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特許7588434通信システム、通信装置、通信制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】通信システム、通信装置、通信制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
A01G25/00 501Z
A01G25/00 501D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023133695
(22)【出願日】2023-08-18
(62)【分割の表示】P 2019064798の分割
【原出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2023144106
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】300072462
【氏名又は名称】株式会社ほくつう
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】谷口 輝行
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-060325(JP,A)
【文献】特開2017-042071(JP,A)
【文献】特開平08-275684(JP,A)
【文献】特開2017-108657(JP,A)
【文献】特開2011-188775(JP,A)
【文献】特開2001-134866(JP,A)
【文献】特表2018-511324(JP,A)
【文献】特開2006-288351(JP,A)
【文献】特開2001-161192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置と、圃場への給水または排水に使用される水栓装置と、前記水栓装置が使用される前記圃場における水位を含む検出対象を検出するセンサと、前記通信装置と通信可能な圃場管理サーバと、を備え、
前記通信装置は、
通信距離の範囲内に位置する前記水栓装置および前記センサと巡回単位期間ごとにおいて順次通信が行われるように制御する第1通信制御部を備え、
前記センサは、
前記水栓装置を経由せずに前記通信装置へ検出情報を送信可能とされ、
前記水栓装置は、
前記通信装置と他の水栓装置を経由せずに通信が行われるように制御する第2通信制御部を備え
前記水栓装置の制御では、前記第2通信制御部が前記第1通信制御部を介して前記圃場管理サーバと制御情報の通信を実行し、
前記センサの検出情報の送信は、前記センサが前記第1通信制御部を介して前記圃場管理サーバへセンサ情報の送信を行う
圃場管理システム。
【請求項2】
前記水栓装置は、
前記水栓装置に対応する前記センサが送信した検出情報に基づいて前記圃場管理サーバにより制御される
請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項3】
前記水栓装置は給水栓であり、
前記給水栓は、
吐出管と、中空部と、前記中空部内に配置された止水栓ボールと、を備え、
前記吐出管の下側の開口部と、前記止水栓ボールとにより栓部が形成される
請求項1または2に記載の圃場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信装置、通信制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータにより水田の給水栓と排水栓との開閉を制御することで、水田における給排水管理を行うようにされた水管理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記のように水田等の圃場の給排水を管理する環境では、圃場に設置された水栓装置と給排水管理を行う上位装置とが通信可能に接続され、上位装置による水栓装置に対する給排水制御は、通信を介して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-161192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場にて使用される水栓装置を含む通信システムについては、圃場での水栓装置の使用環境に適合した通信が行われることが好ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、圃場にて使用される水栓装置を含む通信システムとして、圃場での水栓装置の使用環境に適合した通信が行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、通信装置と、圃場にて給排水に対応して使用される複数の水栓装置とを備え、前記通信装置は、通信距離の範囲内に位置する前記複数の水栓装置のそれぞれと、他の水栓装置を経由することなく、巡回単位期間ごとにおいて順次通信が行われるように制御する第1通信制御部を備え、前記水栓装置は、前記通信装置と他の水栓装置を経由せずに通信が行われるように制御する第2通信制御部を備える通信システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、通信距離の範囲内に位置し、圃場にて給排水に対応して使用される複数の水栓装置のそれぞれと、他の水栓装置を経由することなく、巡回単位期間ごとにおいて順次通信を行う通信制御部を備える通信装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、通信装置と、圃場にて給排水に対応して使用される複数の水栓装置とを備える通信システムにおける通信制御方法であって、前記通信装置が通信距離の範囲内に位置する前記複数の水栓装置のそれぞれと、他の水栓装置を経由することなく、巡回単位期間ごとにおいて順次通信が行われるように制御する第1通信制御ステップと、前記水栓装置が前記通信装置と他の水栓装置を経由せずに通信が行われるように制御する第2通信制御ステップとを備える通信制御方法である。
【0009】
また、本発明の一態様は、通信距離の範囲内に位置し、圃場にて給排水に対応して使用される複数の水栓装置のそれぞれと、他の水栓装置を経由することなく、巡回単位期間ごとにおいて順次通信を行う通信制御ステップを備える通信制御方法である。
【0010】
また、本発明の一態様は、通信装置としてのコンピュータを、通信距離の範囲内に位置し、圃場にて給排水に対応して使用される複数の水栓装置のそれぞれと、他の水栓装置を経由することなく、巡回単位期間ごとにおいて順次通信を行う通信制御部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圃場にて使用される水栓装置を含む通信システムとして、圃場での水栓装置の使用環境に適合した通信が行われるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の水栓装置を備える圃場管理システムと、圃場管理システムにおいて構築可能なトポロジの一例を示す図である。
図2】本実施形態における圃場管理システムの構成例を示す図である。
図3】本実施形態における給水栓の構成例を示す図である。
図4】本実施形態における給水栓の構成例を示す図である。
図5】本実施形態の圃場管理システムにおける通信手順例を示す図である。
図6】本実施形態の圃場管理システムにおいて、即時開閉コマンドが送信された場合の通信手順例を示す図である。
図7】本実施形態のゲートウェイの構成例を示す図である。
図8】本実施形態のゲートウェイが割り込み通信に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態のゲートウェイがポーリングによる通信のスキップに関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図10】本実施形態のトポロジ構成の変形例を示す図である。
図11】本実施形態のトポロジ構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態による圃場管理システムについて図面を参照して説明する。
[圃場管理システムにおけるトポロジの一例]
図1は、本実施形態の水栓装置を備える圃場管理システムと、圃場管理システムにおいて構築可能なトポロジ(ネットワークトポロジ)の一例を示している。圃場管理システムは、圃場における給排水を管理する。
本実施形態において、「給排水」とは、給水栓としての水栓装置による給水と、排水栓としての水栓装置による排水との少なくともいずれか一方を指す。
【0014】
同図では、圃場管理システムが、1つの圃場FMを管理対象とした例が示されている。本実施形態における圃場FMは、例えば水田であり、稲作の時期に応じて、適切な水位となるように給水(灌漑)、排水が行われる。
なお、圃場FMは、水田以外の例えば畑等であってもよい。また、圃場管理システムは、複数の圃場を管理対象としてもよい。以降においては、圃場管理システムが1つの圃場FMを管理対象とする場合を例に挙げて説明する。
【0015】
同図の圃場FMにおいては、複数の水栓装置100(100-P(100-P1~100-Pn、100-C)が所定位置に設置される。複数の水栓装置100のうちには、例えば給水栓と排水栓とが混在していてよい。
給水栓は、例えばファームポンドから送られた用水を圃場FMに供給する設備である。給水栓は、ファームポンドから送られた用水を圃場FMに吐出するまでの流路(流水経路)において開閉する栓部(弁)を備えることで、圃場FMに供給する用水の量を調節可能なようにされている。
排水栓は、圃場FMに貯まっている水を排出させるための設備である。排水栓は、圃場FMから引き揚げた水を例えばパイプライン等に排出させるまでの流路において開閉する栓部(弁)を備えることで、排水量が調節可能なようにされている。
なお、圃場FMに設置される水栓装置100の数と、複数の水栓装置100における給水栓と排水栓の内訳については特に限定されない。複数の水栓装置100の全てが給水栓であってもよいし、複数の水栓装置100の全てが排水栓であってもよい。
【0016】
同図においては、まず、ゲートウェイ200と1つの水栓装置100-P1とが直接的に接続される。そのうえで、水栓装置100-P1を先頭に、順次、水栓装置100-P2・・・100-Pnのホップ順で直列に接続される。つまり、本変形例では、ゲートウェイ200に対して複数の水栓装置100-Pがマルチホップにより接続される。
【0017】
そのうえで、ゲートウェイ200に対して上記のようにマルチホップにより接続された水栓装置100-P1~100-Pnのそれぞれは、自己の配下に1以上の水栓装置100が接続されてよい。同図においては、水栓装置100-P1~100-Pnのそれぞれに対して3つの水栓装置100-Cが接続された例が示されている。
同図のトポロジにおいて、1つの水栓装置100-Pと、当該水栓装置100-Pの配下に接続される水栓装置100-Cは、同一の圃場FMに設置されている。同図の例では、水栓装置100-P1~100-Pnと、これら水栓装置100-Pのそれぞれの配下に接続される水栓装置100-Cとの全てが同じ圃場FM内に設置された例が示される。
同じ圃場FMに配置される水栓装置100が受信する指示(コマンド)は同一であるため、このように同じ圃場FM内の水栓装置100を接続することで、ゲートウェイ200から直接に指示を受信する水栓装置100-Pは1つで済ませることができる。
また、ポーリングの周期長の制限に伴って、ゲートウェイ200と直接に接続されるノード数にも制限が生じる。しかしながら、同図のようにゲートウェイ200の直下の階層の水栓装置100-Pの配下にさらに1以上の水栓装置100-Cを接続したトポロジ構成とすることで、ポーリングの周期長の制限のもとで多数の水栓装置100を適正に管理下におくことができる。
【0018】
なお、水栓装置100-P1~100-Pnのうちで、配下に水栓装置100-Cが接続されないものがあってもよい。また、水栓装置100-Cのさらに配下の階層において水栓装置が接続されてもよい。
【0019】
このような、マルチホップ接続によるトポロジのもとでは、ゲートウェイ200において、水栓装置100-P1が接続先のノードとして設定されている。また、水栓装置100のそれぞれにおいては、上り方向と下り方向とのそれぞれの接続先のノードが設定されている。
例えば、水栓装置100-P1であれば、上りの接続先のノードとしてゲートウェイ200が設定されており、下りの接続先のノードとしては、水栓装置100-P2と、自己の配下の水栓装置100-Cとが設定されている。また、水栓装置100-P2であれば、上りの接続先のノードとして水栓装置100-P1が設定されており、下りの接続先のノードとしては、水栓装置100-P3と、自己の配下の水栓装置100-Cとが設定されている。
また、このようなマルチホップ接続によるトポロジのもとでは、相互に接続先となる水栓装置100の距離を一定以内となるように配置することができる。このため、ゲートウェイ200と水栓装置100とによるマルチホップ接続のもとでは、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を採用できる。
【0020】
ゲートウェイ200は、上記のように自己に対してマルチホップ接続される複数の水栓装置100と、ネットワークNTとを接続する機能を有する。
ネットワークNTには、ゲートウェイ200、圃場管理サーバ300、圃場管理端末400が接続されている。
【0021】
このようなトポロジのもとで、例えば、圃場管理サーバ300が、水栓装置100-Pnの配下に接続された1つの水栓装置100-Cを送信先(宛先)としてコマンドを送信した場合には、以下のようにコマンドが伝送される。
圃場管理サーバ300が送信したコマンドは、ネットワークNTを経由して、まず、ゲートウェイ200にて受信される。ゲートウェイ200は、受信されたコマンドを水栓装置100-P1に送信する。水栓装置100-P1は、例えば自己のルーティングテーブルを参照して、水栓装置100-P2にコマンドを転送する。以下、ホップ順に従って、順に、水栓装置100-P3から水栓装置100-Pnまでコマンドが転送される。水栓装置100-Pnは、配下の水栓装置100-Cのうち、宛先として指定された水栓装置100-Cに給排水コマンドを送信する。
【0022】
圃場FMでは、例えば一度設置された水栓装置100を移動させて、これまでと異なる場所に再配置するような作業が行われる場合がある。このような場合に、同図のマルチホップ接続のトポロジの場合には、水栓装置100のそれぞれについて、接続先として設定された他のノードが通信距離にあるように配置される必要がある。
しかしながら、上記のように接続先の設定を考慮して複数の水栓装置100について相互に通信距離にあるように再配置することは作業者にとって負担である。また、作業者が誤って配置しまう可能性もあり、この場合には、接続先の設定に従ったホップ順でデータの転送が行われない場合も生じる。この場合、作業者は、接続先の設定に従ったホップ順でのデータの転送が可能となるように水栓装置100を配置し直すか、水栓装置100の接続先の設定を変更する操作を行うことになり、やはり作業者にとっての負担となる。
【0023】
[本実施形態の圃場管理システムの構成例]
そこで、本実施形態においては、上記のような問題を考慮して、ゲートウェイ200(通信装置の一例)と複数の水栓装置100とについて、以下のようにトポロジを構築する。
図2は、本実施形態における圃場管理システムの構成例を示している。同図において、図1と同一部分には同一符号を付している。
【0024】
同図には、複数の圃場FMごとに水栓装置100が配置された例が示されている。ここでは、同図に示される複数の圃場FMは、1の同じ圃場管理者(圃場主)が管理する場合を例に挙げる。
圃場FMのそれぞれにおいて配置される水栓装置100の数は1以上であればよいが、同図では、各圃場FMにおいて複数の水栓装置100が配置された例を示している。圃場FMのそれぞれにおいては、複数の水栓装置100のそれぞれが所定の場所に配置される。同図の場合にも、複数の水栓装置100のうちには、例えば給水栓と排水栓とが混在していてよい。
同図に示される各圃場FMの水栓装置100は、それぞれが同じ1つのゲートウェイ200と通信を行うことができる。つまり、この場合には、本実施形態の圃場管理システムは、ハブとしてのゲートウェイ200に対して、複数の圃場FMに存在する複数の水栓装置100がノードとして接続される、スター型のトポロジを構成する。
【0025】
水栓装置100とゲートウェイ200との間の通信には、例えばLPWA(Low Power, Wide Area)に対応する無線通信方式が採用されてよい。LPWAは、低消費電力でありながら、比較的長距離の通信が可能な無線通信方式である。このため、圃場FMのような比較的広いエリアにおいて、ゲートウェイ200と水栓装置100とを直接的に接続することも可能となる。一例として、水栓装置100とゲートウェイ200との間の通信には、LPWAの1つであるLoRaが採用されてよい。
【0026】
ゲートウェイ200は、水栓装置100とネットワークNTを接続する機能を有する。本実施形態のゲートウェイ200は、圃場FMに設置される水栓装置100の全てとの通信が可能なように設置される。
同図においても、ネットワークNTには、ゲートウェイ200、圃場管理サーバ300、圃場管理端末400が接続されている。
【0027】
同図において図示は省略しているが、水栓装置100の少なくとも一部に、水位センサや温度センサ等のセンサが接続されてよい。水栓装置100とセンサとは、例えば所定の近距離無線通信により接続されてよい。
センサは、圃場FMにおける水位、水温等を検出するように設けられる。センサは、検出情報を、水栓装置100に送信し、水栓装置100は、対応のセンサから受信した検出情報を、ゲートウェイ200経由で圃場管理サーバ300に送信することができる。圃場管理サーバ300は、受信した検出情報に基づいて水栓装置100の給排水の動作を制御するなど、圃場FMの管理を行うことができる。
【0028】
圃場管理サーバ300は、圃場管理を行う。圃場管理サーバ300が行う圃場管理には、水栓装置100が行う給排水に関する制御(給排水制御)が含まれる。
給排水管理にあたり、圃場管理サーバ300は、ネットワークNTからゲートウェイ200を経由して圃場FMにおける水栓装置100と通信を行うことにより、各水栓装置100における栓部の開閉を制御する。これにより、圃場管理サーバ300は、圃場FMごとに個別に給排水に関する制御を行うことができる。
【0029】
圃場管理端末400は、圃場FMの圃場管理者(ユーザ)が、例えば事務所、自宅などで利用するネットワーク端末装置である。なお、圃場管理者は、ここでは圃場FMの管理に応じて圃場管理端末400を操作する者を指す。
圃場管理端末400は、圃場管理サーバ300が提供する圃場管理サービスのウェブサイト(圃場管理サイト)に、圃場管理者のユーザアカウントによりログインする。ログインにより圃場管理端末400は、圃場管理サイトにアクセス可能となる。圃場管理者は、所望のサービスを提供する圃場管理サイトに圃場管理端末400をアクセスさせ、圃場管理サイトに対して各種の操作を行うことができる。これにより、圃場管理者が、圃場管理サーバ300が提供する圃場管理サービスを利用することができる。
【0030】
なお、センサは、水栓装置100を経由することなくゲートウェイ200と接続されるようにしてよい。この場合、センサは、水栓装置100を介することなく、ゲートウェイ200を経由して、ネットワークNT上の圃場管理サーバ300に検出情報を送信可能となる。
【0031】
また、水栓装置100の栓部が制御したとおりに閉じない、あるいは開かないといった状態となって給排水異常が発生した場合には、水位が想定を外れて増え続けたり、時間を経過しても減らないなどといった状況となる。そこで、このような給排水異常の発生に応じた水位や流量を、水位センサや流量センサが検出し、検出情報を圃場管理サーバ300や圃場管理端末400に送信するように構成されてもよい。
この場合、例えば水栓装置100に給排水異常が発生したうえで、さらに通信不良や電源異常等の障害が発生した場合には通信不可となり、水栓装置100自体からは異常発生の通知を送信できなくなる。しかし、上記のように各種のセンサが水栓装置100を経由することなくゲートウェイ200と接続されていることで、センサが、圃場管理サーバ300や圃場管理端末400に水栓装置100の給排水異常の発生を通知するようにできる。また、水栓装置100がもとから障害発生の通知を送信する機能を有していなかったり、電力を利用せずに水圧を利用して自動で給排水を行うようにされたものである場合にも、水栓装置100の給排水異常を、センサによって通知することが可能になる。
【0032】
なお、ゲートウェイ200とセンサとが接続されたうえで、センサに対して水栓装置100が接続されるというトポロジ構成であってもよい。この場合の水栓装置100は、センサからゲートウェイ200を経由してネットワークNTと接続し、圃場管理サーバ300等と通信するようにされる。
【0033】
なお、上記のようにセンサのそれぞれがゲートウェイ200と接続されて圃場管理サーバ300と通信可能とされたうえで、センサ間も通信が可能なように構成されてよい。センサ間の通信は、センサ同士が直接に接続して行ってもよいし、ゲートウェイ200もしくは無線通信対応のルータやハブ等の中継器などを介して行われてもよい。
【0034】
なお、通信範囲内に存在する付近のセンサ、水栓装置100と近距離無線通信により通信を行うとともに、ゲートウェイ200と通信するようにされた制御スポットが設けられてよい。この場合には、制御スポットが、通信範囲内のセンサ、水栓装置100を制御することができる。また、制御スポットは、ゲートウェイ200を経由して、圃場管理サーバ300等から送信されたコマンドの受信や、センサ、水栓装置100等から送信された情報の圃場管理サーバ300等への転送を行うことができる。
【0035】
なお、センサが検出して得られた例えば水位、水温等の検出情報は水栓装置100が記憶したうえで、圃場管理サーバ300から送信された制御コマンドに含まれる制御情報に基づいて、水栓装置100自身が判断した結果に従って給排水動作を実行するようにされてもよい。この場合、制御コマンドには、水位、水温に応じた制御条件を含めることで、水栓装置100が給排水動作を適正に判定できる。
【0036】
[水栓装置の構成例]
図3及び図4を参照して、水栓装置100の構成例について説明する。ここでは給水栓としての水栓装置100の構成例を例に挙げて説明する。各図においては、水栓装置100の構造に関して、水栓装置100を側方からみた断面図により示している。
水栓装置100において給水管101は、例えばパイプラインから用水が供給される管である。給水管101の下端部側は、図示するように、パイプラインの端部と連結されている。これにより、図3において矢印αで示すように、パイプラインから送られてきた用水が給水管101における中空部101aに供給される。
【0037】
給水管101の上端部には吐出管102が取り付けられている。吐出管102の中空部102aは、給水管101の中空部101aと連通するようにされている。そのうえで、給水管101と吐出管102との連結部分において、給水管101の中空部101aの径は、止水栓ボール104よりも大きくなっており、吐出管102の中空部102aの径は止水栓ボール104よりも小さくなっている。また、吐出管102の中空部102aにおける中空部101a側の開口部は図示するようにテーパー状となっていることで、止水栓ボール104が中空部102aの開口にまで浮上してきたときには、図示するように、中空部102aを止水栓ボール104が塞ぐことができる位置に納まるようにしている。
本実施形態においては、止水栓ボール104と中空部102aの下側の開口部とにより栓部が形成される。栓部にはゴム状のパッキンなどがあっても良い。
【0038】
また、吐出管102の上側にはカップ103が被せられるように設けられる。カップ103の内側と吐出管102との間には、中空部103aが形成されている。中空部103aは、吐出管102の中空部102aから排出された用水が外部に吐出されるまでの経路となる。
【0039】
止水栓ボール104は、浮力を有する球状の部材である。止水栓ボール104は、図示するように、中空部101a内に設けられる。
また、軸部105は、カップ103と吐出管102の中空部102aを貫通するように設けられる。軸部105は、栓駆動部111により図3の矢印Aで示すように一定の可動範囲で上下方向に移動可能とされている。
【0040】
図3に示される軸部105は、例えば可動範囲において最も上に位置している状態である。この状態においては、パイプラインから給水管101に供給された用水の圧力によって浮力体である止水栓ボール104が同図の状態にまで浮上するため、中空部102aの開口部が止水栓ボール104によって塞がれる状態(閉状態)となる。このように閉状態となることにより、パイプラインから給水管101に供給された用水が水栓装置100の外部に吐出されることはない。
【0041】
一方、図4に示される軸部105は、図3の状態から図4の矢印Bで示すように下方向に移動され、可動範囲において最も下に位置している状態である。この状態においては、同図のように止水栓ボール104が軸部105によって押し下げられる。このため、止水栓ボール104は、中空部101aにおいて、中空部102aよりも下側に位置する状態(開状態)となる。
このように開状態となることにより、パイプラインから給水管101に供給された用水は、同図の破線で示す矢印βとして示すように、中空部101a、中空部102a及び中空部103aによる流水経路を通って、水栓装置100の外部に吐出される。このようにして用水が水栓装置100から圃場FMに供給される。この際、吐出管102の上にはカップ103が設けられていることで、中空部102aから吐出される用水の圧力が高い状態であっても、上に吹き出すことなく、中空部103aを通して下側に流すことができる。
【0042】
また、図3及び図4の各図に示されるように、例えばカップ103の上には、ケース110が設けられる。ケース110の中には、栓駆動部111、センサ対応通信部113、ゲートウェイ対応通信部114、電源部115、制御部120、記憶部130及び操作パネル部140が備えられる。
【0043】
栓駆動部111は、栓部の開閉駆動を行う。つまり、栓駆動部111は、軸部105を上下方向に移動させることで、止水栓ボール104が中空部102aの開口部を塞ぐ閉状態と止水栓ボール104が中空部102aの開口部よりも下側に位置する開状態との間で状態を変化させる。
なお、栓駆動部111は、開状態において軸部105の上下方向における位置を変化させることで、中空部102aの開口部と止水栓ボール104との間の隙間を調節することができる。これにより、水栓装置100から吐出される用水の量(流量)が調節可能とされる。
【0044】
栓駆動部111は、例えば、モータ111aと、モータ111aの回転に応じて軸部105を上下方向に移動させる機構部とを備えて構成される。例えば軸部105を上下方向に移動させる機構部は、軸部105が水栓装置100における所定箇所と螺合されていることで回転により上下方向に移動可能とされたうえで、軸部105をモータ111aの回転に応じて回転させるようにされた構造により構成することができる。なお、軸部105を上下方向に移動させる機構部としては他の構造も採り得るものであり、上記の例に限定されない。
【0045】
制御部120は、水栓装置100の動作を制御する。水栓装置100の動作の制御には、栓駆動部111の制御が含まれる。栓駆動部111の制御のために制御部120は、例えば栓駆動部111のモータ111aを回転させるためのモータ制御信号を栓駆動部111に出力する。
また、制御部120は、センサ対応通信部113を介して、水位センサや温度センサ等のセンサと情報の送受信を行うことができる。また、制御部120は、ゲートウェイ対応通信部114を介してネットワークNT経由で圃場管理サーバ300と情報の送受信を行う。
【0046】
制御部120は、通信制御部121(第2通信制御部の一例)を備える。通信制御部121は、スター型のトポロジに応じて、ゲートウェイ200と他の水栓装置100を経由せずに通信が行われるように制御する。
制御部120の機能は、水栓装置100において備えられるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。
【0047】
記憶部130は、制御部120が利用する各種の情報を記憶する。
【0048】
センサ対応通信部113は、近距離無線通信により通信距離の範囲内に位置する水センサ等と通信を行う。
ゲートウェイ対応通信部114は、ネットワークNT経由で圃場管理サーバ300と通信を行う。
【0049】
電源部115は、栓駆動部111、センサ対応通信部113、ゲートウェイ対応通信部114、制御部120、記憶部130、操作パネル部140に電源を供給する。
電源部115は、例えば太陽電池と蓄電池とを備える。図示は省略しているが、太陽電池は、例えばケース110の上面部において外部に表出するように設けられる。電源部115は、日中において太陽電池により発電された電力を蓄電池に蓄積する。そして、電源部115は、蓄電池に蓄積された電力を電源として供給するように構成される。
あるいは、電源部115は、2次電池または1次電池などの所定の規格の電池により電源を供給するようにされたうえで、電池の残量が少なくなった場合には電池を交換するように使用される構成であってもよい。
【0050】
操作パネル部140は、水栓装置100に関する各種設定や栓部の開閉の操作が行われるパネル部である。ケース110は、開閉可能な構造を有している。操作パネル部140は、ケース110が閉じられた状態では、ケース110内に収納されており、ケース110が開けられることで、操作が可能となるように設けられている。
即ち、本実施形態の水栓装置100は、例えば圃場管理サーバ300の制御に応じて動作することが可能とされているとともに、操作パネル部140に対して行われる操作に応じて動作することも可能とされている。このように、水栓装置100が操作パネル部140に対する操作に応じて動作が可能なように構成されていることで、ユーザは、圃場FMに赴いて、水栓装置100の動作を実際に確認しながら、各種設定や栓部の開閉を行える。これにより、例えば圃場管理サーバ300からの制御が不調であるために、水栓装置100を直接操作したいような場合や、水栓装置100の動作をユーザが実際に自分自身で操作しながら確認したいような場合にも対応できる。
【0051】
[圃場管理システムにおける通信手順例]
図5は、図2のようにゲートウェイ200と水栓装置100とについてスター型のトポロジが構築される場合の圃場管理システムにおける通信手順例を示している。
スター型のトポロジのもとで、ゲートウェイ200は、一定の時間長の期間(巡回単位期間)ごとに、複数の水栓装置100と順次接続して通信を行っていくようにされている。つまり、ゲートウェイ200は、ポーリングによる複数の水栓装置100との通信(順次通信の一例)を行う。
【0052】
図5のタイミングチャートは、本実施形態の圃場管理システムにおける通信手順の一例を示している。同図においては、圃場管理サーバ300とゲートウェイ200との通信と、ゲートウェイ200と水栓装置100との通信を示している。ここでは、ゲートウェイ200が4つの水栓装置100(水栓装置#1~#4)と通信を行う場合の例を示している。
【0053】
圃場管理サーバ300とゲートウェイ200とは、例えば巡回単位期間Tb(Tb-1、Tb-2、Tb-3、Tb-4、Tb-5・・・)としての時間長に対応する周期ごとに1回の通信を行うようにされている。ここでは、1つの巡回単位期間Tbが15分である場合を例に挙げる。
なお、圃場管理サーバ300とゲートウェイ200とが通信を行うタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば巡回単位期間Tbとしての時間長に対応する周期において複数回行われてもよい。ただし、同図のように巡回単位期間Tbに対応する周期ごとに1回程度の通信頻度であれば、圃場管理サーバ300とゲートウェイ200との通信ログのデータ量を抑制することが可能となる。例えば通信ログは、圃場管理サーバ300にて記憶されるが、通信ログのデータ量が抑制されることで、圃場管理サーバ300の記憶容量を有効に利用できる。
【0054】
同図において、ゲートウェイ200は、先ず、巡回単位期間Tb-1において、水栓装置#1~#4の順で問合せを行っていくことで、順次、水栓装置#1~#4と通信する。ゲートウェイ200は、巡回単位期間Tb-1内での水栓装置#Nとの通信が完了すると、次の巡回単位期間Tb-2に至るまで待機する。そして、巡回単位期間Tb-2の開始タイミングに至ると、ゲートウェイ200は、先の巡回単位期間Tb-1と同様に水栓装置#1~#Nの順で通信する。以下、同様にして、ゲートウェイ200は、巡回単位期間Tb-3、Tb-4、Tb-5、さらに巡回単位期間Tb-5以降において、連続する巡回単位期間Tbごとに、水栓装置#1~#4と順番に通信を行う。
【0055】
なお、巡回単位期間Tbにおけるポーリングの時間間隔については、例えば対応の通信方式における制約の範囲内で任意に設定されてよい。また、巡回単位期間Tbにおいてゲートウェイ200が複数の水栓装置と接続する順番は、巡回単位期間Tbごとに同じでなくともよい。ただし、以降においては、説明を分かりやすくすることの便宜上、ゲートウェイ200が複数の水栓装置と接続する順番については、巡回単位期間Tbごとに同じである場合を前提にする。
【0056】
このような本実施形態の基本的な通信手順のもとでは、1つの水栓装置100は、ゲートウェイ200と巡回単位期間Tbに対応する時間間隔ごとに1回の通信を行うことになる。
【0057】
これまでの説明から理解されるように、本実施形態の圃場管理システムにおいて、ゲートウェイ200と複数の水栓装置100は、ゲートウェイ200をハブとし、水栓装置100をノードとするスター型のトポロジを構築している。そのうえで、ゲートウェイ200は、複数の水栓装置100に対して、順次ポーリングを行うことで、コリジョンを回避しつつ、水栓装置100のそれぞれと通信を行うことが可能とされている。
このような構成の場合、水栓装置100のいずれも他の水栓装置100を経由することなくゲートウェイ200と直接的に通信を行うことができる。これにより、本実施形態では、水栓装置100のそれぞれについて、上り方向と下り方向との接続先を設定する必要がない。
このため、本実施形態においては、例えば、圃場FMにて水栓装置100を再配置するような場合に、接続先の設定を考慮することなく水栓装置100を配置することが可能になり、作業負担が軽減される。
【0058】
[即時開閉コマンドの受信に応じた割り込み通信]
本実施形態の圃場管理サーバ300は、定常時においては、図5に例示したように、巡回単位期間Tbに対応する周期ごとに1回の定期的通信をゲートウェイ200と行う。しかしながら、例えば、直ちに水栓装置100の栓部の開閉を行わなければならないような状況となった場合、圃場管理者は、圃場管理端末400を操作して、水栓装置100の栓物を即時に全開または全閉することの指示(即時開閉指示)を行うことができる。このような即時開閉指示は圃場管理サーバ300に対して送信される。
圃場管理サーバ300は即時開閉指示を受信すると、上記の定期的通信とは別に、現在の巡回単位期間Tbにおいて割り込み通信を行って、即座にゲートウェイ200に対して、即時開閉指示に対応する即時開閉コマンド(特定のコマンドの一例)の送信を行う。
【0059】
図6は、上記のようにして圃場管理サーバ300からゲートウェイ200に対して即時開閉コマンドを送信した場合の一事例を示している。
同図の例においては、巡回単位期間Tb-2において、水栓装置#3とのポーリングによる定常の通信が行われた後のタイミングで、圃場管理サーバ300からゲートウェイ200に対して水栓装置#2を送信先とする即時開閉コマンドCMDが送信された。そこで、ゲートウェイ200は、即時開閉コマンドCMDの受信に応じて、定常のポーリングによる通信とは別の割り込み通信により、即座に水栓装置#2に対して即時開閉コマンドCMDを送信(転送)した。
【0060】
このようにして、本実施形態においては、即時開閉コマンドCMDについては、割り込みにより水栓装置100に即座に送信されるようにしている。これにより、圃場管理者の意図に沿うようにして、即座に水栓装置100の栓部を全開もしくは全閉させて、給排水を開始もしくは停止させることができる。
例えば、図1に例示したようなマルチホップ接続によるトポロジの場合、ゲートウェイ200が即時開閉コマンドを受信したことに応じて、1番目のホップ順の水栓装置100-P1に即座に転送したとしても、ホップ接続の段数が相当に多いような場合には、即時開閉コマンドが送信先の水栓装置100に到達するまでに相当の時間を要してしまう。この場合、即時開閉コマンドを送信したのにもかかわらず、制御対象の水栓装置100にて実際に栓部の全開または全閉の動作が行われる時間が相当に遅延してしまうことになる。
これに対して、本実施形態の場合であれば、ゲートウェイ200は、制御対象(送信先)の水栓装置100に対して、他の水栓装置100を経由させることなく、即時開閉コマンドを送信することができる。これにより、制御対象の水栓装置100は、例えば圃場管理者が圃場管理端末400に操作を行ってから、十分にリアルタイムであるとして捉えられる程度のタイムラグで、即時開閉コマンドに応答して栓部を開閉させる動作を開始できる。
【0061】
[割り込み通信に応じたポーリングによる通信のスキップ]
そのうえで、スター型のトポロジによるゲートウェイ200と水栓装置100との通信のもとでは、単位時間(通信回数規定期間)あたりにおいて、ゲートウェイ200が1つの水栓装置100と通信することが許容される回数の上限(最大通信回数)が規定される場合がある。つまり、ゲートウェイ200と1つの水栓装置100との間の通信回数は、通信回数規定期間としての単位時間において、最大通信回数を越えないようにすることが要求される。
同図では、通信回数規定期間が1時間であり、通信回数規定期間における最大通信回数が4回であるとして定められた場合を例に挙げる。前述のように、巡回単位期間Tbは15分である。この場合、通信回数規定期間としての1時間においては、4つの連続する巡回単位期間Tbが含まれる。従って、同図においては、通信回数規定期間において、ゲートウェイ200と1つの水栓装置100とが、最大通信回数と同じ4回のポーリングによる通信を行うようにされた例が示される。
【0062】
ここで、例えば、即時開閉コマンドの送受信のための通信が行われた巡回単位期間Tb-2から通信回数規定期間Taを開始させるとした場合、通信回数規定期間Taには、4つの巡回単位期間Tb-2、Tb-3、Tb-4、Tb-5が含まれる。これらの4つの巡回単位期間Tbのそれぞれにおいて、ゲートウェイ200がポーリングによる定常の通信を水栓装置#2と行った場合には、以下の不具合が生じる。
つまり、通信回数規定期間Taにおける水栓装置#2との通信は、4回のポーリングによる通信と、1回の即時開閉コマンドの送受信のための通信とが行われることになる。この場合、通信回数規定期間Taにおけるゲートウェイ200と水栓装置#2との通信は、結果的に5回となって、最大通信回数である4回を越えてしまうことになる。
【0063】
そこで、本実施形態のゲートウェイ200は、1つの水栓装置100と割り込みによる通信を行った場合には、以下のように通信を制御する。つまり、ゲートウェイ200は、割り込みによる通信を行った巡回単位期間Tbより後の1つの巡回単位期間Tbにおいて、割り込みによる通信先であった水栓装置100とのポーリングによる定常の通信を行わないようにする。
具体例として、図6においては、水栓装置#2に対して割り込みによる通信が行われた巡回単位期間Tb-2の次となる巡回単位期間Tb-3においては、破線の矢印として示すように、水栓装置#2とのポーリングによる定常の通信をスキップするようにされている。
なお、このように水栓装置#2とのポーリングによる通信がスキップされた場合、巡回単位期間Tb-3における以降の水栓装置#3、#4との通信タイミングが繰り上げられてもよい。
このような通信制御が行われることで、ゲートウェイ200と水栓装置100との通信について、通信回数規定期間に対応する単位時間あたりの最大通信回数を越えないようにすることが可能になる。
【0064】
[ゲートウェイの構成例]
図7を参照して、ゲートウェイ200の構成例について説明する。同図のゲートウェイ200は、ネットワーク対応通信部201、水栓装置対応通信部202、制御部203、及び記憶部204を備える。
ネットワーク対応通信部201は、ネットワークNT経由での通信を実行する。
水栓装置対応通信部202は、水栓装置100と通信を実行する。
制御部203は、ゲートウェイ200における各種の制御を実行する。制御部203としての機能は、ゲートウェイ200が備えるCPUがプログラムを実行することによって実現される。
制御部203は、通信制御部231(第1通信制御部の一例)を備える。通信制御部231は、水栓装置100との通信に関する制御を実行する。つまり、通信制御部231は、スター型のトポロジに応じて、複数の水栓装置100のそれぞれと、他の水栓装置100を経由することなく、巡回単位期間Tbごとにおいて順次通信が行われるように制御する。
記憶部204は、ゲートウェイ200に対応する各種の情報を記憶する。
【0065】
[処理手順例]
図8のフローチャートを参照して、ゲートウェイ200が割り込み通信に関連して実行する処理手順例について説明する。同図の処理は、ゲートウェイ200が水栓装置100とのポーリングによる通信を定常的に行っている状態のもとで実行される。
ステップS101:ゲートウェイ200において通信制御部231は、圃場管理サーバ300から水栓装置100の制御のために送信されるコマンドが受信されるのを待機している。
【0066】
ステップS102:ステップS101にてコマンドが受信されたことが判定された場合、通信制御部231は、さらに、受信されたコマンドが即時開閉コマンドであるか否かについて判定する。具体的に、通信制御部231は、受信されたコマンドが示すコマンド識別子が、栓部の即時全開を指示するコマンドと、栓部の即時全閉を指示するコマンドとのいずれかを示しているのであれば、即時開閉コマンドであると判定してよい。
【0067】
ステップS103:ステップS102にて即時開閉コマンドであると判定された場合、通信制御部231は、受信された即時開閉コマンドを、割り込み通信により、送信先の水栓装置100に対して送信する。
【0068】
ステップS104:一方、ステップS102にて即時開閉コマンドでないと判定された場合、通信制御部231は、受信されたコマンドを記憶部204に記憶させる。記憶されたコマンドは、以降におけるポーリングによる通信の際に送信先の水栓装置100に対して送信される。
【0069】
次に、図9のフローチャートを参照して、ゲートウェイ200が、割り込み通信を行ったことに応じたポーリングによる通信のスキップに関連して実行する処理手順例について説明する。
ステップS201:ゲートウェイ200において、通信制御部231は、巡回単位期間Tbの開始タイミングに至るのを待機している。
ステップS202:巡回単位期間Tbの開始タイミングに至ると、通信制御部231は、ポーリングによる水栓装置100との通信順に対応する変数nについて、初期値である1を代入する。
【0070】
ステップS203:通信制御部231は、1つ前(直前)の巡回単位期間Tbにおいて、通信順がn番目の水栓装置100を対象に割り込み通信による即時開閉コマンドの送信を行ったか否かについて判定する。
【0071】
ステップS204:ステップS203にて、割り込み通信が行われなかったことが判定された場合、通信制御部231は、通信順がn番目の水栓装置100とのポーリングによる通信が行われるように制御を実行する。
一方、ステップS203にて、割り込み通信の行われたことが判定された場合には、通信制御部231は、ステップS204の処理をスキップする。これにより、先の巡回単位期間Tbにおいて割り込み通信が行われた水栓装置100については、今回の巡回単位期間Tbにおけるポーリングによる通信が行われないようにされる。
【0072】
ステップS205:ステップS204の処理の後、もしくはステップS203にて割り込み通信の行われたことが判定された場合、通信制御部231は、変数nについて、最後の通信順に対応する最大値以上となったか否かについて判定する。
ステップS206:ステップS205にて変数nが最大値未満であることが判定された場合、通信制御部231は、変数nをインクリメントし、ステップS203に処理を戻す。これにより、次の通信順の水栓装置100を対象として、ポーリングによる通信の可否が決定される。
そして、ステップS205にて変数nが最大値以上となったことが判定されると、次の巡回単位期間Tbに対応する処理のため、ステップS201に処理が戻される。
【0073】
なお、ゲートウェイ200が割り込み通信により送信すべき特定のコマンドについては、即時開閉コマンドに限定されない。例えば、特定のコマンドは、水栓装置100に所定のパラメータの設定を指示するコマンドや、水栓装置100にて設定されている所定のパラメータのクリアを指示するコマンド等であってもよい。
【0074】
[トポロジ構成の変形例]
図10は、本実施形態の圃場管理システムにおけるトポロジ構成の一変形例を示している。同図においては、図2のゲートウェイ200、ゲートウェイ通信範囲AR、圃場FM、水栓装置100に対応するものを、それぞれ、ゲートウェイ200-1、ゲートウェイ通信範囲AR-1、圃場FM-1、水栓装置100-1としている。
【0075】
同図では、ゲートウェイ200-1のほかにもう1つのゲートウェイ200-2が設けられている。ゲートウェイ200-2は、ゲートウェイ通信範囲AR-2内の圃場FM-2に設置された複数の水栓装置100-2と接続するように定められている。
即ち、同図においては、ゲートウェイ200-1とその配下の水栓装置100-1とによるトポロジと、ゲートウェイ200-2とその配下の水栓装置100-2とによるトポロジとの2つの異なるトポロジが設定されている。
【0076】
同図の説明にあたり、ゲートウェイ200-1、200-2について特に区別しない場合にはゲートウェイ200と記載する。また、ゲートウェイ通信範囲AR-1、AR-2について特に区別しない場合にはゲートウェイ通信範囲ARと記載する。また、圃場FM-1、FM-2について特に区別しない場合には、圃場FMと記載する。また、水栓装置100-1、100-2について特に区別しない場合には、水栓装置100と記載する。
【0077】
ここで、ゲートウェイ200-1とゲートウェイ200-2との位置関係上、ゲートウェイ200-1のゲートウェイ通信範囲AR-1とゲートウェイ200-2のゲートウェイ通信範囲AR-2は、一部が重複している状態にある。ゲートウェイ通信範囲AR-1とゲートウェイ通信範囲AR-2とが重複する範囲(重複範囲)においては、ゲートウェイ200-1の配下にある水栓装置100-1が配置された1つの圃場FM-1が存在する。
このような場合、重複範囲に存在する水栓装置100-1は、ゲートウェイ200-1だけではなくゲートウェイ200-2とも通信が可能な環境にある。しかしながら、ゲートウェイ200-2と重複範囲に存在する水栓装置100-1とでは、互い属するトポロジが異なるので、通信が行われないようにすることが求められる。
【0078】
このためには、例えば、ゲートウェイ200ごとに、通信先として設定された水栓装置100を対応付けた通信先テーブルを設けるようにする。通信先テーブルは、ゲートウェイ200を示すゲートウェイIDに対して、通信先の水栓装置100を示す水栓装置IDを対応付けた構造であってよい。ゲートウェイ200と水栓装置100は、それぞれ自己に対応する通信先テーブルを記憶する。
ゲートウェイ200は、送信する情報に自己のゲートウェイIDを含める。水栓装置100は、ゲートウェイ200から送信された情報に含まれるゲートウェイIDが、通信先テーブルにおいて自己の水栓装置IDと対応付けられていなければ、送信された情報を破棄する。
また、水栓装置100は、送信する情報に自己の水栓装置IDを含める。ゲートウェイ200は、水栓装置100から送信された情報に含まれる水栓装置IDが、通信先テーブルにおいて自己のゲートウェイIDと対応付けられていなければ、送信された情報を破棄する。
これにより、互いに異なるトポロジに属するゲートウェイ200と水栓装置100とで通信を行わないようにすることができる。
【0079】
あるいは、コマンドIDについて、トポロジごとに固有となる値を有するように定義してもよい。そのうえで、ゲートウェイ200、水栓装置100は、受信された情報に含まれるコマンドIDが自己に対応する固有の値を有するものでない場合には、受信された情報を破棄する。
これにより、互いに異なるトポロジに属するゲートウェイ200と水栓装置100とで通信を行わないようにすることができる。
【0080】
あるいは、圃場FMを示す圃場IDを定めたうえで、ゲートウェイ200には、配下の水栓装置100が設置される全ての圃場FMの圃場IDを記憶させ、水栓装置100には自己が設置された圃場FMの圃場IDを記憶させるようにしてよい。
ゲートウェイ200は、情報の送信に際して、記憶された圃場IDを送信する情報に含める。水栓装置100は、自己に対応する圃場IDを送信する情報に含める。ゲートウェイ200は、受信された情報に含まれる圃場IDが自己の記憶するものと一致しない場合には、受信された情報を破棄する。また、水栓装置100は、受信された情報に含まれる圃場IDのうちで自己に一致する圃場IDがない場合には受信された情報を破棄する。
これにより、互いに異なるトポロジに属するゲートウェイ200と水栓装置100とで通信を行わないようにすることができる。
【0081】
図11は、本実施形態の圃場管理システムにおけるトポロジ構成の他の変形例を示している。
同図においては、圃場管理端末400-A、400-B、400-Cの3つの圃場管理端末400がネットワークNTと接続されている。つまり、同図の例では、圃場管理端末400-A、400-B、400-Cごとに対応して、3の圃場管理者A、B、Cが存在している場合を例に挙げている。
また、1つのゲートウェイ200のゲートウェイ通信範囲ARには、圃場管理者がそれぞれ異なる、圃場FM-A、FM-B、FM-Cの3つの圃場FMが含まれている。圃場FM-A、FM-B、FM-Cは、それぞれ圃場管理者A、B、Cが管理する。
この場合のゲートウェイ200は、圃場FM-Aに設置された複数の水栓装置100-A、圃場FM-Bに設置された複数の水栓装置100-B、圃場FM-Cに設置された複数の水栓装置100-Cを配下として通信を行う。同図の説明にあたり、水栓装置100-A、100-B、100-Cについて特に区別しない場合には、水栓装置100と記載する。
このような構成のもとでは、ゲートウェイ200は、例えば圃場管理者A、B、Cが共有するものであってもよいし、土地改良区等の組織が所有するものであってもよい。
【0082】
このような構成のもとでは、ゲートウェイ200及びネットワークNTを経由して水栓装置100と圃場管理サーバ300との間で送受信される情報について暗号化される。これにより、例えばゲートウェイ200と接続された圃場管理端末400のいずれかにより、水栓装置100と圃場管理サーバ300との間で送受信される情報の内容が盗聴されることが防止される。
【0083】
なお、上述の水栓装置100、ゲートウェイ200、圃場管理サーバ300、圃場管理端末400等の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の水栓装置100、ゲートウェイ200、圃場管理サーバ300、圃場管理端末400等に応じた処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 水栓装置、101 給水管、111 栓駆動部、113 センサ対応通信部、114 ゲートウェイ対応通信部、115 電源部、120 制御部、121 通信制御部、130 記憶部、140 操作パネル部、200 ゲートウェイ、201 ネットワーク対応通信部、202 水栓装置対応通信部、203 制御部、204 記憶部、231 通信制御部、300 圃場管理サーバ、400 圃場管理端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11