路基板81の間、電極79と回路基板81の間、第2端子27と電極80の間を、それぞれ図示しないリード線で接続する。その際、ケース14に対するエレメント基板16の取り付けに支障が出ないように、エレメント基板16と接続するリード線は、ケース14に形成された配線溝14b(
図9)を通して配線される。
【0043】
また、エレメント基板16に対しては、図示しない導電性接着剤によりリード線が接続される。具体的には、まず、リード線の長さ方向の一端部で露出させた芯線を、エレメント基板16の裏側(第1抵抗体71等が形成されている面と反対側)から、いずれかの電極(例えば、電極75など)のリード線取付孔に通し、さらに隣り合うもう1つのリード線取付孔に通して、芯線の先端をエレメント基板16の裏側に戻す。その後、エレメント基板16の表側(第1抵抗体71等が形成されている側)でリード線取付孔から飛び出た芯線部分とリード線取付孔まわりの電極を、導電性接着剤によって接着固定する。これにより、エレメント基板16にリード線が接続される。
【0044】
また、回路基板81に対しては、はんだ付けによりリード線が接続される。具体的には、回路基板81上に設けられた所定のランド(図示せず)にリード線がはんだ付けによって接続される。また、第1端子26、第2端子27及び第3端子28の各端子に対しても、リード線がはんだ付けによって接続される。
【0045】
図9は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、裏蓋、第1移動子、第2移動子、エレメント基板を取り外した状態を示す上面図である。
図9に示すように、回路基板81は、上面視略扇状に形成されている。回路基板81は、ケース14内側のザグリ部分の所定位置に2つの回路基板固定ネジ82によって固定されている。また、回路基板81には演算素子83が実装されている。
【0046】
上記構成からなる回転型ポテンショメータ10において、外シャフト12を回転させると、外シャフト12と一体に第1移動子17が回転する。このとき、第1摺動接点48,49は、第1移動子17の回転にしたがってエレメント基板16の円周方向に移動する。また、第1摺動接点48は、外シャフト12及び第1移動子17の回転にしたがって第1抵抗体71上を摺動し、第1摺動接点49は、外シャフト12及び第1移動子17の回転にしたがって第1導体72上を摺動する。また、外シャフト12を回転させた場合、内シャフト11の回転は、Oリング32によって内シャフト11に付与される負荷によって抑制される。このため、外シャフト12を回転させても内シャフト11は回転しない。したがって、外シャフト12の回転角度の変位は、エレメント基板16の円周方向における第1摺動接点48,49の変位にのみ反映される。
【0047】
これに対し、内シャフト11を回転させると、内シャフト11と一体に第2移動子18が回転する。このとき、第2摺動接点61,62は、第2移動子18の回転にしたがってエレメント基板16の円周方向に移動する。また、第2摺動接点61は、内シャフト11及び第2移動子18の回転にしたがって第2抵抗体73上を摺動し、第2摺動接点62は、内シャフト11及び第2移動子18の回転にしたがって第2導体74上を摺動する。また、内シャフト11を回転させた場合、外シャフト12の回転は、Oリング31によって外シャフト12に付与される負荷によって抑制される。このため、内シャフト11を回転させても外シャフト12は回転しない。したがって、内シャフト11の回転角度の変位は、エレメント基板16の円周方向における第2摺動接点61,62の変位にのみ反映される。
【0048】
このように本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータ10においては、二重シャフト13を構成する内シャフト11と外シャフト12を、共通の回転軸19を中心に互いに独立して回転させることができる。また、外シャフト12に取り付けられる第1移動子17は、第1抵抗体71及び第1導体72に接触する第1摺動接点48,49を有し、内シャフト11に取り付けられる第2移動子18は、第2抵抗体73及び第2導体74に接触する第2摺動接点61,62を有する。
【0049】
このような接触式の回転型ポテンショメータ10は、外シャフト12、第1移動子17、第1抵抗体71及び第1導体72等を有する第1のポテンショメータと、内シャフト11、第2移動子18、第2抵抗体73及び第2導体74等を有する第2のポテンショメータとを備えた構成になる。すなわち、1つの回転型ポテンショメータ10に、2つのポテンショメータを組み込んだ構成になる。このため、2つの回転型ポテンショメータを使って、独立した電気的出力を得る場合に比べて、より狭いスペースに回転型ポテンショメータ10を設置することができる。また、第1のポテンショメータは、外シャフト12の回転角度の変位を、第1移動子17の移動に伴う抵抗値の変化により電気的信号(電圧)に変換して出力し、第2のポテンショメータは、内シャフト11の回転角度の変位を、第2移動子18の移動に伴う抵抗値の変化により電気的信号(電圧)に変換して出力する。このため、第1のポテンショメータと、第2のポテンショメータは、それぞれ独立した電気的出力を生成する。したがって、回転型ポテンショメータ10によれば、複数の独立した電気的出力を得ることができる。
【0050】
また、上述した第1のポテンショメータについては、電気的出力の粗調整用のポテンショメータとして機能させ、上述した第2のポテンショメータについては、電気的出力の微調整用のポテンショメータとして機能させることができる。その場合、回路基板81に実装された演算素子83は、回転型ポテンショメータ10全体としての電気的出力を生成する演算回路として機能する。以下、詳しく説明する。
【0051】
まず、外シャフトの動作と電気的出力の関係について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの電気的接続と処理関係を示すブロック図である。また、
図11は、本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータの電気的出力特性の一例を示す図である。なお、
図11は、粗調整用抵抗体の有効電気角が340°の場合を一例として示している。
【0052】
図10において、第1端子26には、-電源電圧(0V)が供給され、第3端子28には、+電源電圧(+V)が供給される。ここで、粗調整用抵抗体である第1抵抗体71の電極75は、図示しないリード線を介して第1端子26に接続され、第1抵抗体71の電極76は、図示しないリード線を介して第3端子28に接続されている。このため、第1抵抗体71の電極75には、-電源電圧(0V)が印加され、第1抵抗体71の電極76には、+電源電圧(+V)が印加される。
【0053】
また、粗調整用導体である第1導体72は、電気的に極めて抵抗が小さい抵抗体(換言すると、高導電体)である。このため、第1抵抗体71上を摺動する第1摺動接点48が検知する電圧Vaは、それぞれ導通状態である第1スライドレバー43、第1摺動接点49、第1導体72及び電極77に伝わる。また、電極77は、図示しないリード線を介して回路基板81に接続されている。このため、上述のように電極77に伝わった電圧Vaは、最終的にはリード線を介して回路基板81に伝達される。
【0054】
回路基板81は、演算素子83によって実現される演算回路を備えている。この演算回路は、第1端子26を介して回路基板81に供給される-電源電圧(0V)と、第3端子28を介して回路基板81に供給される+電源電圧(+V)を使って動作する。演算回路は、2つの演算回路85,86によって構成されている。
【0055】
演算回路85は、上述のように回路基板81に伝達される電圧Vaを入力電圧とし、この入力電圧Vaに所定の正電圧として+α(単位:V)を加算した電圧(Va+α)を出力する回路、すなわち加算回路である。演算回路86は、上述のように回路基板81に伝達される電圧Vaを入力電圧とし、この入力電圧Vaに所定の負電圧として-α(単位:V)を加算した電圧(Va-α)を出力する回路、すなわち加算回路である。入力電圧Vaは、第1抵抗体71から第1摺動接点48,49及び第1導体72を介して取り出される電圧である。また、+α及び-αは、電気的出力の微調整範囲を設定するための電圧であり、例えば、回路基板81や演算素子83に組み込まれる基準電圧回路(図示せず)によって生成される。+α及び-αの電圧値は、例えば、+0.5(V)及び-0.5(V)などのように、任意に設定可能である。
【0056】
ここで、第1抵抗体71上を摺動する第1摺動接点48によって検知される電圧(以下、「粗調整用出力電圧」又は単に「出力電圧」ともいう)Vaは、エレメント基板16の円周方向に沿う第1抵抗体71の長さ方向で第1摺動接点48がいずれの箇所に接触しているかによって決まる。具体的には、出力電圧Vaは、第1摺動接点48が第1抵抗体71の電極75近傍に位置するときに最小になり、第1摺動接点48が第1抵抗体71の電極76近傍に位置するときに最大になる。また、第1摺動接点48が第1抵抗体71の電極75近傍に位置する状態から外シャフト12をcw方向(
図1)に回転させると、出力電圧Vaは、外シャフト12の回転角度に応じて徐々に大きくなる。例えば、第3端子28に供給されるプラスの電源電圧(+V)が10(V)である場合、当該電源電圧に対する出力電圧Vaの比である粗調整用出力電圧比(%)は、
図11に示すように、外シャフト12の回転角度に応じて、0%から100%まで変化する。粗調整用出力電圧比(%)は、“出力電圧Va/電源電圧(+V)×100”によって求められる。
【0057】
また、
図10に示すように、演算回路85,86の各入力端につながる入力ライン84と、回路基板81のGND(0V)との間には、固定抵抗Roが挿入されている。入力ライン84は、演算回路85,86に電圧Vaを供給するために回路基板81に形成される配線パターンによって構成される。固定抵抗Roは、粗調整用抵抗体である第1抵抗体71の全抵抗値よりも十分に大きな抵抗値を有する。固定抵抗Roは、第1抵抗体71上を摺動する第1摺動接点48が有効電気角をオーバーして電極75,76間の非導通部分に位置し、第1摺動接点48がオープン状態になって入力電圧Vaが不定値となった際に、演算回路85,86の各入力端に0Vを供給して演算回路85,86の出力を安定化させる役目を果たす。
【0058】
具体的には、第1摺動接点48がオープン状態になると、入力ライン84を通して演算回路85,86に入力される電圧は、固定抵抗Roにより0(V)となる。このため、演算回路85の出力電圧は、+α(V)となる。また、演算回路86の出力の下限は、マイナス側の供給電圧である0(V)となる。このため、演算回路86の出力電圧は、-α(V)を加算しても0(V)になる。このように演算回路85の出力電圧が+α(V)で、演算回路86の出力電圧が0(V)である状態は、第1摺動接点48が第1抵抗体71の電極75近傍に位置して0(V)の電圧を検知しているときと同じ状態である。よって、第1摺動接点48が電極75,76間の非導通部分に位置する場合でも、演算回路85,86の出力を安定化させることができる。
【0059】
次に、内シャフトの動作と電気的出力の関係について、
図10及び
図12を用いて説明する。
図10に示すように、微調整用抵抗体である第2抵抗体73の電極79は、演算回路85の出力ラインに接続されている。このため、電極79には、演算回路85によって(Va+α)の電圧が印加される。また、第2抵抗体73の電極78は、演算回路86の出力ラインに接続されている。このため、電極78には、演算回路86によって(Va-α)の電圧が印加される。
【0060】
また、微調整用導体である第2導体74は、電気的に極めて抵抗が小さい抵抗体(換言すると、高導電体)である。このため、第2抵抗体73上を摺動する第2摺動接点61が検知する電圧Vbは、それぞれ導通状態である第2スライドレバー54、第2摺動接点62、第2導体74及び電極80に伝わる。また、電極80は、図示しないリード線を介して第2端子27に接続されている。このため、上述のように電極80に伝わった電圧Vbは、最終的にはリード線を介して第2端子27に伝達される。これにより、第2摺動接点61が検知する電圧Vbを、回転型ポテンショメータ10の電気的出力として、第2端子27から取り出すことができる。
【0061】
ここで、第2抵抗体73上を摺動する第2摺動接点61によって検知される電圧(以下、「微調整用出力電圧」ともいう。)Vbは、エレメント基板16の円周方向に沿う第2抵抗体73の長さ方向で第2摺動接点61がいずれの箇所に接触しているかによって決まる。具体的には、微調整用出力電圧Vbは、第2摺動接点61が第2抵抗体73の電極78近傍に位置するときに最小になり、第2摺動接点61が第2抵抗体73の電極79近傍に位置するときに最大になる。また、第2摺動接点61が第2抵抗体73の電極78近傍に位置する状態から内シャフト11をCW方向(
図1)に回転させると、微調整用出力電圧Vbは、内シャフト11の回転角度に応じて徐々に大きくなる。具体的には、微調整用出力電圧Vbは、
図12に示すように、第2抵抗体73に印加される電圧Vaを中心に、内シャフト11の回転角度に応じて、Va-αからVa+αまで変化する。これにより、回転型ポテンショメータ10の電気的出力をVa±αの範囲に絞り込んで微調整することができる。この場合、回転型ポテンショメータ10の出力電圧比(%)は、“微調整用出力電圧Vb/電源電圧(+V)×100”によって求められる。なお、
図12は、微調整用抵抗体の有効電気角が340°の場合を一例として示している。
【0062】
このように本発明の第1実施形態に係る回転型ポテンショメータ10では、二重シャフト13を構成する内シャフト11及び外シャフト12のうち、外シャフト12は電気的出力の粗調整用に割り当てられ、内シャフト11は電気的出力の微調整用に割り当てられている。そして、回転型ポテンショメータ10全体としての電気的出力を生成する演算回路85,86は、回路基板81と共にケース14の内部に収納されている。これにより、粗調整用に割り当てた側のポテンショメータの電気的出力と、微調整用に割り当てられた側のポテンショメータの電気的出力から、ポテンショメータ全体としての電気的出力を生成する回路等を、回転型ポテンショメータ10とは別途で用意する必要がない。
【0063】
一例として、第3端子28に印加する電源電圧(+V)を10V、粗調整用抵抗体及び微調整用抵抗体の有効電気角をそれぞれ340°、微調整範囲の設定値αを0.5Vとした場合、回転型ポテンショメータ10は以下のように機能する。
外シャフト12を回転させると、外シャフト12の回転角度に応じた粗調整用出力電圧Vaが回路基板81に伝達される。その際、ポテンショメータの感度は、有効電気角340°に対してフルスケール10Vの感度となる。また、例えば、外シャフト12の回転角度が有効電気角の1/2である場合、粗調整用出力電圧Vaは5Vになる。この場合、演算回路85は「5V+0.5V=5.5V」の演算によって5.5Vの電圧を生成し、演算回路86は「5V-0.5V=4.5V」の演算によって4.5Vの電圧を生成する。そして、演算回路85が生成する5.5Vの出力電圧と、演算回路86が生成する4.5Vの出力電圧は、第2抵抗体73の長さ方向の両端で電極79、78にそれぞれ印加される。これにより、内シャフト11については、有効電気角340°に対してフルスケール1Vの感度で電気的出力の微調整が可能となり、この微調整された電圧Vbが回転型ポテンショメータ10の電気的出力となる。
【0064】
このため、回転型ポテンショメータ10の電気的出力を、目的とする出力電圧の値(以下、「目標値」という。)に合わせる場合、使用者は、まず、外シャフト12を適宜回転させて電気的出力を粗調整することにより、回転型ポテンショメータ10の電気的出力を目標値に近づけ、その後、内シャフト11を適宜回転させて電気的出力を微調整することにより、回転型ポテンショメータ10の電気的出力を目標値に一致させることができる。これにより、回転型ポテンショメータ10の操作性を向上させることができる。
【0065】
なお、ケース14から外部に突き出す部分の外シャフト12及び内シャフト11の形状や長さは、任意に変更可能である。また、外シャフト12及び内シャフト11の突き出し部分に、図示しないツマミや回転型ダイアルなどが取り付けられるようにすることも可能である。
【0066】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
接触式の一般的な一回転型ポテンショメータは、抵抗体の両端に電極を設けて電圧を印加する構造であるため、接点が摺動する抵抗体のパターンには必ず切れ目、すなわち非導通部分が存在する。そして、この非導通部分に接点が位置すると、接点はオープン状態となり、接点が検知する電圧は不定値となる。使用者は、この点を理解してポテンショメータを使用することになるが、用途によってはポテンショメータの出力が不定値にならないようにすることを求められる場合がある。その場合は、例えば、ストッパ機構などを内蔵又は追加してシャフトの回転角度範囲を制限することで、接点が非導通部分に位置しないようにする、すなわちポテンショメータの出力が不定値にならないようにすることが考えられる。
【0067】
そこで本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータは、内シャフト11の回転角度範囲を制限するストッパ機構を備えた構成を採用している。以下、詳しく説明する。
【0068】
図13は、本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータの縦断面図である。
図14は、本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、ケースから裏蓋を取り外した状態を斜め上方から見た図である。
図15は、本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータにおいて、ケースから裏蓋を取り外した状態を斜め下方から見た図である。
【0069】
本発明の第2実施形態に係る回転型ポテンショメータ10において、第2ブッシュ52にはストッパ凸部87(
図13、
図14)が設けられ、裏蓋15にはストッパ用リブ88(
図13、
図15)が設けられている。そして、ストッパ機構90(
図13)は、ストッパ凸部87と、ストッパ用リブ88とによって構成されている。
【0070】
さらに詳述すると、第2ブッシュ52には矩形状部89が設けられている。矩形状部89は、第2ブッシュ52と一体に形成されてもよいし、第2ブッシュ52に接着等によって固定されてもよい。矩形状部89は、第2ブッシュ52の外周面から径方向外側に突出する状態で配置されている。矩形状部89の上面は、裏蓋15と対向するように配置され、この矩形状部89の上面にストッパ凸部87が設けられている。ストッパ凸部87は、好ましくは矩形状部89と一体に形成される。ストッパ凸部87は、円柱状に形成されるとともに、第2ブッシュ52の中心軸と平行に配置されている。
【0071】
一方、ストッパ用リブ88は、裏蓋15の内側(エレメント基板16と対向する側)に形成されている。ストッパ用リブ88は、裏蓋15と一体に形成されている。ストッパ用リブ88は、裏蓋15の径方向と平行に配置されている。
【0072】
ストッパ凸部87とストッパ用リブ88は、
図13に示すように、ストッパ凸部87の上端がストッパ用リブ88の下端よりも上側に配置される。このため、ケース14に裏蓋15を取り付けた状態で内シャフト11を回転させると、ストッパ凸部87がストッパ用リブ88に突き当たることになる。
【0073】
これにより、内シャフト11をCCW方向に回転させたときに、第2摺動接点61が第2抵抗体73の電極78を超えてCCW方向に移動しようとしても、
図16及び
図17に示すように、ストッパ凸部87がストッパ用リブ88に突き当たることで、内シャフト11の回転が止められる。また、内シャフト11をCW方向に回転させたときに、第2摺動接点61が第2抵抗体73の電極79を超えてCW方向に移動しようとしても、
図18及び
図19に示すように、ストッパ凸部87がストッパ用リブ88に突き当たることで、内シャフト11の回転が止められる。これにより、第2摺動接点61が非導通部分に位置することを防ぐことができる。このため、出力電圧Vb(ポテンショメータ出力)が不定値となることはない。
【0074】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0075】
例えば、上記実施形態においては、第1のポテンショメータを粗調整用のポテンショメータとして機能させ、第2のポテンショメータを微調整用のポテンショメータとして機能させる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、第1のポテンショメータの電気的出力(電圧等)と第2のポテンショメータの電気的出力(電圧等)を別々に取り出す構成を採用することも可能である。
【0076】
また、上記実施形態においては、粗調整用抵抗体及び微調整用抵抗体の有効電気角をいずれも340°として説明したが、有効電気角は任意に設定可能であり、特定の角度に限定されない。また、粗調整用抵抗体の有効電気角と微調整用抵抗体の有効電気角は、同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、内シャフト11及び外シャフト12をCW方向に回転させたときに出力電圧が上昇する構成を例に挙げて説明したが、シャフト回転方向と出力電圧の上昇・降下の関係は任意に設定可能であり、特定の関係に限定されない。また、シャフト回転方向と出力電圧の上昇・降下の関係は、内シャフト11と外シャフト12で異なっていてもよい。
【0078】
また、エレメント基板16が有する第1抵抗体71及び第2抵抗体73の各抵抗値は、任意に設定又は変更することができる。
【0079】
また、回路基板81に実装された演算素子83の演算回路85,86で設定される±α(V)は任意に設定又は変更することができる。
【0080】
また、ストッパ機構90によって制限される内シャフト11の回転角度範囲は、微調整用抵抗体の有効電気角に合わせてあるが、この回転角度範囲は、裏蓋15に設けられるストッパ用リブ88の幅を変更したり、裏蓋15にストッパ用リブ88を複数形成したりすることで、容易に変更可能である。
【符号の説明】
【0081】
10…回転型ポテンショメータ
11…内シャフト
12…外シャフト
13…二重シャフト
14…ケース
15…裏蓋
16…エレメント基板
17…第1移動子
18…第2移動子
19…回転軸
31…Oリング(第1負荷付与部材)
32…Oリング(第2負荷付与部材)
41…第1ブッシュ
48,49…第1摺動接点
52…第2ブッシュ
61,62…第2摺動接点
71…第1抵抗体(粗調整用抵抗体)
72…第1導体(粗調整用導体)
73…第2抵抗体(微調整用抵抗体)
74…第2導体(微調整用導体)
84…入力ライン
85,86…演算回路
87…ストッパ凸部
88…ストッパ用リブ
90…ストッパ機構
R0…固定抵抗