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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】磁場配向装置および磁場配向ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20241115BHJP
   H01F 13/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01F7/02 Z
H01F13/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024083223
(22)【出願日】2024-05-22
【審査請求日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2024003407
(32)【優先日】2024-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英治
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-298691(JP,A)
【文献】特開2021-158288(JP,A)
【文献】実開昭51-057218(JP,U)
【文献】国際公開第2019/176684(WO,A1)
【文献】特開昭62-289927(JP,A)
【文献】特開2021-125664(JP,A)
【文献】特開平04-085910(JP,A)
【文献】特開昭59-139141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/02
H01F 13/00 -13/02
G11B 5/845
G11B 5/852
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において異極が対向するようにかつ互いに離隔して配置された一対の磁石部と、
前記一対の磁石部を保持するヨークと、を備え、
前記ヨークは、
前記第1方向において前記一対の磁石部の外側に設けられ、かつそれぞれ前記磁石部が固定された一対の第1ヨーク部と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記一対の磁石部の一方側および他方側に設けられ、かつ前記一対の第1ヨーク部を接続する一対の第2ヨーク部と、を有し、
前記第1方向から見て、前記磁石部の外縁は、前記第1ヨーク部の外縁よりも内側に位置付けられ、
各前記第1ヨーク部の前記第2方向における中央部には、前記第1方向において前記磁石部側に向かって凹む凹部が形成され
前記磁石部は、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向に並ぶように設けられた複数の磁石列を含み、
各前記磁石列は、前記第2方向に並ぶように設けられた複数の磁石を含み、
前記複数の磁石列のうちの一の磁石列の前記複数の磁石と、前記一の磁石列に隣り合う他の磁石列の前記複数の磁石とは、前記第2方向に互いにずれるように配置されている、磁場配向装置。
【請求項2】
前記第2方向において前記磁石部の中心から離れるのに従って、各前記第1ヨーク部の前記第1方向の長さが連続的または段階的に長くなるように、前記凹部が形成されている、請求項1に記載の磁場配向装置。
【請求項3】
前記ヨークの前記第2方向における両端部の前記第1方向における長さは、前記第2方向における外側ほど短い、請求項1に記載の磁場配向装置。
【請求項4】
前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向において、前記第1ヨーク部の長さは、前記磁石部の長さの1.1倍以上である、請求項1に記載の磁場配向装置。
【請求項5】
前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向において、前記第1ヨーク部の長さは、前記磁石部の長さの1.6倍以上である、請求項1に記載の磁場配向装置。
【請求項6】
前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向において、前記第2ヨーク部の長さは前記磁石部の長さよりも長い、請求項1に記載の磁場配向装置。
【請求項7】
第1方向において異極が対向するようにかつ互いに離隔して配置された一対の磁石部と、前記一対の磁石部を保持するヨークと、をそれぞれ有する複数の磁場配向装置を備え、
前記ヨークは、
前記第1方向において前記一対の磁石部の外側に設けられ、かつそれぞれ前記磁石部が固定された一対の第1ヨーク部と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記一対の磁石部の一方側および他方側に設けられ、かつ前記一対の第1ヨーク部を接続する一対の第2ヨーク部と、を有し、
前記第1方向から見て、前記磁石部の外縁は、前記第1ヨーク部の外縁よりも内側に位置付けられ、
各前記第1ヨーク部の前記第2方向における中央部には、前記第1方向において前記磁石部側に向かって凹む凹部が形成され、
前記複数の磁場配向装置は、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向に並ぶように配置され、
各前記磁場配向装置の前記磁石部は、前記第2方向に並ぶように設けられた複数の磁石を含み、
前記複数の磁場配向装置のうちの一の磁場配向装置の前記複数の磁石と、前記一の磁場配向装置に隣り合う他の磁場配向装置の前記複数の磁石とは、前記第2方向に互いにずれるように配置されている、磁場配向ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状(帯状)のワークに磁界を印可する磁場配向装置およびそれを備えた磁場配向ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状のワークに磁界を印可する方法として、コイルを用いる方法と、磁石を用いる方法とが知られている。
【0003】
コイルを用いてワークに磁界を印可する場合には、コイルに印可される電圧を調整することによって、磁界強度を調整することができる。したがって、強度の高い磁界を容易にワークに印可することができる。しかしながら、コイルを用いる場合には、コイルに電圧を印可するための電源装置、および発熱対策としての冷却装置が必要になるので、装置構成が大掛かりになる。
【0004】
一方、磁石を用いてワークに磁界を印可する場合には、例えば、特許文献1に開示されている磁場配向装置のように、異極が対向するようにワーク(特許文献1では、磁性塗料が塗布された帯状の非磁性支持体)の両側に磁石を配置して、ワークを搬送しつつワークに磁界を印可することが考えられる。このように磁石を用いてワークに磁界を印可する場合には、電源装置および冷却装置は不要となるので、装置構成を簡単にすることができる。ただし、コイルを用いる場合のように磁界強度を調整することができないので、ワークに対して高強度の磁界を印可する場合には、強力な磁石を用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-54230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワークを搬送しつつワークに対して磁界を適切に印可するためには、ワークの搬送方向において十分な範囲で、磁界を発生させる必要がある。そのためには、例えば、寸法の大きな磁石を用いることが考えられるが、強力な磁石を大きな寸法で形成することは難しい。そこで、例えば、ワークの搬送方向に並ぶように複数の磁石を配置することが考えられる。
【0007】
しかしながら、本発明者による検討の結果、強力な磁石をワークの搬送方向に並ぶように配置しようとすると、隣り合う磁石間に大きな反発力が発生し、磁石を簡単に設置することができないことが分かった。
【0008】
そこで、本発明は、設置が容易な磁場配向装置およびそれを備えた磁場配向ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面における磁場配向装置は、
第1方向において異極が対向するようにかつ互いに離隔して配置された一対の磁石部と、
前記一対の磁石部を保持するヨークと、を備え、
前記ヨークは、
前記第1方向において前記一対の磁石部の外側に設けられ、かつそれぞれ前記磁石部が固定された一対の第1ヨーク部と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記一対の磁石部の一方側および他方側に設けられ、かつ前記一対の第1ヨーク部を接続する一対の第2ヨーク部と、を有し、
前記第1方向から見て、前記磁石部の外縁は、前記第1ヨーク部の外縁よりも内側に位置付けられ、
各前記第1ヨーク部の前記第2方向における中央部には、前記第1方向において前記磁石部側に向かって凹む凹部が形成されている。
【0010】
本発明の他の側面における磁場配向ユニットは、複数の前記磁場配向装置を備え、
前記複数の磁場配向装置は、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向に並ぶように配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、設置が容易な磁場配向装置およびそれを備えた磁場配向ユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明者による検討内容を説明するための図である。
図2図2は、参考例1に係る磁場配向装置を備えた設備を示す概略図である。
図3図3は、磁場配向ユニットを示す斜視図である。
図4図4は、磁場配向装置を示す図である。
図5図5は、磁場配向ユニットにおいて発生する磁界の強さの一例を示した図である。
図6図6は、解析結果を示す図である。
図7図7は、磁石部および第1ヨーク部の第3方向における長さの比と、磁場配向装置の質量との関係を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る磁場配向装置を備えた磁場配向ユニットを示す斜視図である。
図9図9は、第3方向から磁場配向装置を見た図である。
図10図10は、変形例に係る磁場配向装置を示す図である。
図11図11は、他の変形例に係る磁場配向装置を示す図である。
図12図12は、参考例2に係る磁場配向装置を備えた磁場配向ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明者による検討)
本発明者は、磁石を用いてワークに対して磁界を印可する方法について検討を行った。図1は、本発明者による検討内容を説明するための図である。具体的には、図1には、シート状のワークWに対して磁界を印可する設備が示されている。図1に示す設備1は、ワークWを搬送するための搬送装置100、およびワークWに磁界を印可するための複数の磁石ユニット200を備えている。
【0014】
搬送装置100は、複数のローラ102と、複数のローラ102に支持された搬送ベルト104とを備えている。搬送ベルト104は、図示しない駆動源によって駆動されることによって、搬送ベルト104上のワークWを矢印Aで示す方向(以下、搬送方向Aと記載する。)に搬送する。
【0015】
複数の磁石ユニット200は、搬送方向Aに並ぶように配置されている。各磁石ユニット200は、一対の磁石202,204を有している。磁石202は、搬送ベルト104の一方側に設けられ、磁石204は、搬送ベルト104の他方側に設けられている。各磁石ユニット200において、磁石202,204は、異極が対向するように配置されている。これにより、磁石202と磁石204との間に一方向(例えば、磁石204から磁石202に向かう方向)の磁界が発生している。
【0016】
図1に示す設備1では、搬送装置100によってワークWを搬送しつつ複数の磁石ユニット200を用いてワークWに一方向の磁界を印可することができる。しかしながら、本発明者による検討の結果、磁石202,204として強力な磁石(例えば、1T程度の磁束を発生する磁石)を用いる場合には、搬送方向Aに隣り合う磁石間に大きな反発力が発生し、各磁石ユニット200を容易に設置することができないことが分かった。
【0017】
そこで、本発明者は、磁石202,204を接続するようにヨークを設けることによって、磁石202,204が発生する磁束の流れを制御することを試みた。しかしながら、単に磁石202,204を接続するようにヨークを設けるだけでは、搬送方向Aに隣り合う磁石間に発生する反発力を十分に低減することはできなかった。
【0018】
本発明者はさらに検討を進め、磁石202,204を上下から挟むようにヨークを設けることを検討した。その結果、磁石とヨークとの位置関係を適切に調整することによって、搬送方向Aに隣り合う磁石間に発生する反発力を十分に低減できることが分かった。具体的には、一対の磁石がヨークから搬送方向Aに突出しないように、一対の磁石を上下から挟むようにヨークで保持することによって、搬送方向Aに隣り合う磁石間に発生する反発力を十分に低減できることが分かった。
【0019】
上記の知見に基づいて本発明者は、以下に説明する参考例1に係る磁場配向装置およびそれを備えた磁場配向ユニットを作製した。
【0020】
(参考例1)
図2は、参考例1に係る磁場配向装置を備えた設備を示す概略図である。図2に示す設備10が図1に示す設備1と異なるのは、複数の磁石ユニット200の代わりに、磁場配向ユニット12を備えている点である。
【0021】
図3は、磁場配向ユニットを示す斜視図である。図2および図3に示すように、磁場配向ユニット12は、ワークWの搬送方向Aに並ぶように配置された複数の磁場配向装置14を備えている。なお、図3には、互いに直交する第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3が示されている。第3方向D3は、搬送方向Aに平行な方向である。他の図面においても、第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3を適宜示している。
【0022】
各磁場配向装置14の中央部には、搬送ベルト104および搬送ベルト104に支持されたワークW(図2参照)を通過させるための空洞部が形成されている。以下、磁場配向装置14について具体的に説明する。
【0023】
図4は、磁場配向装置14を示す図であり、(a)は第3方向D3から磁場配向装置14を見た図であり、(b)は第1方向D1から磁場配向装置14を見た図である。図3および図4(a)に示すように、磁場配向装置14は、一対の磁石部16と、一対の磁石部16を保持するヨーク18とを備える。
【0024】
一対の磁石部16は、第1方向D1に磁化されている。一対の磁石部16は、第1方向D1において異極が対向するようにかつ互いに離隔するように配置されている。これにより、一対の磁石部16の間には、一方の磁石部16から他方の磁石部16へ向かって一方向の磁界(以下、一方向磁界と記載する。)が発生している。本参考例1では、一対の磁石部16の隙間をワークW(図2参照)が通過する際に、ワークWに磁界が印可される。なお、第1方向D1における一対の磁石部16間の距離は、ワークWの種類、用途等によって適宜調整される。本参考例1では、一対の磁石部16間の距離は、例えば、10mmに設定される。
【0025】
本参考例1では、磁石部16は、第2方向D2に延びるように直方体状に形成されている。図4(a)に示すように、本参考例1では、磁石部16は、第2方向D2に並ぶように設けられた複数の直方体状の磁石16aによって構成されている。磁石16aとしては、公知の永久磁石を用いることができる。具体的には、磁石16aとして、例えば、ネオジム磁石およびサマリウムコバルト磁石等の希土類磁石、またはフェライト磁石、アルニコ磁石を用いることができる。本参考例1では、第2方向D2に隣り合う磁石16aは、例えば接着剤によって、互いに固定されている。
【0026】
本参考例1では、ヨーク18は、一対の磁石部16を囲むように設けられている。ヨーク18の中央部には、第3方向D3に貫通する空洞部19が形成されている。本参考例1では、ヨーク18は、角筒形状を有している。ヨーク18の第2方向D2の長さは、第1方向D1の長さよりも長い。ヨーク18は、鋼材等の磁性体材料によって構成される。具体的には、ヨーク18の材料として、JIS規格で規定されるSS400、SUS430、SUS403等を用いることができる。
【0027】
本参考例1では、ヨーク18は、一対の第1ヨーク部18aと、一対の第2ヨーク部18bとを含む。なお、図4(a)においては、第1ヨーク部18aと第2ヨーク部18bとの境界を一点鎖線で示している。一対の第1ヨーク部18aは、第1方向D1において一対の磁石部16の外側に設けられている。一対の第1ヨーク部18aにそれぞれ、磁石部16が固定されている。本参考例1では、例えば接着剤によって、磁石部16が第1ヨーク部18aに固定されている。
【0028】
なお、本参考例1では、ヨーク18のうち、第1方向D1において一対の磁石部16よりも一方側および他方側の部分をそれぞれ、第1ヨーク部18aとする。一対の第2ヨーク部18bは、第2方向D2において一対の磁石部16よりも外側に設けられ、かつ一対の第1ヨーク部18aを接続している。
【0029】
図4(b)に示すように、第1方向D1から見て、磁石部16の外縁は、第1ヨーク部18aの外縁よりも内側に位置付けられている。言い換えると、第1ヨーク部18aは、磁石部16よりも、第3方向D3の両側に突出している。本参考例1では、第3方向D3において、第1ヨーク部18aの長さbは、磁石部16の長さaの1.1倍以上であることが好ましく、1.6倍以上であることがより好ましい。なお、本参考例1では、第3方向D3における第2ヨーク部18bの長さは、第1ヨーク部18aの長さbと同様に設定される。本参考例1では、第1方向D1における第1ヨーク部18aの長さcは、第3方向D3における第1ヨーク部18aの長さbの0.5~3.5倍に設定されることが好ましい。また、第2方向D2における第2ヨーク部18bの長さdは、第3方向D3における第2ヨーク部18bの長さの0.5~3.5倍に設定されることが好ましい。
【0030】
(参考例1の作用効果)
本参考例1に係る磁場配向装置14では、第1方向D1から見て、磁石部16の外縁は、第1ヨーク部18aの外縁よりも内側に位置付けられている。これにより、磁石部16の第1ヨーク部18a側の端面(第1ヨーク部18aに固定された端面)側から放射状に磁束が漏れることを抑制することができる。その結果、複数の磁場配向装置14を搬送方向Aに並べた際に、搬送方向Aに隣り合う磁場配向装置14間に大きな反発力が発生することを防止することができる。これにより、各磁場配向装置14の近接設置が容易になる。
【0031】
図5は、図3に示す磁場配向ユニット12において複数の磁石部16によって発生される磁界の強さの一例を示した図である。具体的には、図5の横軸は、搬送方向Aにおける位置を示し、縦軸は、第1方向D1の磁束密度を示している。なお、図5に示す磁束密度は、第2方向D2における磁場配向ユニット12の中心部における磁界の磁束密度を示している。
【0032】
図3に示す磁場配向ユニット12では、4つの磁場配向装置14が搬送方向Aに並ぶように配置されている。このため、図5に示すように、磁場配向ユニット12によって発生される磁界の磁束密度は、4つのピークを示すように変化する。ここで、図5において一点鎖線で囲んだ部分に示すように、搬送方向Aにおいて磁場配向ユニット12の一方側および他方側には、上述の一方向磁界とは逆向きに磁束が流れる部分が発生する。すなわち、磁場配向ユニット12の入口側および出口側に、反磁界が発生する。この点について、本参考例1に係る磁場配向装置14では、上述したように、磁石部16の第1ヨーク部18a側の端面から放射状に磁束が漏れることを抑制することができる。これにより、反磁界の強度を十分に低くすることができる。その結果、ワークWに対して一方向磁界を適切に印可できる。
【0033】
なお、ワークWに磁界を印可する目的は特に制限されない。また、ワークWについても特に制限はない。ワークWとしては、例えば、ラバーマグネット(ゴム磁石)、磁性塗料、磁性流体、半導体ウェハ、磁性粒子を含む高分子スラリー、フィルム状電極等が考えられる。なお、上述の参考例1においては、搬送ベルト104によってワークWを搬送しているが、帯状のワークに磁界を印可する場合には、ローラ102によってワークを支持しつつ、ワークを磁場配向ユニット12に通してもよい。
【0034】
(シミュレーション)
本発明者は、上述の磁場配向ユニット12について、電磁界解析ソフト(株式会社JSOL製のJMAG)を用いたシミュレーションにより、ヨーク18の寸法が磁界の強度等に与える影響を調査した。具体的には、図4を参照して、第3方向D3における第1ヨーク部18aの長さb、第1方向D1における第1ヨーク部18aの長さc、および第2方向D2における第2ヨーク部18bの長さdを変えて、磁界解析を行った。そして、反磁界(図5参照)の磁束密度、磁場配向ユニット12において発生する一方向磁界の磁束密度(ピーク値)および第3方向D3(搬送方向A)に隣り合う磁場配向装置14間に発生する反発力を求めた。なお、第2方向D2に直交する第1ヨーク部18aの断面の面積および第1方向D1に直交する第2ヨーク部18bの断面の面積は一定(5600mm)とした。また、磁石部16の寸法および空洞部19の寸法も一定とした。具体的には、磁石部16は、磁石16a(ネオジム磁石)を第2方向D2に11個並べた構成とした。磁石部16の第1方向D1の長さは24mmとし、第2方向D2の長さは396mmとし、第3方向D3の長さaは36mmとした。空洞部19の第1方向D1の長さは58mmとし、第2方向D2の長さは420mmとした。ヨーク18の材料はSS400とした。
【0035】
下記の表1に、解析モデルの寸法および解析結果を示す。なお、下記の表1において、磁石およびヨークのa~dは、図4における長さa~dを示し、ヨークのb/aは、長さbおよび長さaの比の値を示す。質量は、各部の寸法から算出される磁場配向装置14の質量(一対の磁石部16およびヨーク18の合計の質量)を示す。反磁界比率は、反磁界の磁束密度の大きさ(絶対値)および一方向磁界の磁束密度の大きさ(絶対値)の比の値を百分率で表したものである。なお、解析No.1の解析モデルは、ヨーク18を備えていない。解析No.1の解析モデルは、図1に示した複数の磁石ユニット200の磁石202,204と同様に、複数の磁石部16が第3方向D3(搬送方向A)に並べられた構成を有している。また、解析No.2,3の解析モデルでは、磁石部16が第1ヨーク部18aから第3方向D3の両側に突出している。これらの解析No.1~3の解析モデルでは、第3方向D3(搬送方向A)に隣り合う磁石部16が互いに接触している。一方、解析No.4~10の解析モデルは、上述の参考例1に対応する。解析No.4~10の解析モデルでは、第3方向D3(搬送方向A)に隣り合うヨーク18が互いに接触している。なお、解析No.1については、質量は、一対の磁石部16の合計の質量を示し、反発力は、第3方向D3(搬送方向A)に隣り合う磁石部16間に発生する反発力を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
図6に、上記の解析結果をグラフ化して示す。具体的には、図6は、第1ヨーク部18aの長さbおよび磁石部16の長さaの比の値と、第3方向D3に隣り合う磁場配向装置14間(解析No.1については、磁石部16間)に発生する反発力との関係を示すグラフである。また、図7に、長さbおよび長さaの比の値と、磁場配向装置14の質量との関係を示す。
【0038】
表1および図6に示すように、上述の参考例1に対応する解析No.4~10では、搬送方向Aに隣り合う磁石部16間に発生する反発力を小さくすることができた。すなわち、第1方向D1から見て、磁石部16の外縁を第1ヨーク部18aの外縁よりも内側に位置付けることによって、搬送方向Aに隣り合う磁石部16間に発生する反発力を小さくできることが分かった。また、上記反発力を小さくする観点から、長さbおよび長さaの比の値が1.1以上であることが好ましく、1.6以上であることがさらに好ましいことが分かった。さらに、表1および図7に示すように、磁場配向装置14の質量を小さくする観点からも、長さbおよび長さaの比の値が1.1以上であることが好ましく、1.6以上であることがさらに好ましいことが分かった。
【0039】
また、表1に示すように、上述の参考例1に対応する解析No.4~10では、一方向磁界の磁束密度を十分に大きくしつつ、反磁界の磁束密度を十分に低減できた。すなわち、第1方向D1から見て、磁石部16の外縁を第1ヨーク部18aの外縁よりも内側に位置付けることによって、一方向磁界の磁束密度を十分に大きくしつつ、反磁界の磁束密度を十分に低減できることが分かった。
【0040】
上記のように、参考例1に係る磁場配向装置14によって磁場配向ユニット12を構成する場合には、複数の磁場配向装置14を容易に近接設置しつつ、ワークWに対して一方向磁界を適切に印可できることが確認できた。一方で、本発明者は、磁場配向装置の設置をさらに容易にするために、磁場配向装置の軽量化を検討した。具体的には、ヨークを小型化することによって、磁場配向装置(ヨーク)を軽量化することを検討した。
【0041】
しかしながら、ヨークを単に小さくすると、ヨークを通る磁束の量が低下するため、一方向磁界の磁束密度を十分に確保できないおそれがある。そこで、本発明者は、一方向磁界の磁束密度の低下を抑制しつつ、ヨークを軽量化するための構成について詳細な検討を行った。この検討を進める中で、本発明者は、上述の電磁解析ソフトを用いた磁界解析によって、一対の磁石部16によってヨーク18に発生する磁束密度分布を調べた。その結果、ヨーク18のうち、第2方向D2における中央部でかつ第1方向D1における両端側(図4(a)において破線で示す一対の領域181)、および四隅(図4(a)において破線で示す4つの領域182)には、磁束がほとんど流れていないことが分かった。この結果から、本発明者は、磁束がほとんど流れていない上記の部分をヨークから取り除くことによって、一方向磁界の磁束密度の低下を抑制しつつ、ヨークを軽量化できると考えた。
【0042】
本発明は上記の知見に基づいて完成したものである。以下、本発明の実施の形態に係る磁場配向装置およびそれを備えた磁場配向ユニットについて説明する。
【0043】
(実施形態に係る磁場配向装置および磁場配向ユニットの構成)
図8は、本発明の一実施形態に係る磁場配向装置を備えた磁場配向ユニットを示す斜視図である。図8に示すように、本実施形態に係る磁場配向ユニット30は、図2で説明した磁場配向ユニット12と同様に、搬送ベルト104によって搬送されるワークW(図2参照)に磁界を印可できるように構成されている。
【0044】
具体的には、磁場配向ユニット30は、ワークWの搬送方向Aに並ぶように配置された複数の磁場配向装置32を備えている。なお、図8には、互いに直交する第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3が示されている。第3方向D3は、搬送方向Aに平行な方向である。他の図面においても、第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3を適宜示している。
【0045】
各磁場配向装置32の中央部には、搬送ベルト104および搬送ベルト104に支持されたワークW(図2参照)を通過させるための空洞部35が形成されている。本実施形態では、搬送ベルト104およびワークWは、空洞部35内に配置された一対の磁石部16の間を通過する。以下、磁場配向装置32について具体的に説明する。なお、磁場配向装置32の構成要素のうち、上述の参考例1に係る磁場配向装置14の構成要素と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図9は、第3方向D3から磁場配向装置32を見た図である。図8および図9に示すように、磁場配向装置32は、一対の磁石部16と、一対の磁石部16を保持するヨーク34とを備える。ヨーク34は、一対の磁石部16を囲むように設けられている。ヨーク34の中央部には、第3方向D3に貫通する空洞部35が形成されている。ヨーク34の第2方向D2の長さは、第1方向D1の長さよりも長い。ヨーク34は、上述のヨーク18と同様の材料によって構成される。
【0047】
ヨーク34は、一対の第1ヨーク部34aと、一対の第2ヨーク部34bとを含む。本実施形態では、一対の第1ヨーク部34aおよび一対の第2ヨーク部34bはそれぞれ別個の部材によって構成されている。なお、後述の図10に示すヨーク34のように、一対の第1ヨーク部34aおよび一対の第2ヨーク部34bが一体形成されていてもよい。すなわち、本実施形態では、ヨーク34は複数の部材によって構成されているが、ヨーク34が一つの部材によって構成されてもよい。
【0048】
図8および図9に示すように、本実施形態では、一対の第1ヨーク部34aは、第1方向D1において一対の磁石部16の外側に設けられている。一対の第1ヨーク部34aにそれぞれ、磁石部16が固定されている。本実施形態では、例えば接着剤によって、磁石部16が第1ヨーク部34aに固定されている。一対の第2ヨーク部34bは、第2方向D2において一対の磁石部16よりも外側に設けられ、かつ一対の第1ヨーク部34aを接続している。一対の第1ヨーク部34aと一対の第2ヨーク部34bとは、例えば接着剤によって固定されている。
【0049】
各第1ヨーク部34aの第2方向D2における中央部には、第1方向D1において磁石部16側に向かって凹む凹部36が形成されている。本実施形態では、第2方向D2において磁石部16の中心から離れるのに従って、第1ヨーク部34aの第1方向D1の長さが長くなるように、凹部36が形成されている。本実施形態では、第1ヨーク部34aにおいて磁石部16が固定される面34c(図9参照)は、平坦でかつ第1方向D1に直交する方向に延びるように設けられている。これにより、凹部36が形成されている部分において、第1ヨーク部34aの第2方向D2に直交する断面の面積は、第2方向D2において磁石部16の中心から離れるのに従って大きくなっている。
【0050】
また、本実施形態では、各第1ヨーク部34aの第2方向D2における両端部の角部34d(第1方向D1における外側の角部)は、C面状に切り欠かれた形状を有している。これにより、ヨーク34の第2方向D2における両端部の第1方向D1における長さは、第2方向D2における外側ほど小さくなっている。
【0051】
上述の参考例1に係る磁場配向装置14と同様に、第1方向D1から見て、磁石部16の外縁は、第1ヨーク部34aの外縁よりも内側に位置付けられている。言い換えると、第1ヨーク部34aは、磁石部16よりも、第3方向D3の両側に突出している。本実施形態においても、上述の参考例1と同様に、第3方向D3において、第1ヨーク部34aの長さ(図4(b)の長さbに相当)は、磁石部16の長さ(図4(b)の長さaに相当)の1.1倍以上であることが好ましく、1.6倍以上であることがより好ましい。なお、本実施形態においても、第3方向D3における第2ヨーク部34bの長さは、第1ヨーク部34aの長さと同様に設定される。
【0052】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態に係る磁場配向装置32においても、上述の参考例1に係る磁場配向装置14と同様に、第1方向D1から見て、磁石部16の外縁は、第1ヨーク部34aの外縁よりも内側に位置付けられている。これにより、磁石部16の第1ヨーク部34a側の端面(第1ヨーク部34aに固定された端面)側から放射状に磁束が漏れることを抑制することができる。その結果、複数の磁場配向装置32を搬送方向Aに並べた際に、搬送方向Aに隣り合う磁場配向装置32間に大きな反発力が発生することを防止することができる。これにより、各磁場配向装置32の近接設置が容易になる。また、上記のように磁束が漏れることを抑制することができるので、磁場配向ユニット30の入口側および出口側に発生する反磁界の強度を十分に低くすることができる。これにより、ワークWに対して一方向磁界を適切に印可できる。
【0053】
本実施形態では、各第1ヨーク部34aの第2方向D2における中央部には、第1方向D1において磁石部16側に向かって凹む凹部36が形成されている。図4に示したヨーク18で説明したように、磁石部16が固定される第1ヨーク部18a(図4参照)の中央部を通る磁束の量は、第1ヨーク部18aの他の部分を通る磁束の量に比べて少ない。このため、本実施形態では、第1ヨーク部34aの中央部に凹部36を形成することによって第1ヨーク部34aの中央部の断面積が小さくなっても、ヨーク34における磁束の流れは阻害されない。すなわち、本実施形態では、磁束の流れを阻害することなく、ヨーク34(第1ヨーク部34a)の体積を小さくすることができる。これにより、磁場配向装置32の性能を低下させることなく、磁場配向装置32の軽量化が可能になる。その結果、磁場配向装置32の設置がさらに容易になる。
【0054】
なお、本実施形態では、一対の磁石部16によって発生した磁束は、第1ヨーク部34a内を、第2方向D2における内側から外側に向かって(または第2方向D2における外側から内側に向かって)流れる。このため、第1ヨーク部34a(より具体的には、第1方向D1において磁石部16の外側の部分)を通る磁束の量は、第2方向D2において磁石部16の中心から離れるのに従って増加する。そこで、本実施形態では、第2方向D2において磁石部16の中心から離れるのに従って、第1ヨーク部34aの第1方向D1の長さが長くなるように、凹部36が形成されている。これにより、第1ヨーク部34aのうち第1方向D1において磁石部16の外側の部分の断面積(第2方向D2に直交する断面の面積)を、第2方向D2において磁石部16の中心から離れるのに従って大きくしている。その結果、第1ヨーク部34a(ヨーク34)において磁束を円滑に流すことができる。
【0055】
本実施形態では、ヨーク34の第2方向D2における両端部の第1方向D1の長さが第2方向D2における外側ほど短くなるように、各第1ヨーク部34aの角部34dは、C面状に切り欠かれた形状を有している。図4に示したヨーク18で説明したように、ヨーク18の四隅を通る磁束の量は、第1ヨーク部18a(図4参照)の他の部分を通る磁束の量に比べて少ない。このため、本実施形態では、各第1ヨーク部34aの角部34dが切り欠かれた形状であっても、ヨーク34における磁束の流れは阻害されない。すなわち、磁束の流れを阻害することなく、ヨーク34の体積を小さくすることができる。これにより、磁場配向装置32の性能を低下させることなく、磁場配向装置32のさらなる軽量化が可能になる。
【0056】
(変形例)
図9に示したヨーク34では、第2方向D2において磁石部16の中心から離れるのに従って、第1ヨーク部34aの第1方向D1の長さが連続的に長くなるように、凹部36が形成されているが、凹部の形状は上述の例に限定されない。例えば、第2方向D2において磁石部16の中心から離れるのに従って、第1ヨーク部34aの第1方向D1の長さが段階的に長くなるように、凹部が形成されてもよい。
【0057】
図9に示したヨーク34では、第1ヨーク部34aの角部34dがC面状に切り欠かれた形状を有しているが、角部34dの形状は上述の例に限定されない。例えば、角部34dがR面状に切り欠かれた形状を有していてもよい。
【0058】
図8に示した磁場配向ユニット30では、複数の磁場配向装置32が搬送方向Aにおいて互いに接触するように設けられているが、搬送方向Aに隣り合う磁場配向装置32の間に隙間を設けてもよい。ただし、この場合には、搬送方向Aに隣り合う磁場配向装置32の間に反磁界が生じることを抑制できるように、磁場配向装置32間の距離を調整することが好ましい。
【0059】
上述の実施形態では、一列に並ぶ複数の磁石16aによって磁石部16が構成される場合について説明したが、複数列に並ぶ複数の磁石によって磁石部16が構成されてもよい。すなわち、複数の磁石が第3方向D3に複数列に並ぶように配置されてもよい。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0060】
図10は、変形例に係る磁場配向装置を説明するための図であり、(a)は、磁場配向装置を示す斜視図であり、(b)は、磁石部を第1方向D1から見た図である。なお、本実施形態では、ヨーク34の一対の第1ヨーク部34aおよび一対の第2ヨーク部34bは一体形成されている。
【0061】
図10に示すように、本実施形態では、各磁石部16は、第3方向D3に並ぶ複数の磁石列161~164を含む。複数の磁石列161~164はそれぞれ、第2方向D2に並ぶように設けられた複数の直方体状の磁石16aによって構成されている。すなわち、本実施形態では、複数の磁石16aが、第3方向D3に複数列に並ぶように配置されている。
【0062】
各磁石列161~164において、第2方向D2に隣り合う磁石16a同士の境界部16bは、第3方向D3に延びるように存在している。本実施形態では、各磁石列161~164において、第3方向D3に延びる複数の境界部16bが、第2方向D2に並ぶように存在している。
【0063】
複数の磁石列161~164のうちの一の磁石列の複数の磁石16aと、上記一の磁石列に隣り合う他の磁石列の複数の磁石16aとは、第2方向D2に互いにずれるように配置されている。言い換えると、磁石部16の複数の磁石16aは、千鳥状に配置されている。本実施形態では、各磁石列161~164の複数の磁石16aは、他の複数の磁石列の複数の磁石16aに対して第2方向D2にずれるように配置されている。例えば、磁石列161の複数の磁石16aは、他の複数の磁石列162~164の複数の磁石16aに対して第2方向D2にずれるように配置されている。これにより、複数の磁石列161~164のうちの一の磁石列の複数の境界部16bと、複数の磁石列161~164のうちの他の複数の磁石列の複数の境界部16bとが、第2方向D2に互いにずれている。
【0064】
磁石16aは硬い金属部品であるため、磁石16aが直方体形状を有する場合、磁石16aの稜線部に欠けが発生しやすい。磁石16aの稜線部に欠けが発生すると、磁石16aの表面に施されたメッキが剥がれ、メッキが剥がれた部分から錆が発生するおそれがある。このため、磁石16aの稜線部には面取を施すことが好ましい。一方で、磁石16aの稜線部に面取を施すことにより、磁石部16において、複数の境界部16bが他の部分に比べて窪むことになる。この窪みが形成された部分において、磁石部16の磁力が若干低下する。これにより、ワークW(図2)に磁化ムラが発生する。
【0065】
上記の点に対して、本実施形態では、上述したように、複数の磁石列161~164のうちの一の磁石列の複数の磁石16aと、その磁石列に隣り合う他の磁石列の複数の磁石16aとが、第2方向D2に互いにずれるように配置されている。これにより、磁石部16において磁力が低下する部分(境界部16b)が、複数の磁石列161~164に亘って第3方向D3に連続的に存在することを防止できる。言い換えると、複数の磁石列161~164のうちの一の磁石列において磁力が低下した部分(境界部16b)を、その磁石列に隣り合う他の磁石列の磁石16aの磁力によって補うことができる。その結果、ワークW(図2)において、磁化状態が弱い部分が第3方向D3(ワーク搬送方向)に連続して延びるように生じることを防止することができ、ワークWの磁化ムラを軽減することができる。
【0066】
なお、図10に示した例では、第1方向D1に対向する一方の磁石列161の複数の磁石16aの第2方向D2における位置と、他方の磁石列161の複数の磁石16aの第2方向D2における位置とは、互いに等しい。第1方向D1に対向する一方の磁石列162~164の複数の磁石16aと、他方の磁石列162~164の複数の磁石16aとの第2方向D2における位置関係についても同様である。しかしながら、第1方向D1に対向する一方の磁石列の複数の磁石16aと、他方の磁石列の複数の磁石16aとが第2方向D2にずれるように配置されていてもよい。
【0067】
なお、一列に並ぶ複数の磁石16aによって磁石部16が構成される場合には、複数の磁場配向装置32のうちの一の磁場配向装置32の複数の磁石16aと、その磁場配向装置32に隣り合う他の磁場配向装置32の複数の磁石16aとが、第2方向D2に互いにずれるように配置されることが好ましい。これにより、図10に示した磁場配向装置32を用いる場合と同様に、ワークWの磁化ムラを軽減することができる。
【0068】
また、第2方向D2に延びる直方体状の磁石を第3方向D3に並べることによって磁石部16を構成してもよい。また、上述の実施形態では、磁石部16が複数の磁石16aによって構成される場合について説明したが、磁石部16が一つの磁石によって構成されてもよい。
【0069】
図11は、他の変形例に係る磁場配向装置32を示す図である。なお、図11には、第1方向D1から見た磁場配向装置32が示されている。図11に示す磁場配向装置32が、図8に示した磁場配向装置32と異なるのは、第2方向D2における中心部において、第1ヨーク部34aの第3方向D3の長さが短くなっている点である。このように、第2方向D2の位置によって、第1ヨーク部34aの第3方向D3の長さが短くなっていてもよい。なお、第2方向D2の位置によって、第1ヨーク部34aの第3方向D3の長さ、または磁石部16の第3方向D3の長さが変化する場合には、第2方向D2における位置にかかわらず、第2方向D2に直交しかつ磁石部16および第1ヨーク部34aを通る断面において、第3方向D3における第1ヨーク部34aの長さが、第3方向D3における磁石部16の長さの1.1倍以上であることが好ましく、1.6倍以上であることがより好ましい。したがって、図11に示した磁場配向装置32では、B-B断面およびC-C断面の両方において、第3方向D3における第1ヨーク部34aの長さが、第3方向D3における磁石部16の長さの1.1倍以上であることが好ましく、1.6倍以上であることがより好ましい。
【0070】
(参考例2)
図12は、参考例2に係る磁場配向装置を備えた磁場配向ユニットを示す斜視図である。図12に示すように、参考例2に係る磁場配向ユニット20は、複数の磁場配向装置22を備えている。複数の磁場配向装置22は、上述の複数の磁場配向装置14と同様に、ワークWの搬送方向A(図2参照)に並ぶように配置される。
【0071】
各磁場配向装置22は、一対の磁石部24と、一対の磁石部24を保持するヨーク26とを備える。一対の磁石部24は、第1方向D1に磁化されている。一対の磁石部24は、第1方向D1において異極が対向するようにかつ互いに離隔するように配置されている。これにより、一対の磁石部24の間には、一方の磁石部24から他方の磁石部24へ向かって一方向の磁界が発生している。本参考例2では、一対の磁石部24の隙間をワークW(図2参照)が通過する際に、ワークWに磁界が印可される。なお、第1方向D1における一対の磁石部24間の距離は、ワークWの種類、用途等によって適宜調整される。磁石部24は上述の磁石部16と同様に構成できるので、磁石部24の詳細な説明は省略する。
【0072】
ヨーク26は、上述のヨーク18と同様に、鋼材等の磁性体材料によって構成される。本参考例2では、ヨーク26は、第3方向D3から見てC字形状(U字形状)を有している。具体的には、ヨーク26は、一対の第1ヨーク部26aと、第2ヨーク部26bとを含む。一対の第1ヨーク部26aはそれぞれ、第2ヨーク部26bに片持ち状に支持されている。なお、図12においては、第1ヨーク部26aと第2ヨーク部26bとの境界を一点鎖線で示している。
【0073】
本参考例2では、第1ヨーク部26aは、第2方向D2における一方側から順に、均一部61および減少部62を有している。本参考例2では、一対の第1ヨーク部26aの均一部61同士が、第2ヨーク部26bによって接続されている。均一部61は、第1ヨーク部26aのうち第2方向D2に直交する断面の面積が均一な部分である。減少部62は、第2方向D2に直交する断面の面積が、第2ヨーク部26b(均一部61)側から第1ヨーク部26aの先端部63に向かって連続的に減少する部分である。なお、本参考例2では、減少部62の第3方向D3の長さは、第2ヨーク部26b側から先端部63に向かって段階的に減少し、減少部62の第1方向D1の長さは、第2ヨーク部26b側から先端部63に向かって連続的に減少している。
【0074】
一対の第1ヨーク部26aにそれぞれ、磁石部24が固定されている。第2ヨーク部26bは、第2方向D2において一対の磁石部24よりも外側に設けられ、かつ一対の第1ヨーク部26aを接続している。
【0075】
上述の磁場配向装置14と同様に、本参考例2に係る磁場配向装置22においても、第1方向D1から見て、磁石部24の外縁は、第1ヨーク部26aの外縁よりも内側に位置付けられている。上述の磁場配向装置14と同様に、第3方向D3において、第1ヨーク部26aの長さは、磁石部24の長さの1.1倍以上であることが好ましく、1.6倍以上であることがより好ましい。本参考例2においても、第3方向D3における第2ヨーク部26bの長さは、第1ヨーク部26aの長さと同様に設定される。
【0076】
(作用効果)
本参考例2に係る磁場配向装置22においても、第1方向D1から見て、磁石部24の外縁は、第1ヨーク部26aの外縁よりも内側に位置付けられている。これにより、磁石部24の第1ヨーク部26a側の端面(第1ヨーク部26aに固定された端面)側から放射状に磁束が漏れることを抑制することができる。その結果、複数の磁場配向装置22を搬送方向Aに並べた際に、搬送方向Aに隣り合う磁場配向装置22間に大きな反発力が発生することを防止することができる。これにより、各磁場配向装置22の近接設置が容易になる。また、上述の磁場配向装置14と同様に、反磁界の強度を十分に低くすることができる。
【0077】
また、本参考例2に係る磁場配向装置22は、第3方向D3から見てC字形状(U字形状)を有するヨーク26を有している。これにより、例えば、搬送ベルト104の側方から磁場配向装置22を搬送ベルト104に嵌め込むことができるので、磁場配向装置22の設置がさらに容易になる。また、複数の磁場配向装置22を配置する際に、いずれかの磁場配向装置22と他の磁場配向装置22とを、第2方向D2における逆側から搬送ベルト104に嵌め込むこともできる。これにより、磁場配向装置22の配置の自由度が向上する。
【0078】
なお、本参考例2に係る磁場配向装置22では、第1ヨーク部26aは片持ち状に第2ヨーク部26bに支持されている。この場合、第1ヨーク部26aの先端部63側を通る磁束の量は、第1ヨーク部26aの第2ヨーク部26b側を通る磁束の量よりも少なくなる。このため、第1ヨーク部26aの先端部63側の断面積を、第1ヨーク部26aの第2ヨーク部26b側の断面積に比べて小さくしても、磁束の流れが阻害されない。そこで、本参考例2では、第1ヨーク部26aの先端部63側に減少部62を設けている。これにより、磁束の流れを阻害することなく、第1ヨーク部26aの体積を小さくすることができる。その結果、磁場配向装置22の性能を低下させることなく、磁場配向装置22の軽量化が可能になる。
【0079】
なお、上述の参考例2では、減少部62において、第2方向D2に直交する断面の面積が、第2ヨーク部26b側から先端部63に向かって連続的に減少しているが、第2方向D2に直交する断面の面積が、第2ヨーク部26b側から先端部63に向かって段階的に減少してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、設置が容易な磁場配向装置およびそれを備えた磁場配向ユニットが得られる。
【符号の説明】
【0081】
1,10 設備
12,20,30 磁場配向ユニット
14,22,32 磁場配向装置
16,24 磁石部
18,26,34 ヨーク
18a,26a,34a 第1ヨーク部
18b,26b,34b 第2ヨーク部
【要約】
【課題】設置が容易な磁場配向装置を提供する。
【解決手段】磁場配向装置32は、第1方向D1において異極が対向するようにかつ互いに離隔して配置された一対の磁石部16と、一対の磁石部16を保持するヨーク34とを備える。ヨーク34は、第1方向D1において一対の磁石部16の外側に設けられ、かつそれぞれ磁石部16が固定された一対の第1ヨーク部34aと、第1方向D1に直交する第2方向D2において一対の磁石部16よりも外側に設けられ、かつ一対の第1ヨーク部34aを接続する一対の第2ヨーク部34bと、を有する。第1方向D1から見て、磁石部16の外縁は、第1ヨーク部34aの外縁よりも内側に位置付けられている。第1ヨーク部34aの第2方向D2における中央部には、第1方向D1において磁石部16側に向かって凹む凹部36が形成されている。
【選択図】 図9

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12