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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車両盗難防止システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/04 20130101AFI20241115BHJP
   B60R 25/08 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B60R25/04
B60R25/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024122104
(22)【出願日】2024-07-29
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524284841
【氏名又は名称】内田 吏
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】内田 吏
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-149050(JP,A)
【文献】特開平1-103557(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2331736(GB,A)
【文献】米国特許第4747465(US,A)
【文献】登録実用新案第3074443(JP,U)
【文献】米国特許第5213388(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が座るシートが載せられるシート支持フレームにより支持される遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を前記シート支持フレームに対し車両の前後方向に移動可能とするスライド機構と、
前記遮蔽部材を前記前後方向で、前記車両の室内におけるペダル配置空間を開放した第1位置で停止させた状態に固定する第1ロック機構と、
前記遮蔽部材を、前記前後方向で前記第1位置より前方であり、かつ、前記ペダル配置空間を閉じた第2位置で停止させた状態に固定する第2ロック機構と、
を備えている、車両盗難防止システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両盗難防止システムにおいて、
前記シートを前記シート支持フレームに対し前記前後方向へ移動可能とするシートスライド機構と、
前記シート支持フレームに対し前記前後方向における前記シートの位置を調整する操作部材と、
が更に設けられ、
前記操作部材の操作状態は、
前記シートが前記シート支持フレームに対し前記前後方向に移動することを阻止するロック状態と、
前記シートが前記シート支持フレームに対し前記前後方向に移動することを許容するロック解除状態と、
を含み、
前記遮蔽部材には、前記操作部材を前記ロック状態に保持する保持部材が設けられており、
前記保持部材は、前記遮蔽部材が前記第2位置で停止されると、前記操作部材を前記ロック状態に保持する構成である、車両盗難防止システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両盗難防止システムにおいて、
前記遮蔽部材が前記第1位置に停止されていると、前記シートを真上から見た平面視で、前記遮蔽部材の配置領域と前記シートの配置領域とが重なるように、前記遮蔽部材が構成されている、車両盗難防止システム。
【請求項4】
請求項1記載の車両盗難防止システムにおいて、
前記シートは、
座部及び背もたれと、
前記座部に対する前記背もたれの傾斜角度を変更するためのリクライニング機構と、
を有し、
前記リクライニング機構によって調整された前記背もたれの傾斜角度を固定する背もたれロック機構が更に設けられ、
前記背もたれロック機構は、前記遮蔽部材が前記第2位置で停止されていると、前記リクライニング機構によって前記座部に対する前記背もたれの傾斜角度が変更されることを阻止する構成を有する、車両盗難防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の盗難を防止するために車両の室内に設けられる、車両盗難防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難を防止するために車両の室内に設けられる、車両盗難防止システムの一例が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1に記載されている車両盗難防止システムは、内部に空間を持つ箱体と、この箱体の一方にペダルを出し入れする開口部とを備え、箱体内にあって、ペダルを拘束する下部ロックアームと、この下部ロックアームは基端を回転軸に固着され、この回転軸を支点として回動させる固定装置と、回転軸は箱体の内側に配置された一対の立壁面に支えられ、箱体の外側に配された鍵付きのロックレバーにより回転されることを特徴とする。
【0003】
また、特許文献2に記載されている車両盗難防止システムは、車両の不使用時には車室内のコントロールパネル上あるいは、コンソールボックスの下部に設けられ、シート部材を繰り出し可能に巻き込んだ巻取機を備え、少なくとも始動用キー部を覆うようにシート部材を繰り出し車室内に着脱可能となるように設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2024-43172号公報
【文献】特開2000-16249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、特許文献1及び特許文献2に記載されている車両盗難防止システムにおいては、何れも車両の走行が可能であるため、改善の余地があるという課題を認識した。
【0006】
本開示の目的は、車両の走行を阻止することの可能な、車両盗難防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態は、乗員が座るシートが載せられるシート支持フレームにより支持される遮蔽部材と、前記遮蔽部材を前記シート支持フレームに対し車両の前後方向に移動可能とするスライド機構と、前記遮蔽部材を前記前後方向で、前記車両の室内におけるペダル配置空間を開放した第1位置で停止させた状態に固定する第1ロック機構と、前記遮蔽部材を、前記前後方向で前記第1位置より前方であり、かつ、前記ペダル配置空間を閉じた第2位置で停止させた状態に固定する第2ロック機構と、を備えている車両盗難防止システムを有する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、車両の走行を阻止することの可能な車両盗難防止システムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(A),(B)は、車両盗難防止システムを搭載した車両の模式的な側面図である。
図2】車両盗難防止システムの遮蔽部材が、不使用位置で停止されている状態の模式的な側面図である。
図3】車両盗難防止システムの遮蔽部材が、使用位置で停止されている状態の模式的な側面図である。
図4図4(A)は、車両盗難防止システムの遮蔽部材が、不使用位置で停止されている状態の模式的な平面図、図4(B)は、車両盗難防止システムの遮蔽部材が、使用位置で停止されている状態の模式的な平面図である。
図5】車両盗難防止システムの構造を示す平面図である。
図6】車両盗難防止システムを前方から見た正面図である。
図7】車両盗難防止システムを後方から見た背面図である。
図8】車両盗難防止システムの遮蔽部材を示す斜視図である。
図9図9(A),(B)は、フロントシートのリクライニング機構の構成を示す模式的な側面図である。
図10図10(A),(B)は、フロントシートのリクライニング機構の構成を示模式的な側面図である。
図11】遮蔽部材のロック機構を示す模式的な平面図である。
図12】遮蔽部材のロック機構を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(概要)
以下、車両盗難防止システムに含まれるいくつかの実施形態を図面に基づいて説明する。車両盗難防止システムの実施形態を説明するための図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
図1(A),(B)のように、車両盗難防止システム10は、車両11の室内12へ設けられる。より具体的に説明すると、図2及び図3のように、フロントシート組立体13が室内12へ設けられており、車両盗難防止システム10は、フロントシート組立体13へ取り付けられる。フロントシート組立体13は、フロントシート14及びシート支持フレーム15を有する。シート支持フレーム15は、フロントシート14及び車両盗難防止システム10を支持する架台である。
【0012】
フロントシート14は、車両11の乗員16が座って姿勢を保持する機構であり、フロントシート14は、座部17、背もたれ18、ヘッドレスト19を有する。乗員16は、車両11の所有者、または、車両11の所有者の承認を受けた正当な運転者である。座部17は、乗員16が座る要素であり、略水平方向に沿って延ばされている。背もたれ18は、座部17の後端に接続され、かつ、座部17から上に向けて延ばされている。図2及び図3のように、座部17にベースプレート73が固定され、背もたれ18にアームプレート74が固定されている。ベースプレート73とアームプレート74とは、ヒンジ軸20を介して接続されている。
【0013】
図5のように、フロントシート14を平面視すると、ベースプレート73、アームプレート74及びヒンジ軸20は、幅方向A1でフロントシート14の両側にそれぞれ設けられている。幅方向A1において、2個のアームプレート74の間に、2個のベースプレート73が配置されている。また、幅方向A1において、2個のベースプレート73の間に、第1スライダ30及び第2スライダ31が配置されている。2個のベースプレート73は、第1スライダ30の側方に設けられているベースプレート73Aと、第2スライダ31の側方に設けられているベースプレート73Bと、を含む。2個のアームプレート74は、第1スライダ30の側方に設けられているアームプレート74Aと、第2スライダ31の側方に設けられているアームプレート74Bと、を含む。ベースプレート73、アームプレート74及びヒンジ軸20は、全て金属製である。
【0014】
このため、背もたれ18は、座部17に対してヒンジ軸20を中心として所定角度の範囲内で動作及び停止できる構成を有する。ヒンジ軸20は、車両11の幅方向A1、つまり、左右方向に沿って配置され、かつ、略水平に配置されている。ヘッドレスト19は、背もたれ18のうち、座部17に接続された箇所とは反対の端部へ取り付けられている。ヘッドレスト19は、乗員16の頭部16Aを支えることにより、頭部16Aが、車両11の前後方向A2に沿って後方へ移動する量を規制する要素である。
【0015】
車両11は、車体の一部を構成するフロアパネル21を有し、フロアパネル21は、略水平方向に沿って配置されている。車両11の前後方向A2において、フロアパネル21の前端には、図4(A),(B)に示すようなダッシュパネル90が接続されている。ダッシュパネル90の材質は、金属、例えば、鋼板であり、かつ、車両11の高さ方向へ延ばされている。車両11の平面視で、ダッシュパネル90の一部が湾曲されてペダル配置空間93が設けられている。ペダル配置空間93は凹部であり、ペダル配置空間93に、アクセルペダル94、ブレーキペダル95、パーキングブレーキペダル97が設けられている。
【0016】
アクセルペダル94、ブレーキペダル95は、乗員16が足61でそれぞれ操作する(踏む)要素である。アクセルペダル94は、車両11に搭載されている駆動力源の出力を調整するために操作される。駆動力源は、エンジン、電動モータを含む。ブレーキペダル95は、車輪96に制動力を付与する制動装置を動作させるために操作される。パーキングブレーキペダル97は、車両11を駐車状態に保持するためのパーキングブレーキ力を発生及び解除させるために操作される。
【0017】
図3のように、シート支持フレーム15は、フロアパネル21上に設けられている。つまり、前後方向A2において、シート支持フレーム15は、ダッシュパネル90より後方へ配置されている。シート支持フレーム15は、各種要素により構成されている。
【0018】
シート支持フレーム15は、フロントシート14の荷重を間接的に支持する要素である。シート支持フレーム15を構成する各種要素の材質は、金属、例えば、鋼管、冷間圧延鋼板、等である。シート支持フレーム15は、図5のように、第1レール22、第1前脚部23、第1後脚部24、第2レール25、第2前脚部26、第2後脚部27、前接続部材28、後接続部材29、を有する。
【0019】
第1レール22及び第2レール25は、共に車両11の前後方向A2に沿って配置された棒部材である。図6及び図7のように、第1レール22と第2レール25とは、幅方向A1で間隔をおいて配置されている。シート支持フレーム15の平面視で、第1レール22と第2レール25とが平行に配置されている。平面視とは、鉛直方向、つまり、重力の作用方向でシート支持フレーム15を真上から見た状態である。また、第1レール22及び第2レール25は、略水平に配置されている。
【0020】
また、第1レール22の前端に第1前脚部23が取り付けられ、第1レール22の後端に第1後脚部24が取り付けられている。さらに、第2レール25の前端に第2前脚部26が取り付けられ、第2レール25の後端に第2後脚部27が取り付けられている。第1前脚部23、第1後脚部24、第2前脚部26及び第2後脚部27は、固定要素、例えば、ボルトによってフロアパネル21へそれぞれ固定されている。
【0021】
第1レール22と第2レール25とが、複数の接続部材、例えば、前接続部材28及び後接続部材29によって接続されている。シート支持フレーム15の平面視で、前接続部材28及び後接続部材29は、車両11の前後方向A2で間隔をおいて配置されている。シート支持フレーム15の平面視で、前接続部材28及び後接続部材29は、共に車両11の幅方向A1に沿って配置されている。また、シート支持フレーム15の平面視で、前接続部材28と後接続部材29とが、平行に配置されている。前接続部材28及び後接続部材29は、第1レール22及び第2レール25をフロアパネル21から立ち上げられた状態に保持し、かつ、補強する役割を果たす。
【0022】
第1スライダ30が第1レール22により支持され、第2スライダ31が第2レール25により支持されている。第1スライダ30及び第2スライダ31は、フロントシート14の荷重を間接的に受ける要素である。第1スライダ30及び第2スライダ31を構成する材質は、金属、例えば、鋼管、冷間圧延鋼板、等である。第1スライダ30は、第1レール22に支持された状態において、前後方向A2に沿い所定の範囲内で移動及び停止できる構成を有する。第2スライダ31は、第2レール25に支持された状態において、前後方向A2に沿い所定の範囲内で移動及び停止できる構成を有する。
【0023】
複数のシート支持ピン、例えば、2個のシート支持ピン32,33が第1スライダ30に取り付けられている。また、複数のシート支持ピン、例えば、2個のシート支持ピン34,35が第2スライダ31に取り付けられている。シート支持ピン32,33は、第1スライダ30の上面から鉛直方向に突出された軸部を有する要素であり、シート支持ピン34,35は、第2スライダ31の上面から鉛直方向に突出された軸部を有する要素である。シート支持ピン32,33,34,35は、フロントシート14の荷重を支える要素であり、シート支持ピン32,33,34,35の材質は、共に金属、例えば、鉄、真鍮、ステンレス、炭素鋼、等である。
【0024】
シート支持ピン32,33は、前後方向A2に間隔をおいて配置されている。シート支持ピン32は、前後方向A2でシート支持ピン33より前に配置されている。シート支持ピン34,35は、前後方向A2に間隔をおいて配置されている。シート支持ピン34は、前後方向A2でシート支持ピン35より前に配置されている。シート支持ピン32,34は、前後方向A2で同じ位置に配置され、シート支持ピン33,35は、前後方向A2で同じ位置に配置されている。
【0025】
シート支持プレート36が、シート支持ピン32,33,34,35によって支持されている。シート支持プレート36は、フロントシート14の荷重を支持する要素である。シート支持プレート36の材質は、金属、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、等である。フロントシート14の平面視で、シート支持プレート36の外周形状は、四角形、例えば、長方形、正方形である。フロントシート14の平面視で、シート支持プレート36の配置領域は、フロントシート14の座部17の配置領域内に収まっている。
【0026】
シート支持ピン32,33,34,35には、環状のワッシャ37がそれぞれ取り付けられている。ワッシャ37は、シート支持ピン32,33,34,35に対して、固定要素によって鉛直方向にそれぞれ位置決め及び固定されている。ワッシャ37の材質は金属、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、等である。固定要素は、ナット、スリーブ、等を含む。
【0027】
シート支持プレート36は、ワッシャ37及び固定要素により挟まれた状態で、シート支持ピン32,33,34,35へ固定されている。シート支持プレート36がシート支持ピン32,33,34,35へ固定された状態で、シート支持プレート36は、略水平に保持されている。シート支持プレート36と、第1スライダ30及び第2スライダ31との間には、鉛直方向の空間が存在する。前記した2個のベースプレート73は、シート支持プレート36の上面へ間隔をおいて固定されている。
【0028】
フロントシート14は、シート支持プレート36の上に載せられている。フロントシート14の座部17とシート支持プレート36とが、固定要素により固定されている。固定要素は、ブラケット、ボルト、ナット、等を含む。
【0029】
前後調整レバー38が、第1スライダ30及び第2スライダ31へ取り付けられている。前後調整レバー38は、前後方向A2におけるフロントシート14の位置を調整するために、乗員16により操作される。前後調整レバー38の材質は、金属、例えば鋼である。前後調整レバー38は、棒部材を略水平な平面内で湾曲させて配置したものであり、前後調整レバー38の両端が、第1スライダ30及び第2スライダ31へそれぞれ接続されている。
【0030】
前後調整レバー38は、シート支持フレーム15の側面視で、支持軸39を中心として作動可能である。支持軸39は、第1スライダ30及び第2スライダ31へそれぞれ設けられている。前後調整レバー38は、弾性部材、例えば、金属製のスプリングにより時計回りに付勢されている。第1スライダ30が第1レール22に対し前後方向A2へ移動することを阻止するシートロック機構が設けられている。また、第2スライダ31が第2レール25に対し前後方向A2へ移動することを阻止するシートロック機構が設けられている。
【0031】
乗員16が前後調整レバー38を操作していなければ、前後調整レバー38は、初期位置で停止されている。このため、第1スライダ30及び第2スライダ31は、シートロック機構により、前後方向A2での移動が阻止される。乗員16が、前後調整レバー38を弾性部材の付勢力に抗して操作し、前後調整レバー38が図 で支持軸39を中心として反時計方向に所定角度作動されると、シートロック機構が解除される。このため、乗員16は、フロントシート14に力を与えて、第1スライダ30及び第2スライダ31を前後方向A2で移動させることができる。
【0032】
また、第1スライダ30にブラケット40が固定され、第2スライダ31にブラケット41が固定されている。ブラケット40は、第2スライダ31へ向けて突出され、ブラケット41は、第1スライダ30へ向けて突出されている。ブラケット40,41の材質は、金属、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、等である。
【0033】
支持プレート42がブラケット40,41へ固定されている。支持プレート42は、第1スライダ30と第2スライダ31との間へ配置されている。支持プレート42の材質は、金属、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、等である。第1スライダ30及び第2スライダ31が前後方向A2へ移動されると、支持プレート42は、第1スライダ30及び第2スライダ31と共に前後方向A2へ移動される。
【0034】
複数、例えば、2本のレール43が支持プレート42へ固定されている。2本のレール43の材質は、金属、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、等である。2本のレール43は、前後方向A2に沿って延ばされ、かつ、略水平に配置されている。シート支持フレーム15の平面視で、2本のレール43は、幅方向A1で間隔をおいて配置され、かつ、平行に配置されている。
【0035】
スライダ44が、2本のレール43によりそれぞれ支持されている。スライダ44を構成する材質は、金属、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、等である。2個のスライダ44は、レール43に支持された状態において、前後方向A2に沿い所定の範囲内で移動及び停止できる構成を有する。2個のスライダ44は、レール43に対して鉛直方向に移動しないように連結されている。
【0036】
遮蔽部材45が設けられている。遮蔽部材45は、仮想者60がフロントシート14へ座った状態で、足61でペダル70,71,72を操作することを阻止するために設けられている。仮想者60は、車両11の所有者ではなく、かつ、車両11の所有者の承認を受けていない者である。仮想者60は、例えば、車両11の盗難を意図する者である。遮蔽部材45の材質は、外力を受けても容易に変形することのない金属、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、等である。図7及び図8のように、遮蔽部材45は、上板46、側板47,48、スカート板49、前板50を有する。
【0037】
シート支持フレーム15の平面視で、上板46の外周形状は略四角形、例えば、正方形、または長方形である。上板46は略水平に配置されており、上板46の下面に2本のスライダ44がそれぞれ固定されている。このため、遮蔽部材45は、2本のスライダ44と共に、前後方向A2に沿って移動可能である。
【0038】
上板46を厚さ方向に貫通する2つのガイド孔51が設けられている。2つのガイド孔51は、前後方向A2に沿って配置され、かつ、互いに平行に配置されている。シート支持ピン32,34の長さ方向の一部は、それぞれ別々にガイド孔51へ配置されている。遮蔽部材45が前後方向A2に沿って移動された場合、遮蔽部材45は、シート支持ピン32,34によって移動が阻害されない。
【0039】
上板46には、押さえ部材92が設けられている。押さえ部材92は、前後調整レバー38の操作を阻止するための要素である。押さえ部材92は、上板46の下面から下へ向けて突出されている。押さえ部材92は、前後調整レバー38へ押し付けられた場合に変形しにくい材質、例えば、金属、木材である。押さえ部材92は、側板47と側板48との間に配置されており、かつ、押さえ部材92は、前後方向A2で所定の長さを有している。つまり、押さえ部材92は、側板47,48と平行に配置されている。
【0040】
遮蔽部材45を側面視すると、上板46の下面に対する押さえ部材92の突出量は、前後方向A2における位置により異なっている。つまり、押さえ部材92の下端(下面)92Aは、水平面に対して傾斜されている。具体的に説明すると、下端92Aは、前板50から後方に向けて離れることに伴い、上板46の下面に対する突出量が増加する向きで傾斜されている。
【0041】
遮蔽部材45が2本のスライダ44を介して2本のレール43により支持されている状態における鉛直方向で、上板46は、シート支持プレート36と、第1スライダ30及び第2スライダ31との間に配置されている。なお、シート支持フレーム15の平面視で、シート支持ピン33,35は、遮蔽部材45より後方に配置されている。つまり、シート支持ピン33,35は、遮蔽部材45の移動範囲外に配置されている。
【0042】
側板47,48は、上板46の前後方向A2に沿った縁部へそれぞれ接続されている。側板47,48は、共に上板46から下へ向けて略垂直に突出されている。側板47と側板48とは平行に配置されており、かつ、幅方向A1に間隔をおいて配置されている。遮蔽部材45が2本のスライダ44を介して2本のレール43により支持されている状態で、シート支持フレーム15は、側板47と側板48との間に位置する。
【0043】
側板47には、誤作動防止機構80及びロック機構81が設けられており、側板48には、誤作動防止機構82及びロック機構83が設けられている。誤作動防止機構80,82は、遮蔽部材45が、不用意にダッシュパネル90へ近づく向きで作動されることを阻止するために設けられている。ロック機構81,83は、遮蔽部材45がダッシュパネル90から離れる向きで作動されることを阻止するために設けられている。
【0044】
前後方向A2において、誤作動防止機構80は、ロック機構81より前に配置されている。誤作動防止機構80は、キーシリンダ80A及びロックピン80Bを有し、ロック機構81は、キーシリンダ81A及びロックピン81Bを有する。キーシリンダ80Aへキーを差し込んで第1方向へ所定角度回転させると、ロックピン80Bが幅方向A1に沿って突出されて停止する。キーをキーシリンダ80Aを抜き取ると、ロックピン80Bは停止した位置、つまり、ロック位置に保持される。また、キーシリンダ80Aにキーを差し込んで第2方向へ所定角度回転させると、ロックピン80Bが幅方向A1に沿って後退されて停止する。キーをキーシリンダ80Aから抜き取ると、ロックピン80Bは非ロック位置で停止される。
【0045】
ロック機構81は、キーシリンダ81Aヘキーを差し込んで第1方向へ所定角度回転させると、ロックピン81Bが幅方向A1に沿って突出されて停止する。キーをキーシリンダ81Aを抜き取ると、ロックピン81Bは停止した位置、つまり、ロック位置に保持される。また、キーシリンダ81Aにキーを差し込んで第2方向へ所定角度回転させると、ロックピン81Bが幅方向A1に沿って後退されて停止する。キーをキーシリンダ81Aから抜き取ると、ロックピン81Bは非ロック位置で停止される。
【0046】
前後方向A2において、誤作動防止機構82は、ロック機構83より前に配置されている。誤作動防止機構82は、キーシリンダ82A及びロックピン82Bを有し、ロック機構83は、キーシリンダ83A及びロックピン83Bを有する。キーシリンダ82Aへキーを差し込んで第1方向へ所定角度回転させると、ロックピン82Bが幅方向A1に沿って突出されて停止する。キーをキーシリンダ82Aから抜き取ると、ロックピン82Bは停止した位置、つまり、ロック位置に保持される。また、キーシリンダ82Aにキーを差し込んで第2方向へ所定角度回転させると、ロックピン82Bが幅方向A1に沿って後退されて停止する。キーをキーシリンダ82Aから抜き取ると、ロックピン82Bは非ロック位置で停止される。
【0047】
ロック機構83は、キーシリンダ83Aヘキーを差し込んで第1方向へ所定角度回転させると、ロックピン83Bが幅方向A1に沿って突出されて停止する。キーをキーシリンダ83Aから抜き取ると、ロックピン83Bは停止した位置、つまり、ロック位置に保持される。また、キーシリンダ83Aにキーを差し込んで第2方向へ所定角度回転させると、ロックピン83Bが幅方向A1に沿って後退されて停止する。キーをキーシリンダ83Aから抜き取ると、ロックピン83Bは非ロック位置で停止される。
【0048】
スカート板49は、前後方向A2において側板47,48の前端へ接続されている。スカート板49は、鉛直方向に延ばされ、かつ、幅方向A1に沿って延ばされている。前板50は、前後方向A2において上板46の前端へ接続されている。前板50は、鉛直方向に延ばされ、かつ、幅方向A1に沿って延ばされている。前板50は、鉛直方向でスカート板49より上に位置する。また、前板50とスカート板49との間に開口部52が設けられている。開口部52は、側板47と側板48との間の空間C1へつながっている。
【0049】
スカート板49及び前板50は、前後方向A2における遮蔽部材45の位置に関わりなく、座部17の前端より前方に位置する。また、前板50の上端50Aは、座部17の前部の上端17Aより下に位置する。さらに、遮蔽部材45が2本のスライダ44と共に前後方向A2に沿って移動された場合に、前後調整レバー38の前端が、開口部52へ進入及び退出される。
【0050】
また、鉛直方向において、側板47,48、スカート板49のそれぞれの下端は、第1レール22及び第2レール25の下端と、フロアパネル21との間に位置する。このため、遮蔽部材45が2本のスライダ44と共に前後方向A2に沿って移動された場合に、側板47,48、スカート板49が、フロアパネル21を擦ることを抑制できる。
【0051】
さらに、前板50には、ロック機構84が設けられている。ロック機構84は、幅方向A1に間隔をおいて複数設けられている。ロック機構84は、遮蔽部材45がダッシュパネル90から離れる向きで作動されることを阻止するために設けられている。ロック機構84は、キーシリンダ84A及びロックピン84Bを有し、ロック機構84は、キーシリンダ84A及びロックピン84Bを有する。
【0052】
キーシリンダ84Aへキーを差し込んで第1方向へ所定角度回転させると、ロックピン84Bが前後方向A2に沿って突出されて停止する。キーをキーシリンダ84Aから抜き取ると、ロックピン84Bは停止した位置、つまり、ロック位置に保持される。また、キーシリンダ84Aにキーを差し込んで第2方向へ所定角度回転させると、ロックピン84Bが前後方向A2に沿って後退されて停止する。キーをキーシリンダ84Aから抜き取ると、ロックピン84Bは非ロック位置で停止される。
【0053】
ダッシュパネル90には、ロックスリーブ91が複数設けられている。ロックスリーブ91は、幅方向A1に沿って間隔をおいて配置されている。ロック機構84及びロックスリーブ91は、鉛直方向で同じ位置に配置されている。また、ロック機構84及びロックスリーブ91は、幅方向A1で同じ位置に配置されている。ロックスリーブ91は、ロックピン84Bが進入及び退出可能であり、かつ、ロックピン84Bが係合及び解放される構造を有する。
【0054】
ロックピン84Bがロックスリーブ91へ係合されると、遮蔽部材45は、前後方向A2において、ダッシュパネル90から離れる向きで作動することが阻止される。ロックピン84Bがロックスリーブ91から解放されていると、遮蔽部材45は、前後方向A2において、ダッシュパネル90から離れる向きで作動すること、及びダッシュパネル90へ近づく向きで作動すること、が可能である。
【0055】
上記の遮蔽部材45、誤作動防止機構80,82、ロック機構81,83、シート支持ピン32,33,34,35、シート支持プレート36、ワッシャ37及び固定要素、ロックスリーブ91、押さえ部材92等により、車両盗難防止システム10が構成されている。
【0056】
車両盗難防止システム10は、車両11に予め設けられている汎用の部品ではなく、本実施形態で設けられた専用のシステムである。つまり、完成された車両11のフロントシート14を、第1スライダ30及び第2スライダ31から取り外した後、シート支持プレート36、シート支持ピン32,33,34,35、ワッシャ37及び固定要素、遮蔽部材45を第1スライダ30及び第2スライダ31へ取り付けた後、フロントシート14をシート支持プレート36へ固定したものである。
【0057】
(車両盗難防止システムの不使用時)
乗員16が車両盗難防止システム10を使用しない場合、車両盗難防止システム10は、図1(A)、図2図4(A)、図5に示すような不使用状態に保持される。車両盗難防止システム10が不使用状態であると、遮蔽部材45は、不使用位置で保持される。遮蔽部材45の不使用位置は、遮蔽部材45が、前後方向A2において、第1スライダ30及び第2スライダ31に対して最も後方へ移動されて停止した位置である。このため、遮蔽部材45を第1スライダ30及び第2スライダ31に対し後方へ作動させようとする力が生じた場合、前板50が座部17の前端へ接触することで、遮蔽部材45が第1スライダ30及び第2スライダ31に対し後方へ作動することが阻止される。
【0058】
また、車両盗難防止システム10が不使用状態であると、誤作動防止機構80,82は、図4(A)に示すロック状態に保持される。誤作動防止機構80のロック状態では、ロックピン80Bが、シート支持ピン32より後方に位置し、かつ、ロック位置に保持されている。誤作動防止機構82のロック状態では、ロックピン82Bが、シート支持ピン34より後方に位置し、かつ、ロック位置に保持されている。このため、遮蔽部材45を第1スライダ30及び第2スライダ31に対し前方へ作動させようとする力が生じた場合、ロックピン80Bがシート支持ピン32へ係合され、かつ、ロックピン82Bがシート支持ピン34へ係合される。したがって、遮蔽部材45が第1スライダ30及び第2スライダ31に対し前方へ作動することが阻止される。
【0059】
さらに、遮蔽部材45が不使用位置で停止されていると、前後調整レバー38の一部が、開口部52から前方へ露出されている。また、押さえ部材92は前後調整レバー38から離れている。このため、乗員16は、手で前後調整レバー38に操作力を加えて支持軸39を中心として反時計回りに所定角度動作させ、シートロック機構を解除することができる。したがって、フロントシート14に操作力を加えて、第1スライダ30を第1レール22に沿って移動させ、かつ、第2スライダ31を第2レール25に沿って移動させることができる。つまり、乗員16は、フロントシート14を前後方向A2で作動させ、前後方向A2におけるフロントシート14の位置を調整することができる。
【0060】
車両盗難防止システム10が不使用状態であると、図1(A)及び図4(A)のように、遮蔽部材45はダッシュパネル90から離間されている。つまり、ペダル配置空間93は開放されている。このため、乗員16がフロントシート14へ座った姿勢で、足61によりアクセルペダル94、ブレーキペダル95及びパーキングブレーキペダル97を操作することができる。したがって、車両11の走行、停止及び駐車を、乗員16の意図で行うことができる。
【0061】
さらに、遮蔽部材45が不使用位置で保持されていると、遮蔽部材45は、前後方向A2において、第1スライダ30及び第2スライダ31に対して最も後方へ移動された位置で停止されている。また、前板50及びスカート板49は、略垂直であり、前後方向A2で座部17の前端と同じ位置にある。さらに、上板46、側板47,48は、座部17の下に位置する。つまり、遮蔽部材45が不使用位置で停止されていると、図4(A)及び図5のように、フロントシート14を真上から見た平面視で、遮蔽部材45の配置領域と、フロントシート14の配置領域とが重なるように、遮蔽部材45が構成されている。
したがって、遮蔽部材45が、乗員16の足61の邪魔になることがない。
【0062】
(車両盗難防止システムの使用時)
乗員16が車両盗難防止システム10を使用する場合、車両盗難防止システム10は、図1(B)、図3図4(B)に示すような使用状態に保持される。車両盗難防止システム10が使用状態であると、遮蔽部材45は、使用位置で保持される。遮蔽部材45の使用位置は、遮蔽部材45が、前後方向A2において、第1スライダ30及び第2スライダ31に対して最も前方へ移動されて停止した位置である。
【0063】
乗員16は、次の操作を行って遮蔽部材45を不使用位置から使用位置へ移動させている。まず、乗員16は、キーを使用して誤作動防止機構80,82をそれぞれロック状態から解除状態へ切り替えた。また、乗員16は、ロック機構81,83をそれぞれ解除状態とした。そして、遮蔽部材45を第1スライダ30及び第2スライダ31に対し前方へ移動させる。
【0064】
遮蔽部材45を第1スライダ30及び第2スライダ31に対し前方へ移動させる過程で、ロックピン81Bはシート支持ピン33へ係合されず、かつ、ロックピン83Bはシート支持ピン35へ係合されない。そして、遮蔽部材45が使用位置へ到達すると、遮蔽部材45が停止される。遮蔽部材45の使用位置は、前板50がダッシュパネル90へ接触した位置である。遮蔽部材45が使用位置で停止されると、ペダル配置空間93の入口は、遮蔽部材45により覆われる。
【0065】
乗員16は、遮蔽部材45が使用位置で停止された後、キーを使用してロック機構81,83をそれぞれ解除状態からロック状態へ切り替える。すると、ロックピン81Bは、シート支持ピン33の前方で停止され、ロックピン83Bは、シート支持ピン35の前方で停止される。このため、車両11を盗難しようとする仮想者60が、遮蔽部材45を第1スライダ30及び第2スライダ31に対し後方へ作動させようとしても、ロックピン81Bがシート支持ピン33へ係合され、かつ、ロックピン83Bがシート支持ピン35へ係合される。
【0066】
したがって、遮蔽部材45が第1スライダ30及び第2スライダ31に対し後方へ作動することが阻止され、遮蔽部材45が、ペダル配置空間93の入口を覆った使用状態に固定される。具体的には、前板50及びスカート板49がダッシュパネル90へ押し付けられ、かつ、側板47,48の前端がダッシュパネル90へ押し付けられる。
【0067】
このため、仮想者60がフロントシート14へ座ったとしても、足60Aでアクセルペダル94、ブレーキペダル95及びパーキングブレーキペダル97を操作することができない。したがって、車両盗難防止システム10は、仮想者60が車両11を盗難することを阻止できる。
【0068】
また、遮蔽部材45が使用位置で固定されると、図3のように、押さえ部材92の下端92Aが前後調整レバー38の上に押し付けられる。このため、仮想者60が開口部52へ手を挿入して前後調整レバー38を操作しようとすると、押さえ部材は92は、前後調整レバー38が、図3において、支持軸39を中心として反時計方向に回転することを阻止する。つまり、シートロック機構が解除されず、仮想者60は、フロントシート14、第1スライダ30及び第2スライダ31を、後方へ移動させることができない。したがって、遮蔽部材45が後方へ移動されることを阻止する機能が向上し、車両盗難防止システム10の信頼性が高まる。
【0069】
さらに、乗員16は、遮蔽部材45を使用位置で停止させた後、ロック機構84を操作することにより、ロックピン84Bをロックスリーブ91へ係合させて、ロック機構84を解除状態からロック状態へ切り替えることができる。ロック機構84がロック状態であると、遮蔽部材45が後方へ作動することを阻止する力が増加される。したがって、遮蔽部材45が、仮想者60によって後方へ作動されることを阻止する機能が向上する。つまり、車両盗難防止システム10の信頼性が高まる。
【0070】
(リクライニング機構の説明)
フロントシート14は、図9(A),(B)及び図10(A),(B)に示すようなリクライニング機構100を備えている。リクライニング機構100は、図9(A)に示すフロントシート14の側面視で、座部17に対する背もたれ18の傾斜角度θ1を調整するための機構である。傾斜角度θ1は、例えば、ヒンジ軸20の中心を通る仮想線B1と、背もたれ18の厚さ方向の中心線B2との間に形成される2つの角度のうち、相対的に小さい方の角度として定義できる。背もたれ18の厚さとは、背もたれ18の前面から背面へ向けた方向の寸法である。
【0071】
リクライニング機構100は、2個のベースプレート73、2個のアームプレート74、2個のヒンジ軸20、レバー101を有する。2個のベースプレート73、2個のアームプレート74、2個のヒンジ軸20は、何れも金属製である。図5のように、2個のベースプレート73は、ベースプレート73,73Bを含む。ベースプレート73,73Bは、フロントシート14のシートフレームへ固定されている。ベースプレート73A,73Bは、幅方向A1で間隔をおいて配置されている。
【0072】
ベースプレート73Aには、ストッパ102,103が設けられている。フロントシート14を側面視すると、アームプレート74Aの一部は、ストッパ102とストッパ103との間に配置されている。ストッパ102は、背もたれ18が前方、つまり、座部17へ近づくように作動される場合の作動限界を定める要素である。ストッパ102は、アームプレート74Aの縁へ接触することにより、図9(A),(B)に示すアームプレート74Aが、ヒンジ軸20を中心として時計回りに作動される限界位置を定め、かつ、図10(A),(B)に示すアームプレート74Bがヒンジ軸20を中心として反時計回りに作動される限界位置を定める。
【0073】
ストッパ103は、背もたれ18が後方、つまり、座部17から離れるように作動される場合の作動限界を定める要素である。ストッパ103は、アームプレート74Aの縁へ接触することにより、図9(A),(B)に示すアームプレート74Aがヒンジ軸20を中心として反時計回りに作動される限界位置を定め、かつ、図10(A),(B)に示すアームプレート74Bがヒンジ軸20を中心として時計回りに作動される限界位置を定める。
【0074】
レバー101は、ベースプレート73Aに対し支持軸104を介して取り付けられている。レバー101は、例えば、金属製であり、支持軸104を中心として所定角度の範囲内で作動可能である。レバー101は、乗員16が手で操作する。レバー101は、金属製のスプリング105により、支持軸104を中心として時計回りに回転する向きで付勢されている。レバー101には、複数の凹凸により構成された係合部106が設けられている。係合部106は、円弧状に設けられている。
【0075】
アームプレート74Aには係合部107が設けられている。係合部107は、複数の凹凸により構成されている。レバー101の状態に応じて、係合部106と係合部107とが係合または解放される。また、2個のアームプレート74は、ヒンジ軸20を中心として前方へ向けて作動するように、図示しない巻きスプリングにより付勢されている。
【0076】
リクライニング機構100の動作例は、次の通りである。乗員16がレバー101に対する操作力を解除している場合、レバー101がスプリング105の付勢力で押され、係合部106と係合部107とが係合されている。このため、背もたれ18は、巻きスプリングの付勢力に抗して、ヒンジ軸20を中心とする所定の位置で停止されている。
【0077】
乗員16が背もたれ18の傾斜角度θ1を調整する場合、図9(A),(B)に示すレバー101に操作力を加え、レバー101をスプリング105の付勢力に抗して、支持軸104を中心として反時計回りに作動させる。すると、係合部106と係合部107とが解放される。このため、乗員16は、背もたれ18をヒンジ軸20を中心として前方または後方へ作動させることができる。なお、背もたれ18をヒンジ軸20を中心として後方へ作動させる場合、巻きスプリングの付勢力に抗して行なう。そして、乗員16がレバー101に対する操作力を解除すると、レバー101がスプリング105の付勢力で押され、係合部106と係合部107とが係合されて、背もたれ18は所定の位置で停止される。
【0078】
(背もたれロック機構の説明)
図11及び図12には、背もたれロック機構130が示されている。背もたれロック機構130は、遮蔽部材45を使用状態で停止された場合に、背もたれ18を前方へ最も前方へ倒した状態で固定するため設けられている。背もたれロック機構130は、固定部材110、連結部材111、プーリ112、ワイヤー113、ロック軸114,115、スプリング117、を有する。固定部材110は、例えば、金属製のプレートであり、固定部材110の両端は、第1スライダ30及び第2スライダ31へ接続されている。つまり、フロントシート14を平面視すると、幅方向A1において、2個のベースプレート73同士の間に、固定部材110が配置されている。
【0079】
プーリ112は固定部材110へ取り付けられており、プーリ112は、鉛直方向の中心線を中心として回転可能である。プーリ112は、フロントシート14の平面視で、スプリング117によって時計方向に付勢され、かつ、初期位置で停止されている。ワイヤー113の第1端部が、プーリ112へ巻き掛けられている。ワイヤー113の第2端部は、連結部材111へ接続されている。ワイヤー113は、例えば、金属製である。また、上板46を厚さ方向に貫通するガイド孔118が設けられている。ガイド孔118は、前後方向A2に沿って配置されている。
【0080】
連結部材111は、ガイド孔118内へ挿入されている。連結部材111は、ガイド孔118内で前後方向A2に沿って移動可能であり、かつ、連結部材111は、ガイド孔118から抜け出さないように構成されている。遮蔽部材45が前方へ向けて作動されると、連結部材111が遮蔽部材45の上板46へ係合され、連結部材111が遮蔽部材45と共に前方へ移動する。連結部材111が前方へ移動すると、ワイヤー113が巻かれたプーリ112は、スプリング117の付勢力に抗して、図11で反時計方向に回転される。
【0081】
ロック軸114,115は、プーリ112へ接続されている。そして、プーリ112が回転されると、ロック軸114,115は、幅方向A1に沿って作動するように構成されている。本実施形態では、プーリ112が図11で時計方向に回転されると、ロック軸114,115は、幅方向A1に沿い、かつ、互いに近づく向きで作動するように構成されている。また、プーリ112が図11で反時計方向に回転されると、ロック軸114,115は、幅方向A1に沿い、かつ、互いに離れる向きで作動するように構成されている。
【0082】
2個のベースプレート73は、軸孔119をそれぞれ有する。軸孔119は、ベースプレート73を幅方向A1に沿って貫通している。2個のアームプレート74は、軸孔120をそれぞれ有する。軸孔120は、アームプレート74を幅方向A1に沿って貫通している。図9(A),(B)のように、軸孔119,120は、ヒンジ軸20を中心とする同一円周上に配置されている。
【0083】
背もたれロック機構130の作動例は、次の通りである。図11のように、遮蔽部材45が不使用位置で停止されていると、プーリ112は、スプリング117によって時計方向に付勢され、初期位置で停止されている。プーリ112が初期位置で停止されていると、ロック軸114はアームプレート74Aから離れており、かつ、ロック軸115はアームプレート74Bから離れている。
【0084】
このため、背もたれ18の傾斜角度θ1が変更されて、ヒンジ軸20を中心とする円周方向で、アームプレート74Aの軸孔120及び軸孔119が同じ位置に停止された場合でも、ロック軸114はアームプレート74Aの軸孔120へ進入しない。また、ヒンジ軸20を中心とする円周方向で、アームプレート74Bの軸孔120及び軸孔119が同じ位置に停止された場合でも、ロック軸115はアームプレート74Bの軸孔120へ進入しない。したがって、乗員16は、レバー101を操作することで、背もたれ18の傾斜角度θ1を任意に調整できる。
【0085】
次に、乗員16が遮蔽部材45が不使用位置から使用位置へ移動させて停止させる例を説明する。遮蔽部材45が不使用位置から前方へ向けて移動されると、上板46が連結部材111へ係合され、遮蔽部材45及び連結部材111が共に前方へ向けて移動される。連結部材111が前方へ向けて移動されると、連結部材111へ接続されたワイヤー113が引っ張られてプーリ112を図11で反時計方向へ回転させる。すると、ロック軸114はアームプレート74Aへ近づく向きで作動され、ロック軸115はアームプレート74Bへ近づく向きで作動される。
【0086】
遮蔽部材45が使用位置で停止されると、連結部材111も停止され、かつ、プーリ112も停止し、かつ、ロック軸114,115も停止される。ここで、背もたれ18が、座部17へ最も近づけた限界位置とは異なる位置で停止されていると、ヒンジ軸20を中心とする円周方向で、アームプレート74Aの軸孔120及び軸孔119が異なる位置で停止されているため、ロック軸114はアームプレート74Aの軸孔120へ進入しない。また、ヒンジ軸20を中心とする円周方向で、アームプレート74Bの軸孔120及び軸孔119が異なる同じ位置に停止されているため、ロック軸115はアームプレート74Bの軸孔120へ進入しない。
【0087】
さらに、乗員16が背もたれ18を座部17へ最も近づけた限界位置へ移動させて停止させた後、遮蔽部材45を不使用位置から使用位置へ移動させる操作を行う例を説明する。背もたれ18が限界位置で停止されると、ヒンジ軸20を中心とする円周方向で、アームプレート74Aの軸孔120及び軸孔119が同じ位置で停止される。また、ヒンジ軸20を中心とする円周方向で、アームプレート74Bの軸孔120及び軸孔119が同じ位置で停止される。
【0088】
このため、遮蔽部材45が不使用位置から使用位置へ移動されて、ロック軸114,115が互いに離れる向きで移動すると、ロック軸114は、軸孔119及びアームプレート74Aの軸孔120へ進入される。また、ヒンジ軸20を中心とする円周方向で、アームプレート74Bの軸孔120及び軸孔119が異なる同じ位置に停止されるため、ロック軸115は、軸孔119及びアームプレート74Bの軸孔120へ進入される。したがって、背もたれ18が前方へ向けて最も傾斜された限界位置で固定され、仮想者60がフロントシート14へ座りにくい状態を確保できる。
【0089】
なお、乗員16が遮蔽部材45を使用位置から不使用位置へ戻すように作動させると、スプリング117の付勢力でプーリ112が図12で時計方向に回転され、かつ、プーリ112が初期位置へ戻って停止される。また、プーリ112が図12で時計方向に回転されると、ロック軸114,115が、図11に示すように互いに近づく向きで作動して停止する。このため、ロック軸114はアームプレート74Aの軸孔120から退出し、かつ、ロック軸115はアームプレート74Bの軸孔120から退出される。したがって、リクライニング機構100は、乗員16が背もたれ18の傾斜角度θ1を任意に変更できる状態になる。
【0090】
(その他の説明)
本実施形態は、図面を用いて開示されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、プーリ112の外周面にピニオンギヤを設け、ロック軸114,115にそれぞれラックを設けることも可能である。そして、プーリ112のピニオンギヤと、ロック軸114,115にそれぞれ設けたラックと、を係合させることにより、ラック・アンド・ピニオン機構を構成できる。すると、プーリ112の回転力が、ロック軸114,115の作動力に変換される。
【0091】
さらに、フロントシート14の下に振動センサ等を設け、振動センサがフロントシート14の振動を検出すると、警告音を発生する制御、または、車両11の所有者の端末へ通知が行われるように構成すると有効である。さらに、車両盗難防止システム10は、遮蔽部材45を前後方向A2に沿って自動的に移動及び停止させるアクチュエータを備えていてもよい。アクチュエータは、例えば、シート支持フレーム15へ設けることができる。アクチュエータは、例えば、電動モータ、油圧シリンダ、空気圧シリンダ、等を含む。さらに、車両盗難防止システム10を構成する要素の形状、構造、寸法等の諸元は、搭載しようとする車両のフロントシートの形状、構造、等に応じて任意に変更できる。なお、フロントシート14、車両盗難防止システム10、リクライニング機構100、背もたれロック機構130を包括して、シート装置と定義することもできる。
【0092】
本実施形態に開示された技術的意味の一例は、次の通りである。フロントシート14が、シートの一例である。シート支持フレーム15は、シート支持フレームの一例である。遮蔽部材45は、遮蔽部材の一例である。車両11は、車両の一例である。前後方向A2は、前後方向の一例である、第1スライダ30、第2スライダ31、ブラケット40,41、支持プレート42は、スライド機構の一例である。ペダル配置空間93は、ペダル配置空間の一例である。遮蔽部材45の不使用位置は、第1位置の一例である。シート支持ピン32,34、誤作動防止機構80,82、ガイド孔51は、第1ロック機構の一例である。
【0093】
遮蔽部材45の使用位置は、第2位置の一例である。シート支持ピン32,34、ガイド孔51は、ロック機構81,83は、第2ロック機構の一例である。車両盗難防止システム10は、車両盗難防止システムの一例である。第1レール22及び第2レール25は、シートスライド機構の一例である。前後調整レバー38は、操作部材の一例である。前後調整レバー38が押さえ部材92に接触されている状態が、操作部材の操作状態としてのロック状態の一例である。前後調整レバー38が押さえ部材92から離れている状態が、操作部材の操作状態としてのロック解除状態の一例である。押さえ部材92は、保持部材の一例である。
【0094】
図4(A)及び図5は、シートを真上から見た平面視の一例である。座部17は、座部の一例である。背もたれ18は、背もたれの一例である。傾斜角度θ1は、傾斜角度の一例である。リクライニング機構100は、リクライニング機構の一例である。背もたれロック機構130は、背もたれロック機構の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、車両の盗難を防止するために車両の室内に設けられる車両盗難防止システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
10…車両盗難防止システム、11…車両、14…フロントシート、15…シート支持フレーム、17…座部、18…背もたれ、30…第1スライダ、31…第2スライダ、32,34…シート支持ピン、38…前後調整レバー、40,41…ブラケット、42…支持プレート、45…遮蔽部材、51…ガイド孔、80,82…誤作動防止機構、81,83…ロック機構、92…押さえ部材、93…ペダル配置空間、100…リクライニング機構、130…背もたれロック機構、A2…前後方向、θ1…傾斜角度
【要約】
【課題】車両の走行を阻止することの可能な車両盗難防止システムを提供する。
【解決手段】フロントシート14が載せられるシート支持フレーム15により支持される遮蔽部材45と、遮蔽部材45をシート支持フレーム15に対し車両の前後方向A2で移動可能とする第1スライダ30及び第2スライダと、遮蔽部材45を前後方向A2で、車両の室内におけるペダル配置空間を開放した第1位置で停止させた状態に固定する第1ロック機構と、遮蔽部材45を、前後方向で第1位置より前方であり、かつ、ペダル配置空間を閉じた第2位置で停止させた状態に固定する第2ロック機構と、を備えている車両盗難防止システム10を有する。
【選択図】図3
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